説明

導電性ローラの製造方法およびそれにより得られる導電性ローラ

【課題】フォーム体からなる弾性層への塗料の浸み込みを防止することで、弾性層上に、均一な膜厚にて平滑性に優れた塗膜を形成することができ、これによりローラとしての適正な抵抗および弾性を確保することができる導電性ローラの製造方法、および、それにより得られる導電性ローラを提供する。
【解決手段】シャフト1と、その外周に形成されたポリウレタンフォームからなる弾性層2と、その表面に形成された少なくとも1層の塗膜層3と、を備える導電性ローラの製造方法である。弾性層の表面に塗膜層を、塗膜層形成用塗料のディッピング塗布により形成するにあたり、塗膜層形成用塗料を、固形分濃度x(質量%)と粘度y(mPa・s)とが、下記式(1)〜(3)、
x≦60 (1)
100≦y≦1500 (2)
y≧−80x+4500 (3)
で示される関係を満足するよう調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ローラの製造方法およびそれにより得られる導電性ローラ(以下、単に「製造方法」および「ローラ」とも称する)に関し、詳しくは、電子写真方式を用いた画像形成装置において使用される導電性ローラの製造方法およびそれにより得られる導電性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式を用いた画像形成装置においては、画像形成の各工程で、転写ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ、帯電ローラ、クリーニングローラ、中間転写ローラ、ベルト駆動ローラ等の、導電性を付与したローラが用いられている。
【0003】
かかるローラ部材としては、従来、軸の外周に、導電剤を配合することにより導電性を付与したゴムや高分子エラストマー、高分子フォーム等からなる弾性層を形成した構造を基本構造として、所望の表面粗さや導電性、硬度などを得るために、その外周に一層または複数層の塗膜を設けたものが使用されている。
【0004】
ローラの改良に係る技術としては、例えば、特許文献1に、芯金と、その外周に形成された導電弾性層とを設けた帯電ローラが開示されており、その実施形態として、芯金の外周に、導電性発泡体層および帯電層を備える構成の帯電ローラが記載されている。また、特許文献2には、シャフトの外周に連続気泡構造からなる円筒状の弾性多孔体が設けられ、その外周面に塗布したチクソトロピー性の高分子エマルジョンを弾性多孔体の塗布面に吹き付けた高圧気体により弾性多孔体内に圧入してゲル化したゲル層を、弾性多孔体内に有するトナー供給ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−43936号公報(特許請求の範囲,[図4]等)
【特許文献2】特開2004−325690号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フォーム体からなる弾性層を自由発泡により作製する際には、表面に気孔が形成される。上述のように、弾性層の外周には、通常、抵抗調整や弾性確保の目的でソリッド(非発泡)の層が設けられるが、弾性層表面に大きな気孔が存在すると、ソリッド層の塗料が気孔内に浸み込んでしまう場合がある。気孔内に塗料が浸み込むと、均一な膜厚のソリッド層が形成できずに均一なローラ抵抗が得られなかったり、ソリッド層表面にうねりが生じて、目的の抵抗や弾性が確保できず、感光体等との密着性が悪化するなどの問題が生ずるため、かかる塗料の浸み込みを防止するための技術が求められていた。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、フォーム体からなる弾性層への塗料の浸み込みを防止することで、弾性層上に、均一な膜厚にて表面平滑性に優れた塗膜を形成することができ、これによりローラとしての適正な抵抗および弾性を確保することができる導電性ローラの製造方法、および、それにより得られる導電性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、フォーム体からなる弾性層上に、ディッピング塗布によりソリッドの塗膜層を形成するに際し、この塗膜層形成用の塗料の固形分濃度および粘度を所定範囲に調整することで、上記問題を解消できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の導電性ローラは、シャフトと、該シャフトの外周に形成されたポリウレタンフォームからなる弾性層と、該弾性層の表面に形成された少なくとも1層の塗膜層と、を備える導電性ローラの製造方法において、
前記弾性層の表面に前記塗膜層を、塗膜層形成用塗料のディッピング塗布により形成するにあたり、該塗膜層形成用塗料を、固形分濃度x(質量%)と粘度y(mPa・s)とが、下記式(1)〜(3)、
x≦60 (1)
100≦y≦1500 (2)
y≧−80x+4500 (3)
で示される関係を満足するよう調製することを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、前記塗膜層として、内側から順次中間層および表層を設け、前記塗膜層の形成用塗料により該中間層を形成することが好ましい。また、前記塗膜層の形成用塗料に、樹脂成分100質量部に対し0.1〜10質量部のシリカを配合することが好ましい。さらに、前記塗膜層の形成用塗料に、増粘剤を配合することも好ましい。
【0011】
また、本発明の導電性ローラは、上記本発明の導電性ローラの製造方法により製造されたことを特徴とするものである。本発明の導電性ローラは、例えば、帯電ローラとして有用である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フォーム体からなる弾性層への塗料の浸み込みを防止することで、弾性層上に、均一な膜厚にて表面平滑性に優れた塗膜を形成することができ、これによりローラとしての適正な抵抗および弾性を確保することができる導電性ローラの製造方法および導電性ローラを実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の導電性ローラの一例を示す長手方向断面図である。
【図2】本発明の導電性ローラの他の例を示す長手方向断面図である。
【図3】本発明の導電性ローラのさらに他の例を示す長手方向断面図である。
【図4】各実施例および比較例の塗膜層形成用塗料の固形分濃度と粘度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の導電性ローラの一例を示す長手方向断面図である。図示する本発明の導電性ローラ10は、シャフト1と、その外周に順次形成されたポリウレタンフォームからなる弾性層2、および、塗膜層3と、を備えるものである。
【0015】
本発明においては、弾性層2の表面に塗膜層3を、塗膜層形成用塗料のディッピング塗布により形成するにあたり、この塗膜層形成用塗料として、所定の条件を満足するものを用いる点に特徴がある。すなわち、本発明においては、固形分濃度x(質量%)と粘度y(mPa・s)とが、下記式(1)〜(3)、
x≦60 (1)
100≦y≦1500 (2)
y≧−80x+4500 (3)
で示される関係を満足するよう調製された塗膜層形成用塗料を用いて、塗膜層3を形成する。
【0016】
本発明においては、固形分濃度xおよび粘度yが上記条件を満足する塗膜層形成用塗料を用いることで、塗料の速乾性を向上して、塗料中の樹脂成分の弾性層2への染み込みを抑制することができる。これにより、弾性層2上に、均一な膜厚にて表面平滑性に優れた塗膜層3を形成することができ、ローラとしての適正な抵抗および弾性を担保した導電性ローラを得ることが可能となった。本発明は、特に、表面気孔径が50μm以上程度であるフォーム体からなる弾性層を用いる際に、有用である。
【0017】
ここで、塗料の固形分濃度xは塗料に用いる樹脂の固形分濃度と関係しており、樹脂の固形分濃度より高い塗料は作製できないが、固形分濃度が60質量%を超える樹脂は作製しにくい。また、塗料の固形分濃度が60質量%を超えると、塗膜層形成時の塗布と乾燥とのバランスが取れず、塗膜層の形状制御が困難となって、うねりやだれなどが生じてしまう。これは、固形分濃度が高くなると乾燥速度が上がるので、ローラ表面内で乾燥状態のバラツキが生じて、うねりやだれの発生に繋がるものと考えられる。そのため、塗料の固形分濃度xの上限値を60質量%としている。また、塗料の粘度yが1500mPa・sを超えた場合も、塗膜層3の形状制御が困難となる。
【0018】
本発明においては、固形分濃度xおよび粘度yが上記条件を満足する塗膜層形成用塗料を用いて、弾性層2上に塗膜層3を塗布形成するものであればよく、それ以外の条件については、所望に応じ適宜決定することができ、特に制限されるものではない。具体的に、上記条件を満足する固形分濃度xおよび粘度yを有する塗膜層形成用塗料は、塗料に用いる樹脂の種類および固形分濃度を選択したり、塗料配合中に、シリカまたは増粘剤を添加することにより調製することができる。すなわち、例えば、塗料の固形分濃度xについては、樹脂の固形分濃度やシリカの添加量などにより調整することができ、塗料の粘度yについては、増粘剤やシリカの添加量などにより調整することができる。したがって、本発明においては、塗料中のシリカないし増粘剤の配合量を適正に調整することで、固形分濃度の低い樹脂についても、使用することが可能である。
【0019】
本発明において、塗膜層形成用塗料中にシリカを配合する場合、その配合量は、塗料の樹脂成分100質量部に対し、0.1〜10質量部とすることが好ましい。シリカの配合量が0.1質量部未満であると、固形分濃度および粘度が十分に高くならず、10質量部を超えると、固形分濃度および粘度が高くなりすぎて、いずれにおいても上記条件を満足する塗料が得られない。
【0020】
また、本発明において、塗膜層形成用塗料中に増粘剤を配合する場合、その配合量は、塗料の樹脂成分100質量部に対し、0.01〜10質量部とすることが好ましい。増粘剤の配合量が0.01質量部未満であると、固形分濃度および粘度が十分に高くならず、10質量部を超えると、固形分濃度および粘度が高くなりすぎて、いずれにおいても上記条件を満足する塗料が得られない。また、増粘剤の配合量が多すぎると、塗膜層3の表面平滑性を損なうため、かかる観点からも好ましくない。
【0021】
図2は、本発明の導電性ローラの他の構成例を示す長手方向断面図である。図示する導電性ローラ20は、シャフト1と、その外周に順次形成された接着層5、弾性層2、塗膜層3および表層4と、を備えるものである。本発明の導電性ローラは、シャフト1の外周に弾性層2および少なくとも1層の塗膜層3を順次備えるものであるが、好ましくは、図示するように、中間層としての塗膜層3上に、さらに、表層としての塗膜層4を備える。この場合、弾性層2上に設けられる中間層としての塗膜層3は、ローラの抵抗および硬度を調整するために設けられるものであり、表層としての塗膜層4は、表面粗さを調整するために設けられる。表層を設けない場合には、塗膜層3でこれら各ローラ性能を調整すればよい。本発明においては、塗膜層3の塗料の弾性層2へのしみこみがないので、その上にさらに塗膜層を積層して塗布形成した場合でも、最終的に得られる導電性ローラの表面性を損なわないものである。なお、本発明においては、図示するように、シャフト1の外周に、弾性層2を形成するに先立って接着層5を設けて、シャフト1と弾性層2との接着性を向上させることもできる。
【0022】
本発明の製造方法においては、上記塗膜層形成用塗料に関する条件以外の点については、常法に従い適宜実施することができ、特に制限されるものではない。例えば、まず、弾性層2を構成するポリウレタン樹脂に任意の添加剤を添加して、得られた配合材料を、攪拌機、例えば、ハンドミキサー等を用いて機械的に攪拌することにより発泡させる。その後、発泡した配合材料を、シャフト1にディッピング塗布することにより、シャフト1の外周に弾性層2を形成することができる。弾性層2を、シャフト1に直接塗料を塗布することにより形成することで、製造工程の簡略化が可能となり、コストを低減することができる。
【0023】
ここで、シャフト1の外周に、弾性層2を形成するに先立って接着層5を設ける場合には、後述する接着層5の構成材料を分散または溶解させた塗料を調製し、この塗料をシャフト1の外周に塗布することで、接着層5を塗布形成することができる。塗布方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコーター法、ダイコート法、リング塗装法等の公知の手法を適宜用いることができ、これら手法により塗料を塗布後、乾燥固化することにより、接着層5が形成される。中でも、塗布方法としては、ディッピング法を用いることが好ましい。
【0024】
次いで、弾性層2上に、上記条件に従い調製した塗膜層形成用塗料を、上記接着層5と同様の手法で塗布形成して、塗膜層3を形成する。さらに、この塗膜層3上に、所望に応じ、表層を、上記接着層5と同様の手法で塗布形成することで、導電性ローラを製造することができる。
【0025】
また、本発明の導電性ローラは、上記本発明の導電性ローラの製造方法により製造されたものであればよく、これにより、ローラとしての適正な抵抗および弾性を担保した導電性ローラとすることができるものである。それ以外の具体的な層構成や各層の材料等については、常法に従い適宜構成することができ、特に制限されるものではない。
【0026】
例えば、本発明のローラに用いるシャフト1としては、金属製またはプラスチック製の、中空円筒体または中実円柱体を使用することができるが、好ましくは、金属製の中空円筒体または中実円柱体であり、より好ましくは、金属製の中空円筒体である。これにより、コスト性を向上することができる。
【0027】
弾性層2を構成するポリウレタンフォームに用いるポリウレタン樹脂としては、従来公知の材料を適宜選択して用いることができ、特に制限されるものではない。また、ポリウレタンフォームの発泡倍率としては、特に制限されるものではないが、1.2〜50倍、特には1.5〜10倍程度が好ましく、フォーム密度は、0.1〜0.7g/cm程度が好ましい。
【0028】
弾性層2には導電剤を添加することができ、これにより、導電性を付与し、または調整して、所定の抵抗値とすることができる。かかる導電剤としては、特に限定されず、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウムの過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等のハロゲン化ベンジル塩等の第四級アンモニウム塩などの陽イオン性界面活性剤、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩などの陰イオン界面活性剤、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等の非イオン性帯電防止剤などの帯電防止剤、NaClO、LiAsF、LiBF、NaSCN、KSCN、NaCl等のLi、Na、K等の周期律表第1族の金属塩、あるいはNHの塩などの電解質、また、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープの酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属および金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられる。これらの導電剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これら導電剤の配合量は、組成物の種類に応じて適宜選定され、通常、弾性層2の体積抵抗率が10〜10Ω・cm、好ましくは10〜10Ω・cmとなるように調整される。
【0029】
また、この弾性層2には、上記導電剤の他にも、必要に応じて、耐水化剤、湿潤剤、発泡剤、整泡剤、硬化剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤、ブロッキング防止剤、架橋剤、成膜助剤等の公知の添加剤を適量配合することができる。このうち耐水化剤としては、例えば、炭酸アンモニウムジルコニウムを好適に使用することができる。弾性層2に耐水化剤を含有させることで、ローラ抵抗の環境依存性を改善して、環境変化に伴う抵抗の変動を抑制することができるとともに、弾性層2の表面に形成される気孔を微細化して、ローラの表面性を向上することができる。かかる耐水化剤の配合量は、ポリウレタン樹脂100質量部に対し、0.5〜20質量部、特には0.5〜5質量部とすることが好ましい。耐水化剤の配合量が多すぎると、粘度が高くなりすぎてポットライフが低下する傾向があり、一方、耐水化剤の配合量が少なすぎると、所期の効果を十分に得られないおそれがあり、いずれも好ましくない。また、湿潤剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤を好適に使用することができる。ポリエーテル変性シリコーンは、ポリ(ジアルキルシロキサン)のアルキル基の一部をポリオキシアルキレン基を持つ置換基に置き換えた構造を有する。かかるポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体が挙げられる。弾性層2に湿潤剤を含有させることで、湿潤剤本来の効果であるレベリング効果が得られることに加え、発泡セルの粗大化を抑制して気泡径の微細化を図ることができ、また、自由発泡させた際の塗料の発泡比重をより精密に制御することが可能となる。かかる湿潤剤の配合量は、ポリウレタン樹脂100質量部に対し、0.1〜2質量部とすることが好ましい。湿潤剤の配合量が多すぎると、塗料のゲル化が生じやすくなり、一方、湿潤剤の配合量が少なすぎると、所期の効果を十分に得られないおそれがあり、いずれも好ましくない。
【0030】
弾性層2の厚みとしては、1.0〜5.0mmであることが好ましく、1.0〜3.0mmであることがより好ましい。弾性層2の厚みをかかる範囲とすることで、スパーク放電を防止することができる。
【0031】
また、本発明において弾性層2上に設ける塗膜層3は、好適には、水系塗料を用いて形成する。かかる塗膜層3に用いる水系塗料には、ローラ等の材料として公知のゴムや樹脂を用いることができる。樹脂としては、例えば、ウレタン変性アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。また、ゴム系の水系塗料としては、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のラテックス、ポリウレタン樹脂系の水系塗料としては、エーテル系、エステル系等のエマルションやディスパージョン、アクリル樹脂系の水系塗料としては、アクリル、アクリルスチレン等のエマルション、フッ素樹脂系の水系塗料としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン‐エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン‐エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン‐ビニリデンフルオライド共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド等を好適に用いることができる。
【0032】
本発明においては、上記の中でも、水系塗料として、水系アクリル樹脂を好適に用いることができる。かかる水系アクリル樹脂としては、アクリロニトリルとn‐ブチルアクリレートとを必須成分とし、任意にその他のモノマーを含むものが好ましく、その他のモノマーとしては、エチルアクリレート、アクリル酸2‐エチルへキシル、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。アクリロニトリルおよびn‐ブチルアクリレートを必須成分とするのは、これらが弾性(セット性)の向上に寄与するためであり、かかる観点からは、可能な限りn‐ブチルアクリレート量を増量し、他の成分を減量するとともに、必須成分以外のその他のモノマー成分のモノマー比率を減らすことが好ましい。一方、アクリロニトリルの比率を高めすぎると、形成された層が硬くなってしまうため好ましくない。したがって、必須成分であるアクリロニトリルとn‐ブチルアクリレートとのモノマー比率は、モル比で1〜25:99〜75、特には5〜20:95〜80の範囲内とすることが好ましい。
【0033】
また、上記水系アクリル樹脂は、分子中に活性水素を有する基を含んでいることが好ましい。活性水素を有する基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基等が挙げられ、好適にはカルボキシル基である。本発明において、かかる活性水素を有する基を含むモノマーの比率は、全モノマー量の3〜6%の範囲内とすることが好ましい。本発明においては、活性水素を有する基を含むモノマーの比率をこの範囲内とすることで、表面酸価が10mg/g以上、例えば、10〜20mg/gに調整された水系アクリル樹脂を好適に用いることができる。
【0034】
塗膜層3を中間層として設ける場合、塗膜層3には、上記弾性層2に用いられるのと同様の導電剤を1種にて、または2種以上を混合して配合して、所望の抵抗値に調整することが必要である。かかる塗膜層3の抵抗値は、上記弾性層2の抵抗値や、ローラに求められる抵抗値に応じて適宜設定されるが、通常は1×10〜1×10Ω・cm、特には1×10〜1×10Ω・cmの範囲とすることができる。この場合、上記導電剤の配合量は、この抵抗値が達成される適量とすることができるが、通常は、上記水系塗料の基材樹脂100質量部に対して、0.01〜60質量部、特には1〜30質量部とすることが好ましい。
【0035】
また、塗膜層3には、導電剤や、前述したシリカおよび/または増粘剤に加えて、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の添加剤を配合することができる。例えば、オキサゾリン系、エポキシ系、メラミン系、グアナミン系、イソシアネート系、フェノール系等の架橋剤を、使用する基材樹脂に応じて適量にて配合することができ、その他、造膜助剤、分散剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、構造粘性付与剤等の公知の添加剤を適量にて配合してもよい。
【0036】
塗膜層3の厚みは、弾性層2の厚みや導電性ローラの形態などに応じて適宜選定され、特に制限されるものではないが、通常は10〜500μm、特には50〜300μmとすることが好ましい。塗膜層3の厚みが50μm未満であると、十分な抵抗値の調整を行うことが困難になる場合があり、一方、300μmを超えると、相対的に弾性層2の厚みが薄くなって、ローラ硬度(部材硬度)が高くなってしまったり、必要以上にコスト高となったりする場合がある。
【0037】
また、上記塗膜層3上に設ける表層としての塗膜層4は、上記塗膜層3と同様の水系塗料を用いて形成することができる。この表層塗膜層を形成する水系塗料中には、特に制限されるものではないが、導電剤を添加して、表層塗膜層の導電性(電気抵抗)を付与または調整することができる。この場合に用いる導電剤としては、特に制限はなく、弾性層2に使用されるのと同様のものを、1種にて、または2種以上を混合して、適宜用いることができる。また、これら導電剤の配合量は、組成物の種類に応じて適宜選定され、通常、表層塗膜層の体積抵抗率が1×10〜1×1012Ω・cm、好ましくは1×10〜1×10Ω・cmとなるように調整される。
【0038】
なお、この表層塗膜層を形成する水系塗料中には、架橋剤、増粘剤、チクソトロピー性付与剤、構造粘性付与剤等の添加剤を、必要に応じて添加することができる。
【0039】
表層塗膜層の厚みは、特に制限されるものではないが、通常1〜30μm、特には1〜20μmとすることができる。表層3の厚みが1μm未満であると、ローラの耐久性に劣る場合があり、一方20μmを超えると、帯電特性等に悪影響を与えたり、表面にしわを生じたりするなど、良好な表面性が得られない場合がある。
【0040】
また、接着層5は、シャフト1と弾性層2との間を強固に接着させるために、所望に応じ設けることができるものであり、その厚みは1〜100μm程度とすることができる。接着層5は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂材料を用いて形成することができ、必要に応じて導電剤や他の添加剤を添加することもできる。
【0041】
図3は、本発明の導電性ローラのさらに他の例を示す長手方向断面図である。導電性ローラを帯電ローラ等として用いる場合には、感光ドラムに押圧される際に長さ方向に均一な当たり面を形成することが重要であるため、図示する好適例の導電性ローラ30は、長手方向中央部において端部よりも径が大きいクラウン形状を有している。
【0042】
導電性ローラをクラウン形状とする場合に、ローラ長手方向断面における、長さ方向中央の突出の程度を表すクラウン量としては、50〜300μmとすることが好ましく、これにより、通常の画像を一層良好なものにすることができる。クラウン量が50μm未満であると、ローラ長さ方向中央部の接触圧が低くなり、一方、クラウン量が300μmを超えると、ローラ長さ方向中央部が強く接触しすぎてしまい、いずれの場合も帯電量の不均一等の不具合を招くおそれがある。なお、本発明において導電性ローラのクラウン量の測定は、ミツトヨ(株)製高精度レーザ測定機LSM−430vを用いて行うことができる。この測定機により、ローラ中央部および中央部から端部へ向かう90mmの位置において外径を測定し、中央部の外径と両端部方向へ各90mmの位置における外径の平均値との差をローラクラウン量とする。例えば、ローラ長250mmの導電性ローラにおいては、一方の端から35mm、125mm、215mmの3点において外径を測定する。その際、一方の端から35mm位置における外径をA(mm)、125mm位置における外径をB(mm)、215mm位置における外径をC(mm)とすると、クラウン量(μm)は下記計算式、
クラウン量(μm)={B−(A+C)/2}×1000
で求めることができる。
【0043】
また、本発明の導電性ローラにおいては、振れ(膜厚精度)を、ローラ長さ方向全領域において、70μm以下とすることが好ましい。導電性ローラを帯電ローラとして使用して、感光体と接触させながら回転させた場合、導電性ローラの振れが大きいと、導電性ローラと感光体との間に空隙が生じ、さらに、その空隙距離も様々になってしまう。この場合、感光体上に残留しているトナー粒子および外添剤が、その空隙に侵入しやすくなり、導電性ローラにムラとなって付着する。そのため、ローラ表面がまだらに汚れて、画像不良の原因となってしまう。なお、本発明において導電性ローラの振れの測定は、ミツトヨ(株)製の高精度レーザ測定機LSM−430vを用いて行うことができる。この測定機により、外径を、ローラ長さ方向各5点について測定し、各点について測定した外径の最大値と最小値との差の平均値を振れとする。
【0044】
本発明の導電性ローラは、特に、帯電ローラとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
図1に示すような、シャフト1の外周に弾性層2および塗膜層3が順次形成された構成を有する導電性ローラを、下記表中に示す配合に従い、以下に示すようにして作製した。
【0046】
まず、水系塗料(アクリロニトリル−アクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸−メタクリル酸グリシジル共重合物の水性エマルション)100質量部に対し、エポクロス(オキザゾリン基含有スチレン−アクリル共重合物のエマルション)5質量部、水分散カーボン10質量部、ファインシールX−12(親水性シリカ)7.5質量部、SNデフォーマー777(消泡剤)1質量部、SNウェット970(湿潤剤)1質量部、UH420(増粘剤)1.6質量%を配合し、撹拌機で撹拌した。各成分を配合した水系塗料をメッシュでろ過し、凝集物を取り除いた。シャフト1を、この水系塗料にディッピング塗布して熱乾燥することにより、シャフト1の外周に、厚み100μmの接着層5を形成した。
【0047】
次いで、ウレタン樹脂(アデカボンタイターHUX−950,(株)ADEKA製)100質量部に対し、発泡剤(ノプコDC−100−A,サンノプコ(株)製)16質量部と、導電剤(311N,ライオン(株)製)4質量部と、整泡剤(ネオゲンS−20D,第一工業製薬(株)製)6質量部と、硬化剤(アデカボンタイターHUX−SW,(株)ADEKA製)20質量部と、湿潤剤(SNウェット980,サンノプコ(株)製)2質量部と、耐水化剤(AZコート5800MT,サンノプコ(株)製)0.5質量部とからなる配合材料を容器内に投入し、羽を用いて30分撹拌した。その後、市販のハンドミキサーを用いて6分間撹拌し、発泡させて、発泡ウレタン水分散液を得た。
【0048】
上記発泡ウレタン水分散液を、接着層5が形成されたシャフト1の外周にディッピング塗布して、熱風オーブンで乾燥・硬化させることにより、厚み1mmのポリウレタンフォームからなる弾性層2を形成した。
【0049】
次いで、下記の表中にそれぞれ示す条件の塗膜層形成用の水系塗料を調製して、得られた水系塗料を上記弾性層2上にディッピング塗布し、室温で30分間、110℃で20分間乾燥することにより塗膜層3を形成して、各導電性ローラを得た。図4に、各実施例および比較例の塗膜層形成用塗料の固形分濃度と粘度との関係を示すグラフを示す。
【0050】
得られた各ローラにつき、塗膜層3表面の平滑性を評価した。結果は、外観上うねりがなく、膜圧が均一である場合を○、外観上のうねりはないが、若干の膜厚差がある場合を○△、表面の一部に外観上のうねりが見られる場合を△、うねりが発生しているか、または、塗料のしみ込みにより、下地である弾性層のフォームのセルに由来する凹凸が現れている場合を×として示した。その結果を、下記表中に併せて示す。
【0051】
【表1】

*1)水系ウレタンエマルジョン:(株)ADEKA製,HUX−210
*2)水系アクリルエマルジョン:高圧ガス工業(株)製,ぺガール852
*3)カーボンブラック:ライオン(株)製,311N
*4)シリカ:(株)トクヤマ製,X−12
*5)サンノプコ(株)製,UH420
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
【表5】

【0056】
上記表中に示すように、塗膜層形成用塗料の固形分濃度xおよび粘度yが所定の条件を満足する各実施例のローラにおいては、弾性層への塗膜層形成用塗料のしみこみが生じず、良好な表面平滑性が得られていることが確かめられた。
【符号の説明】
【0057】
1 シャフト
2 弾性層
3 塗膜層
4 表層塗膜層
5 接着層
10,20,30 導電性ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、該シャフトの外周に形成されたポリウレタンフォームからなる弾性層と、該弾性層の表面に形成された少なくとも1層の塗膜層と、を備える導電性ローラの製造方法において、
前記弾性層の表面に前記塗膜層を、塗膜層形成用塗料のディッピング塗布により形成するにあたり、該塗膜層形成用塗料を、固形分濃度x(質量%)と粘度y(mPa・s)とが、下記式(1)〜(3)、
x≦60 (1)
100≦y≦1500 (2)
y≧−80x+4500 (3)
で示される関係を満足するよう調製することを特徴とする導電性ローラの製造方法。
【請求項2】
前記塗膜層として内側から順次中間層および表層を設け、前記塗膜層の形成用塗料により該中間層を形成する請求項1記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項3】
前記塗膜層の形成用塗料に、樹脂成分100質量部に対し0.1〜10質量部のシリカを配合する請求項1または2記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項4】
前記塗膜層の形成用塗料に、増粘剤を配合する請求項1〜3のうちいずれか一項記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項記載の導電性ローラの製造方法により製造されたことを特徴とする導電性ローラ。
【請求項6】
帯電ローラである請求項5記載の導電性ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−248224(P2011−248224A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123110(P2010−123110)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】