説明

導電性ローラの製造方法および導電性ローラ

【課題】弾性層の塗工形成時における円筒状基体端部への塗料の流れ込みを防止できる導電性ローラの製造方法を提供する。また、弾性層端部の膜厚ムラやローラ端部への異物の付着がない導電性ローラを提供する。
【解決手段】両端に軸部11を有する円筒状基体10の外周面に、少なくとも1層の弾性層1を備える導電性ローラの製造方法である。円筒状基体10の外周面に弾性層1を形成するに際し、円筒状基体10として、少なくとも一方の端部に前記外周面と同一外径の裁断しろ4を有するものを用い、弾性層1を裁断しろ4まで塗工形成した後、裁断しろ4および裁断しろ4上の弾性層1を切断除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ローラの製造方法および導電性ローラ(以下、単に「製造方法」および「ローラ」とも称する)に関し、詳しくは、製造工程の改良を図った導電性ローラの製造方法およびそれにより得られる導電性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式を用いた画像形成装置においては、画像形成の各工程で、転写ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ、帯電ローラ、クリーニングローラ、中間転写ローラ、ベルト駆動ローラ等の、導電性を付与したローラ部材が用いられている。
【0003】
かかる導電性ローラは、一般に、円筒状基体の外周に弾性層を設けた構成を有しており、用途に応じて、金属製パイプの両端に軸部を形成したフランジを嵌合して、その外周に弾性層を形成した構造や、芯金等のシャフトの外周に円筒状基体本体を設けて、その外周に弾性層を形成した構造などが知られている。
【0004】
このような構成の導電性ローラを製造するに際して、円筒状基体の外周に弾性層を塗工形成するにあたっては、図3に示すように、ローラ軸部31のマスキングおよび弾性層形成部端部における塗りムラ防止の目的で、円筒状基体20の両端に、軸部31を覆う塗工用キャップ30を用いて塗工することが行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。塗工用キャップ30を用いることで、弾性層21を端部までムラなく塗工することができるとともに、軸部31への塗工液の付着を防止することができる。その後、弾性層形成部端部と塗工用キャップ30との境目で弾性層21を切断することで、所望のローラが得られるものである。なお、図中の円筒状基体20は、金属製パイプ22の両端に軸部31を形成したフランジ23を嵌合して、その外周に弾性層21を形成した構造である。
【特許文献1】特開平7−225525号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2002−82523号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2001−3928号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように塗工用キャップを用いて弾性層を塗工形成すると、図4(a)の拡大図中に矢印で示す、円筒状基体20(フランジ23)の端部と塗工用キャップ30との当接部分の隙間に弾性層形成用塗料が流れ込んで、塗工、裁断後に、同図(b)に示すように、円筒状基体20の端部に裁断カス40が付着する場合があった。このような裁断カス等の異物が付着していると、例えば、現像ローラにおいては、実機に搭載して使用した際に画像不良などを引き起こす原因となる場合があるが、裁断カスは完全に除去することが困難であるため、このような問題を生じないローラ製造技術の確立が求められていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、弾性層の塗工形成時における円筒状基体端部への塗料の付着を防止できる導電性ローラの製造方法を提供することにあり、また、弾性層端部における膜厚ムラやローラ端部への異物の付着がない導電性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、円筒状基体の外周に弾性層を形成するにあたり、あらかじめ円筒状基体の端部に切断除去可能な裁断しろを設けておくことで、上記問題を解消できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の導電性ローラの製造方法は、両端に軸部を有する円筒状基体の外周面に、少なくとも1層の弾性層を備える導電性ローラの製造方法において、
前記円筒状基体の外周面に前記弾性層を形成するに際し、該円筒状基体として、少なくとも一方の端部に前記外周面と同一外径の裁断しろを有するものを用い、前記弾性層を該裁断しろまで塗工形成した後、該裁断しろおよび該裁断しろ上の弾性層を切断除去することを特徴とするものである。
【0009】
本発明において、前記裁断しろは、前記円筒状基体の長手方向端部外周に沿って、中空環状に設けることが好ましい。また、前記裁断しろの長さは、0.3mm以上とすることが好ましく、前記裁断しろの長さを8mm以上として、前記弾性層の塗工形成時に塗工用キャップを使用しないことも好ましい。さらに、本発明においては、前記円筒状基体が、金属製パイプと、該金属製パイプの両端に嵌合されたフランジとからなり、前記裁断しろが該フランジに設けられていることが好ましい。さらにまた、前記フランジは、樹脂材料からなるものとすることが好ましい。
【0010】
また、本発明の導電性ローラは、上記本発明の導電性ローラの製造方法により製造されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記構成としたことにより、弾性層の塗工形成時における円筒状基体端部への塗料の付着を確実に防止することが可能となり、これにより、弾性層端部の膜厚ムラを防止するとともにローラ端部への異物の付着をも防止した導電性ローラが得られる導電性ローラの製造方法および導電性ローラを実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
本発明の導電性ローラの製造方法は、両端に軸部を有する円筒状基体の外周面に、少なくとも1層の弾性層を備える導電性ローラを製造する際の改良に係る技術である。
【0013】
本発明の製造方法においては、円筒状基体の外周面に弾性層を形成するに際し、かかる円筒状基体として、図1に示すように、端部に、上記外周面と同一外径の裁断しろ4を有するものを用いる。この裁断しろ4は、図中に符号Aで示す本来の弾性層形成部端部よりも長手方向外側に突出して設けられた部分であり、その外径が、円筒状基体10の本体部分、すなわち、弾性層形成部の外径と同一になるよう形成されている。円筒状基体10にこのような裁断しろ4をあらかじめ設けておき、弾性層をこの裁断しろ4まで塗工形成するものとすることで、従来の塗工用キャップを用いた場合のような、円筒状基体10の端部への裁断カスの付着を防止することができる。また、裁断しろ4を設けることで、弾性層端部の膜厚ムラの発生も防止できる。したがってその後、図2に示すように、裁断しろ4および裁断しろ4上の弾性層1を、裁断用部材50を用いて、符号Aで示す箇所で切断除去することで、膜厚ムラのない弾性層1を有し、円筒状基体10の端部に裁断カスの付着がない導電性ローラを、容易に得ることが可能となる。
【0014】
本発明において、裁断しろ4は、少なくとも一方のローラ端部に設ければ、本発明の効果を得ることができるが、好適には、両側端部に設ける。また、裁断しろ4の形状は、外径が円筒状基体10の外周面と同一外径に形成されているものであれば、特に制限されるものではなく、中実状に設けてもよいが、図示するように、円筒状基体10の長手方向端部外周に沿って、中空環状に設けることが好ましい。これにより、裁断しろの裁断、除去が容易となる。なお、この中空環状に設ける場合の裁断しろ4の厚みは、0.1mm以上とすることが好ましい。裁断しろ4の厚みが0.1mm未満であると、裁断しろの剛性不足や形状の形成不良が発生する場合がある。
【0015】
また、裁断しろ4の長さは、0.3mm以上、特には、0.3mm以上2mm以下とすることが好ましい。裁断しろ4が0.3mm以上ないと、弾性層形成後に裁断しろ4を裁断、除去する際に、裁断用器具50と円筒状基体10の端部とが干渉して、端部を損傷するなどの不良の発生原因となる場合がある。一方、裁断しろ4をあまり長くしても、それ以上の効果は得られず、かえってコスト高などの問題を生ずる。
【0016】
ここで、弾性層形成部端部における塗料の膜厚ムラ(塗料の盛り上がり)の最小寸法は8mm程度である。そのため、裁断しろ4が8mm未満の場合には、弾性層形成端部における膜厚ムラの影響を、裁断しろ4より長手方向内側の部分、すなわち、本来の弾性層形成部(端部Aよりも内側の部分)に及ぼす場合がある。したがって、本発明において、0.3mm以上8mm未満の範囲の長さの裁断しろ4を設けた場合、弾性層塗工形成時には、従来と同様に塗工用キャップ30を用いることが必要である(図2参照)。この場合の塗工用キャップ30としては、図示するように、外径が円筒状基体10の外径と同一であって、内径が軸部11に対し外嵌可能に形成されているものであれば、従来公知のものと同様のものを用いることができ、特に制限されるものではない。なお、この場合、円筒状基体10と塗工用キャップ30との間に従来と同様の塗料の染み込みが生ずるおそれがあるが、本発明においては、この塗料の染み込み部分は、裁断により除去される裁断部Aよりローラ長手方向外側となるため、この染み込みによる問題は生じない。
【0017】
一方、裁断しろ4の長さを8mm以上、特には、8mm以上10mm以下とした場合、弾性層の塗工形成時に塗工用キャップ30を使用しなくても、弾性層形成端部における膜厚ムラの影響を、弾性層形成部に及ぼすことがない。したがってこの場合、キャップレスでのローラ製造が可能となる。
【0018】
本発明の製造方法においては、円筒状基体10の端部に上記裁断しろを設けることのみが重要であり、それ以外の点については、常法に従い適宜実施することができ、特に制限されるものではない。例えば、本発明において、裁断用器具50としては、具体的には、刃物やレーザ、研磨機等を用いることができる。また、弾性層の形成方法については、特には、一対のダイヘッド間からの弾性層形成用塗料の吐出により弾性層の形成を行うダイコート法を用いる場合にも、裁断後に裁断カスによる問題が生じない点で、本発明はメリットが大きい。
【0019】
また、本発明の導電性ローラは、上記本発明の製造方法により製造されたものであればよく、これにより、弾性層端部の膜厚ムラやローラ端部への異物付着の発生を防止することができるものである。本発明のローラの具体的構成については、常法に従い適宜構成することができ、特に制限されるものではない。
【0020】
本発明のローラにおける円筒状基体とは、図示するように、円筒状基体本体部と、その長手方向両端から突出する軸部とを備えるものであればよく、その円筒状基体本体部の外周に、弾性層が設けられてローラが構成される。したがって、本発明においては、図示するような、金属製パイプ2と、その両端に嵌合されたフランジ3とからなる円筒状基体10のほか、図示はしないが、芯金等のシャフトの外周に円筒状基体本体を設けてなる円筒状基体を用いてもよい。前者の円筒状基体10の場合、フランジ3の端部、図示する例では外周部を延長して、その外周面と同一外径の裁断しろ4を設けることができる。また、後者の場合には、円筒状基体本体の端部を延長して、その外周面と同一外径の裁断しろを設ければよい。
【0021】
上記のうち前者の円筒状基体10に用いる金属製パイプ2の材質としては、良好な導電性を有する金属材料からなるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、鉄、ステンレススチール、アルミニウムやこれらを含む合金等を用いることができる。この金属製パイプ2の肉厚は、強度的に十分であるかぎり、軽量化の点で薄い方が好ましく、例えば、0.3〜2mmである。
【0022】
この場合の裁断しろを構成するフランジ3の材料としては、ローラの用途等に応じて、各種金属材料や樹脂材料等、いかなる材質のものを用いてもよいが、裁断を容易とする観点からは、樹脂材料からなることが好適である。特に、フランジの場合には、駆動力伝達部の機能上、強度に優れた材料を用いることが好適であり、具体的には例えば、ポリアセタール(POM)、ポリアミド等を挙げることができる。
【0023】
また、後者の場合のシャフトとしては、例えば、硫黄快削鋼やアルミニウム、ステンレス鋼等に、ニッケル、亜鉛めっき等を施したものを用いることができる。
【0024】
この場合の裁断しろを構成する円筒状基体本体の材料としては、樹脂に導電剤を分散させたものが用いられる。その樹脂材料としては、適切な強度を有するものであればよく、汎用樹脂やエンジニアリングプラスチックの中から適宜選定することができ、特に制限されるものではない。具体的には、エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセタール、ポリアミド樹脂(例えば、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド12、ポリアミド4・6、ポリアミド6・10、ポリアミド6・12、ポリアミド11、ポリアミドMXD6(メタキシレンジアミンとアジピン酸とから得られるポリアミド)等)、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレンなどを挙げることができる。また、汎用樹脂としては、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンなどが挙げられる。その他、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等を用いることもできる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記の中でも、特にエンジニアリングプラスチックが好ましく、さらに、ポリアセタール、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート等が好適である。これら材料は、熱可塑性で成形性に優れ、かつ、機械的強度に優れるためである。より好適には、ポリアミド6・6、ポリアミドMXD6、ポリアミド6・12、ポリブチレンテレフタレート、またはこれらの混合樹脂を用いる。なお、熱硬化性樹脂を用いることも可能であるが、リサイクル性を考慮すると、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
導電剤としては、樹脂材料中に均一に分散することができるものであれば各種のものを使用することが可能であり、カーボンブラック粉末、グラファイト粉末、カーボンファイバーやアルミニウム、銅、ニッケルなどの金属粉末、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物粉末、導電性ガラス粉末などの粉末状導電剤が好ましく用いられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この導電剤の配合量は、ローラの用途等に応じて適切な抵抗値が得られるように適宜選定すればよく、特に制限されるものではない。通常は、配合材料全体に対して5〜40重量%、好適には、5〜20重量%である。
【0027】
なお、この円筒状基体本体の材料中には、所望に応じ、補強や増量等を目的として、各種導電性または非導電性の繊維状物やウィスカー、フェライトなどを配合することができる。繊維状物としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維などの繊維を挙げることができ、ウィスカーとしては、チタン酸カリウムなどの無機ウィスカーを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの配合量は、用いる繊維状物やウィスカーの長さおよび径、主体となる樹脂材料の種類や目的とするローラ強度等に応じて適宜選定することができ、通常は配合材料全体の5〜70重量%、好適には10〜20重量%である。
【0028】
上記円筒状基体の外周面に形成される弾性層1の材料としては、紫外線硬化型樹脂または電子線硬化型樹脂を好適に用いることができる。かかる紫外線硬化型樹脂または電子線硬化型樹脂としては、具体的には例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。また、これらの樹脂に特定の官能基を導入した変性樹脂を用いてもよい。
【0029】
上記の中でも、特に、(メタ)アクリレートオリゴマーを含む(メタ)アクリレート系樹脂組成物が好適である。このような(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマー等、また、フッ素系、シリコーン系のアクリルオリゴマーなどを挙げることができる。
【0030】
上記(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールとε−カプロラクトンの付加物等の化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により、あるいはポリイソシアネート化合物および水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物をウレタン化することにより合成することができる。
【0031】
ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオール、イソシアネート化合物と
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とをウレタン化することによって得ることが
できる。
【0032】
エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーの例としては、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物であればいずれでもよいが、中でもベンゼン環、ナフタレン環、スピロ環、ジシクロペンタジエン、トリシクロデカン等の環状構造を有し、かつグリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の反応生成物が好ましい。
【0033】
さらに、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマーおよびポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマーは、各々に対応するポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオール)と(メタ)アクリル酸との反応によって得ることができる。
【0034】
これら弾性層形成用の樹脂組成物には、所望に応じ、粘度調整のために重合性二重結合を有する反応性希釈剤を配合する。このような反応性希釈剤としては、アミノ酸や水酸基を含む化合物に(メタ)アクリル酸がエステル化反応およびアミド化反応で結合した構造の、例えば、単官能、2官能または多官能の重合性化合物等を使用することができる。これらの希釈剤は、(メタ)アクリレートオリゴマー100重量部当たり、通常、10〜200重量部にて用いることが好ましい。
【0035】
また、この樹脂組成物には、電子導電剤やイオン導電剤等の各種導電剤を配合することができる。電子導電剤としては、例えば、ケッチェンブラック,アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF,ISAF,HAF,FEF,GPF,SRF,FT,MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラ−(インク)用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープの酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属および金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、カーボンウイスカー、黒鉛ウイスカー、炭化チタンウイスカー、導電性チタン酸カリウムウイスカー、導電性チタン酸バリウムウイスカー、導電性酸化チタンウイスカー、導電性酸化亜鉛ウイスカー等の導電性ウイスカー等が挙げられる。これらの電子導電剤の配合量は、樹脂100重量部に対し100重量部以下、例えば、1〜100重量部、特に1〜80重量部、とりわけ10〜50重量部であることが好適である。
【0036】
但し、カーボン系導電剤を紫外線硬化型樹脂に含有する場合には、その配合量を、樹脂100重量部に対し20重量部以下、特に10重量部以下、とりわけ5重量部以下とすることが好ましい。カーボン系導電剤は紫外線を吸収しやすいため、その配合量が20重量部を超えると、導電剤の量が多いほど紫外線が層の奥まで到達しにくくなり、そのため紫外線硬化反応の進行が十分進まなくなってしまうおそれがある。
【0037】
また、イオン導電剤としては、例えば、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウ弗化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩;リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウ弗化水素酸塩、硫酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩等が挙げられる。これらイオン導電剤の配合量は、樹脂100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、特には0.05〜5重量部の範囲で好適に用いられる。
【0038】
なお、上記導電剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、この場合、電子導電剤とイオン導電剤とを組み合わせることも可能である。
【0039】
なお、導電剤が、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、チタン酸バリウムおよびニッケル、銅などの金属および金属酸化物のような透明導電剤であると、紫外線が透過しやすく、紫外線硬化型樹脂の重合を妨げないという効果が得られる。この透明導電剤の配合量は、樹脂100重量部に対し、通常100重量部以下、特には1〜80重量部、さらには10〜50重量部の範囲が好適である。
【0040】
弾性層に紫外線硬化型樹脂を用いる場合、重合開始剤を含有することが好ましい。紫外線重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エステル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノンおよび3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4−ジメトキシベンゾフェノン、4,4−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジルおよびベンジルメチルケタール等のベンジル誘導体、ベンゾインおよびベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンゾインイソプロピルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、チオキサントンおよびチオキサントン誘導体、フルオレン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルホリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。かかる紫外線重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリレートオリゴマー100重量部当たり0.1〜10重量部が好ましい。
【0041】
弾性層を構成する樹脂組成物には、上記必須成分以外に、必要に応じて、上記の光重合開始剤による光重合反応を促進するために、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の第3級アミン、トリフェニルホスフィン等のアルキルホスフィン系光重合促進剤、p−チオジグリコール等のチオエーテル系光重合促進剤などを添加してもよい。これらの化合物の添加量は、通常、(メタ)アクリレートオリゴマー100重量部当たり0.01〜10重量部の範囲が好ましい。
【0042】
また、少なくとも最外側に位置する弾性層に関しては、これを構成する樹脂組成物に、フッ素および珪素のうちいずれか一方または双方を含有することが好ましく、これにより、最外層の弾性層の表面エネルギーを低減することができ、その結果、ローラ表面の摩擦抵抗を低下させるとともに、トナー離型性も向上することができ、長期間の使用における摩耗を低減して、耐久性を向上させることができる。
【0043】
フッ素を含む紫外線硬化型樹脂の原料としては、重合可能な炭素原子間二重結合を有するフッ素含有化合物を含有することが好ましく、かかる重合可能な炭素原子間二重結合を有するフッ素含有化合物のみからなるものとしてもよく、また、重合可能な炭素原子間二重結合を有するフッ素含有化合物と他種の重合可能な炭素原子間二重結合を有する化合物とをブレンドした組成物よりなるものであってもよい。
【0044】
重合可能な炭素原子間二重結合を有するフッ素含有化合物としては、フルオロオレフィ
ン類、フルオロ(メタ)アクリレート類が好適である。
【0045】
フルオロオレフィン類としては、1ないしすべての水素原子がフッ素と置換された炭素数2〜12のものが好適であり、具体的には、ヘキサフルオロプロペン[CFCF=CF,フッ素含有率76重量%]、(パーフルオロブチル)エチレン[F(CFCH=CH,フッ素含有率69重量%]、(パーフルオロヘキシル)エチレン[F(CFCH=CH,フッ素含有率71重量%]、(パーフルオロオクチル)エチレン[F(CFCH=CH,フッ素含有率72重量%]、(パーフルオロデシル)エチレン[F(CF10CH=CH,フッ素含有率73重量%]、クロロトリフルオロエチレン[CF=CFCl,フッ素含有率49重量%]、1−メトキシ−(パーフルオロ−2−メチル−1−プロペン[(CFC=CFOCH,フッ素含有率63重量%]、1,4−ジビニルオクタフルオロブタン[(CF(CH=CH,フッ素含有率60重量%]、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン[(CF(CH=CH,フッ素含有率64重量%]、1,8−ジビニルヘキサデカフルオロオクタン[(CF(CH=CH,フッ素含有率67重量%]を例示することができる。
【0046】
フルオロ(メタ)アクリレート類としては、1ないしすべての水素原子がフッ素と置換された炭素数5〜16のフルオロアルキル(メタ)アクリレートが好適であり、具体的には、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート(CFCHOCOCH=CH、フッ素含有率34重量%)、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート(CFCFCHOCOCH=CH、フッ素含有率44重量%)、F(CF)4CHCHOCOCH=CH(フッ素含有率51重量%)、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート[CFCHOCOCH=CH,フッ素含有率37重量%]、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート[CFCFCHOCOCH=CH,フッ素含有率47重量%]、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート[F(CFCHCHOCOCH=CH,フッ素含有率54重量%]、3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート[F(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH,フッ素含有率49重量%]、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート[F(CFCHCHOCOCH=CH,フッ素含有率59重量%]、3−(パーフルオロヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート[F(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH,フッ素含有率55重量%]、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート[F(CFCHCHOCOCH=CH,フッ素含有率62重量%]、3−(パーフルオロオクチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート[F(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH,フッ素含有率59重量%]、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート[F(CF10CHCHOCOCH=CH,フッ素含有率65重量%]、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルアクリレート[(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH,フッ素含有率57重量%]、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート[(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH,フッ素含有率52重量%]、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルアクリレート[(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH,フッ素含有率61重量%]、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート[(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH,フッ素含有率57重量%]、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルアクリレート[(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH,フッ素含有率64重量]、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート[(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH,フッ素含有率60重量%]、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルアクリレート[H(CFCHOCOCH=CH,フッ素含有率41重量%]、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート[H(CFCHOCOCH=CH,フッ素含有率53重量%]、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート[H(CFCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率59重量%]、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリレート[H(CFCHOCOCH=CH,フッ素含有率63重量%]、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルアクリレート[(CFCHOCOCH=CH,フッ素含有率51重量%]、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルアクリレート[CFCHFCFCHOCOCH=CH,フッ素含有率48重量%]、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート[CFCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率34重量%]、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート[CFCFCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率44重量%]、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート[F(CFCHCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率51重量%]、3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート[F(CFCHCH(OH)CHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率47重量%]、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート[F(CFCHCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率57重量%]、3−(パーフルオロヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート[F(CFCHCH(OH)CHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率53重量%]、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート[F(CFCHCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率61重量%]、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート[F(CFCHCH(OH)CHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率57重量%]、2−(パーフルオロデシル)エチルメタクリレート[F(CF10CHCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率63重量%]、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチルメタクリレート[(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率55重量%]、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート[(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率51重量%]、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルメタクリレート[(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率59重量%]、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート[(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率56重量%]、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタクリレート[(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率62重量%]、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート[(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率59重量%]、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルメタクリレート[H(CFCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率51重量%]、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート[H(CFCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率51重量%]、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート[H(CFCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率57重量%]、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート[H(CFCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率61重量%]、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルメタクリレート[(CFCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率48重量%]、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルメタクリレート[CFCHFCFCHOCOC(CH)=CH,フッ素含有率46重量%]などを例示することができる。
【0047】
上記の重合可能な炭素原子間二重結合を有するフッ素含有化合物は、モノマー、オリゴマー、または、モノマーとオリゴマーとの混合物であることが好ましい。オリゴマーとしては2〜20量体が好ましい。
【0048】
この重合可能な炭素原子間二重結合を有するフッ素含有化合物とブレンドされてもよい他種の重合可能な炭素原子間二重結合を有する化合物としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリレートモノマー若しくはオリゴマー、または、モノマーとオリゴマーとの混合物が好適である。
【0049】
この(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、ウレタン系(メタ)アクリレート、エポキシ系(メタ)アクリレート、エーテル系(メタ)アクリレート、エステル系(メタ)アクリレート、ポリカーボネート系(メタ)アクリレート等のモノマーまたはオリゴマー、また、シリコーン系の(メタ)アクリルのモノマーまたはオリゴマーなどを挙げることができる。
【0050】
上記(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールとε−カプロラクトンの付加物等の化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により、あるいはポリイソシアネート化合物および水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物をウレタン化することにより合成することができる。
【0051】
ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオール、イソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とをウレタン化することによって得られる。
【0052】
また、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーの例としては、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物であればいずれでもよいが、中でもベンゼン環、ナフタレン環、スピロ環、ジシクロペンタジエン、トリシクロデカン等の環状構造を有し、かつ、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の反応生成物が好ましい。
【0053】
さらに、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマーおよびポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマーは、各々に対応するポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオール)と(メタ)アクリル酸との反応によって得ることができる。
【0054】
また、珪素を含む紫外線硬化型樹脂を形成する原料としては、重合可能な炭素原子間二重結合を有する珪素含有化合物を含有することが好ましく、かかる重合可能な炭素原子間二重結合を有する珪素含有化合物のみからなるものとしてもよく、また、重合可能な炭素原子間二重結合を有する珪素含有化合物と他種の重合可能な炭素原子間二重結合を有する化合物とをブレンドした組成物よりなるものであってもよい。
【0055】
重合可能な炭素原子間二重結合を有する珪素含有化合物としては、両末端反応性シリコーンオイル類、片末端反応性シリコーンオイル類、(メタ)アクリロキシアルキルシラン類が好適である。反応性シリコーンオイル類としては、末端に(メタ)アクリル基を導入したものが好ましい。
【0056】
本発明に好適に用いられる珪素含有化合物の具体例を以下に示す。
下記の表1中に示す信越化学工業(株)製 両末端反応性シリコーンオイル(下記式(1)で示される官能基を有する)である。

【0057】
【表1】

【0058】
下記の表2中に示す信越化学工業(株)製 片末端反応性シリコーンオイル(下記式(2)で示される構造を有する)である。

(上記式(2)中、Rはメチル基またはブチル基であり、Rは前記式(1)で示される官能基である)
【0059】
【表2】

【0060】
下記の表3中に示す東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製 両末端メタクリレート変性シリコーンオイル(下記式(3)で示される構造を有する)である。

【0061】
【表3】

【0062】
下記の表4中に示す東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製 片末端メタクリレー
ト変性シリコーンオイル(下記式(4)で示される構造を有する)である。

【0063】
【表4】

【0064】
下記の表5中に示す信越化学工業(株)製 (メタ)アクリロキシアルキルシラン類(順に、下記式(5)〜(11)でそれぞれ示される構造を有する)である。


【0065】
【表5】

【0066】
これらの珪素含有化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、他の珪素を含有しない炭素間二重結合を有する化合物と併用してもよい。
【0067】
また、これらの重合可能な炭素間二重結合を有する珪素含有化合物および他の珪素を含有しない炭素間二重結合を有する化合物は、モノマー、オリゴマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物として好ましく用いられる。
【0068】
この重合可能な炭素原子間二重結合を有する珪素含有化合物とブレンドされてもよい他種の重合可能な炭素原子間二重結合を有する化合物としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリレートモノマー若しくはオリゴマー、または、モノマーとオリゴマーとの混合物が好適である。オリゴマーとしては、2〜20量体が好ましい。
【0069】
この(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、ウレタン系(メタ)アクリレート、エポキシ系(メタ)アクリレート、エーテル系(メタ)アクリレート、エステル系(メタ)アクリレート、ポリカーボネート系(メタ)アクリレート等、また、フッ素系の(メタ)アクリルのモノマーまたはオリゴマーなどを挙げることができる。
【0070】
上記(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピ
レングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビスフェノールA型エポキシ
樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールとε−カプロラクトンの付
加物等の化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により、あるいはポリイソシアネート化
合物および水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物をウレタン化することにより合成
することができる。
【0071】
ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオール、イソシアネート化合物と
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とをウレタン化することによって得ることが
できる。
【0072】
エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーの例としては、グリシジル基を有する化合
物と(メタ)アクリル酸との反応生成物であればいずれでもよいが、中でもベンゼン環、
ナフタレン環、スピロ環、ジシクロペンタジエン、トリシクロデカン等の環状構造を有し
、かつ、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の反応生成物が好ましい。
【0073】
さらに、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレー
トオリゴマーおよびポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマーは、各々に対応
するポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネ
ートポリオール)と(メタ)アクリル酸との反応によって得ることができる。
【0074】
弾性層を構成する樹脂組成物には、その他必要に応じて種々の添加剤を適量添加することができる。また、弾性層の厚さは、特に制限されるものではないが、通常1〜500μm、特に3〜200μm、とりわけ5〜100μm程度とすることが好ましい。厚さが1μm未満であると、長期使用時の摩擦により十分に表面の帯電性能を確保することができなくなる場合があり、一方500μmを超えると、ローラ表面が硬くなり、トナーにダメージを与えて感光体等の潜像保持体や成層ブレードへのトナーの固着が発生して画像不良となる場合がある。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
図1に示すような、金属製パイプ2(材質:アルミA6063,長さ:230mm,厚み0.7mm,外径φ18mm)の両端に軸部11を有するフランジ3(材質:POM(ポリプラスチックス(株)製,EB−10))が嵌合されてなる円筒状基体10の外周面に、弾性層形成用塗料をダイコータで塗工することにより、膜厚1mmにて、弾性層1の形成を行った。
【0076】
弾性層形成用塗料としては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーUV3000B(日本合成化学工業(株)製,官能基数:2,分子量:18000)65重量部、(メタ)アクリレートモノマーL−A(ラウリルアクリレート,共栄社化学(株)製,官能基数:1,Tg:−3℃)25重量部およびA−SA(β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート,新中村化学(株)製,官能基数:1,Tg:−10℃)10重量部、光重合開始剤IRGACURE184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)0.5重量部、並びに導電剤MP−100(昭島化学工業(株)製)からなる混合物を、攪拌機にて、液温70℃、60回転/分で1時間攪拌混合し、ろ過して得られるUV硬化樹脂原料を用いた。弾性層形成用塗料は、塗工しながらスポットUV照射を施すことで形状を保てる程度まで硬化させた後、さらに、窒素雰囲気下で、回転させながらUV照射強度700mW/cmにて5秒間UV照射を施すことで硬化させ、弾性層1を形成した。
【0077】
フランジ3としては、図示するように、その端部を延長する形で、外周に長さ2mm×肉厚0.2mmの中空環状の裁断しろ4を設けたものを用いた。したがってこの裁断しろ4の外径は、金属製パイプ2およびフランジ2と同一である。また、塗工時には、図示するように、塗工用キャップ30(材質:ポリプロピレン,長さ:8mm,外径φ18mm)を用い、弾性層1の形成は、弾性層形成端部Aより7mm程度外側まで行った。弾性層1の形成後、裁断しろ4の部分を、刃物を用いて切断除去することにより、現像ローラとしての導電性ローラを得た。
【0078】
得られたローラにつき目視観察したところ、弾性層1端部の膜厚ムラやローラ端部への裁断カスの付着はなく、良品であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る円筒状基体の一例を示す幅方向断面図である。
【図2】本発明の導電性ローラの製造方法に係る概略説明図である。
【図3】従来の導電性ローラの製造方法に係る概略説明図である。
【図4】(a)は、従来の導電性ローラの製造方法に係るローラ端部の拡大断面図であり、(b)は、得られる導電性ローラ端部に付着した裁断カスを示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0080】
1,21 弾性層
2,22 金属製パイプ
3,23 フランジ
4 裁断しろ
10,20 円筒状基体
11,31 軸部
30 塗工用キャップ
40 裁断カス
50 裁断用部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に軸部を有する円筒状基体の外周面に、少なくとも1層の弾性層を備える導電性ローラの製造方法において、
前記円筒状基体の外周面に前記弾性層を形成するに際し、該円筒状基体として、少なくとも一方の端部に前記外周面と同一外径の裁断しろを有するものを用い、前記弾性層を該裁断しろまで塗工形成した後、該裁断しろおよび該裁断しろ上の弾性層を切断除去することを特徴とする導電性ローラの製造方法。
【請求項2】
前記裁断しろが、前記円筒状基体の長手方向端部外周に沿って、中空環状に設けられている請求項1記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項3】
前記裁断しろの長さを0.3mm以上とする請求項1または2記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項4】
前記裁断しろの長さを8mm以上とし、前記弾性層の塗工形成時に塗工用キャップを使用しない請求項3記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項5】
前記円筒状基体が、金属製パイプと、該金属製パイプの両端に嵌合されたフランジとからなり、前記裁断しろが該フランジに設けられている請求項1〜4のうちいずれか一項記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項6】
前記フランジが樹脂材料からなる請求項5記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか一項記載の導電性ローラの製造方法により製造されたことを特徴とする導電性ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−86010(P2009−86010A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252128(P2007−252128)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】