説明

導電性ローラの製造方法

【課題】 リングコートにおいて、導電性粒子を含有してなる液状導電性ゴム材料を軸芯体の周囲に均一に塗布した導電性ゴム層の抵抗ムラを低減する塗工ヘッドを提供する。
【解決手段】 リングコートに用いる塗工ヘッドにおいて、該塗工ヘッド内の流路幅を一定に保ちながら、流路の断面積が所定の要件を満たすことで、導電性粒子の凝集物生成の低減、環状流路に至るまでに与えられた液状導電性ゴム材料の残留応力の緩和及び周方向に均一に流動可能となる実質的な液絞り効果の役割を高次元で達成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター、複写機の如き電子写真方式の画像形成装置及び電子写真プロセスカートリッジに用いられる導電性ローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
接触現像方式の電子写真装置においては、現像ローラと感光体、現像ローラとトナー規制部材は、それらの間にトナーが介在して圧接している。感光体に現像されないトナーは、トナー塗布ローラによって剥ぎ取られ、容器内で攪拌され再びトナー塗布ローラによって現像ローラ上に搬送される。これらの工程を繰り返すうちにトナーは大きなストレスを受けるという結果になる。そこで、トナーへのストレスを軽減するという目的から、軸芯体の周囲に導電性ゴム層を設けた構成の現像ローラが用いられることが多い。さらに必要に応じて、導電性ゴム層の外周側に表面性を付与するために各種の樹脂溶液を塗布して、表面層を設けた構成の導電性ローラもある。また、現像ローラは、感光体との接触状態を安定に保つことができないとトナーの現像量がばらついたり、感光体に対する圧力分布がばらつき、画像に悪い影響を及ぼすことになるため、高い寸法精度が必要とされる。また感光体と接触させて感光体を均一に帯電させるための帯電ローラも、感光体を均一に帯電させる必要から、高い寸法精度が必要とされる。
【0003】
高精度な導電性ローラを製造する方法として、円筒状の塗工ヘッドを用いた製造方法が開示されている(特許文献1参考)。これによれば、より簡易な装置で軸芯体外周上に液状導電性ゴム材料を直接塗工して、均一な厚さを有する導電性ゴム層を形成することができる。
【0004】
一般に、特許文献1の如き製造方法を用いて導電性ローラを製造する場合、塗工ヘッドの吐出口から吐出する材料の流量を周方向において均一にする必要がある。そのために、周方向に流動する力を材料に与えるための液絞り流路を有した塗工ヘッドが用いられる。これによれば、塗工ヘッド内を流動する材料の流量が、周方向に亘り均一になり、その後、吐出口に進むことで、吐出する材料の流量が周方向において均一になる。
【0005】
しかし液絞り流路では、材料に強いせん断力を加えるため、導電性粒子の凝集状態が変化し易い。導電性粒子の凝集状態が変化すると、導電性ローラの周方向及び軸方向において、抵抗にムラが生じる。これが、画像濃度ムラを引き起こす原因となる。そのため、液絞り流路を用いることは好ましくない。特許文献2では、塗工ヘッド内の材料の流れを改善し、強いせん断力が加わる時間を短くする方法が開示されている。ただ、強いせん断力が加わる時間が短くなっても、材料には強いせん断力が加わるため、やはり導電性粒子の凝集状態が変化するため、濃度ムラを引き起こす原因となり好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−130589号公報
【特許文献2】特開2006−106571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液絞り流路を有した塗工ヘッドを用いた製造方法では、吐出される材料の流量が周方向において均一に亘り均一になるので、円筒状軸芯体の周囲に、均一な厚さの導電性ゴム層を有した導電性ローラを製造することが出来る。
【0008】
しかしながら、上記の製造方法で製造した導電性ローラを現像ローラとして接触現像方式の電子写真装置に組み込んだ場合、通常の環境では何ら問題なく良質な画像を得ることが出来るが、低温低湿の環境で耐久試験を行った後は感光体に供給するトナーの量が不均一となり画像濃度ムラを生じた。また、帯電ローラとして電子写真装置に組み込んだ場合においても、やはり低温低湿の環境で耐久試験を行った後、感光体を均一に帯電することが困難になり、画像濃度ムラを生じた。
【0009】
そこで、濃度ムラが発生した導電性ローラを詳細に調査した結果、導電性粒子であるカーボンブラックの凝集物が導電性ローラ内に不均一に存在しており、これによって導電性ローラに抵抗ムラが生じていることを見出した。低温低湿の環境では、大気中の水分量が少ないため、帯電しやすい環境となっているため、抵抗ムラがより顕著になる。
【0010】
このような抵抗ムラが生じる理由は、以下のように考えられる。すわなち、液絞り流路は、急激に流路幅が狭くなる箇所であるため、ここを通過する液状導電性ゴム材料の流れの向きと速さが変化する。これにより、液状導電性ゴム材料に含まれる導電性粒子であるカーボンブラック同士が衝突し、カーボンブラックの凝集物を生成し易くなる。液状導電性ゴム材料が最も絞られた部分を通過するときには、流路幅が狭いため液状導電性ゴム材料に強いせん断力が加わる。そのため、凝集物となったカーボンブラックの凝集状態が変化する。また、液絞り流路を通過後は、液状導電性ゴム材料に与えられた残留応力を緩和する必要性から、流路幅を広げる構成になっている。この流路幅が広い箇所で再び材料の流れの向きと速さが不規則に変化した乱流になる。このため、吐出されるカーボンブラックの凝集物の存在割合が導電性ローラの周方向及び長手方向で微小なムラとなる。導電性ローラとなったときに、カーボンブラックの凝集物の微小なムラが、低温低湿な環境において画像濃度ムラとなるのではないかと考えられる。
【0011】
本発明の目的は、上記の如き低温低湿の環境で行った耐久試験後においても良質な画像を得ることが出来る導電性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、導電性粒子を含有してなる液状導電性ゴム材料を外部から供給するための1つの供給口と、該液状導電性ゴム材料を環状に分配する分配室と、該液状導電性ゴム材料を内周面に吐出するための環状の吐出口と、該分配室から該吐出口に至る環状流路を有する環状塗工ヘッドを用いて、円筒状軸芯体の周囲に導電性ゴム層を有する導電性ローラを製造する方法において、該環状流路の幅が一定であり、かつ、該環状流路の断面積が、(該環状流路の入口断面積:Sa)>(該吐出口の断面積:Sb)、かつ、(該環状流路内での最大断面積:Sc)>(Sa+Sb)であり、かつ、(該環状流路の入口部から該環状流路内での最大断面積部までの流路長:La)が(該入口部から該吐出口までの全流路長:L)の50%以上となることを特徴とする導電性ローラの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る導電性ローラの製造方法によれば、導電性粒子の凝集物生成を低減することができることにより、抵抗ムラに起因する画像濃度ムラの発生を防止できる。また本発明では、吐出口から吐出される液状導電性ゴム材料の流量が周方向において均一になり、かつ、液状導電性ゴム材料に与えられている残留応力の緩和することができる。これにより、導電性ローラの形状悪化を防止することができ、形状に起因する画像不良の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に用いることのできる塗工装置の例を示す模式図である。
【図2】液絞り流路を有した塗工ヘッドの例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る塗工ヘッドの例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る塗工ヘッドの環状流路の流路長及び断面積を説明する断面図である。
【図5】本発明に用いることができる塗工ヘッドの例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る効果が充分に得ることができない塗工ヘッドの例を示す断面図である。
【図7】本発明に係る導電性ローラを示す断面図である。
【図8】本発明に係る画像形成装置の例を説明するための模式的断面図である。
【図9】本発明に係る導電性ローラの抵抗を測定する装置の概略図である。
【図10】本発明に係る導電性ローラの形状精度を測定する箇所を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0016】
本発明の導電性ローラの製造方法に好適に用いることができる環状塗工ヘッド(以下、塗工ヘッド)を有する導電性ローラの製造装置(以下、リングコート機)の概略図を図1に示す。
【0017】
このリングコート機は、塗工ヘッド側架台31の上に略垂直に塗工ヘッド側コラム32が取り付けられ、塗工ヘッド側架台31と塗工ヘッド側コラム32の上部に塗工ヘッド側精密ボールネジ33が略垂直に取り付けられている。塗工ヘッド側精密ボールネジ33と塗工ヘッド側ガイド43が平行となるように塗工ヘッド側コラム32に2本取り付けられている。塗工ヘッド側ステージ34は塗工ヘッド側ガイド43と塗工ヘッド側精密ボールネジ33とを連結し、サーボモータ35よりプーリ36を介して回転運動が伝達され昇降できるようになっている。塗工ヘッド側コラム32には塗工ヘッド固定テーブル44が取り付けられている。塗工ヘッド固定テーブル44には、塗工ヘッド38が取り付けられている。
【0018】
塗工ヘッド側ステージ34には軸芯体保持軸ブラケット37が取り付けられる。軸芯体保持軸ブラケット37には、軸芯体102を保持し固定する軸芯体下保持軸39が、略垂直に取り付けられている。また、逆側のローラの軸芯体102を保持する軸芯体上保持軸40の中心軸が軸芯体保持軸ブラケット37の上部に取り付けられ、軸芯体上保持軸40は軸芯体下保持軸39に対向して略同心になるように配置して軸芯体102を保持している。
【0019】
塗工ヘッド38の中心と、軸芯体下保持軸39の中心と軸芯体上保持軸40の中心が、軸方向に一直線上に並ぶように配置されている。
【0020】
液状導電性ゴム材料の供給口41は、液状導電性ゴム材料搬送用の第1の配管42を介してシリンダ53に接続されている。シリンダ53はシリンダ側架台45上に取り付けられており、シリンダ側架台45上には略垂直にシリンダ側コラム46が取り付けられている。シリンダ側架台45とシリンダ側コラム46の上部にはシリンダ側精密ボールネジ47が略垂直に取り付けられており、シリンダ側ガイド51がシリンダ側精密ボールネジ47と平行してシリンダ側コラム46に2本取り付けられている。シリンダ側ステージ48が精密ボールネジと連結して取り付けられておりサーボモータ35よりプーリ36を介して回転運動が伝達され昇降できるようになっている。シリンダ側ステージ48にはピストンブラケット49が備えられており、該ブラケットにはピストン54が備えられている。該ピストン外周はシリンダ53内面に密接して往復動可能に配されている。
【0021】
シリンダ53は第2の配管50を介して材料供給ポンプ(以下、ポンプ 不図示)に接続されている。ポンプは、混合ミキサー、材料定量吐出装置、材料タンク等を備え、定量(単位時間当たりの量が一定)の液状導電性ゴム材料を吐出可能としている。液状導電性ゴム材料は材料タンクから、材料定量吐出装置により一定量計量され、混合ミキサーで混合される。その後、材料供給ポンプにより混合された液状導電性ゴム材料は、第2の配管50を経由して、シリンダ53に送られる。シリンダ53内に充填された液状導電性ゴム材料は、ピストン54が下降することにより押出され、第1の配管42を介して供給口41へ送られる。
【0022】
液状導電性ゴム材料が供給口41に送り込まれてから塗工ヘッド38の吐出口より吐出されるまでの一連の流れを従来技術の模式図である図2を用いて説明する。塗工ヘッド38は中空円筒形の内リング60と供給口41を一つ有する中空円筒形の外リング61が、中空円筒形のキャップリング62を保持することによって構成されている。内リング60と外リング61が同軸に組み合わされ、外リング61にキャップリング62を保持させることにより、また、内リング60及び外リング61によって、液状導電性ゴム材料を環状に分配するための円周溝状の分配室63が設けられている。分配室63内は、次に説明する環状流路64及び液絞り流路69によって液圧を所望圧だけ上昇させ、液状導電性ゴム材料が周方向に流動する箇所である。
【0023】
内リング60と外リング61が同軸に組み合わされ、外リング61にキャップリング62を保持させることにより、環状流路64が構成される。環状流路の流路幅65は、通常0.1mm〜5.0mm、より好ましくは、0.5mm〜2.0mmに設定される。環状流路64と分配室63は連通しており、周方向に円周溝状である箇所が分配室63とし、それ以外の箇所を環状流路64とする。
【0024】
供給口41より送り込まれた液状導電性ゴム材料は、塗工ヘッド38内の分配室63において環状に分配され、分配室63に連設された環状流路64を通り、塗工ヘッド38の内周面に設けられた環状の吐出口より吐出される。
【0025】
軸芯体102に塗布される液状導電性ゴム材料を一定にさせるために、塗工ヘッドからの吐出量とシリンダ53からの供給量を一定にする。これによって、軸芯体102は塗工ヘッド38に対して相対的に軸方向に上方へ移動し、軸芯体102の外周上に液状導電性ゴム材料からなる円筒形状(ローラ形状)の導電性ゴム層101が形成される。
【0026】
従来技術である図2に示す塗工ヘッド38は、環状流路の流路幅65が急激に狭くなる液絞り流路69を有した構成である。液絞り流路69の役割は、吐出口から吐出される液状導電性ゴム材料の流量が周方向において均一になるためである。つまり、液絞り流路69により、液状導電性ゴム材料が吐出口方向に進みにくくなり、周方向に回り込む。その後吐出口方向に進むことによって、環状の吐出口から吐出される液状導電性ゴム材料の流量が周方向において均一になる。
【0027】
この液絞り流路69では、狭い流路内を流れる液状導電性ゴム材料の向きと速さが変化するため、隣接するカーボンブラック同士が衝突し、凝集物を生成し易くなる。液絞り流路69を通過する際は、強いせん断力によってカーボンブラックの凝集状態が変化し、その状態で液絞り流路69を通過する。その後、流路幅が広くなる箇所で材料が流れる方向と速さが不規則な乱流になる。そのため、吐出された液状導電性ゴム材料が導電性ゴム層101となったときに、カーボンブラックの凝集物の存在状態が周方向及び長手方向において微小なムラになる。これが低温低湿な環境で導電性ローラ104を測定すると、乾燥した環境のためカーボンブラックの凝集物が存在している箇所と存在していない箇所で導電性ローラに流れる電流値が異なり、結果として導電性ローラ104全体の抵抗にムラが生じた。
【0028】
本発明では、上記の課題を解決するために、カーボンブラックの凝集物生成を低減するものである。さらに、カーボンブラックの凝集物生成の低減に加えて、吐出口から液状導電性ゴム材料の流量が周方向において均一に吐出される。また、液状導電性ゴム材料がリングコート機から塗工ヘッド38に至るまでに与えられた応力が残留応力となることで、吐出後に導電性ローラの形状が悪化しないことも高次元で達成するものである。
【0029】
以下に、本発明に係わる塗工ヘッド38について図3及び図4を用いて詳細に説明する。
【0030】
図3に示す本発明に係わる塗工ヘッド38と、図2で説明した従来の塗工ヘッド38の構成が同じ部分は図2の説明を援用し、従来の塗工ヘッド38と異なる点のみ以下に説明する。
【0031】
図4に示すように環状流路64の流路幅65は、常に一定の幅で保たれている。環状流路64を流れる液状導電性ゴム材料が吐出口に向かう方向に対して垂直な面で切断したときに形成される環状流路64の切断面を環状流路64の断面積とすると、分配室63と環状流路の接点である図4のa、b点を結ぶ直線を描く。線分abを塗工ヘッド38の中心軸を中心に回転させたときに得られる面(A面)の面積を入口断面積(Sa)66と定義する。環状流路64の出口である図4のc、d点を結ぶ直線を描く。線分cdを塗工ヘッド38の中心軸を中心に回転させたときに得られる面(B面)の面積を吐出口断面積(Sb)67と定義する。
【0032】
吐出口断面積(Sb)67を、環状流路の入口断面積(Sa)66よりも小さくすることで、環状流路を通過する液状導電性ゴム材料に加わる圧力が吐出口に近づくにつれ大きくなるため、吐出口に進みにくくなる。そのため、周方向に回り込み易くなり、実質的な液絞り効果の役割を果たすことができる。
【0033】
また、環状流路64の壁面の中で塗工ヘッド38の中心軸から最も離れた位置にある点をe点とする。このe点において、環状流路64の外壁面が接する面に垂直な直線をe点から環状流路64の内壁面に向かって描く。該直線が環状流路64の内壁面と交わる点をf点とする。e点とf点を結ぶ線分efを塗工ヘッドの中心軸を中心に回転させたときに得られる面の面積を最大断面積(Sc)68と定義する。最大断面積(Sc)68を、入口断面積(Sa)66と吐出口断面積(Sb)67の和よりも大きくすることで、液状導電性ゴム材料の残留応力を充分に緩和することができるため、形成された導電性ゴム層101が残留応力により変形することを防ぐことができる。このとき、環状流路64の幅の中心を通る線がA面とB面で切り取られる線分の長さを全流路長(L)と定義する。入口断面積(Sa)66の断面から最大断面積(Sc)68の断面までの流路長(La)70を入口断面積(Sa)66の断面から吐出口断面積(Sb)67の断面までの全流路長(L)71の50%以上に設定することで、残留応力が緩和するための時間を充分に確保して、残留応力による導電性ゴム層101の形状変形を防ぐことができる。
【0034】
軸芯体102の外周面に形成された導電性ゴム層101は、架橋せしめて硬化させ導電性ゴム層101とする。この際、円筒形状(ローラ形状)の未硬化の導電性ゴム層101は、粘着性を有しているため、熱処理する方法としては非接触の熱処理方法で行うことが好ましい。
【0035】
その熱処理方法としては、赤外線加熱方法、熱風加熱方法、ニクロム熱加熱方法が挙げられる。特に、装置が簡易で、未硬化物の層を長手方向に均一に熱処理できる赤外線加熱が好ましい。この時、赤外線加熱装置を固定し、円筒形状(ローラ形状)の未硬化物層を設けた軸芯体102を周方向に回転させることにより、周方向に均一に熱処理を行うことができる。
【0036】
導電性ゴム層表面の熱処理温度としては、使用する材質にもよるが、硬化反応が開始する100〜250℃が好ましい。例えば、赤外線加熱を行う場合には材料の特性(熱伝導率、比熱)に応じて赤外線加熱装置と未硬化の導電性ゴム層101との距離、出力等を調整すれば良い。また、熱風加熱を行う場合には熱風の温度や向きを調節すれば良い。
【0037】
ここで、導電性ゴム層101の硬化後の物性安定化、導電性ゴム層101中の反応残渣及び未反応低分子分を除去する等を目的として、硬化させて形成した導電性ゴム層101に更に熱処理等を行う二次硬化を行っても良い。
【0038】
本発明で得られた導電性ローラは、電子写真方式の画像形成装置に用いられる現像ローラとして使用することができる。
【0039】
なお、現像ローラや帯電ローラでは導電性ゴム層101を硬化して得られた導電性ゴム層101の層厚は0.5mm以上10.0mm以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、1.0mm以上6.0mm以下である。現像ローラは、他部材と接触した状態で回転しており、接触状態(ニップ中)を安定に保つ必要があるからである。導電性ゴム層101の層厚が0.5mm未満であると、例えば現像ローラの場合、導電性ゴム層101の弾性が得られずトナーがストレスを受けて劣化してしまい、画像がかさついたものとなってしまう。また、導電性ゴム層101の層厚が10.0mm超となるように液状導電性ゴム材料を塗工すると、液状導電性ゴム材料の自重により重力方向に垂れが生じてしまい、優れた外径寸法や振れを実現することが困難である。
【0040】
本発明にかかる導電性ローラの軸芯体102としては、その材料は導電性であれば何でも良く、炭素鋼、合金鋼及び鋳鉄及び、導電性樹脂の中から、適宜選択して用いることが出来る。
【0041】
ここで、合金鋼としては、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及びVを添加した窒化用鋼が挙げられる。
【0042】
強度の観点から、金属製のものが好ましい。さらに防錆対策として軸芯体102材料にめっき、酸化処理を施すことができる。めっきの種類としては電気めっき、無電解めっきなどいずれも使用することが出来る。
【0043】
めっき厚精度の寸法安定性の観点からは、無電解めっきが好ましい。ここで使用される無電解めっきの種類としては、ニッケルめっき、銅めっき、金めっき、カニゼンめっき、その他各種合金めっきがある。ニッケルめっきの種類としては、Ni−B、Ni−W−P、Ni−P−PTFE複合めっきがある。膜厚みはそれぞれ0.05μm以上であれば好ましいが、より好ましくは0.1〜30μmである。
【0044】
本発明にかかる導電性ローラは画像形成装置及び電子写真プロセスカートリッジに用いられる現像ローラとして使用することができる。その一例の概略図を図7に示す。図7(A)はこの現像ローラの長手方向に平行な断面を表したものであり、図7(B)は長手方向に垂直な断面を表したものである。
【0045】
電子写真プロセスカートリッジにおいて、現像ローラは現像ブレード8、トナー5と常に圧接している。このため、これらの部材に与えるダメージを小さくするために硬度が小さく、圧縮永久歪みが小さい材料で構成されることが、良好な画像を得るためには重要である。尚、導電性ゴム層101は1層で有る必要はなく、多層になっていても構わない。本発明は、軸芯体102上の層を形成するものであるが、既に形成された導電性ゴム層101上に新たな導電性ゴム層を形成することも可能である。
【0046】
本発明に用いられる液状導電性ゴム材料は、液状ゴム組成物と導電性粒子の混合物からなる。導電性ゴム層101に用いられる液状導電性ゴム材料としては、液状ジエンゴム(ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム)、液状シリコーンゴム、液状ウレタンゴムが挙げられる。これらの材料は単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。さらに、これらの材料の発泡体を導電性ゴム層101に用いても良い。中でも、導電性ゴム層101には適度に低硬度であり十分な変形回復力を持たせることが重要であるため、導電性ゴム層101に用いられる材料としては液状シリコーンゴム、液状ウレタンゴムを用いることが好ましい。特に加工性が良好で寸法精度の安定性が高く、硬化反応時に反応副生成物が発生しないなどの生産性に優れる理由から、付加反応架橋型液状シリコーンゴムを用いることがより好ましい。
【0047】
付加型液状シリコーンゴムは、アルケニル基を含有するポリシロキサンとヒドロシリル基を含有するハイドロジェンポリシロキサンが白金触媒の存在下、付加反応して架橋することで硬化する。
【0048】
アルケニル基を含有するポリシロキサンの分子量としては特に限定されないが、1万以上50万以下が好ましい。ポリシロキサンのアルケニル基は1分子中に少なくとも2個有ることが望ましい。アルケニル基の種類は特に限定されないが、活性水素との反応性が高い等の理由から、ビニル基及びアリル基の少なくとも一方であることが好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0049】
なお、本発明での分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したときの重量平均分子量である。すなわち、40℃のヒートチャンバー内で安定化させたカラムに溶媒としてトルエンを毎分0.5mlの流速で流し、0.1〜0.3質量%に調整した試料溶液を50〜200μl注入した。そして、数種の単分散ポリスチレン標準試料で作成した検量線から試料の重量平均分子量を算出した。
【0050】
ヒドロシリル基を含有するハイドロジェンポリシロキサンは、硬化工程における付加反応の架橋剤として働く。一分子中のケイ素原子結合水素原子の数は2個以上であり、硬化反応を最適に行わせるためには3個以上であることが好ましい。ハイドロジェンポリシロキサンの分子量は特に限定されないが、1000以上10000以下が好ましく、硬化反応を適切に行わせるためには比較的低分子量の1000以上5000以下が特に好ましい。
【0051】
本発明における付加型液状シリコーンゴムのハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、ポリシロキサン中のアルケニル基数に対してハイドロジェンポリシロキサン中のヒドロシリル基数が、1.0倍以上3.0倍以下の範囲内であることが好ましい。1.0倍未満だとシリコーンゴムの架橋が少なくなり、圧縮永久歪が悪化することがある。一方、3.0倍より大きくなると化学的に不安定なヒドロシリル基が過剰に残ることになるので経時で導電性ローラの硬度や電流が変化することがあり、好ましくない。
【0052】
付加型液状シリコーンゴムの触媒としては、ポリシロキサンとハイドロジェンポリシロキサンの付加反応において触媒作用を示す白金触媒が使用できる。その具体例としては、塩化白金酸、白金オレフィン錯体、白金ビニルシロキサン錯体、白金トリフェニルホスフィン錯体が挙げられる。
【0053】
触媒の配合量に関しては、ポリシロキサン100質量部に対し、白金元素量として1ppm以上1000ppm以下が好ましい。ただし、この範囲に限定されることはなく、目標とする可使時間、硬化時間、製品形状等により適宜選択される。
【0054】
更に、導電性ローラの具体的な用途に応じて、導電性ゴム層自体に要求される機能に必要な成分として導電剤や非導電性充填剤を適宜配合することができる。
【0055】
導電性ゴム層に導電性を付与する目的で添加する導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、パラジウム、銀、鉄、銅、錫、ステンレス鋼の各種導電性金属または合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化モリブデン、酸化錫−酸化アンチモン固溶体、酸化錫−酸化インジウム固溶体の各種導電性金属酸化物、これらの導電性材料で被覆された絶縁性物質等の微粉末などが挙げられる。またイオン導電剤としてLiClO、NaClOの過塩素酸塩、4級アンモニウム塩を用いることもできる。これらの内、カーボンブラックは比較的容易に入手できるので好適に利用できる。
【0056】
非導電性充填剤としては、珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム、珪酸ジルコニウム、珪酸アルミニウム、タルク、アルミナ、酸化鉄が挙げられる。
【0057】
また、本発明で用いた導電性ローラの耐磨耗性を高めるために、導電性ゴム層101の外周上に表面層103を形成しても良い。表面層103も導電性ゴム層101と同様に1層である必要はなく、多層になっていても構わない。
【0058】
表面層103を形成する材料としては、各種のポリアミド、フッ素樹脂、水素添加スチレン−ブチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、またはオレフィン樹脂が挙げられる。
【0059】
表面層103には、個別的な用途に合わせて体積平均粒子径が1〜20μmの微粒子を分散させることもできる。このような微粒子としては、ポリメチルメタクリル酸メチル微粒子、シリコーンゴム微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリスチレン微粒子、アミノ樹脂微粒子、またはフェノール樹脂微粒子が挙げられる。
【0060】
表面層103は、導電性ローラ全体の電気抵抗を調整するために導電剤を配合することができる。導電剤としては、各種電子伝導機構を有する導電剤であるカーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉、またはイオン導電剤であるアルカリ金属塩、及びアンモニウム塩の微粒子を用いることができる。
【0061】
表面層103を構成する材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、ボールミルの如きビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して、分散させる。得られた表層形成用の分散体は、スプレー塗工法、ディッピング法等により導電性ゴム層101の表面に塗布される。
【0062】
本発明の導電性ローラを現像ローラとして使用する際、現像ローラは、潜像を担持する潜像担持体としての感光体に対向して、当接または圧接した状態でトナー(トナー)を担持する。そして、現像ローラは、感光体にトナーとしてのトナーを付与することにより潜像をトナー像として可視化する機能を持つ。
【0063】
本発明の導電性ローラを現像ローラとして搭載した一般的な電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置の一例を図8に示す。
【0064】
図8の画像形成装置は、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの画像を形成する画像形成ユニット10a〜10dが各1個あり、タンデム方式で設けられている。また、感光体11、帯電装置12、現像装置14及びクリーニング装置15が一体となり、プロセスカートリッジを形成している。本発明に関するプロセスカートリッジとしては、現像装置14からなる現像カートリッジタイプなどがある。
【0065】
現像装置14には、一成分トナー5を収容した現像容器6と、現像容器6内の長手方向に延在する開口部に位置し、感光体11と対向設置された現像ローラ1とを備え、感光体11上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。さらに、現像ローラ1に一成分トナー5を供給する機能と現像されずに現像ローラ1上に残っている一成分トナー5を掻き取る機能とを有するトナー供給ローラ7を設けている。また、現像ローラ1上の一成分トナー5の担持量を規制する機能と摩擦帯電する機能とを有する現像ブレード8が設けられている。
【0066】
感光体11の表面が帯電装置12により所定の極性・電位に一様に帯電され、画像情報が加増露光装置13からビームとして、感光体11の表面に照射され、静電潜像が形成される。次いで、形成された静電潜像に本発明の導電性ローラを現像ローラ1とする現像装置14から一成分トナーが供給され、感光体11の表面にトナー像が現像される。このトナー像は、画像転写装置16と対向する場所に来たときに記録材25に転写される。
【0067】
なお、図8では4つの画像形成ユニット10a〜10dが連動して所定の色画像を転写材25上に重ねて形成されている。転写搬送ベルト17は駆動ローラ18、テンションローラ19及び従動ローラ20に架けまわされている。転写材25は転写搬送ベルト17に吸着ローラ21の働きにより静電的に吸着された形で搬送されている。なお、22は転写材25を供給するための供給ローラである。
【0068】
画像が形成された転写材25は、転写搬送ベルト17から剥離装置23の働きにより剥がされ、定着装置24に送られ、トナー像は転写材25に定着されて、印画が完了する。一方、トナー像の転写材25への転写が終わった感光体11はさらに回転して、クリーニング装置15により表面がクリーニングされ、必要により除電装置(不図示)によって除電される。その後感光体11は次の画像形成に供される。
【0069】
本発明の導電性ローラは、上記した現像ローラとしてばかりでなく、その導電性ゴム層101の均一性が良好であることから、帯電ローラ、転写ローラ、駆動ローラ18、定着ローラ28、加圧ローラ29等の導電性が必要な用途にも使用可能である。
【0070】
〔実施例1〕
導電性ローラを製造するにあたり、軸芯体102としては外径6mmの丸棒状軸芯体102(快削鋼SUM24L)にニッケルメッキを施し、さらに厚み約1μmのプライマー (商品名:DY39−051 東レダウコーニング社製)を塗布後、温度150 ℃で30分間焼き付けしたものを用いた。
【0071】
その後、下記配合のベース材料を調製した。
【0072】
ジメチルポリシロキサン(重量平均分子量34000):100質量部;
カーボンブラック(Columbian Chemical製Raven890):10質量部;
このベース材料100質量部に対して、硬化触媒として塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体1質量部を加えた。さらに、前記ビニル基が置換したジメチルポリシロキサンに含有するビニル基1モルに対して、ヒドロシリル基が1.2モルとなる量のメチルハイドロジェンポリシロキサンを配合し、付加型液状シリコーンゴムからなる液状材料を得た。
【0073】
導電性ローラの製造には、図1に示した形態の塗工ヘッドを有する縦型リングコート機を用いた。図3に示した塗工ヘッドに用いられているキャップリング62の内径は11.5mmのものを、環状流路の流路幅は1.0mmであり、環状流路の入口断面積(Sa)を65.9mmとし、吐出口の断面積(Sb)をSaの約半分の大きさである36.1mmとし、環状流路の最大断面積部(Sc)を160.2mmとして(Sa+Sb)よりも充分に大きい値を設定した。また、環状流路の流路長(La)を24mmとし、環状流路の全流路長(L)40mmの60%とした。
【0074】
シリンダには、予め上記の液状導電性ゴム材料を充填させておき、軸芯体下保持軸39を垂直に60mm/sで上昇させて軸芯体102を移動させると同時に、ピストン56を15mm/sで下降させシリンダ内に充填されていた液状導電性ゴム材料を吐出し、軸芯体102の外周に液状導電性ゴム材料の塗布層を有する未硬化の導電性ゴム層101を製造した。
【0075】
製造された未硬化の導電性ゴム層101を、軸芯体102を中心として60rpmで回転させ、その未硬化の成形物層表面に、赤外線加熱ランプ(商品名:HYL25、ハイベック社製)で赤外線(出力1000W)を4分間照射し、硬化させた。なお、赤外線照射時の成形物層表面とランプの距離は60mmであり、成形物層表面の温度は200℃であった。
【0076】
その後、硬化したシリコーンゴムの導電性ゴム層101の物性を安定させ、シリコーンゴムの導電性ゴム層101の反応残渣及び未反応低分子分を除去する等を目的として、電気炉で200℃、4時間の二次硬化を行った。このようにして軸芯体102の外周上に層厚3.0mmの導電性ゴム層を有する導電性ローラを得た。その後、得られた導電性ローラの両端部を、それぞれ15mm切除した。次に製造した導電性ローラの、抵抗ムラと形状精度を測定した。導電性ローラの抵抗ムラ測定方法を、図9にて詳細を説明する。室温5℃、湿度30%の環境で、導電性ローラ104の軸芯体102の両端をVブロック(不図示)で受け、導電性ローラを水平に保つ。厚み2mm、直径20mmの金属製の円盤の外周を導電性ローラの外周面に4.9Nの荷重をかけながら押し当て、50Vの電圧を導電性ローラに印加しながら導電性ローラの長手方向に60mm/sの速度で移動させた。軸芯体の端部を受けているVブロックと直列につないでいる10kΩの抵抗にかかる長手方向の電圧値を0.1秒間隔で断続的に測定した。得られた一連の電圧値から導電性ローラの各部に流れる電流値と導電性ローラの抵抗値を計算した。その抵抗最大値(RA1)と抵抗最小値(RB1)を求めた。
【0077】
その後、導電性ローラを30°ずつ回転させ、導電性ローラが1回転するまで同様の測定を繰り返した。各位相での抵抗最大値(RAi(i=1〜12))と抵抗最小値(RBi(i=1〜12))から、それぞれの相加平均値(Ra=


【0078】
およびRb=


【0079】
)をとり、RaとRbの比(Ra/Rb)をRb)導電性ローラの抵抗ムラとし、下記基準で評価を行い、結果を表1に示す。
【0080】
A:抵抗ムラが2.0未満の場合
B:抵抗ムラが2.0以上、4.0未満の場合
C:抵抗ムラが4.0以上の場合。
【0081】
導電性ローラの形状精度を評価するために、導電性ローラの外径差を測定した。導電性ローラの最大外径と最小外径の差を外径差とし、軸芯体の中心軸を回転軸として導電性ローラを回転させ、回転軸と垂直に配置した非接触レーザー測長器(商品名:LS−5000、キーエンス製)で外径差を測定した。ここでいう最大外径及び最小外径はそれぞれ、導電性ローラを1°ずつ回転させて測定した360点の外径の最大値及び最小値である。図10に示すように、導電性ローラの長手方向の導電性ゴム層101を4等分する3ヶ所1101、1102及び1103で外径差を求め、得られた3個のデータからの平均値を用いて、下記評価基準で評価を行い、結果を表1に示す。
【0082】
A:外径差が3%未満である場合
B:外径差が3%以上5%以下である場合
C:外径差が5%を超える場合。
【0083】
その後、この導電性ローラに下記配合の塗料を用いて表面層を設けた。表面層用の塗料配合を示す。
【0084】
ポリウレタンポリオールプレポリマー(商品名:タケラックTE5060、三井武田ケミカル社製):100質量部;
・イソシアネート(商品名:コロネート2521、日本ポリウレタン株式会社製):77質量部;
・カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学社製):24質量部;
・メチルエチルケトン(MEK):180質量部;
・粗さ制御用微粒子(商品名:アートパールC400、根上工業製):樹脂成分に対し20質量%
これらを横型分散機(商品名:NVM−03、アイメックス社製)で周速7m/s、流量1cc/min、分散液温度15℃の条件下で1時間分散した。
【0085】
分散後さらにMEKを加え固形分25質量%で、膜厚が20μmとなるように調整したものを表面層の原料液とした。
【0086】
次にこの塗料を直径32mmのシリンダに入れ、液流速250cc/min、液温23℃で循環させた。その後、導電性ローラを浸入速度100mm/sで前記シリンダ中に浸漬させ、10秒間停止させた。
【0087】
その後に、初速400mm/s、終速200mm/sの条件で引上げて、10分間自然乾燥させた。次いで、温度140℃にて60分間加熱処理することで表面層の原料の硬化を行い、表面層付き導電性ローラを得た。作製した表面層付き導電性ローラの表面粗さを、接触式表面粗さ計(商品名:サーフコーダSE3500、小坂研究所製)を用いて測定した。測定条件は、半径2μmの触針を用い、押し付け圧0.7mN、測定速度0.3mm/s、測定倍率5000倍、カットオフ波長0.8mm、測定長さ2.5mmとした。周方向3点、長手方向3点、合計9点について測定し、それら測定値の粗さの平均値を導電性ローラの表面粗さとした。ここで、本発明における表面粗さとは、十点平均粗さRzjisであり、JISB0601−2001に準拠した値を示す。測定した結果、十点平均粗さRzjisは8.21μmであった。表面層付き導電性ローラを現像ローラとして、電子写真プロセスカートリッジに組み込んだ。またここで、現像ローラを組み込んだ電子写真プロセスカートリッジを室温5℃、湿度30%の環境で24時間放置した。
【0088】
次に、本実施例で行った画像評価方法について説明する。
【0089】
作成した現像ローラを電子写真プロセスカートリッジ(商品名:トナーカートリッジ316ブラック、キヤノン株式会社製)に組み込んだ。
【0090】
次にこの電子写真プロセスカートリッジを電子写真方式の画像形成装置(商品名:LBP5050、キヤノン株式会社製、印刷解像度600dpi)に組み込んだ。そして、この画像形成装置を用いて、室温5℃、湿度30%の環境で間欠耐久試験を行った。通紙時は、印字率2%の文字画像を純正A4紙(商品名:セレクトペーパー SC−250、キヤノン株式会社製)にて20秒毎に1枚出力する間欠モードでフルカラープリント操作を行い、2300枚の画像出力を行った。その後、現像ローラを取り外し、新品の同じ種類の画像形成装置に組み込み、同様に2300枚の画像出力を行った。この耐久試験を計5回繰り返し行った。
【0091】
そして、計5回の耐久試験終了時に全黒画像サンプルを出力した。出力した評価用のサンプルを紙面上9ヶ所でカラー反射濃度計(商品名:X−RITE 404A、X−Rite Co.製)により濃度を測定した。9ヶ所の最大値と最小値の比(最大値/最小値)をその導電性ローラの画像濃度の比とし、下記基準で評価を行い、結果を表1に示す。
【0092】
A:画像濃度の比が1.20未満である場合
B:画像濃度の比が1.20以上1.30以下である場合
C:画像濃度の比が1.30を超える場合。
【0093】
また、導電性ローラの形状に起因する画像評価も行った。下記基準で評価を行い、結果を表1に示す。
【0094】
A:目視において良好な場合
B:導電性ローラの形状に起因する画像ムラが若干確認されるが、実用上問題ない場合
C:導電性ローラの形状に起因する画像ムラが確認された場合。
【0095】
〔実施例2〕
図5(a)に示すように環状流路の流路長(La)が環状流路の全流路長(L)の50%である20mmと設定した以外は、実施例1と同様の条件で導電性ローラを製造し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
〔実施例3〕
図5(b)に示すように環状流路の入口断面積(Sa)を39.4mm、吐出口の断面積(Sb)を36.1mmとした以外は、実施例1と同様の条件で導電性ローラを製造し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
〔実施例4〕
図5(c)に示すように環状流路の最大断面積部(Sc)を108.5mmとして(Sa+Sb)よりも僅かに大きい値とした以外は、実施例1と同様の条件で導電性ローラを製造し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
〔実施例5〕
図5(d)に示すように環状流路の入口断面積(Sa)を39.4mm、吐出口の断面積(Sb)を36.1mm、最大断面積部(Sc)を79.3mmとした以外は、実施例1と同様の条件で導電性ローラを製造し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
〔実施例6〕
図5(e)に示すように環状流路の入口断面積(Sa)を39.4mm、吐出口の断面積(Sb)を36.1mm、最大断面積部(Sc)を79.3mmとし、環状流路の流路長(La)が環状流路の全流路長(L)の50%である20mmと設定した以外は、実施例1と同様の条件で導電性ローラを製造し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
〔比較例1〕
図6(a)に示すように環状流路の流路幅が一定でない場合、すなわち液絞り流路を有した塗工ヘッドである以外は、実施例1と同様にして導電性ローラを製造し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
〔比較例2〕
図6(b)に示すように環状流路の流路長(La)を環状流路の全流路長(L)の20%である8mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして導電性ローラを製造し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
〔比較例3〕
図6(c)に示すように環状流路の入口断面積(Sa)を39.4mm、吐出口の断面積(Sb)を65.9mmとした以外は、実施例1と同様の条件で導電性ローラを製造し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
〔比較例4〕
図6(d)に示すように環状流路の最大断面積部(Sc)を79.3mmとした以外は、実施例1と同様の条件で導電性ローラを製造し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
【表1】

【符号の説明】
【0105】
1 現像ローラ
2 導電性軸芯体
3 導電性ゴム層101
4 導電性樹脂層
5 トナー
6 現像容器
7 トナー供給ローラ
8 現像ブレード
10a〜d 画像形成ユニット
11 感光体
12 帯電装置(帯電ローラ)
13 画像露光装置(書き込みビーム)
14 現像装置
15 クリーニング装置
16 画像転写装置(転写ローラ)
17 転写搬送ベルト
18 駆動ローラ
19 テンションローラ
20 従動ローラ
21 吸着ローラ
22 供給ローラ
23 剥離装置
24 定着装置
25 記録材
26 バイアス電源(画像転写装置(転写ローラ)16用)
27 バイアス電源(吸着ローラ21用)
31 塗工ヘッド側架台
32 塗工ヘッド側コラム
33 塗工ヘッド側ボールネジ
34 塗工ヘッド側ステージ
35 サーボモータ
36 プーリ
37 軸芯体保持軸ブラケット
38 塗工ヘッド
39 軸芯体下保持軸
40 軸芯体上保持軸
41 供給口
42 第1の配管
43 塗工ヘッド側ガイド
44 塗工ヘッド固定テーブル
45 シリンダ側架台
46 シリンダ側コラム
47 シリンダ側ボールネジ
48 シリンダ側ステージ
49 ピストンブラケット
50 第2の配管
51 シリンダ側ガイド
52 シリンダ固定テーブル
53 シリンダ
54 ピストン
60 内リング
61 外リング
62 キャップリング
63 分配室
環状流路
流路幅
環状流路入口断面積(Sa)
吐出口断面積(Sb)
環状流路最大断面積(Sc)
液絞り流路
流路長(La)
全流路長(L)
101 導電性ゴム層
102 軸芯体
103 表面層
104 導電性ローラ
1101、1102、1103 導電性ローラ形状精度測定個所


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子を含有してなる液状導電性ゴム材料を外部から供給するための1つの供給口と、該液状導電性ゴム材料を環状に分配する分配室と、該液状導電性ゴム材料を内周面に吐出するための環状の吐出口と、該分配室から該吐出口に至る環状流路を有する環状塗工ヘッドを用いて、円筒状軸芯体の周囲に導電性ゴム層を有する導電性ローラを製造する方法において、
該環状流路の幅が一定であり、かつ、該環状流路の断面積が、(該環状流路の入口断面積:Sa)>(該吐出口の断面積:Sb)、かつ、(該環状流路内での最大断面積:Sc)>(Sa+Sb)であり、かつ、(該環状流路の入口部から該環状流路内での最大断面積部までの流路長:La)が(該入口部から該吐出口までの全流路長:L)の50%以上となることを特徴とする導電性ローラの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−98328(P2012−98328A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243328(P2010−243328)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】