説明

導電性ローラーの製造方法

【課題】異物の混入を抑制し材料を均一に混練可能で、均一な導電性弾性層を作業効率よく低コストで製造することができ、混練機に材料を投入する際飛散がなく、労働衛生上、環境上好ましい導電性ローラーの製造方法提供すること。
【解決手段】導電性軸体の外周に、混練機を用いて導電性弾性層材料を混練し、硬化して導電性弾性層を成形し導電性ローラーを製造するにあたり、融点が60℃から120℃の範囲で導電性弾性層材料の混練時に溶融可能で、且つ、導電性弾性層材料の硬化時に硫黄架橋可能な熱可塑性樹脂製で、厚さが30μmから100μmの範囲のフィルムで作製した投入用袋に、導電性弾性層材料の一部を封入し、混練機に投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ローラーの製造方法に関し、特に、複写機、プリンターおよびファクシミリ等に代表される電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に使用される導電性ローラーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターおよびファクシミリ等に代表される電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置においては、均一に帯電した感光体を露光して得られた静電潜像に、現像剤であるトナーを付着させ、それを紙等の転写材に転写して画像を形成している。このような画像形成装置においては、感光体の帯電を行う帯電ローラー、感光体上の静電潜像にトナーを供給する現像ローラー、トナー像を転写材に転写を行う転写ローラー等の導電性ローラーが用いられている。例えば、感光体の帯電ローラーは、感光体に対する接触が二つの回転円筒体によりなされるため、帯電ブラシや帯電ブレード等の他の手段よりも均一に帯電が容易に得られることから、多用されている。
【0003】
帯電ローラーを用いて感光体を均一に帯電するためには、帯電ローラーが電気的に不均一な場合、感光体においてその電気的な不均一を反映した帯電濃度ムラを生じるため、帯電ローラーは所定の抵抗をもち、かつ全面に亘って電気的に均一であることが要求される。更に、感光体と均一の押力をもって接触するため、帯電ローラーが適度な弾性と、表面の平滑性、高い寸法精度を有することの要請がある。
【0004】
このような帯電ローラーを始めとする導電性ローラーは、例えば、導電性軸体の外周面に、低硬度の導電性弾性体層を設け、必要に応じて、抵抗調整層、保護層などを積層した構成として用いられている。この低硬度の導電性弾性体層を作製する方法としては、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム成分にカーボンブラック等の導電性充填剤を添加し、低硬度を得るために軟化剤を添加したゴム組成物を使用する方法が知られている。また、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)や、エピクロルヒドリンゴム等のゴム成分自体が低抵抗で導電性を有するものを用いることにより、より電気的に均一な導電性弾性体層を作製する方法もある。
【0005】
例えばエピクロルヒドリン系ゴム中のエチレンオキサイドの共重合割合により抵抗値をコントロールすることが可能であり、各種導電性ローラーの弾性体として求められる抵抗値により、その割合を調整して用いることが報告されている(特許文献1)。これらエピクロルヒドリン系ゴムを用いて電気的均一性に優れた導電性弾性層を作製するにあたり、加工性や種々の特性をコントロールするために充填剤や可塑剤、その他各種添加剤を添加している。
【0006】
また、低硬度化の要求に対して、ゴム成分に可塑剤を添加する方法があるが、ゴム成分に使用される一般的な可塑剤を用いた場合、導電性ローラーと感光体との長期間の当接により滲出した可塑剤が感光体汚染し、画像不良が発生する場合がある。この可塑剤の滲出を抑制するために、可塑剤に水飴状の高分子量可塑剤や液状ゴムを用いる方法が報告されている(特許文献2)。
【0007】
ところで、このような導電性ローラーの導電性弾性層の製造方法として、導電剤、可塑剤、軟化剤等の添加剤と、ゴム成分のモノマーなどとを混練して未硬化ゴム組成物を得て、これをローラー状に成形後硬化する、又は硬化後ローラー状に成形する方法等がある。各種添加剤を含むゴム成分の混練には、密閉型のゴム用の混練機が用いられている。密閉型混練機に原料を投入するに当り、混合槽内へ自動投入する場合もあるが、総ての原料を自動投入するのは難しく、全部若しくは一部の原料を人手で投入する場合が多い。また、高分子量可塑剤や液状ゴムは粘度が高く、混練機へ自動投入ができない場合等、これらの可塑剤等はポリエチレンやEVA製の袋に収納し混練機へ投入されている。
【0008】
しかしながら、高分子可塑剤等を袋を使用して混練機の混合槽へ投入する際、袋から原料が放出され、混合槽内壁に付着する等の不具合がある。混合槽内壁に可塑剤など原料の付着が生じると、複数のバッチ処理を連続して行う場合、混合槽内壁に付着した原料に次のバッチの原料が付着凝集し、分散不良の原因となる場合もある。1バッチ毎にクリーニングを行う方法もあるが、生産効率の低下、コスト上昇を引き起こすことになる。また、実質的に原料の組成が変動する場合もある。更に、使用した袋のポリエチレンやEVA成分が異物となって存在し、ローラー表面や、導電性等の特性に影響を及ぼすこともある。
【0009】
また、導電性ローラーの1本当りのゴム組成物の使用量は、例えば10〜50g程度であり、添加剤の取扱い量もタイヤ等とは異なり少量であり、これら添加剤の混練機への自動投入は適さない。添加剤の取り扱い量が大量である場合は、添加剤はバルク車からサイロに供給し混合槽へ自動投入されるが、少量の場合は、クラフト紙袋に梱包された添加剤を梱包を解いて、オペレーターが混合槽へ投入する。このため、添加剤の飛散など労働衛生上の問題となる場合がある。
【0010】
また、混練機については、均一な混練が可能なことからニーダーを用いることが好ましい。しかし、ニーダーは混合槽に添加物を直接投入するため、自動投入等が困難であり飛散等の対策を施し難い。バンバリーミキサーやインターミックスミキサーの場合、混合槽上に原料投入台があるため、自動投入や飛散対策を施すことは可能であるが、混合槽内の完全な洗浄が困難であり、異物混入を回避することは困難である。また、バンバリーミキサー等においても添加剤の使用量が少量の場合は、自動投入化はコスト的に不利となる。
【特許文献1】特開2002−287456
【特許文献2】特開平9−309975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、異物の混入を抑制し材料の均一な混練が可能であり、均一な導電性弾性層を作業効率よく低コストで製造することができ、混練機に材料を投入する際の飛散を抑制し、労働衛生上好ましい導電性ローラーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、導電性軸体の外周に、混練機を用いて導電性弾性層材料を混練し、硬化して導電性弾性層を成形し導電性ローラーを製造するにあたり、融点が60℃から120℃の範囲で導電性弾性層材料の混練時に溶融可能で、且つ、導電性弾性層材料の硬化時に硫黄架橋可能な熱可塑性樹脂製で、厚さが30μmから100μmの範囲のフィルムで作製した投入用袋に、導電性弾性層材料の一部を封入し、混練機に投入することを特徴とする導電性ローラーの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性ローラーの製造方法は、異物の混入を抑制し材料の均一は混練が可能であり、均一な導電性弾性層を作業効率よく低コストで製造することができ、混練機に材料を投入する際の飛散を抑制し、労働衛生上好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の導電性ローラーの製造方法は、導電性軸体の外周に、混練機を用いて導電性弾性層材料を混練し、硬化して導電性弾性層を成形し導電性ローラーを製造するにあたり、融点が60℃から120℃の範囲で導電性弾性層材料の混練時に溶融可能で、且つ、導電性弾性層材料の硬化時に硫黄架橋可能な熱可塑性樹脂製で、厚さが30μmから100μmの範囲のフィルムで作製した投入用袋に、導電性弾性層材料の一部を封入し、混練機に投入することを特徴とする。
【0015】
本発明の導電性ローラーの製造方法に用いられる導電性軸体としては、導電性であってローラーを支持し必要とされる形状精度を維持できるものであれば、いずれのものであってもよい。導電性軸体の材質としては、金属製のものが好ましく、アルミニウム、銅合金、鉄、鋼鉄、ステンレス鋼等の金属または合金など挙げることができる。耐腐蝕性、耐摩擦性を向上させるため、これらの金属または合金にクロム、ニッケル等のメッキ処理を施したものを適用することができる。
【0016】
かかる導電性軸体の形状は、中空状あるいは中実状いずれものであってもよく、またその外径は、搭載される画像形成装置との関連において適宜選択することができ、例えば、通常4〜10mmの範囲のものを例示することができる。
【0017】
本発明の導電性ローラーの製造方法において成形する導電性弾性層としては、ソリッド体であってもスポンジ状などの発泡体などいずれのものであってもよく、1層構成、多層構造いずれであってもよい。このような導電性弾性層を成形するための導電性弾性材料としては、未硬化のゴム成分と、添加剤とを含有する。ゴム成分としては、それ自体が導電性を有するものであっても、高抵抗値を有する非導電性のものであってもよい。具体的には、エピクロロヒドリンホモポリマー、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロロヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体などのエピクロロヒドリン系ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等を挙げることができる。
【0018】
添加剤としては、充填剤、補強剤、導電剤、加硫剤、加硫促進剤、可塑剤など公知のものを挙げることができる。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉及び金属酸化物である導電性酸化錫や導電性酸化チタン等の導電剤、雲母、二硫化モリブデン、フッ素樹脂粉末等の固体潤滑剤を挙げることができる。また、フッ素系界面活性剤、ワックス又はシリコーンオイル等の界面活性剤、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、カーボンブラック、シリカ等の補強剤を挙げることができる。硫黄または有機系硫黄化合物等の加硫剤、メルカプトベンゾチアゾール等のチアゾール類、テトラメチルチウラムジスルフィド等の加硫促進剤、酸化亜鉛などの加硫促進助剤、ポリエーテル系、ポリエーテルエステル等の可塑剤等を挙げることができる。添加剤は粉体、顆粒状などの固体に限らず、液状のものであってもよい。
【0019】
このような導電性弾性層材料を混練機を用いて混練する際、熱可塑性樹脂製フィルムで作製した投入用袋に、導電性弾性層材料の一部を封入し、混練機に投入する。投入用袋を用いることにより、導電性弾性層材料の飛散を防止し、混合槽などを含めた混練機内壁への材料の付着を抑制することができる。特に、投入用袋に導電性弾性層材料を計量して収納し、その開口をヒートシールした場合は、確実に導電性弾性層材料の飛散を防止し、均一な混練を行うことができる。このため、混練機内壁への材料の付着による導電性弾性層の組成の変動や、付着した材料の剥離による異物の混入を抑制し、メンテナンスを容易とし、効率よい製造を行うことができる。
【0020】
このような投入用袋は熱可塑性樹脂製フィルムで作製される。熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂は融点が60℃から120℃の範囲で導電性弾性層材料の混練時に溶融可能で、且つ、導電性弾性層材料の硬化時に硫黄架橋可能なものである。フィルムの厚さとしては、30μmから100μmの範囲にあるため、投入用袋は導電性弾性層材料の混練時に溶融可能で、混練時に溶融された可塑性樹脂はゴム成分中に分散され、硬化時にゴム成分と硫黄架橋されることにより、凝集した異物となることが抑制される。
【0021】
投入用袋の材質である熱可塑性樹脂としては、収納するゴム成分と相溶性がよいものが好ましい。特に、電子写真等の画像形成装置に使用する導電性ローラーでは、極めて高精度であることが要請され、導電性弾性層において熱可塑性樹脂が凝集した異物の発生を抑制できるように、熱可塑性樹脂はゴム成分との相溶性に優れたものであることが好ましい。
【0022】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ゴム成分に極性ゴムが用いられている場合は、融点が低いエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等を挙げることができる。また、シンジオタクティックポリ1,2−ブタジエンやトランスポリオクテネマー等を挙げることができる。シンジオタクティックポリ1,2−ブタジエンとしては、市販品を用いることができる。例えば、RB805(融点70℃:ジェイエスアール(株)社製)、RB810(融点75℃:ジェイエスアール(株)社製)、RB820(融点80℃:ジェイエスアール(株)社製)、RB830(融点90℃:ジェイエスアール(株)社製)、RB840(融点110℃:ジェイエスアール(株)社製)などを例示することができる。更に、シンジオタクティックポリ1,2−ブタジエン製フィルムの袋として、市販されているメルバッグS(JSRトレーディング社製)を使用することもできる。トランスポリオクテネマーとしては、ベステネマー8012(融点約55℃:ヒュルス(株)社製)を挙げることができる。これらはゴム成分と極めて容易に相溶することから、特に好ましい。
【0023】
このような熱可塑性樹脂製フィルムの厚さとしては、30μmから100μmである。好ましくは80μmから100μm、より好ましくは40μmから60μmである。熱可塑性樹脂製フィルムの厚さが30μm以上であれば、収納する材料の質量を支持するための強度を有し、破損を抑制する強度を有する。100μm以下であれば、混練時に溶融されずに異物となることを抑制することができる。
【0024】
上記熱可塑性樹脂フィルムで作製した投入袋の大きさとしては、例えば、500mm×1000mmなどとすることができる。
【0025】
このような投入用袋に導電性弾性層材料の一部を封入する。封入する導電性弾性層材料としては、ゴム成分、添加剤のいずれであってもよいが、飛散が問題となる、例えば、カーボンブラックや炭酸カルシウム等の粉体状のものや、液体状の可塑剤などが好ましい。これらの添加剤などは一つの投入用袋に一種を封入してもよいが、一つの投入用袋に複数種を混入することもできる。導電性弾性層材料の一部としては、一部の添加剤について適用する、若しくは、総ての添加剤について適用する、又は、各種添加剤について一部を適用するなどいずれであってもよい。また、ゴム成分の一部について適用することもできる。投入用袋に収納する導電性弾性層材料としては、具体的には、導電性弾性層材料全体に対して、例えば、30〜80質量%などとすることができる。
【0026】
導電性弾性層材料を投入用袋に封入するに当り、導電性弾性層材料を計測器で計量して封入することが好ましい。一つの投入用袋に封入する導電性弾性層材料の質量としては、例えば、500〜20000gを好ましい範囲として挙げることができる。
【0027】
導電性弾性層材料を計量し投入用袋に収納した後、封入する方法としてはヒートシールを好ましい方法として挙げることができる。シールとしては、完全密閉でもよいが、内容物が放出されない程度の接着であってもよい。導電性弾性層材料を封入した投入用袋は、計量、封入位置から混練機に移動して投入するのみであり、投入用袋中の材料が激しく振動する状況ではないところから、シールは移動、投入時に内容物が放出されない程度の封入性を有していればよい。従って、一部にシールがされていない個所があってもよい場合もある。完全シールされた投入袋は、ミキサーのローターによって破壊するまで、袋中の薬品は袋外に出ないが、一部シールしていない個所を設けることにより、混練機投入後、収納物が投入袋外に放出されやすく、速やかに混練され、好ましい場合もある。
【0028】
また、投入用袋は、ベルトコンベアにより搬送し混練機に投入することが好ましい。ベルトコンベアによる搬送方法としては、ベルトコンベアの先端を混練機の投入口上位置に配置させ、投入用袋を混練機の投入口上まで搬送する方法が、ベルトコンベアの先端から自然落下させて混練機に投入できることから好ましい。この方法によれば自動投入が可能となり、好ましい。また、作業者による混練機への投入も可能であり、この場合も作業者が投入時に飛散したフィラーによる汚染やフィラーの吸引を抑制することができ、労働衛生上好ましい。
【0029】
上記導電性弾性層材料の混練に使用する混練機としてはニーダー、バンバリーミキサー、インターミックスミキサーなどを使用することができる。このような混練機を用いて行う導電性弾性層材料の混練は適宜温度調整をして行うことができる。混練時の温度としては、導電性弾性層材料により適宜選択することができが、使用する投入袋の融点以上の温度で混練りすることが好ましい。このような温度で混練することにより、上記投入用袋が溶融され、熱可塑性樹脂とゴム成分中とを均一に混合することができ、熱可塑性樹脂の凝集を抑制することができる。
【0030】
混練した導電性弾性層材料を硫黄架橋硬化して導電性弾性層を成形する。導電性弾性層の成形は、混練した導電性弾性層材料を円筒形状に押出し成形し、架橋硬化後、導電性軸体を圧入し研削して製造する方法を挙げることができる。また、型によるプレス成形等により所望の形状に架橋硬化した後、研削する方法を挙げることができる。いずれの場合においても、投入用袋を構成していた熱可塑性樹脂はゴム成分と共に架橋され、凝集を抑制することができる。
【0031】
上記ゴム組成物の架橋硬化には熱風炉加硫、蒸気缶加硫、プレス加硫など公知の方法を使用することができ、その条件として、例えば、140〜200℃で5〜120分などの条件を挙げることができる。
【0032】
このようにして得られる導電性ローラーは、異物の混入が抑制され、均一な導電性弾性を有し、電子写真装置などの画像形成装置の帯電ローラー、現像ローラー、転写ローラー等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0033】
次に本発明について実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]
[導電性弾性層材料の調製]
投入用袋として、厚さ50μm、融点80℃のシンジオタクティックポリ1,2−ブタジエンのフイルムの、500×1000mmのものを用いた。この投入用袋中に、以下のものをそれぞれ計量して1袋に収納し、上端をヒートシールでシールした。
【0035】
酸化亜鉛(亜鉛華2種:ハクスイテック(株)社製) 2kg
ステアリン酸(ステアリン酸S:花王(株)社製) 0.2kg
炭酸カルシウム(シルバーW:白石工業(株)社製) 16kg
SRF級カーボンブラック(シーストS:東海カーボン(株)社製) 12kg
液状NBR(Nipol1312:日本ゼオン(株)社製) 4kg
投入用袋に収納した上記物質と、エピクロルヒドリン系ゴム(CG102:ダイソー(株)社製)40kgとを密閉型混練機である75Lニーダーに投入し、20分間混練を行った。ミキサー排出時の混練ゴム組成物温度は137℃であった。
【0036】
[導電性弾性層材料の混練時の評価]
ニーダーに投入する際の飛散状況を評価した。結果を表1に示す。
【0037】
[導電性ローラーの調製]
得られた混練ゴム組成物180.5質量部に対し、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)(ノクセラーDM:大内振興化学工業(株)社製)1質量部、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)(ノクセラーTS:大内振興化学工業(株)社製)0.8質量部、イオウ(サルファックスPMC:鶴見化学工業(株)社製)1.5質量部を混錬りし未加硫の導電性弾性層材料を調製した。
【0038】
次に、40mm口径のクロスヘッド押出機を用いて未加硫の導電性弾性層材料を押出すと同時に、連続的にホットメルト接着剤を塗布した6mm口径の導電性軸体をクロスヘッドダイを通過させて、導電性軸体の外周上に未加硫の導電性弾性層材料を配置させた。160℃で60分間熱風炉に投入して導電性弾性層材料の硬化を行なった。次に硬化した導電性弾性層を長手方向の長さを250mmになるように両端を除去し、導電性軸体を露出させた。研磨砥石GC80を取り付けた研磨機にセットし、研磨条件として回転速度2000RPM、送り速度500m/分で外径が12mmになるように研磨し、導電性ローラーを作製した。
【0039】
[導電性ローラーの評価]
得られた導電性ローラーについて、マイクロスコープVH−8000(キーエンス社製)を用い、表面を100倍に拡大して観察し、フイルム状の異物の数を数えた。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例2]
厚さ30μmのシンジオタクティックポリ1,2−ブタジエンフイルムの投入用袋を使用した他は、実施例1と同様に、導電性弾性層材料の調製を行い、導電性ローラーを調製した。実施例1と同様にして、導電性弾性層材料の混練時の評価を行い、導電性ローラーの評価を行った。排出時の混練ゴム組成物温度は130℃であった。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例3]
厚さ100μmのシンジオタクティックポリ1,2−ブタジエンフイルムの投入用袋を使用した他は、実施例1と同様に、導電性弾性層材料の調製を行い、導電性ローラーを調製した。実施例1と同様にして、導電性弾性層材料の混練時の評価を行い、導電性ローラーの評価を行った。排出時の混練ゴム組成物温度は132℃であった。結果を表1に示す。
【0042】
[比較例1]
厚さ50μmのシンジオタクティックポリ1,2−ブタジエンフイルムの投入用袋を使用したが、上端のシールを行わなかった。その他は、実施例1と同様に、導電性弾性層材料の調製を行い、導電性ローラーを調製した。実施例1と同様にして、導電性弾性層材料の混練時の評価を行い、導電性ローラーの評価を行った。排出時の混練ゴム組成物温度は134℃であった。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例2]
厚さ20μmのシンジオタクティックポリ1,2−ブタジエンフイルムの投入用袋を使用した他は、実施例1と同様に、導電性弾性層材料の調製を行い、導電性ローラーを調製した。実施例1と同様にして、導電性弾性層材料の混練時の評価を行い、導電性ローラーの評価を行った。排出時の混練ゴム組成物温度は130℃であった。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例3]
厚さ110μmのシンジオタクティックポリ1,2−ブタジエンフイルムの投入用袋を使用した他は、実施例1と同様に、導電性弾性層材料の調製を行い、導電性ローラーを調製した。実施例1と同様にして、導電性弾性層材料の混練時の評価を行い、導電性ローラーの評価を行った。排出時の混練ゴム組成物温度は131℃であった。結果を表1に示す。
【0045】
[比較例4]
厚さ50μmのポリエチレン(融点105℃)フイルムの投入用袋を使用した他は、実施例1と同様に、導電性弾性層材料の調製を行い、導電性ローラーを調製した。実施例1と同様にして、導電性弾性層材料の混練時の評価を行い、導電性ローラーの評価を行った。排出時の混練ゴム組成物温度は130℃であった。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
上記結果から明らかなように、硫黄架橋可能な融点60〜120℃の熱可塑性樹脂フイルムで成形された投入用袋中に導電性弾性層材料の一部を封入して混練機に投入した実施例1〜3については、混練機投入時の飛散もなく、異物も確認されなかった。開口部をシールした実施例1に比べ、シールをしていない比較例1においては、飛散が大きく、混練り時の環境悪化が避けられないことが分かる。また、厚さ30μm未満の投入用袋を使用した比較例2において、収納する材料の重量に耐えられず袋が破損し、使用に耐えないことが分かる。厚さ100μmを超える投入用袋を使用した比較例3、硫黄架橋できないポリエチレン袋を使用した比較例4については、投入用袋の溶融が難しく、異物となり製品に不具合を起すことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体の外周に、混練機を用いて導電性弾性層材料を混練し、硬化して導電性弾性層を成形し導電性ローラーを製造するにあたり、融点が60℃から120℃の範囲で導電性弾性層材料の混練時に溶融可能で、且つ、導電性弾性層材料の硬化時に硫黄架橋可能な熱可塑性樹脂製で、厚さが30μmから100μmの範囲のフィルムで作製した投入用袋に、導電性弾性層材料の一部を封入し、混練機に投入することを特徴とする導電性ローラーの製造方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂製フィルムが、シンジオタクチックポリ1,2−ブタジエンを主原料とすることを特徴とする請求項1記載の導電性ローラーの製造方法。
【請求項3】
投入用袋に導電性弾性層材料の一部を封入する際、導電性弾性層材料を計量して収納しヒートシールすることを特徴とする請求項1または2記載の導電性ローラーの製造方法。
【請求項4】
投入用袋を混練機に投入する際、投入用袋をベルトコンベアにより搬送して投入することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の導電性ローラーの製造方法。

【公開番号】特開2007−296692(P2007−296692A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125402(P2006−125402)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】