説明

導電性ローラ及びそれを備えた画像形成装置

【課題】通電耐久性に優れた導電性ローラを提供する。
【解決手段】シャフト2と、該シャフト2の周囲に形成された弾性層3を備える導電性ローラ1において、弾性層3が、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、導電剤としてカーボンブラックと、イオン性化合物0.8〜1.8質量%と、発泡剤とを配合してなるポリウレタン発泡体からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ローラ、特に通電耐久性に優れ、長期的に良好な画像を形成し得る導電性ローラ及び該導電性ローラを備え、良好な画像を形成し得る画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置においては、帯電や現像、転写、搬送等の各工程において、転写ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ、帯電ローラ等の各種導電性ローラが使用されている。かかるローラは、一般に、金属等の良導電性材料からなるシャフトの外周に導電性弾性層を設けた構造を有しており、弾性層の層構成や材料配合を適宜調整することにより、用途に応じた諸物性を満足するよう設計される。
【0003】
上記弾性層の材料としては、一般に、NBR、EPDM、シリコーンゴム、ポリウレタン等の高分子エラストマーや高分子フォームが用いられており、上記高分子の中でもポリウレタンは、上記導電性ローラに適した低硬度の部材を形成できるため、好んで用いられている。即ち、ポリウレタンを用いた場合、水、低沸点化合物等の発泡剤を用いる方法又は機械的撹拌による方法により、フォーム状で低硬度の弾性層を備えた導電性ローラを得ることができる。
【0004】
上記ポリウレタンからなる弾性層に導電性を付与する手段としては、一般に、カーボンブラック、金属酸化物等の電子導電剤、イオン導電剤等の導電性付与剤を配合する手法が採られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような導電剤を配合した導電性弾性層を備えた導電性ローラにおいては、一定通電により短時間でその電気抵抗が上昇し、すなわち通電耐久性に劣るため、長期的に良好な画像を形成することが困難であるという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、通電耐久性に優れた導電性ローラを提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、かかる導電性ローラを備え、良好な画像を形成することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、導電剤としてカーボンブラックと、発泡剤に加えて、イオン性化合物を特定量配合してなるポリウレタン発泡体を導電性ローラの弾性層に用いることによって、得られた導電性ローラの通電耐久性を向上できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の導電性ローラは、シャフトと、該シャフトの周囲に形成された弾性層を備える導電性ローラにおいて、前記弾性層が、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、導電剤として少なくともカーボンブラックと、イオン性化合物0.8〜1.8質量%と、発泡剤とを配合してなるポリウレタン発泡体からなることを特徴とする。
【0009】
本発明の導電性ローラの好適例においては、前記イオン性化合物が、リチウム及びナトリウムの過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、アルキル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩及びトリフルオロメチル硫酸塩からなる群より選択されることを特徴とする。
【0010】
本発明の導電性ローラの他の好適例においては、前記カーボンブラックの配合量が1.6〜2.2質量%であることを特徴とする。
【0011】
本発明の導電性ローラの他の好適例においては、前記発泡剤が水であることを特徴とする。
【0012】
本発明の導電性ローラの他の好適例においては、上記導電性ローラが画像形成装置のトナー供給ローラであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の画像形成装置は、上記の導電性ローラを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通電耐久性に優れ、長期的に良好な画像を形成し得る導電性ローラを提供することができるという有利な効果を奏する。また、該導電性ローラを備え、良好な画像を形成することが可能な画像形成装置を提供することができるという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の導電性ローラを、図を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の導電性ローラの一例の断面図である。図示例の導電性ローラ1は、シャフト2と、該シャフト2の外周に形成された弾性層3とを備える。
【0016】
本発明の導電性ローラのシャフト2としては、良好な導電性を有する限り特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレススチール、アルミニウム等の金属製の中実体からなる芯金や、内部を中空にくりぬいた金属製円筒体等の金属製シャフト、或いは良導電性のプラスチック製シャフトを用いることができる。
【0017】
本発明の導電性ローラにおいては、上記弾性層3が、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、導電剤としてカーボンブラックと、イオン性化合物0.8〜1.8質量%と、発泡剤とを配合してなるポリウレタン発泡体からなることを特徴とする。弾性層3を構成するポリウレタン発泡体がイオン性化合物を特定量含むことによって、導電性ローラに通電した際にイオン性化合物の解離により電気抵抗の上昇が抑えられ、通電耐久性が向上し、長期的に良好な画像を形成することができる。
【0018】
上記ポリウレタン発泡体を構成するポリオール成分としては、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)等が挙げられる。これらの中でも、触媒等との相溶性、及び酸、アルカリによる加水分解を防ぐ観点から、ポリエーテル系ポリオールが好ましい。
【0019】
上記ポリウレタン発泡体を構成するポリイソシアネート成分としては、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、芳香族MDI、脂肪族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。これらの中でも、発泡硬化時におけるセル径の安定性の観点から、トリレンジイソシアネート(TDI)が好ましい。
【0020】
本発明の導電性ローラにおいては、導電剤としてカーボンブラックを使用して、弾性層3に導電性を付与する。上記カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボンブラック、熱分解カーボンブラック等が挙げられる。これらの中でも、導電性付与の観点から、ケッチェンブラックが好ましい。なお、配合時の増粘を防ぐ観点から、カーボンブラックの配合量は1〜3質量%が好ましく、1.6〜2.2質量%がより好ましい。
【0021】
上記イオン性化合物としては、リチウム及びナトリウムの過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、アルキル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩が挙げられる。これらの中でも、イオン化エネルギーが大きいリチウム及びナトリウムの過塩素酸塩が好ましく、ナトリウムの過塩素酸塩がより好ましい。本発明の導電性ローラにおいては、上記イオン性化合物の配合量は、0.8〜1.8質量%であることを要する。イオン性化合物の配合量が0.8質量%未満であると、導電性ローラに通電した際に電気抵抗の上昇を充分に抑制することができず、1.8質量%を越えると、ポリウレタン発泡体の原料の粘度が高くなり、生産性が低下する上、ローラの抵抗値の環境変動が大きくなる恐れがある。
【0022】
上記発泡剤としては、水、フッ素、メチレンクロライド等を挙げることができる。これら発泡剤の中でも、環境及びコストの面から、水が好ましい。これら発泡剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。上記発泡剤の配合量は、発泡倍率を高める観点から、0.01〜10質量%の範囲が好ましく、0.01〜5質量%の範囲がより好ましい。
【0023】
また、上記ポリウレタン発泡体の材料には、上記の成分に加えて、発泡促進用の触媒や、ウレタン化反応促進用の触媒を添加してもよい。このような触媒としては、例えばアミン系の触媒、有機金属触媒等が挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、また、2種以上組み合わせて用いてもよい。上記触媒の配合量は、発泡時間短縮の観点から、0.1〜40質量%の範囲が好ましく、0.3〜20質量%の範囲がより好ましい。
【0024】
上記弾性層3は、他にも、本発明の効果を損なわない範囲内で無機炭酸塩等の充填剤、シリコーン製泡剤や各種界面活性剤等の製泡剤、フェノールやフェニルアミン等の酸化防止剤、低摩擦化剤、電荷調整剤などを含有してもよい。
【0025】
本発明の画像形成装置は、通電耐久性に優れた上述の導電性ローラを備えることを特徴とし、上記導電性ローラをトナー供給ローラとして備えるのが好ましい。本発明の画像形成装置は、上記導電性ローラを用いる以外、特に制限はなく、公知の方法で製造することができる。
【0026】
以下に、図を参照して本発明の画像形成装置を詳細に説明する。図2は、本発明の画像形成装置の一例の部分断面図である。図示例の画像形成装置は、トナー4を供給するためのトナー供給ローラ5と、静電潜像を保持した感光ドラム6と、トナー供給ローラ5と感光ドラム6との間に配置された現像ローラ7と、現像ローラ7の近傍(図では上部)に設けられた成層ブレード8と、感光ドラム6の近傍(図では上方)に位置する帯電ローラ9と、感光ドラム6の近傍(図では下方)に位置する転写ローラ10と、感光ドラム6に隣接して設けられたクリーニング部11とを備える。なお、本発明の画像形成装置は、更に画層形成装置に通常用いられる公知の部品(図示せず)を備えることができる。
【0027】
図示例の画像形成装置においては、帯電ローラ9によって、感光ドラム7が一定電位に帯電した後、露光機(図示せず)により静電潜像が感光ドラム6上に形成される。次に、トナー供給ローラ5と、現像ローラ7と、感光ドラム6とが、図中の矢印方向に回転することで、トナー供給ローラ5上のトナー4が現像ローラ7を経て感光ドラム6に送られる。現像ローラ7上のトナー4は、成層ブレード8により、均一な薄層に整えられ、現像ローラ7と感光ドラム6とが接触しながら回転することにより、トナー4が現像ローラ7から感光ドラム6の静電潜像に付着し、該潜像が可視化する。潜像に付着したトナー4は、転写ローラ10で紙等の記録媒体に転写され、また、転写後に感光ドラム6上に残留するトナー4は、クリーニング部11のクリーニングブレード12によって除去される。ここで、本発明の画像形成装置においては、例えばトナー供給ローラ5に、上述した通電耐久性に優れた本発明の導電性ローラを用いることで、良好な画像を長期的に安定して形成することが可能となる。
【0028】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
成分1として、分子量3000〜7000の2〜4官能のポリエチレングリコール(PEO)、ポリプロピレングリコール(PPO)ランダム共重合体のポリオール(旭硝子製 800BP)75質量%をトリレンジイソシアネート(TDI、T−80)25質量%を用いて予めプレポリマー化したものを用意した。なお、プレポリマー化する際に、フリーのTDIがNCOの百分率で6〜10%となるように調整した。成分2として、水20質量%中にケッチェンブラック(ライオン(株)製 W311N)1.9質量%を分散させた溶液に、発泡促進用触媒としてトリエチレンジアミン(花王(株)製 カオーNo.26)0.2質量%と、樹脂化促進用触媒としてジプロピレングリコール(花王(株)製 カオーNo.31)0.2質量%と、整泡剤(東洋シリコン(株)製 SZ1127)0.7質量%を添加したものを用意した。更に、成分2に過塩素酸ナトリウムを0.8質量%添加し、低圧発泡機を用いて、成分1と成分2とを79/21の配合比率で全体の質量分率が100となるように混合し、金型に注入することによって成形を行った。その際、成分1のプレポリマーのフリーTDIと成分2の水との反応により生じた炭酸ガスによって、内部に気泡を含有したポリウレタン発泡体を成形した。成形したポリウレタン発泡体を短冊状に裁断し、シャフト挿入用の穴をあけ、この穴部に接着剤を塗布したシャフトを挿入し、加熱することによってポリウレタン発泡体とシャフトとを接着させた。その後、研削、裁断し、ローラを完成させた。
【0030】
(実施例2〜4)
成分1と成分2の配合比率及び使用量を表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様にしてローラを製造した。
【0031】
(比較例1〜2)
成分1と成分2の配合比率及び使用量を表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様にしてローラを製造した。なお、比較例1については、成分2の粘度が高過ぎてしまい、発泡が上手く進行しなかった。
【0032】
(従来例1〜3)
成分1と成分2の配合比率及び使用量を表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様にしてローラを製造した。
【0033】
得られた実施例、比較例及び従来例のローラにつき、以下の特性試験を行った。結果を表1に示す。
【0034】
(1) 粘度
各実施例、比較例及び従来例のローラの製造の際に、成分2(過塩素酸ナトリウムを添加した場合、添加後のもの)の粘度を(静的粘度)を、振動式粘度計(CBCマテリアルズ製 TM−100)を使用して測定した。
【0035】
(2) 通電耐久性
各実施例、比較例及び従来例のローラを金属ドラム上で60rpmで回転させながら、一定電流(10μA)を10時間かけ、ローラの抵抗値変化を測定した。通電前の抵抗値(R0)と10時間通電後の抵抗値(R10)との比率(R10/R0)を通電耐久性とした。
【0036】
(3) 環境変動
各実施例、比較例及び従来例のローラを、温度10.0℃、湿度15.0%の低温/低湿(L/L)、温度22.5℃、湿度55.0%の標準温度/標準湿度(N/N)、温度32.5℃、湿度80.0%の高温/高湿(H/H)の三環境下で24時間以上保管した後、ローラの100V印加時の抵抗値を測定した。三環境下での抵抗値の対数をとり、最大値と最小値との差を環境変動として評価した。
【0037】
【表1】

【0038】
表1より、各実施例のローラでは、従来例と比較して通電耐久性が向上していることが分かる。一方で、比較例1のローラでは、成分2の粘度が高く、生産性が劣化していた上、実施例より環境変動が大きかった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の導電性ローラの一例の断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置の一例の部分断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 導電性ローラ
2 シャフト
3 弾性層
4 トナー
5 トナー供給ローラ
6 感光ドラム
7 現像ローラ
8 成層ブレード
9 帯電ローラ
10 転写ローラ
11 クリーニング部
12 クリーニングブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、該シャフトの周囲に形成された弾性層を備える導電性ローラにおいて、前記弾性層が、ポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、導電剤としてカーボンブラックと、イオン性化合物0.8〜1.8質量%と、発泡剤とを配合してなるポリウレタン発泡体からなることを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
前記イオン性化合物が、リチウム及びナトリウムの過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、アルキル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩及びトリフルオロメチル硫酸塩からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の導電性ローラ。
【請求項3】
前記カーボンブラックの配合量が1.6〜2.2質量%であることを特徴とする請求項1記載の導電性ローラ。
【請求項4】
前記発泡剤が水である請求項1記載の導電性ローラ。
【請求項5】
前記導電性ローラが画像形成装置のトナー供給ローラであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ローラを備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−9215(P2008−9215A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180862(P2006−180862)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】