説明

導電性ローラ及びそれを用いた画像形成装置

【課題】紫外線硬化型樹脂からなる弾性層を有し、感光体等の隣接部材に対する汚染性を改良することが可能な導電性ローラを提供する。
【解決手段】シャフト部材2と、該シャフト部材2の半径方向外側に配設された紫外線硬化型樹脂からなる弾性層3とを備え、前記弾性層3は、厚さが0.5〜2mmで、アスカーC硬度が70度以下で且つアセトン抽出量が紫外線硬化型樹脂総質量の7質量%以下であることを特徴とする導電性ローラ1である。ここで、前記紫外線硬化型樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)及び導電剤(D)を含む弾性層用原料を紫外線照射で硬化されてなり、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と前記(メタ)アクリレートモノマー(B)との合計中のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の含有率が50質量%以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ローラ及び該導電性ローラを用いた画像形成装置に関し、特に現像ローラとして好適で、感光体等の隣接部材に対する汚染性が改良された弾性層を有する導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ(LBP)等の電子写真方式の画像形成装置においては、現像ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、給紙ローラ、クリーニングローラ、定着用の加圧ローラ等として、ロール形状の導電性部材、即ち、導電性ローラが多用されており、該導電性ローラは、通常、長さ方向両端部を軸支されて取り付けられるシャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された一層以上の弾性層とを備えている。なお、上記弾性層の表面に、中間層や表層等の塗膜を備える場合がある。
【0003】
上記画像形成装置が稼動せずに放置された状態では、導電性ローラは、トナーが付着されたまま、感光体等の隣接部材と接触している。ここで、導電性ローラにおける感光体等の隣接部材に対する汚染性が高いと、導電性ローラに付着したトナーが感光体等の隣接部材に融着して、画像不良が発生することになる。これは、上記画像形成装置による印字がトナーを紙等の記録媒体に融着させることで完了するため、融点の低いバインダーが使用されており、該バインダーが導電性ローラ、特に弾性層中に残存する溶剤成分等の化学物質と共存すると、融点以下の温度でもトナーの融着を起こしてしまうからである。従って、導電性ローラにおいては、弾性層中に含まれる溶剤成分や未硬化成分等が極力少ないことが重要になる。
【0004】
例えば、特開平9−176269号公報(特許文献1)には、現像ローラ等の弾性ローラとして好適で、感光体汚染及び残留歪みの性能が良好な弾性材料として、アスカーC硬度、圧縮永久歪み及びアセトン抽出量が規定された弾性部材が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−176269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者が検討したところ、特開平9−176269号公報に開示の弾性部材は、ポリウレタンフォームからなる弾性層を有する導電性ローラについて好適に使用することができるが、紫外線硬化型樹脂からなる弾性層を有する導電性ローラにおいては、硬化に必要な成分や組成がフォーム形成のものとは異なるため、感光体等の隣接部材に対する汚染性に関し、依然として改良の余地があることが分かった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、紫外線硬化型樹脂からなる弾性層を有し、感光体等の隣接部材に対する汚染性を改良することが可能な導電性ローラを提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる導電性ローラを用いることにより、良好な画像を安定して形成することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、シャフト部材の表面に紫外線硬化型樹脂からなる弾性層を配設した導電性ローラにおいて、弾性層の厚さ、アスカーC硬度及びアセトン抽出量を特定の範囲に規定することで、感光体等の隣接部材に対する汚染性を改良することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明の弾性ローラは、シャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された紫外線硬化型樹脂からなる弾性層とを備え、
前記弾性層は、厚さが0.5〜2mmで、アスカーC硬度が70度以下で且つアセトン抽出量が紫外線硬化型樹脂総質量の7質量%以下であることを特徴とする。ここで、本明細書中で用いる「厚さ」とは、平均厚さを意味する。
【0010】
本発明の導電性ローラの好適例においては、前記紫外線硬化型樹脂が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)及び導電剤(D)を含む弾性層用原料を紫外線照射で硬化されてなり、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と前記(メタ)アクリレートモノマー(B)との合計中のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の含有率が50質量%以上である。
【0011】
本発明の導電性ローラにおいては、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)が、ポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタンプレポリマーに、水酸基を有する(メタ)アクリレートを付加させてなり、前記ポリオールが、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール及びポリオキシブチレングリコールからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。この場合、紫外線硬化型樹脂が疎水化されることにより、感光体等の隣接部材に対する汚染性を改良することができる。
【0012】
本発明の導電性ローラにおいて、前記(メタ)アクリレートモノマー(B)は、官能基数が3.0以下であることが好ましい。この場合、紫外線硬化型樹脂中の架橋密度が適度に上昇することにより、感光体等の隣接部材に対する汚染性を改良することができる。
【0013】
本発明の導電性ローラにおいて、前記(メタ)アクリレートモノマー(B)は、2官能の(メタ)アクリレートモノマーを含み、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と前記(メタ)アクリレートモノマー(B)との合計中の2官能の(メタ)アクリレートモノマーの含有率が1〜15質量%であることが好ましい。この場合、アセトン抽出量が低下し、感光体等の隣接部材に対する汚染性を改良することができる。
【0014】
本発明の導電性ローラは、現像ローラとして好適である。
【0015】
また、本発明の画像形成装置は、上記の導電性ローラを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シャフト部材の表面に、特定の厚さ、アスカーC硬度及びアセトン抽出量を有し、紫外線硬化型樹脂からなる弾性層を備え、感光体等の隣接部材に対する汚染性が改良された導電性ローラを提供することができる。また、かかる導電性ローラを用いることにより、良好な画像を安定して形成することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<導電性ローラ>
以下に、本発明の導電性ローラを、図を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の導電性ローラの一例の断面図である。図示例の導電性ローラ1は、長さ方向両端部に軸支されて取り付けられるシャフト部材2と、該シャフト部材2の半径方向外側に配置された紫外線硬化型樹脂からなる弾性層3とを備える。なお、図1に示す導電性ローラ1は、弾性層3が一層のみから形成されるが、本発明の導電性ローラは、弾性層を二層以上の層から形成してもよい。また、本発明の導電性ローラは、図2に示すように弾性層の表面に、塗膜層を有することもできる。
【0018】
図2は、本発明の導電性ローラの他の例の断面図である。図示例の導電性ローラ4は、紫外線硬化型樹脂からなる弾性層3の半径方向外側に配置された二層の塗膜層5を備える。なお、図1と同じ符号は同じ部材であることを示す。また、図示例の導電性ローラ4は、塗膜層5を二層有しているが、本発明の導電性ローラにおいては、塗膜層を一層のみ有していてもよいし、塗膜層を三層以上有していてもよい。本発明の導電性ローラにおいては、弾性層の半径方向外側に塗膜層を配設することで、弾性層中に残留した汚染の原因となる化学物質がブリードするのを防止することができる。また、塗膜層の原料中に、導電性ローラの表層の性能に応じて、微粒子等の添加剤を適宜選択して配合することができる。該塗膜層は、特に制限されるものではないが、弾性層との密着性の観点から、紫外線硬化型樹脂を含むことが好ましい。
【0019】
図1及び2において、シャフト部材2は、金属シャフト2Aと、該金属シャフト2Aの半径方向外側に配設された高剛性の樹脂基材2Bとからなるが、本発明の導電性ローラのシャフト部材は、良好な導電性を有する限り特に制限はなく、例えば、金属シャフト2Aのみから構成されていてもよいし、高剛性の樹脂基材のみから構成されていてもよいし、内部を中空にくりぬいた金属製又は高剛性樹脂製の円筒体等であってもよい。なお、シャフト部材2に高剛性の樹脂を使用する場合、高剛性樹脂に導電剤を添加・分散させて、十分に導電性を確保することが好ましい。ここで、高剛性樹脂に分散させる導電剤としては、カーボンブラック粉末、グラファイト粉末、カーボンファイバー、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属粉末、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物粉末、導電性ガラス粉末等の粉末状導電剤が好ましい。これら導電剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。該導電剤の配合量は、特に制限されるものではないが、高剛性樹脂の全体に対して5〜40質量%の範囲が好ましく、5〜20質量%の範囲が更に好ましい。
【0020】
上記金属シャフト2Aや金属製円筒体の材質としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられる。また、上記高剛性の樹脂基材2Bの材質としては、ポリアセタール、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド12、ポリアミド4・6、ポリアミド6・10、ポリアミド6・12、ポリアミド11、ポリアミドMXD6、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリアセタール、ポリアミド6・6、ポリアミドMXD6、ポリアミド6・12、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネートが好ましい。これら高剛性樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記シャフト部材が、金属シャフト又は該金属シャフトの外側に高剛性の樹脂基材を配設したシャフトである場合、該金属シャフトの外径は、5〜20mmの範囲が好ましい。また、シャフト部材が、金属シャフトの外側に高剛性の樹脂基材を配設したシャフトである場合、該樹脂基材の外径は、5〜10mmの範囲が好ましい。なお、上記シャフト部材に樹脂材料を使用することで、シャフト部材の外径を大きくしても、シャフト部材の質量の増加を抑制することができる。
【0022】
本発明の導電性ローラにおいて、上記紫外線硬化型樹脂からなる弾性層は、厚さが0.5〜2mmで、アスカーC硬度が70度以下で且つアセトン抽出量が該紫外線硬化型樹脂総質量の7質量%以下であることを特徴とする。上述したように、画像形成装置においては、導電性ローラ、特に該導電性ローラの弾性層中に残留する溶剤成分や未硬化成分等の化学物質による感光体等の隣接部材へのトナーの融着が、画像不良を発生させる一因となる。本発明者は、感光体等の隣接部材に対する汚染性について詳細に検討したところ、特定の厚さ及びアスカーC硬度を有する紫外線硬化型樹脂からなる弾性層において、溶剤成分や未硬化成分等の化学物質のアセトン抽出量を一定値以下に規定することで、感光体等の隣接部材に対する汚染性を十分に低減できることが分かった。そして、本発明の導電性ローラの弾性層は、アセトン抽出量が、該弾性層を形成する紫外線硬化型樹脂の総質量の7質量%以下であるため、感光体等の隣接部材に対する汚染を防止することができ、ここで、該弾性層を有する導電性ローラを画像形成装置に用いた場合、画像不良が発生することなく、良好な画像を安定して形成することができる。加えて、本発明の導電性ローラは、弾性層の厚さが0.5〜2mmで且つアスカーC硬度が70度以下であるため、該弾性層が、真円度、振れ、凹凸等のシャフト部材の表面精度の影響を受け難く、かかる導電性ローラを画像形成装置に使用した場合においては、画像ムラの発生を著しく低減することもできる。
【0023】
本発明の導電性ローラの弾性層は、アセトン抽出量が紫外線硬化型樹脂総質量の7質量%以下であることを要し、0.1〜3.5質量%であることが好ましい。ここで、該アセトン抽出量は、ソックスレー抽出装置を用い、弾性層を形成する紫外線硬化型樹脂をアセトンで8時間熱還流抽出した際の紫外線硬化型樹脂中に含まれる抽出物の割合(質量%)である。アセトン抽出量を7質量%以下とすることで、感光体等の隣接部材に対する汚染性を大幅に改善することができる。なお、本発明の導電性ローラにおいては、弾性層用原料に含まれ得る低分子量化合物の含有量を低減することで、アセトン抽出量を抑えることができるが、この場合、弾性層用原料の粘度が高くなり過ぎ、弾性層の形成が困難になる。従って、このアセトン抽出量は、該弾性層用原料に含まれ得る比較的高分子量の化合物(例えば、オリゴマー)の成分、組成等を適宜選択することで調整することが好ましい。
【0024】
本発明の導電性ローラの弾性層は、厚さが0.5〜2mmであることを要し、0.5〜1.2mmであることが好ましい。ここで、該弾性層の厚さが、上記の特定した範囲内にあれば、シャフト部材の表面精度に起因する影響を効果的に緩和することができる。また、該弾性層の厚さが0.5mm未満では、シャフト部材の表面精度に起因する影響を十分に緩和することができず、一方、2mmを超えると、弾性層の形成が困難になる。なお、本発明の導電性ローラが、弾性層の半径方向外側に配置された塗膜層を備える場合、該塗膜層の厚さは、5〜50μmであることが好ましい。
【0025】
本発明の導電性ローラの弾性層は、アスカーC硬度が70度以下であることを要し、35〜70度であることが好ましい。ここで、該アスカーC硬度は、高さ12.7mm、直径29mmの円柱状サンプルの平面部分を測定した際の値である。アスカーC硬度を70度以下とすることで、シャフト部材の表面精度に起因する影響を十分に吸収することができ、画像ムラの発生を著しく低減することができる。なお、このアスカーC硬度は、弾性層用原料に含まれる成分、組成等を適宜選択することで調整することができる。
【0026】
本発明の導電性ローラの弾性層は、紫外線硬化型樹脂からなり、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)及び導電剤(D)を含む弾性層用原料を紫外線照射で硬化させて得られる紫外線硬化型樹脂からなる。なお、該弾性層用原料には、本発明の目的を害しない限り、種々の添加剤を配合することができる。
【0027】
上記弾性層用原料に用いるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を一つ以上有し、ウレタン結合(−NHCOO−)を複数有する化合物である。該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、官能基数が3.0以下であることが好ましく、1.5〜2.5であることが更に好ましい。ここで、官能基とは、アクリロイルオキシ基とメタクリロイルオキシ基をさし、官能基数とは、平均官能基数をさす。上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の官能基数が3.0以下であれば、紫外線硬化型樹脂中の架橋密度が適度に増加するため、弾性層の硬度を上昇させることなく、アセトン抽出量を低減することができる。また、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)中に、3官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが含まれると、弾性層の硬度を増加させるおそれがある。
【0028】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、分子量が5,000〜100,000であることが好ましい。なお、該分子量は、ポリスチレン換算の数平均分子量である。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の分子量が5,000未満では、弾性層の硬度が高くなり過ぎることがあり、一方、100,000を超えると、弾性層の圧縮残留歪が大きくなり過ぎることがある。
【0029】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、特に制限されないが、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとからウレタンプレポリマーを合成し、該ウレタンプレポリマーに水酸基を有する(メタ)アクリレートを付加させることによって製造することができる。
【0030】
上記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールは、水酸基(OH基)を複数有する化合物であり、該ポリオールとして、具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、アルキレンオキサイド変性ポリブタジエンポリオール及びポリイソプレンポリオール等が挙げられ、これらの中でも、ポリエーテルポリオールが特に好ましい。該ポリエーテルポリオールとして、具体的には、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等が好適に挙げられる。上記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールとして、このような好適なポリエーテルポリオールを選択した場合には、得られる紫外線硬化型樹脂の疎水性を高め、該紫外線硬化型樹脂中に水分を取り込み難くする効果が得られる。このため、該紫外線硬化型樹脂は、加水分解等の劣化反応に対し耐性を示し、アセトン抽出量を低減することができる。なお、上記ポリエーテルポリオールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコールに、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキサイドを付加させて得られる。これらポリオールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0031】
上記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールは、分子量が500〜15,000の範囲にあることが好ましい。ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリオールの分子量が500未満では、硬度が高くなるため、導電性ローラの弾性層に不適であり、一方、15,000を超えると、圧縮残留歪が増大して、画像不良を発生し易くなる。
【0032】
上記ポリイソシアネートは、イソシアネート基(NCO基)を複数有する化合物であって、該ポリイソシアネートとして、具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート(クルードMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)や、これらのイソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、グリコール変性物等が挙げられる。これらポリイソシアネートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0033】
上記ウレタンプレポリマーの合成においては、目的に応じて、ポリオールとポリイソシアネートとの割合を適宜選択することができる。ここで、該ウレタンプレポリマーは、イソシアネートインデックスが110〜200の範囲にあることが好ましく、115〜200の範囲にあることが更に好ましい。なお、イソシアネートインデックスとは、下記式:
(イソシアネートインデックス)=(B/A)×100
[式中、AはポリオールのOH基の数であり、BはポリイソシアネートのNCO基の数]で算出される値である。ウレタンプレポリマーのイソシアネートインデックスが110未満では、圧縮残留歪が増大して、画像不良を発生し易くなり、一方、200を超えると、ポリオールと反応しないイソシアネートが増加して、物性が低下する。
【0034】
上記ウレタンプレポリマーの合成においては、ウレタン化反応用の触媒を用いることが好ましい。該ウレタン化反応用触媒としては、ジブチルスズジラウレート,ジブチルスズジアセテート,ジブチルスズチオカルボキシレート,ジブチルスズジマレエート,ジオクチルスズチオカルボキシレート,オクテン酸スズ,モノブチルスズオキシド等の有機スズ化合物;塩化第一スズ等の無機スズ化合物;オクテン酸鉛等の有機鉛化合物;トリエチルアミン,ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類;テトラメチルエチレンジアミン,テトラメチルプロパンジアミン,テトラメチルヘキサンジアミン等のジアミン類;ペンタメチルジエチレントリアミン,ペンタメチルジプロピレントリアミン,テトラメチルグアニジン等のトリアミン類;トリエチレンジアミン,ジメチルピペラジン,メチルエチルピペラジン,メチルモルホリン,ジメチルアミノエチルモルホリン,ジメチルイミダゾール,ピリジン等の環状アミン類;ジメチルアミノエタノール,ジメチルアミノエトキシエタノール,トリメチルアミノエチルエタノールアミン,メチルヒドロキシエチルピペラジン,ヒドロキシエチルモルホリン等のアルコールアミン類;ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル,エチレングリコールビス(ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類;p-トルエンスルホン酸,メタンスルホン酸,フルオロ硫酸等の有機スルホン酸;硫酸,リン酸,過塩素酸等の無機酸;ナトリウムアルコラート,水酸化リチウム,アルミニウムアルコラート,水酸化ナトリウム等の塩基類;テトラブチルチタネート,テトラエチルチタネート,テトライソプロピルチタネート等のチタン化合物;ビスマス化合物;四級アンモニウム塩等が挙げられる。これら触媒の中でも、有機スズ化合物が好ましい。これら触媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記触媒の使用量は、上記ポリオール100質量部に対して0.001〜2.0質量部の範囲が好ましい。
【0035】
また、上記ウレタンプレポリマーに付加させる水酸基を有する(メタ)アクリレートは、水酸基を1つ以上有し、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を1つ以上有する化合物である。該水酸基を有する(メタ)アクリレートは、上記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に付加することができる。該水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら水酸基を有するアクリレートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記弾性層用原料に用いる(メタ)アクリレートモノマー(B)は、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を1つ以上有するモノマーであり、反応性希釈剤として作用し、即ち、紫外線で硬化する上、弾性層用原料の粘度を低下させることが可能である。
【0037】
上記(メタ)アクリレートモノマー(B)は、官能基数が3.0以下であることが好ましく、1〜2であることが更に好ましい。ここで、官能基とは、アクリロイルオキシ基とメタクリロイルオキシ基をさし、官能基数とは、平均官能基数をさす。(メタ)アクリレートモノマー(B)の官能基数が3.0以下であれば、紫外線硬化型樹脂中の架橋密度が適度に増加するため、弾性層の硬度を上昇させることなく、アセトン抽出量を低減することができる。また、上記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、2官能の(メタ)アクリレートモノマーを含む場合、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と(メタ)アクリレートモノマー(B)との合計中の2官能の(メタ)アクリレートモノマーの含有率は、1〜15質量であることが好ましい。2官能の(メタ)アクリレートモノマーの含有率が1質量%未満では、紫外線硬化型樹脂中の架橋密度を十分に増加させることができず、一方、15質量%を超えると、架橋密度が高くなり過ぎ、弾性層の硬度を増加させる場合がある。
【0038】
上記(メタ)アクリレートモノマー(B)は、ガラス転移点(Tg)が50℃以下であることが好ましい。ここで、ガラス転移点(Tg)が50℃以下の(メタ)アクリレートモノマー(B)は、一般にモノマー分子中の上記官能基を除いた部分の割合が大きい特徴があり、該(メタ)アクリレートモノマー(B)を上記オリゴマー(A)と重合させた場合においては、重合体中の該(メタ)アクリレートモノマー(B)の官能基を除いた部分の運動が大きくなり、結果として弾性層の硬度を低減させる。
【0039】
上記(メタ)アクリレートモノマー(B)としては、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、β-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、イソボルニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら(メタ)アクリレートモノマー(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
上記弾性層用原料において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)及び(メタ)アクリレートモノマー(B)の合計に占めるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の割合は、50質量%以上であることが好ましく、60〜90質量%であることが更に好ましい。上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の含有率が50質量%未満では、モノマーの割合が増えるため、低分子重合物が増加してしまい、その結果、アセトン抽出量が増加するおそれがある。
【0041】
上記弾性層用原料において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と(メタ)アクリレートモノマー(B)との質量比(A/B)は、100/0〜10/90の範囲にあることが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と(メタ)アクリレートモノマー(B)との合計に占めるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の割合を10質量%以上とすることで(即ち、(メタ)アクリレートモノマー(B)の割合を90質量%以下とすることで)、低硬度の弾性層を得ることができる。
【0042】
上記弾性層用原料に用いる光重合開始剤(C)は、紫外線を照射されることによって、上述したウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)及び(メタ)アクリレートモノマー(B)の重合を開始させる作用を有する。該光重合開始剤(C)としては、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エステル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン及び3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4,4-ジメトキシベンゾフェノン、4,4-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4-ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル及びベンジルメチルケタール等のベンジル誘導体、ベンゾイン及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンゾインイソプロピルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、フルオレン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。これら光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、上記弾性層用原料における、光重合開始剤(C)の配合量は、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と上記(メタ)アクリレートモノマー(B)との合計100質量部に対して、0.2〜5.0質量部の範囲が好ましい。
【0043】
上記弾性層用原料として用いる導電剤(D)は、弾性層に導電性を付与する作用を有する。該導電剤(D)としては、紫外線を透過できるものが好ましく、イオン導電剤や透明な電子導電剤を用いることが好ましく、イオン導電剤を用いることが特に好ましい。該イオン導電剤は、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)に溶解する上、透明性を有するため、導電剤(D)としてイオン導電剤を用いた場合、シャフト部材上に弾性層用原料を厚く塗布しても、紫外線が十分に塗膜内部まで到達し、弾性層用原料を十分に硬化させることができる。ここで、イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩等のアンモニウム塩;リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩等が挙げられる。また、透明な電子導電剤としては、ITO、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物の微粒子;ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属の微粒子:導電性酸化チタンウィスカー、導電性チタン酸バリウムウィスカー等の導電性ウィスカー等が挙げられる。これら導電剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、上記弾性層用原料における、導電剤(D)の配合量は、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と上記(メタ)アクリレートモノマー(B)との合計100質量部に対して、0.1〜5.0質量部の範囲が好ましい。
【0044】
また、上記弾性層用原料には、更に重合禁止剤を上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と上記(メタ)アクリレートモノマー(B)との合計100質量部に対して0.001〜0.2質量部添加してもよい。重合禁止剤を添加することで、紫外線照射前の熱重合を防止することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエ−テル、p-メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチルヒドロキシアニソール、3-ヒドロキシチオフェノール、α-ニトロソ-β-ナフトール、p-ベンゾキノン、2,5-ジヒドロキシ-p-キノン等が挙げられる。
【0045】
本発明の導電性ローラは、シャフト部材の外表面に、上記弾性層用原料を塗布した後、紫外線照射により硬化させることで作製できる。そのため、本発明の導電性ローラは、弾性層の作製に大量の熱エネルギーを必要とせず、短時間で弾性層を作製することが可能である。また、弾性層の形成に、キュアー炉等が不要であるため、多額の設備費用を必要としない。なお、弾性層用原料をシャフト部材の外表面に塗布する方法としては、スプレー法、ロールコーター法、ディッピング法、ダイコート法等が挙げられ、これらの中でも、ダイコート法が好ましい。上記弾性層を形成する際に、ダイコート法により上記弾性層用原料を塗布することは、迅速かつ確実な弾性層用原料の塗布を達成し、導電性ローラの製造の作業効率を大幅に短縮することができる。また、紫外線照射に用いる光源としては、水銀灯、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。紫外線照射の条件は、弾性層用原料に含まれる成分、組成及び塗布量等に応じて適宜選択され、照射強度や積算光量等を適宜調整すればよい。
【0046】
上述したの本発明の導電性ローラは、画像形成装置の現像ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、給紙ローラ、クリーニングローラ、定着用の加圧ローラ等として用いることができるが、現像ローラとして特に好適である。
【0047】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、上述した導電性ローラを備えることを特徴とし、現像ローラとして備えることが好ましい。本発明の画像形成装置は、上記導電性ローラを用いる以外、特に制限はなく、公知の方法で製造することができる。
【0048】
以下に、図3を参照して本発明の画像形成装置を詳細に説明する。図3は、本発明の画像形成装置の一例の部分断面図である。図示例の画像形成装置は、静電潜像を保持した感光体6と、感光体6の近傍(図では上方)に位置し感光体6を帯電させるための帯電ローラ7と、トナー8を供給するためのトナー供給ローラ9と、トナー供給ローラ9と感光体6との間に配置された現像ローラ10と、現像ローラ10の近傍(図では上方)に設けられた成層ブレード11と、感光体6の近傍(図では下方)に位置する転写ローラ12と、感光体6に隣接して配置されたクリーニングローラ13とを備える。なお、本発明の画像形成装置は、更に画像形成装置に通常用いられる公知の部品(図示せず)を備えることができる。
【0049】
図示例の画像形成装置においては、感光体6に帯電ローラ7を当接させて、感光体6と帯電ローラ7との間に電圧を印加して、感光体6を一定電位に帯電させた後、露光機(図示せず)により静電潜像を感光体6上に形成する。次に、感光体6と、トナー供給ローラ9と、現像ローラ10とが、図中の矢印方向に回転することで、トナー供給ローラ9上のトナー8が現像ローラ10を経て感光体6に送られる。現像ローラ10上のトナー8は、成層ブレード11により、均一な薄層に整えられ、現像ローラ10と感光体6とが接触しながら回転することにより、トナー8が現像ローラ10から感光体6の静電潜像に付着し、該潜像が可視化する。潜像に付着したトナー8は、転写ローラ12で紙等の記録媒体に転写され、また、転写後に感光体6上に残留するトナー8は、クリーニングローラ13によって除去される。ここで、本発明の画像形成装置においては、帯電ローラ7、トナー供給ローラ9、現像ローラ10、転写ローラ12及びクリーニングローラ13の少なくともいずれかに、好ましくは、現像ローラ10に、上述した本発明の導電性ローラを用いることで、優れた画像を安定的に形成することが可能となる。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0051】
<オリゴマー(A-1)の合成>
2官能で分子量3200のポリオキシプロピレングリコール100質量部、イソホロンジイソシアネート10.4質量部(イソシアネートインデックス=150)、及びジブチルスズジラウレート0.01質量部を撹拌混合しながら、70℃で2時間反応させて、分子鎖の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成した。得られたウレタンプレポリマーは、NCO基含有率が1.19%であった。更に、このウレタンプレポリマー100質量部に2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)3.3質量部を撹拌混合し、70℃で2時間反応させて、官能基数が2で且つ分子量が18000のオリゴマー(A-1)を合成した。
【0052】
<オリゴマー(A-2)の合成>
2官能で分子量3200のポリオキシプロピレングリコールに代えて、2官能で分子量4000のポリオキシエチレングリコールを用いた他は、上記オリゴマー(A-1)と同様にして、官能基数が2で且つ分子量が18000のオリゴマー(A-2)を合成した。
【0053】
<オリゴマー(A-3)の合成>
2官能で分子量3200のポリオキシプロピレングリコールに代えて、2官能で分子量4000のポリオキシテトラメチレングリコールを用いた他は、上記オリゴマー(A-1)と同様にして、官能基数が2で且つ分子量が20000のオリゴマー(A-3)を合成した。
【0054】
<オリゴマー(A-4)の合成>
2官能で分子量3200のポリオキシプロピレングリコールに代えて、2官能で分子量4000のポリオキシブチレングリコールを用いた他は、上記オリゴマー(A-1)と同様にして、官能基数が2で且つ分子量が18000のオリゴマー(A-4)を合成した。
【0055】
<実施例1〜20及び比較例1〜2>
表1〜3に示す配合処方の原料混合物を攪拌機にて、液温70℃、60回転/分で1時間攪拌混合し、混合液を濾過して、弾性層用塗工液を得た。
【0056】
上記弾性層用塗工液に対し、UV照射強度700mW/cm2で2.5秒間UV照射し、1.0mmの厚みのシートサンプルを作製した後、該シートサンプルを1cm角の大きさに切り、ソックスレー抽出管用ろ紙に約5gを量りとった。次に、150ml丸底フラスコにアセトン150mlを加えた後、該丸底フラスコにサンプルを量りとったろ紙を入れたソックスレー抽出管とジムロート管とを取り付けて、70℃の湯浴中、8時間熱還流抽出を行った。その後、丸底フラスコ中のアセトンを減圧留去して、80℃のオーブンで4時間乾燥し、アセトン抽出量を求めた。結果を表1〜3に示す。なお、アセトン抽出量は、下記式:
アセトン抽出量(質量%)=[(C−B)/A]× 100
[式中、Aはソックスレー抽出管用ろ紙に量りとったサンプルの質量(g)であり、Bは150ml丸底フラスコの質量(g)であり、Cは抽出物を含んだ150ml丸底フラスコの質量(g)である]で算出される値である。
【0057】
上記弾性層用塗工液を深さ12.7mm、内径29mmのキャビティーを持つモールドに注ぎ、石英ガラス板で蓋をした後、UV照射強度700mW/cm2で10秒間UV照射し、円柱状の物性測定用UV硬化樹脂サンプルを得た。得られたサンプルについて、平面部分のアスカーC硬度[高分子計器(株)製]を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0058】
次に、外径6.0mmの金属シャフトを挿入した外径17.0mmのポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂製導電性ローラ基材に上記弾性層用塗工液をダイコーターにより厚さ1500μmで塗布し、塗布しながらスポットUV照射により弾性層用塗工液を硬化させた。このようにして形成したUV硬化樹脂製弾性層付ローラを、さらに窒素雰囲気下で回転させながらUV照射強度700mW/cm2で5秒間UV照射した。
【0059】
このようにして得たUV硬化樹脂製弾性層付ローラの表面に、表4に示す配合処方の中間層用塗工液をロールコーターにて塗布し、UV照射して、中間層付ローラ(中間層:7μm)を得た。次に、該中間層付ローラの表面に、表4に示す配合処方の表層用塗工液をロールコーターにて塗布し、UV照射して、導電性ローラ(表層:8μm)を得た。得られた導電性ローラについて、汚染試験を下記の方法で評価した。結果を表1〜3に示す。
【0060】
(1)汚染試験
上記導電性ローラを現像ローラとして画像形成装置中のトナーカートリッジに組み込み、50℃で5日間放置した後、印刷し、目視による官能評価にて、ローラのピッチに当てはまる横スジが観測されるものを「NG」、観測されないものを「OK」とした。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
*1 疎水性1官能モノマー,ラウリルアクリレート,共栄社化学(株)製,Tg=-3℃.
*2 疎水性1官能モノマー,イソミリスチルアクリレート,共栄社化学(株)製,Tg=-56℃.
*3 親水性1官能モノマー,メトキシトリエチレングリコールアクリレート,共栄社化学(株)製,Tg=-60℃.
*4 2官能モノマー,トリエチレングリコールジアクリレート,共栄社化学(株)製,Tg=80℃.
*5 親水性1官能モノマー,β-アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート,新中村化学(株)製,Tg=-10℃.
*6 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製.
*7 昭島化学工業(株)製.
*8 1官能モノマー,イソボルニルアクリレート,共栄社化学(株)製.
*9 2官能モノマー,#600ジアクリレート,共栄社化学(株)製.
【0065】
【表4】

【0066】
*10 日本合成化学工業(株)製,ウレタンアクリレートオリゴマー.
*11 新中村化学(株)製,モルフォリンアクリレート.
*12 共栄社化学(株)製,イソボルニルアクリレート.
*13 共栄社化学(株)製,2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート.
*14 大日本インキ(株)製,ウレタン尿素樹脂.
*15 綜研化学(株)製,アクリル樹脂.
*16 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製.
【0067】
表1〜3から、実施例の導電性ローラは、弾性層の厚さが0.5〜2mmで、アスカーC硬度が70度以下で且つアセトン抽出量が紫外線硬化型樹脂総質量の7質量%以下であるため、該導電性ローラを現像ローラとして組み込んだ画像形成装置は、感光体等の隣接部材に対する汚染が確認されず、画像不良の発生が抑制されていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の導電性ローラの一例の断面図である。
【図2】本発明の導電性ローラの他の例の断面図である。
【図3】本発明の画像形成装置の一例の部分断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 導電性ローラ
2 シャフト部材
2A 金属シャフト
2B 高剛性の樹脂基材
3 弾性層
4 導電性ローラ
5 塗膜層
6 感光体
7 帯電ローラ
8 トナー
9 トナー供給ローラ
10 現像ローラ
11 成層ブレード
12 転写ローラ
13 クリーニングローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された紫外線硬化型樹脂からなる弾性層とを備える導電性ローラにおいて、
前記弾性層は、厚さが0.5〜2mmで、アスカーC硬度が70度以下で且つアセトン抽出量が紫外線硬化型樹脂総質量の7質量%以下であることを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
前記紫外線硬化型樹脂が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)及び導電剤(D)を含む弾性層用原料を紫外線照射で硬化されてなり、
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と前記(メタ)アクリレートモノマー(B)との合計中のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の含有率が50質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)が、ポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタンプレポリマーに、水酸基を有する(メタ)アクリレートを付加させてなり、
前記ポリオールが、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール及びポリオキシブチレングリコールからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載の導電性ローラ。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)は、官能基数が3.0以下であることを特徴とする請求項2に記載の導電性ローラ。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)は、2官能の(メタ)アクリレートモノマーを含み、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と前記(メタ)アクリレートモノマー(B)との合計中の2官能の(メタ)アクリレートモノマーの含有率が1〜15質量%であることを特徴とする請求項2に記載の導電性ローラ。
【請求項6】
現像ローラであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ローラを用いた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−63724(P2009−63724A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230151(P2007−230151)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】