説明

導電性ローラ及び画像形成装置

【課題】高品質の画像を長期間にわたって形成することに貢献する導電性ローラ、及び、この導電性ローラを利用して高品質の画像を長期間にわたって形成することのできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】軸体2と、前記軸体2の外周面に形成された弾性層3と、前記弾性層4の外周面に形成されたコート層4とを備え、前記コート層4は、繊維状炭素材料、及び、前記繊維状炭素材料に対する質量比が5〜200の粉末状炭素材料を含有する導電性ローラ1、並びに、この導電性ローラ1を現像ローラ又は/及び帯電ローラとして備えた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ローラ及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、高品質の画像を長期間にわたって形成することに貢献する導電性ローラ及び高品質の画像を長期間にわたって形成することのできる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置には、通常、軸体の外周面に形成された弾性層を備えた各種導電性ローラが装着されている。
【0003】
具体的には、例えば、図4に示されるように、タンデム型カラー画像形成装置には、複数の現像ユニットB、C、M及びYが配置されており、現像ユニットBを例にして説明すると、像担持体11Bを一様に帯電させる帯電手段12Bの一例としての帯電ローラ、帯電した現像剤22Bを均一に像担持体11Bに供給する現像剤担持体23Bの一例としての現像ローラ、記録体16に転写された現像剤像を記録体16に定着させる定着手段30を構成する定着ローラ31等が装着されている。これらの導電性ローラは、電気特性によって、現像剤22Bを所望のように担持し、像担持体11B等の被当接体を一様に帯電させ、現像剤22Bを所望のように定着させ、又は、記録体16等を所望のように搬送すること等によって、高品質の画像を形成することに貢献する。
【0004】
したがって、高品質の画像を形成するには、導電性ローラは均一な電気特性を有している必要があり、従来の導電性ローラは、導電性材料を含有する組成物で形成された弾性層等を備えている。例えば、特許文献1には、「電子写真装置あるいは静電記録装置に用いられる導電性部材であって、カーボンナノチューブを配合したフォームラバーからなる弾性層を有することを特徴とする導電性部材」が記載され、また、特許文献2には、「負帯電性一成分系現像剤を担持して搬送するための円筒状横断面形状を有する現像剤担持体を備えた現像装置において、前記現像剤担持体の円筒状外周表面に、ポリアクリロニトリル系のカーボン繊維及びフェノール樹脂を含有する被膜を形成したことを特徴とする現像装置」が記載されている。さらに、特許文献3には、電子写真機器用部材に用いられる電子写真機器用導電性組成物の製法として、「下記の(A)中で下記の(B)を予備分散した後、下記の(A)と(B)とを混練する工程を備えることを特徴とする電子写真機器用導電性組成物の製法。(A)液状ポリマー。(B)電子導電性繊維状充填剤」が記載されている。
【0005】
しかし、一般に、導電性材料は、樹脂又はゴム等に分散しにくく、また、凝集しやすいから、導電性ローラの弾性層又は被膜等を、単に導電性材料を含有する組成物で形成しても、得られる弾性層又は被膜等の電気特性は弾性層又は被膜等の全体にわたって均一に調整することができず、この導電性ローラを画像形成装置に装着しても、所望のように高品質の画像を形成することができないことがある。また、近年の画像形成装置は画像の高精細化及び印刷速度の高速化が図られ、高品質の画像を形成するには、導電性ローラの電気特性は、従来に比してより一層高い均一性を有することが要求されている。
【0006】
さらに、画像形成装置の長いライフサイクルを実現するため、画像形成装置を構成する各種部材に関する種々の検討がなされており、画像形成装置に装着される各種ローラも例外ではない。
【0007】
【特許文献1】特開2004−101958号公報
【特許文献2】特許第2909684号明細書
【特許文献3】特開2005−62474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、高品質の画像を長期間にわたって形成することに貢献する導電性ローラを提供すること、及び、この導電性ローラを利用して高品質の画像を長期間にわたって形成することのできる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、軸体と、前記軸体の外周面に形成された弾性層と、前記弾性層の外周面に形成されたコート層とを備え、前記コート層は、繊維状炭素材料、及び、前記繊維状炭素材料に対する質量比が5〜200の粉末状炭素材料を含有することを特徴とする導電性ローラであり、
請求項2は、前記繊維状炭素材料は、その繊維径が5〜200nmであり、その繊維長さが1〜500μmである請求項1に記載の導電性ローラであり、
請求項3は、前記粉末状炭素材料は、その粒子径が20〜90nmである請求項1又は2に記載の導電性ローラであり、
請求項4は、前記繊維状炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー及び気相成長炭素繊維からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ローラであり、
請求項5は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ローラを、現像ローラ又は/及び帯電ローラとして、備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る導電性ローラのコート層は、繊維状炭素材料と粉末状炭素材料とを所定の質量比で含有しているから、繊維状炭素材料及び粉末状炭素材料がほとんど凝集することなく、分散している。その結果、この発明に係る導電性ローラは、その軸線方向及び円周方向にわたる均一な電気特性と高い耐久性とを発揮することができる。したがって、この発明によれば、高品質の画像を形成することに貢献する導電性ローラを提供することができる。
【0011】
また、この発明に係る導電性ローラは軸線方向及び円周方向にわたる均一な電気特性と高い耐久性とを発揮することができるから、この導電性組ローラを、画像形成装置における現像ローラ及び帯電ローラの少なくとも一方、例えば、帯電ローラとして用いる場合には、像担持体を長期間にわたって所望のように一様に帯電させることができ、また、現像ローラとして用いる場合には、帯電した現像剤を長期間にわたって所望のように均一に像担持体に供給することができ、その結果、高品質の画像を長期間にわたって形成することに大きく貢献する。したがって、この発明によれば、高品質の画像を長期間にわたって形成することのできる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示されるように、この発明に係る一実施例である導電性ローラは、軸体2と、弾性層3と、コート層4とを備え、例えば、図4に示される画像形成装置等に配設される。
【0013】
この導電性ローラ1は、その全体の電気抵抗率(以下、全体電気抵抗率と称することがある。)が10〜1010Ωであるのが好ましい。導電性ローラ1が前記範囲の全体電気抵抗率を有していると、帯電特性が優れ、例えば、画像形成装置の現像ローラとして導電性ローラ1を使用する場合には、現像剤を所望のように帯電させて担持することができるうえ、担持した現像剤を像担持体に所望のように供給することができ、一方、画像形成装置の帯電ローラとして導電性ローラ1を使用する場合には、像担持体を一様に帯電させることができるから、露光手段により静電潜像を所望のように形成することができる。帯電特性がより一層優れる点で、導電性ローラ1の全体電気抵抗率は、10〜10Ωであるのがより好ましく、10〜10Ωであるのが特に好ましい。導電性ローラ1の全体電気抵抗率は、後述するコート層4に含有される繊維状炭素材料若しくは粉末状炭素材料の含有量、及び/又は、弾性層3の体積抵抗率等を調整することによって、前記範囲内に調整することができる。
【0014】
図2に示されるように、導電性ローラ1の全体電気抵抗率は、抵抗測定器100、例えば、製品名「R8340A」(アドバンテスト株式会社製)を用いて、導電性ローラ1を電極板101に載置し、軸体2の両端部近傍(端部からの距離が等しくなる位置)それぞれに500gの分銅102を垂下状態に固定し、電極板101を抵抗測定器100に接続すると共に抵抗測定器100の電極を軸体2に接続して、電極板101と電極とに500Vの電圧を1秒印加して、測定される。
【0015】
また、導電性ローラ1は、その外周面における複数の部分電気抵抗率において、部分電気抵抗率の最小値に対する部分電気抵抗率の最大値の割合(以下、部分電気抵抗率の比と称することがある。)が100以下であるのが好ましい。導電性ローラ1が前記部分電気抵抗率の比を有していると、導電性ローラ1、すなわち、その表面に位置するコート層4の軸線方向及び円周方向にわたって電気特性が均一になるから、導電性ローラ1によって、現像剤を所望のように担持し、被当接体を一様に帯電させ、現像剤を所望のように定着させ、また、記録体等を所望のように搬送等することができ、画像形成装置に配設されたときに高品質の画像を形成することができる。より一層高品質の画像を形成することができる点で、部分電気抵抗率の比は、80以下であるのがより好ましく、70以下であるのが特に好ましい。部分電気抵抗率の比の下限は1であるのがよいが、現実的には10程度であってもよい。導電性ローラ1の部分電気抵抗率の比は、例えば、前記導電性ローラ1の全体電気抵抗率と同様にして、調整することができる。
【0016】
図3に示されるように、導電性ローラ1の部分電気抵抗率は、抵抗測定器100、例えば、製品名「R8340A」(アドバンテスト株式会社製)を用いて、導電性ローラ1を、軸体2の軸線方向からローラ固定治具103で挟持して固定し、4mmの軸線長さを有する円柱形状を成した第1の電極104(金属製)における側面を、コート層4に対して10g/cmの加重で押圧すると共に、第2の電極105(金属製)を軸体2の外周面に接続して、第1の電極と第2の電極とに500Vの電圧を1秒印加して、測定される。この際、前記コート層4の軸線方向における複数位置、例えば、6箇所を選択し、かつ、その各位置におけるコート層4の周方向における複数箇所、例えば、4箇所を選択して、合計24箇所の電気抵抗率を測定するのがよい。そして、部分電気抵抗率の比は、このようにして測定された部分電気抵抗率のうち測定値の最大値を最小値で除して、算出することができる。
【0017】
なお、導電性ローラ1における部分電気抵抗率の最大値及び最小値は、前記部分電気抵抗率の比を満足すればよいが、例えば、導電性ローラ1における部分電気抵抗率の最大値は、その値によっては、耐圧性能の向上を期待することができるものの、現像剤が帯電しすぎることによって画像品質が低下する場合がある点で、1×10〜1×10Ωであるのが好ましく、1×10〜5×10Ωであるのが特に好ましく、導電性ローラ1における部分電気抵抗率の最小値は、現像剤の帯電量が不足することによって画像濃度が低下する場合がある点で、1×10〜1×10Ωであるのが好ましく、1×10〜5×10Ωであるのが特に好ましい。
【0018】
導電性ローラ1は、1〜15μmの表面粗さRzを有しているのが好ましい。導電性ローラ1が1〜15μmの表面粗さRzを有していると、例えば、導電性ローラ1を現像ローラとして使用する場合には、現像剤を所望のように担持して、像担持体に所望のように供給することができ、一方、導電性ローラ1を帯電ローラとして使用する場合には、像担持体を所望のように帯電させ、さらに現像剤及び/又は現像剤に添加される外添剤の付着量を低減させることができる。この効果がより優れる点で、表面粗さRzは、2〜14μmであるのがより好ましく、2〜13μmであるのが特に好ましい。導電性ローラ1の表面粗さRzは、JIS B 0601―1984(十点平均粗さ)に準じ、先端半径2μmの測定プローブを備えた表面粗さ計(商品名「590A」、株式会社東京精密製)に、導電性ローラ1をセットし、測定長2.4mm、カットオフ波長0.8mm、カットオフ種別ガウシアンにより、少なくとも3点における表面粗さ測定し、これらの平均値を表面粗さRzとする。
【0019】
また、導電性ローラ1は、耐久試験後の表面粗さRz’が、前記表面粗さRzの85%以上であるのが好ましい。導電性ローラ1における耐久試験後の表面粗さRz’が前記範囲にあると、導電性ローラ1の表面層、例えば、コート層4の摩耗耐久性が優れ、その結果、導電性ローラ1の耐久性にも優れ、長期間にわたって高品質の画像を形成することに十分に貢献することができる。より一層の長期間にわたって高品質の画像を形成することに十分に貢献することができる点で、導電性ローラ1における耐久試験後の表面粗さRz’は、前記表面粗さRzの88%以上であるのがより好ましく、前記表面粗さRzの92〜99%であるのが特に好ましい。
【0020】
ここで、本願発明における耐久試験は、画像形成装置に導電性ローラ1を帯電ローラ又は現像ローラとして装着した状態で、例えば、温度20±5℃、相対湿度50±5%の環境下で、5%デューティー画像を5,000枚印字する試験である。すなわち、耐久試験後の表面粗さRz’は、印刷前の導電性ローラ1における表面粗さRzを前記測定方法に準拠して測定し、次いで、導電性ローラ1を帯電ローラ又は現像ローラとして画像形成装置に装着して特定の条件下で5%デューティー画像を5,000枚印字した後、導電性ローラ1を画像形成装置から取り出して、アルコールを染み込ませたコットン等でコート層4の表面に付着した現像剤等を軽く拭き取り、前記測定方法に準拠して耐久試験後の導電性ローラ1における表面粗さRz’を測定し、測定された表面粗さRz’を前記表面粗さRzで除して、求めることができる。なお、5%デューティー画像は、A4用紙に対して印字面積が5%となるようなベタ横帯パターンの画像である。
【0021】
前記軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。また、軸体2は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、さらには、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。図4に示される画像形成装置等に配設された場合に、軸体2は、その一端を接地し、又は、バイアス電圧を印加することにより、例えば、像担持体の電圧、現像剤への電荷の注入、像担持体からの現像剤の搬送による潜像の現像等の機能を発揮する。
【0022】
前記弾性層3は、前記軸体2の外周面に後述するゴム組成物を硬化して成る。この弾性層3は、20〜70のJIS A硬度を有しているのが好ましい。弾性層3が20〜70のJIS A硬度を有していると、導電性ローラ1と被当接体との接触面積を大きくすることができ、また、弾性層3の反発弾性及び圧縮永久ひずみが優れる。導電性ローラ1と被当接体との接触面積が向上し、弾性層3の反発弾性及び圧縮永久ひずみを所望のように向上させることができる点で、JIS A硬度は、30〜60であるのがより好ましく、35〜50であるのが特に好ましい。JIS A硬度は、JIS K6301に準拠して測定することができる。
【0023】
この弾性層3は、10〜10Ω・cmの体積抵抗率(温度20℃、相対湿度50%)を有しているのが好ましい。弾性層3が10〜10Ω・cmの体積抵抗率を有していると、たとえ、弾性層3又はコート層4の外周面に非導電性の層が形成されたとしても、導電性ローラ1の帯電特性が優れ、例えば、導電性ローラ1を帯電ローラとして用いる場合には、像担持体を所望のように一様に帯電させることができ、また、現像ローラとして用いる場合には、現像剤を所望のように帯電させることができるから、現像剤を所望のように担持することができ、担持した現像剤を像担持体に所望のように供給することができる。導電性ローラ1の帯電特性がより一層優れる点で、弾性層3の体積抵抗率は、10〜10Ω・cmであるのがより好ましく、10〜10Ω・cmであるのが特に好ましい。弾性層3の体積抵抗率は、弾性層3に含まれる導電性付与剤の含有量等を調整することによって、前記範囲内に調整することができる。弾性層3の体積抵抗率は、JIS K6911に規定された方法に準じて、印加電圧を100Vに設定して測定することができる。
【0024】
弾性層3は、被当接体と均一な当接状態を確保することができ、又は、被当接体と弾性層3との均一な当接幅(ニップ幅とも称する。)を確保することができる点で、その厚さは、1mm以上であるのが好ましく、5mm以上であるのがより好ましい。一方、弾性層3の厚さの上限は、弾性層3の外径精度を損なわない限り特に制限されないが、一般に、弾性層3の厚さを厚くしすぎると、弾性層3の作製コストが上昇するから、実用的な作製コストを考慮すると、弾性層3の厚さは、30mm以下であるのが好ましく、20mm以下であるのがより好ましい。なお、弾性層3の厚さは、所望の当接状態又は所望のニップ幅を達成するために、弾性層3の硬度、例えば、JIS A硬度等に応じて、適宜選択される。
【0025】
弾性層3を形成するゴム組成物は、ゴムと、所望により導電性付与剤と、所望により各種添加剤とを含有する。以下、ゴム組成物について説明する。
【0026】
前記ゴムは、特に限定されず、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロールヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴムが挙げられるが、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴムが、耐熱性及び帯電特性等に優れる点で、好ましい。これらのゴムは、液状タイプであっても、ミラブルタイプであってもよく、弾性層3の成形方法、弾性層3に要求される特性等に応じて、適宜選択することができる。
【0027】
所望によりゴム組成物に含有される前記導電性付与剤は、導電性を有していれば特に限定されず、例えば、導電性粉末、イオン導電性物質等が挙げられる。導電性粉末としては、より具体的には、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンの他に、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン類、また、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、さらには、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられ、イオン導電性物質としては、より具体的には、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質等が挙げられる。導電性付与剤は、所望により、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて、弾性層3としたときに所望の体積抵抗率となるように、適宜の含有量で添加される。ゴム組成物に導電性付与剤を含有させる場合には、例えば、ゴム組成物における導電性付与剤の含有量は、前記ゴム100質量部に対して、2〜80質量部とすることができる。
【0028】
前記ゴム組成物は、前記ゴム、所望により含有される導電性付与剤に加えて、通常、各種組成物に含有される各種添加剤を含有してもよく、各種添加剤としては、例えば、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0029】
ゴム組成物は、二本ローラ、三本ローラ、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、前記ゴム、所望により添加される導電性付与剤及び各種添加剤が均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0030】
ゴム組成物は、成形金型に容易にかつ均質に注入することができる点で、例えば、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有しているのがよく、5〜200Pa・sの粘度を有しているのが特によい。ゴム組成物の粘度は、通常、それらに含まれる各成分の種類及び/又は配合量によって、調整することができる。また、必要により、溶剤等により、粘度を調整することもできる。
【0031】
好ましく使用されるゴム組成物として、例えば、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物及び付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。
【0032】
前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、(A)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、及び、(C)上記(B)成分に属するもの以外の導電性材料を含有する。
【0033】
SiO(4−n)/2 (1)
ここで、Rは、同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、nは1.95〜2.05の正数である。
【0034】
前記Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基及びシアノエチル基等が挙げられる。
【0035】
前記(A)オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されていることが好ましい。このオルガノポリシロキサンは分子中に少なくとも2個の前記アルケニル基を有することが好ましく、具体的には、Rのうち0.001〜5モル%、特に0.01〜0.5モル%のアルケニル基を有することが好ましく、特にビニル基を有することが好ましい。特に、後述する硬化剤として白金系触媒とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせて使用する場合には、このようなアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが通常使用される。
【0036】
また、このオルガノポリシロキサンは、通常選択されたオルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンをアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。このオルガノポリシロキサンは基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、一部分岐していてもよい。また、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。このオルガノポリシロキサンは、通常、25℃におけるその粘度が100cSt以上であり、好ましくは100,000〜10,000,000cStである。また、このオルガノポリシロキサンは、通常、その重合度は100以上であり、好ましくは3,000以上であり、その上限は、好ましくは100,000であり、さらに10,000が好ましい。
【0037】
前記(B)充填材は、特に限定されないが、シリカ系充填材を用いることができる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。なお、シランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が入手可能である。シリカ系充填材の配合量は、前記(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、11〜39質量部であるのが好ましく、15〜35質量部であるのが特に好ましい。また、シリカ系充填材の平均粒子径としては、1〜80μmであるのが好ましく、2〜40μmであるのが特に好ましい。シリカ系充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として測定することができる。
【0038】
前記(C)導電性材料は、前記充填材(B)に属さない導電性材料であり、物理的化学的に同一材料からなるものであっても、充填材(B)として規定されシリカ系充填材と形態及び状態等が異なる導電性材料は、(C)導電性材料に属する。このような導電性材料は、導電性付与成分であり、例えば、前記導電性付与剤が挙げられ、これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。導電性材料は単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0039】
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、また、必要に応じて種々の化合物を含有させることができる。例えば、種々の化合物又は添加剤として、硬化剤及びシリカ微粉末等が挙げられる。
【0040】
前記硬化剤としては、公知の白金系触媒とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせた硬化剤、及び、有機過酸化物が挙げられる。前記白金系触媒としては、公知の触媒を使用することができ、具体的には、白金元素単体、白金化合物、白金複合体、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、エーテル化合物、各種オレフィン類とのコンプレックス等が挙げられる。白金系触媒の含有量は、有効量、いわゆる触媒量であればよく、例えば、(A)オルガノポリシロキサンに対して、白金族金属換算で1〜2,000ppmとするのが好ましい。
【0041】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、その重合度は300以下が好ましく、ジメチルハイドロジエンシリル基で末端が封鎖されたジオルガノポリシロキサン、末端がトリメチルシロキシ基でジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジエンシロキサン単位からなる共重合体、ジメチルハイドロジエンシロキサン単位(H(CHSiO1/2とSiO単位とからなる低粘度流体、1,3,5,7−テトラハイドロジエン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジエン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジエン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。オルガノハイドロジエンポリシロキサンの含有量は、(A)オルガノポリシロキサンのアルケニル基に対して、ケイ素原子に直結した水素原子が50〜500モル%となる割合で用いられるのが好ましい。
【0042】
前記有機過酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のアルキル過酸化物、ジクミルパーオキサイド等のアラルキル過酸化物等の有機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物の含有量は有効量であればよく、例えば、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましい。
【0043】
前記シリカ微粉末は、機械的強度の優れた弾性層3を得るために好適であり、この目的のためにはBET比表面積が10m/g以上、好ましくは50〜400m/gのシリカ微粉末を用いるのが好ましい。このようなシリカ微粉末としては、煙霧質シリカ(乾式シリカ)、沈降性シリカ(湿式シリカ)等が挙げられ、煙霧質シリカが好ましい。付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物にシリカ微粉末を添加する場合には、シリカ微粉末の含有量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、5〜100質量部であるのが好ましく、5〜90質量部であるのがより好ましく、10〜50質量部であるのが特に好ましい。含有量が5質量部未満では所望の補強効果が得られないことがあり、100質量部を超えると加工性が悪くなることがある。また、シリカ微粉末の平均粒子径としては、1〜80nmであるのが好ましく、5〜50nmであるのが特に好ましい。シリカ微粉末の平均粒子径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として測定することができる。
【0044】
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、また、他の添加剤を含有してもよい。他の添加剤として、例えば、着色剤、オクチル酸鉄、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、アルコキシシラン、重合度がオルガノポリシロキサン(A)よりも低いジメチルシロキサンオイル、シラノール、例えば、ジフェニルシランジオール、α,ω−ジメチルシロキサンジオール等の両末端シラノール基封鎖低分子シロキサンやシラン等の分散剤、接着性や成形加工性を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、架橋反応等を阻害しない硬化又は未硬化の各種オレフィン系エラストマー等が挙げられる。
【0045】
前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、(D)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(E)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cmである無機質充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。
【0046】
前記(D)オルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示される化合物が好適である。
【0047】
SiO(4−a)/2 (2)
ここで、前記平均組成式(2)におけるRは互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.02の範囲の正数である。
【0048】
前記Rは、前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物に含有されるオルガノポリシロキサン(A)のRで例示した、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基及びこれらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換した炭化水素基等が挙げられる。Rの少なくとも2個はアルケニル基、特にビニル基であり、90%以上がメチル基であるのが好ましい。具体的には、アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中1.0×10−6〜5.0×10−3mol/g、特に5.0×10−6〜1.0×10−3mol/gであることが好ましい。
【0049】
オルガノポリシロキサンの重合度については、室温(25℃)で液状(例えば、25℃での粘度が100〜1,000,000mPa・s、好ましくは200〜100,000mPa・s程度)であればよく、平均重合度が100〜800であるのが好ましく、150〜600であるのが特に好ましい。
【0050】
前記(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(3)で示され、一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上(通常、3〜200個)、より好ましくは3〜100個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するものが好適に用いられる。
【0051】
SiO(4−b−c)/2 (3)
ここで、前記平均組成式(3)におけるRは互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。
【0052】
前記ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H)の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中0.001〜0.017mol/g、特に0.002〜0.015mol/gとすることが好ましい。
【0053】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン(E)としては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、及び、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とから成る共重合体等が挙げられる。
【0054】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(E)の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部であるのが好ましく、0.3〜20質量部であるのが特に好ましい。また、(D)オルガノポリシロキサンのアルケニル基に対するケイ素原子に結合した水素原子のモル比は、0.3〜5.0であるのが好ましく、0.5〜2.5であるのが特に好ましい。
【0055】
前記(F)無機質充填材は、低圧縮永久ひずみで体積抵抗率が経時で安定し、かつ十分なローラ耐久性を得るのに重要な成分である。無機質充填材は、平均粒径が1〜30μm、好ましくは2〜20μm、嵩密度が0.1〜0.5g/cm、好ましくは0.15〜0.45g/cmである。平均粒径が1μmより小さいと経時で電気抵抗率が変化することがあり、30μmより大きいと弾性層3の耐久性が低下することがある。また、嵩密度が0.1g/cmより小さいと圧縮永久ひずみが悪化すると共に経時での電気抵抗率が変化することがあり、0.5μmより大きいと弾性層3の強度が不十分で耐久性が低下することがある。なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として求めることができ、嵩密度は、JIS K 6223の見かけ比重の測定方法に基づいて求めることができる。
【0056】
このような無機質充填材としては、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、及び、中空フィラー等が挙げられるが、中でも珪藻土、パーライト及び発泡パーライトの粉砕物が好ましい。
【0057】
無機質充填材の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して5〜100質量部であるのが好ましく、10〜80質量部であるのが特に好ましい。
【0058】
前記(G)導電性付与剤は、前記導電性付与剤と同様であり、その配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、2〜80質量部とすることができる。
【0059】
前記(H)付加反応触媒としては、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、例えば、白金族金属量として、(D)オルガノポリシロキサン及び(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計質量に対して、0.5〜1,000ppmであるのが好ましく、1〜500ppm程度であるのが特に好ましい。
【0060】
この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、前記成分に加えて、低分子シロキサンエステル、シラノール、例えば、ジフェニルシランジオール等の分散剤、酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱性向上剤、接着性や成形加工性を向上させる各種カーボンファンクショナルシラン、難燃性を付与させるハロゲン化合物等を本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
【0061】
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有するのが好ましく、特に10〜200Pa・sの粘度を有するのが好ましい。
【0062】
前記コート層4は、後述する組成物を用いて弾性層3の外周面に形成されて成り、繊維状炭素材料、及び、前記繊維状炭素材料に対する質量比が5〜200の粉末状炭素材料を含有する。
【0063】
前記繊維状炭素材料は、繊維状の炭素材料であればよく、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、気相成長炭素繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維等が挙げられる。
【0064】
前記カーボンナノチューブ(CNT)は、炭素六員環網目のグラフェンシートが円筒状に丸まった炭素中空管であり、例えば、その直径が数nm以上60nm以下である。カーボンナノチューブは、前記グラフェンシート1枚が丸まってできた単層ナノチューブ(SWCNT)と、多数のグラフェンシートが同軸円筒(同心円)状に積み重なった多層ナノチューブ(MWCNT)との2種類があり、また、グラフェン構造に応じて、アームチェア型、ジグザグ型及びキラル型(らせん型)に分類することができるが、この発明においてはいずれも使用することができる。カーボンナノチューブは、通常、アーク放電法、レーザーアブレーション法、プラズマ合成法、炭化物分解法、炭化水素ガス触媒分解法等によって製造される。この発明において、カーボンナノチューブには、カーボンナノコイル及びカーボンナノホーンが含まれる。
【0065】
カーボンナノチューブは適宜製造してもよく、また、市販品を使用してもよい。市販のカーボンナノチューブとしては、例えば、商品名「CarboLex AP−GRADE」(直径20nm、長さ3μm、カルボレックス社製)及び商品名「MRSW」(直径1.2nm、長さ10μm、マテリアルズ アンド エレクトロケミカル リサーチ コーポレーション社製)の単層ナノチューブ、並びに、商品名「CNF−P」(直径20〜100nm、長さ0.1〜1μm、株式会社ジェムコ製)、商品名「MRCMW」(直径10nm、長さ30μm、マテリアルズ アンド エレクトロケミカル リサーチ コーポレーション社製)、商品名「MRDW」(直径3〜5nm、長さ5〜15μm、マテリアルズ アンド エレクトロケミカル リサーチ コーポレーション社製)、商品名「MRCMFILM」(直径10nm、長さ30μm、マテリアルズ アンド エレクトロケミカル リサーチ コーポレーション社製)及び商品名「Graphite Fibrils・Grades BN」(直径10nm、長さ1〜10μm、ハイピリオン・カタリシス・インターナショナル社製)等の多層ナノチューブ等が挙げられる。
【0066】
前記カーボンナノファイバーは、特に制限なく使用することができる。カーボンナノファイバーは、例えば、溶融紡糸法、気相法等によって繊維状に製造される。カーボンナノファイバー適宜製造してもよく、また、市販品を使用してもよい。市販のカーボンナノファイバーとしては、例えば、商品名「カーボンナノファイバー」(直径200〜500nm、アスペクト比10万以上、アモルファス状、群栄化学工業株式会社製)、及び、商品名「カルベール」(直径50〜200nm、長さ数〜10μm、株式会社GSIクレオス社製)等が挙げられる。
【0067】
前記気相成長炭素繊維(VGCF)は、炭素六員環網目のグラフェンシートが円筒状に丸まった炭素中空管であり、その直径が5μm程度以上である点で、前記カーボンナノチューブと形式的に区別されている。気相成長炭素繊維は、通常、炭化水素ガスを鉄等の金属微粒子を触媒として熱分解して製造される。気相成長炭素繊維としては、前記カーボンナノチューブと同様の構造を有するものの他に、例えば、カーボンマイクロコイル等が挙げられる。気相成長炭素繊維は、適宜製造してもよく、また、市販品を使用してもよい。市販の気相成長炭素繊維としては、例えば、商品名「VGCF」(繊維径150nm、繊維長8μm、昭和電工株式会社製)、商品名「VGCF−H」(繊維径150nm、繊維長6μm、昭和電工株式会社製)及び商品名「VGCF−S」(繊維径100nm、繊維長10μm、昭和電工株式会社製)等が挙げられる。
【0068】
前記ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維は、直径5μm程度以上の炭素繊維であり、例えば、ポリアクリロニトリル及び等方性ピッチを原料として紡糸、不融化処理した後、炭素化して、製造される。ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維は、適宜製造してもよく、また、市販品を使用してもよい。市販のポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維としては、例えば、商品名「クレカM-101S」(直径14.5μm、長さ0.13mm、呉羽化学株式会社製)、商品名「ダイアリードK223QM」(直径11μm、50μm、三菱化学株式会社製)、及び、商品名「ドナカーボS−241」(直径13μm、長さ0.13mm、株式会社ドナック社製)等が挙げられる。
【0069】
前記繊維状炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、気相成長炭素繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維のうち1種単独で、又は、これらのうちの2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。この発明においては、繊維状炭素材料は、前記カーボンナノチューブ、前記カーボンナノファイバー及び前記気相成長炭素繊維からなる群より選択される少なくとも1種であるのが、分散性が良好で、製造工程を簡略化することができる点で、好ましく、前記カーボンナノチューブ及び前記カーボンナノファイバーからなる群より選択される少なくとも1種であるのが特に好ましい。
【0070】
前記繊維状炭素材料は、後述する粉末状炭素材料と共にコート層4により一層均一に分散することができる点で、その繊維径が5〜200nmであるのが好ましく、より一層均一に分散することに加えて、コート層4の膜強度、すなわち、耐久性が向上する点で、その繊維径が8〜150nmであるのがより好ましく、10〜100nmであるのが特に好ましい。なお、繊維状炭素材料の繊維径は、透過型電子顕微鏡によって複数の繊維状炭素材料を観察して測定された複数の繊維径の算術平均値とする。
【0071】
また、繊維状炭素材料は、後述する粉末状炭素材料と共にコート層4により一層均一に分散することができる点で、その繊維長さが1〜500μmであるのが好ましく、より一層均一に分散することに加えて、コート層4の膜強度、すなわち、耐久性が向上する点で、2〜150μmであるのがより好ましく、3〜100μmであるのが特に好ましい。すなわち、繊維長さが1μm未満であると、コート層4の膜強度が低下し、コート層4が摩耗又は損傷しやすく、耐久性に劣ることがあり、一方、繊維長さが500μmを超えると、コート層4の膜強度が強く、コート層4により現像剤が破壊されやすく、また、現像剤がコート層4に固着しやすくなることがある。なお、繊維状炭素材料の長さは、透過型電子顕微鏡によって複数の繊維状炭素材料を観察して測定された複数の長さの算術平均値とする。
【0072】
前記粉末状炭素材料は、少なくとも90%以上の無定形炭素質からなる微細粒子であればよく、例えば、カーボンブラック、グラファイト、及び、活性炭等が挙げられる。前記カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックは、例えば、コンタクト法、熱分解法(サーマル法)又は不完全燃焼法(ファーネス法)等によって製造される。カーボンブラックは、市販品を使用してもよく、例えば、商品名「トーカブラック ♯4400」(粒子径38nm、東海カーボン株式会社製)、商品名「シーストFM FEF−HS」(粒子径50nm、東海カーボン株式会社製)、商品名「トーカブラック ♯8300F」(粒子径16nm、東海カーボン株式会社製)、及び、商品名「シーストSPSRF−LS」(粒子径95nm、東海カーボン株式会社製)等が挙げられる。前記グラファイト及び前記活性炭は、特に制限されずに使用されることができ、定法に従って、製造される。粉末状炭素材料は、一種単独で、又は、これらのうちの二種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0073】
粉末状炭素材料は、粉末状でも粒子状でもよいが、凝集しにくく、分散性により一層優れると共に、所望の導電性を確保することができる点で、その粒子径が20〜90nmであるのが好ましく、25〜80nmであるのがより好ましく、30〜70nmであるのが特に好ましい。粉末状炭素材料の粒子径は、透過型電子顕微鏡によって複数の粉末状炭素材料を観察して測定された複数の粒子径の算術平均値とする。
【0074】
コート層4における、繊維状炭素材料と粉末状炭素材料との質量比は、繊維状炭素材料の質量に対する繊維状炭素材料の質量の比が5〜200である。繊維状炭素材料と粉末状炭素材料との質量比が前記範囲にある場合には、繊維状炭素材料と粉末状炭素材料との相互作用等によって、軸線長さが長い繊維状炭素材料をコート層4に含有させても、繊維状炭素材料同士が互いに絡み合うこともなく、その形態を維持したまま、コート層4に存在し、その結果、コート層4における導電性の均一化と補強効果とを発揮させ、かつ、前記割合の粉末状炭素材料がコート層4に含有していると、繊維状炭素材料間に介在し、その結果、繊維状炭素材料同士の経時による絡み合いを防止すると共に、コート層4における補強効果を発揮させることができる。したがって、コート層4に共存する繊維状炭素材料と粉末状炭素材料との質量比が前記範囲にある場合には、導電性ローラ1がその軸線方向及び円周方向にわたる均一な電気特性と高い耐久性とを発揮することができる。均一な電気特性と高い耐久性とをより効果的に発揮することができる点で、コート層4に共存する繊維状炭素材料と粉末状炭素材料との質量比は、8〜120であるのがより好ましく、10〜100であるのが特に好ましい。
【0075】
繊維状炭素材料は、繊維状炭素材料と粉末状炭素材料との前記質量比を満足する割合でコート層4に含有されていればよいが、コート層4の樹脂及び/又はゴム100質量部に対して0.01〜10質量部の割合で含有されているのが、粉末状炭素材料と共にコート層4により一層均一に分散することができる点で、好ましい。コート層4により一層均一に分散することができると共に、コート層4の耐久性にも優れる点で、繊維状炭素材料は、コート層4の樹脂及び/又はゴム100質量部に対して、0.1〜8質量部の割合で含有されているのがより好ましく、0.3〜5質量部の割合で含有されているのが特に好ましい。
【0076】
前記粉末状炭素材料は、繊維状炭素材料と粉末状炭素材料との前記質量比を満足する割合でコート層4に含有されていればよいが、コート層4の樹脂及び/又はゴム100質量部に対して1〜60質量部の割合で含有されているのが、繊維状炭素材料と共にコート層4により一層均一に分散することができる点で、好ましい。コート層4により一層均一に分散することができると共に、コート層4の耐久性にも優れる点で、粉末状炭素材料は、コート層4の樹脂及び/又はゴム100質量部に対して、10〜40質量部の割合で含有されているのがより好ましく、15〜35質量部の割合で含有されているのが特に好ましい。
【0077】
前記コート層4は、50〜60のマイクロゴム硬度を有しているのが好ましい。コート層4が50〜60のマイクロゴム硬度を有していると、導電性ローラ1と被当接体との接触面積を大きくすることができ、また、コート層4の反発弾性及び圧縮永久ひずみが優れる。導電性ローラ1と被当接体との接触面積が向上し、コート層4の反発弾性及び圧縮永久ひずみを所望のように向上させることができる点で、マイクロゴム硬度は、51〜59であるのがより好ましく、52〜58であるのが特に好ましい。コート層4のマイクロゴム硬度は、コート層4を形成する材料と同一の材料を用いてコート層4と同様にして2mmの厚さを有する板状試験片を作成し、マイクロゴム硬度測定器(商品名「MD−1」、高分子計器株式会社製)を使用して、押し針の負荷時間1秒の条件で、複数回測定された板状試験片の算術平均値とする。
【0078】
前記コート層4は、15〜30N/mmの引き裂き強度を有しているのが好ましい。コート層4が前記範囲の引き裂き強度を有していると、長期間にわたって使用する場合に、たとえ、導電性ローラ1の表面、すなわち、コート層4に微小な亀裂等が発生したとしても、微小な亀裂がそれ以上に大きくなることを防止することができると共に、さらに、現像剤を劣化させることのない程度の硬さ及び柔軟性を有し、その結果、高品質の画像を長期間にわたって形成することができる。この効果により一層優れる点で、コート層4の引き裂き強度は、18〜26N/mmであるのがより好ましく、19〜24N/mmであるのが特に好ましい。コート層4の引き裂き強度は、コート層4を形成する材料と同一の材料を用いてコート層4と同様にして所定の寸法を有する試験片を作製し、JISK6252に記載の方法に準拠して、測定することができる。
【0079】
コート層4は、通常、0.1〜50μmの層厚を有しているのが好ましく、10〜20μmの層厚を有しているのがより好ましい。
【0080】
コート層4を形成する組成物は、樹脂及び/又はゴムと、繊維状炭素材料と、粉末状炭素材料とを含有する組成物である。
【0081】
前記組成物に含有される樹脂及び/又はゴムは、特に限定されず、例えば、シリコーン、シリコーン変性樹脂若しくはシリコーン変性ゴム、ポリウレタン、アクリル樹脂若しくはアクリルゴム、フッ素樹脂若しくはフッ素ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロールヒドリンゴム等が挙げられる。これらの中でも、ポリウレタンであるのが、接着性、圧縮永久歪み及び環境安定性が良好である点で、好ましい。
【0082】
前記ポリウレタンは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応して得られるポリウレタンであってもよく、ポリウレタンを形成することができるポリウレタン調製成分であってもよい。ポリウレタン調製成分は、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの混合物、及び、ポリオールとポリイソシアネートとを反応して得られるプレポリマーからなる群より選択される少なくとも1種の成分が挙げられる。
【0083】
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における前記ポリオールは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよいが、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであるのが、コート層4の耐摩耗性、電気安定性及び耐水性等に優れる点で、好ましい。前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール−エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、及び、これらの各種変性体又はこれらの混合物等が挙げられる。前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジピン酸等のジカルボン酸とエチレングリコール等のポリオールとの縮合により得られる縮合系ポエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び、これらの混合物等が挙げられる。前記ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを組み合わせて使用してもよい。前記ポリオールは、熱的安定性に優れる点で、ポリエステルポリオールが好ましい。前記ポリオールは、後述するポリイソシアネート等との相溶性に優れる点で、1000〜8000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000〜5000の数平均分子量を有するのがさらに好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
【0084】
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における前記ポリイソシアネートは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリイソシアネートであればよく、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネートは、貯蔵安定性に優れ、反応速度を制御しやすい点で、芳香族ポリイソシアネートであるのが好ましい。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイシシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添MDI、等が挙げられる。
【0085】
ポリイソシアネートとして、これらのポリイソシアネートの他に、ブロック剤でイソシアネート基がブロックされたブロックポリイソシアネートが好適に使用される。ブロックポリイソシアネートは、常温での安定性が高く、加熱によってブロック剤が遊離してイソシアネート基が再生するため、取り扱いが容易である等の利点を有する。特に、湿度の高い夏場でも安定して反応し、さらには、アミノ基等の反応性の高い活性基を有する試薬とも併用することができるという利点を有する。前記ブロック剤としては、例えば、ε−カプロラクタム類、メチルエチルケトオキシム類、3,5−ジメチルピラゾール類、アルコール類及びフェノール類等が挙げられる。また、ブロック剤として、イソシアネート類も挙げられ、この場合には、ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートダイマー(ポリウレトジオン)となる。ブロック剤は、前記のいずれをも用いることができるが、溶剤との相溶性に優れる点で、ε−カプロラクタム類及びメチルエチルケトオキシム類が好適である。
【0086】
ポリイソシアネートは、500〜2000の分子量を有するのが好ましく、700〜1500の分子量を有するのがさらに好ましい。
【0087】
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物における混合割合は、特に限定されないが、通常、ポリオールに含まれる水酸基(OH)と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO、ブッロクポリイソシアネートの場合は遊離し得るイソシアネート基)とのモル比(NCO/OH)が0.7〜1.15であるのが、得られるポリウレタンにおける所望の架橋度等を実現することができる点で、好ましい。このモル比(NCO/OH)は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、0.85〜1.10であるのがより好ましい。
【0088】
ポリオールとポリイソシアネートとの混合物においては、前記組成物は、ポリオール及びポリイソシアネートに加えて、ポリオールとポリイソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を含有してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
【0089】
前記プレポリマー及び前記ポリウレタンは、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを反応して得られるプレポリマー及びポリウレタンであればよく、それらの分子量等も特に限定されない。プレポリマー及びポリウレタンは、所望により前記助剤等の存在下、ワンショット法又はプレポリマー法等によって、ポリオールとポリイソシアネートとを反応して、得られる。
【0090】
前記ポリウレタン調製成分は、ポリオールとポリイソシアネートとの混合物であるのが好ましく、特に、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールとポリイソシアネートとの混合物であるのが特に好ましい。すなわち、前記組成物は、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールと、ポリイソシアネートとの混合物を含有するのが特に好ましい。
【0091】
前記組成物に含有される繊維状炭素材料は前記したコート層4における前記繊維状炭素材料と同様であり、また、前記組成物に含有される粉末状炭素材料は前記したコート層4における前記粉末状炭素材料と同様である。
【0092】
前記組成物における、繊維状炭素材料と粉末状炭素材料との質量比は、前記したコート層4における質量比と同様である。また、前記組成物における繊維状炭素材料の含有量は前記したコート層4における繊維状炭素材料の含有量と同様であり、さらに、前記組成物における粉末状炭素材料の含有量は前記したコート層4における粉末状炭素材料の含有量と同様である。
【0093】
前記組成物は、樹脂及び/又はゴム、繊維状炭素材料並びに粉末状炭素材料に加えて、通常、組成物に含有される各種添加剤を含有してもよく、各種添加剤としては、例えば、前記鎖延長剤及び前記架橋剤等の助剤、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0094】
前記組成物は、二本ローラ、三本ローラ、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、樹脂及び/又はゴム、繊維状炭素材料、粉末状炭素材料、並びに、所望により各種添加剤等を均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して、得られる。この組成物は、繊維状炭素材料及び粉末状炭素材料を含有しているから、各成分、特に繊維状炭素材料及び粉末状炭素材料を樹脂及び/又はゴムに容易に均一に混合させることができる。
【0095】
前記組成物は、弾性層3の外周面に容易に形成することができる点で、例えば、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有しているのがよく、5〜200Pa・sの粘度を有しているのが特によい。組成物の粘度は、通常、それらに含まれる各成分の種類及び/又は配合量によって、調整することができる。また、必要により、溶剤等により、粘度を調整することもできる。
【0096】
この発明に係る導電性ローラ1は、弾性層3とコート層4との間に、他の層を有してもよい。他の層としては、例えば、弾性層3とコート層4とを接着又は密着させるプライマー層等が挙げられる。プライマー層を形成する材料としては、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。また、これらの樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
【0097】
この発明に係る導電性ローラ1は、前記軸体2の外周面に弾性層3を形成し、さらに、弾性層3の外周面にコート層4を形成して、製造される。
【0098】
まず、軸体2が準備される。例えば、軸体2は公知の方法により所望の形状に調製される。この軸体2は、弾性層3が形成される前に、プライマーを塗布してもよい。軸体2に塗布されるプライマーとしては、特に制限はないが、前記弾性層3とコート層4とを接着又は密着させるプライマー層とを形成する材料と同様の樹脂及び架橋剤が挙げられる。プライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体の外周面に塗布される。
【0099】
弾性層3は、前記ゴム組成物を、軸体2の外周面に加熱硬化して形成される。例えば、弾性層3は、公知の成形方法によって、加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。ゴム組成物の硬化方法はゴム組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよく、また弾性層3の成形方法も押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、ゴム組成物が付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、押出成形等を選択することができ、ゴム組成物が付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、金型を用いる成形法を選択することができる。ゴム組成物を硬化させる際の加熱温度は、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜500℃、特に120〜300℃、時間は数秒以上1時間以下、特に10秒以上〜35分以下であるのが好ましく、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜300℃、特に110〜200℃、時間は30分〜5時間、特に1〜3時間であるのが好ましい。また、必要に応じ、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜200℃で1〜20時間程度の硬化条件で、また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、120〜250℃で30〜70時間程度の硬化条件で、二次架橋してもよい。また、ゴム組成物は既知の方法で発泡硬化させることにより、気泡を有するスポンジ状弾性層を容易に形成することもできる。
【0100】
このようにして形成された弾性層3は、所望により、その表面が研磨、研削されて、外径及び表面状態等が調整される。特に、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物によって弾性層3を形成した場合には、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物を加熱硬化した後に、その表面が研磨、研削されるのがよい。
【0101】
このようにして形成された弾性層3は、コート層4が形成される前に、前記プライマー層が形成されてもよい。プライマー層は、必要により前記材料を溶剤等に溶解し、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、弾性層3の外周面に前記材料を塗布し、前記材料に応じた加熱条件によって、前記材料を加熱硬化させる。
【0102】
コート層4は、このようにして形成された弾性層3、又は所望により形成されたプライマー層の外周面に、繊維状炭素材料及び粉末状炭素材料を含有する前記組成物を塗工し、次いで、塗工された組成物を加熱硬化させて、形成される。組成物の塗工は、例えば、組成物の塗工液を塗工する塗布法、前記塗工液に弾性層3等を浸漬するディッピング法、前記塗工液を弾性層3等に吹き付けるスプレーコーティング法等の公知の塗工方法によって、行われる。組成物は、そのまま塗工してもよいし、組成物に、例えば、メタノール及びエタノール等のアルコール、キシレン及びトルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の揮発性溶媒を加えた塗工液を塗工してもよい。この塗工液は、組成物を溶解又は懸濁させた塗工液であり、例えば、揮発性溶媒を80質量%程度含有する。このようにして塗工された組成物を加熱硬化する方法は、組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよく、例えば、組成物が塗工された弾性層3等を加熱器で加熱する方法等が挙げられる。組成物を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、100〜200℃、特に130〜160℃、加熱時間は10〜120分間、特に30〜60分間であるのが好ましい。なお、前記塗工に代えて、前記組成物を弾性層3又はプライマー層の外周面に、押出成形、プレス成形、インジェクション成形等の公知の成形方法によって、積層すると共に、又は、積層した後に、積層された組成物を加熱する方法等が採用されることができる。
【0103】
導電性ローラ1は、弾性層3の外周面に形成されたコート層4が繊維状炭素材料と粉末状炭素材料とを特定の質量比で含有しているから、繊維状炭素材料と粉末状炭素材料との相互作用等によって、繊維状炭素材料同士が互いに絡み合うこともなく、その形態を維持したまま、コート層4に存在し、及び/又は、繊維状炭素材料間に介在して、長期間にわたって繊維状炭素材料及び粉末状炭素材料がほとんど凝集することなく、コート層4内に均一に分散している。その結果、導電性ローラ1は、軸線方向及び円周方向にわたる均一な電気特性と高い耐久性とを発揮することができる。したがって、導電性ローラ1は、画像形成装置に配設される各種ローラ、特に、現像ローラ、帯電ローラ等に好適に用いられる。
【0104】
次に、この発明に係る導電性ローラ1を備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図4を参照して、説明する。なお、図4に示される画像形成装置は、像担持体に現像された現像剤像を記録体に直接転写する直接転写方式のタンデム型カラー画像形成装置であり、導電性ローラ1は、現像剤担持体としての現像ローラ及び帯電手段としての帯電ローラとして装着されている。
【0105】
図4に示されるように、画像形成装置10は、四種の現像ユニットB、C、M及びYに装備された像担持体11B、11C、11M及び11Yを転写搬送ベルト1上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、したがって、現像ユニットB、C、M及びYが転写搬送ベルト1上に直列に配置されている。
【0106】
図4に示されるように、現像ユニットBは、静電潜像が形成される回転可能な像担持体11Bと、像担持体11Bに当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11Bを帯電させる帯電手段12Bと、像担持体11Bの上方に設けられ、像担持体11Bに静電潜像を形成する露光手段13Bと、像担持体11Bに当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11Bに一定の層厚で現像剤22Bを供給し、静電潜像を現像する現像手段20Bと、像担持体11Bの下方に転写搬送ベルト1を介して当接又は圧接するように設けられ、現像された静電潜像を像担持体11Bから転写搬送ベルト1で搬送される記録体16上に転写する転写手段14Bと、記録体16に転写されず像担持体11Bに残留した現像剤22B等を除去するクリーニング手段15Bとを備えている。図4に示されるように、現像ユニットBにおける像担持体11Bと転写手段14Bとは、二本の支持ローラ5に張架された転写搬送ベルト1を介して当接又は圧接している。そして、記録体16は、転写搬送ベルト1により、像担持体11Bと転写手段14Bとの当接部を通過するように、搬送される。この転写搬送ベルト1は記録体16を搬送すると共に、転写手段14Bと協働して像担持体11Bに現像された静電潜像を転写する。像担持体11B、帯電手段12B、露光手段13B、転写手段14B及びクリーニング手段15Bは、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0107】
図4に示されるように、前記現像手段20Bは、像担持体11Bに対向する位置に開口部を有し、現像剤22Bを収納する筐体21Bと、筐体21Bの開口部に、像担持体11Bに当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11Bに現像剤22Bを一定の層厚で供給する回転可能な現像剤担持体23Bと、現像剤担持体23Bの上方に設けられ、現像剤担持体23Bに当接又は圧接して現像剤22Bの層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤22Bを帯電させる現像剤規制部材24Bとを備えている。現像剤担持体23B及び現像剤規制部材24Bは、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。前記現像剤22Bは、摩擦により帯電可能で、記録体16に定着可能な現像剤であれば、乾式現像剤でも湿式現像剤でもよく、また、非磁性現像剤でも磁性現像剤でもよい。現像ユニットBは、筐体21B内に黒色現像剤を収納している。
【0108】
図4に示されるように、現像ユニットC、M及びYは、現像ユニットBと同様に構成されている。現像ユニットC、M及びYはそれぞれ、筐体21C、21M及び21Y内に、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yを収納している。
【0109】
図4に示されるように、画像形成装置10の底部には、記録体16として複数枚の記録体を積層収容するカセット41が設置され、カセット41内の記録体は給紙ローラ等によって1枚ずつ送り出されて、転写搬送ベルト1上に搬送される。
【0110】
図4に示されるように、画像形成装置10における記録体16の搬送方向下流には、記録体16に転写された各種現像剤(静電潜像)を定着させる定着手段30が配置されている。定着手段30は、例えば、発熱可能な定着ローラを備えた熱ローラ定着装置、オーブン定着器等の加熱定着装置、加圧可能な定着ローラを備えた圧力定着装置等を用いることができる。図4に示されるように、画像形成装置10は、無端ベルト6を備えた定着装置が定着手段30として配置されている。この定着装置は、図4にその断面が示されるように、記録体16を通過させる開口部35を有する筐体34内に、定着ローラ31と、定着ローラ31の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ33と、定着ローラ31及び無端ベルト支持ローラ33に巻き掛けられた無端ベルト6と、定着ローラ31に対して対向配置された加圧ローラ32とを備え、無端ベルト6を介して定着ローラ31と加圧ローラ32とが、互いに当接又は圧接するように、回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。無端ベルト支持ローラ33は、画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。定着ローラ31、無端ベルト支持ローラ33及び加圧ローラ32はそれぞれ、加熱体(図示しない。)が内蔵され、加圧ローラ32はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、無端ベルト6を介して定着ローラ31に圧接している。無端ベルト6と加圧ローラ32との圧接された間を記録体16が通過することにより、加圧と同時に加熱され、記録体16に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができる。
【0111】
画像形成装置10は、次にように作用する。まず、現像ユニットBの像担持体11Bが、帯電手段12Bにより一様に帯電され、露光手段13Bにより画像が露光されて、像担持体11Bの表面に静電潜像が形成される。一方、現像手段20Bにおいて、現像剤担持体23B及び現像剤規制部材24Bにより、黒色現像剤22Bが所望の層厚に規制され、所望のように帯電される。そして、この黒色現像剤22Bが現像剤担持体23Bから像担持体11Bに供給され、像担持体11Bに形成された静電潜像が現像されて、現像剤像として可視化される。次いで、この現像剤像が、像担持体11Bと転写手段14Bとの間に転写搬送ベルト1により搬送される記録体16上に、転写される。このようにして、現像剤像が記録体16上に黒像に顕像化される。
【0112】
次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、現像剤像が黒像に顕像化された記録体16に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。
【0113】
次いで、カラー像が顕像化された記録体16は、搬送手段により定着手段30に搬送され、定着ローラ31と加圧ローラ32との無端ベルト6を介した当接部又は圧接部を通過するときに加熱及び/又は加圧されて、転写されたカラー像が永久画像として定着される。このようにして、記録体16にカラー画像を形成することができる。
【0114】
画像形成装置10によれば、現像剤担持体23B、23C、23M及び23Yとしての現像ローラ及び帯電手段12B、12C、12M及び12Yとしての帯電ローラとして、この発明に係る導電性ローラ1が装着されているから、これらの現像ローラ及び帯電ローラはいずれも、軸線方向及び円周方向にわたって均一な電気特性と高い耐久性とを発揮する。その結果、像担持体11B、11C、11M及び11Yを長期間にわたって所望のように一様に帯電させることができ、また、帯電した現像剤22B、22C、22M及び22Yを長期間にわたって所望のように均一に像担持体11B、11C、11M及び11Yに供給することができる。したがって、画像形成装置10によれば、高品質の画像を長期間にわたって形成することができる。
【0115】
画像形成装置10は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置10は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置10は、各色の現像ユニットを備えた複数の像担持体を転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置とされているが、画像形成装置は、単一の現像ユニットを備えたモノクロ画像形成装置であっても、像担持体上に担持された現像剤像を無端ベルトに順次一次転写を繰り返す四サイクル型カラー画像形成装置等であってもよい。画像形成装置10は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
【実施例】
【0116】
(実施例1)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM22製、直径10mm、長さ275mm)をトルエンで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の表面にプライマー層を形成した。
【0117】
メチルビニルシリコーン生ゴム(商品名「KE−78VBS」、信越化学工業株式会社製)100質量部と、ジメチルシリコーン生ゴム(商品名「KE−76VBS」、信越化学工業株式会社製)20質量部と、カーボンブラック(商品名「アサヒサーマル」、旭カーボン株式会社製)10質量部と、煙霧質シリカ系充填材(商品名「AEROSIL OX−50」、平均一次粒径40nm、嵩密度1.3g/cm、日本アエロジル株式会社製)15質量部と、白金系触媒(商品名「C−19A」、信越化学工業株式会社製)0.5質量部と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(商品名「C−19B」、信越化学工業株式会社製)2.0質量部とを混合し、加圧ニーダーで混練して、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物を調製した。
【0118】
次いで、プライマー層を形成した軸体と前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物とを、クロスヘッド型押出成形機にて一体分出し、ギヤオーブンを用いて、250℃、30分間加熱した。その後、さらに、ギヤオーブンを用いて、200℃で4時間にわたって、二次加熱し、常温にて24時間放置した。次いで、円筒研削盤にて、形成した弾性層の直径が18mmとなるように、弾性層の表面を研磨した。
【0119】
このようにして形成した弾性層のJIS A硬度及び体積抵抗率(温度20℃、相対湿度50%)を前記方法により、測定したところ、JIS A硬度は40であり、体積抵抗率は2×10Ω・cmであった。
【0120】
次いで、弾性層の表面に、シリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.19」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマーが塗布された弾性層の表面に、ウレタン系塗料(商品名「ニッポラン5196」、日本ポリウレタン株式会社製)100質量部と、単層カーボンナノチューブ(商品名「CarboLex AP−GRADE」、カルボレックス社製)0.13質量部と、カーボンブラック(商品名「トーカブラック ♯4400」、東海カーボン株式会社製)25質量部(単層カーボンナノチューブに対するカーボンブラックの質量比約192)と、イソシアネート系架橋剤14質量部とを含有する組成物の塗布液を、スプレーコーティング法によって、一回塗布し、150℃で30分間加熱し、プライマーとウレタン系塗料とを架橋及び/又は硬化させて、層厚10μmのコート層を形成した。このようにして、導電性ローラを作製した。
【0121】
(実施例2)
前記単層カーボンナノチューブの含有量を0.25質量部(単層カーボンナノチューブに対するカーボンブラックの質量比100)に変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを作製した。
(実施例3)
前記単層カーボンナノチューブの含有量を0.5質量部(単層カーボンナノチューブに対するカーボンブラックの質量比50)に変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを作製した。
(実施例4)
前記単層カーボンナノチューブの含有量を4.5質量部(単層カーボンナノチューブに対するカーボンブラックの質量比約5.6)に変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを作製した。
【0122】
(実施例5)
前記単層カーボンナノチューブを多層カーボンナノチューブ(商品名「MRCMW」、マテリアルズ アンド エレクトロケミカル リサーチ コーポレーション社製)に変更した以外は、実施例3と同様にして、導電性ローラを作製した。
(実施例6)
前記単層カーボンナノチューブを多層カーボンナノチューブ(商品名「Graphite Fibrils・Grades BN」、ハイピリオン・カタリシス・インターナショナル社製)に変更した以外は、実施例3と同様にして、導電性ローラを作製した。
(実施例7)
前記単層カーボンナノチューブをカーボンナノファイバー(商品名「カルベール」、株式会社GSIクレオス社製)に変更した以外は、実施例3と同様にして、導電性ローラを作製した。
(実施例8)
前記単層カーボンナノチューブ0.13質量部を、前記単層カーボンナノチューブ0.2質量部と多層カーボンナノチューブ「MRCMW」0.2質量部との混合物(単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブに対するカーボンブラックの質量比62.5)に変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを作製した。
(実施例9)
前記カーボンブラック25質量部を、前記カーボンブラック12.5質量部とカーボンブラック(商品名「シーストFM FEF−HS」、東海カーボン株式会社製)12.5質量部との混合物に変更した以外は、実施例3と同様にして、導電性ローラを作製した。
【0123】
(実施例10)
前記単層カーボンナノチューブを単層カーボンナノチューブ(「MRSW」、マテリアルズ アンド エレクトロケミカル リサーチ コーポレーション社製)に変更した以外は、実施例3と同様にして、導電性ローラを作製した。
(実施例11)
前記単層カーボンナノチューブをカーボンナノファイバー(商品名「カーボンナノファイバー」、群栄化学工業株式会社製)に変更した以外は、実施例3と同様にして、導電性ローラを作製した。
【0124】
(実施例12)
前記カーボンブラックをカーボンブラック(商品名「トーカブラック ♯8300F」、東海カーボン株式会社製)に変更した以外は、実施例3と同様にして、導電性ローラを作製した。
(実施例13)
前記カーボンブラックをカーボンブラック(商品名「シーストSPSRF−LS」、東海カーボン株式会社製)に変更した以外は、実施例3と同様にして、導電性ローラを作製した。
【0125】
(比較例1)
前記単層カーボンナノチューブを含有させない以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを作製した。
(比較例2)
前記カーボンブラックを含有させず、前記単層カーボンナノチューブの含有量を25質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを作製した。
(比較例3)
前記単層カーボンナノチューブ0.13質量部をカーボンナノファイバー(商品名「カルベール」、株式会社GSIクレオス社製)25質量部に変更し、かつ、前記カーボンブラックを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを作製した。
【0126】
(比較例4)
前記単層カーボンナノチューブの含有量を6質量部(単層カーボンナノチューブに対するカーボンブラックの質量比4.2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを作製した。
(比較例5)
前記単層カーボンナノチューブの含有量を0.1質量部(単層カーボンナノチューブに対するカーボンブラックの質量比250)に変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを作製した。
【0127】
このようにして作製した実施例1〜13及び比較例1〜5の導電性ローラにおいて、形成したコート層のマイクロゴム硬度を前記方法により測定した。また、これらの導電性ローラの全体電気抵抗率、部分電気抵抗率の最大値及び最小値、並びに、表面粗さRz及び耐久試験後の表面粗さRz’を前記方法により測定し、部分電気抵抗率の比等を算出した。その結果を表1に示す。なお、表面粗さRz’における耐久試験は、電子写真式プリンター(商品名「Microline 5400」、株式会社沖データ製)に、実施例1〜13及び比較例1〜5の導電性ローラを現像ローラとして装着して、温度20℃、相対湿度50%の環境下で行った。
【0128】
次いで、実施例1〜13及び比較例1〜5の導電性ローラそれぞれを4本準備し、図4に示される電子写真式プリンター(商品名「Microline 5400」、株式会社沖データ製)において、現像ローラ24B、24C、24M及び24Yとして、配設した。なお、現像剤及び現像剤規制部材は、電子写真式プリンターに付属の現像剤及び現像剤規制部材を用いた。
【0129】
この電子写真式プリンターにおいて、印字濃度評価、画像むら評価及びかぶり評価を行った。
(印字濃度評価)
前記電子写真式プリンターを、温度20℃、相対湿度50%の環境下で、稼動させて、黒ベタ−網点−5%デューティー−白地印字を2回繰り返し行った。次いで、電子写真式プリンターを、温度20℃、相対湿度50%の環境下で稼動させて、5%デューティー画像を5,000枚印字し、耐久試験を行った。この耐久試験後に、黒ベタ−網点−5%デューティー−白地印字を2回繰り返し行った。前記耐久試験の前後に印字した黒ベタ印字部のマクベス濃度をマクベス濃度計で測定し、測定されたマクベス濃度により、印字濃度を評価した。なお、前記耐久試験の前後において、黒ベタ印字部のマクベス濃度が1.3未満であると印字不良と判断することができる。その結果を表1及び表2に示す。
【0130】
(画像むら評価)
前記電子写真式プリンターを、温度20℃、相対湿度50%の環境下で、黒ベタ画像を2回繰り返し行った。印字した黒ベタ画像に縦スジ等のむらの発生状況を目視にて確認した。黒ベタ画像にむらが発生していなかった場合を「◎」、黒ベタ印字部にわずかにむらが確認できた場合を「○」、黒ベタ画像にむらがわずかに確認できたが実用上許容できる程度であった場合を「△」、黒ベタ画像にむらが多数発生していた場合を「×」とした。その結果を表1及び表2に示す。
【0131】
(かぶり評価)
前記電子写真式プリンターを、温度20℃、相対湿度50%の環境下で、稼動させて、黒ベタ−網点−5%デューティー−白地印字を2回繰り返し行った。次いで、電子写真式プリンターを、温度20℃、相対湿度50%の環境下で稼動させて、5%デューティー画像を5,000枚印字し、耐久試験を行った。この耐久試験後に、黒ベタ−網点−5%デューティー−白地印字を2回繰り返し行い、印字した5%デューティー画像における白地部を目視にて観察し、現像剤の付着の程度(かぶり)を確認した。白地部分に現像剤がまったく付着していなかった場合を「◎」、白地部分にごくわずかに現像剤が付着していたが、実用上問題ない程度であった場合を「○」、白地部分に実用上問題のある程度にまで現像剤が付着していた場合を「△」、白地部分に多量の現像剤が付着していた場合を「×」とした。
【0132】
【表1】

【0133】
【表2】

【0134】
なお、前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物に代えて、前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を用いた場合にも、同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】図1は、導電性ローラの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、導電性弾性層の全体電気抵抗率を測定する方法を説明する説明図である。
【図3】図3は、導電性弾性層の部分電気抵抗率を測定する方法を説明する説明図である。
【図4】図4は、この発明の一実施例であるタンデム型カラー画像形成装置の概略図である。
【符号の説明】
【0136】
1 導電性ローラ
2 軸体
3 弾性層
4 コート層
6 無端ベルト
10 画像形成装置
11B、11C、11M、11Y 像担持体
12B、12C、12M、12Y 帯電手段
13B、13C、13M、13Y 露光手段
14B、14C、14M、14Y 転写手段
15B、15C、15M、15Y クリーニング手段
16 記録体
20 現像手段
21B、21C、21M、21Y、34 筐体
22B、22C、22M、22Y 現像剤
23B、23C、23M、23Y 現像剤担持体
24B、24C、24M、24Y 現像剤規制部材
30 定着手段
31 定着ローラ
32 加圧ローラ
33 無端ベルト支持ローラ
35 開口部
41 カセット
42 支持ローラ
100 抵抗測定器
101 電極板
102 分銅
103 ローラ固定治具
104 第1の電極
105 第2の電極
B、C、M、Y 現像ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周面に形成された弾性層と、前記弾性層の外周面に形成されたコート層とを備え、前記コート層は、繊維状炭素材料、及び、前記繊維状炭素材料に対する質量比が5〜200の粉末状炭素材料を含有することを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
前記繊維状炭素材料は、その繊維径が5〜200nmであり、その繊維長さが1〜500μmである請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
前記粉末状炭素材料は、その粒子径が20〜90nmである請求項1又は2に記載の導電性ローラ。
【請求項4】
前記繊維状炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー及び気相成長炭素繊維からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ローラを、現像ローラ又は/及び帯電ローラとして、備えた画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−170878(P2008−170878A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6035(P2007−6035)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【復代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
【Fターム(参考)】