説明

導電性ローラ及び画像形成装置

【課題】低温低湿度環境下でカラーモード印字画像を形成した後に連続してモノクロモード印字画像を形成しても所望のモノクロモード印字画像を形成することに貢献することのできる導電性ローラ、及び、低温低湿度環境下でカラーモード印字画像を形成した後に連続してモノクロモード印字画像を形成しても所望のモノクロモード印字画像を形成することのできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】軸体2の外周面に形成された弾性層3と、前記弾性層3の外周面に形成されたコート層4とを備え成り、前記コート層4は、ブロックイソシアネートを含むポリウレタン調製成分100質量部と、3級アミノ基を有するシランカップリング剤20〜70質量部とを含有するウレタン樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする導電性ローラ1、及び、この導電性ローラ1を備えた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導電性ローラ及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、低温低湿度環境下でカラーモード画像を形成した後に連続してモノクロモード画像を形成しても所望のモノクロモード画像を形成することに貢献することのできる導電性ローラ、及び、低温低湿度環境下でカラーモード画像を形成した後に連続してモノクロモード画像を形成しても、所望のモノクロモード画像を形成することのできる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター、複写機、ビデオプリンター、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、軸体とその外周面に形成された弾性層とを有する、例えば、クリーニングローラ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、加圧ローラ、紙送り搬送ローラ、定着ローラ等の各種ローラを備えている。具体的には、図2に示されるように、タンデム型カラー画像形成装置には、複数の現像ユニットB、C、M及びYが配置されており、現像ユニットBを例にして説明すると、帯電手段12Bの一例としての帯電ローラ、現像剤担持体23Bの一例としての現像ローラ、転写手段14Bとしての転写ローラ、定着手段30を構成する定着ローラ31等が装着されている。
【0003】
これらのローラの中でも、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等の導電性ローラは、その耐久性、現像剤に対する帯電特性(導電性)、表面粘着性、耐フィルミング性等を改善する目的で、最外層としてコート層が設けられることがある。例えば、特許文献1には、「導電性の均一性を実現できる導電性部材」として、「少なくとも、軸芯体、弾性体層および樹脂層が、内側から外側に積層されてなる導電性部材であって、該弾性体層は、シリコーンゴムから主になり、該樹脂層は、アミド結合またはウレタン結合を有する樹脂成分と、アミン系シランカップリング剤とを少なくとも含んでなる樹脂原料を加熱して得られるものであることを特徴とする導電性部材」が記載されている。
【0004】
特許文献1によれば、「アミン系シランカップリング剤のアミノ基は、樹脂分子の末端に残存するカルボキシル基やアルコール基と反応したり、アミド結合やウレタン結合の−NH−CO−結合と相互作用することにより、・・・良好な接着性と均一な導電性が実現できる」と記載されている。したがって、この「導電性部材」における「アミン系シランカップリング剤」は水素原子を有する1級又は2級アミノ基を含有していることが必要であることは明らかであり、「1級及び/又は2級アミノ基を含有するアミン系シランカップリング剤」のみが特許文献1の0018欄及び実施例1〜4に記載されている。
【0005】
ところで、従来の導電性ローラを装着した画像形成装置において、低温低湿度環境下で、カラーモードによる印字画像(この発明において、「カラーモード画像」と称する。)を形成した後に連続してモノクロモードによる印字画像(この発明において、「モノクロモード画像」と称する。)を形成すると、モノクロモード画像に、イエロー現像剤、シアン現像剤及び/又はマゼンタ現像剤が定着されてなるカラー画像部が形成されることがある。このようなモノクロモード画像の一部カラー画像化は、カラー画像形成装置であれば、その種類に関わらず、起こる。この一部カラー画像化は、高速化された画像形成装置、特に、小型軽量化された画像形成装置に、顕著に起こる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−323160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、低温低湿度環境下で、カラーモード画像を形成した後に連続してモノクロモード画像を形成しても、所望のモノクロモード画像を形成することに貢献することのできる導電性ローラを提供することを、目的とする。
【0008】
また、この発明は、低温低湿度環境下でカラーモード画像を形成した後に連続してモノクロモード画像を形成しても、所望のモノクロモード画像を形成することのできる画像形成装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、軸体の外周面に形成された弾性層と、前記弾性層の外周面に形成されたコート層とを備えて成り、前記コート層は、ブロックイソシアネートを含むポリウレタン調製成分100質量部と、3級アミノ基を有するシランカップリング剤20〜70質量部とを含有するウレタン樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする導電性ローラであり、
請求項2は、前記シランカップリング剤は、1級又は2級アミノ基を含有するシランカップリング剤とエポキシ基を含有するシランカップリング剤とを、前記エポキシ基と前記アミノ基の水素原子とのモル比(水素原子の合計モル数/エポキシ基のモル数)が1以上となる割合で、反応してなることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラであり、
請求項3は、請求項1又は2に記載の導電性ローラを備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る導電性ローラは、ポリウレタン調製成分100質量部と、3級アミノ基を有するシランカップリング剤20〜70質量部とを含有するウレタン樹脂組成物を硬化してなるコート層を備えているから、現像剤への帯電特性及び離型性に優れている。したがって、この発明によれば、低温低湿度環境下でカラーモード画像を形成した後に連続してモノクロモード画像を形成しても、所望のモノクロモード画像を形成することに貢献することのできる導電性ローラを提供することができる。
【0011】
また、この発明に係る画像形成装置はこの発明に係る導電性ローラを備えている。したがって、この発明によれば、低温低湿度環境下でカラーモード画像を形成した後に連続してモノクロモード画像を形成しても、所望のモノクロモード画像を形成することのできる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、この発明の導電性ローラの一実施例である導電性ローラを示す斜視図である。
【図2】図2は、この発明の導電性ローラの一実施例である導電性ローラを現像ローラとして装着することのできるタンデム型カラー画像形成装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明に係る導電性ローラの一実施例の導電性ローラは、図1に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に形成された弾性層3と、弾性層3の外周面に形成されたコート層4とを備えて成る。
【0014】
図1に示されるように、軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。また、軸体2は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、さらには、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。軸体2は、装着される画像形成装置に応じて、適宜の直径及び軸線方向の長さに調整される。例えば、小型軽量化及び/又は高速化された画像形成装置に装着される場合には、軸体2はその直径が小さくされ、例えば、4〜10mmの直径に調整されるのがよい。
【0015】
図1に示されるように、弾性層3は、軸体2の外周面で後述するゴム組成物を硬化してなる。この弾性層3は、10〜90のJIS A硬度を有しているのが好ましい。弾性層3が10〜90のJIS A硬度を有していると、例えば、導電性ローラ1を画像形成装置に装着したときに、導電性ローラ1と像担持体等の被当接体との大きなニップ幅を確保することができる。特に、導電性ローラ1を現像剤担持体例えば現像ローラとして装着すると、導電性ローラ1と像担持体との大きなニップ幅を確保して、現像剤を効率的に帯電搬送して、現像効率を向上させることができる。弾性層3のJIS A硬度は、JIS K6253に準拠して測定することができる。
【0016】
弾性層3の厚さは、1mm以上であるのが好ましく、5mm以上であるのがより好ましい。一方、弾性層3の厚さの上限は、弾性層3の外径精度を損なわない限り特に制限されないが、一般に、弾性層3の厚さを厚くしすぎると、弾性層3の作製コストが上昇するから、実用的な作製コストを考慮すると、弾性層3の厚さは、30mm以下であるのが好ましく、20mm以下であるのがより好ましい。特に、小型軽量化及び/又は高速化された画像形成装置に装着される場合には、弾性層3は、例えば、3〜6mmの厚さに調整されるのがよい。
【0017】
弾性層3を形成するゴム組成物は、ゴムと、導電性付与剤と、所望により各種添加剤とを含有する。前記ゴムは、特に限定されず、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴムが挙げられるが、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴムが、耐熱性及び帯電特性等に優れる点で、また、ウレタンゴムが引張強さ及び耐摩耗性に優れる点で、好ましい。これらのゴムは、液状タイプであっても、ミラブルタイプであってもよく、弾性層3の成形方法、弾性層3に要求される特性等に応じて、適宜選択することができる。
【0018】
前記導電性付与剤は、導電性を有していれば特に限定されず、例えば、導電性粉末、イオン導電性物質等が挙げられる。導電性粉末としては、より具体的には、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンの他に、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン類、また、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、さらには、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられ、イオン導電性物質としては、より具体的には、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質等が挙げられる。導電性付与剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて、弾性層3としたときに所望の体積抵抗率となるように、適宜の含有量で添加される。例えば、ゴム組成物における導電性付与剤の含有量は、前記ゴム100質量部に対して、2〜80質量部とすることができる。
【0019】
前記ゴム組成物は、前記ゴム、導電性付与剤に加えて、通常、各種組成物に含有される各種添加剤を含有してもよく、各種添加剤としては、例えば、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0020】
ゴム組成物は、二本ローラ、三本ローラ、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、前記ゴム、導電性付与剤及び所望により各種添加剤が均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0021】
前記ゴム組成物は、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有するのが好ましく、特に10〜200Pa・sの粘度を有するのが好ましい。ゴム組成物の粘度は、通常、それらに含まれる各成分の種類及び/又は配合量によって、調整することができる。また、必要により、溶剤等により、粘度を調整することもできる。
【0022】
好ましく使用されるゴム組成物として、例えば、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物及び付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。
【0023】
前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、(A)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、及び、(C)上記(B)成分に属するもの以外の導電性材料を含有する。これらの各成分(A)〜(C)は、例えば、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。
【0024】
SiO(4−n)/2 (1)
ここで、Rは、同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、nは1.95〜2.05の正数である。
【0025】
前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、(D)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(E)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cmである無機質充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。これらの各成分(D)〜(H)は、例えば、特開2008−058622号公報に記載の「付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物」における各成分と基本的に同様である。
【0026】
図1に示されるように、コート層4は、弾性層3の外周面で後述するウレタン樹脂組成物を硬化してなる。コート層4は、通常、薄層に形成され、具体的には、0.1〜50μmの層厚を有しているのが好ましく、10〜20μmの層厚を有しているのがより好ましい。コート層4が前記範囲の層厚を有していると、弾性層3を被覆するように形成されたコート層4によって弾性層3の導電性を低下させ、硬度を高めることがなく、導電性ローラ1としたときの所望の導電性及び硬度を実現することができる。
【0027】
コート層4は、導電性ローラ1が所望の導電性を有していれば、導電性を有していても有していなくてもよい。コート層4に導電性を付与するには、例えば後述する樹脂組成物に前記導電性付与剤を含有させればよい。
【0028】
コート層4を形成するウレタン樹脂組成物は、ポリウレタン調製成分と、3級アミノ基を有するシランカップリング剤と、所望により各種添加剤とを含有する。
【0029】
ポリウレタン調製成分は、ポリウレタンを形成することができる成分であればよく、例えば、ポリオールとブロックイソシアネートとの混合物が挙げられる。
【0030】
前記ポリオールは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよく、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであるのが、コート層4の耐摩耗性、電気安定性及び耐水性等に優れる点で、好ましい。前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール−エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、及び、これらの各種変性体又はこれらの混合物等が挙げられる。前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジピン酸等のジカルボン酸とエチレングリコール等のポリオールとの縮合により得られる縮合系ポエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び、これらの混合物等が挙げられる。前記ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールは、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを組み合わせて使用してもよい。前記ポリオールは、熱的安定性に優れる点で、ポリエステルポリオールが好ましい。前記ポリオールは、後述するポリイソシアネート等との相溶性に優れる点で、1000〜8000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000〜5000の数平均分子量を有するのがさらに好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
【0031】
前記ブロックイソシアネートは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種イソシアネートのイソシアネート基をブロック剤でブロックしたブロックイソシアネートであればよい。ブロックイソシアネートは、常温での安定性が高く、加熱又は湿度(水分)によってブロック剤が遊離してイソシアネート基が再生するため、取扱性に優れる等の利点を有する。特に、ポリウレタン調製成分としてブロックイソシアネートを採用すると、ウレタン樹脂組成物を弾性層3の外周面に塗布するまでに、前記ポリオール、後述する3級アミノ基を有するシランカップリング剤との望まない反応を抑えることができ、ウレタン樹脂と3級アミノ基を有するシランカップリング剤の硬化物を含む一層のコート層4を形成することができるから、ウレタン樹脂層と3級アミノ基を有するシランカップリング剤を硬化してなる表面層とを別々に形成する必要がなく、導電性ローラ1の生産性が向上する。また、ポリウレタン調製成分としてブロックイソシアネートを採用すると、ウレタン樹脂組成物の取扱性に優れ、均一なコート層4を形成することができる。
【0032】
ブロックイソシアネートを形成するイソシアネートは、ポリウレタンの調製に通常使用される各種イソシアネートであればよく、例えば、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート等が挙げられる。イソシアネートは、貯蔵安定性に優れ、反応速度を制御しやすい点で、芳香族イソシアネートであるのが好ましい。芳香族イソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイシシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(トリレンジイソシアネートとも称する。TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添MDI等が挙げられる。ポリイソシアネートは、500〜2000の分子量を有するのが好ましく、700〜1500の分子量を有するのがさらに好ましい。
【0033】
ブロックイソシアネートを形成するブロック剤は、イソシアネートのイソシアネート基に結合して、温度又は湿度によって、イソシアネートから脱離する化合物であればよく、例えば、ε−カプロラクタム類、メチルエチルケトオキシム類、3,5−ジメチルピラゾール類、アルコール類及びフェノール類等が挙げられる。また、ブロック剤として、イソシアネート類も挙げられ、この場合には、ブロックイソシアネートは、イソシアネートダイマー(ポリウレトジオン)となる。ブロック剤は、前記のいずれをも用いることができるが、溶剤との相溶性に優れ、加熱によって容易に脱離する点で、ε−カプロラクタム類及びメチルエチルケトオキシム類が好適である。
【0034】
前記ブロックイソシアネートは、前記イソシアネートと前記ブロック剤とを任意に組み合わせることができるが、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及び水添MDIよりなる群から選択される少なくとも1種と、n−ブタノール、フェノール、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルエチルケトオキシム及びε−カプロラクタムよりなる群から選択される少なくとも1種とからなるブロックイソシアネートとを組み合わせてなるブロックイソシアネートであるのが好ましい。
【0035】
ポリオールとブロックイソシアネートとの混合物における混合割合は、特に限定されないが、通常、ポリオールに含まれる水酸基(OH)と、ブロックイソシアネートから遊離するイソシアネート基(NCO)とのモル比(NCO/OH)が0.7〜1.15であるのが、得られるポリウレタンにおける所望の架橋度等を実現することができる点で、好ましい。このモル比(NCO/OH)は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、0.85〜1.10であるのがより好ましい。ただし、実際には、作業環境、作業上の誤差を考慮して前記適正モル比3〜4倍相当量配合してもよい。
【0036】
ポリオールとブロックイソシアネートとの混合物には、ポリオール及びブロックイソシアネートに加えて、ポリオールとブロックイソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を併用してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
【0037】
3級アミノ基を有するシランカップリング剤(以下、3級アミノシランカップリング剤と称する。)は、分子内に、加水分解性シリル基と3級アミノ基とをそれぞれ少なくとも1つ有していればよい。3級アミノシランカップリング剤は、分子内に、加水分解性シリル基と3級アミノ基とを有し、1級及び2級アミノ基を有しないシランカップリング剤、すなわち、分子内に、加水分解性シリル基と3級のみのアミノ基とを有するシランカップリング剤であるのが好ましい。この発明において、3級アミノシランカップリング剤を用いると、アミノ基が前記ウレタン樹脂のウレタン結合等と反応することがなく、ウレタン樹脂組成物を硬化したときの架橋密度が高くなりすぎることを防止して、導電性ローラにおける表面の帯電特性を有効に発現させることができる。その結果、ウレタン樹脂組成物を硬化してなるコート層4を備えた導電性ローラ1は、現像剤への帯電特性及び離型性に優れると共に十分な柔軟性にも優れる。したがって、導電性ローラ1は、低温低湿度環境下でカラーモード画像を形成した後に連続してモノクロモード画像を形成しても、所望のモノクロモード画像を形成することに貢献することができる。
【0038】
3級アミノシランカップリング剤としては、例えば、式(1) R−SiR(3−m) (式(1)において、Rは3級アミノ基含有基であり、より詳細には1級及び2級アミノ基を有しない3級アミノ基含有基であり、Rは有機基であり、Rは加水分解性基であり、mは0〜2の整数である。)で示されるシランカップリング剤が挙げられる。前記式(1)における3級アミノ基含有基Rは、3級アミノ基を含有する基であればよく、例えば、アルキル基等でアミノアルキル基又はアミノアリール基の水素原子が置換されたアルキルアミノ基又はアルキルアミノアリール基、アリール基等でアミノアルキル基又はアミノアリール基の水素原子が置換されたアリールアミノ基アルキル基又はアリールアミノアリール基等が挙げられる。アミノ基の水素原子が置換される前のアミノアルキル基及びアミノアリール基の炭素数は、特に限定されず、例えば、1〜30であるのが好ましく、2〜29であるのがより好ましい。なお、アミノ基の水素原子を置換するアルキル基、アルケニル基、アリール基等の炭素数は特に限定されないが、1〜12であるのが好ましい。3級アミノ基含有基Rは2種以上の3級アミノ基を含んでもよい。
【0039】
前記有機基Rは、例えば、炭素数1〜30の、アルキル基及びアリール基等が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。前記加水分解性基Rは、水分の存在下でSi−R結合が容易に加水分解しうる基であればよく、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基等の加水分解性置換基が挙げられる。これらの中でも、入手が容易である点で、アルコキシ基であるのが好ましく、アルコキシ基として、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。前記mは、0〜2の整数であり、アミノシランカップリング剤の硬化速度が速く、所望の特性を発揮することができる点で、0又は1であるのが好ましく、0であるのが特に好ましい。
【0040】
3級アミノシランカップリング剤は、3級アミノ基を(予め)有しているアミノシランカップリング剤であってもよく、また、1級及び/又は2級のアミノ基を有するアミノシランカップリング剤(以下、未置換アミノシランカップリング剤と称することがある。)におけるアミノ基の水素原子を前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アリール基等で置換してなる3級アミノシランカップリング剤であってもよい。
【0041】
3級アミノ基を(予め)有しているアミノシランカップリング剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジオクチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジブチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ジブチルアミノプロピルジメチルモノメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノフェニルトリメトキシシラン、トリメトキシシリル−3−プロピルモルホリン、トリメトキシシリル−3−プロピルピペリジン、トリメトキシシリル−3−プロピルイミダゾール等が挙げられる。
【0042】
前記未置換アミノシランカップリング剤は、分子内に、加水分解性シリル基と1級及び/又は2級アミノ基とをそれぞれ少なくとも1つ有していればよく、例えば、式(2) R−SiR(3−m) (式(2)において、Rは1級及び/又は2級アミノ基含有基であり、Rは有機基であり、Rは加水分解性基であり、mは0〜2の整数である。)で示される。前記1級及び/又は2級アミノ基含有基Rは、1級及び/又は2級アミノ基を含有する基であればよく、例えば、アミノアルキル基、アミノアリール基等が挙げられ、その炭素数は、特に限定されず、例えば、1〜20程度であるのが好ましい。1級及び/又は2級アミノ基含有基Rは、少なくとも1つの1級又は2級アミノ基を有していれば、2種以上のアミノ基を含んでもよい。前記アミノアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピル基、N,N−ジメチルアミノプロピル基及びこれらのアルキル又はアリール置換体等が挙げられ、前記アミノアリール基としては、例えば、アミノフェニル基、アミノベンジル基等が挙げられる。式(2)における有機基R、加水分解性基R及びmは、前記式(1)における有機基R、加水分解性基R及びmと基本的に同様である。
【0043】
このような未置換アミノシランカップリング剤として、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトシキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトシキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、トリメトキシシリル−3−プロピルフェニルアミン及びトリメトキシシリル−3−プロピルベンジルアミン等が挙げられる。
【0044】
前記未置換アミノシランカップリング剤におけるアミノ基の水素原子を置換するアルキル基、アルケニル基、アリール基は、活性水素原子を有する置換基、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、水酸基等を有していなければよく、例えば、前記加水分解性基等を有していてもよい。アルキル基、アルケニル基、アリール基の炭素数は特に限定されないが、1〜20であるのが好ましく、1〜12であるのが特に好ましい。
【0045】
例えば、前記未置換アミノシランカップリング剤におけるアミノ基の水素原子を置換することのできる化合物として、前記水素原子と反応する置換基と、アルキル基、アルケニル基又はアリール基とをそれぞれ少なくとも1つ有する化合物(以下、反応性化合物と称することがある。)であるのが好ましい。このような反応性化合物として、例えば、エポキシ基含有化合物、エポキシ基を含有するシランカップリング剤等が挙げられる。前記エポキシ基含有化合物としては、例えば、炭素数1〜10のアルキルグリシジルエーテル(例えば、メチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、i−ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル等)等が挙げられる。前記エポキシ基を含有するシランカップリング剤(以下、エポキシシランカップリング剤と称することがある。)としては、例えば、式(3) R−SiR(3−m) (式(3)において、Rはエポキシ基含有基であり、Rは有機基であり、Rは加水分解性基であり、mは0〜2の整数である。)で示されるシランカップリング剤等が挙げられる。前記エポキシ基含有基Rは、エポキシ基を含有する基であればよく、例えば、グリシジル基等が挙げられ、その炭素数は、特に限定されず、例えば、1〜20程度であるのが好ましい。式(3)における有機基R、加水分解性基R及びmは、前記式(1)における有機基R、加水分解性基R及びmと基本的に同様である。このようなエポキシシランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0046】
前記反応性化合物の中でも、未置換アミノシランカップリング剤と反応性化合物との反応によって分子量が増大しても、分子量に対する加水分解性基の割合が大きく低下しない点で、エポキシシランカップリング剤が好ましい。
【0047】
未置換アミノシランカップリング剤と反応性化合物とから3級アミノシランカップリング剤を合成するには、未置換アミノシランカップリング剤のアミノ基(水素原子)と反応性化合物の前記置換基とが反応する条件下、前記置換基と前記アミノ基における水素原子とのモル比(水素原子の合計モル数/前記置換基のモル数)が1以上となる割合で、未置換アミノシランカップリング剤と反応性化合物とを、反応させればよい。例えば、反応性化合物としてエポキシシランカップリング剤を選択する場合には、未置換アミノシランカップリング剤とエポキシ基含有シランカップリング剤とを、エポキシ基とアミノ基の水素原子とのモル比(水素原子の合計モル数/エポキシ基のモル数)が1以上となる割合で、反応させて、合成することができる。この反応において、溶媒は反応条件等を考慮して適宜選択されるが、通常、芳香族系溶媒(例えば、キシレン、トルエン)等の不活性溶媒を用いるのが好ましい。
【0048】
未置換アミノシランカップリング剤とエポキシシランカップリング剤とは、例示した未置換アミノシランカップリング剤と例示したエポキシシランカップリング剤とを任意の組合せで、反応させることができる。例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトシキシシランからなる群より選択される少なくとも一種の未置換アミノシランカップリング剤と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群より選択される少なくとも一種のエポキシシランカップリング剤とを反応させることができる。
【0049】
前記未置換アミノシランカップリング剤と前記反応性化合物とから得られる3級アミノシランカップリング剤としては、例えば、未置換アミノシランカップリング剤とエポキシシランカップリング剤とから得られる3級アミノシランカップリング剤(例えば、商品名「KBP43」、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
なお、3級アミノシランカップリング剤は、市販品を用いることもできるし、前記方法により合成された合成品を用いることもできる。
【0051】
ウレタン樹脂組成物中における3級アミノシランカップリング剤の含有量は、前記ポリウレタン調製成分100質量部に対して20〜70質量部である。ウレタン樹脂組成物中に前記範囲で3級アミノシランカップリング剤が含有されていると、コート層4としたときに、ウレタン樹脂と3級アミノシランカップリング剤の硬化物とが好適な割合で存在し、弾性層3の弾性(硬度)を維持して、弾性層3の変形等によく追従することができる。その結果、導電性ローラ1が画像形成装置に装着されたときに、導電性ローラ1と導電性ローラ1が当接又は圧接する当接体との接触幅(ニップ幅とも称する。)を十分に確保することができると共に、弾性層3表面の変形等によってコート層4表面にシワが発生することを防止することができる。また、ウレタン樹脂組成物中に前記範囲で3級アミノシランカップリング剤が含有されていると、コート層4としたときに、ウレタン樹脂と3級アミノシランカップリング剤の硬化物とが好適な割合で存在し、ウレタン樹脂による現像剤への帯電特性と、3級アミノシランカップリング剤の硬化物による現像剤への帯電特性とのバランスが好適化されると共に、ウレタン樹脂によるタック性を3級アミノシランカップリング剤の硬化物によって適度に軽減することができる。その結果、導電性ローラ1が画像形成装置に装着されたときに、導電性ローラ1の現像剤の帯電性及び離型性に優れる。したがって、前記範囲で3級アミノシランカップリング剤が含有されているウレタン樹脂組成物で形成されたコート層4を備えた導電性ローラ1は、低温低湿度環境下でカラーモード画像を形成した後に連続してモノクロモード画像を形成しても、所望のモノクロモード画像を形成することに貢献することができる。特に、導電性ローラ1が装着される画像形成装置が小型軽量化及び/又は高速化された画像形成装置であっても、ウレタン樹脂組成物中に前記範囲で3級アミノシランカップリング剤が含有されていると、ウレタン樹脂組成物を硬化してなるコート層4を備えてなる導電性ローラ1は、低温低湿度環境下で、カラーモード画像を形成した後に連続してモノクロモード画像を形成しても、所望のモノクロモード画像を形成することに貢献することができる。低温低湿度環境下で、カラーモード画像を形成した後に連続してモノクロモード画像を形成しても、所望のモノクロモード画像を形成することにより一層貢献することができる点で、3級アミノシランカップリング剤の含有量は、前記ポリウレタン調製成分100質量部に対して、20〜70質量部であるのが好ましく、30〜60質量部であるのが特に好ましい。
【0052】
前記ウレタン樹脂組成物は、ポリウレタン調製成分及び3級アミノシランカップリング剤に加えて、通常、組成物に含有される各種添加剤を含有してもよく、各種添加剤としては、例えば、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0053】
ウレタン樹脂組成物は、二本ローラ、三本ローラ、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、ポリウレタン調製成分及び3級アミノシランカップリング剤、所望により各種添加剤等を均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して、得られる。なお、ウレタン樹脂組成物の調整は、室温下又は冷却下で行えばよく、高度の禁水状態で行う必要はない。
【0054】
前記コート層4を備えた導電性ローラ1、すなわちコート層4は、30〜80のJIS A硬度を有しているのが好ましい。導電性ローラ1が30〜80のJIS A硬度を有していると、導電性ローラ1と被当接体との接触面積を大きくすることができ、また、反発弾性及び圧縮永久ひずみが優れる。導電性ローラ1と被当接体との接触面積が向上し、反発弾性及び圧縮永久ひずみを所望のように向上させることができる点で、JIS A硬度は、40〜70であるのがより好ましく、45〜60であるのが特に好ましい。JIS A硬度は、JIS K6301に準拠して測定することができる。
【0055】
また、導電性ローラ1、すなわちコート層4は、1〜15μmの表面粗さRzを有しているのが好ましい。導電性ローラ1が1〜15μmの表面粗さRzを有していると、例えば、導電性ローラ1を現像剤担持体として使用する際に、現像剤を所望のように担持し、像担持体に所望のように供給することができる。表面粗さRzは、2〜14μmであるのがより好ましく、2〜13μmであるのが特に好ましい。導電性ローラ1の表面粗さRzは、JIS B 0601―1984(十点平均粗さ)に準じ、先端半径2μmの測定プローブを備えた表面粗さ計(商品名「590A」、株式会社東京精密製)に、コート層4を備えた導電性ローラ1をセットし、測定長2.4mm、カットオフ波長0.8mm、カットオフ種別ガウシアンにより、少なくとも3点における表面粗さ測定し、これらの平均値を表面粗さRzとする。
【0056】
さらに、導電性ローラ1、すなわちコート層4は、温度20℃、相対湿度50%における体積抵抗率が1012Ω・cm以下であるのが好ましい。導電性ローラ1が1012Ω・cm以下の体積抵抗率を有していると、帯電特性が優れ、例えば、画像形成装置の現像剤担持体として導電性ローラ1を使用する場合には、現像剤を所望のように帯電させることができるから、現像剤を所望のように担持することができ、担持した現像剤を像担持体に所望のように供給することができる。帯電特性がより一層優れる点で、導電性ローラ1の体積抵抗率は、1010Ω・cm以下であるのがより好ましく、10〜10Ω・cmであるのが特に好ましい。導電性ローラ1の体積抵抗率は、コート層4に含まれる導電性付与剤の含有量、及び/又は、弾性層3の体積抵抗率等を調整することによって、前記範囲内に調整することができる。前記体積抵抗率は、JIS K6911に規定された方法に準じて、印加電圧を100Vに設定して測定することができる。
【0057】
また、導電性ローラ1は、10〜10Ωの電気抵抗率を有していることが好ましい。導電性ローラ1が10〜10Ωの電気抵抗値を有していると導電性ローラ1の帯電特性に優れる。例えば、画像形成装置における現像剤担持体(例えば、図2参照。)の一例である現像ローラとして導電性ローラ1を使用する場合には、現像剤を所望のように帯電させることができるから、現像剤を確実に担持することができ、担持した現像剤を像担持体に所望のように確実に供給することができる。現像剤の担持及び供給をより一層高い水準で所望のように達成することができる点で、電気抵抗値は、10〜10Ωであるのがより好ましく、10〜10Ωであるのが特に好ましい。導電性ローラ1の電気抵抗値は、電気抵抗計(商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A、株式会社アドバンテスト製)を用い、導電性ローラ1を水平に置き、5mmの厚さ、30mmの幅、及び、導電性ローラ1全体を載せることのできる長さを有する金メッキ製板を電極とし、500gの荷重を導電性ローラ1における軸体2の両端それぞれに支持させた状態にして、軸体2と電極との間にDC100Vを印加し、1秒後の電気抵抗計の値を読みとり、この値を電気抵抗値とする方法により、測定することができる。前記電気抵抗値は、弾性層3に含まれる導電性付与剤の含有量を調整することによって、前記範囲内に調整することができる。
【0058】
導電性ローラ1、すなわちコート層4は、測定面積4mmにおける表面光沢度が2〜13であるのが好ましい。導電性ローラ1が2〜13の前記表面光沢度を有すると、印字濃度の低下、画像のかすれ及びかぶり等を防止する機能を十分に発揮して、高品質の画像を形成することができる。コート層4の機能を高い水準でバランスよく発揮させることができる点で、表面光沢度は、2.5〜12.5であるのが好ましく、3〜12であるのが特に好ましい。前記表面光沢度は、例えば、前記ウレタン組成物に含有される各成分の種類及び配合量、コート層4の形成方法、及び、後述する導電性弾性層3の表面粗さ等を適宜選択することにより、容易に所望の値に調整することができる。ここで、表面光沢度は、DIN 67530による黒色ガラス標準板の反射指数1.567を光沢度100としたときに、この光沢度100に対する割合である。表面光沢度は、コート層4の表面における4mm、すなわち、2×2mmを測定面積として、測定される。表面光沢度の測定面積をこのように極小面積とすることによって、コート層4全表面の表面光沢度を代表する表面光沢度を高精度で測定することができる。この発明において、表面光沢度は極小面積を測定するから、表面光沢度の測定に当っては、コート層4の表面をそのまま測定してもよく、また、コート層4を半導電性ローラ1から切り出して、平面状態にして測定してもよい。表面光沢度は、コート層4における表面の複数個所、例えば、コート層4の周方向に等間隔で4箇所及びコート層4の長手方向に等間隔で5箇所、合計20箇所をそれぞれ測定し、これらの算術平均値とする。表面光沢度を測定する際の入射角はコート層4の表面に対して60°である。表面光沢度の測定には、例えば、商品名「極小面積測定用光沢計 155−SO」(Sheen Instruments Ltd製)等を用いることができる。
【0059】
導電性ローラ1は、当接体例えば現像剤担持体に当接又は圧接した状態で画像形成装置に装着される。このときの導電性ローラ1と当接体とのニップ幅は、通常、導電性ローラ1の周方向長さが0.1〜5mmとなるように調整される。
【0060】
この発明に係る導電性ローラは、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、定法に従って前記材料から軸体2を作製し、所望により、その外周面にプライマー等が塗布される。次いで、軸体2の外周面に前記ゴム組成物を公知の成形方法によって加熱硬化して、弾性層3が形成される。成形方法としては、例えば、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されない。このようにして形成された弾性層3は、所望により、その表面が研磨、研削されて、外径及び表面状態等が調整される。所望により、弾性層3の外周面にプライマー等が塗布される。
【0061】
このようにして形成された弾性層3の外周面に前記ウレタン樹脂組成物が塗工され、次いで、塗工されたウレタン樹脂組成物を加熱硬化させて、コート層4が形成される。ウレタン樹脂組成物の塗工は、例えば、塗布法、ディッピング法、スプレーコーティング法等の公知の塗工方法によって、行われる。このようにして塗工されたウレタン樹脂組成物を加熱硬化する方法は、ウレタン樹脂組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよく、例えば、ウレタン樹脂組成物が塗工された弾性層3等を加熱器で加熱する方法等が挙げられる。ウレタン樹脂組成物を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、120〜180℃、特に150〜160℃、加熱時間は20〜80分間、特に30〜40分間であるのが好ましい。
【0062】
この導電性ローラ1は、前記ウレタン樹脂組成物を硬化してなるコート層4を備えているから、現像剤への帯電特性及び離型性に優れると共に、感光体への耐汚染性、耐久性等にも優れる。したがって、導電性ローラ1を画像形成装置に装着されると、低温低湿度環境下でカラーモード画像を形成した後に連続してモノクロモード画像を形成しても、所望のモノクロモード画像を形成することに貢献することができる。なお、低温低湿度環境は、例えば、温度10〜20℃、相対湿度10〜30%の環境である。
【0063】
カラー画像形成装置において、低温低湿度環境下で、カラーモード画像を形成した後に、特にカラーモード画像を連続して形成した後に、モノクロモード画像を連続して形成すると、モノクロモード画像に、イエロー現像剤、シアン現像剤及び/又はマゼンタ現像剤が定着されてなるカラー画像部が形成される理由は、明らかではない。ところが、小型軽量化された像担持体等の部材を備えた小型軽量化された画像形成装置は像担持体及び現像ローラが小型軽量化されているから、この画像形成装置で画像を形成する場合には、所定の長さの記録体に画像を形成するのに必要な像担持体及び現像ローラの回転数が多くなる。また、画像を高速で印刷可能な画像形成装置は、像担持体及び現像ローラが高速で回転することになる。特に、小型軽量化及び高速化された画像形成装置は、像担持体及び現像ローラが高速で回転すると共にその回転数が多くなる。そうすると、これらの画像形成装置に、従来の導電性ローラを用いると、像担持体と現像ローラとの当接部を通過する現像剤に大きは負荷がかかって、現像剤が像担持体等に固着し、又は、像担持体と現像ローラとの当接部を通過する現像剤に必要以上の帯電を付与して、現像剤が像担持体等に付着してしまうことが、あった。そして、このような現像剤の像担持体等への固着又は付着は、その環境が低温であるほど、また、低湿度であるほど、顕著であり、従来の導電性ローラでは、現像剤の像担持体等への固着又は付着を効果的に防止することはできなかった。
【0064】
一方、この発明に係る導電性ローラの一実施例である導電性ローラ1は、小型軽量化された像担持体等の部材を備えた小型軽量化された画像形成装置、及び/又は、画像を高速で印刷可能な画像形成装置に装着されても、像担持体等の当接体とのニップ幅を十分に確保することができる。また、導電性ローラ1は現像剤への帯電特性及び離型性に優れると共に表層の柔軟性にも優れているから、特に、小型軽量化された画像形成装置、及び/又は、高速化された画像形成装置に装着されて、導電性ローラ1が高速で多数の回転数で回転されても、当接体と導電性ローラとの当接部を通過する現像剤を強力に押圧することなく現像剤に対する負荷を軽減して、当接体又は導電性ローラ1の表面に現像剤が固着することを効果的に防止することができると共に、当接体又は導電性ローラ1に担持した現像剤への帯電過多を防止して、所望の範囲の帯電量で帯電させることができる。したがって、この発明によれば、小型軽量化された画像形成装置、及び/又は、高速化された画像形成装置に装着されても、低温低湿度環境下でカラーモード画像を形成した後に連続してモノクロモード画像を形成しても、所望のモノクロモード画像を形成することに貢献することのできる導電性ローラを提供するという目的を達成することができる。
【0065】
導電性ローラ1は、筒状をなしていればその形状は特に限定されず、例えば、図1に示されるように、その外径が軸線方向の一方の端部から他方の端部にかけて略同一とされる所謂ストレート形状とされてもよく、その軸線方向の中央部における外径がその両端部における外径よりも小さな所謂逆クラウン形状とされてもよく、また、その軸線方向の中央部における外径がその両端部における外径よりも大きな所謂クラウン形状とされてもよい。
【0066】
この発明に係る導電性ローラは、前記特性を有しているから、画像形成装置用の導電性ローラ、例えば、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等として、好適に用いられる。特に、現像剤の担持及び供給に深く関与する現像ローラとして、好適に用いられる。
【0067】
また、この発明に係る導電性ローラが装着される画像形成装置としては、各色の現像ユニットを備えたカラー画像形成装置(タンデム型、4サイクル型)等、特に制限されずに、挙げることができる。好適には、この発明に係る導電性ローラは、低温低湿度環境下で、カラーモード画像を形成した後に連続してモノクロモード画像を形成しても、所望のモノクロモード画像を形成することに貢献することができるから、カラー画像形成装置に用いられる。特に、この発明に係る導電性ローラは高速で多数の回転数で回転されても、現像剤に対する負荷を軽減することができると共に、導電性ローラ1に担持した現像剤への帯電過多を防止することができるから、小型軽量化された画像形成装置、及び/又は、高速化された画像形成装置に特に好適に用いられる。小型軽量化された画像形成装置としては、例えば、各部材が小型軽量化された画像形成装置、現像ユニットを水平方向に配列してなるタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられ、より具体的には、外径が20mm以下の導電性ローラを備えている画像形成装置等が挙げられ、高速化された画像形成装置としては、例えば、複数の現像ユニットを配列してなるタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。
【0068】
この発明に係る導電性ローラを現像剤担持体として装着したタンデム型カラー画像形成装置の一例を、図2を参照して、説明する。図2に示される画像形成装置は、像担持体に現像された現像剤像を記録体に直接転写する直接転写方式のタンデム型カラー画像形成装置である。
【0069】
図2に示されるように、画像形成装置10は、四種の現像ユニットB、C、M及びYに装備された像担持体11B、11C、11M及び11Yを転写搬送ベルト6上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、したがって、現像ユニットB、C、M及びYが転写搬送ベルト6上に直列に配置されている。画像形成装置10において、この発明に係る導電性ローラが前記現像剤担持体としての現像ローラとして装着されている。
【0070】
図2に示されるように、現像ユニットBは、静電潜像が形成される回転可能な像担持体11Bと、像担持体11Bに当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11Bを帯電させる帯電手段12Bと、像担持体11Bの上方に設けられ、像担持体11Bに静電潜像を形成する露光手段13Bと、像担持体11Bに当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11Bに一定の層厚で現像剤22Bを供給し、静電潜像を現像する現像手段20Bと、像担持体11Bの下方に転写搬送ベルト6を介して当接又は圧接するように設けられ、現像された静電潜像を像担持体11Bから転写搬送ベルト6で搬送される記録体16上に転写する転写手段14Bと、記録体16に転写されず像担持体11Bに残留した現像剤22B等を除去するクリーニング手段15Bとを備えている。図2に示されるように、現像ユニットBにおける像担持体11Bと転写手段14Bとは、二本の支持ローラ42に張架された転写搬送ベルト6を介して当接又は圧接している。そして、記録体16は、転写搬送ベルト6により、像担持体11Bと転写手段14Bとの当接部を通過するように、搬送される。この転写搬送ベルト6は記録体16を搬送すると共に、転写手段14Bと協働して像担持体11Bに現像された静電潜像を転写する。像担持体11B、帯電手段12B、露光手段13B、転写手段14B及びクリーニング手段15Bは、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0071】
図2に示されるように、前記現像手段20Bは、像担持体11Bに対向する位置に開口部を有し、現像剤22Bを収納する筐体21Bと、筐体21Bの開口部に、像担持体11Bに当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体11Bに現像剤22Bを一定の層厚で供給する回転可能な現像剤担持体23Bと、現像剤担持体23Bの上方に設けられ、現像剤担持体23Bに当接又は圧接して現像剤22Bの層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤22Bを帯電させる現像剤規制部材24Bとを備えている。現像剤担持体23Bとしてこの発明に係る導電性ローラの一例である導電性ローラ1が採用され、現像剤規制部材24Bとして従来公知のものが適宜選択されて使用されている。前記現像剤22Bは、摩擦により帯電可能で、記録体16に定着可能な現像剤であれば、乾式現像剤でも湿式現像剤でもよく、また、非磁性現像剤でも磁性現像剤でもよい。現像ユニットBは、筐体21B内に黒色現像剤を収納している。
【0072】
図2に示されるように、現像ユニットC、M及びYは、現像ユニットBと同様に構成されている。現像ユニットC、M及びYはそれぞれ、筐体21C、21M及び21Y内に、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yを収納している。
【0073】
図2に示されるように、画像形成装置10の底部には、記録体16として複数枚の記録体を積層収容するカセット41が設置され、カセット41内の記録体は給紙ローラ等によって1枚ずつ送り出されて、転写搬送ベルト6上に搬送される。
【0074】
図2に示されるように、画像形成装置10における記録体16の搬送方向下流には、記録体16に転写された各種現像剤(静電潜像)を定着させる定着手段30が配置されている。定着手段30は、例えば、発熱可能な定着ローラを備えた熱ローラ定着装置、オーブン定着器等の加熱定着装置、加圧可能な定着ローラを備えた圧力定着装置等を用いることができる。図2に示されるように、画像形成装置10は、定着ベルト36を備えた定着装置が定着手段30として配置されている。この定着装置は、図2にその断面が示されるように、記録体16を通過させる開口部35を有する筐体34内に、定着ローラ31と、定着ローラ31の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ33と、定着ローラ31及び無端ベルト支持ローラ33に巻き掛けられた定着ベルト36と、定着ローラ31に対して対向配置された加圧ローラ32とを備え、定着ベルト36を介して定着ローラ31と加圧ローラ32とが、互いに当接又は圧接するように、回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。無端ベルト支持ローラ33は、画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。定着ローラ31、無端ベルト支持ローラ33及び加圧ローラ32はそれぞれ、加熱体(図示しない。)が内蔵され、加圧ローラ32はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、定着ベルト36を介して定着ローラ31に圧接している。定着ベルト36と加圧ローラ32との圧接された間を記録体16が通過することにより、加圧と同時に加熱され、記録体16に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができる。
【0075】
画像形成装置10は、次にように作用する。まず、現像ユニットBの像担持体11Bが、帯電手段12Bにより一様に帯電され、露光手段13Bにより画像が露光されて、像担持体11Bの表面に静電潜像が形成される。一方、現像手段20Bにおいて、現像剤担持体23B及び現像剤規制部材24Bにより、黒色現像剤22Bが所望の層厚に規制され、所望のように帯電される。そして、この黒色現像剤22Bが現像剤担持体23Bから像担持体11Bに供給され、像担持体11Bに形成された静電潜像が現像されて、現像剤像として可視化される。次いで、この現像剤像が、像担持体11Bと転写手段14Bとの間に転写搬送ベルト6により搬送される記録体16上に、転写される。このようにして、現像剤像が記録体16上に黒像に顕像化される。次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、現像剤像が黒像に顕像化された記録体16に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は、搬送手段により定着手段30に搬送され、定着ローラ31と加圧ローラ32との定着ベルト36を介した当接部又は圧接部を通過するときに加熱及び/又は加圧されて、転写されたカラー像が永久画像として定着される。このようにして、記録体16にカラー画像を形成することができる。
【0076】
画像形成装置10によれば、現像剤担持体23B、23C、23M及び23Yとしての現像ローラとして、この発明に係る導電性ローラの一例である導電性ローラ1が装着されているから、これらの現像ローラはいずれも、現像剤への帯電特性及び離型性に優れている。それ故、導電性ローラ1への現像剤の固着又は付着を効果的に防止することができ、低温低湿度環境下でカラーモード画像を形成した後に連続してモノクロモード画像を形成しても所望のモノクロモード画像を形成することができる。
【0077】
この発明に係る導電性ローラは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、導電性ローラ1のコート層4は一層とされているが、この発明において、コート層は複数層とされてもよい。この場合には、最外層が前記ウレタン樹脂組成物で形成されていればよく、内層は前記ウレタン樹脂組成物で形成されている必要はない。
【0078】
また、導電性ローラ1は、前記ウレタン樹脂組成物を用いるから、弾性層3とコート層4とは、その間にプライマー層又は接着剤層が存在しなくても、強固に密着しているが、この発明において、プライマー層又は接着剤層等に、弾性層とコート層との密着性向上以外の機能を発揮させるのであれば、弾性層とコート層との間にプライマー層又は接着剤層等を設けてもよい。
【0079】
画像形成装置10は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置10は電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。
【実施例】
【0080】
(実施例1)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体2(SUM22製、直径7.5mm、長さ281.5mm)をトルエンで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体2の表面にプライマー層を形成した。
【0081】
次いで、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(A)(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、R−972)1質量部、平均粒径6μm、嵩密度が0.25g/cmである珪藻土(C)(オプライトW−3005S、北秋珪藻土株式会社製)40質量部、及び、アセチレンブラック(D)(デンカブラックHS−100、電気化学工業株式会社製)5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、架橋剤として、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(B)(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)2.1質量部、反応制御剤として、エチニルシクロヘキサノール0.1質量部、及び、白金触媒(E)(Pt濃度1%)0.1質量部を添加し、15分撹拌して混練して、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を調製した。調製した付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を液体射出成形により前記軸体2の外周面に成形した。この成形体を、成形体の軸線方向の各端部から中央部に向かってほぼ同じ割合で徐々に外径が小さくなる逆クラウン形状に研磨して、端部の外径20.1mm、中央部の外径20mmの弾性層3を形成した。
【0082】
次いで、ブロックイソシアネート(商品名「MF−B60X」、旭化成ケミカルズ株式会社製、10質量部と、ポリオール(商品名「ダイプラコートSO」、大日精化工業株式会社製、)100質量部(モル比(NCO/OH=1)と、3級アミノ基のみを有する3級アミノシランカップリング(商品名「KBP43」、信越化学工業株式会社製)50質量部とを、温度20℃で5分撹拌して、ウレタン樹脂組成物1を調製した。
【0083】
このウレタン樹脂組成物1を弾性層3の外周面に、スプレーコーティング法によって、一回塗布し、150℃で30分間加熱して、層厚13μmのコート層4を形成した。このようにして、導電性ローラを製造した。
【0084】
(実施例2)
前記成形体を、その外径が軸線方向の一方の端部から他方の端部にかけて略同一のストレート形状に研摩して、外径20mmの弾性層3を形成した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを製造した。
(実施例3)
前記成形体を、その軸線方向の各端部から中央部に向かってほぼ同じ割合で徐々に外径が小さくなる逆クラウン形状に研摩して、端部の外径19.9mm、中央部の外径20mmの弾性層3を形成した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを製造した。
【0085】
(実施例4及び5)
前記3級アミノシランカップリングの含有量を、20質量部又は70質量部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを製造した。
【0086】
(比較例1及び2)
前記3級アミノシランカップリングの含有量を、10質量部及び100質量部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを製造した。
(比較例3)
前記3級アミノシランカップリングを、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(商品名「KBE9007」、信越化学工業株式会社製)に変更し、含有量を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを製造した。
(比較例4)
前記3級アミノシランカップリングを、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)に変更し、含有量を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラの製造を試みたが、ヘキサメチルジシラザンは3次元架橋構造を有しないので、コート層を形成することができなかった。
(比較例5)
前記3級アミノシランカップリングを、3−トリス(トリメチルシロキシ)シリル−プロピルイソシアネート(商品名「X−93−1543」、信越化学工業株式会社製)に変更し、含有量を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラの製造を試みたが、弾性層3上でのウレタン樹脂組成物の濡れ性が乏しかったので、コート層を形成することができなかった。
【0087】
(比較例6)
前記3級アミノシランカップリングを、1級アミノ基含有シランカップリング材(商品名「KBE−903」、信越化学工業株式会社製)に変更し、含有量を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを製造した。
(比較例7)
前記3級アミノシランカップリングを、2級アミノ基含有シランカップリング材(商品名「KBM−573」、信越化学工業株式会社製)に変更し、含有量を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを製造した。
(比較例8)
前記3級アミノシランカップリングを、1級及び2級アミノ基含有シランカップリング材(商品名「KBM−603」、信越化学工業株式会社製)に変更し、含有量を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを製造した。
【0088】
(比較例9)
前記3級アミノシランカップリングを、3級アミノ基を有しないポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン(商品名「BYK−370」、ビックケミー株式会社製)に変更し、含有量を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを製造した。
(比較例10)
前記3級アミノシランカップリングを用いなかった以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを製造した。
(比較例11)
前記ブロックイソシアネート及びポリオールを用いなかった以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラを製造した。
(比較例12)
前記ブロックイソシアネートをブロック剤でブロックされていないイソシアネートに変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ローラの製造を試みたが、ウレタン樹脂組成物が調整後直ちに反応してしまい、コート層を形成することができなかった。
【0089】
次いで、各導電性ローラそれぞれを4本準備し、図2に示されるタンデム型カラー画像形成装置(商品名「JUSTIO HL−4040CN」、ブラザー工業株式会社製)において、現像剤担持体23B、23C、23M及び23Yとして、配設した。なお、現像剤及び現像剤規制部材は、このタンデム型カラー画像形成装置に付属の現像剤及び現像剤規制部材を用いた。
【0090】
導電性ローラを装着した前記タンデム型カラー画像形成装置内の環境を、温度10℃、相対湿度15%に調整して、しばらく静置した。その後、この環境を維持したまま、カラー印刷モードにてカラーモード画像(A4サイズの記録体16の左肩位置にカラーで11ポイントの文字「あ」1字を印字)100枚を連続して印刷した後、モノクロ印刷モードに変更して、モノクロモード画像(A4サイズの記録体16の左肩位置にモロクロで11ポイントの文字「あ」1字を印字)1枚を印刷した。印刷されたモノクロモード画像に、イエロー現像剤、シアン現像剤及び/又はマゼンタ現像剤が付着しているか否か(下記表において、LLかぶりと表記する。)を、目視にて評価した。評価は、モノクロモード画像に黒色現像剤以外の現像剤が付着していなかった場合を「◎」、モノクロモード画像にイエロー現像剤がわずかに(許容可能な微量)付着していた場合を「○」、モノクロモード画像にイエロー現像剤がかなり(許容できない量)付着していた場合を「△」、モノクロモード画像にシアン又は/及びマゼンタが付着していた場合を「×」とした。その結果を第1表に示す。
【0091】
【表1】

【符号の説明】
【0092】
1 導電性ローラ
2 軸体
3 弾性層
4 コート層
6 転写搬送ベルト
10 画像形成装置
11B、11C、11M、11Y 像担持体
12B、12C、12M、12Y 帯電手段
13B、13C、13M、13Y 露光手段
14B、14C、14M、14Y 転写手段
15B、15C、15M、15Y クリーニング手段
16 記録体
20 現像手段
21B、21C、21M、21Y、34 筐体
22B、22C、22M、22Y 現像剤
23B、23C、23M、23Y 現像剤担持体
24B、24C、24M、24Y 現像剤規制部材
30 定着手段
31 定着ローラ
32 加圧ローラ
33 無端ベルト支持ローラ
35 開口部
36 定着ベルト
41 カセット
42 支持ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面に形成された弾性層と、前記弾性層の外周面に形成されたコート層とを備えて成り、
前記コート層は、ブロックイソシアネートを含むポリウレタン調製成分100質量部と、3級アミノ基を有するシランカップリング剤20〜70質量部とを含有するウレタン樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
前記シランカップリング剤は、1級又は2級アミノ基を含有するシランカップリング剤とエポキシ基を含有するシランカップリング剤とを、前記エポキシ基と前記アミノ基の水素原子とのモル比(水素原子の合計モル数/エポキシ基のモル数)が1以上となる割合で、反応してなることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電性ローラを備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−271532(P2010−271532A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123169(P2009−123169)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】