説明

導電性ローラ用組成物、導電性ローラ、帯電装置、画像形成装置およびプロセスカートリッジならびに導電性ローラの製造方法

【課題】アリルグリシジルエーテルユニットを有する3元系のエピクロルヒドリンゴムを適用するよりも低コストで、かつ加硫速度を抑制させた導電性ローラ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも導電性を有する軸体の外周上に弾性層を備える導電性ローラに用いられる導電性ローラ用ゴム組成物であり、前記弾性層が、2元系エピクロルヒドリンゴムを含有し、キノキサリン系加硫剤及びトリアジン系加硫剤を含まず、少なくとも硫黄を含む加硫剤を含有するゴム組成物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ローラ用組成物、導電性ローラ、帯電装置、画像形成装置およびプロセスカートリッジならびに導電性ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ及びファクシミリ等に代表される電子写真装置や静電記録装置等の画像形成装置に組み込まれる導電性ローラとしては、その電気抵抗値を取得する手法の異なる、電子導電性タイプとイオン伝導性タイプのものが知られている。導電性ローラは一般に、導電性軸体の外周上に弾性層を有し、該弾性層はゴム組成物を含む。電子伝導性タイプの導電性ローラでは、予め定められた望ましい抵抗値を取得するために、例えばカーボンブラックや金属酸化物等の導電性粒子をゴム材料等に配合・分散して該ゴム組成物が作製される。このとき、得られる抵抗値は該ゴム組成物中での導電性粒子の分散状態に大きく依存する。
【0003】
上記の事情から、画像形成装置に組み込まれる導電性ローラとしては一般に、イオン伝導性タイプのものが使用されることが大半である。イオン伝導性タイプの導電性ローラの例として、該弾性層が、エチレンオキサイドとエピクロルヒドリンの共重合体やアクリロニトリル−ブタジエンゴム等のポリマーからなるゴム組成物を含むものが挙げられる。これらのゴム組成物は電気抵抗のバラツキが小さく、また、望ましい抵抗値が安定して得られるため、画像形成装置にはイオン伝導性タイプの導電性ローラが適している。
【0004】
導電性ローラに使用されるエピクロルヒドリン系ゴムの一例として、エピクロルヒドリン(ECH)とエチレンオキサイド(EO)とアリルグリシジルエーテル(AGE)からなる3元系共重合体(GECO)が挙げられる。エピクロルヒドリンゴムを含む3元系共重合体は硫黄系の種々の加硫剤で加硫できる。種々の硫黄系の加硫剤のうち、その組み合わせを変えることで加硫速度を容易に調整することができるため、加工性に優れている。しかし、3元系のエピクロルヒドリンゴムは、加硫が行われるアリルグリシジルエーテルユニット部分が高価であるため、材料コストが高くなってしまう懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−313769号公報
【特許文献2】特開2007−98896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
材料コストを低減させるため、弾性層にエピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとからなる2元系のエピクロルヒドリンゴムを主成分とするゴム組成物を有する導電性ローラを作製する方法が検討されている。エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとからなる2元系のエピクロルヒドリンゴムは、一般的には、キノキサリン系化合物やトリアジン系化合物により加硫が行われている。この2元系のエピクロルヒドリンゴムは、アリルグリシジルエーテルユニットを有していないため、硫黄系の加硫剤では加硫ができないとされている。
【0007】
導電性ゴムローラの製造方法としては、注型や射出成形のように金型を用い、導電性芯金を予め円筒の中心になるよう設置し、未加硫ゴムを流し込み成形する方法、チューブ状に押出した未加硫ゴムを加硫処理した後に、導電性ゴムローラの軸体となる円筒状芯金を圧入する方法、又は押出し機にクロスヘッドを備えて、未加硫ゴムを芯金上に予め被覆してから加硫する方法などがある。
【0008】
ところが、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとからなる2元系のエピクロルヒドリンゴムを、トリアジン化合物またはキノキサリン化合物により加硫する場合には、加硫の立ち上がりが非常に早いため、加工時の取り扱いが困難となる。例えば金型成形の場合では、射出途中でゴムの架橋が進んでしまい金型にゴムが充填できなかったり、充填できたとしてもバリ部にヒケが発生することがある。また、チューブ押出又は、クロスヘッド押出機による押出し成形の場合では、押出機内で加硫が進み、ゴム表面に凸凹が発生し、押出されたゴム表面の平滑性が失われることがある。弾性層を構成するゴム表面の平滑性が低い導電性ローラを帯電ローラとして用いた場合には、トナーがローラに付着して、感光体ドラムを均一に帯電させることが出来ず、帯電ムラが生じ、横スジのような画像の不具合が発生することがある。
【0009】
また、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとからなる2元系のエピクロルヒドリンゴムを、トリアジン化合物やキノキサリン化合物により加硫する場合、特に押出し成形時には、押出し加工中にスコーチが進行してしまい、うまく成形できないことがありえた。一方、押出し機にクロスヘッドを備えて、未加硫ゴムを芯金上に予め被覆してから加硫する方法にあっては、製造コストを極めて有利にできることから好適な手法であるものの、トリアジン化合物やキノキサリン化合物により加硫する場合にはやはり加硫の立ち上がりを抑制することが必要であった。
【0010】
本発明の課題は、アリルグリシジルエーテルユニットを有する3元系のエピクロルヒドリンゴムを適用するよりも低コストで、かつ加硫速度を抑制させた導電性ゴム組成物及び該導電性ゴム組成物を使用した導電性ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、少なくとも導電性を有する軸体の外周上に弾性層を備える導電性ローラに用いられる導電性ローラ用ゴム組成物であり、前記弾性層が、2元系エピクロルヒドリンゴムを含有し、キノキサリン系加硫剤及びトリアジン系加硫剤を含まず、少なくとも硫黄を含む加硫剤を含有するゴム組成物を含む導電性ローラ用ゴム組成物である。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記2元系エピクロルヒドリンゴムが、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体である請求項1に記載の導電性ローラ用ゴム組成物である。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記硫黄を含む加硫剤が、少なくともチウラムスルフィド系加硫剤を含有する請求項1または2に記載の導電性ローラ用ゴム組成物である。
【0014】
請求項4に係る発明は、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴムをさらに含み、前記2元系エピクロルヒドリンゴムと液状アクリロニトリル−ブタジエンゴムとの配合割合が、質量比で95:5から70:30の間である請求項1から3のいずれか1項に記載の導電性ローラ用ゴム組成物である。
【0015】
請求項5に係る発明は、イオン導電剤をさらに含有する請求項1から4のいずれか1項に記載の導電性ローラ用ゴム組成物である。
【0016】
請求項6に係る発明は、前記イオン導電剤が第4級アンモニウム塩であり、前記2元系エピクロルヒドリンゴム100質量部に対し、0.5質量部以上15質量部以下の割合で含有されている請求項5に記載の導電性ローラ用ゴム組成物である。
【0017】
請求項7に係る発明は、前記2元系エピクロルヒドリンゴム100質量部に対し、0.4質量部以上17質量部以下の受酸剤をさらに含有する請求項1から6のいずれか1項に記載の導電性ローラ用ゴム組成物である。
【0018】
請求項8に係る発明は、未加硫の2元系エピクロルヒドリンゴム基材が、145℃におけるムーニースコーチのt5が5分以上30分以下、t35が10分以上50分以下である請求項1から7のいずれか1項に記載の導電性ローラ用ゴム組成物である。
【0019】
請求項9に係る発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の導電性ローラ用ゴム組成物を有する導電性ローラである。
【0020】
請求項10に係る発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の導電性ローラ用ゴム組成物を有する導電性ローラと、前記導電性ローラの表面を清掃する清掃部材とを備える帯電装置である。
【0021】
請求項11に係る発明は、像保持体と、請求項9に記載の導電性ローラと、前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、を備える画像形成装置である。
【0022】
請求項12に係る発明は、像保持体と、前記像保持体を帯電させる帯電手段と、を備え、前記帯電手段が、請求項9に記載の導電性ローラを含むプロセスカートリッジである。
【0023】
請求項13に係る発明は、押出し機を用いて未加硫のゴム組成物を押出すとともに、連続的に該軸体を押出し機のクロスヘッドダイを通過させて、該軸体の外周上に未加硫の該ゴム組成物を配置せしめローラ形状にした後、加硫工程を経て製造される請求項9に記載の導電性ローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の請求項1によれば、3元系のエピクロルヒドリンゴムを適用する導電性ローラ用ゴム組成物に比較して、低コストで、かつキノキサリン系加硫剤またはトリアジン系加硫剤を含む導電性ローラ用ゴム組成物に比較して、加硫速度を抑制させた導電性ローラ用ゴム組成物が提供される。
【0025】
本発明の請求項2によれば、3元系のエピクロルヒドリンゴムを適用する導電性ローラ用ゴム組成物に比較して、低コストの導電性ローラ用ゴム組成物が提供される。
【0026】
本発明の請求項3によれば、キノキサリン系加硫剤またはトリアジン系加硫剤を含む導電性ローラ用ゴム組成物に比較して、加硫速度を抑制させた導電性ローラ用ゴム組成物が提供される。
【0027】
本発明の請求項4によれば、本構成を有さない導電性ローラ用ゴム組成物に比較して、押出成形性に優れた導電性ローラ用ゴム組成物が提供される。
【0028】
本発明の請求項5によれば、本構成を有さない導電性ローラ用ゴム組成物に比較して、均質な導電性が付与された導電性ゴム組成物が提供される。
【0029】
本発明の請求項6によれば、本構成を有さない導電性ローラ用ゴム組成物に比較して、適切な導電性が付与された導電性ローラ用ゴム組成物が提供される。
【0030】
本発明の請求項7によれば、本構成を有さない導電性ローラ用ゴム組成物に比較して、加硫速度のバラツキが小さくなり、安定した加硫速度で加硫された導電性ローラ用ゴム組成物が提供される。
【0031】
本発明の請求項8によれば、本構成を有さない導電性ローラ用ゴム組成物に比較して、画像形成装置に組み込んだときに画像品質の良好な導電性ローラ用ゴム組成物が提供される。
【0032】
本発明の請求項9によれば、3元系のエピクロルヒドリンゴムを適用するゴム組成物に比較して、低コストで、かつキノキサリン系加硫剤またはトリアジン系加硫剤を含むゴム組成物に比較して、加硫速度を抑制させたゴム組成物を有する導電性ローラが提供される。
【0033】
本発明の請求項10によれば、本構成を有さない帯電装置に比較して、画像形成装置に組み込んだときに画像品質の良好な帯電装置が提供される。
【0034】
本発明の請求項11によれば、本構成を有さない画像形成装置に比較して、画像品質の良好な画像形成装置が提供される。
【0035】
本発明の請求項12によれば、本構成を有さないプロセスカートリッジに比較して、画像形成装置に組み込んだときに画像品質の良好なプロセスカートリッジが提供される。
【0036】
本発明の請求項13によれば、3元系のエピクロルヒドリンゴムを適用する導電性ローラ用ゴム組成物に比較して、低コストで、かつキノキサリン系加硫剤またはトリアジン系加硫剤を含む導電性ローラ用ゴム組成物に比較して、押し出し成形性に優れた導電性ローラ用ゴム組成物を有する導電性ローラが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る導電性ローラを用いた帯電装置の一例の概略構成を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る導電性ローラを用いた帯電装置の一例の概略構成を示す正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0039】
本発明の実施形態に係る導電性ローラ用ゴム組成物は、少なくとも2元系エピクロルヒドリンゴムを主成分とし、キノキサリン系加硫剤及びトリアジン系加硫剤を含まず、少なくとも硫黄を含む加硫剤を含有する。導電性ローラ用ゴム組成物が、キノキサリン系加硫剤及びトリアジン系加硫剤を含まないことにより、作製時の加硫工程における加硫速度が制御可能な程度に抑制され、硫黄を放出する加硫剤の種類及び配合量を変えることで、加硫工程での加硫速度が望ましい程度に調整される。
【0040】
本発明の実施形態において、該2元系エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体であってよい。該2元系エピクロルヒドリンゴムは、加硫剤が放出する硫黄により加硫される。
【0041】
本発明の実施形態において、硫黄を放出する加硫剤としては、チウラム系加硫剤が挙げられる。チウラム系加硫剤として、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等のチウラムスルフィド化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。チウラム系加硫剤の配合量は、2元系エピクロルヒドリンゴム100質量部もしくは2元系エピクロルヒドリンゴムと液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムのブレンド100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下、好ましくは2.0質量部以上10質量部以下の割合で配合できる。配合するチウラム系加硫剤は、1種又は2種以上であってよい。配合する1種又は2種以上のチウラム系加硫剤の総和が0.5質量部未満の場合には、加硫が十分でない場合があり、15質量部を超える場合には、加硫速度が早くなり、成形温度で加硫が進行してしまい成形性に影響が出る場合がある。
【0042】
本発明の実施形態に係る導電性ローラ用ゴム組成物は、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)をさらに含有し、2元系のエピクロルヒドリンゴムとアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムのブレンドであってもよい。導電性ローラ用ゴム組成物に含有しうるアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムとしては、中ニトリル、中高ニトリル、高ニトリル、極高ニトリルが挙げられる。上記アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムは、液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを含有していることが好ましい。液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムは、押出成形時にゴムに流動性を与え押出し成形性を良くし、望ましい成形精度を有する円筒形状を得やすくする。
【0043】
液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムは反応性に劣るため、液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを導電性ローラ用ゴム組成物に配合すると、一般に、加硫後の弾性層から、加硫に寄与しなかった液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムがブリードすることがありえた。これに対し、本発明の実施形態に係る導電性ローラ用ゴム組成物では、硫黄を放出する加硫剤を使用しているため、加硫後の弾性層からの液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムのブリードの発生が抑制される。これは、硫黄系の加硫促進剤から放出される硫黄による液状アクリロニトリル−ブタジエンの架橋により、液状アクリロニトリル−ブタジエンのブリードを抑制することができるためと考えられる。本実施形態において、2元系エピクロルヒドリンゴム(A)と液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(B)との配合比率は、質量比で(A):(B)=95:5〜70:30であり、さらに好ましくは、(A):(B)=90:10〜80:20である。(A):(B)=95:5よりも2元系エピクロルヒドリンゴム(A)の配合比率が上昇した場合には、液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(B)の配合による応力緩和現象の効果が充分に発揮できない場合があり、(A):(B)=70:30よりも液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(B)の配合比率が上昇した場合には、液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムによるブリードの発生が懸念される。
【0044】
本発明の実施形態に係る導電性ローラ用ゴム組成物は、イオン導電性物質を含むイオン導電剤をさらに含有してよい。該イオン導電性物質としては、分散性の観点から、有機イオン導電性物質が好ましい。
【0045】
本発明の実施形態において、有機イオン導電性物質としては、四級アンモニウム塩(例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加リン酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、等が挙げられる。
【0046】
また、有機イオン導電性物質としては、多価アルコール(1,4ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびその誘導体と金属塩との錯体、モノオール(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)と金属塩との錯体も挙げられる。該金属塩としては、例えばLiClO、LiCFSO、LiAsF、LiBF、NaClO、NaSCN、KSCN、NaCl等の周期律表第1族の金属塩;NH4+の塩等の電解質;Ca(ClO、Ba(ClO等の周期律表第2族の金属塩;これらに、少なくとも1個以上の水酸基、カルボキシル基、一級ないし二級アミン基等イソシアネートと反応する活性水素を有する基を持ったもの;等が挙げられる。このような錯体として具体的には、PEL(LiClOとポリエチレングリコールとの錯体)等が挙げられる。これらの有機イオン導電性物質は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の実施形態では、2元系エピクロルヒドリンゴム100質量部もしくは2元系エピクロルヒドリンゴムと液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムとのブレンド100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下、好ましくは、0.5質量部以上3.0質量部以下の割合で有機イオン導電性物質を配合することで、ゴム組成物に予め定めた適切な導電性を付与することができる。これに対し、有機イオン導電性物質の配合割合が、2元系エピクロルヒドリンゴム100質量部もしくは2元系エピクロルヒドリンゴムと液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムとのブレンド100質量部に対して0.5質量部未満では導電性にバラツキが生じ安定した帯電特性が得られない場合があり、15質量部を超えるとブリードが発生する場合がある。
【0047】
本発明の実施形態に係る導電性ローラ用ゴム組成物は、受酸剤をさらに含有してよい。受酸剤は、金属化合物および/またはハイドロタルサイト類であってよい。本発明の実施形態において、導電性ローラ用ゴム組成物で用いられる受酸剤となる金属化合物を例示すると、それらの化合物には周期律表第2族元素(アルカリ土類金属)の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期律表第4族元素の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、三塩基性硫酸塩等がある。具体的には、酸化マグネシム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜鉛華、酸化錫、ステアリン酸錫、塩基性亜りん酸錫等を挙げることができる。
【0048】
本発明の実施形態に係る導電性ローラ用ゴム組成物において、受酸剤は、2元系エピクロルヒドリンゴム100部もしくは2元系エピクロルヒドリンゴムと液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムのブレンド100質量部に対して、0.5〜20質量部、好ましくは3〜10質量部の範囲で用いられる。これに対し、受酸剤の配合割合が、2元系エピクロルヒドリンゴムもしくは2元系エピクロルヒドリンゴムと液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムのブレンド100質量部に対して0.5質量部未満では加硫にバラツキが生じ安定した加硫物が得られない場合があり、20質量部を超えるとゴム硬度が高くなり適切な帯電特性が得られない場合がある。
【0049】
<帯電部材および帯電装置>
図1は、本実施形態に係る帯電ローラを備える帯電装置の一例の概略構成を示した側面図である。また、図2は、本実施形態に係る帯電ローラを備える帯電装置の一例の概略構成を示した正面図である。図1の帯電装置1は、画像形成装置に備えられる像保持体の表面を帯電させる帯電部材であって、軸中心に回転する円筒状の帯電部材である帯電ローラ10と、帯電ローラ10に接触して帯電ローラ10の表面を清掃するための帯電部材清掃部材であるクリーニングローラ12とを備える。帯電ローラ10は、導電性軸体14と、導電性軸体14の外周に形成された帯電層16とを備える導電性ローラである。帯電層16は、導電性の弾性層を有し、必要に応じて表面層等が形成されたものである。クリーニングローラ12は、芯体18と、芯体18の外周に形成された円筒状の弾性層20とを備える。
【0050】
図2に示すように、帯電装置1において、帯電ローラ10は、像保持体である感光体24に対して導電性軸体14の両端部に設置したコイルバネ26等の弾性部材により感光体24の表面に押し付けられ、感光体24に従動する。一方、クリーニングローラ12は、帯電ローラ10の導電性軸体14とクリーニングローラ12の芯体18との軸受けの距離でベアリング28で保持され、クリーニングローラ12は、予め定めた食いこみ量で帯電ローラ10に従動する。なお、帯電ローラ10およびクリーニングローラ12はそれぞれ感光体24、帯電ローラ10に従動させてもよいし、別個に駆動させてもよい。
【0051】
帯電ローラ10の直径は好ましくはφ8mm以上φ15mm以下、より好ましくはφ9mm以上φ14mm以下で、帯電層16の肉厚が1.5mm以上4mm以下であることが好ましい。直径が15mmを超えると周面1箇所あたりの異物に接触する回数が減り、また放電回数が減るので、汚れや帯電性能に対する長期安定性には優れるものの小型化の観点から不利である。直径が8mm未満であると画像形成装置等が小型となるので優位であるが、周面1箇所あたりの異物に接触する回数が増え、また放電回数が増えるので、長期安定性に対して不利となる。
【0052】
導電性軸体14の材質としては、快削鋼、ステンレス鋼等が使用され、摺動性などの用途に応じ材質および表面処理方法は適時選択され、導電性を有さない材質についてはメッキ処理など一般的な処理により加工され導電化処理が行われていてもよい。
【0053】
帯電ローラ10の帯電層16を構成する弾性層は、本発明の実施形態に係る、上述したような導電性ローラ用ゴム組成物を含み、構成される。必要に応じて、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカおよび炭酸カルシウム等の充填剤等、通常ゴムに添加され得る材料を加えてもよい。通常ゴムに添加される材料を添加した混合物を、導電性軸体14の周面に被覆することにより形成される。
【0054】
帯電層16がさらに有していてもよい上記表面層は、異物による汚染の防止のためなどに形成されるものであり、表面層の材料としては、樹脂、ゴム等の何れを用いてもよく特に限定するものではない。ポリエステル、ポリイミド、共重合ナイロン、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0055】
このうち、現像剤に含まれる外添剤による汚れ防止の観点から、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、共重合ナイロンが好ましく用いられる。共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種または複数種を重合単位として含むものであって、この共重合体に含まれる他の重合単位としては、6ナイロン、66ナイロン等が挙げられる。ここで、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロンよりなる重合単位が共重合体中に含まれる割合は、質量比で合わせて10質量%以上であるのが好ましい。上記重合単位が10質量%以上の場合は、調液性および表面層塗布時における成膜性に優れるとともに、特に繰り返し使用する場合には、樹脂層の磨耗や樹脂層への異物付着が少なく、ローラの耐久性が優れ、環境による特性の変化も少なくなる。
【0056】
上記高分子材料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、当該高分子材料の数平均分子量は、1,000以上100,000以下の範囲であることが好ましく、10,000以上50,000以下の範囲であることがより好ましい。
【0057】
また上記表面層には導電性材料を含有させ、抵抗値を調整してもよい。該導電性材料としては、粒径が3μm以下であるものが好ましい。
【0058】
また、抵抗値の調整を目的とした導電剤として、マトリックス材に配合されるカーボンブラックや導電性金属酸化物粒子、あるいはイオン導電剤など、電子およびイオンのうち少なくとも1つを電荷キャリアとして電気伝導する材料を分散したもの等を用いてもよい。
【0059】
導電剤のカーボンブラックとして、具体的には、デグサ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
【0060】
上記カーボンブラックはpH4.0以下であることが好ましい。一般的なカーボンブラックに比べ、表面に存在する酸素含有官能基の効果により、樹脂組成物中への分散性がよく、前記pH4.0以下のカーボンブラックを配合することにより、帯電均一性が向上し、さらに抵抗値の変動が抑制される。
【0061】
上記抵抗値を調整するための導電性粒子である導電性金属酸化物粒子は、酸化錫、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化亜鉛、アナターゼ型酸化チタン、インジウムスズ酸化物(ITO)等の導電性を有した粒子で、電子を電荷キャリアとする導電剤であれば何れも用いてもよく、特に限定されるものではない。これらは、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。また、本実施形態の効果を阻害しない限り、何れの粒径であってもよいが、抵抗値調整および強度の点より、好ましくは酸化錫、アンチモンドープがされた酸化錫、アナターゼ型酸化チタンであり、更に、酸化錫、アンチモンドープがされた酸化錫が好ましい。
【0062】
このような導電性材料によって抵抗制御を行うことにより、表面層の抵抗値は環境条件によって変化せず、安定な特性が得られる。
【0063】
さらに、上記表面層には、フッ素系あるいはシリコーン系の樹脂等が用いられてもよい。特に、フッ素変性アクリレートポリマを含んで構成されることが好ましい。また、表面層の中に粒子を添加してもよい。これにより、表面層が疎水性となって帯電ローラ10への異物の付着が防止されるように作用する。また、アルミナやシリカなどの絶縁性の粒子を添加して、帯電ローラ10の表面に凹凸を付与し、感光体24との摺擦時の負担を小さくして帯電ローラ10と感光体24相互の耐磨耗性を向上させてもよい。
【0064】
本実施形態に係る導電性ローラまたは帯電ローラは、2元系エピクロルヒドリンゴムを含有し、キノキサリン系加硫剤及びトリアジン系加硫剤を含まず、少なくとも硫黄を含む加硫剤を含有するゴム組成物を含む導電性ローラ用ゴム組成物を、押出し機を用いて未加硫の該ゴム組成物を押出すとともに、連続的に導電性の軸体を押出し機のクロスヘッドダイを通過させて、該軸体の外周上に未加硫のゴム組成物を配置せしめローラ形状にした後、加硫工程を経て弾性層を形成すればよい。
【0065】
次に、クリーニングローラ12について説明する。
【0066】
クリーニングローラ12の芯体18の材質としては、快削鋼、ステンレス鋼等が使用され、摺動性などの用途に応じ材質および表面処理方法は適時選択され、導電性を有さない材質についてはメッキ処理など一般的な処理により加工され導電化処理が行われてもよく、もちろんそのまま使用してもよい。また、弾性層20を介して帯電ローラ10と適度な押圧力で接触するため、押圧接触時に撓みのない強度を持った材質またはシャフト長に対して十分剛性をもったシャフト径が選択されることが好ましい。
【0067】
弾性層20は、多孔質の3次元構造を有する発泡体を含んで構成される。発泡体としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド又はポリプロピレン等の発泡性の樹脂又はニトリルゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム等を材質としたものより選択される。弾性層20は、帯電ローラ10との従動摺擦により異物を効率的にクリーニングするとともに、帯電ローラ10の表面に弾性層20の擦れによるキズをつけないために、また、長期にわたり千切れや破損が生じないようにするために、引き裂き、引っ張りなどに強い、ポリウレタン、ニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム、スチレン−ブタジエンゴムおよびシリコーンゴムのうち少なくとも1つがより好ましく用いられ、ポリウレタンが特に好ましく用いられる。
【0068】
ポリウレタンとしては特に限定するものではなく、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステルやアクリルポリオールなどのポリオールと、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどのイソシアネートの反応を伴っていればよく、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンなど鎖延長剤が混合されていることが好ましい。また、水やアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物などの発泡剤を用いて発泡させるのが一般的である。さらに必要に応じて発泡助剤、整泡剤、触媒などの助剤を加えてもよい。
【0069】
<プロセスカートリッジ>
本発明の実施形態に係るプロセスカートリッジは、像保持体と、像保持体の表面を帯電させる上記帯電ローラとを備える。本実施形態のプロセスカートリッジは、必要に応じて、帯電部材を清掃するための帯電部材清掃部材と、帯電した像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、転写後の像保持体表面を清掃する像保持体清掃手段とからなる群より選択される少なくとも一種を備えていてもよい。
【0070】
本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例の概略構成を図3に示し、その構成について説明する。プロセスカートリッジ3は、静電潜像が形成される像保持体としての感光体(電子写真感光体)24と、感光体24の表面を接触帯電する帯電部材としての円筒状の帯電ローラ10と、帯電ローラ10に接触して帯電ローラ10の表面を清掃する帯電部材清掃部材としてのクリーニングローラ12と、感光体24の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像手段としての現像ローラ52と、感光体24の表面に接触して、転写後に感光体24に残ったトナーなどを清掃する像保持体清掃手段としてのクリーニングブレード56とが一体に支持されており、画像形成装置に着脱自在である。画像形成装置に装着されたときには感光体24の周囲に、帯電ローラ10、レーザ光あるいは原稿の反射光などにより感光体24の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置58、現像ローラ52、感光体24表面のトナー像を被転写体である記録用紙62に転写処理する転写手段としての転写ローラ54、クリーニングブレード56がこの順序で配置されるようになっている。前述のように、帯電ローラ10が、少なくとも導電性を有する軸体の外周上に弾性層を備え、該弾性層が、2元系エピクロルヒドリンゴムを含有し、キノキサリン系加硫剤及びトリアジン系加硫剤を含まず、少なくとも硫黄を含む加硫剤を含有するゴム組成物を含む。なお、図3では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、その記載を省略してある。
【0071】
本実施形態に係るプロセスカートリッジ3の動作について説明する。
【0072】
まず、感光体24表面に接触された帯電ローラ10に対して電圧を高圧電源(図示せず)から給電することによって、感光体24の表面を一様に高電位に帯電する。このとき感光体24および帯電ローラ10は図3の矢印方向にそれぞれ回転する。帯電後、感光体24表面に露光装置58により画像情報に応じた画像光(露光)60が照射されると、照射された部分は電位が低下する。画像光60は画像の黒/白などに応じた光量の分布であるため、画像光60の照射によって感光体24表面に記録画像に対応する電位分布、すなわち静電潜像が形成される。静電潜像が形成された部分が、現像ローラ52を通過すると、その電位の高低に応じてトナーが付着し、静電潜像を可視化したトナー像が形成される。トナー像が形成された部分に、所定のタイミングでレジストローラ(図示せず)により記録用紙62が搬送され、感光体24表面のトナー像と重なる。このトナー像が、転写ローラ54によって記録用紙62に転写された後、記録用紙62は、感光体24から分離される。分離された記録用紙62は搬送経路を通って搬送され、定着手段としての定着ユニット(図示せず)によって、加熱加圧定着されたあと、機外へ排出される。
【0073】
プロセスカートリッジ3に設けられた帯電ローラ10にはクリーニングローラ12が設置されている。高圧電源からベアリング30に電圧が印加され、クリーニングローラ12が帯電ローラ10と電気的に同極性を有することで、異物がクリーニングローラ12および帯電ローラ10表面にほとんど蓄積させることなく移行し、クリーニングブレード56で回収されるため、帯電部材に付着したトナーなどの異物が長期にわたり、安定的に除去される。このため、長期にわたり帯電ローラ10に汚れがほとんど蓄積することなく、安定した帯電性能が維持される。
【0074】
感光体24は、少なくとも静電潜像(静電荷像)が形成される機能を有する。電子写真感光体は、円筒状の導電性の基体外周面に必要に応じて下引き層と、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とがこの順序で形成されたものである。電荷発生層と電荷輸送層の積層順序は逆であってもよい。これらは、電荷発生物質と電荷輸送物質とを別個の層(電荷発生層、電荷輸送層)に含有させて積層した積層型感光体であるが、電荷発生物質と電荷輸送物質との双方を一つの層に含む単層型感光体であってもよく、好ましくは積層型感光体である。また、下引き層と感光層との間に中間層を有していてもよい。また、感光層の上に保護層を有してもよい。また、有機感光体に限らずアモルファスシリコン感光膜など他の種類の感光層を使用してもよい。
【0075】
露光装置58としては、特に制限はなく、例えば、感光体24表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光などの光源を、所望の像様に露光するレーザ光学系、LEDアレイなどの光学系機器などが挙げられる。
【0076】
現像手段は、感光体24上に形成された静電潜像を静電荷像現像用トナーを含む一成分現像剤あるいは二成分現像剤により現像してトナー像を形成する機能を有する。そのような現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適切に選択すればよく、トナー層が感光体24に接触する方式のものでも、接触しない方式のものでもよい。例えば、図3のように静電荷像現像用トナーを現像ローラ52を用いて感光体24に付着させる機能を有する現像器、あるいはブラシなどを用いてトナーを感光体24に付着させる機能を有する現像器など、公知の現像器などが挙げられる。
【0077】
転写手段としては、紙などに直接転写する方式のものでも、中間転写体を介して転写する方式のものでもよい。例えば、図3に示すような記録用紙62を介して直接接触して転写する導電性または半導電性のローラなどを用いた転写ローラ54および転写ローラ押圧装置(図示せず)を用いればよい。また、記録用紙62の裏側(感光体と反対側)からトナーとは逆極性の電荷を記録用紙62に与え、静電気力によりトナー像を記録用紙62に転写するものを用いてもよい。転写ローラ54は、帯電すべき画像領域幅、転写帯電器の形状、開口幅、プロセススピード(周速)などにより、適切に設定すればよい。また、低コスト化のため、転写ローラ54として単層の発泡ローラなどが好適に用いられる。
【0078】
定着手段としての定着ユニットとしては、記録用紙62に転写されたトナー像を加熱、加圧あるいは加熱加圧により定着するものであれば特に制限はない。
【0079】
トナー像を転写する被転写体である記録用紙62としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタなどに使用される普通紙、OHPシートなどが挙げられ、また、他の実施形態では、普通紙の表面を樹脂などでコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙なども好適に使用される。
【0080】
<画像形成装置>
本発明の実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電させる上記帯電部材と、像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段とを備える。本実施形態の画像形成装置は、必要に応じて、帯電部材を清掃するための帯電部材清掃部材と、像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、転写後の像保持体表面を清掃する像保持体清掃手段とからなる群より選択される少なくとも一種を備えていてもよい。また、本実施形態に係る画像形成装置は、上記プロセスカートリッジを使用するものであってもよい。
【0081】
本実施形態に係る画像形成装置の一例の概略構成を図4に示し、その構成について説明する。画像形成装置5は、静電潜像が形成される像保持体としての感光体24と、感光体24の表面を接触帯電する帯電部材としての円筒状の帯電ローラ10と、帯電ローラ10に接触して帯電ローラ10の表面を清掃する帯電部材清掃部材としてのクリーニングローラ12と、レーザ光あるいは原稿の反射光などにより感光体24の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置58と、感光体24の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像手段としての現像ローラ52と、感光体24表面のトナー像を被転写体である記録用紙62に転写処理する転写手段としての転写ローラ54と、感光体24の表面に接触して、転写後に感光体24に残ったトナーなどを清掃する像保持体清掃手段としてのクリーニングブレード56とを備える。画像形成装置5において、感光体24の周囲に、帯電ローラ10、露光装置58、現像ローラ52、転写ローラ54、クリーニングブレード56がこの順序で配置されている。前述のように、帯電ローラ10が、少なくとも導電性を有する軸体の外周上に弾性層を備え、該弾性層が、2元系エピクロルヒドリンゴムを含有し、キノキサリン系加硫剤及びトリアジン系加硫剤を含まず、少なくとも硫黄を含む加硫剤を含有するゴム組成物を含む。なお、図4では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、その記載を省略してある。画像形成装置5の各構成、画像形成時の動作は図3のプロセスカートリッジ3と同様であってよい。
【0082】
画像形成装置5に設けられた帯電ローラ10にはクリーニングローラ12が設置され、高圧電源64からベアリング28に電圧が印加され、クリーニングローラ12が帯電ローラ10と電気的に同極性を有することで、異物がクリーニングローラ12および帯電ローラ10表面に蓄積させることなく移行し、クリーニングブレード56で回収されるため、帯電部材に付着したトナー等の異物が長期にわたり、安定的に除去される。このため、長期にわたり帯電ローラ10に汚れが蓄積することなく均一帯電性能において優れたものとなり安定した帯電性能が維持される。
【0083】
本実施形態に係る帯電ローラを用いた画像形成装置の帯電ローラ以外の構成については、これらに限らず従来から電子写真方式の画像形成装置の各構成として公知の構成を適用してもよい。すなわち、上記帯電部材以外の構成、例えば、帯電部材清掃手段、潜像形成手段、現像手段、転写手段、像保持体清掃手段、除電手段、給紙手段、搬送手段、画像制御手段等について、必要に応じて従来公知のものが適切に採用される。これらの構成については、本実施形態において特に限定されるものではない。
【実施例】
【0084】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
[導電性ローラ用ゴム組成物の作製]
<ゴム材料(未加硫)の作製>
表2,3に示した実施例1〜14及び比較例1〜2からなるゴム配合物に対して、接線式加圧ニーダー((株)モリヤマ製:実容量75L)を用いて混練を行った。加圧ニーダーのジャケット、加圧蓋、ローターを循環水により20℃にする。加圧蓋の圧力を0.6MPaでエピクロルヒドリンゴムを素練りし、酸化亜鉛を混練後、ステアリン酸及びカーボンを投入混練し、イオン導電剤、炭酸カルシウム及び液状アクリロニトリル−ブタジエンゴムを投入、混練しゴム材料を得た。22インチオープンロールでシート状に切り出し冷却後、再び加圧ニーダーで上記加硫剤、加硫促進剤とゴム材料を混練し、22インチオープンロールでシート状に切り出し未加硫ゴム材料を得た。なお、表1〜3において、各成分の配合割合はすべて質量部基準である。
【0086】
<ムーニースコーチの測定>
前記未加硫ゴムを東洋精機株式会社製ムーニースコーチMV−300(L型ロータ使用)でムーニー粘度が5pt、35pt上昇する時間(単位:分)をそれぞれ測定した。結果を表2,3に示す。試験方法は、JIS K6300−1に準拠する。
【0087】
<押出成形性の測定>
ブラベンダー社製押出機でガーベダイ(ASTM D2230準拠)押出試験を行いスウェルと気泡の発生状態、30°のエッジの連続性と鋭さ、表面肌の連続性、30°エッジ以外の角の鋭さと連続性について4点法で評価した。結果を表2,3に示す。なお、押出機の条件は、以下の通りである。
【0088】
スクリュー:圧縮比1、L/D=10、D=19.1mm、
温度条件:シリンダー=70℃、ダイ=90℃、
ブラベンダー回転数:60rpm
【0089】
なお、表2,3における評価の基準は、以下の通りである。○:12〜14点、△:9〜11点、×:4〜8点。
【0090】
<加硫工程>
押出成形後、ギアオーブン(エスペック社製パーフェクトオーブン)にて180℃で30分間加硫し、導電性ローラ用ゴム組成物を得た。
【0091】
<硬度の測定>
前記導電性ローラ用ゴム組成物につき、硬度計タイプC型(高分子計器社製)を用いてゴム硬度を測定した。長さ方向10点測定し、その平均値とした。結果を表2,3に示す。なお、表2,3における評価の基準は、以下の通りである。○:60〜90°、△:40〜60°、△−:20〜40°、×:0〜20°。
【0092】
[導電性ロールの作製]
―弾性層の形成―
シリンダー内径D=60mm、L/D=20の1軸ゴム押出し機を用いてスクリュー回転25rpmで前記未加硫ゴム材料を押出すとともに、同時に前記芯金を連続的にクロスヘッドを通過させることにより、芯金上に未加硫ゴムを被覆した。押出し機の温度条件設定は、シリンダー部、スクリュー部、ヘッド部、ダイ部のいずれとも80℃とした。
【0093】
―表面層の形成―
表層分散液配合材料を下記表1に示す配合割合でビーズミルにて分散し得られた分散液を、メタノールで希釈し、表面層塗布液を得た。この塗布液を粘度調整した後、ディプ塗布槽へ注入した。その後、前記金型成形で得られた弾性層つき芯金を先に準備した塗布液入りディップ塗布槽に浸漬し、塗布液をコーティングして150℃で10分間乾燥して、溶剤を除去し、表面層を得た。
【0094】
【表1】

【0095】
上述のようにして、実施例1〜14及び比較例1〜2に示す組成を有する導電性ローラ用ゴム組成物を含む、導電性ロールをそれぞれ作製し、後述する画像形成装置の帯電ロールとして使用した。
【0096】
[画像形成装置の作製]
上述のようにして作製した、実施例1〜14及び比較例1〜2に示す組成を有する導電性ローラ用ゴム組成物を含む導電性ロールをそれぞれ、画像形成装置(カラー複写機DocuCentre Color400CP:富士ゼロックス社製)の帯電ローラとして使用した。
【0097】
<画像評価>
−実機評価−
上述の方法で作製された実施例および比較例の導電性ロールを帯電ロールとして図1に示すカラー複写機DocuCentre Color400CP:富士ゼロックス社製に装着し、カラー複写機DocuCentre Color400CP用のカラートナー(シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナー、黒トナー)を用い、A4用紙50,000枚印字テスト(10℃、15%RH環境下で25,000枚印刷後、28℃、85%RH環境下で25,000枚印字)を行った。なお、途中で大きな問題が発生した場合には、その時点で印字を中止した。
【0098】
画質評価は、初期及び50,000枚走行後の画像について、目視によってハーフトーン画像中での濃度ムラの有無により以下の基準で判定した。なお、初期の濃度ムラについては、表2,3に全振れによる濃度ムラとして記載し、50,000枚走行後の濃度ムラについては、表2,3のフィルミングによる経時濃度ムラとして記載した。表2,3における評価の基準は、以下の通りである。
【0099】
◎:濃度ムラ等の欠陥無し。
○:極軽微な濃度ムラ発生。
△:軽微な濃度ムラ発生。
×:実使用不可の濃度ムラ発生。
【0100】
比較例においてトリアジン系加硫剤及びキノキサリン系加硫剤を用いて押出成形した弾性層は、押出成形時に加硫が進行するため、押出されたゴムの表面の平滑性が悪く、画質評価においては、濃度ムラが発生した。一方、少なくとも硫黄を含む加硫剤を用いて押出成形した弾性層は、押出成形時の温度では、加硫は進行せず、ゴムの表面の平滑性には大きな問題はなく画質についても軽微な濃度ムラ程度でおさまっている。2元系エピクロルヒドリンゴムは、トリアジン系加硫剤及びキノキサリン系加硫剤を用いるより少なくとも硫黄を含む加硫剤を用いることが良好であることが分かる。
【0101】
【表2】

【表3】

【0102】
このように、実施例1から実施例14に記載の導電性ローラ用ゴム組成物を弾性層に有する帯電ローラを用いることにより、押出成形性及びゴム硬度物性を満足し、画質評価においても良好な結果を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0103】
1 帯電装置、3 プロセスカートリッジ、5 画像形成装置、10 帯電ローラ、12 クリーニングローラ、14 導電性軸体、16 帯電層、18 芯体、20 弾性層、24 感光体、26 コイルバネ、28 ベアリング、52 現像ローラ、54 転写ローラ、56 クリーニングブレード、58 露光装置、60 画像光、62 記録用紙、64 高圧電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導電性を有する軸体の外周上に弾性層を備える導電性ローラに用いられる導電性ローラ用ゴム組成物であり、
前記弾性層が、2元系エピクロルヒドリンゴムを含有し、キノキサリン系加硫剤及びトリアジン系加硫剤を含まず、少なくとも硫黄を含む加硫剤を含有するゴム組成物を含むことを特徴とする導電性ローラ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記2元系エピクロルヒドリンゴムが、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記硫黄を含む加硫剤が、少なくともチウラムスルフィド系加硫剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ローラ用ゴム組成物。
【請求項4】
液状アクリロニトリル−ブタジエンゴムをさらに含み、
前記2元系エピクロルヒドリンゴムと液状アクリロニトリル−ブタジエンゴムとの配合割合が、質量比で95:5から70:30の間であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の導電性ローラ用ゴム組成物。
【請求項5】
イオン導電剤をさらに含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の導電性ローラ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記イオン導電剤が第4級アンモニウム塩であり、前記2元系エピクロルヒドリンゴム100質量部に対し、0.5質量部以上15質量部以下の割合で含有されていることを特徴とする請求項5に記載の導電性ローラ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記2元系エピクロルヒドリンゴム100質量部に対し、0.5質量部以上20質量部以下の受酸剤をさらに含有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の導電性ローラ用ゴム組成物。
【請求項8】
未加硫の2元系エピクロルヒドリンゴム基材が、145℃におけるムーニースコーチのt5が5分以上30分以下、t35が10分以上50分以下である請求項1から7のいずれか1項に記載の導電性ローラ用ゴム組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の導電性ローラ用ゴム組成物を有することを特徴とする導電性ローラ。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の導電性ローラ用ゴム組成物を有する導電性ローラと、前記導電性ローラの表面を清掃する清掃部材とを備えることを特徴とする帯電装置。
【請求項11】
像保持体と、
請求項9に記載の導電性ローラと、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体の表面に形成された潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
像保持体と、前記像保持体を帯電させる帯電手段と、を備え、
前記帯電手段が、請求項9に記載の導電性ローラを含むことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項13】
押出し機を用いて未加硫のゴム組成物を押出すとともに、連続的に該軸体を押出し機のクロスヘッドダイを通過させて、該軸体の外周上に未加硫の該ゴム組成物を配置せしめローラ形状にした後、加硫工程を経て製造されることを特徴とする請求項9に記載の導電性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−48272(P2011−48272A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198465(P2009−198465)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】