説明

導電性ロール、帯電装置、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

【課題】外周面を構成する層に含まれる粒子の凝集状態を考慮しない場合に比べて、表面の亀裂が抑制された導電性ロールを提供する。
【解決手段】導電性ロール10は、芯体12上に、弾性層14及び表面層16が積層され、この表面層16は、樹脂材料16A中に粒子16Bを含んだ構成とされており、表面に凹凸を有した構成とされている。また、表面層16は、この凹凸の凸部Q内に複数の粒子16Bが存在し、且つ、且つ該凸部の断面における該凸部内に存在する前記粒子の占める面積の割合が該凹部の断面における該凹部内に存在する粒子の占める面積の割合に比べて大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ロール、帯電装置、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置では、帯電ロールによって像保持体を帯電し、帯電された像保持体上にレーザ光等によって静電潜像を形成した後に、この静電潜像をトナーで現像して可視化したトナー像とする。そして、得られたトナー像を、転写ロールによって被転写部材へ転写している。この被転写部材としては、中間転写体や記録媒体等が挙げられ、中間転写体が設けられた構成である場合には、転写ロールとして、一次転写ロールによって像保持体上に保持されたトナー像を中間転写体上に転写した後に、二次転写ロールやバックアップロールによって記録媒体へ転写している。また、中間転写体を有さない構成である場合には、像保持体上に形成されたトナー像を転写ロールによって記録媒体へ転写している。記録媒体へ転写されたトナー像が定着装置によって定着されることで、記録媒体上に画像が形成される。
【0003】
画像形成装置では、上記帯電ロールや、一次転写ロール、二次転写ロール、及びバックアップロールを含む転写ロール等の導電性ロールは、各々、電界形成対象となる外部部材に接触配置された状態で、該外部部材を帯電またはトナー像の転写等を行っている。この外部部材とは、帯電ロールであれば像保持体であり、転写ロールであれば、像保持体や中間転写体である。
【0004】
すなわち、上記各種の導電性ロールは、像保持体や中間転写体等の外部部材に接触配置された状態で使用されることから、長時間の使用によっても表面劣化が生じない事が好ましい。
【0005】
導電性ロールの表面劣化を抑制する技術として、例えば、特許文献1の技術によれば、導電性ロールの最外層である保護層に5μm〜30μm、の平均粒径を有する粒子を分散し、且つ該保護層表面の表面粗さRzを7μm〜40μmとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−258523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、外周面を構成する層に含まれる粒子の凝集状態を考慮しない場合に比べて、表面の亀裂が抑制された導電性ロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明により達成される。

請求項1に係る発明は、ロール状に構成され、外周面が凹凸を有し、少なくとも該凹凸の凸部内に複数の粒子が存在し、且つ該凸部の断面における該凸部内に存在する前記粒子の占める面積の割合が該凹部の断面における該凹部内に存在する粒子の占める面積の割合に比べて大きいことを特徴とする導電性ロールである。
【0009】
請求項2に係る発明は、ロール状に構成され、外周面が凹凸を有し、少なくとも該凹凸の凸部内に複数の粒子が存在し、且つ該凸部の断面における該凸部内に存在する前記粒子の占める面積の割合が20%以上80%以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ロールである。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記外周面の十点平均粗さRzが4μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電性ロールである。
【0011】
請求項4に係る発明は、芯材と、該芯材の外周に設けられた弾性層と、該弾性層上に設けられ前記粒子を含有した表面層と、を有し、該表面層の表面が前記凹凸を有する外周面であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の導電性ロールである。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記粒子の平均粒径が2μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の導電性ロールである。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記表面層は、前記粒子と、樹脂材料と、を含む塗布液を前記弾性層の外周面に塗布することで塗布層を形成し、該塗布層における流体の対流に伴う前記粒子間の距離の変化よって、前記凹凸が形成されることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の導電性ロールである。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性ロールを備えることを特徴とする帯電装置である。
【0015】
請求項8に係る発明は、像保持体と、前記像保持体を帯電する帯電ロール、及び前記像保持体上に形成されたトナー像を被転写部材に転写する転写ロールの少なくとも一方と、を少なくとも備え、前記帯電ロール及び前記導電性ロールの内の、プロセスカートリッジに備えられた前記帯電ロール、プロセスカートリッジに備えられた前記転写ロール、またはプロセスカートリッジに備えられた前記帯電ロール及び前記転写ロールの内の少なくとも一方が、前記請求項1〜請求項6に記載の導電性ロールであることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0016】
請求項9に係る発明は、像保持体と、前記像保持体を帯電する帯電手段と、前記帯電手段によって帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記形成手段によって形成された前記静電潜像をトナーによって現像する現像手段と、前記トナー像が現像されることで前記像保持体上に形成されたトナー像を被転写部材へ転写する転写手段と、を備え、前記帯電手段及び前記転写手段の内の少なくとも一方が、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の導電性ロールを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、外周面を構成する層に含まれる粒子の状態を考慮しない場合に比べて、表面の亀裂が抑制された導電性ロールが提供される、という効果を奏する。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、凸部における粒子の占める面積の割合を考慮しない場合に比べて、より表面の亀裂が抑制された導電性ロールが提供される、という効果を奏する。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、十点平均粗さRzが本発明の範囲外である場合に比べて、外周面への異物の固着が抑制される、という効果を奏する。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、表面層を設けない構成である場合に比べて、容易に、表面の亀裂の抑制された導電性ロールが提供される、という効果を奏する。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、凸部内に含有される粒子の粒径が本発明の範囲外である場合に比べて、効率よく表面の亀裂の抑制された導電性ロールが提供される、という効果を奏する。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、本発明の構成を有さない場合に比べて、容易に表面の亀裂の抑制された導電性ロールが提供される、という効果を奏する。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、外周面を構成する層に含まれる粒子の状態を考慮しない場合に比べて、表面の亀裂が抑制された導電性ロールを備えた帯電装置が提供される、という効果を奏する。
【0024】
請求項8に係る発明によれば、外周面を構成する層に含まれる粒子の状態を考慮しない場合に比べて、表面の亀裂が抑制された導電性ロールを備えたプロセスカートリッジが提供される、という効果を奏する。
【0025】
請求項9に係る発明によれば、外周面を構成する層に含まれる粒子の状態を考慮しない場合に比べて、表面の亀裂が抑制された導電性ロールを備えた画像形成装置が提供される、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施の形態の導電性ロールの表面部分を拡大した模式断面図である。
【図2】本実施の形態の導電性ロールを示す模式図である。
【図3】本実施の形態の導電性ロールの表面部分を拡大した模式断面図である。
【図4】本実施の形態の導電性ロールにおける表面層の製造工程を示す模式図である。
【図5】本実施の形態の導電性ロールにおける表面層の製造工程を示す模式図である。
【図6】本実施の形態の導電性ロールにおける表面層の製造工程を示す模式図である。
【図7】本実施の形態のプロセスカートリッジ及び画像形成装置を示す模式図である。
【図8】本実施の形態の導電性ロールを画像形成装置及びプロセスカートリッジの帯電ロールとして適用した場合を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
<導電性ロール>
本実施の形態の導電性ロールは、ロール状に形成され、外周面が凹凸を有し、少なくとも該凹凸の凸部内に複数の粒子が存在し、且つ該凸部の断面における該凸部内に存在する前記粒子の占める面積の割合が該凹部の断面における該凹部内に存在する粒子の占める面積の割合に比べて大きい。
【0028】
本実施の形態では、外周面が上記構成であることで、該外周面に含まれる上記粒子と、該外周面を構成する樹脂材料と、の間の結着力低下が抑制され、外周面への亀裂発生が抑制される。このため、導電性ロールを後述する電子写真方式の画像形成装置やプロセスカートリッジの各種ロールとして用いたときに、導電性ロールと、像保持体や中間転写体と、の間に形成される電界強度が不均一となることが抑制され、画質劣化が抑制される。また、外周面の亀裂発生が抑制されることから、亀裂痕に起因する画質不良や、亀裂により導電性ロールの内部に含有されている各種材料が染み出すことに起因する画質不良が抑制される。また、亀裂の発生が抑制されることで、導電性ロールの長寿命化も図れる。
また、外周面が凹凸を有することで、詳細は後述するが、像保持体や中間転写ベルト等の外部部材に接触配置されて使用された場合であっても、トナー成分や紙粉等の異物の外周面への固着や堆積が抑制される。
【0029】
以下、本実施の形態の導電性ロールについて、詳細に説明する。
【0030】
なお、本実施の形態において、「導電性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。測定方法については後述する。
【0031】
図2に示すように、本実施の形態における導電性ロール10は、円柱状の芯体12の外周面に、弾性層14、及び表面層16が順に積層された構成とされている。
【0032】
なお、導電性ロール10が、本発明の導電性ロールに相当し、表面層16の表面が、本発明の導電性ロールにおける外周面及び表面層の表面に相当する。また、芯体12が、本発明の導電性ロールの芯体に相当し、弾性層14が、本発明の導電性ロールの弾性層に相当する。また、表面層16が、本発明の導電性ロールの表面層に相当する。さらに、粒子16Bが、本発明の導電性ロールの凸部内に存在する複数の粒子に相当し、樹脂材料16Aが、本発明の導電性ロールの樹脂材料に相当する。
【0033】
(芯体)
芯体12は、導電性ロール10の電極及び支持部材として機能する円柱状の部材であり、例えば、快削鋼、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属又は合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄;導電性樹脂;などの導電性の材質で構成される。これらの材質であれば、強度及び電気的特性の点から、導電性ロール10の芯体12としていずれも使用される。
なお、この芯体12は、摺動性などの用途に応じて材質および表面処理方法を適時選択される。この芯体12としては、導電性を有さない材質を用いてもよく、導電性を有さない材質を用いた場合には、メッキ処理など一般的な処理により加工して導電化処理を行ってもよい。
【0034】
この芯体12の外径は、導電性ロール10を適用する対象となる部材に応じて適宜調整すればよい。例えば、導電性ロール10を画像形成装置(詳細後述)に搭載したときに、画像形成装置の像保持体や中間転写体等の外周面に、画像形成に必要な圧力で接触して配置される。このため、接触して配置されたとき、また稼働時に導電性ロール10に撓みが生じない程度の強度を有する材料を上記材料、または軸方向長さに対して十分な剛性を持った外径となるように調整すればよい。
【0035】
(弾性層)
この芯体12の外周面上には、弾性層14が積層されている。なお、本実施の形態では、芯体12上に、弾性層14及び表面層16が順に積層された構成である場合を説明するが、表面層16が最も外周側に配置されていればよく、内部にその他の層を介した構成であってもよい。例えば、芯体12と弾性層14との間に接着層(図示省略)を設けても良い。
【0036】
この接着層を構成する接着剤としては、ポリオレフィン系、塩素ゴム系、アクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ニトリルゴム系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系のゴムや樹脂やシランカップリング剤等の接着剤が用いられ特に限定はしない。
【0037】
そして、この接着層は、単独使用のほか、複数層構成により組み合わせて使用しても良い。また、この接着層には、導電性付与ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末を添加しても良い。接着層の厚みは特に限定はしないが、接着性、厚みバラツキ、抵抗バラツキの理由から、5μm以上100μm以下が好ましく、10μm以上50μm以下がより好ましい。
【0038】
弾性層14は、無発泡層だけから構成されるものであってもよいし、発泡層の表面(外側)に無発泡層を有するものであってもよい。また、この発泡層及び無発泡層は複数でも構わない。なお、弾性層とは100Paの外力印加により変形しても、もとの形状に復元する材料から構成される層をいう。
弾性層14は、例えば導電性ロールとして適切な圧力で接触部分を形成し電界を形成するようにするものである。このため、弾性層14の抵抗を調整することが望ましく、例えば弾性層14を構成するゴム材中に導電剤を分散させることによって、弾性層14の抵抗を調整する。
【0039】
弾性層14を構成するゴム材料としては、エピクロロヒドリン、ポリウレタン、ニトリルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキシドゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、塩素化ポリイソプレン、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、水素化ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等、又はこれらの2種以上をブレンドしてなる材料が挙げられる。望ましくは、ウレタンゴム、ニトリルゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキシドゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)である。これらのゴム材料は弾性を有するため、いずれも弾性層14を構成する材料として好適に使用される。特にエピクロロヒドリンを主成分とする合成ゴムは、ゴム自体がある程度の通電性(イオン導電性)を有しているため優れている。
【0040】
弾性層14を無発泡層と発泡層とから構成する場合には、ゴム材料は主にエピクロロヒドリンゴムから構成されることが望ましく、他の1種類以上の有機ゴムであるNBR、EPDM、SBR、CR等をブレンドしても構わない。無発泡層と発泡層とに主に使用するエピクロロヒドリンゴムとしては、例えば日本ゼオン(株)製の各々体積抵抗値が違うGechron 1100、Gechron 3100、Gechron 3101、Gechron 3102、Gechron 3103、Gechron 3105、Gechron 3106等を使用し、狙いとする抵抗値を得るために2種類以上のグレードを組合せて使用してもよい。
【0041】
弾性層14に含有する導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種金属又は合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末が挙げられる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;が挙げられる。
【0042】
これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、ゴム材料100質量部に対して、1質量部以上60質量部以下の範囲であることが望ましく、10質量部以上20質量部以下の範囲であることがより望ましい。一方、上記イオン導電剤の場合は、ゴム材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であることが望ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲であることがより望ましい。
【0043】
本実施形態における弾性層14の体積抵抗率は、106Ωcm以上109Ωcm以下の範囲が望ましく、106Ωcm以上108Ωcm以下の範囲がより望ましい(測定方法は後述する)。
【0044】
また、弾性層14の硬度は、アスカーC硬度で15°以上90°以下の範囲であることが望ましい。アスカーC硬度が15°以上90°以下の範囲内であると、導電性ロール10が画像形成装置に搭載されたときに、外周面を接触配置される外部部材(例えば、像保持体や中間転写体)との接触状態の安定性が得られて画質欠陥の発生が抑制され、且つ弾性回復力の低下が抑制されて高速化に対応可能となる。
なお、アスカーC硬度の測定は、3mm厚の測定シート表面にアスカーC型硬度計(高分子計器社製)の測定針を押圧し、1000g荷重の条件で行う。
【0045】
弾性層14の厚みは、導電性ロール10の外周面を接触配置されたときの変形が十分であり接触部分が安定形成されると共に、装置の小型化の観点から、1.5mm以上7mm以下の範囲が望ましく、2mm以上5mm以下の範囲がより望ましい。
【0046】
この弾性層14は、芯体12上に直接または上記接着層等を介して形成された後に、弾性層表面を研磨して、外径形状を所望の形状及び所望の外径に調整してもよい。研磨方法としては、特に制限はないが、円筒研磨(トラバース、プランジ)法、センタレス研磨法等、公知の方法が利用される。
【0047】
(表面層)
表面層16は、図1に示すように、樹脂材料16A中に粒子16Bを含んだ構成とされており、表面に凹凸を有した構成とされている。また、表面層16は、この凹凸の凸部Q内に複数の粒子16Bが存在し、且つ該凸部の断面における該凸部内に存在する前記粒子の占める面積の割合が該凹部の断面における該凹部内に存在する粒子の占める面積の割合に比べて大きい。
【0048】
すなわち、導電性ロール10は、表面層16の各凸部Q内に複数の粒子16Bが存在し、且つ該凸部の断面における該凸部内に存在する前記粒子の占める面積の割合が該凹部の断面における該凹部内に存在する粒子の占める面積の割合に比べて大きい構成とされることで、表面に凹凸を有した構成とされている。
【0049】
なお、本実施の形態において、凸部Q内とは、図3に示すように、表面層16の平均層厚に相当する位置を示すラインLと、凸部Qの断面形状における最も外周側を示す線と、の2つの交点(図3中、交点R及び交点R)の各々から、弾性層14へ向かって垂直にたらした2本の直線(図3中、直線X、及び直線X)間に挟まれた凸部Q内の断面領域Aを示している。
【0050】
このため、上記「凸部Q内に複数の粒子16Bが存在」した状態とは、具体的には、この断面領域A内に複数の粒子16Bが存在した状態を示している。
なお、この「凸部Q内の複数の粒子16Bが存在した状態」の判定は、例えば、表面層16を、表面層16上の少なくとも複数の凸部Qを通る直線で切ったときの断面を観察し、観察される複数の凸部Qを10個、任意に選択し、選択したこれらの凸部Qの内の70%以上について、上記断面領域A内に複数の粒子16Bが存在していれば、「表面層16の凸部Q内に複数の粒子16Bが存在した状態である」とした。
【0051】
また、上記「凸部Qの断面における該凸部Q内に存在する粒子16Bの示す面積の割合」とは、この断面領域Aの面積を100%としたときの、上記断面領域A内に存在する粒子16Bによって占められている領域の面積の割合を示している。
なお、この粒子16Bの占める面積の割合の算出は、例えば、表面層16を、表面層16上の少なくとも複数の凸部Qを通る直線で切ったときの断面を観察し、観察された複数の凸部Qの内の最大数と最小数を除き選択し、選択したこれらの凸部Qの各々について、上記断面領域Aに占める粒子16Bの占める面積の割合を算出した結果の平均値を、粒子16Bの占める面積の割合として算出した。
【0052】
なお、この表面層16の平均層厚とは、表面層16を、表面層16上に形成された少なくとも複数の凸部Qを通る直線で切ったときの断面を観察し、該断面における、凸部Qの厚みと、凹部Pの厚みと、を各々10点ずつ、合計20点を任意に抽出して平均した値とした。なお、凸部Qの厚みとは、該断面における各凸部Qの頂点から弾性層14表面までの距離(該頂点から弾性層14表面に対して垂直に垂らした垂線の、該頂点から弾性層14までの長さ)を示している。また、凹部Pの厚みとは、該断面における各凹部Pの底部(最も凹んだ点)から弾性層14表面までの距離(該底部から弾性層14表面に対して垂直に垂らした垂線の、該底部から弾性層14までの長さ)を示している。
【0053】
本実施の形態では、表面層16において、凸部Qの断面における該凸部Q内に存在する粒子16Bの占める面積の割合は、上述のように、凹部Pの断面における該凹部P内に存在する粒子16Bの占める面積の割合に比べて大きい。この凸部Qの断面における該凸部Q内に存在する粒子16Bの占める面積の割合は、具体的には、20%以上80%以下とされていることが好ましく、30%以上70%以下が更に好ましく、30%以上50%以下であることが特に好ましい。
【0054】
表面層16において、凸部Qの断面における該凸部Q内に存在する粒子16Bの占める面積の割合が20%以上であると、複数の粒子16Bによる表面層16の表面への各種異物の付着を抑制するための凸部Qの形成、すなわち本実施の形態の導電性ロール10の表面層16における凹凸が効果的に形成される。
また、凸部Qの断面における該凸部Q内に存在する粒子16Bの占める面積の割合が80%以下であると、粒子16Bと樹脂材料16Aとの結着力が良好に保たれ、複数の粒子16Bにより凸部Q、すなわち凹凸の形成された表面層16の表面の亀裂が効果的に抑制される。
【0055】
そして、表面層16において、該凸部Qの断面における該凸部Q内に存在する粒子16Bの占める面積の割合Aは、凹部Pの断面における該凹部P内に存在する粒子16Bの占める面積の割合Bに比べて大きい(すなわち、A>B)という関係を有している。凸部Qと凹部Pに存在する粒子16Bの割合の関係が、上記A>Bの関係であることで、表面層16の表面の亀裂発生を抑制し、且つ外周面への異物付着の抑制された表面層16が提供される。また、凸部Qと凹部Pに存在する粒子16Bの割合の関係が、上記A>Bの関係であることで、表面層16に含まれる粒子16Bの1粒1粒への応力の集中が抑制され、表面層16に亀裂が発生することが抑制される。
【0056】
そして、これらの割合Aと割合Bとの関係は、A>B×n(nは1以上の整数)であることが好ましく、このnの値は、汚染性の理由から、1以上5以下であり、1以上2以下であることが更に好ましい。
【0057】
また、この表面層16の外周面の十点平均粗さRzは、4μm以上20μm以下であり、6μm以上13μm以下であることがより望ましい。表面層16の外周面の十点平均粗さRzが上記範囲内であることで、導電性ロール10を画像形成装置に搭載したときに、表面層16の汚染と表面層16のひび割れが抑制される。
【0058】
なお、本実施の形態において、上記十点平均粗さ(Rz)とは、JIS−B−0601(1982)で定義される十点平均粗さをいう。即ち、十点平均粗さは、断面曲線から基準長さだけ抜き取った部分において、平均線に平行、且つ断面曲線を横切らない直線から縦倍率の方向に測定した最高から5番目までの山頂の標高の平均値と最深から5番目までの谷底の標高の平均値との差の値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
この十点平均粗さ(Rz)は表面粗さ測定装置(SURFCOM 1500DX(東京精密社製))を用いて、測定長4mm、カットオフ波長0.8mm、測定倍率1000倍、測定速度0.15mm/sec、カットオフ種類ガウシアン、傾斜補正最小二乗曲線補正の方法で測定した。
【0059】
表面層16に含まれる粒子16Bとしては、平均粒径が、2μm以上15μm以下であることが好ましく、5μm以上10μm以下であることがより好ましい。粒子16Bの平均粒径が2μm以上であると、導電性ロール10の表面層16表面に、外周面への異物付着を抑制可能な程度の凹凸が形成されやすくなる。また、粒子16Bの平均粒径が15μm以下であると、導電性ロール10として後述する画像形成装置やプロセスカートリッジに搭載されて稼働されたときにおいて、表面層16に含まれる粒子16Bの1粒1粒への応力の集中が抑制され、表面層16に亀裂が発生することが抑制される。
【0060】
なお、粒子16Bの平均粒径は、表面層16に含まれる粒子16BをSEMまたはTEMにより観察し、得られたSEM像またはTEM像をもとに10個の粒子の面積から求めた粒径の平均値として求めた。
【0061】
また、表面層16に含まれる粒子16Bの扁平比(短/長)は、0.5以上1以下であることが好ましく、0.7以上1.0以下であることがより好ましい。
詳細は後述するが、本実施の形態では、表面層16の凹凸は、表面層16を形成するために用いられる表面層用塗布液を塗布することで弾性層14上に形成された塗布層17中の流体の対流に伴う粒子16Bの移動によって粒子16B間の距離が変化することで、塗布層17中において粒子16Bが引き寄せ合って粒子16Bが密に存在した領域と、粒子16Bが粗に存在または存在しない領域と、が発生し、この密に存在する領域が結果的に凸部Qとなり、粗または存在しない領域が結果的に凹部Pとなることで、表面層16が形成される。このため、粒子16Bの扁平比が上記0.7以上1.0以下であると、樹脂材料16Aの対流中において粒子16B同士が互いに引き寄せ合う力が働きやすくなると考えられ、表面層16上に容易に凹凸が形成されると考えられる。
【0062】
この粒子16Bの扁平比は、下記式(1)のように規定される。
式(1) 扁平比 =A/B
(ここで、Bは粒子16Bの絶対最大長を、Aは粒子16Bの絶対最小長を表す。)
扁平比は、主に顕微鏡画像または走査電子顕微鏡画像を画像解析装置によって解析することにより数値化される。扁平比は1に近づくほど真球とみなされ、数値が大きくなるほど粒子の最大長さと最小長さに大きな差を有し、楕円形になることを意味する。
【0063】
この粒子16Bの真比重は、上記扁平比と同様に、表面層16形成時における、樹脂材料16Aの対流に伴う粒子16Bの樹脂材料16A中における移動のしやすさから、0.7以上1以内であることが好ましい。
【0064】
なお、この粒子16Bの真比重の測定には、下記方法を用いた。
【0065】
粒子16Bの真比重の測定としては、ルシャテリエ比重瓶を用い、JIS−K−0061の5−2−1に準拠して真比重を測定した。操作は次の通りに行った。
(1)ルシャテリエ比重瓶に約250mlのエチルアルコールを入れ、メニスカスが目盛りの位置にくるように調整する。
(2)比重瓶を恒温水槽に浸し、液温が20.0±0.2℃になったとき、メニスカスの位置を比重瓶の目盛りで正確に読み取る(精度0.025mlとする)。
(3)試料を約100g量り取り、その質量を精秤し、これをW(g)とする。
(4)量り取った試料(粒子16B)を比重瓶に入れ、液中の泡を除く。
【0066】
(5)比重瓶を恒温水槽に浸し、液温が20.0±0.2℃になったとき、メニスカスの位置を比重瓶の目盛りで正確に読み取る(精度0.025mlとする)。
(6)次式により真比重を算出した。
D=W/(L2−L1
S=D/0.9982
式中、Dは試料の密度(20℃)(g/cm3)、Sは試料の真比重(20℃)、Wは試料の質量(g),L1は試料を比重瓶に入れる前の20℃におけるメニスカスの読み(ml),L2は試料を比重瓶に入れた後の20℃におけるメニスカスの読み(ml),0.9982は20℃における水の密度(g/cm3)である。
【0067】
この表面層16に含まれる粒子16Bとしては、粒子状であり、上記条件を満たし、後述する表面層16の形成工程において、塗布層17中における流体の対流に伴って移動して結果的に、本実施の形態の導電性ロール10の凹凸の形成(具体的には凸部Qの形成)に寄与する粒子であればよい。
【0068】
この粒子16Bを構成する材料としては、樹脂材料、無機材料等が用いられる。
樹脂材料としては、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン6−12などが上げられる。また、無機材料としては、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカなどが挙げられる。これらの中でも、結着性の観点から、ナイロン系の架橋タイプを用いることが好ましい。
【0069】
なお、この粒子16Bとしては、表面層16の亀裂の効果的な抑制の観点から、樹脂材料16Aとの結合力が強い事が好ましい。この樹脂材料16Aとの強い結合力の実現の観点から、粒子16Bは、多孔質状であることが好ましい。粒子16Bを、多孔質状の粒子16Bとする場合には、構成材料としては、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
さらに、この多孔質状の粒子16Bを構成する材料としては、後述する樹脂材料16Aの主成分がポリアミドの場合には、粒子16Bとしてはポリアミド樹脂を用いることが好ましい。これは、樹脂材料16Aへの相溶性の他、N−メトキシメチル化ナイロンとの架橋反応も見込めるため、樹脂材料16Aと粒子16Bとのより強い結合力が見込まれるため好ましい。
【0070】
樹脂材料16Aとしては、樹脂、ゴム等の何れを用いてもよく特に限定するものではないが、高分子材料を用いることが好ましい。この高分子材料としては、ポリエステル、ポリイミド、共重合ナイロン、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0071】
上記樹脂材料16Aを構成する高分子材料の内、導電性ロール10を画像形成装置やプロセスカートリッジに搭載して稼働したときに表面付着する汚れ防止の観点から、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、共重合ナイロンが好ましく用いられる。共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種または複数種を重合単位として含むものであって、この共重合体に含まれる他の重合単位としては、6ナイロン、66ナイロン等が挙げられる。ここで、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロンよりなる重合単位が共重合体中に含まれる割合は、質量比で合わせて10質量%以上であるのが好ましい。上記重合単位が10質量%以上の場合は、表面層16を形成するために後述する塗布層17を弾性層14上に塗布するときにおける成膜性に優れる。また、特に導電性ロール10を繰り返し使用した時における表面層16の表面の摩耗や、表面層16の外周面への異物付着抑制効果が高く、耐久性にも優れ、環境による特性変化も小さくなる。
【0072】
上記樹脂材料16Aを構成する高分子材料は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、当該高分子材料の数平均分子量は、1,000以上100,000以下の範囲であることが好ましく、10,000以上50,000以下の範囲であることがより好ましい。
【0073】
表面層16中には、上記粒子16Bとは別に、抵抗値を調整するために導電性材料を含有させてもよい。この導電性材料としては、抵抗制御性の理由から、平均粒径が3μm以下であるものが望ましい。この平均粒径の測定方法としては、上記粒子16Bと同じ測定方法を用いればよい。これらの導電性材料は、抵抗値調整としての機能も有するが、表面層16の機械強度を向上させるための補強剤としても機能する。
【0074】
この導電性材料としては、カーボンブラック及び導電性金属酸化物粒子等の電子導電剤、あるいはイオン導電剤が用いられる。
【0075】
上記カーボンブラックとして、具体的には、デグサ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
【0076】
これらのカーボンブラックはpH4.0以下であることが好ましい。一般的なカーボンブラックに比べ、表面に存在する酸素含有官能基の効果により、樹脂材料16A中への分散性がよく、前記pH4.0以下のカーボンブラックを配合することにより、帯電均一性が良好となり、さらに抵抗値の変動が抑制される。
【0077】
上記導電性金属酸化物粒子としては、酸化錫、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化亜鉛、アナターゼ型酸化チタン、インジウムスズ酸化物(ITO)等の導電性を有した粒子で、電子を電荷キャリアとする導電剤であれば何れも用いられ、特に限定されるものではない。これらは、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。また、本実施形態の効果を阻害しない限り、何れの粒径であってもよいが、抵抗値調整および強度の点より、好ましくは酸化錫、アンチモンドープがされた酸化錫、アナターゼ型酸化チタンであり、更に、酸化錫、アンチモンドープがされた酸化錫が好ましい。
【0078】
また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;が挙げられる。
【0079】
上記導電性材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、樹脂材料16Aを100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下の範囲であることが望ましく、5質量部以上30質量部以下の範囲であることがより望ましい。一方、上記イオン導電剤の場合には、樹脂材料16Aを100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下の範囲であることが望ましく、1質量部以上6質量部以下の範囲であることがより望ましい。
【0080】
この表面層16の体積抵抗値は1×103Ωcm以上1×1010Ωcm以下の範囲であることが望ましく、1×104Ωcm以上1×10Ωcm以下の範囲であることがより望ましい。該体積抵抗値が1×10Ωcm以上であると、導電性ロール10を転写ロールとして用いたときに転写不良が抑制され、導電性ロール10を帯電ロールとして用いたときには、帯電ムラの発生が抑制される。
一方、表面層16の体積抵抗値が1×1010Ωcm以下であると、導電性ロール10を転写ロールとして用いたときに、放電や転写ぬけ等の画質欠陥の発生が抑制され、帯電ロールとして用いたときには、濃度ムラの発生が抑制される。
【0081】
この表面層16の平均層厚は0.1μm以上30μm以下の範囲とすることが望ましく、0.5μm以上20μm以下の範囲とすることがより望ましい。なお、表面層16の平均層厚は、弾性層14の表面微小硬度が40°未満の場合は15μm以上25μm以下の範囲とすることが望ましく、弾性層14の表面微小硬度が40°以上の場合は5μm以上で構わない。
【0082】
なお、本実施の形態では、導電性ロール10は、上述のように、芯体12上に、弾性層14及び表面層16が積層され、表面層16の表面が、凹凸を有し、少なくとも該凹凸の凸部Q内に複数の粒子16Bが存在し、且つ該凸部の断面における該凸部内に存在する前記粒子の占める面積の割合が該凹部の断面における該凹部内に存在する粒子の占める面積の割合に比べて大きければよく、芯体12上に弾性層14及び表面層16を積層した構成に限られない。
【0083】
<導電性ロールの製造方法>
次に、本実施の形態の導電性ロール10の製造方法について説明する。
【0084】
(弾性層の作製)
まず、芯体12の表面に弾性層14を設ける。弾性層14の作製方法としては、例えば、ゴム材料に加硫剤と加硫促進剤とを混練りした混合物を押し出し成型した後、加熱して加硫させる方法などが挙げられる。
【0085】
(表面層の作製)
表面層16は、上記樹脂材料16A、粒子16B、及びその他の添加剤を含む表面層用塗布液を弾性層14上に塗工することで形成される。
【0086】
ここで、本実施の形態では、表面層16は、上述のように凹凸を有しており、凸部Q内に複数の粒子16Bが存在し、且つ該凸部の断面における該凸部内に存在する前記粒子の占める面積の割合が該凹部の断面における該凹部内に存在する粒子の占める面積の割合に比べて大きい構成とされている。
【0087】
このような表面層16の凹凸は、本実施の形態では、表面層用塗布液を弾性層14上に塗布することで形成された塗布層17中の流体の対流に伴う粒子16Bの移動によって形成される。なお、「流体」とは、塗布層17中の液状物質のことを示している。
すなわち、本実施の形態では、弾性層14上に形成された塗布層17中の樹脂材料16Aの対流に伴う粒子16Bの移動によって粒子16B間の距離が変化することで、塗布層17中において粒子16Bが引き寄せ合って粒子16Bが密に存在した領域と、粒子16Bが粗に存在または存在しない領域と、が発生し、この密に存在する領域が結果的に凸部Qとなり、粗または存在しない領域が結果的に凹部Pとなることで、表面層16が形成される。
【0088】
従って、本実施の形態では、塗布層17中において粒子16Bが均一に分散されず、密に存在した領域と、粗または存在しない領域と、が形成されることで、結果的に上記条件の凹凸を有する表面層16が形成されることから、塗布層17(または表面層16)中の粒子16Bの凝集状態が調整されることで、凹凸が形成されるといえる。なお、「粒子16Bの凝集状態」とは、塗布層17中において粒子16Bが均一に分散されず、密に存在した領域と、粗または存在しない領域と、が形成されたときの、この粒子16Bが密に存在した領域のことを示しており、必ずしも粒子16B同士が接触した状態を示すものではい。
【0089】
このような凹凸を有する表面層16は、上記表面層用塗布液や、塗布層17の乾燥条件を調整することで可能である。
【0090】
ここで、従来では、弾性層14上に、粒子を含有した表面層を形成する場合には、表面層中において粒子を均一に分散させるための様々な工夫を施してきた。すなわち、本実施の形態の導電性ロール10の表面層16のように、粒子16Bが密に存在した領域と粒子16Bが粗または存在しない領域と、が形成されて結果的に凹凸が形成されるように塗布層17の表面層用塗布液を調整、すなわち粒子16Bの凝集状態を調整するのではなく、反対に、粒子16Bが均一に分散される方向に表面層用塗布液を調整する工夫が行われてきた。
一方、本実施の形態の導電性ロール10においては、表面層16中に含まれる粒子16Bを均一に分散させず、反対に、表面層16中において、粒子16Bが密に存在した領域と、粒子16Bが粗に存在または存在しない領域とが形成されて凹凸が形成されるように、表面層用塗布液中を調整することで、上記凹凸を有する表面層16を形成したものである。
【0091】
詳細には、まずは、図4に示すように、弾性層14上に表面層用塗布液を塗布することで、塗布層17を形成する。
この表面層用塗布液は、上記樹脂材料16A、粒子16B、及び上記説明した導電材料に加えて、溶剤、及び分散助剤等を含んでいる。
【0092】
この表面層用塗布液に含まれる溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、トルエン等の通常の有機溶剤や水が挙げられる。
また、この表面層用塗布液に含まれる分散助剤としては、界面活性剤、カップリング剤等が挙げられる。
【0093】
この弾性層14上への表面層用塗布液の塗布方法としては、スプレー塗布法、浸漬塗布法、スピンコート法など通常の塗布方法が用いられるが、制御の容易さの理由から、浸漬塗布法を用いることが好ましい。
【0094】
弾性層14上に表面層用塗布液が塗布されると、弾性層14上には、表面層用塗布液による塗布層17が形成された状態となる。図5に示すように、この弾性層14上に形成された塗布層17の内部では、塗布層17中の溶剤の揮発等によって樹脂材料16Aや溶剤等の流体の対流が生じる(例えば、図5中、矢印H方向への対流)。この塗布層17中の流体の対流に伴って、塗布層17中の粒子16Bが移動して、粒子16B間の距離は、対流発生前に比べて変化すると考えられる。この流体の対流に伴う粒子16B間の距離の変化によって、塗布層17中において粒子16Bの距離が短くなって粒子16Bが密に存在する領域が所々に生じ、この密に存在する領域の各々に更に他の粒子16Bが対流に伴って移動すると考えられる。このため、塗布層17中には、塗布層17中の流体の対流によって、粒子16Bが密に存在する領域と、粒子16Bが粗に存在または存在しない領域と、が発生すると考えられる。
【0095】
そして、さらに溶剤の揮発が進むと共に対流による更なる粒子16Bの移動によって、図6に示すように、粒子16Bが密に存在する領域が結果とし凸部Qを形成し、粒子16Bが粗または存在しない領域が結果的に凹部Pを形成することで、表面層16が形成される。
【0096】
上述のように、本実施の形態では、表面層16は、弾性層14上に表面層用塗布液を塗布して塗布層17を形成し、この塗布層17中の樹脂材料16Aや溶剤等の流体の対流に伴う粒子16B間の距離の変化によって形成され、流体の対流によって、上述のように、少なくとも凸部Q内に複数の粒子16Bが存在し、且つ該凸部の断面における該凸部内に存在する前記粒子の占める面積の割合が該凹部の断面における該凹部内に存在する粒子の占める面積の割合に比べて大きい構成の表面層16が形成される。このため、表面層16の凹凸の形成には、塗布層17(表面層用塗布液)中の樹脂材料16Aを含む流体の対流が大きく寄与しているといえる。
【0097】
このような凹凸を有する表面層16を形成するための流体の対流は、塗布層17を構成する表面層用塗布液の粘度、表面層用塗布液に含まれる溶剤の種類及び溶剤の含有量、溶剤の揮発条件(すなわち塗布層17の乾燥条件)、粒子16Bの平均粒径、形状係数、添加量、及び真比重、導電性材料の種類及び添加量、分散助剤の種類や分子量や添加量、樹脂材料16Aの種類や分子量等の内の、1または複数を調整することで、調整される。また、表面層塗布液の粘度を調整することで、対流に伴う粒子16Bの移動速度や、凸部Q及び凹部Pが形成される方向に粒子16Bが移動する動き方も調整されると考えられる。
【0098】
すなわち、これらの要素の内の1または複数の調整された表面層用塗布液を用いて塗布層17を形成、または更に塗布層17の乾燥条件を調整することで、上記凹凸を有する表面層16が形成される。
【0099】
上記の表面層用塗布液の粘度については、塗布層17を構成する表面層用塗布液の粘度が上がると、溶剤蒸発時の粒子16Bの動きは鈍化し、表面層用塗布液の粘度が低くなると、粒子16Bの動きは、活発になる傾向がある。すなわち、この粒子16Bの動きが活発になると、凝集塊が出来やすくなる。このため、表面層用塗布液の粘度を調整することで、凹凸を有する表面層16を形成するための流体の対流が調整される。
【0100】
この塗布層17を構成する表面層用塗布液の粘度変化の要因としては、この表面層用塗布液中の樹脂材料16Aの粘度や、表面層用塗布液中の樹脂材料16Aと溶剤との比率が挙げられる。
【0101】
上記の表面層用塗布液に含まれる溶剤の種類及び添加量については、一般的に揮発性の高い溶剤は、塗液の対流を起こしやすい傾向にある。このため、対流が活発であると凝集塊が発生しやすい傾向があることから、表面層用塗布液に含まれる溶剤の種類や添加量の調整によっても、凹凸を有する表面層16を形成するための流体の対流が調整される。
【0102】
また、上記の、表面層用塗布液に含まれる溶剤の揮発条件(すなわち塗布層17の乾燥条件)については、乾燥温度が高いほど、溶剤の揮発性が向上する傾向にある。このため、乾燥温度が高いほど、溶剤の揮発性が向上して、凹凸を有する表面層16を形成するための流体の対流が活発となり、この対流が活発であるほど、凝集塊が発生しやすいといえる。
【0103】
また、上記の表面層用塗布液に含まれる溶剤の種類や溶剤の含有量(溶剤による希釈率)については、揮発性の高い溶剤比率が高いほど、溶剤の揮発性は高い傾向にある。このため、揮発性の高い溶剤比率が高いほど、溶剤の揮発性が向上して、その結果、凹凸を有する表面層16を形成するための流体の対流が活発となり、この対流が活発であるほど、凝集塊が発生しやすいといえる。
【0104】
上記塗布層17の表面層用塗布液中の流体の対流を、上記表面層16の凹凸が形成されるように、粒子16Bの平均粒径で調整する場合には、上述のように、粒子16Bの平均粒径を2μm以上15μm以下の範囲内で調整することで、上記凸部Qの断面における凸部Q内に存在する粒子16Bの占める面積の割合や、分散状態等が調整される。
また、さらに、粒子16Bの扁平比を0.7以上1以下の範囲で調整することで、対流により粒子16Bが互いに引き寄せ合って密になった領域が形成されやすくなるように調整することが可能となる。また、粒子16Bの真比重を上述のように0.7以上1以内に調整することで、樹脂材料16Aの対流に伴う粒子16Bの樹脂材料16A中における移動のしやすさが調整される。
【0105】
また、分散助剤の種類や分子量や添加量を調整することで、表面層用塗布液の粘度及び流体の対流に伴う粒子16Bの移動のしやすさが調整される。
【0106】
また、表面層塗布液の粘度を調整することで、対流に伴う粒子16Bの移動速度や、凸部Q及び凹部Pが形成される方向に粒子16Bが移動する動き方も調整されると考えられる。
【0107】
表面層用塗布液の粘度は、表面層用塗布液に含まれる、上記導電材料の種類や含有量、溶剤の種類や溶剤の含有量(溶剤による希釈率)、樹脂材料16Aの分子量、樹脂材料16Aの構造、及び樹脂材料16Aの組成、樹脂材料16Aが架橋樹脂である場合には触媒の種類等の内の1または複数を調整することによって調整される。
【0108】
この表面層用塗布液の粘度としては、具体的には、20mPa・s以上50mPa・s以下が望ましく、30mPa・s以上40mPa・s以下が更に望ましい。表面層用塗布液の粘度が30mPa・s以上40mPa・s以下の範囲であれば、その他の条件にもよるが、表面層16の上記説明した凹凸が好適に形成される。
【0109】
なお、この粘度の測定には、東京計器製B−8L型粘度計を用い、25℃、55%RH下で測定した。
【0110】
また、上記表面層用塗布液に含まれる溶剤の揮発条件は、溶剤の種類や、添加量、及び溶剤を揮発させる環境温度及び環境湿度を調整することで、調整される。
【0111】
なお、塗布層17の乾燥速度、すなわち溶剤の揮発速度は、形成される表面層16の平坦性に寄与すると考えられる。この塗布層17の乾燥速度は、樹脂材料16Aの分子量、表面層用塗布液に含まれる導電性材料の添加量、樹脂材料16Aと溶剤との比率(樹脂比率)、溶剤にアルコールと水が含まれる場合におけるアルコールと水との比率、及びレベリング剤等の種類等の内の、少なくとも1つを調整することで容易に調整される。
【0112】
なお、本実施の形態において、「塗布層17の乾燥速度」とは、塗布層17中の上記溶剤(上述した水やアルコール等)の内の85%以上が塗布層17から揮発または蒸発した状態を「乾燥」とし、表面層用塗布液が弾性層14上に塗布されて塗布層17が形成されてから、この「乾燥」した状態に到るまでの速度のことを、示している。
【0113】
上述の製造工程によって、本実施の形態の、外周面への亀裂発生が抑制されることで、長寿命化が図れ、且つ外周面への異物の固着や堆積の抑制された、導電性ロール10が製造される。
【0114】
この導電性ロール10は、例えば、画像形成装置を構成する帯電ロール、転写ロールとして好適に用いられる。また、画像形成装置として、中間転写体を介して記録媒体に画像を形成する画像形成装置に適用する場合には、導電性ロール10は、帯電ロール、及び転写ロールとしての、一次転写ロール、及び二次転写ロールとして好適に用いられる。
【0115】
本実施の形態の導電性ロール10の硬度は、アスカーC硬度でアスカーC15以上アスカーC90以下の範囲であることが好ましく、アスカーC20以上アスカーC50以下の範囲であることがより好ましい。硬度がアスカーC15以上であると、外圧に対する導電性ロール10の変形が抑制される。
【0116】
硬度がアスカーC90以下であると、導電性ロール10を後述する画像形成装置に搭載したときに、該導電性ロール10に接触配置される後述する像保持体への押圧力の荷重が集中することが抑制され、画質劣化が抑制される。
【0117】
なお、導電性ロール10の「導電性」とは、導電性ロール10全体の体積抵抗率ρが、上記1013Ωcm未満であることを示している。この体積抵抗率ρの測定方法は、平坦な金属板(材質:SUS304、表面粗さRa:0.1μm〜0.2μm)上に置かれた導電性ロール10を、導電性ロール10の回転軸である芯体12の軸方向両端部にそれぞれ500gの重りを載せて荷重を与えた状態で、芯体12と金属板とを抵抗測定器(アドバンテスト社製、R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計)に接続し、この抵抗測定器から導電性ロール10へ100Vの電圧を10秒印加した後の電流値より、式 ρ=V/I×A/tにより求める。なお、該式中、Vは、印加電圧(V)を示し、Iは、電流値(A)を示し、Aは、電極接触面積(cm)を示し、tは、膜厚(cm)を示す。
また、導電性ロール10を構成する芯体12の体積抵抗率の測定は、上記導電性ロール10と同じ方法で測定される。
【0118】
弾性層14及び表面層16の各々の体積抵抗率を測定する場合には、これら各層等の体積抵抗率が別々に測定できるように、各層の組成物のみからなるシート(以下、「組成物シート」と称する)を用いて測定する。
具体的には、組成物シート21の両面に電極(アドバンテスト社製、R12702A/Bレジスティビィティ・チェンバ)をとりつけて、組成物シートの片面には電極と同軸上にリング状のアース電極を更に取り付け、これらの電極に抵抗測定器(アドバンテスト社製、R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計)を接続する。
【0119】
そして、22℃55%RHの環境下で電場(印加電圧/組成物シート厚)が100V/cmになるよう調節した電圧を、これらの電極に印加することで組成物シートに電圧を印加し、30秒印加後の電流値より下記(2)式を用いて体積抵抗率(Ω・cm)を算出する。
体積抵抗率(Ω・cm)=19.63×印加電圧(V)/電流値(A)/組成物シート厚(cm)…(2)
【0120】
<画像形成装置、プロセスカートリッジ>
以下、導電性ロール10を搭載した画像形成装置及びプロセスカートリッジの一例を説明する。
【0121】
図7に示すように、画像形成装置50は、所定方向(図7中、矢印X方向)に回転される像保持体52を備えている。この像保持体52の周りには、像保持体52の回転方向に沿って順に、帯電ロール54、露光装置56、現像装置58、転写ロール60、及びクリーニングブレード62が設けられている。
【0122】
帯電ロール54は、像保持体52の外周面に接触配置され、像保持体52表面を帯電する。帯電ロール54は、その軸に設けられた芯材(図示省略)が電源68に電気的に接続されている。このため、この電源68を介して芯材に電圧が印加されることで、帯電ロール54と像保持体52との間に電界が形成され、これによって像保持体52表面が帯電される。
【0123】
この帯電ロール54の外周面には、帯電ロール54の外周面に付着した付着物を除去するためのクリーニングロール66が接触配置されている。クリーニングロール66によって、帯電ロール54の外周面に付着したトナー、紙粉、及び離型剤等の付着物が除去される。
【0124】
露光装置56は、帯電ロール54によって帯電された像保持体52上に画像に応じた静電潜像を形成する。現像装置58は、像保持体52上に形成された静電潜像をトナーによって現像して、トナー像を形成する。転写ロール60は、像保持体52上に形成されたトナー像を、記録媒体64へ転写する。転写ロール60は、像保持体52との間で記録媒体64を挟んで搬送する位置に設けられており、像保持体52との間に像保持体52上に保持されたトナー像を構成するトナーが記録媒体64側に移行する電界を形成することで、トナー像を記録媒体64へ転写する。
【0125】
転写ロール60は、その軸に設けられた芯材(図示省略)が電源69に電気的に接続されている。このため、この電源69を介して芯材に電圧が印加されることで、転写ロール60と像保持体52との間に電界が形成され、これによって像保持体52表面に保持されていたトナー像が記録媒体64側に移行して、記録媒体64に転写される。
【0126】
記録媒体64に転写されたトナー像は、図示を省略する定着装置によって記録媒体64上に定着される。
【0127】
なお、本実施の形態では、画像形成装置50に設けられた上記各種部材の内、帯電ロール54、クリーニングロール66、像保持体52、クリーニングブレード62、及び現像装置58は、画像形成装置50に対して着脱可能に設けられたプロセスカートリッジ70として構成されている。
【0128】
なお、本実施の形態では、プロセスカートリッジ70は、上述のように、帯電ロール54、クリーニングロール66、現像装置58、像保持体52、及びクリーニングブレード62を含んだ構成である場合を説明するが、少なくとも帯電ロール54と転写ロール60の少なくとも一方を含んだ構成であればよく、このような形態に限られない。
【0129】
上記構成の画像形成装置50においては、帯電ロール54によって表面を一様に帯電された像保持体52が、所定方向(図7中、矢印X方向)に回転される。この帯電された像保持体52表面には、露光装置56によって静電潜像が形成され、この静電潜像の形成された領域が像保持体52の回転によって現像装置58の設けられた領域に達すると、現像装置58によって現像されてトナー像が形成される。この像保持体52上に形成されたトナー像は、像保持体52の回転に伴って転写ロール60の設けられた位置に達すると、転写ロール60によって、図示を省略する搬送装置によって像保持体52と転写ロール60との間に搬送された記録媒体64に転写される。記録媒体64に転写されたトナー像は、図示を省略する定着装置によって定着される。これによって、記録媒体64上に画像が形成される。像保持体52上に付着した紙粉や残留トナー等の付着物は、クリーニングブレード62によって像保持体52上から除去される。
なお、この、帯電ロール54による像保持体52の帯電から各種装置の駆動によって記録媒体64に画像が形成される一連の処理を、画像形成処理と称して説明する。
【0130】
上述のように、本実施の形態の導電性ロール10は、画像形成装置50の帯電ロール54、及び転写ロール60として好適に用いられる。
【0131】
帯電ロール54は、上述のように、像保持体52の外周面に接触配置されているが、詳細には、図8に示すように、帯電ロール54の回転軸として設けられた導電性の芯体53の長尺方向両端部の各々を、軸受部材55によって支持されている。この軸受部材55の各々は、図示を省略する筐体によって支持されたコイルバネ57によって支持されている。このため、このコイルバネ57によって、芯体53を介して帯電ロール54の外周面が像保持体52の外周面に押しつけられるように接触配置された状態とされている。このため、像保持体52の回転に伴って、像保持体52に接触配置された帯電ロール54が従動回転される。なお、帯電ロール54を、像保持体52とは別に回転させるように構成してもよい。
【0132】
さらに、この軸受部材55は、クリーニングロール66の軸である芯体67の長尺方向両端部を支持しており、これによって、クリーニングロール66の外周面が帯電ロール54の外周面に接触配置されるように、クリーニングロール66及び帯電ロール54を支持している。このため、帯電ロール54の回転に伴って、クリーニングロール66が従動回転される。なお、クリーニングロール66を、帯電ロール54とは別に回転させるように構成してもよい。
【0133】
導電性ロール10を帯電ロール54として用いた場合には、画像形成装置50において上記画像形成処理が実行された場合であっても、表面層16が亀裂発生の抑制された状態とされていることから、帯電ロール54の外周面に亀裂が発生することが抑制される。
このため、帯電ロール54表面の亀裂により像保持体52表面の帯電状態が不均一となることが抑制される。また、帯電ロール54の外周面に亀裂が発生することにより、弾性層14から導電剤等の各種材料が染み出すことが抑制される。
従って、導電性ロール10を帯電ロール54に適用することで、結果的に、像保持体52表面が均一に帯電され、像保持体52表面の帯電不良による濃度ムラや色筋発生が抑制され、画質不良が抑制される。また、帯電ロール54の長寿命化が図れる。
【0134】
また、表面層16が上記凹凸を有していることから、導電性ロール10を帯電ロール54として用いることで、クリーニングロール66によって除去されずに表面に付着した紙粉、トナー、及び離型剤等の各種異物が、外周面に固着、及び体積することが抑制される。
【0135】
また、導電性ロール10を転写ロール60として用いた場合には、画像形成装置50において上記画像形成処理が実行された場合であっても、表面層16が亀裂発生の抑制された状態とされていることから、転写ロール60の外周面に亀裂が発生することが抑制される。
このため、転写ロール60表面の亀裂により、像保持体52上に保持されたトナー像を構成するトナーを記録媒体64側へ移行させる電界強度が不均一になり転写不良が発生することが抑制される。また、転写ロール60の外周面に亀裂が発生することにより、弾性層14から導電剤等の各種材料が染み出すことが抑制され、記録媒体64の汚れが抑制される。
従って、導電性ロール10を転写ロール60に適用することで、結果的に、像保持体52に保持されたトナー像の転写不良が抑制され、画質不良が抑制される。また、転写ロール60の長寿命化が図れる。
【0136】
また、表面層16が上記凹凸を有していることから、導電性ロール10を転写ロール60として用いることで、表面に付着した紙粉、トナー、及び離型剤等の各種異物が、外周面に固着、及び体積することが抑制される。
【0137】
なお、本実施の形態では、導電性ロール10を画像形成装置50またはプロセスカートリッジ70の帯電ロール54及び転写ロール60に適用する場合を説明したが、画像形成装置の各種導電性ロールに適用されることは言うまでもない。
例えば、画像形成装置として、中間転写体を介して記録媒体にトナー像を形成する画像形成装置を用いた場合には、像保持体52上に保持されたトナー像を中間転写体に転写する一次転写ロールや、中間転写体上に転写されたトナー像を記録媒体へ転写する二次転写ロールやバックアップロールに適用することで、好適に画質劣化が抑制される。
【実施例】
【0138】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」「%」はすべて「質量部」、「質量%」を意味する。
【0139】
(実施例1)
<導電性ロールの作製>
−弾性層の形成−
・エピクロロヒドリンゴム(商品名:3106、日本ゼオン社製) 100質量部
・カーボンブラック(商品名:旭♯60、旭カーボン社製) 10質量部
・炭酸カルシウム(商品名:ホワイトンSB、白石カルシウム社製) 20質量部
・イオン導電剤(商品名:BTEAC、ライオン社製) 5質量部
・加硫促進剤(ステアリン酸、日油社製) 1質量部
・加硫剤:硫黄(商品名:パルノックR、大内新興化学社製) 1質量部
・加硫促進剤:チウラム系(商品名:ノクセラーTET−G、大内新興化学社製)
1.5質量部
・加硫促進剤:チアゾール系(商品名:ノクセラーDM−P、大内新興化学社製)
1質量部
【0140】
上記弾性層の形成材料の内の、エピクロロヒドリンゴムを、12インチのオープンロールで3分間素練りを行った後に、該オープンロールの回転中に、上記弾性層の形成材料の内の、カーボンブラック、炭酸カルシウム、イオン導電剤を除々に添加し、最後に上記加硫剤と、上記2種類の加硫促進剤と、を混入した後5分間混練することで、生ゴムを調整した。
【0141】
芯体として、直径8mm、長さ310mm、材質SUM24Lのシャフトの表面に、ニッケルメッキ及びクロメート処理を施したものを用意した。この芯体の表面に、下記接着剤をボールミルにて24時間分散し、刷毛塗りで接着剤を塗布、風乾し、厚さ10μmの接着層を形成した。
接着剤としては、接着剤(ポリオレフィン系 Chemlok250X:ロードファーイースト社製)100質量部に、導電剤(ケッチェンブラックEC:ライオン社製)を3.0質量部、を混合したものを用いた。
【0142】
Φ14.5mmの内径を持つ射出成形用の円筒金型を用意した。この円筒金型は、ヒータによって170℃±5℃に保たれた状態とし、その中に、上記調整した芯体をセットした。その後、前記調整した生ゴムを射出成形機にて金型内に注入し、3分間保持した後に、金型から脱型した。
【0143】
この金型から脱型したロール部材について、温度が下がり、且つ径が安定するのを待つために4時間放置した。その後、砥石粒度60番を搭載したトラバース研削盤で、このロール部材の外径をΦ14mmに仕上げた。これによって、芯体上に弾性層を形成した。
この弾性層の表面粗さは、Rzで2.8μmであり端部に比べ中央部の外径は、55μm程度大きな状態に仕上がった(クラウン形状)。この弾性層の体積抵抗率は、22℃、55%RHの環境下で3×10Ω・cm、アスカーC硬度はアスカーC76であった。
【0144】
−表面層の形成−
樹脂材料16Aとして、6ナイロンをメトキシメチル化率30%施した(鉛市社製ファインレジFR101(分子量、約20,000)を選定した。この樹脂材料10質量部を、メタノール75質量部、n-ブタノール20質量部、水5質量部、クエン酸0.3質量部で溶解して10時間放置して溶解液を調整した。その後、この溶解液に、カーボンブラック20質量部を添加して、ダイノーミルを用いて60分間分散処理を施すことによって、表面層材料導電液を調整した。この調整した表面層材料導電液の固形分100質量部に対して、粒子16Bとして、平均粒径Φ5μmのナイロン粒子を35質量部添加することで、表面層用塗布液を調整した。
【0145】
この表面層用塗布液の粘度を、東機産業VISCOMETER MODEL BL2型粘度計を用い、24℃、55%RH下、60rpmで測定したところ34.5mPa・Sであった。
【0146】
次に、上記表面層用塗布液を、浸漬塗布槽に入れて、この中に、上記の、弾性層の形成されたロール部材を、毎分300mmの速度で浸漬させて、弾性層の全領域が浸漬した状態で3秒間保持した後、毎分200mmの速度で引き上げた。これによって、弾性層上に浸漬塗布法を用いて塗布層17を形成した。
【0147】
上記の浸漬塗布法によって弾性層上に表面層用塗布液と塗布することで塗布層を形成した後に、該弾性層上に該塗布層の形成されたロール部材を、
室温(22℃)、湿度50%RH以上60%RH以下の環境下で、1分間乾燥させた。この乾燥後の塗布層17の表面を光学顕微鏡により確認したところ、表面に凹凸が観察された。このため、浸漬塗布槽から引き上げた1分間の乾燥時に、表面層用塗布液中の流体の対流が生じて粒子16Bが移動し、凹凸が形成されたものと考えられる。
この1分間の乾燥の後に、該ロール部材を、160℃に加温した加熱炉に投入し20分間焼成させ後、加熱炉から取り出し室温にて冷却を行った。これによって、導電性ロールA1を作製した。
【0148】
作製した導電性ロールA1について、JIS−B−0601(1982)に基づいて、表面粗さ測定装置(SURFCOM 1500DX(東京精密社製))を用いて、測定長4mm、カットオフ波長0.8mm、測定倍率1000倍、測定速度0.15mm/sec、カットオフ種類ガウシアン、傾斜補正最小二乗曲線補正の方法で測定した。その結果十点平均粗さRzは、7μmであった。
【0149】
−評価−
(断面観察)
作製した導電性ロールA1について、断面観察のための検体を作製した。まず、作製した導電性ロール1について、まず、剃刀を表層側から弾性層まで切り込み大まかに取り出した。取り出した検体は、液体窒素を用い−130℃に凍結させ、硬化状態で切込みを行った後に、この切り込み面をクライオミクロトームによって平滑面とした。
【0150】
この検体の断面観察は、キーエンス社製カラー3Dレーザ顕微鏡、型式VK8550を用いて行った。なお、観察条件は、対物レンズ50倍を用いて行った。
【0151】
(平均膜厚の測定)
上記断面を観察し、該断面における、任意の10個の凸部Qの厚みと、任意の10個の凹部Pの厚みと、を測定し、これらの合計20点の厚み測定値の平均値を、表面層の平均膜厚として求めた。この平均膜厚は、9μmであった。
【0152】
(凸部Q内に存在する粒子16Bの数の確認)
上記検体の断面を観察し、観察される複数の凸部Qの内の10個を任意に選択し、選択したこれらの凸部Q内に存在する粒子16Bの数を確認し、選択したこれらの凸部Qの内の70%以上について、7個以上の粒子16Bが観察された。また、これらの観察した凸部Q内に存在する粒子16Bの数の平均値は、11個であった。
【0153】
なお、この「凸部Q内」とは、上記で図3を用いて説明したように、表面層の平均層厚に相当する位置を示すラインLと、凸部Qの断面における最も外周側を示す線(凸部Qを示すライン)と、の2つの交点(図3中、交点R及び交点R)の各々から、弾性層へ向かって垂直にたらした2本の直線(図3中、直線X、及び直線X)間に挟まれた凸部Q内の断面領域Aを示している。
【0154】
<「凸部Qの断面における該凸部Q内に存在する粒子16Bの示す面積の割合」の算出>
上記検体の断面を観察し、観察された上記断面領域Aの面積を100%としたときの、該断面領域A内に存在する粒子16Bによって占められている領域の面積の割合を算出した。
詳細には、上記断面の観察において、観察された複数の凸部Qの内の10個を任意に選択し、選択したこれらの凸部Qの各断面領域Aの各々について、断面領域Aの面積を、区画を区切り画像処理することにより求め、さらに、各凸部Qの各断面領域A内の粒子16Bの占める面積も、画像処理することにより求めた。そして、これらの10個の凸部Qの各々について、上記断面領域Aに占める粒子16Bの占める面積の割合を算出した結果の平均値を、粒子16Bの占める面積の割合として算出したところ、58%であった。
【0155】
(凹部P内に存在する粒子16Bの数の確認)
上記検体の断面を観察し、観察される複数の凹部Pの内の10個を任意に選択し、選択したこれらの凹部P内に存在する粒子16Bの数を確認し、選択したこれらの凹部P内に存在する粒子16Bの数の平均値は、4個であった。
【0156】
なお、この「凹部P内」とは、図3に示すように、表面層の平均層厚に相当する位置を示すラインLと、凹部Pの断面における最も外周側を示す線(凹部Pを示すライン)と、の2つの交点(図3中、交点R及び交点R)の各々から、弾性層へ向かって垂直にたらした2本の直線(図3中、直線X、及び直線X)間に挟まれた凹部P凸内の断面領域Bを示している。
【0157】
<「凹部Pの断面における該凹部P内に存在する粒子16Bの示す面積の割合」の算出>
上記検体の断面を観察し、観察された上記断面領域Bの面積を100%としたときの、該断面領域B内に存在する粒子16Bによって占められている領域の面積の割合を算出した。
詳細には、上記断面の観察において、観察された複数の凹部Pの内の10個を任意に選択し、選択したこれらの凹部Pの各断面領域Bの各々について、断面領域Bの面積を、区画を区切り画像処理することにより求め、さらに、各凹部Pの各断面領域B内の粒子16Bの占める面積も、画像処理することにより求めた。そして、これらの10個の凹部Pの各々について、上記断面領域Bに占める粒子16Bの占める面積の割合を算出した結果の平均値を、粒子16Bの占める面積の割合として算出したところ、36%であった。
【0158】
<耐久性試験>
さらに、実施例1で作製した導電性ロールA1について、耐久性試験を行い、画質評価、及び表面の亀裂発生評価を行った。
【0159】
耐久性試験としては、実施例1で作製した導電性ロールA1を、富士ゼロックス株式会社製、DocuCenter Color a450のプロセスカートリッジの、帯電ロールとして組み込んだ。
この帯電ロールは、像保持体に対して、片側600gの荷重が架かるようにコイルバネでベアリングを受けた。耐久性試験の環境は、帯電ロール表層のひび割れにストレスな低温低湿下である10℃、15%RHの環境で実施した。画像パターンは、記録紙A4サイズ横長方向にハーフトーン30%濃度で連続して印刷した。なお、記録紙としては、坪量200g/mのA4用紙を用いた。
【0160】
−画質評価−
上記耐久性試験において、A4サイズ50,000枚への画像形成毎に画質評価を実施して、搭載した導電性ロール(実施例1では帯電ロール)に起因する縦筋や、帯電ロールピッチの濃度ムラが発生していないかを確認した。画質評価する環境は、画質故障が顕著に表れる低温低湿下(10℃、15%RH)で実施し、画質評価サンプルは、前面ハーフトーン30%濃度で行い画質故障を目視により下記評価基準に基づいて評価した。
【0161】
―評価基準―
G0:縦筋が未発生であるレベル。
G1:かすかに縦筋が発生するレベル。
G2:顕著に縦筋が発生するレベル。
G3:縦筋が複数発生し前面に濃度ムラが生じるレベル。
【0162】
−表面層の亀裂評価−
上記耐久性試験において、A4サイズ50,000枚への画像形成毎に、導電性ロール1の表面を観察し、亀裂の発生状態を評価した。詳細には、導電性ロールの表面の軸方向一端部から他端部及び外周の全領域の内の、90度間隔で1mm幅の広さの領域内について、キーエンス社製カラー3Dレーザ顕微鏡、型式VK8550(対物レンズ25倍)を用いて、発生している部分を対物レンズ50倍で確認して亀裂の数を数えた。
【0163】
なお、亀裂の数の数え方としては、深さ5μm以上、長さ40μm以上500μm以下のものを亀裂「1個」として数え、長さが500μm以上のものについては、500μm長くなるごとに亀裂の数を1カウントアップして(例えば、1000μmの長さだと亀裂2個)カウントアップ数分の亀裂であるとして数えた。また、深さ5μm未満のものについては、亀裂とみなさず、計測は行わなかった。
【0164】
(実施例2)
実施例1では、表面層の形成時において、表面層材料導電液の固形分100質量部に対して、粒子16Bとして、平均粒径Φ5μmのナイロン粒子を35質量部添加することで、表面層用塗布液を調整した。本実施例2では、この平均粒径Φ5μmのナイロン粒子の添加量を、表面層材料導電液の固形分100質量部に対して20質量部に替えた以外は、実施例1と同じ条件及び方法で導電性ロールを作製することで、本実施例2の導電性ロールA2を調整した。
作製した導電性ロールA2について、実施例1と同じ条件及び方法を用いて各種測定及び評価を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0165】
(実施例3)
実施例1では、表面層の形成時において、表面層材料導電液の固形分100質量部に対して、粒子16Bとして、平均粒径Φ5μmのナイロン粒子を35質量部添加することで、表面層用塗布液を調整した。本実施例3では、この平均粒径Φ5μmのナイロン粒子の添加量を、表面層材料導電液の固形分100質量部に対して50質量部に替えた以外は、実施例1と同じ条件及び方法で導電性ロールを作製することで、本実施例3の導電性ロールA3を調整した。
作製した導電性ロールA3について、実施例1と同じ条件及び方法を用いて各種測定及び評価を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0166】
(実施例4)
実施例1では、表面層の形成時において、表面層材料導電液の固形分100質量部に対して、粒子16Bとして、平均粒径Φ5μmのナイロン粒子を35質量部添加することで、表面層用塗布液を調整した。本実施例4では、この平均粒径Φ5μmのナイロン粒子に替えて、平均粒径Φ2μmのナイロン粒子を表面層材料導電液の固形分100質量部に対して20質量部添加した以外は、実施例1と同じ条件及び方法で導電性ロールを作製することで、本実施例4の導電性ロールA4を調整した。作製した導電性ロールA4について、実施例1と同じ条件及び方法を用いて各種測定及び評価を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0167】
(実施例5)
実施例1で作製した導電性ロールA1を、実施例1では、富士ゼロックス株式会社製、DocuCenter Color a450のプロセスカートリッジの、帯電ロールとして組み込んだ。本実施例5では、実施例1で作製したA1を、該プロセスカートリッジの帯電ロールに替えて、転写ロールとして組み込んだ。この点以外は、実施例1と同じ条件及び方法を用いて評価を行った。評価結果を表1及び表2に示した。
【0168】
(実施例6)
実施例1の表面層の形成において、メタノールを75質量部から67.5質量部へ、n−ブタノールを20質量部から18質量部へ、水を5質量部から4.5質量部へ変更した以外は、実施例1と同じ条件及び方法で導電性ロールを作製することで、本実施例6の導電性ロールA6を調整した。
【0169】
(実施例7)
実施例1の表面層の形成において、ブタノールを20質量部から5質量部へ減量し、メタノールを75質量部から90質量部へ増量し、メタノール比率を上げた以外は、実施例1と同じ条件及び方法で導電性ロールを作製することで、本実施例7の導電性ロールA7を調整した。
【0170】
(実施例8)
実施例1の表面層の形成において、乾燥温度を室温(22℃)から110℃へ上げた以外は、実施例1と同じ条件及び方法で導電性ロールを作製することで、本実施例8の導電性ロールA8を調整した。
【0171】
(比較例1)
実施例1では、表面層の形成時において、表面層材料導電液の固形分100質量部に対して、粒子16Bとして、平均粒径Φ5μmのナイロン粒子を35質量部添加することで、表面層用塗布液を調整した。本比較例1では、この平均粒径Φ5μmのナイロン粒子に替えて、平均粒径Φ15μmのナイロン粒子を35質量部添加した以外は、実施例1と同じ条件及び方法で導電性ロールを作製することで、本比較例1の導電性ロールB1を調整した。作製した導電性ロールB1について、実施例1と同じ条件及び方法を用いて各種測定及び評価を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0172】
(比較例2)
実施例1では、表面層の形成時において、表面層材料導電液の固形分100質量部に対して、粒子16Bとして、平均粒径Φ5μmのナイロン粒子を35質量部添加することで、表面層用塗布液を調整した。本比較例2では、表面層用塗布液に粒子16B(具体的にはナイロン粒子)を加えなかった以外は、実施例1と同じ条件及び方法で導電性ロールを作製することで、本比較例2の導電性ロールB2を調整した。
作製した導電性ロールB2について、実施例1と同じ条件及び方法を用いて各種測定及び評価を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0173】
(比較例3)
実施例1の表面層の形成時にもいて用いた表面層材料導電液に、更に、分散安定化剤としてブチラール樹脂を10質量部添加した以外は、実施例1と同じ条件及び方法で導電性ロールを作製することで、本比較例3の導電性ロールB3を調整した。
作製した導電性ロールB3について、実施例1と同じ条件及び方法を用いて各種測定及び評価を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0174】
(比較例4)
実施例1では、表面層の形成時において、表面層材料導電液の固形分100質量部に対して、粒子16Bとして、平均粒径Φ5μmのナイロン粒子を35質量部添加することで、表面層用塗布液を調整した。本比較例4では、この平均粒径Φ5μmのナイロン粒子に替えて、平均粒径Φ20μmのナイロン粒子を35質量部添加した以外は、実施例1と同じ条件及び方法で導電性ロールを作製することで、本比較例4の導電性ロールB4を調整した。作製した導電性ロールB4について、実施例1と同じ条件及び方法を用いて各種測定及び評価を行った。結果を表1及び表2に示した。
【0175】
【表1】





【0176】
なお、表1中、「凸部Q内に存在する粒子16Bの面積占有率」とは、凸部Qの断面における該凸部Q内に存在する粒子16Bの示す面積の割合を示している。また、表1中、「凹部P内に存在する粒子16Bの面積占有率」とは、凹部Pの断面における該凹部P内に存在する粒子16Bの示す面積の割合を示している。
【0177】
【表2】




【0178】
上記表1及び表2に示すように、表面層に粒子16Bを含むが、凸部Q内に存在する粒子16Bの数(個)が単数(1個)である比較例1では、耐久性評価の結果、画質欠陥は、発生しなかったが、150,000枚目で帯電ロールとしての導電性ロールB1表面に亀裂が1箇所、200,000枚目で6箇所観察された。
【0179】
また、表面層に粒子16Bの含まれない比較例2では、耐久性試験の結果では、50,000枚時点では、表面層の表面の亀裂による画質劣化は、発生しなかったが、帯電ロールとして用いた導電性ロールB2の帯電ロール表面に、トナー成分の付着による白濁が観察された。さらに、耐久性試験において、100,000枚時点では、記録紙の走行方向に筋が発生し、画質不良が発生した。これは、導電性ロールB2を適用した帯電ロール最表面に、トナー成分が付着した結果であると考え得られる。さらに、200,000枚時点では、帯電不均一となり、画質及び亀裂ともに評価不能となった。
【0180】
また、表面層に粒子16Bを含むが、凸部Q内に存在する粒子16Bの面積占有率が、凹部P内に存在する粒子16Bの面積占有率に比べて小さい比較例3では、耐久性試験の結果では、50,000枚の画像形成時点では、導電性ロールB3としての帯電ロール表面の汚れは観察されず、亀裂も発生していなかった。しかし、100,000枚時点では、軽微な筋が発生して画質劣化がみれた。また、150,000枚時点では、表面層の表面のひび割れの数が急速に増し、且つ亀裂の幅が広くなっていることが観察され、この亀裂数の増加に伴い画質の劣化が顕著に発生した。さらに、200,000枚時点では、帯電不均一となり、画質及び亀裂ともに評価不能となった。
【0181】
そして、表面層に粒子16Bを含むが、凸部Q内に存在する粒子の数が1個である比較例4の導電性ロールB4では、50,000枚の画像形成に到る前に、導電性ロールB4の表面から粒子16Bの剥がれ落ちが観察され、且つ亀裂が計測不能なほど無数に発生した。
そして、さらに、100,000枚を超えた時点の計測では、帯電不均一となり、画質及び亀裂共に評価不能となった。
【0182】
一方、実施例1では、上記耐久性試験において、帯電ロールとして用いた導電性ロールA1の表面への汚れが目視上観察されたものの200,000枚の画像形成まで画質上の欠陥がなく良好な画質が維持しされていた。また、亀裂の発生もみられず、長寿命化が可能となっているといえる。
また、実施例1〜実施例8では、画質不良や導電性ロールの表面の亀裂は、比較例に比べてほとんど発生しなかった。また、導電性ロールの汚れについては、実施例1〜実施例8において、目視上観察されたものの、何れの実施例においても、200,000枚まで画質上の欠陥がほとんどなく良好な画質が維持された。
【0183】
以上の結果から、実施例で作製した導電性ロールを帯電ロールまたは転写ロールとして用いた場合には、比較例で作製した導電性ロールに比べて、外周面の亀裂が抑制され、且つ長期にわたって安定した画質が維持されるといえる。また、実施例で作製した導電性ロールを帯電ロールまたは転写ロールとして用いた場合には、比較例で作製した導電性ロールに比べて、外周面へのトナー等の異物の付着や堆積が抑制され、且つ長寿命化が図れるといえる。
【符号の説明】
【0184】
10 導電性ロール
12 芯体
14 弾性層
16A 樹脂材料
16 表面層
16B 粒子
17 塗布層
50 画像形成装置
52 像保持体
53 芯体
54 帯電ロール
56 露光装置
58 現像装置
60 転写ロール
67 芯体
70 プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に構成され、外周面が凹凸を有し、少なくとも該凹凸の凸部内に複数の粒子が存在し、且つ該凸部の断面における該凸部内に存在する前記粒子の占める面積の割合が該凹部の断面における該凹部内に存在する粒子の占める面積の割合に比べて大きいことを特徴とする導電性ロール。
【請求項2】
前記凸部の断面における該凸部内に存在する前記粒子の占める面積の割合が20%以上80%以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ロール。
【請求項3】
前記外周面の十点平均粗さRzが4μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電性ロール。
【請求項4】
芯材と、該芯材の外周に設けられた弾性層と、該弾性層上に設けられ前記粒子を含有した表面層と、を有し、該表面層の表面が前記凹凸を有する外周面であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の導電性ロール。
【請求項5】
前記粒子の平均粒径が2μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の導電性ロール。
【請求項6】
前記表面層は、
前記粒子と、樹脂材料と、を含む塗布液を前記弾性層の外周面に塗布することで塗布層を形成し、該塗布層における流体の対流に伴う前記粒子間の距離の変化よって、前記凹凸が形成されることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の導電性ロール。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の導電性ロールを備えることを特徴とする帯電装置。
【請求項8】
像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電ロール、及び前記像保持体上に形成されたトナー像を被転写部材に転写する転写ロールの少なくとも一方と、
を少なくとも備え、
前記帯電ロール及び前記転写ロールの内の、プロセスカートリッジに備えられた前記帯電ロール、プロセスカートリッジに備えられた前記転写ロール、またはプロセスカートリッジに備えられた前記帯電ロール及び前記転写ロールの内の少なくとも一方が、前記請求項1〜請求項6に記載の導電性ロールであることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電手段と、
前記帯電手段によって帯電された前記像保持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記形成手段によって形成された前記静電潜像をトナーによって現像する現像手段と、
前記トナー像が現像されることで前記像保持体上に形成されたトナー像を被転写部材へ転写する転写手段と、
を備え、
前記帯電手段及び前記転写手段の内の少なくとも一方が、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の導電性ロールを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−13495(P2011−13495A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158083(P2009−158083)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】