説明

導電性ロールの製造方法及びそれによって得られる導電性ロール

【課題】導電性弾性体からなるロール本体の外側にコーティング層が設けられてなり、且つ軸方向における曲がりが小さい導電性ロールを有利に製造し得る方法を提供すること。
【解決手段】導電性弾性体からなる略円柱形状のロール本体18を垂直に配置し、円錐台形状の塗布ロール26を水平に且つロール本体外周面に押し当てるように配置して、それらを軸回りに回転させると共に、ロール本体18に対して塗布ロール26を上、下の一方向に相対的に移動せしめ、コーティング液を塗布ロール26に供給してロール本体外周面に塗布する一方、ロール本体18に対する塗布ロールの押し当て量を、ロール本体18における塗布ロールが押し当てられる部位の測定厚さ:AX に応じて連続的に変化させることによって、ロール本体の外側に設けられるコーティング層の外周面が可及的に円柱面となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ロールの製造方法及びそれによって得られる導電性ロールに係り、特に、電子写真方式を利用した複写機やプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置において、帯電ロール、現像ロール、転写ロール等として用いられ得る導電性ロールを、有利に製造し得る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式を利用した複写機やプリンタ等の画像形成装置(以下、電子写真機器という)においては、例えば、導電体たる軸体(芯金)の周りに、低硬度の導電性弾性体からなるゴム層(ロール本体)が一体的に設けられ、かかるゴム層の外周面上に、必要に応じて、軟化剤移行防止層や抵抗調整層、更には保護層等が、順次積層形成されてなる構造の導電性ロールが、帯電ロール、現像ロール、転写ロール等として広く用いられている。
【0003】
かかる構造を呈する導電性ロールにあっては、その用途に応じた種々の形状を呈するものが使用されているが、一般には、円柱形状を呈するものが広く用いられている。
【0004】
ここで、円柱形状を呈する導電性ロールを製造する方法としては、従来より種々の方法が提案され、実施されている。例えば、従来からの製造方法の一つとして、先ず、軸体の周りにゴム層(ロール本体)を設け、その後、液状のゴム組成物や樹脂組成物等を用いて、ゴム層(ロール本体)の外周面上に軟化剤移行防止層等としてのコーティング層を順次形成せしめることにより、目的とする導電性ロールを製造する方法が知られている。
【0005】
かかる製造方法においては、先ず、軸体の周りに所望とする厚さ(ロールの設計段階において設定された厚さ。以下、ロール本体の設計厚さという。)のロール本体(ゴム層)を形成可能な円筒状の成形キャビティを有する金型(円筒金型)を用いて、軸体の周りにロール本体が形成せしめられることとなる。具体的には、かかる円筒金型内の中心軸上に軸体(芯金)を配置し、その状態の金型内に所定のゴム組成物を注入して、軸体の周りに加硫前のロール本体を形成せしめた後、加硫操作を行なうことにより、軸体の周りにロール本体(ゴム層)を一体的に形成せしめる。次いで、軸体の周りに形成されたロール本体(ゴム層)の外周面上に、ディップ方式やロールコーティング方法等に従って液状のゴム組成物又は樹脂組成物(コーティング液)を塗布し、乾燥(又は加熱)せしめることにより、コーティング層を設ける。この塗布操作を、目的とする導電性ロールに応じて1回、或いは、用いる液状ゴム組成物等を順次変更しながら複数回、繰り返すことにより、軟化剤移行防止層等としてのコーティング層を一層乃至は複数層有する導電性ロールとするのである。
【0006】
ところで、本願出願人は、上述の如き導電性ロールの製造方法において有利に用いられ得るロールコーティング方法として、本願より先に一の方法を提案している(特許文献1を参照)。
【0007】
かかる特許文献1(特公平6−36901号公報)において開示のロールコーティング方法においては、塗布対象物たるロール本体が設計厚さにて軸体の周りに均一に形成せしめられているとの仮定の下、先ず、ロール本体の外周面上に目的とする厚さ(設計厚さ)のコーティング層を与え得るような、ロール本体に対する塗布ロールの押し当て量を設定する。次いで、ロール本体を、その軸方向が垂直となるように配置する一方、円柱形状の塗布ロールを、その軸方向が水平となるように、且つ設定した押し当て量にてロール本体の外周面に押し当てられるように配置する。そして、押し当て量を一定に保ちつつ、換言すれば、ロール本体の軸体と塗布ロールの軸との距離を一定に保ちつつ、それらロール本体及び塗布ロールをそれぞれの軸回りに回転させると共に、ロール本体に対して塗布ロールを上、下の一方向に相対的に移動せしめ、所定のコーティング液を塗布ロールに供給することによって、かかるコーティング液をロール本体の外周面に塗布し、目的とする厚さ(設計厚さ)のコーティング層を形成せしめる方法である。
【0008】
しかしながら、そのような特許文献1に開示のロールコーティング方法を上述の如き製造方法において採用して、導電性ロールを製造することについて、本発明者が詳細な検討を重ねたところ、目的とする円柱形状を呈する導電性ロールが得られない場合があることが判明した。
【0009】
すなわち、上述した導電性ロールの製造方法は、先ず、円筒金型を用いて、軸体の周りにロール本体(ゴム層)を形成せしめるものであるところ、中心軸上に軸体(10)を配置した円筒金型内に所定のゴム組成物を注入すると、種々の原因により、軸体(10)外周の周方向において金型の内部圧力(金型内におけるゴム組成物の圧力)のバラツキが生じる場合がある。そのような内部圧力のバラツキが生じた状態の金型を加熱し、脱型して得られるロール本体(12)にあっては、目的とする円柱形状とはならず、通常、図1に示すような軸方向において曲がった(湾曲した)形状となる。なお、図1を始めとする本願の図面においては、説明の都合上、ロール本体及び導電性ロールの曲がりの程度や、コーティング層の厚さ等を、必要に応じて適宜、誇張して描いている。
【0010】
かかる図1に示す如き軸方向において曲がった形状を呈するロール本体12の外周面上に、特許文献1にて開示のロールコーティング法に従って液状ゴム組成物等(コーティング液)の塗布を開始すると、かかるロールコーティング方法においては、軸体10と塗布ロールの軸との距離が一定に保たれるところから、ロール本体12に対する塗布ロールの押し当て量は、ロール本体12における塗布ロールが押し当てられている部位の厚さに応じて変化することとなる。
【0011】
すなわち、ロール本体12における、測定厚さ(ロール本体12を測定して得られる厚さ。以下同じ。)が設計厚さより薄い部位(図1に示すロール本体12においては左側の部位)に対する塗布ロールの押し当て量は、設定した押し当て量より小さいものとなるのに対し、測定厚さが設計厚さより厚い部位(図1に示すロール本体12においては右側の部位)に対する塗布ロールの押し当て量は、設定した押し当て量より大きくなる。塗布ロールのロール本体12に対する押し当て量が大きくなると、それに比例して、塗布ロールとロール本体12との接触面積が大きくなるところから、塗布ロールからロール本体の外周面に供給されるコーティング液の量も多くなる。その結果、ロールコーティング終了後に形成せしめられるコーティング層が、ロール本体12における測定厚さが設計厚さより薄い部位の外側においては、目的とする厚さよりも薄くなる一方、測定厚さが設計厚さより厚い部位の外側においては、目的とする厚さよりも厚くなってしまい、得られる導電性ロール16は、図2に示すように、ロールコーティング前のロール本体12と比較して、軸方向における曲がりがより大きくなった形状(より湾曲した形状)となってしまうのである。
【0012】
そのような軸方向の曲がりが大きい導電性ロールを、例えば帯電ロールとして使用すると、かかる帯電ロールと接触して使用される感光ドラムとのニップ量が帯電ロールの周方向において一定とはならず、感光ドラムの帯電量が不均一となることから、最終的に得られる画像において画像ムラが発生する等の問題を惹起する恐れがある。このように、本願出願人が先に提案したロールコーティング方法を用いて導電性ロールを製造することについては、未だ改善の余地が残されているのである。
【0013】
【特許文献1】特公平6−36901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、ゴム層たるロール本体の外側にコーティング層が設けられてなる導電性ロールであって、その軸方向における曲がりが小さいものを、有利に製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そして、本発明は、そのような課題を解決すべく、長手棒状の軸体の周りに、略円柱形状を呈する導電性弾性体からなるロール本体を一体的に形成せしめた後、かかるロール本体を、その軸方向が垂直となるように配置し、また塗布ロールを、その軸方向が水平となるように且つ前記ロール本体の外周面に押し当てるように配置して、それらロール本体及び塗布ロールをそれぞれの軸回りに回転させると共に、該塗布ロールに所定のコーティング液を連続的に供給しつつ、前記ロール本体に対して該塗布ロールを上、下の一方向に相対的に移動せしめて、前記コーティング液を前記ロール本体の外周面に塗布することにより、該ロール本体の外側にコーティング層が設けられてなる導電性ロールを製造する方法にして、目的とする導電性ロールの設計段階において設定された、前記ロール本体の設計厚さ:A0 及び前記コーティング層の設計厚さ:T0 を基準とする一方、前記設計厚さ:A0 と、前記軸体の周りに形成された前記ロール本体の測定厚さ:AX とを対比して、該ロール本体における測定厚さ:AX が前記設計厚さ:A0 よりも厚い部位の外側には、前記設計厚さ:T0 よりも薄いコーティング層を形成せしめるように、また該ロール本体における測定厚さ:AX が前記設計厚さ:A0 よりも薄い部位の外側には、前記設計厚さ:T0 よりも厚いコーティング層を形成せしめるように、該ロール本体に対する前記塗布ロールの押し当て量を連続的に変化させつつ、該塗布ロールを該ロール本体に対して相対移動せしめることにより、前記コーティング層の外周面が可及的に円柱面となるようにしたことを特徴とする導電性ロールの製造方法を、その要旨とするものである。
【0016】
なお、かかる本発明に従う導電性ロールの製造方法においては、好ましくは、前記塗布ロールとして、その本体部が円錐台形状を呈するものを用いて、かかる塗布ロールを、その軸方向たる水平方向に連続的に移動せしめることにより、前記ロール本体に対する該塗布ロールの押し当て量を連続的に変化させることにより、実施される。
【0017】
一方、本発明は、上述した製造方法に従って製造された導電性ロールをも、その要旨とするものである。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明に従う導電性ロールの製造方法にあっては、略円柱形状を呈するロール本体に対する塗布ロールの押し当て量を、ロール本体の測定厚さに応じて連続的に変化させながら、塗布ロールをロール本体に対して相対移動せしめることにより、かかるロール本体の外側にコーティング層を形成せしめるものである。即ち、軸体の周りに形成されたロール本体の厚さを測定し、それにより得られた測定厚さ:AX と、導電性ロールの設計段階において設定されたロール本体の設計厚さ:A0 とを対比する。そして、ロール本体における測定厚さ:AX が設計厚さ:A0 よりも厚い部位の外側には、ロール本体の設計厚さ:A0 と同様に設計段階において設定されたコーティング層の設計厚さ:T0 よりも薄いコーティング層を形成せしめるように、一方、ロール本体における測定厚さ:AX が設計厚さ:A0 よりも薄い部位の外側には、上述の設計厚さ:T0 よりも厚いコーティング層を形成せしめるように、ロール本体に対する塗布ロールの押し当て量を連続的に変化させつつ、ロール本体の外周面にコーティング液を塗布するのである。このようにしてロール本体の外周面にコーティング液が塗布せしめられ、コーティング層が形成された導電性ロールにあっては、ロール本体の厚さ(測定厚さ)とコーティング層の厚さとの和がロール軸方向に亘って略均一となり、以て、コーティング層の外周面が可及的に円柱面となるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
ところで、本発明に係る製造方法に従って導電性ロールを製造するに際しては、先ず、所定の軸体(芯金)の周りに、導電性弾性体からなる略円柱形状を呈するロール本体が設けられることとなる。
【0020】
かかる略円柱形状とは、軸方向において僅かに曲がっている(湾曲している)形状を意味するものであって、軸方向の曲がりが大きい形状は除外される。これは、本発明に従う導電性ロールの製造方法において、軸方向における曲がりが著しく大きいロール本体を用いると、後述するコーティング操作によって得られるコーティング層の外周面は可及的に円柱面となるものの、ロール本体の厚さが特に厚い部位(軸方向中央部付近の軸直角方向外側に凸である部位。図1に示すロール本体12にあっては、その軸方向中央部近辺の右側の部位)の外側に形成されるコーティング層が薄くなり過ぎてしまい、コーティング層に要求される特性を十分に発揮しない恐れがあるからである。
【0021】
なお、ロール本体や導電性ロールにおける軸方向の曲がりの程度を示す指標としては、一般に、ロール本体等の軸方向中央部(乃至はその近傍部)における曲がり量(以下、中央曲がり量という)が用いられている。中央曲がり量とは、ロール本体(導電性ロールにあっては、軸体の周りに形成せしめられたロール本体及びコーティング層等の積層体)の軸方向中央部(乃至はその近傍部)における厚さの最大値と最小値との差である。かかる中央曲がり量を指標として用いた場合、本発明に係る導電性ロールの製造方法においては、中央曲がり量が50μm以下となるようにロール本体が作製される。
【0022】
尤も、50μm以下の中央曲がり量は、一般に、円柱形状を目標形状としてロール本体を作製した際に、実際に作製されたロール本体に許容される製造誤差の範囲内である。従って、本発明に係る導電性ロールの製造方法においては、設計段階にて円柱形状を目標形状として設計厚さ:A0 を設定し、従来より公知の各種方法に従って作製されたロール本体のうち、中央曲がり量が50μm以下のものを選択して用いることが好ましい。なお、軸体の周りに、円柱形状を目標形状とするロール本体を形成せしめる方法としては、例えば、円筒状の成形金型(円筒金型)を用いて、かかる円筒金型の中心に金属製の軸体を配置した状態で、成形材料として未加硫のゴム等を圧入し、加硫成形操作を実施して、その後に脱型する方法が、有利に採用され得る。そのようにして得られたロール本体にあっては、その外周面性状が金型の面性状に応じて鏡面状に平滑なものとなり、後述するコーティング操作を有利に進行することが可能となるからである。
【0023】
また、そこにおいて用いられる成形材料としては、最終的に得られる導電性ロールの用途に応じて、公知の各種導電性弾性材料を使用することが出来、例えば帯電ロールでは、一般に、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等の合成ゴム中に、金属粉末、カーボンブラック、カーボン繊維等の導電性粉末や導電性繊維等を配合した導電性の組成物が用いられる。なお、ロール本体の硬度を低下させるべく、成形材料(組成物)中に軟化剤が多量に配合される場合があるが、そのような場合には、軟化剤のロール表面への滲み出しを防止すべく、作製されたロール本体の表面に、N−メトキシメチル化ナイロン等のナイロン系ポリマーを主成分とする材料等を用いて、数μm程度の厚さの軟化剤移行防止層を形成することが望ましい。
【0024】
そして、そのようにして作製されたロール本体の外周面に対して、所定のコーティング液を塗布し、乾燥させることによって、一体的なコーティング層を形成せしめて、目的とする導電性ロールとするのである。その際には、例えば、図3に示す如きロールコーティング装置が用いられる。
【0025】
かかる図3に示すロールコーティング装置において、ロール本体18は、軸体20が縦スライド板22の上端部に固設された定速モータ24の回転駆動軸に連結された状態において、かかる縦スライド板22に対して位置固定に取り付けられて、その軸方向が実質的に垂直となるように配置されている。また、本体部が円錐台形状を呈する塗布ロール26は、その芯金(軸体)の一方の端部が、横スライド板28上に固設されたリニアモータ30の駆動軸と連結され、また芯金(軸体)の他方の端部が、横スライド板28上に固設された定速モータ32の回転駆動軸とカップリング34を介して連結された状態において、その軸方向が水平となるように配置されている。更に、横スライド板28がロール本体18に向けてスライドさせられており、リニアモータ30を駆動することによって塗布ロール26をその軸方向に移動せしめた際に、かかる塗布ロール26がロール本体18に対して接触可能な(押し当て可能な)位置に配置されている。尚、図3は、塗布ロール26をロール本体18に接触させて(押し当てて)、ロールコーティングを実施している途中の状態を示している。そして、かかる図3に示す装置においては、ロール本体18は定速モータ24にて軸回りに回転させられる一方、塗布ロール26は、定速モータ32にて回転させられると同時に、ロール本体18への押し当て量を適宜に変化させるべく、制御装置(図示せず)により制御されたリニアモータ30によって軸方向に適宜に移動せしめられ、他方においては、縦スライド板22が定速モータ36の回転に基づいて上昇移動せしめられ、それによって、ロール本体18に対して塗布ロール26が相対的に下降移動させられるようになっているのである。
【0026】
また、横スライド板28上には、コーティング液40を収容したタンク38が固設されており、そのコーティング液40中に塗布ロール26の一部が浸漬されている。更に、図示していないが、塗布ロール26の外周面より所定距離だけ離れた位置に、塗布ロール26の表面に付着した余分なコーティング液40を取り除くためのブレードが配置されている。このような構造によって、塗布ロール26が定速モータ32に回転させられると、かかる塗布ロール26の表面には、一定量のコーティング液40が連続的に供給されるようになっている。
【0027】
さらに、横スライド板28上には、ロール本体18を挟むようにして、レーザー変位計42のレーザー発光部42a及びレーザー受光部42bが対向配置されている(図3及び図4を参照)。また、それらレーザー発光部42a及びレーザー受光部42bにあっては、その測定面(レーザー発光部42aからレーザー受光部42bに向かって照射されるレーザーによって形成される面。以下、レーザー面という。)が、水平となるように、且つ、塗布ロール26の軸中心線を含む水平面から鉛直下方に距離:dだけ離れたところに位置するように、配置されている(図5を参照)。そして、縦スライド板22におけるロール本体18側の側面を測定基準面として、レーザー受光部42bが、レーザー発光部42aから照射されたレーザーを受光することによって、レーザー面上における測定基準面とロール本体18の外周面との距離:xを測定することが可能となっているのである(図4及び図5を参照)。
【0028】
かかる図3乃至図5に示すロールコーティング装置によれば、塗布ロール26が、ロール本体18に対して軸方向及び円周方向の一部でのみ接触し(押し当てられ)、その接触部位(押し当て部位)が、ロール本体18の軸方向及び円周方向に漸次移行していく。それ故に、塗布ロール26は、ロール本体18の表面を一端側から他端側にかけて螺旋状の軌跡を描くように移行して行き、結果的にロール本体18の全表面が塗布ロール26に接触させられて、かかる全表面にコーティング液40が塗布されるようになっているのである。なお、ロール本体18を下降移動させ、塗布ロール26を相対的に上昇移動させるようにしても良く、またロール本体18ではなく、塗布ロール26を上昇若しくは下降移動させるようにしても何等差し支えないが、塗布ロール26を(相対的に)上昇移動させる場合には、上述したレーザー変位計42の測定面(レーザー面)が、塗布ロール26の軸中心線を含む水平面から鉛直上方に距離:dだけ離れたところに位置するように、レーザー変位計42(レーザー発光部42a、レーザー受光部42b)を配置する。
【0029】
また、本発明に従う導電性ロールの製造方法にあっては、上述の接触部位におけるロール本体(18)の厚さ(測定厚さ:AX )に応じて、ロール本体(18)に対する塗布ロールの押し当て量を連続的に変化させることによって、ロール本体(18)の表面に塗布されるコーティング液(40)の量を適宜に調節し、以て、ロール本体(18)の外側に形成されるコーティング層の外周面が可及的に円柱面となるようにしたものである。本発明においては、塗布ロールとして、従来より一般的に用いられている円柱形状の塗布ロールを用いることも可能であるが、図3及び図4に示す如き本体部が円錐台形状を呈する塗布ロールが有利に採用される。かかる円錐台形状を呈する塗布ロールであれば、ロール本体に対して上述した位置関係(図3参照)となるように配置し、これを軸方向に移動させることにより、ロール本体に対する押し当て量を連続的に変化させることが非常に容易である。
【0030】
ここで、円錐台形状を呈する塗布ロールにあっては、その円錐台における上底面から下底面への垂線と母線との間の角:θ(図6を参照)が大き過ぎるものであっても、逆に小さ過ぎるものであっても、軸方向に移動させる際の制御が困難となるところから、かかる角度:θが1〜5°程度の円錐台形状のものが望ましい。
【0031】
また、そのような円錐台形状の塗布ロールを、図3に示すロールコーティング装置において用いる場合、かかる塗布ロールのロール本体に対する押し当て量は、以下のようにして決定される。即ち、レーザー変位計42を用いたロール本体18の外周面の測定を実施する前に、かかるロール本体18の軸体20の径:r、及び、レーザー変位計42による測定の際の測定基準面(縦スライド板22の側面)と軸体20との間の距離:αを予め把握しておき、その後、例えば図6に示す状態にあるロール本体18について、レーザー変位計42により、測定基準面たる縦スライド板22の側面とロール本体18との間の距離:xを測定する。なお、先述したように、レーザー変位計42の測定面(レーザー面)と、塗布ロール26の軸中心線を含む水平面とは、同一面とならないが、図6においては、説明の都合上、同一面上に表わしている。より具体的に、図6は、距離:xを測定してロール本体18の測定厚さ:AX を算出した後、かかるAX に基づいて、ロール本体18に対して塗布ロール26が押し当てられている状態を示すものである。
【0032】
先述したように、ロール本体18は、その軸方向において僅かに曲がった形状を呈しているにすぎず、通常、円柱形状を目標形状として作製されたものであることから、そのようなロール本体18を軸に直角な任意の面で切断した際の断面は常に円となり、その径は、軸体20の径:r及びロール本体18の設計厚さ:A0 から[r+2A0 ]になると仮定することが出来る。この仮定条件と、予め把握しているr及びα、更にレーザー変位計42を用いた測定結果たるxより、図6に示すように、ロール本体18上の所定の地点:Xにおけるロール本体18の測定厚さ:AX が求められるのである。
【0033】
そのようにして得られた、ロール本体18上の所定の地点:Xにおける測定厚さ:AX と、ロール設計段階において設定されたロール本体18の設計厚さ:A0 とを対比し、その差をΔA(ΔA≧0)で表わすと共に、かかる地点:X上に形成されるコーティング層の狙いとする厚さを狙い厚さ:TX とする。AX =A0 +ΔAの関係が成り立つ場合、即ち、地点:Xにおける測定厚さ:AX が設計厚さ:A0 よりも厚い場合には、かかる地点:X上に、予め設定されているコーティング層の設計厚さ:T0 よりも薄い狙い厚さ:TX (この場合、TX =T0 −ΔA)のコーティング層を形成せしめることによって、一方、AX =A0 −ΔAの関係が成り立つ場合(地点:Xにおける測定厚さ:AX が設計厚さ:A0 よりも薄い場合)には、かかる地点:X上に、設計厚さ:T0 よりも厚い狙い厚さ:TX (この場合、T0 +ΔA)のコーティング層を形成せしめることによって、最終的に得られる導電性ロールが、ロール本体18が軸方向において曲がっているにもかかわらず、かかるロール本体の曲がりが部分的に厚さが変化するコーティング層によって効果的に緩和されて、以て、軸方向の曲がりの程度が有利に低下せしめられたものとなるのである。
【0034】
ここで、一般に、押し当て量とは、押し当てられる物体(ここではロール本体18)の変化量で表わされ、例えば図6に示す状態においては、そこに示されているBが押し当て量となる。かかる押し当て量:Bは、幾何学的に、以下の数式(1)から算出可能である。尚、下記数式(1)及び(2)におけるPは定数であり、コーティング液の種類や特性、塗布ロール上へのコーティング液の供給量等から経験的に定められる定数である。

但し、r:軸体20の直径[mm]、
0 :ロール本体18の設計厚さ[mm]、
X':地点X’におけるコーティング層の狙い厚さ[mm]、
P:定数、
0 :コーティング層の設計厚さ[mm]、である。

これまで説明してきたように、塗布ロール26は円錐台形状を呈するものであるため、図6に示されているように、厳密にいうとロール本体18上の地点:Xと地点:X’とは一致しないため、図6に示す状態のロール本体18について測定した結果等より算出された測定厚さ:AX と、設定厚さ:A0 との対比において決定される、ロール本体18上の地点:Xにおけるコーティング層40の狙い厚さ:TX を、上記数式(1)において直ちに用いることは出来ない。しかしながら、塗布ロール16における底面から下底面への垂線と母線との間の角:θは、1〜5°程度と非常に小さいものであるため、ロール本体18上の地点:Xと地点:X’とは一致するとみなすことが可能であり、上記数式(1)におけるTX'を上記TX に置き換えた下記数式(2)より、押し当て量Bを算出することが出来る。

但し、TX :地点Xにおけるコーティング層の狙い厚さ[mm]であり、r、A0 、P及びT0 は上記式(1)と同じである。
【0035】
なお、図6からも明らかなように、塗布ロール26は、ロール本体18との間において点で接触しているわけではなく、上述のようにして算出された押し当て量にて押し当てられた結果、所定の面積を有する部位(接触部位)をもってロール本体に対して押し当てられている。そこにおける押し当て量は、かかる接触部位における唯一の地点(図6において地点:X)についての測定結果のみに基づいて決定されるものであって、接触部位中のX以外の地点の条件(具体的には、ロール本体18の実際の厚さ)は一切、考慮されないこととなる。しかしながら、これまでに述べてきたように、ロール本体18は略円柱形状を呈し、その外形形状は大きな変化を有するものではないことから、接触部位中の地点:X以外の地点においても、略同様のロール本体厚さを有していると考えて差し支えないのであり、上述したように塗布ロール26の押し当て量を決定し、かかる押し当て量にてロール本体18に対して塗布ロール26を押し当てることにより、本発明の目的を達成可能である。
【0036】
以上、詳述してきた図3に示すロールコーティング装置を用いて、本発明に従う導電性ロールの製造方法を実施するに際しては、例えば、以下のように実施される。
【0037】
先ず、レーザー変位計42の測定面(レーザー面、図5を参照)がロール本体18の上側端面と一致するような位置まで、縦スライド板22を定速モータ36の回転によって移動せしめ、かかる位置において固定する。一方、塗布ロール26については、予めロール本体18と接触しないような位置まで移動させおく。かかる状態にて、定速モータ24を駆動して、その回転駆動軸に連結されている軸体20(ロール本体18)を1回転させる。かかる回転開始から回転終了に至るまで、レーザー変位計42により、ロール本体18の外周面と測定基準面(縦スライド板22の側面。図4を参照。)との距離:xを、連続的に測定する。尚、これより後、ロール本体18を1回転させるのに必要な時間をt1 と表わす。
【0038】
かかる距離:xの測定結果、及び、上述したロール本体18の設計厚さ:A0 等の数値を用いて、上述した数式(2)より、ロール本体18に対する塗布ロール26の押し当て量、具体的には、ロールコーティング開始直後(t=0)の押し当て量(以下、当初押し当て量:B0 という。)、及び、ロールコーティング開始からロール本体18が1回転するまでの間(0<t≦t1 )に、時間の経過と共に測定厚さ:AX の変化に応じて変化する押し当て量(以下、「B1 (t)[但し、0≦t≦t1 ]」と表わす)を、算出する。
【0039】
その後、リニアモータ30を駆動し、塗布ロール26を、ロール本体18に対する押し当て量が上記当初押し当て量:B0 となるような位置まで、軸方向に移動せしめる。そして、4つのモータ(定速モータ24、同32、同36、リニアモータ30)を駆動させ、ロールコーティングを開始する(t=0)。具体的には、ロール本体18を軸回りに回転させる一方、塗布ロール26については、その軸回りに回転させつつ、ロール本体18に対する押し当て量が先に算出したB1 (t)[但し、0<t≦t1 ]となるように、リニアモータ30により軸方向に移動させるのである。
【0040】
その一方、各モータの駆動開始(ロールコーティング開始)と同時に、レーザー変位計42による距離:xの測定も開始し、先程と同様に、時間の経過と共に測定厚さ:AX の変化に応じて変化する押し当て量:B2 (t)[但し、t1 ≦t≦2t1 ]を、ロール本体18が2回転目に突入する直前までに算出する。
【0041】
そして、ロール本体が2回転目に突入した以降においても、上述の如くして、ロールコーティングが実施されると共に、ロール本体の次回転の際に要求される押し当て量が算出されるのである。即ち、ロール本体18の(n−1)回転目[nは2以上の整数。以下同じ。]の回転が終了する直前までに、ロール本体18の次の回転(通算、n回転目)における塗布ロール26の押し当て量:Bn (t)[但し、(n−1)×t1 ≦t≦n×t1 ]を算出しておき、ロール本体18がn回転目の回転に入ると同時に、算出した押し当て量:Bn (t)[但し、(n−1)×t1 ≦t≦n×t1 ]となるように、リニアモータ30により軸方向に移動させるということを、塗布ロール26が相対移動せしめられてロール本体18の下端に達するまで連続的に実施されることにより、ロール本体18の外側にロールコーティングが施されるのである。以上、詳述してきたロールコーティングを、例えば図1に示す如き形状のロール本体に対して実施し、かかるロール本体がN回転(N:8以上の整数)してロールコーティングが完了した場合、1)ロール本体の測定厚さ:AX と時間(t)との関係、及び、2)押し当て量:Bと時間(t)との関係は、図7に示すグラフのようになる。なお、図7のグラフ中において、1)の関係は点線にて、2)の関係は実線にて、それぞれ示している。
【0042】
そして、そのようにしてコーティング層が形成せしめられた導電性ロールにあっては、ロール本体が軸方向曲がりを有するものであっても、その曲がりに応じてコーティング層の厚さが漸次変化せしめれらたものとなり、以て、コーティング層の外周面が可及的に円柱面となるのである。
【0043】
なお、図3に示すロールコーティング装置を用いて、上述の如く塗布ロール26をロール本体18に対して相対的に下降移動させることにより、ロールコーティングを実施するに際しては、図5に示すように、レーザー変位計42は、その測定面(レーザー面)が塗布ロール26の軸中心線を含む水平面から鉛直下方に距離:dだけ離れるように、配置されることが望ましい。特に、塗布ロール26の相対移動速度をvとした場合、d=(v×t1 )とすることが好ましいが、通常、塗布ロール26の相対移動速度:vは、回転速度と比較して、非常に遅いものであるため、d=0、即ち、塗布ロール26の軸中心線を含む水平面とレーザー変位計42の測定面(レーザー面)とが同一面となるように、レーザー変位計42を配置した場合にあっても、本発明の効果を有利に享受することが可能である。
【0044】
また、コーティング層を形成するコーティング液40としては、導電性ロールの用途に応じて、公知の各種材料が用いられ得る。例えば、帯電ロールの場合には、半導電性の弾性材料を用いて、かかるコーティング層を抵抗調整層として形成することができ、その場合にはエピクロルヒドリン系ゴム等が好適に用いられ、通常、50〜500μm程度、好ましくは80〜200μm程度の厚さで形成される。また、このようにして形成されたコーティング層の表面には、必要に応じて、感光体等との固着を防止すること等を目的として、N−メトキシメチル化ナイロン等のナイロン系ポリマーを主成分とする材料等からなる保護層を、数μm程度の厚さで設けることも、可能である。
【0045】
さらに、上述したロールコーティングを複数回実施する、例えば、上記装置を用いてロール本体18の外周面の全面に亘ってコーティング操作を施した後、ロール本体18の上下を逆にして装置に取り付け、再度ロールコーティングを実施することにより、軸方向曲がりがより小さい導電性ロールを得ることが可能である。なお、そのように複数回のロールコーティングを実施する際には、最終的に目標とするコーティング層の厚さ及び実施予定回数に応じて、1回のロールコーティング操作におけるコーティング層の設計厚さ:T0 を設定することが必要である。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0047】
作業開始前に、ロール本体の設計厚さ:A0 を2.5mmと、またコーティング層たる抵抗調整層の設計厚さを150μm(0.150mm)とそれぞれ設定すると共に、軸体たる芯金(長さ:331mm、直径:9mm)の周りに上記設定厚さ:A0 (2.5mm)のロール本体を形成可能な円筒金型を準備した。先ず、かかる円筒金型の中心軸上に芯金を配置した状態で、スチレンブタジエンゴムを主成分とするゴム組成物を圧入し、その後、通常の手法に従って加硫成形を行ない、芯金の周りに略円柱形状を呈するロール本体を形成した。かかる作業を複数回、行ない、得られた複数のロール本体の中から軸方向の曲がりが同程度のものを2本一組として、曲がりの程度が異なる3組のロール本体(計6本のロール本体)を準備した。なお、ロール本体を形成する際に用いたゴム組成物の組成を、以下に示す。
スチレンブタジエンゴム:100重量部
カーボンブラック:25重量部
酸化亜鉛:5重量部
ステアリン酸:1重量部
プロセスオイル:130重量部
硫黄:0.3重量部
ジベンゾチアゾールジスルフィド(加硫促進剤):1.5重量部
テトラメチルチウラムモノサルファイド(加硫促進剤):0.6重量部
【0048】
曲がりの程度が異なる3組のロール本体の各々の組より1本のロール本体を用いて、それら各ロール本体を、図3に示す如きロールコーティング装置に取り付け、上述したロールコーティング方法に従ってコーティング層を形成した。具体的には、上述の手法に従って、ロール本体に対して2回、ロールコーティングを実施した後、一旦、装置からロール本体を取り外し、その上下を替えて再度、装置に取り付け、更に1回、ロールコーティングを実施した。各ロールコーティング操作を行なう際のコーティング層の設計厚さ:T0 を50μm(0.050mm)に設定した。また、ロールコーティングの際には、塗布ロールとして、円錐台形状を呈するものであって、図6に示す角:θが3°のものを用いた。なお、ロールコーティングに用いたコーティング液は、溶媒たるメチルエチルケトンに、エピクロルヒドリン系ゴム等を以下に示す割合にてそれぞれ配合し、粘度を5000cpsに調製したものを用いた。
エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体ゴム:100重量部
トリメチルオクタデシルアンモニウムパークロレート:0.2重量部
ステアリン酸:1重量部
クレー:30重量部
鉛丹:5重量部
エチレンチオウレア:1.5重量部
【0049】
各ロール本体について、その中央曲がり量と共に、曲がり凸側点及び曲がり凹側点のそれぞれにおける抵抗調整層の狙い厚さを、下記表1に示す。なお、曲がり凸側点(凹側点)とは、ロール本体表面上の軸方向中心部の中で最大厚さ(最小厚さ)を有する地点を意味する。また、抵抗調整層の狙い厚さとは、中央曲がり量を用いて、以下の式より算出した値である。
曲がり凸側点における狙い厚さ[μm]=150−(中央曲がり量/2)
曲がり凹側点における狙い厚さ[μm]=150+(中央曲がり量/2)
また、ロールコーティングによって曲がり凸側点(凹側点)上に形成された抵抗調整層の厚さを測定し、その結果を、下記表1に併せて示した。
【0050】
その後、抵抗調整層の表面に、N−メトキシメチル化ナイロンの100重量部に、導電性酸化スズの60重量部と、クエン酸の1重量部とを配合してなる材料を用いて、厚さが10μmの表層を従来の手法に従って形成し、帯電ロールとした(本発明例1〜3)。
【0051】
一方、残りのロール本体に対しては、塗布ロールとして円筒形状を呈するものを用いて、特許文献1において開示されている方法に従ってロールコーティングを実施した。なお、かかるロールコーティングの際には、本発明例と同様のコーティング液を用いた。その後、本発明例と同様に、厚さが10μmの表層を従来の手法に従って形成し、帯電ロールとした(比較例1〜3)。
【0052】
以上のようにして得られた6本の帯電ロール(本発明例1〜3、比較例1〜3)について、その中央曲がり量を測定した。また、各帯電ロールを、実機(富士ゼロックス株式会社製、製品名:DocuPrint C3530 )のドラムカートリッジに組み付け、23℃×53%RHの環境下においてマゼンタ色ハーフトーンの画像を印刷した。得られた画像中に帯電ロールの周長(約44mm)ピッチで濃度ムラのスジが発生している否かを目視で観察し、濃度ムラのスジが発生していれば×と、発生していなければ○と評価した。以上の測定結果及び評価結果についても、下記表1に併せて示す。
【0053】
【表1】

【0054】
かかる表1の結果からも明らかなように、本発明に従う製法に従って得られた帯電ロール(本発明例1〜3)にあっては、その軸方向の曲がりの程度が、抵抗調整層(コーティング層)形成前のロール本体の曲がりの程度と比較して、小さくなることが認められ、軸方向において曲がりの少ない導電性ロールを得られることが確認された。なお、比較例3の帯電ロールは中央曲がり量が比較的小さいものとなっているが、これは、ロール本体の中央曲がり量が小さいものを用いたことに起因するのであって、それと同じ中央曲がり量のロール本体を用いて、本発明に従ってロールコーティングを実施すると、得られる帯電ロールの中央曲がり量はより小さくなったのである(本発明例3)。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】軸体の周りに形成されたロール本体の一例を示す断面説明図である。
【図2】図1のロール本体の外側に、従来のロールコーティング方法に従ってコーティング層を形成せしめてなる導電性ロールの一例を示す断面説明図である。
【図3】本発明に係る導電性ロールの製造方法にて用いられるロールコーティング装置の一例を示す斜視図である。
【図4】図3のロールコーティング装置において、塗布ロールがロール本体に押し当てられている状態を上方から観察した部分拡大説明図である。
【図5】図3のロールコーティング装置において、塗布ロールがロール本体に押し当てられている状態をリニアモータ側から観察した部分拡大説明図である。
【図6】図3のロールコーティング装置におけるロール本体に対する塗布ロールの押し当てを説明するための断面説明図である。
【図7】本発明に従って導電性ロールを製造した際の、ロール本体の測定厚さ:AX と時間(t)との関係及び押し当て量:Bと時間(t)との関係の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0056】
18 軸体 20 軸体
22 縦スライド板 26 塗布ロール
28 横スライド板 30 リニアモータ
42a レーザー発光部 42b レーザー受光部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手棒状の軸体の周りに、略円柱形状を呈する導電性弾性体からなるロール本体を一体的に形成せしめた後、かかるロール本体を、その軸方向が垂直となるように配置し、また塗布ロールを、その軸方向が水平となるように且つ前記ロール本体の外周面に押し当てるように配置して、それらロール本体及び塗布ロールをそれぞれの軸回りに回転させると共に、該塗布ロールに所定のコーティング液を連続的に供給しつつ、前記ロール本体に対して該塗布ロールを上、下の一方向に相対的に移動せしめて、前記コーティング液を前記ロール本体の外周面に塗布することにより、該ロール本体の外側にコーティング層が設けられてなる導電性ロールを製造する方法にして、
目的とする導電性ロールの設計段階において設定された、前記ロール本体の設計厚さ:A0 及び前記コーティング層の設計厚さ:T0 を基準とする一方、
前記設計厚さ:A0 と、前記軸体の周りに形成された前記ロール本体の測定厚さ:AX とを対比して、該ロール本体における測定厚さ:AX が前記設計厚さ:A0 よりも厚い部位の外側には、前記設計厚さ:T0 よりも薄いコーティング層を形成せしめるように、また該ロール本体における測定厚さ:AX が前記設計厚さ:A0 よりも薄い部位の外側には、前記設計厚さ:T0 よりも厚いコーティング層を形成せしめるように、該ロール本体に対する前記塗布ロールの押し当て量を連続的に変化させつつ、該塗布ロールを該ロール本体に対して相対移動せしめることにより、前記コーティング層の外周面が可及的に円柱面となるようにしたことを特徴とする導電性ロールの製造方法。
【請求項2】
前記塗布ロールとして、その本体部が円錐台形状を呈するものを用いて、かかる塗布ロールを、その軸方向たる水平方向に連続的に移動せしめることにより、前記ロール本体に対する該塗布ロールの押し当て量を連続的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の導電性ロールの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の方法に従って製造された導電性ロール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−74598(P2009−74598A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243304(P2007−243304)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】