説明

導電性ロール

【課題】高抵抗の可塑剤を用いることにより、高温高湿環境下の電気抵抗値の環境変動を低減したスポンジロールと、表面処理を施したゴムチューブとを組み合わせることにより、製品としてスポンジロール単体よりも環境変動を小さくし、スポンジ単体での汚染を抑える転写ロールを提供する。
【解決手段】 芯金11上に、導電性発泡弾性層12と、この導電性発泡弾性層12の周囲に設けられた導電性弾性層13とを具備する導電性ロールにおいて、前記導電性発泡弾性層12が、エピクロルヒドリンゴム及びアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)の発泡体からなると共に、高抵抗の可塑剤をゴム基材100重量部に対して10重量部以上40重量部未満含有し、且つ前記導電性弾性層13が、活性水素を含有するゴム基材からなると共に少なくともイソシアネート成分を含有する表面処理液で表面処理された表面処理層13aを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式複写機及びプリンタ、またはトナージェット式複写機及びプリンタなどの画像形成装置に用いられる帯電ロール、転写ロール、現像ロールなど導電性ロールに関し、転写方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる中間転写体又は転写体として用いられる転写ロールに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真式複写機及びプリンタ、またはトナージェット式複写機及びプリンタなどの画像形成装置の帯電ロール・現像ロール、トナー規制、さらには中間転写ロール等には、感光体等への非汚染性の他、所定の導電性、摩擦係数等が要求される。
【0003】
例えば、抵抗値を最適化するために、ゴム成分としてアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)やエピクロルヒドリンゴム(ECO)等の有極性ゴムを用いることにより導電性ゴム組成物の抵抗ムラを軽減するもの(特許文献1参照)、さらにこのような組み合わせにおいて、それぞれの特性及び配合割合を規定して、抵抗ムラが小さく、しかも低硬度で耐オゾン性にも優れ、加工性にも優れたもの(特許文献2参照)などが提案されている。また、イオン導電性ゴムに所定量のファーネスブラックからなるカーボンブラックを添加したゴム組成物が提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、上述した技術では、ある程度の抵抗値の最適化は可能であるが、連続通電によってイオン導電物質が局在化して抵抗が上昇してしまうという問題がある。また、カーボンブラックを併用する場合には、多量に入れると高抵抗化の問題は解消されるが、小さな傷などにより容易にリークが発生してしまうという問題があり、一方、少なすぎると、カーボンブラックが導電に寄与しないばかりか、イオン導電物質の移動をかえって阻害してしまうので、配合量の調整が極めて難しいという問題がある。
【0005】
一方、帯電ロールなどにおいては、均一帯電を容易に実現するためにある程度のニップを稼ぐ必要があり、弾性体の低硬度化を図る必要があるが、可塑剤や軟化剤を配合すると、感光体等への汚染の問題が生じる。
【0006】
また、感光体等への汚染性を考慮して、導電性カーボン、可塑剤、軟化剤を含有することなくゴム基材に低分子量の液状ゴムを配合した転写ローラーが提案されている(特許文献4参照)が、このような液状ゴムをエピクロルヒドリン系の共重合体に配合しようとする場合、エピクロルヒドリン系の共重合体の親和性が小さいと所望の可塑化及び低硬度化の効果が十分に発揮されないばかりか、通常の油状成分や可塑剤と同様にブリードアウトして接触している部材に移行するという問題がある(特許文献2の段落[0007]参照)。
【0007】
そこで、従来、感光体等への汚染性、帯電性等の理由から、各種弾性層表面に各種コーティング層、被覆チューブを設けたものとして、例えば、導電性スポンジ体層上にポリアミド樹脂チューブからなる導電性最外層を設けた現像ロール(特許文献5参照)、また、ワックス等の滑剤を含む表面層を具備する帯電部材(特許文献6参照)、さらに、フッ化炭素を含有する導電性重合体からなる塗布層またはシームレスチューブからなる表面層を有する帯電部材(特許文献7参照)等が提案されている。
【0008】
そこで、内層を低硬度の発泡層とすると共に外層は導電性弾性層、例えばゴムチューブとし、且つそのゴムチューブ層の表面をイソシアネート化合物で処理して表面処理層を設けた構成の検討を行ったが、この場合、内層を低抵抗の導電性発泡層とすると、発泡層が吸湿し易いためか、高温高湿環境下で電気抵抗値が著しく低下してしまい、環境依存性の点で問題があった。
【0009】
また、上述した表面処理では、カーボンを配合した電子導電の弾性層において、イソシアネートの含浸により高抵抗層が形成されてしまうという問題があった。すなわち、表面処理層においては、導電性微粉末に依存する導電性を有さない高抵抗層が形成されてしまう(特許文献8参照)という問題があった。ただし、かかる技術を採用すると、用途によっては好適な導電性ロールを形成することができる。
【0010】
【特許文献1】特開平11−65269号公報 (特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2000−35032号公報 (特許請求の範囲、[0007]等)
【特許文献3】特開2001−140855号公報 (特許請求の範囲等)
【特許文献4】特開昭59−46664号公報 (特許請求の範囲等)
【特許文献5】特開平5−204234号公報 (特許請求の範囲等)
【特許文献6】特開平7−134467号公報 (特許請求の範囲等)
【特許文献7】特開平8−160701号公報 (特許請求の範囲等)
【特許文献8】特許3429158号公報 (特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような事情に鑑み、環境依存性が小さく、画像形成を安定して行うことができ、且つ感光体等への汚染の心配が少ない導電性ロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、芯金上に、導電性発泡弾性層と、この導電性発泡弾性層の周囲に設けられた導電性弾性層とを具備する導電性ロールにおいて、前記導電性発泡弾性層が、エピクロルヒドリンゴム及びアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)の発泡体からなると共に、高抵抗の可塑剤をゴム基材100重量部に対して10重量部以上40重量部未満含有し、且つ前記導電性弾性層が、活性水素を含有するゴム基材からなると共に少なくともイソシアネート成分を含有する表面処理液で表面処理された表面処理層を具備することを特徴とする導電性ロールにある。
【0013】
本発明の第2の態様は、請求項1において、前記可塑剤が、1011Ω以上の電気抵抗値を有することを特徴とする導電性ロールにある。
【0014】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記導電性弾性層が、エピクロルヒドリンゴムとNBRからなることを特徴とする導電性ロールにある。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記表面処理液は、イソシアネート成分と共に、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも一種のポリマーを含有したものであることを特徴とする導電性ロールにある。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記表面処理液は、イソシアネート成分と共に、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも一種のポリマーと、カーボンブラックとを含有したものであることを特徴とする導電性ロールにある。
【0017】
本発明の導電性ロールは、芯金上に、高抵抗の可塑剤を添加したエピクロルヒドリンゴムとNBRの発泡体からなるスポンジロールを具備しており、可塑剤の部数を増やすことによって、高温高湿環境下における電気抵抗値の著しい低下を低減することができる。この効果により、電気抵抗値の低下により発生する過電流を抑えることができる。すなわち、低抵抗の可塑剤を用いた場合には、ロールの電気抵抗値は下がることとなり、高温高湿環境下における電気抵抗値の著しい低下を低減することは出来ない。
【0018】
また、本発明の導電性ロールは、スポンジロール上に、活性水素を含有するゴム基材からなると共に少なくともイソシアネート成分を含有する表面処理液で表面処理された表面処理層を具備するため、スポンジロール単体よりも、環境変動を小さく、且つスポンジロール単体での汚染も抑えることができる。
【0019】
ここで、本発明の可塑剤としては、高抵抗の可塑剤を用いるのが好ましい。高抵抗とは、1011Ω以上のものをいい、例えば、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート、ジオクチルアジペート(DOA)、アルキルスルフォン酸フェニルエステル等を挙げることができる。ここで、これらの可塑剤は2種以上組み合わせて用いることができ、また、2種以上組み合わせた場合には、混合した可塑剤が高抵抗を示せばよい。なお、これらのフタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸系可塑剤は、1012Ωの抵抗値を有する。また、可塑剤の添加量は、ゴム基材100重量部に対して、10重量部以上、40重量部未満、好ましくは、10重量部以上、30重量部以下の範囲とするのが好ましい。この範囲よりも少ない場合、ゴム基材のムーニ−粘度が大きく発泡の効果が小さくなり、一方、逆に多すぎる場合には、抵抗値の上昇はみられるもののスポンジのセット性が著しく低下するからである。
【0020】
一方、本発明の導電性発泡弾性層は、エピクロルヒドリンゴム及びアクリロニトリル−ブタジエンゴムより選択されるポリマーの共架橋体であり、上記のエピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン、エチレンオキサイド及びアリルグリシジルエーテルの共重合体が好ましい。また、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとしては中高ニトリルタイプのポリマーが好ましい。
【0021】
発泡体の発泡の処方としては、アゾジカルボンアミド、N,N′−ジニトロンペンタメチレンテトラミン、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の化学発泡剤及び尿素等の発泡助剤が好ましい。
【0022】
本発明の導電性弾性層は、活性水素のあるゴムであればよいが、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、NBR、ウレタン、CRなどを挙げることができる。また、ゴム組成は、前記記載の材料を単独または共架橋した導電性ゴムからなり、エピクロルヒドリンゴム及びNBRから選択される単独または共重合体が好ましい。
【0023】
また、本発明の導電性弾性層の表面は、イソシアネート化合物を含浸させて硬化させたイソシアネート処理により表面処理されているのが好ましい。表面処理液は、イソシアネート化合物を有機溶剤に溶解させたもの、さらには、これにカーボンブラックを添加したものを用いることができるが、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーと、導電性付与剤と、イソシアネート成分とを含有する表面処理液を用いるのが好ましく、このような表面処理液を含浸させて形成した表面処理層を有するようにするのが好ましい。
【0024】
ここで、イソシアネート化合物としては、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート(TODI)および前記記載の多量体および変性体などを挙げることができる。
【0025】
また、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーは、所定の溶剤に可溶でイソシアネート化合物と反応して化学的に結合可能なものである。アクリルフッ素系ポリマーは、例えば、水酸基、アルキル基、又はカルボキシル基を有する溶剤可溶性のフッ素系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸フッ化アルキルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。また、アクリルシリコーン系ポリマーは、溶剤可溶性のシリコーン系ポリマーであり、例えば、アクリル酸エステルとアクリル酸シロキサンエステルのブロックコポリマーやその誘導体等を挙げることができる。
【0026】
本発明では、これらのポリマーを一種又は二種以上混合して用いる。表面処理液中のポリマーは、イソシアネート成分に対して2〜30重量%とするのが好ましい。少ないとカーボンブラックを表面処理層中に保持する効果が小さくなり、多すぎると相対的にイソシアネート成分が少なくなって有効な表面処理層が形成できない。
【0027】
また、表面処理液には導電剤としてカーボンブラックが用いられる。カーボンブラックの種類は特に限定されず、例えば、ケッチェンブラック(ライオン社製)、トーカブラック#5500(東海カーボン社製)などが挙げられる。表面処理液中のカーボンブラックは、イソシアネート成分に対して10〜40重量%であるのが好ましい。これより少ないと有効な帯電特性が発揮できず、多すぎると脱落等の問題が生じ好ましくないからである。
【0028】
さらに、表面処理液は、これらアクリルフッ素系ポリマー又はアクリルシリコーン系ポリマー及びイソシアネート化合物を溶解する溶剤を含有する。溶剤としては特に限定されないが、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の有機溶剤を用いればよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の導電性ロールは、芯金上に、高抵抗の可塑剤を添加したエピクロルヒドリンゴムとNBRの発泡体からなるスポンジロールを具備しているため、高温高湿環境下における電気抵抗値の著しい低下を低減することができる。さらに、表面処理を行ったチューブを複合させたロール構成をとるため、スポンジロール単体よりも、環境変動が小さく、且つスポンジロール単体での汚染も抑えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。図1は、一実施形態に係る導電性ロールの断面図である。同図に示すように、導電性ロールは、芯金11の周囲に導電性発泡弾性層12を具備すると共に導電性発泡弾性層12の外周に導電性弾性層13を具備し、導電性弾性層13の表面には表面処理層13aが形成されている。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明の構成を限定するものではない。
【0031】
(実施例1)
<ロールの製法>
エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG−102;ダイソー社製)を40重量部、中高ニトリルタイプのアクリロニトリル−ブタジエンゴムを60重量部、可塑剤としてジ(2−エチルヘキシル)フタレート(DOP)を10重量部、加硫剤として、硫黄1.5重量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)4.0重量部、発泡助剤として尿素化合物3.0重量部をロールミキサーで混練りし、これを押出成型後、160℃×1hで加硫・発泡を行い、冷却後、研磨を行い、スポンジロールを作製した。
【0032】
<チューブの製法>
エピクロルヒドリンゴムを100重量部、酸化亜鉛を5重量部、導電剤としてケッチェンブラックEC(ライオン社製)を5重量部、加硫剤として2−メルカプトイミダゾリン(アクセル22;商品名)2重量部をロールミキサーで混練りし、これを押出成型後、150℃×1hで蒸気加硫を行い、冷却後研磨により厚さ0.5mmのゴムチューブを作製した。
【0033】
<チューブの表面処理>
酢酸エチル100重量部、イソシアネート化合物(MDI;大日本インキ社製)20重量部、アセチレンブラック(電気化学社製)4重量部、アクリルシリコーンポリマー(モディパーFS700;日本油脂社製)2重量部をボールミルで3時間分散混合した。前記溶液を23℃に保ったまま、前記チューブを10秒間浸漬後、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱し、チューブに表面処理を施した。
【0034】
これらを複合して転写ロールとして使用される導電性ロールを作製した。
【0035】
(実施例2)
可塑剤として、DOP20重量部を使用した以外は、実施例1と同様の条件でスポンジロール及び転写ロールを作製した。
【0036】
(実施例3)
可塑剤として、DOP30重量部を使用した以外は、実施例1と同様の条件でスポンジロール及び転写ロールを作製した。
【0037】
(実施例4)
可塑剤として、ジオクチルアジペート(DOA)10重量部を使用した以外は、実施例1と同様の条件でスポンジロール及び転写ロールを作製した。
【0038】
(実施例5)
可塑剤として、DOA20重量部を使用した以外は、実施例1と同様の条件でスポンジロール及び転写ロールを作製した。
【0039】
(実施例6)
可塑剤として、DOP5重量部およびDOA5重量部を使用した以外は、実施例1と同様の条件でスポンジロール及び転写ロールを作製した。
【0040】
(実施例7)
可塑剤として、DOP10重量部およびDOA10重量部を使用した以外は、実施例1と同様の条件でスポンジロール及び転写ロールを作製した。
【0041】
(実施例8)
可塑剤として、DOP4重量部およびMezamol(アルキルスルフォン酸フェニルエステル;Bayer社製)1重量部を使用した以外は、実施例1と同様の条件でスポンジロール及び転写ロールを作製した。
【0042】
(実施例9)
可塑剤として、DOP8重量部およびMezamol2重量部を使用した以外は、実施例1と同様の条件でスポンジロール及び転写ロールを作製した。
【0043】
(比較例1)
可塑剤を使用しない以外は、実施例1と同様の条件でスポンジロールを作製した。
【0044】
(比較例2、3)
可塑剤としてアデカサイザーRS−107(アジピン酸エーテルエステル;旭電化工業社製)を10又は20重量部用いた以外は、実施例1と同様の条件でスポンジロールを作製した。
【0045】
(比較例4、5)
可塑剤としてアデカサイザーPN9302(安息香酸ポリエステル;旭電化工業社製)を10または20重量部用いた以外は、実施例1と同様の条件でスポンジロール及び転写ロールを作製した。
【0046】
(試験例1):スポンジロールの環境依存性評価
上記の各実施例および比較例のスポンジロールについて、低温低湿(LL:10℃×30%)、常温常湿(NN:23℃×55%)、高温高湿(HH:30℃×85%)の各環境下に保持したときのロールの電気抵抗値を測定した。なお、測定は、ロールをSUS304板からなる電極部材の上に載置し、芯金に500g荷重をかけた状態で、芯金と電極部材との間の抵抗値をULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A(株式会社アドバンテスト製)を用いて測定した。この結果を表1に示す。また、実施例1〜3と比較例1の結果をグラフにしたものを図2に、各比較例をグラフにしたものを図3に示す。
【0047】
(試験例2):転写ロールの環境依存性評価
上記の実施例1〜3及び比較例4、5の転写ロールについて、試験例1と同様に各環境下に保持したときのロールの電気抵抗値を測定した。また、高温高湿環境下に保持した時のロールをLBP実機に搭載し、絵だし評価を行った。この結果を表2に示す。また、図4には実施例1、2及び比較例4、5の転写ロールの電気抵抗値の測定結果をグラフにしたものを示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
表1に示すように、いずれも高抵抗の可塑剤であるDOPを用いた場合、可塑剤無添加の比較例1と比較すると低温低湿環境下、常温常湿環境下での抵抗値は部数によりあまり変化しないが、高温高湿環境下では部数による抵抗値の上昇が確認された。また、同様に電気抵抗値が1011Ω以上である可塑剤を用いた実施例4、5や2種以上の高抵抗の可塑剤を混合した実施例6〜9においても同様の傾向が確認された。
【0051】
これに対し、図3に示すように、低抵抗の可塑剤であるアデカサイザーRS−107及びPN9302を用いた比較例2〜5のスポンジロールでは、全環境において、可塑剤の部数の増加にともない抵抗値の低下が確認された。
【0052】
なお、可塑剤としてDOPを30部より多く添加した場合においては、高温高湿環境下における抵抗値の上昇が確認されたものの、セット性の低下が見られた。
【0053】
表2において、実施例1、2、3及び比較例4、5の転写ロールでは、それぞれのスポンジロールに比べ、環境変動が低減されることが確認されたが、スポンジロール自体の高温高湿環境下での電気抵抗値の上昇の効果は明確ではなくなった。
【0054】
しかしながら、画像評価においては、電気抵抗値が大きく変わらないにも関わらず、実施例のみが良好な結果が得られた。これは、スポンジの電気抵抗値の差によるものであると考えられる。実施例と比較例を比較した場合、高抵抗の可塑剤を用いて高温高湿環境の電気抵抗値を高抵抗化している実施例に比べ、比較例では上記の効果による高抵抗化がなされていない。そのため、比較例においては過電流による画像不良が発生したと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例に係る導電性ロールの断面図である。
【図2】試験例1の測定結果を示す図である。
【図3】試験例1の測定結果を示す図である。
【図4】試験例2の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
11 芯金
12 導電性発泡弾性層
13 導電性弾性層
13a 表面処理層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金上に、導電性発泡弾性層と、この導電性発泡弾性層の周囲に設けられた導電性弾性層とを具備する導電性ロールにおいて、前記導電性発泡弾性層が、エピクロルヒドリンゴム及びアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)の発泡体からなると共に、高抵抗の可塑剤をゴム基材100重量部に対して10重量部以上40重量部未満含有し、且つ前記導電性弾性層が、活性水素を含有するゴム基材からなると共に少なくともイソシアネート成分を含有する表面処理液で表面処理された表面処理層を具備することを特徴とする導電性ロール。
【請求項2】
請求項1において、前記可塑剤が、1011Ω以上の電気抵抗値を有することを特徴とする導電性ロール。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記導電性弾性層が、エピクロルヒドリンゴムとNBRからなることを特徴とする導電性ロール。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記表面処理液は、イソシアネート成分と共に、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも一種のポリマーを含有したものであることを特徴とする導電性ロール。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記表面処理液は、イソシアネート成分と共に、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも一種のポリマーと、カーボンブラックとを含有したものであることを特徴とする導電性ロール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−11426(P2006−11426A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156381(P2005−156381)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000242426)北辰工業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】