説明

導電性ロール

【課題】加工性に優れており、トナーに適度な帯電性を付与できるとともに圧縮永久歪みを低減して他の部材との加圧接触によるひずみを防止でき長期に渡り使用可能な導電性ロールを提供する。
【解決手段】最外層が加硫ゴム組成物で形成されてなる導電性ロールであって、前記加硫ゴム組成物はゴム成分としてエピクロルヒドリンゴムおよびクロロプレンゴムを含み、さらに前記ゴム成分100質量部に対してチオウレア系加硫剤およびN−シクロヘキシルチオフタルイミドからなる架硫遅延剤をそれぞれ0.2〜5質量部含むことを特徴とする導電性ロール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ロールに関し、詳しくは電子写真装置に装着される現像ロール、クリーニングロール、帯電ロールまたは転写ロール等として用いられる導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による印刷技術においては、高速化、高画質化、カラー化、小型化といった改良が進み、広く世の中に普及してきた。これら改良において鍵となるのがトナーである。前記あらゆる要求を満たすために必要となるのが、トナーの微細化と、トナー粒径の均一化、トナーの球形化である。トナーの微細化については、トナー粒径が10μm以下、さらには5μm以下のものも出てきている。トナーの球形化については、真球度が99%を上回るものまで出てきている。さらに、高画質化を求めて、従来の粉砕トナーに代わり重合トナーが主流となりつつある。かかる重合トナーは、デジタル情報を印刷物にする際にドットの再現性が非常によく高品質な印刷物が得られる。
【0003】
このようなトナーの微細化および均一化・球形化、重合トナーへの移行に対応して、レーザービームプリンター等の電子写真装置の画像形成機構においてトナーに高い帯電性を付与しかつトナーを付着させることなく効率的に感光体に搬送させることができる現像ロールとして導電性ロールが特に有用であるが、さらに、この導電性ロールの高性能な機能を製品の使用寿命の最後まで維持させることが求められる。
【0004】
特開2004−170845号公報(特許文献1)には、誘電正接調整用充填剤を配合して誘電正接を0.1〜1.5としている導電性ゴムロールが記載されている。当該導電性ゴムロールを用いれば、トナーに適切でかつ高い帯電を付加でき、結果として高画質な初期画像が得られる。さらに、トナーの帯電量が印刷枚数を経ても低下しにくく、結果として高画質が維持できる。
しかし、発明の具体的態様である実施例ではイオン導電性ゴムであるエピクロルヒドリンゴムのみを使用しているのでトナーの帯電性が十分でなく、さらに圧縮永久歪みが約5%以上で十分な耐荷重性があるとは言えない。
【0005】
そこで、トナーに適度な帯電性を付与できるようにし、圧縮永久歪みを低減して耐荷重性を向上させ、より長期的な使用が可能となるよう改善する余地がある。
特に、現像ロールではトナーの帯電性が低ければ十分な量のトナーを搬送できず、逆にトナーの帯電性が多すぎれば静電気力(クーロン力)により逆の電荷を持つ感光体に搬送することができないため、トナーに適度な帯電性を付与できることは重要である。また、現像ロールはトナーボックスの中で現像ブレードと呼ばれる平板で強く圧縮されながら激しくこすられるために圧縮してひずみにくいことが要求される。特に、カラー化によりプリンターが小型化されるとローラには小さくまた強く圧縮される構造が求められる。そのため、より圧縮に対してひずみが小さい性能が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−170845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、加工性に優れており、トナーに適度な帯電性を付与できるとともに圧縮永久歪みを低減して他の部材との加圧接触によるひずみを防止でき長期に渡り使用可能な導電性ロールを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、最外層が加硫ゴム組成物で形成されてなる導電性ロールであって、
前記加硫ゴム組成物は、
ゴム成分として、エピクロルヒドリンゴムおよびクロロプレンゴムを含み、
前記ゴム成分100質量部に対してチオウレア系加硫剤を0.2〜5質量部と、N−シクロヘキシルチオフタルイミドからなる加硫遅延剤を0.2〜5質量部含むことを特徴とする導電性ロールを提供している。
【0009】
本発明者らは前記特許文献に記載の発明を検討した結果、加工性や機械特性の安定性の観点から主に硫黄を用いた加硫を行ってきたが、硫黄による加硫では十分な加硫密度が得られないケースが多く、また加硫温度条件などで加硫密度にばらつきが生じるケースもあった。そして、このことが原因で十分な圧縮永久歪みが得られていなかったことを知見した。
かかる知見に基づき本発明者らは試行錯誤の検討を重ねた結果、加硫剤としてチオウレア系加硫剤を用い、その配合量を前記ゴム成分100質量部に対して0.2〜5質量部とすれば、エピクロルヒドリンゴムとクロロプレンゴムとが短い結合で架橋することにより、加硫密度を上げることができ、ひいては圧縮永久歪みを極めて小さくできることを知見した。
しかし、加硫剤としてチオウレア系加硫剤を用いた場合、保管安定性(スコーチ)が短くなり、加工性が低減するという問題が新たに生じた。かかる問題を解決すべく検討した結果、加硫遅延剤としてN−シクロヘキシルチオフタルイミドを用いると共に、前記ゴム成分100質量部に対して0.2〜5質量部配合することにより加工性と圧縮永久歪み特性とを両立させることができた。
【0010】
最外層を構成する加硫ゴム組成物には、ゴム成分としてエピクロルヒドリンゴムおよびクロロプレンゴムを含む。害エピクロルヒドリンゴムおよびクロロプレンゴムの混合比率は特に限定されないが、エピクロルヒドリンゴム:クロロプレンゴム=1:9〜9:1が好ましく、3:7〜7:3がより好ましい。いずれかのゴムの配合割合がこれよりも小さくなると、そのゴムを配合することによる特性が得られにくくなるからである。
なお、ゴム成分に、NBR、EPDM等を含めてもよい。
【0011】
前記加硫ゴム組成物にはチオウレア系加硫剤が前記ゴム成分100質量部に対して0.2〜5質量部の割合で含まれる。
チオウレア系加硫剤の配合量が0.2質量部より少ないと加硫密度が上がらず圧縮永久歪みを改善しにくい。また、チオウレア系加硫剤の添加量を増やし加硫密度を上げるほど電気抵抗値を下げることができるため、0.2質量部より少ないと電気抵抗値を下げにくい。一方、5質量部より多いと導電性ロールからチオウレア系加硫剤がブルームし感光体を汚染したり、破断伸び等の機械的物性が極度に悪化しやすいためである。
【0012】
前記加硫ゴム組成物には、N−シクロヘキシルチオフタルイミドからなる加硫遅延剤が前記ゴム成分100質量部に対して0.2〜5質量部の割合で含まれる。
該加硫遅延剤の配合量が0.2質量部より少ないと加工性を改善しにくい。一方、5質量部より多いと導電性ロールから加硫遅延剤がブルームし感光体を汚染したり、破断伸び等の機械的物性が極度に悪化しやすいためである。
【0013】
本発明の導電性ロールは、上述の加硫ゴム組成物で形成されてなる最外層を少なくとも備えている。本発明の導電性ロールは、最外層となる加硫ゴム層1層のみから構成されていても良いし、組成の異なる2層以上から構成されていても良い。なかでも、加硫ゴム層1層のみからなる構成の方が、製造が簡便で生産効率の見地からは好ましい。
さらに、本発明の導電性ロールは、円柱形状の芯金を圧入するための中空部を通常は備えている。
【0014】
最外層表面には紫外線照射による酸化膜が形成されていることが好ましい。
紫外線照射による酸化膜形成は、処理時間が早く、コストも低いことから好ましく行われる。酸化膜を形成することにより表面の摩擦係数を低減することができるとともに、加硫遅延剤の残渣を紫外線により分解することも可能である。また、酸化膜が誘電層となり導電性ロールの誘電正接を低減でき、その結果トナーに帯電性をより効率よく付加でき、付加した帯電性を維持することができるようになる。
そのほか、オゾン曝露等の公知の方法に従って酸化膜を形成してもよい。
【0015】
本発明の導電性ロールは、レーザービームプリンター、インクジェットプリンター、複写機、ファクシミリまたはATMなどのOA機器における電子写真装置の画像形成機構に用いられる導電性ロールとしていることが好ましい。
なかでも、非磁性1成分トナーを搬送するための現像ロール、トナー供給ロール、クリーニングロール、帯電ロール、転写ロール等のトナー搬送部、トナーと接触する部材に用いられることが好ましい。この場合、最外層が加硫ゴム組成物で形成されているので電気特性の均一性や設計値の繰り返し再現性を低コストで容易に得ることができる。
【0016】
本発明の導電性ロールは、特に、電子写真装置の画像形成機構において非磁性1成分トナーを用いた現像装置に用いられる現像ロールとして好適に用いられる。電子写真装置の画像形成機構における現像方式としては感光体と現像ロールの関係で分類すると接触式または非接触式に大別されるが、本発明の導電性ロールはいずれの方式にも利用できる。なかでも本発明の導電性ロールを現像ロールとして用いる場合は感光体に概接触していることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の導電性ロールは、エピクロルヒドリンゴムおよびクロロプレンゴムを含むゴム成分に、前記チオウレア系加硫剤およびN−シクロヘキシルチオフタルイミドからなる加硫遅延剤をそれぞれ0.2〜5質量部を含むものとしているため、圧縮永久歪みが5%以下と非常に低く、他の部材との加圧接触によるひずみを防止でき長期に渡り安定した性能を発揮できる。
本発明の導電性ロールはトナーに適度な帯電性を付与できる。その結果、例えば本発明の導電性ロールを現像ロールとして用いた場合は適度な印刷濃度を保ち続けることができる。
さらに、本発明の導電性ロールはスコーチ時間tが5以上であり、加工性が改善され、押出成形や射出成形がしやすい。また、成形がしやすいことから外径精度の向上および表面粗さの低減などの成形精度の改善を図ることができる。
かつ、本発明の導電性ロールは、エピクロルヒドリンゴムを含むことにより、導電性ロールの電気抵抗を所定の抵抗値にコントロールしやすい。さらに、エピクロルヒドリンゴムは主鎖に二重結合を持たないため、導電性ロールの耐候性、耐オゾン性、耐熱性、耐薬品性を向上させることができる。また、上記クロロプレンゴムを含むことにより導電性ロールの強度も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の導電性ロールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、導電性ローラ10は円筒形状のゴム層1の1層からなり、その中空部には円柱形状の芯金(シャフト)2が圧入され、ゴム層1と芯金2とは接着剤で接合されている。
円筒形状のゴム層1は肉厚を0.5〜15mm、好ましくは3〜15mmとしている。該肉厚を0.5〜15mmとしているのは、前記範囲より小さいと適当なニップを得にくく、前記範囲より大きいと部材が大きすぎて小型軽量化を図りにくいからである。さらに、ゴム層1の表層部分はゴムが紫外線照射により酸化された酸化膜とされている。
芯金2は、アルミニウム、アルミニウム合金、SUSもしくは鉄等の金属製、またはセラミック製等としている。
【0020】
ゴム層1は加硫ゴム組成物で形成されている。
前記加硫ゴム組成物は、ゴム成分として(A)エピクロルヒドリンゴムおよび(B)クロロプレンゴムを含む。両者の配合割合は同量(1:1)であることが好ましい。
エピクロルヒドリン系共重合体としては、例えば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体等が挙げられる。
なかでも、エピクロルヒドリン系共重合体としてはエピクロルヒドリン(EP)−エチレンオキサイド(EO)共重合体、エピクロルヒドリン(EP)−エチレンオキサイド(EO)−アリルグリシジルエーテル(AGE)共重合体、エピクロルヒドリン(EP)−アリルグリシジルエーテル(AGE)共重合体を用いることが好ましい。
【0021】
エピクロルヒドリン系共重合体としてはエチレンオキサイドを含む共重合体がより好ましく、エチレンオキサイド含量が30モル%以上95モル%以下、好ましくは55モル%以上95モル%以下、さらに好ましくは60モル%以上80モル%以下である共重合体が特に好適である。エチレンオキサイドは体積固有抵抗値を下げる働きがあるが、エチレンオキサイド含量が30モル%未満であるとその抵抗値の低減効果が小さい。一方、エチレンオキサイド含量が95モル%を超えると、エチレンオキサイドの結晶化が起こり分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆に抵抗値が上昇する傾向があると共に、加硫ゴムの硬度上昇や加硫前のゴムの粘度上昇といった問題が生じやすい。
【0022】
なかでも、エピクロルヒドリン系共重合体としては、エピクロルヒドリン(EP)−エチレンオキサイド(EO)共重合体を用いることが特に好ましい。前記共重合体中のEO:EPの好ましい含有比率はEO:EP=30〜80モル%:20〜70モル%であり、さらに好ましい比率はEO:EP=50〜80モル%:20〜50モル%である。
【0023】
また、エピクロルヒドリン(EP)−エチレンオキサイド(EO)−アリルグリシジルエーテル(AGE)共重合体も好適に用いることができる。前記共重合体中のEO:EP:AGEの好ましい含有比率はEO:EP:AGE=30〜95モル%:4.5〜65モル%:0.5〜10モル%であり、さらに好ましい比率はEO:EP:AGE=60〜80モル%:15〜40モル%:2〜6モル%である。
【0024】
エピクロルヒドリン系共重合体の配合量はゴム成分の総質量100質量部に対し1質量部以上100質量部未満の範囲で適宜選択できる。なかでも、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。
【0025】
クロロプレンゴムはクロロプレンの重合体で乳化重合により製造されるが、分子量調節剤の種類によりイオウ変性タイプ、非イオウ変性タイプに分類される。
イオウ変性タイプは、イオウとクロロプレンを共重合したポリマーをチウラムジスルフィド等で可塑化し、所定のムーニー粘度に調整するものである。非イオウ変性タイプとしては、メルカプタン変性タイプまたはキサントゲン変性タイプ等が挙げられる。メルカプタン変性タイプは、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンまたはオクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を分子量調節剤として使用するものである。また、キサントゲン変性タイプはアルキルキサントゲン化合物を分子量調節剤として使用するものである。
また、クロロプレンゴムは生成クロロプレンゴムの結晶加速度により、結晶化速度が中庸のタイプ、結晶化速度が遅いタイプおよび結晶化速度が早いタイプに分けられる。
本発明においてはいずれのタイプを用いてもよいが、非イオウ変性で結晶化速度が遅いタイプが好ましい。
【0026】
クロロプレンゴムの配合量はゴム成分の総質量100質量部に対し1質量部以上100質量部未満の範囲で適宜選択できる。なかでも、帯電性付与効果等を鑑みれば、クロロプレンゴムが5質量部以上含まれていることが好ましい。さらに、ゴムの均一性の観点からクロロプレンゴムが10質量部以上含まれていることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。
【0027】
前記加硫ゴム組成物は加硫剤として(C)チオウレア系加硫剤を含む。
チオウレア系加硫剤としてはテトラメチルチオウレア、トリメチルチオウレア、エチレンチオウレアおよび(C2n+1NH)C=S(式中、nは1〜10の整数を表す。)で示されるチオウレア等が挙げられる。なかでも、エチレンチオウレアを用いることが好ましい。
チオウレア系加硫剤の配合量は前記ゴム成分100質量部に対して0.2〜5質量部であり、0.5〜5質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることがより好ましい。
【0028】
さらに、前記加硫ゴム組成物は(D)N−シクロヘキシルチオフタルイミドからなる加硫遅延剤を含む。
前記加硫遅延剤としては、無水フタル酸、N−ニトロソジフェニルアミン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンなどを用いることもできるが、本発明では、前記N−シクロヘキシルチオフタルイミドを用いている。
加硫遅延剤の配合量は前記ゴム成分100質量部に対して0.2〜5質量部であり、0.5〜5質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることがより好ましい。
【0029】
加硫ゴム組成物には本発明に反しない限り上記必須成分以外の他の成分が含まれていてもよい。
他の成分としては、加硫促進剤や加硫促進助剤、受酸剤、充填剤、軟化剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、発泡剤、気泡防止剤等の添加剤を適宜配合してもよい。しかし、軟化剤はブリードによるトナーや感光体などの他の部材のわずかな汚染をも防ぐため配合しない方が好ましい。また、酸化防止剤を配合する場合は所望により施される表面の酸化膜の形成が進むよう、その配合量を適宜選択することが好ましい。
【0030】
加硫剤の種類に応じて加硫促進剤や加硫促進助剤をさらに配合してもよい。
加硫促進剤としては、消石灰、マグネシア(MgO)もしくはリサージ(PbO)等の無機促進剤や以下に記す有機促進剤を用いることができる。有機促進剤としては、ジ−オルト−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1−オルト−トリルビグアニドもしくはジカテコールボレートのジ−オルト−トリルグアニジン塩等のグアニジン系;2−メルカプト−ベンゾチアゾールもしくはジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドもしくはジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系;チオウレア系等が挙げられ、これらを単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。
加硫促進剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.3質量部以上3質量部以下がより好ましい。
【0031】
加硫促進助剤としては、亜鉛華等の金属酸化物;ステアリン酸、オレイン酸もしくは綿実脂肪酸等の脂肪酸;その他従来公知の加硫促進助剤が挙げられる。
加硫促進助剤の添加量は、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、2質量部以上8質量部以下がより好ましい。
【0032】
加硫ゴム組成物には塩素原子を有するエピクロルヒドリンゴムが含まれるので、受酸剤を配合することが好ましい。受酸剤を配合することにより、ゴム加硫時に発生する塩素系ガスの残留および他の部材の汚染を防止することができる。
受酸剤としては酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、分散性に優れていることからハイドロタルサイト類または酸化マグネシウムを用いることが好ましく、特にハイドロタルサイトを用いることがより好ましい。さらに、これらに酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用することもでき、これにより高い受酸効果が得られ、他の部材の汚染をより確実に防止することができる。
受酸剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対し1質量部以上10質量部以下、好ましくは1質量部以上5質量部以下としている。加硫阻害および他の部材の汚染を防止する効果を有効に発揮させるため受酸剤の配合量は1質量部以上であることが好ましく、硬度の上昇を防ぐため受酸剤の配合量は10質量部以下であることが好ましい。
【0033】
前記充填剤としては、酸化亜鉛、シリカ、カーボン、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムまたは水酸化アルミニウム等の粉体を挙げることができる。充填剤を配合することにより機械的強度等を向上させることができる。
充填剤の添加量はゴム成分100質量部に対し60質量部以下とすることが好ましく、50質量部以下とすることがより好ましく、30質量部以下とすることがさらに好ましい。
【0034】
前記カーボンブラックとしては、粒径18nm以上80nm未満の粒径小の「高導電性カーボンブラック」と、粒径80nm以上500nm未満の粒径大の「弱導電性カーボンブラック」とに大別されるが、本発明においてはいずれを用いてもよい。
カーボンブラックは粒径80nmを境界としてカーボンブラックの導電性に顕著な差異が見られ、加硫ゴム組成物に配合された場合に異なる役割を担う。すなわち、弱導電性カーボンブラックとは粒径が大きくストラクチャーの発達が小さく導電性への寄与が小さいカーボンブラックであり、これを配合することにより導電性を高めることなく分極作用によるコンデンサー的な働きを得ることができ、電気抵抗の均一化を損なうことなく帯電性のコントロールを実現できる。一方、高導電性カーボンブラックは弱導電性カーボンブラックに比べて粒子径が小さくストラクチャーが発達しており導電性への寄与が大きい。そのため、これを配合することにより導電性を高めることができる。例えば現像ロールとして使用した場合にプリンターが高速化され感光体と接触する時間が短くなったりプリンターが小型化して感光体の径が小さくなったりなどして現像ロールと感光体の接触面積が小さくなっても、高い印刷濃度を得ることができる。
【0035】
なかでも、本発明においては粒径18nm以上80nm未満の粒径小の「高導電性カーボンブラック」を用いることが好ましい。粒径18nm以上としているのは、粒径18nm未満のカーボンブラックを用いると、加硫ゴム組成物内部で均一に分散されにくく、分散の悪い部分でトナーの搬送量が不均一となり、画像不良が発生したり、トナーのシール部が破損してトナー漏れが生じたりするおそれがあるからである。
【0036】
図1に示した導電性ロール10の製造方法について、以下に述べる。
加硫ゴム組成物に含まれる成分をニーダ、ロールやバンバリーミキサ等の混合装置を用いて混練り後、ゴム押出機でチューブ状に予備成形し、この予備成形品を加硫する。
加硫時間は、加硫試験用レオメータ(例:キュラストメータ)により最適加硫時間を求めて決めるとよい。なお、他の部材への汚染と圧縮永久歪みを低減させるため、なるべく十分な加硫量を得られる様に条件を設定することが好ましい。具体的に、加硫温度は100〜220℃であることが好ましく、120〜180℃であることがより好ましい。加硫時間は15〜120分間であることが好ましく、30〜90分間であることが好ましい。
【0037】
ついで、加硫工程後に、芯金2を挿入・接着した後、所要寸法にカットし、ゴム層1の表面に鏡面研磨を施す。該鏡面研磨後の表面粗さRaは、0.1〜3.0μmとしている。
ついで、研磨後にロールを水洗いしたあと、所望により、ゴム層1の表面に酸化膜を形成している。酸化膜を形成する場合には、紫外線照射機を用い、ロールと紫外線ランプ間の距離を10cmとして周方向90度毎に紫外線(波長184.9nmと253.7nm)を5分間照射し、ロールを4回回転させることで、ロール全周(360度)に酸化膜を形成している。
【0038】
以上のように製造される本発明の導電性ロール10は下記のような物性を示すことが好ましい。
JIS K6262に記載の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久歪み試験方法」の規定に従い、圧縮率25%、測定温度70℃、測定時間24時間で測定した圧縮永久歪み率Csが5%以下であることが好ましい。
JIS K6300−1に記載の「ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」の規定に従って、L型ローターを使用し測定温度130℃で測定したスコーチタイム時間tが5以上であることが好ましい。
後述の実施例に記載の方法で測定したトナー帯電量が30〜50(μC/g)であることが好ましい。
【0039】
「実施例および比較例」
表1に記載の配合材料(表中の数値は質量部を示す。)をバンバリーミキサで混練り後、ゴム押出機にて外径φ22mm、内径φ9〜9.5mmのチューブ状に押し出し加工を施した。該チューブを加硫用のφ8mmシャフトに装着し、加硫缶にて160℃で1時間加硫を行った後、導電性接着剤を塗布したφ10mmのシャフトに装着して160℃のオーブン内で接着した。その後、端部をカット成形し、円筒研磨機でトラバース研磨、ついで仕上げ研磨として鏡面研磨を施し、表面粗さRzが3〜5μmになるように仕上げた。なお表面粗さRzはJIS B 0601(1994)に従って測定した。その結果、φ20mm(公差0.05)の半導電性ロールを得た。
【0040】
また、圧縮永久歪みの評価においては、押し出し加工を施した加硫ゴム組成物と同ロットの加硫ゴム組成物を抜き取り、JIS K6300に従い圧縮永久歪み測定用の形状に160℃で60分間プレス加工して試験片を得た。
【0041】
ロール表面を水洗いした後、紫外線照射を行い表層部分に酸化膜を形成した。これは紫外線照射機(セン特殊光源(株)製「PL21−200」)を用い、ロールと紫外線ランプ間の距離を10cmとして周方向90度毎に紫外線(波長184.9nmと253.7nm)を5分間照射することによって行い、ロールを90度ずつ4回回転させてロール全周(360度)に酸化膜を形成させた。
【0042】
【表1】

【0043】
各実施例1〜8および比較例1〜6の導電性ロールにおける構成成分としては以下のものを用いた。
(a)ゴム成分
・クロロプレンゴム(CR);昭和電工(株)製「ショープレンWRT」
・エピクロルヒドリン系共重合体(ECO);ダイソー(株)製「エピクロマーD」
EO(エチレンオキサイド)/EP(エピクロルヒドリン)=61mol%/39m
ol%
・エピクロルヒドリン系共重合体(GECO);ダイソー(株)製「エピオンON301」EO(エチレンオキサイド)/EP(エピクロルヒドリン)/AGE(アリルグリシジルエーテル)=73mol%/23mol%/4mol%
【0044】
(b)受酸剤
・ハイドロタルサイト;協和化学工業(株)製「DHT−4A−2」
(c)フィラー
・酸化亜鉛;酸化亜鉛2種(三井金属(株)製)
・カーボンブラック電気化学工業(株)製「デンカブラック」(平均粒径35nm)
(d)加硫剤および加硫促進剤
・加硫剤1;硫黄(鶴見化学工業(株)製、粉末硫黄)
・加硫促進剤1;ジベンゾチアジルスルフィド(大内新興化学工業(株)製「ノクセラーDM(商品名)」)
・加硫促進剤2;テトラメチルチウラムモノスルフィド(大内新興化学工業(株)製「ノクセラーTS(商品名)」)
・加硫剤2;エチレンチオウレア(川口化学工業(株)製「アクセル22−S」)
・加硫促進剤3;ジ−オルト−トリルグアニジン(大内新興化学工業(株)製「ノクセラーDT(商品名)」)
(e)加硫遅延剤
N−シクロヘキシルチオフタルイミド(東レ(株)製「リターダーCTP」
【0045】
前記各実施例および比較例の導電性ロールについて下記の特性測定を行った。その結果を上記表に示した。
【0046】
「圧縮永久歪みの測定」
上記の様に作製した圧縮永久歪み測定用試験片について、JIS K6262に記載の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験方法」の規定に従い、測定温度70℃、測定時間24時間、圧縮率25%で測定した。具体的には、円柱状の試験片に厚さの25%に相当する圧縮歪みを与えて70℃で24時間保持した後試験片を取り出し、30分後の厚さを測定する。得られた値から次式に従い圧縮永久歪み率Cs(%)を算出することができる。
Cs(%)={(t−t)/(t−t)}×100
(式中、tは試験片の元の厚さ(mm)を、tはスペーサーの厚さ(mm)を、tは試験片を圧縮装置から取り出し、30分後の厚さ(mm)を表す。)
圧縮永久歪みとはゴム材料の加熱圧縮による永久歪みのことをいい、この値が小さいほど長時間圧縮したときに復元する力が高いことを表す。一般的に圧縮率及び試験温度が高いほど永久歪みは大きくなる。本測定における条件下での圧縮永久歪み率Csが5%以下であれば、現像ローラ等の画像形成機構に用いられる部材に対して要求されている性能を十分に満たすものである。
【0047】
「スコーチ時間の測定」
JIS K6300−1に記載の「ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」の規定に従って、L型ローターを使用し測定温度130℃で測定した。ダイを閉じてからムーニーの読みがムーニー粘度の最低値Vmより5M上昇する時間tにて評価した。スコーチ時間tが短いほど押出加工性が悪くなり、具体的には5未満の場合は押出加工性が悪く実用性に乏しい。
【0048】
「帯電性の評価」
市販のレーザープリンター(非磁性1成分のプラス帯電トナーを使用した市販のプリンターで、印刷スピード24枚/分、トナー推奨印刷枚数約7,000枚相当。)に実施例および比較例の各導電性ロールを現像ロールとして装着し、1%印字にて100枚印刷後に黒ベタ画像を印刷し、引き続いて102枚目に白ベタ画像(白紙)を印刷し、印刷後レーザープリンターからカートリッジをはずし、カートリッジに装着されている現像ロールに対して上方から吸引型帯電量測定機(トレック社製「Q/M METER Model 210HS−2」)によりトナーを吸引し、帯電量(μC)を測定した。得られた値から次式に基づきトナー帯電量(μC/g)を算出した。
トナー帯電量(μC/g)=帯電量(μC)/トナー重量(g)
良好なトナー搬送性を示すためには、トナー帯電量が30〜50(μC/g)であることが好ましい。
【0049】
「跡残り試験」
上記のように帯電性の評価を行ったカートリッジを温度50℃、湿度55%のオーブン内で24時間放置した後、再びレーザープリンターに装着し、50%のハーフトーン画像を出力し、ブレードとの圧縮跡が画像に出力されるか目視にて確認した。その結果、ブレード跡がはっきりと印刷される場合を「×」と、ブレード跡がうっすらと印刷される場合を「△」と、ブレード跡が印刷されない場合を「○」と評価した。
【0050】
「総合評価」
◎:加工性、跡残り性ともに良好で、実用性に優れると共に、帯電性も良好で高画質が得られる。
○:加工性、跡残り性が共に良好で、実用用に優れれる。
△:跡残り性が悪いが(圧縮永久歪みが5以下)、加工性が良好であるため、機械設定によっては実行できる可能性がある。
×:加工性が悪いため、実用できない。
なお、スコーチ時間が5未満では加工性(押し出し成形)が悪く量産できないため、評価は前記「×」とした。
【符号の説明】
【0051】
1 ゴム層
2 芯金
10 導電性ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層が加硫ゴム組成物で形成されてなる導電性ロールであって、
前記加硫ゴム組成物は、
ゴム成分として、エピクロルヒドリンゴムおよびクロロプレンゴムを含み、
前記ゴム成分100質量部に対してチオウレア系加硫剤を0.2〜5質量部と、N−シクロヘキシルチオフタルイミドからなる加硫遅延剤を0.2〜5質量部含むことを特徴とする導電性ロール。
【請求項2】
JIS K6262に従って、測定温度70℃、測定時間24時間、圧縮率25%で測定した圧縮永久歪みの大きさが5%以下であり、JIS K6300−1に従って、L型ローターを使用し測定温度130℃で測定したスコーチ時間tが5以上である請求項1に記載の導電性ロール。
【請求項3】
電子写真装置の画像形成機構において非磁性1成分トナーを用いた現像装置に用いられる現像ロールである請求項1または請求項2に記載の導電性ロール。
【請求項4】
円柱形状の芯金を圧入するための中空部を有し、かつ最外層の表面には紫外線照射による酸化膜が形成されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の導電性ロール。

【図1】
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【公開番号】特開2010−160285(P2010−160285A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1972(P2009−1972)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】