説明

導電性ロール

【目的】 導電層における均一な帯電性と、充分な帯電量の付与を目的とする。
【構成】 芯金10の外周に、下記の(A)成分および(B)成分が含有分散された導電性組成物を用いて導電層11を形成する。
(A)導電性粉末。
(B)帯電制御剤の含浸された多孔質充填剤。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、電子写真複写機,フアクシミリ,プリンター等の現像ロール,帯電ロール,転写ロール等に用いられる導電性ロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子写真複写機の複写方式は、一般に、図3に示すように、感光ドラム1の外周面を一様に帯電させ、ついで被複写体の被複写像を介してその外周面を露光することにより、上記外周面上に静電潜像を形成する。つぎに、上記感光ドラム1と対設されている現像ロール2の上に、トナー供給装置(図示せず)から現像剤(トナー)を供給し、現像ロール2の外周面と層形成ブレード3との間の摩擦力によつてトナーを摩擦帯電させ、これを感光ドラム1の静電潜像に対して電気的吸引力で飛翔させトナー像を形成し、これを複写紙5に転写して定着することにより複写を行うという方法である。上記の電子写真複写機において、上記層形成ブレード3には一般にゴム材料が用いられ、それを電子写真複写機の本体に取り付ける材料として板材4が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そして、上記現像ロール2では、通常、(a)金属のみで形成されたものと、(b)ロール本体が金属製で、その外周に樹脂組成物(またはゴム組成物)等からなる層が形成されたものの2種類があげられる。上記(a)の現像ロール2の素材が金属製であれば、層形成ブレード3等との摩擦によりロール表面粗さを一定に保つことができず、かつ表面に帯電した電荷が逃げてしまうという問題が生じる。また、上記(b)の現像ロール2の本体がアルミニウムやステンレス材等の金属製からなり、そのロール本体の外周に樹脂組成物(またはゴム組成物)等を用いて様々な特性を有した層が形成されているロールは、それぞれ下記に示すような問題を有している。■導電層が形成されている場合は、導電層表面に帯電した電荷が逃げてしまいトナー等の帯電性が悪い、■半導電層が形成されている場合は、帯電そのものは有利であるが、半導電層形成時に半導電性(電気抵抗)を一定値に制御するのが困難である、■絶縁層が形成されている場合、摩擦帯電により生じた電荷は逃げにくく、したがつて電荷が多くたまり過ぎるため、トナーが現像ロールに付着して感光ドラム1に飛翔しにくい。すなわち、トナー等の帯電を一定に制御できない等の問題を有している。
【0004】したがつて、上記の問題を解決するために、一般的には、樹脂組成物(またはゴム組成物)中に帯電制御剤を分散含有させることにより帯電性の制御が行われる。しかしながら、上記のように単に帯電制御剤を分散含有させるのみでは、帯電性の制御効果が不充分である。例えば、帯電制御剤が広く分散しすぎると全く効果が得られず、逆に分散性が悪いとロール表面に滲み出てくるという問題が生じる。このようなことから、帯電制御剤の適正な分散制御が望まれているが、実際には帯電制御剤の分散制御は非常に困難であるというのが実情である。
【0005】この発明は、このような事情に鑑みなされたもので、充分な帯電量が得られ、しかも均一な帯電性を備えた導電性ロールの提供をその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、この発明の導電性ロールは、軸体の外周に、導電層が形成された導電性ロールであつて、上記導電層が、有機高分子系バインダー樹脂中に、下記の(A)成分および(B)成分を分散含有させた導電性組成物によつて形成されているという構成をとる。
(A)導電性粉末。
(B)帯電制御剤の含浸された多孔質充填剤。
【0007】
【作用】すなわち、本発明者らは、現像ロール等の導電性ロールにおいて、その外周面に形成される導電層の均一な帯電性および帯電量を向上させるに一連の研究を重ねた。その結果、有機高分子系バインダー樹脂中に、帯電制御剤を含浸した多孔質充填剤を分散含有させた導電性組成物を用いて導電層を形成すると、均一な帯電性および充分な帯電量が得られることを見いだしこの発明に到達した。
【0008】つぎに、この発明を詳しく説明する。
【0009】この発明の導電性ロールは、軸体と、その外周に形成される導電層とから構成されている。
【0010】上記軸体としては、特に限定するものではなく、金属製の中実体からなる芯金や、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体が用いられる。
【0011】また、上記軸体の外周に沿つて形成される導電層は、有機高分子系バインダー樹脂中に、導電性粉末(A成分)と、帯電制御剤の含浸された特殊な多孔質充填剤(B成分)を分散含有させた導電性組成物を用いて形成されており、その厚みは50〜300μmに設定することが好適である。
【0012】上記有機高分子系バインダー樹脂としては、特に限定するものではなく、目的に応じて適宜選択し用いられるが、なかでもポリアミド樹脂等を用いるのが好ましい。
【0013】上記導電性粉末(A成分)としては、カーボンブラツク,c−ZnO等の金属酸化物粉末等があげられる。なお、上記「c−」とは導電性を有することを意味する。そして、導電性粉末(A成分)の含有割合は、導電性組成物中5〜30体積%の範囲に設定するのが好ましい。
【0014】また、上記導電性粉末(A成分)とともに用いられる特殊な多孔質充填剤(B成分)は、多孔質充填剤の孔に帯電制御剤が含浸されたものである。上記多孔質充填剤としては、セルロースパウダー、木粉、セピオライト、シリコンパウダー(油吸収性)、ポリアクリル酸塩、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等の吸水性および吸油性樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは併せて用いられる。そして、上記多孔質充填剤は、その粒径が20〜200μmの範囲で、かつ空隙率20〜90%のものを用いるのが好ましい。
【0015】上記多孔質充填剤に含浸される帯電制御剤としては、トナーをマイナス帯電化させる場合には、ニグロシン系染料等の電子供与性染料,アルコキシ化アミン,第四級アンモニウム塩,リンおよびタングステン単体およびこれらの化合物,モリブデン酸キレート顔料,フツ素系活性剤,疎水性シリカ,アミノ基等の塩基性基を有するポリマー等があげられる。また、トナーをプラス帯電化させる場合には、モノアゾ染料の金属錯体塩等の電子受容性染料、電子受容体の有機錯体、塩素化ポリオレフイン、塩素化ポリエステル、酸基過剰のポリエステル、銅フタロシアンのスルホニルアミン、ナフテン酸金属塩、脂肪酸の金属塩、脂肪酸石鹸、カルボキシル基,ニトロ基を有するポリマー等があげられる。
【0016】上記帯電制御剤の含浸された多孔質充填剤は、一般的なカツプリング処理法と同様にして作製することができる。例えば、多孔質充填剤を高速撹拌しながら溶媒〔メタノール,メチルエチルケトン(MEK)等の蒸発しやすいものまたは水等〕に溶かした帯電制御剤を必要量添加することにより作製することができる。この際、多孔質充填剤の内部まで含浸させるには過剰に加える必要がある。
【0017】このような帯電制御剤の含浸された特殊な多孔質充填剤(B成分)の含有割合は、有機高分子系バインダー樹脂100重量部(以下「部」と略す)に対して5〜50部の範囲に設定するのが好ましい。すなわち、特殊な多孔質充填剤の含有割合が5部未満では帯電制御剤の充分な効果が得られず、逆に50部を超えると多孔質充填剤の配合される樹脂組成物の電気抵抗が高くなつてしまつたり、帯電が上がりすぎる等の傾向がみられるからである。
【0018】なお、上記導電性組成物には、上記各成分以外に必要に応じて分散剤等が適宜配合される。
【0019】この発明の導電性ロールは、上記成分を用い例えばつぎのようにして製造することができる。すなわち、前記有機高分子系バインダー樹脂,導電性粉末,帯電制御剤の含浸された多孔質充填剤を配合し、この配合物を二軸押出機等を用いて混合,撹拌して導電性組成物をつくる。ついで、上記導電性組成物を、金属製の軸体(芯金)を配した所定の成形型内に注入し、硬化させることによつて図1に示すような構造の導電性ロールを製造することができる。図において、10は芯金、11は導電層である。
【0020】このような導電性ロールは、電子写真複写機用の導電性ロールのみならず、例えばフアクシミリ,プリンター等各種の導電性ロール等に広く用いられる。
【0021】
【発明の効果】以上のように、この発明の導電性ロールは、導電層が、有機高分子系バインダー樹脂中に、導電性粉末(A成分)と、帯電制御剤の含浸された多孔質充填剤(B成分)とを分散含有させた特殊な導電性組成物によつて形成されているため、均一な帯電性を有し、しかも充分な帯電量が付与される。
【0022】つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0023】実施例に先立つて、下記の製法にしたがつて2種類の帯電制御剤の含浸された多孔質充填剤AおよびBを作製した。
【0024】〔帯電制御剤の含浸された多孔質充填剤A〕セピオライトパウダー(ミルコンLS)をヘンシエルミキサーで回転させながらアミノシランをメタノール溶液にしてセピオライトパウダーの10%を添加した。そして、メタノールを蒸発させた後、120℃×1時間の処理の後、再度ヘンシエルミキサーでほぐすことにより帯電制御剤の含浸された多孔質充填剤Aを作製した。
【0025】〔帯電制御剤の含浸された多孔質充填剤B〕セピオライトパウダーに、上記多孔質充填剤Aと同様ヘンシエルミキサーで回転させながらトルエンで溶解したアゾ染料を10%添加した。そして、トルエンを蒸発させた後ヘンシエルミキサーでほぐすことにより帯電制御剤の含浸された多孔質充填剤Bを作製した。
【0026】
【実施例1〜6】上記の製法に従い作製された帯電制御剤含浸多孔質充填剤と下記の表1に示す原料を同表に示す割合で配合し、二軸押出機による混練により導電性組成物を得た。つぎに、直径20mmの芯金を配した成形型内に上記導電性組成物を注入することによつて芯金の外周に導電層を形成した。このようにして図1に示すような導電性ロールを製造した。
【0027】
【表1】


【0028】
【比較例1】帯電制御剤の含浸された多孔質充填剤を用いなかつた。それ以外は実施例1と同様にして導電性ロールを製造した。
【0029】
【比較例2,3】多孔質充填剤は用いず下記の表2に示す帯電制御剤を含む各成分を同表に示す割合で用いた。それ以外は実施例1と同様にして導電性ロールを製造した。
【0030】
【表2】


【0031】このようにして得られた各導電性ロールについて、電気抵抗および帯電量指数を測定,評価し下記の表3および表4に示した。なお、上記帯電量指数は、下記の方法により測定した。
【0032】〔帯電量指数〕25℃×55%RH条件下において、図2に示すように、導電性ロール30表面上にトナー32層を形成し、吸引ポンプ33によりトナー32を吸引してフアラデーケージ34により測定した(フアラデーケージ法)。図において、35はフイルター、36は絶縁体パイプ、37は電位計である。そして、比較例1品の帯電量を100として各導電性ロールの帯電量を指数として表した。
【0033】
【表3】


【0034】
【表4】


【0035】上記表3および表4の結果から、実施例品は全て電気抵抗値は従来のままで帯電量が増加している。これに対して、比較例1品および比較例2品とも帯電量が少ない。また、比較例3品は帯電量は多いが電気抵抗値が異常に上昇している。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の導電性ロールの縦断面図である。
【図2】トナー帯電性を評価するフアラデーケージ法の測定状態を示す構成図である。
【図3】導電性ロールを組み込んだ電子写真複写機の要部構成図である。
【符号の説明】
10 芯金
11 導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 軸体の外周に、導電層が形成された導電性ロールであつて、上記導電層が、有機高分子系バインダー樹脂中に、下記の(A)成分および(B)成分を分散含有させた導電性組成物によつて形成されていることを特徴とする導電性ロール。
(A)導電性粉末。
(B)帯電制御剤の含浸された多孔質充填剤。

【図1】
image rotate


【図3】
image rotate


【図2】
image rotate