説明

導電性付与剤及び導電性樹脂組成物

【課題】 導電性及び柔軟性が高く、ブリードによるイオン導電剤のしみ出しが低減された、長期安定性に優れた導電性付与剤及び導電性樹脂組成物を提供。
【解決手段】 導電性付与剤が、下記一般式〔1〕で表される環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩からなるイオン導電剤、または該イオン導電剤と末端水酸基を有するポリエーテルポリオール、末端水酸基を有するポリアルキレングリコール、末端水酸基を有するポリエチレン主鎖とポリアルキレンオキサイドとのグラフト共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種とが含有されてなり、該導電性付与剤が熱可塑性樹脂またはゴムに添加されてなる導電性樹脂組成物である。


(式中、nは2〜8の正整数を、Xは第4級オニウムカチオンを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂またはゴムに導電性を付与させるための導電性付与剤及び導電性シートまたは電子写真式プリンターや複写機の導電性ロール(帯電ロール、クリーニングロール、現像ロールなど)に用いられる導電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式プリンターや複写機等の画像形成装置に使用される帯電ロール、転写ロール、クリーニングロール、現像ロールなどに用いられる導電性樹脂組成物は、ポリウレタン、スチレンゴム、エピクロルヒドリンゴムなどの熱可塑性樹脂またはゴムに導電性付与剤を添加して、表面抵抗を10〜109Ω/□に調整して使用される。
【0003】
従来、該導電性付与剤としては、カーボンブラックや金属、金属酸化物の電子導電剤が用いられているが、これらを樹脂またはゴムに添加させた場合、得られる導電性樹脂組成物は、硬度が高くなることから、軟化剤を配合させて硬度を低くする必要があった。しかしながら、時間の経過とともにブリードが発生し、該軟化剤がしみ出して他部材を汚染するという問題があった。
【0004】
また、ゴム等に電子導電剤を添加させて得られた導電性樹脂組成物は、電気抵抗のばらつきや電圧依存性が大きい等の問題があった。
【0005】
上記課題を解決するために、該電子導電剤に代えて、ゴム等の柔軟性を保ちつつ、電気抵抗のばらつきや電圧依存性が小さい等の利点を有するイオン導電剤が提案されている。
【0006】
特許文献1には、樹脂に過塩素酸リチウム等のアルカリ金属塩を添加させた導電性樹脂組成物が記載されている。
【0007】
しかしながら、従来の過塩素酸リチウム等のアルカリ金属塩をイオン導電剤として用いた場合、長時間通電状態にすると漸次抵抗が増大し、ブリードを生じてイオン導電剤がしみ出すなどの問題があった。また、上記イオン導電剤は、ポリウレタン等の樹脂に対する相溶性に劣ることから大量に添加することが困難であり、抵抗値の調整に制限が生じる場合があった。
【0008】
【特許文献1】特開平3−122165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、導電性及び柔軟性が高く、ブリードによるイオン導電剤のしみ出しが低減された、長期安定性に優れた導電性付与剤及び導電性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、第4級化合物塩からなるイオン導電剤が含有されてなる導電性付与剤及び該導電性付与剤を含有させてなる導電性樹脂組成物が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記一般式〔1〕で表される環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩からなるイオン導電剤が含有されてなることを特徴とする導電性付与剤である。
【0012】
【化1】

【0013】
一般式中、nは2〜8の正整数を、Xは第4級オニウムカチオンを表す。
【0014】
また、本発明は一般式〔1〕で表される環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩からなるイオン導電剤が、末端水酸基を有するポリエーテルポリオール、末端水酸基を有するポリアルキレングリコール、末端水酸基を有するポリエチレン主鎖とポリアルキレンオキサイドとのグラフト共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種に含有されてなることを特徴とする導電性付与剤である。
【0015】
また、本発明は、上記一般式〔1〕で表される環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩が、熱可塑性樹脂またはゴムに添加されてなることを特徴とする導電性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の導電性付与剤は、イオン導電性の高い環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩が含有されてなり、該導電性付与剤が添加された導電性樹脂組成物は、ブリードによるイオン導電剤のしみ出しがなく、導電性、柔軟性に優れ、長期間安定した特性が発現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0018】
本発明の導電性付与剤は、イオン導電剤である上記一般式〔1〕で表される環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩が含有されてなり、一般式〔1〕中、nは2〜8の正整数を、Xは第4級オニウムカチオンを表す。ここで、nは好ましくは2〜6であり、より好ましくはnが3である。
【0019】
一般式〔1〕中、Xは第4級オニウムカチオンを表し、例えば、アンモニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、モルホニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、トリアゾリウム等のカチオン成分があげられる。
【0020】
アンモニウムカチオンとしてはテトラメチルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム、ジメチルエチルプロピルアンモニウム、ジメチルジプロピルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、メチルジエチルプロピルアンモニウム、メチルエチルジプロピルアンモニウム、メチルトリプロピルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、ジエチルジプロピルアンモニウム、エチルトリプロピルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、メチルトリブチルアンモニウム、メチルトリペンチルアンモニウム、トリメチルメトキシエチルアンモニウム、ジメチルエチルメトキシエチルアンモニウム、ジメチルプロピルメトキシエチルアンモニウム、メチルジエチルメトキシエチルアンモニウム、メチルエチルプロピルメトキシエチルアンモニウム、メチルジプロピルメトキシエチルアンモニウム、トリエチルメトキシエチルアンモニウム、ジエチルプロピルメトキシエチルアンモニウム、エチルジプロピルメトキシエチルアンモニウム、トリプロピルメトキシエチルアンモニウムなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
ピロリジニウムカチオンとしては、N,N−ジメチルピロリジニウム、N,N−メチルエチルピロリジニウム、N,N−メチルプロピルアンモニウム、N,N−メチルメトキシエチルピロリジニウム、N,N−メチルエトキシエチルピロリジニウム、N,N−ジエチルピロリジニウム、N,N−エチルプロピルピロリジニウム、N,N−エチルメトキシエチルピロリジニウム、N,N−エチルエトキシエチルピロリジニウムN,N−ジプロピルピロリジニウム、N,N−プロピルメトキシエチルピロリジニウム、N,N−プロピルエトキシエチルピロリジニウム、N,N−ジ(メトキシエチル)ピロリジニウム、N,N−ジ(エトキシエチル)ピロリジニウム、N,N−(メトキシエチル)−(エトキシエチル)ピロリジニウムN,N−ジブチルピロリジニウムN,N−ジペンチルピロリジニウムN,N−メチルペンチルピロリジニウムスピロ−(1,1’)−ビアザシクロブチル、アザシクロペンタン−1−スピロ−1’−アザシクロブチル、アザシクロヘキサン−1−スピロ−1’−アザシクロブチル、アザシクロヘプタン−1−スピロ−1’− アザシクロブチル、アザシクロオクタン−1−スピロ−1’− アザシクロブチルなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
ピペリジニウムカチオンとしては、N,N−ジメチルピペリジニウム、N,N−メチルエチルピペリジニウム、N,N−メチルプロピルピペリジニウム、N,N−メチルメトキシエチルピペリジニウム、N,N−メチルエトキシエチルピペリジニウム、N,N−ジエチルピペリジニウム、N,N−エチルプロピルピペリジニウム、N,N−エチルメトキシエチルピペリジニウム、N,N−エチルエトキシエチルピペリジニウム、N,N−ジプロピルピペリジニウム、N,N−プロピルメトキシエチルピペリジニウム、N,N−プロピルエトキシエチルピペリジニウム、N,N−ジ(メトキシエチル)ピペリジニウム、N,N−ジ(エトキシエチル)ピペリジニウム、N,N−(メトキシエチル)−(エトキシエチル)ピペリジニウムN,N−ジブチルピペリジニウム、N,N−ジペンチルピペリジニウム、N,N−メチルペンチルピペリジニウム、スピロ−(1,1’)−ビアザシクロペンチル、アザシクロヘキサン−1−スピロ−1’−アザシクロペンチル、アザシクロヘプタン−1−スピロ−1’− アザシクロペンチル、アザシクロオクタン−1−スピロ−1’− アザシクロペンチルなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
モルホニウムカチオンとしては、N,N−ジメチルモルホニウム、N,N−メチルエチルモルホニウム、N,N−メチルプロピルモルホニウム、N,N−メチルメトキシエチルモルホニウム、N,N−メチルエトキシエチルモルホニウム、N,N−ジエチルモルホニウム、N,N−エチルプロピルモルホニウム、N,N−エチルメトキシエチルモルホニウム、N,N−エチルエトキシエチルモルホニウム、N,N−ジプロピルモルホニウム、N,N−プロピルメトキシエチルモルホニウム、N,N−プロピルエトキシエチルモルホニウム、N,N−ジ(メトキシエチル)モルホニウム、N,N−ジ(エトキシエチル)モルホニウム、N,N−ジブチルモルホニウム、N,N−ジペンチルモルホニウム、N,N−メチルペンチルモルホニウム、N,N−(メトキシエチル)−(エトキシエチル)モルホニウム、モルホリン−4−スピロ−1’−アザシクロブチル、モルホリン−4−スピロ−1’−アザシクロペンチル、モルホリン−4−スピロ−1’−アザシクロヘキシル、モルホリン−4−スピロ−1’−アザシクロヘプチル、モルホリン−4−スピロ−1’−アザシクロオクチルなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
ピリジニウムカチオンとしては、N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−プロピルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−ペンチルピリジニウム、N−ヘキシルピリジニウム、N−オクチルピリジニウム、N−メチル−メチルピリジニウム、N−メチル−エチルピリジニウム、N−メチル−ブチルピリジニウム、N−エチル−メチルピリジニウム、N−ブチル−メチルピリジニウム、N−ブチルーエチルピリジニウム、N−ブチル−プロピルピリジニウム、N−ヘキシル−メチルピリジニウム、N−オクチル−メチルピリジニウムなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
イミダゾリウムカチオンとしては1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチル−2−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−プロピル−2,4−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,2,3,4,5−ペンタメチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−プロピルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−ペンチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−ヘプチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルベンゾイミダゾリウム、1−フェニル−3−メチルイミダゾリウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム、1−フェニル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ベンジル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、2−フェニル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、2−ベンジル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−ウンデシルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−ヘプタデシルイミダゾリウム2−(2′−ヒドロキシ)エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−(2′−ヒドロキシ)エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、2−エトキシメチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エトキシメチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
ピラゾリウムカチオンとしては、1,2−ジメチルピラゾリウム、1,2,3−トリメチルピラゾリウム、1−エチル−2−メチルピラゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルピラゾリウム、1,2−ジエチルピラゾリウム、1,2−ジエチル−3−メチルピラゾリウム、1,3−ジエチル−2−メチルピラゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルピラゾリウム、1−ブチル−2−メチルピラゾリウム、1−メチル−3−プロピル−2,4−ジメチルピラゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルピラゾリウム、1,2,3,4,5−ペンタメチルピラゾリウム、2−エチル−1,3−ジメチルピラゾリウム、1,3−ジメチル−2−プロピルピラゾリウム、1,3−ジメチル−2−ペンチルピラゾリウム、1,3−ジメチル−2−ヘプチルピラゾリウム、1,3,4−トリメチルピラゾリウム、2−エチル−1,3,4−トリメチルピラゾリウム、1,2−ジメチルベンゾピラゾリウム、1−フェニル−2−メチルピラゾリウム、1−ベンジル−2−メチルピラゾリウム、1−フェニル−2,3−ジメチルピラゾリウム、1−ベンジル−2,3−ジメチルピラゾリウム、2−フェニル−1,3−ジメチルピラゾリウム、2−ベンジル−1,3−ジメチルピラゾリウム、1,3−ジメチル−2−ウンデシルピラゾリウム、1,3−ジメチル−2−ヘプタデシルピラゾリウム、2−(2′−ヒドロキシ)エチル−1,3−ジメチルピラゾリウム、1−(2′−ヒドロキシ)エチル−2,3−ジメチルピラゾリウム、2−エトキシメチル−1,3−ジメチルピラゾリウム、1−エトキシメチル−2,3−ジメチルピラゾリウムがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
チアゾリウムカチオンとしては、N−メチルチアゾリウム、N−エチルチアゾリウム、N−プロピルチアゾリウム、N−ブチルチアゾリウム、N−ペンチルチアゾリウム、N−ヘキシルチアゾリウム、N−オクチルチアゾリウム、N−メチル−メチルチアゾリウム、N−メチル−エチルチアゾリウム、N−メチル−ブチルチアゾリウム、N−エチル−メチルチアゾリウム、N−ブチル−メチルチアゾリウム、N−ブチルーエチルチアゾリウム、N−ブチル−プロピルチアゾリウム、N−ヘキシル−メチルチアゾリウム、N−オクチル−メチルチアゾリウムなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
オキサゾリウムカチオンとしては、N−メチルオキサゾリウム、N−エチルオキサゾリウム、N−プロピルオキサゾリウム、N−ブチルオキサゾリウム、N−ペンチルオキサゾリウム、N−ヘキシルオキサゾリウム、N−オクチルオキサゾリウム、N−メチル−メチルオキサゾリウム、N−メチル−エチルオキサゾリウム、N−メチル−ブチルオキサゾリウム、N−エチル−メチルオキサゾリウム、N−ブチル−メチルオキサゾリウム、N−ブチルーエチルオキサゾリウム、N−ブチル−プロピルオキサゾリウム、N−ヘキシル−メチルオキサゾリウム、N−オクチル−メチルオキサゾリウムなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
上記一般式〔1〕で表される環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩は、公知のイオン交換法または複分解反応法により製造することができる。例えば、前駆体オニウム塩(例えば、ハロゲン化オニウム、アルカンスルホン酸オニウム、アルカンカルボン酸オニウムまたは水酸化オニウム塩)を、水溶液中で環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド前駆体金属塩または環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド酸と混合させて製造することができる。
【0030】
本発明の導電性付与剤は、一般式〔1〕で表される環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩を単独で用いることもできるが、熱可塑性樹脂またはゴムとの相溶性をよくするため、該環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩に末端水酸基を有する樹脂、すなわち、末端水酸基を有するポリエーテルポリオール、末端水酸基を有するポリアルキレングリコール、末端水酸基を有するポリエチレン主鎖とポリアルキレンオキサイドとのグラフト共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を添加させた後、加熱混練させて用いられる。
【0031】
一般式〔1〕で表される環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩に末端水酸基を有する樹脂を添加させる場合、末端水酸基を有する樹脂100質量部に対して、該環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩が1〜50質量部となる範囲で添加され、添加量が1質量部より未満または50質量部より超の場合、導電性が低下し不都合である。
【0032】
次に、本発明の導電性樹脂組成物について詳細に説明する。
【0033】
本発明の導電性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂またはゴムに、本発明の導電性付与剤が添加されてなるものである。
【0034】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂及びその組成物、ポリアセタール、ポリアクリレート、アクリル樹脂及びその組成物、ポリフェニレンエーテル(以下、「PPE」と略記する。)、PPE/ポリスチレン、PPE/ポリアミド(以下、「PA」と略記する。)、PPE/ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」と略記する。)等のポリフェニレンエーテル系樹脂及びその組成物、ポリエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記する。)、PBT/ABS等のポリエステル系樹脂及びその組成物、ポリカーボネート(以下、「PC」と略記する。)、PC/ABS、PC/PET、PC/PBT等のポリカーボネート系樹脂及びその組成物、ポリウレタン及びその組成物、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド系樹脂及びその組成物、ポリサルホンがあげられる。
【0035】
導電性に優れる点から、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂が好ましく、これらの樹脂の少なくとも1種が用いられる。
【0036】
また、本発明に用いられるゴムとしては、ウレタンゴム、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴム、シリコンゴム、フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体ウレタンゴム、スチレンブタジエン共重合体ゴム及びそれらの発泡体からなる群から選ばれる少なくとも1種があげられる。
【0037】
本発明の導電性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂またはゴムに、本発明の導電性付与剤を所定量添加、混練し、フィルム状、シート状あるいはロール状等に成形して用いられる。
【0038】
上記導電性樹脂組成物中における導電性付与剤では、熱可塑性樹脂またはゴム100質量部に対して、イオン導電剤である一般式〔1〕で表される環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩が0.1〜20質量部となる範囲で添加される。0.1質量部より未満の場合、得られた導電性樹脂組成物の導電性が不十分であり、また、20質量部より超の場合、導電性は十分であるがブリードを発生しやすくなり不都合である。
【0039】
本発明の導電性付与剤は、イオン導電性の高い一般式〔1〕で表される環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩が含有されており、該導電性付与剤が添加された導電性樹脂組成物は、ブリードによるイオン導電剤のしみ出しがなく、導電性、柔軟性に優れ、また長期間安定した特性が発現できる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を、実施例に基づいて説明する。なお、本発明は実施例によりなんら限定されない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を表す。
【0041】
実施例1
末端水酸基を有するポリエチレン主鎖とポリアルキレンオキサイドのグラフト重合体(分子量4000、住友化学工業(株)登録商標:スミエード300G)90部に、イオン導電剤であるテトラメチルアンモニウム1,3−ヘキサフルオロプロピレンジスルホニルイミド塩20部を加えた後、温度70℃で加熱混練させて導電性付与剤を得た。
【0042】
ついで、熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂(三菱レーヨン(株)登録商標:アクリペットIR H−70)100部に、先に得られた導電性付与剤20部を添加し、テストロール機(日新科学(株)製HR−2型)中、温度100℃で加熱混練させて、厚さ1mmの導電性シートを得た。該導電性シートは、熱可塑性樹脂100部に対して、イオン導電剤の添加量は3.6部である。
【0043】
得られた導電性シートの表面抵抗を表面抵抗測定機(三菱化学(株)製HT−210)を用いて測定した。また、導電性シートを2つに折り曲げて、温度40℃、湿度80%の環境下で、90日間放置した後、イオン導電剤のしみ出しを目視により表面観察し、ブリードの有無を調べた。結果を表1に示す。
【0044】
実施例2
実施例1に準じて、スミエード300G 90部に、イオン導電剤である、N,N−ジエチルピロリジニウム1,3−ヘキサフルオロプロピレンジスルホニルイミド塩30部を加えた後、温度70℃で加熱混練させて導電性付与剤を得た。
【0045】
ついで、熱可塑性樹脂であるポリウレタン樹脂(大日本インキ化学工業(株)登録商標:パンデックスT−8190N)100部に、先に得られた導電性付与剤40部を添加し、テストロール機中、温度180℃で加熱混練させて、厚さ1mmの導電性シートを得た。該導電性シートは、熱可塑性樹脂100部に対して、イオン導電剤の添加量は10部である。
【0046】
以下、実施例1と同様にして表面抵抗及びブリードの有無を調べた。結果を表1に示す。
【0047】
実施例3
実施例1に準じて、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体(日本油脂(株)登録商標:プロノン102)100部に、イオン導電剤である1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリウム−1,3−ヘキサフルオロプロピレンジスルホニルイミド塩10部を加えた後、温度70℃で加熱混練させて導電性付与剤を得た。
【0048】
ついで、熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂(大日本インキ化学工業(株)製ポリブチレンテレフタレート)100部に、先に得られた導電性付与剤40部を添加し、テストロール機中、温度250℃で加熱混練させて、厚さ1mmの導電性シートを得た。該導電性シートは、熱可塑性樹脂100部に対して、イオン導電剤の添加量は3.6部である。
【0049】
以下、実施例1と同様にして表面抵抗及びブリードの有無を調べた。結果を表1に示す。
【0050】
実施例4
実施例1に準じて、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体(プロノン102)90部に、イオン導電剤であるN−ブチル−メチルピリジニウム−1,3−ヘキサフルオロプロピレンジスルホニルイミド酸5部を加えた後、温度70℃で加熱混練させて導電性付与剤を得た。
【0051】
ついで、熱可塑性樹脂であるポリアミド樹脂(ナイロン612:ダイセルヒュルス(株)登録商標:ダイアナミド1700)100部に、先に得られた導電性付与剤10部を添加し、テストロール機中、温度220℃で加熱混練させて、厚さ1mmの導電性シートを得た。該導電性シートは、熱可塑性樹脂100部に対して、イオン導電剤の添加量は0.5部である。
【0052】
以下、実施例1と同様にして表面抵抗及びブリードの有無を調べた。結果を表1に示す。
【0053】
比較例1
実施例1において、イオン導電剤として過塩素酸リチウム20部を用いた以外は実施例1と同様にして導電性付与剤を得、また、実施例1と同様にして導電性シートを得た。該導電性シートは、熱可塑性樹脂100部に対して、イオン導電剤の添加量は3.6部である。
【0054】
以下、実施例1と同様にして表面抵抗及びブリードの有無を調べた。結果を表1に示す。
【0055】
比較例2
実施例2において、イオン導電剤として過ヨウ素酸テトラエチルアンモニウム40部を用いた以外は実施例2と同様にして導電性付与剤を得、実施例2と同様にして導電性シートを得た。該導電性シートは、熱可塑性樹脂100部に対して、イオン導電剤の添加量は12.3部である。
【0056】
以下、実施例1と同様にして表面抵抗及びブリードの有無を調べた。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例5
発泡性ゴムであるウレタン(日本ポリウレタン工業(株)登録商標:ニッポラン5199、以下「U」と略記する。)100部に、イオン導電剤であるトリメチルメトキシエチルアンモニウム−1,3−ヘキサフルオロプロピレンジスルホニルイミド塩8部を加え、加熱混練により発泡及び架橋させた後、成型用金型に流し込み、厚み12mmの導電性発泡ゴム成形体を得た。
【0059】
得られた該成形体について、(財)日本工業規格JIS K6253に準じてゴム硬度を測定した。また、比抵抗測定器により、比抵抗を測定した。これらの結果を表2に示す。
【0060】
実施例6
実施例5において、イオン導電剤としてN,N−メチルエチルモルホニウム−1,3−ヘキサフルオロプロピレンジスルホニルイミド塩5部を用いた以外は実施例5と同様にして、導電性発泡ゴム成形体を得た。該成形体のゴム硬度及び比抵抗測定結果を表2に示す。
【0061】
実施例7
実施例5において、発泡性ゴムとしてエピクロルヒドリンゴム(ダイソー(株)製エピクロマーCG―102、以下「EP」と略記する。)100部を、また、イオン導電剤としてN−ヘキシル−メチルピリジニウム1,3−ヘキサフルオロプロピレンジスルホニルイミド塩4部を用いた以外は実施例5と同様にして導電性発泡ゴム成形体を得た。該成形体のゴム硬度及び比抵抗測定結果を表2に示す。
【0062】
実施例8
実施例5において、発泡性ゴムとしてアクリル(JSR(株)製アクリルラテッックスAE832、以下「ACM」と略記する。)100部を、また、イオン導電剤としてN−ブチル−メチルチアゾリウム1,3−ヘキサフルオロプロピレンジスルホニルイミド塩3部を用いた以外は実施例5と同様にして導電性発泡ゴム成形体を得た。該成形体のゴム硬度及び比抵抗測定結果を表2に示す。
【0063】
比較例3
実施例5において、導電剤としてカーボンブラック30部を用いた以外は実施例5と同様にして、導電性発泡ゴム成形体を得た。該成形体のゴム硬度及び比抵抗測定結果を表2に示す。
【0064】
比較例4
実施例5において、イオン導電剤として過塩素酸リチウム2部を用いた以外は実施例5と同様にして、導電性発泡ゴム成形体を得た。該成形体のゴム硬度及び比抵抗測定結果を表2に示す。
【0065】
比較例5
実施例5において、発泡性ゴムとしてEP100部、導電剤として酸化チタン(石原産業(株)登録商標:タイペークET500W)20部を用いた以外は実施例5と同様にして、導電性発泡ゴム成形体を得た。該成形体のゴム硬度及び比抵抗測定結果を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
表1に示すように、比較例1及び2では、表面抵抗が高くブリードの発生が見られたのに対して、環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩を含む本発明の導電性付与剤が添加された実施例1〜4に示す導電シートは、表面抵抗が低く、ブリードの発生が観察されなかった。
【0068】
また、表2に示すように、導電性付与剤としてカーボンブラック、過塩素酸リチウム、酸化チタンが添加された比較例3〜5の導電性発泡ゴムは、ゴム硬度が高く、比抵抗が高いのに対し、本発明の導電性付与剤が添加された実施例5〜8の導電性発泡ゴムは、ゴム硬度が低くかつ比抵抗が低く、柔軟性、導電性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式〔1〕で表される環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩からなるイオン導電剤が含有されてなることを特徴とする導電性付与剤。
【化1】

(式中、nは2〜8の正整数を、Xは第4級オニウムカチオンを表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の一般式〔1〕で表される環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩が、末端水酸基を有するポリエーテルポリオール、末端水酸基を有するポリアルキレングリコール、末端水酸基を有するポリエチレン主鎖とポリアルキレンオキサイドとのグラフト共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種に含有されてなることを特徴とする導電性付与剤。
【請求項3】
第4級オニウムカチオンが、アンモニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、モルホニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、チアゾリウムカチオン、オキサゾリウムカチオン、トリアゾリウムカチオンからなる群から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電性付与剤。
【請求項4】
熱可塑性樹脂またはゴムに、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の導電性付与剤が添加されてなることを特徴とする導電性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の導電性樹脂組成物において、熱可塑性樹脂またはゴム100質量部に、請求項1に記載の一般式〔1〕で表される環状パーフルオロアルキレンジスルホンイミド塩が0.1〜20質量部添加されてなることを特徴とする導電性樹脂組成物。
【請求項6】
熱可塑性樹脂が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4または請求項5のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
【請求項7】
ゴムが、ウレタンゴム、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴム、シリコンゴム、フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体ウレタンゴム、スチレンブタジエン共重合体ゴム及びそれらの発泡体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4または請求項5のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−40659(P2006−40659A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216881(P2004−216881)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】