説明

導電性回路形成方法

【解決手段】直径0.8mm、高さ0.4mmのドット形状の印刷パターンを形成後、80〜200℃で熱硬化させ、印刷された形状と硬化後の形状を比較した場合、ドット形状の高さの変化量が5%以内であり、溶剤を実質的に含有せず、付加型シリコーン樹脂形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせと、導電性粒子とを含み、更に、カーボンブラック、亜鉛華、錫酸化物、錫−アンチモン系酸化物、SiCから選ばれるチクソ化剤を含有する導電性回路描画用インク組成物を用い、印刷法によって回路を形成する導電性回路形成方法。
【効果】本発明によれば、チクソ性を持ったインク組成物によってスクリーン印刷をはじめとする印刷方法によって回路を描画することができ、描画された回路は、描画後に硬化工程を行った際にも形状がよく保持され、回路形状の高度な制御が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性インク組成物を用いた導電性回路形成方法に関し、特に印刷法によってシリコーン硬化物を構造形成材料とする回路を形成する導電性回路形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粒子を含有するインク組成物を用いて印刷により導電性回路を形成する技術は、既にスクリーンプリントによる太陽電池基板等における導電性回路形成方法等として実用化されており、更にその改良方法についても多数の技術が提案されている。例えば特許文献1(特開2010−149301号公報)では、常用される導電性インク組成物である金属粒子とガラスフリットを含むインク組成物を、超音波振動を使ったスクリーン印刷により印刷することで、高速な導電性回路の形成が可能になることを開示している。
【0003】
一方、半導体回路製品等に対して導電性インク組成物を用いて回路を形成する場合、回路形成後に基板の接着やパッケージング等の加熱工程を行うと、ガラスを構造形成材料に用いる導電性材料の場合にはクラック等により導線の抵抗変化や断線が生じる可能性があり、高い耐応力能を持った回路形成用材料が求められる。シリコーン材料は、耐熱性と応力緩和能に優れる材料であるが、例えば特許文献2(特開平11−213756号公報)では、熱可塑性樹脂、エポキシ変性シリコーン、金属粉、シリコーンゴム弾性体を溶剤でのばしたインクを用いることで、加熱処理を行った場合にもクラック等の発生のない導電性回路が得られることが開示されている。
【0004】
現在、半導体回路の微細化が進行して、それに用いる導電性回路も微細化が進んでいる。また、一つの基板上に作製した半導体回路を、更に2つ以上積層させて半導体回路を積層する、いわゆる3D半導体装置等の検討も進められている。このような、より微細な回路から複数の接点を設けて実装する場合や、2つ以上のシリコン基板上に形成された半導体回路間の接続を行う場合、接続される導電性回路は、上述のような熱応力に対する耐性がもちろん要求されるが、更に、微細構造としての形状の制御も必要になると考えられる。
【0005】
例えば、異なる線幅部分のある導電性回路を、溶剤を含有する導電性インク組成物を用いて形成すると、溶剤の揮発速度等による影響で、硬化前後で、導線の平坦性や形状の異なる部分が発生したり、回路の高低差ができてしまうおそれがある。また、それらの影響を考慮して接続を取ろうとすると、微細化を行うためのマージンが失われることになる。そこで、半導体装置等の微細化を進める場合や、半導体装置の3次元積層等を行おうとする場合、導電性インクを用いて導電性回路を形成する際、回路形状がより厳密に制御できる回路形成技術が望まれる。
なお、本発明に関連する従来技術として、上述した文献と共に下記文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−149301号公報
【特許文献2】特開平11−213756号公報
【特許文献3】特開2007−53109号公報
【特許文献4】特開平7−109501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、導電性回路を印刷により形成でき、印刷をした後の硬化前後で形状がよく保持され、更に、形成された回路が熱応力等に対し高い応力緩和能を有する導電性回路形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記要求を満たすことのできる材料について種々検討を行った結果、シリコーンゴム形成用素材は、溶剤を使用することなく印刷用インク組成物として必要な流動性を確保することが可能であることから、シリコーンゴムであれば印刷後の硬化前後での形状変化を起こすことなく、応力緩和能の高い導電性回路を形成できることを想到した。そこで、印刷により形成された立体形状が熱硬化するまでに変形してしまわないようチクソ性を高めるためのチクソ剤の検討を行った。
まず、常用されるチクソ性を高める方法として乾式シリカの添加を試みたが、シリカ添加量が増加するにつれて、チクソ性は上がるものの、抵抗値も上がってしまい、チクソ性と導電性を共に満足する組成物を得ることは困難であった。ところが、チクソ化剤として1Ω・cm程度の中間的な抵抗率を持つカーボンブラック等の添加を試みたところ、添加量と共にチクソ性は上がると共に、驚くべきことに抵抗値は不変かむしろ低下し、導電性を気にすることなくチクソ性のコントロールが可能なことを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の導電性回路形成方法及びそれにより形成された導電性回路を提供する。
〔1〕
直径0.8mm、高さ0.4mmのドット形状の印刷パターンを形成後、80〜200℃で熱硬化させ、印刷された形状と硬化後の形状を比較した場合、ドット形状の高さの変化量が5%以内であり、溶剤を実質的に含有せず、付加型シリコーン樹脂形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせと、導電性粒子とを含み、更に、カーボンブラック、亜鉛華、錫酸化物、錫−アンチモン系酸化物、SiCから選ばれるチクソ化剤を含有する導電性回路描画用インク組成物を用い、印刷法によって回路を形成することを特徴とする導電性回路形成方法。
〔2〕
前記シリコーン樹脂形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせは、少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応触媒の組み合わせである〔1〕記載の導電性回路形成方法。
〔3〕
前記導電性粒子は、金粒子、銀粒子、銅粒子、金メッキ粒子、銀メッキ粒子、銅メッキ粒子から選ばれる〔1〕又は〔2〕記載の導電性回路形成方法。
〔4〕
前記チクソ化剤がカーボンブラックである〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の導電性回路形成方法。
〔5〕
前記印刷法はスクリーン印刷法である〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の導電性回路形成方法。
〔6〕
〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の導電性回路形成方法によって形成された導電性回路。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性回路形成方法によれば、チクソ性を持ったインク組成物によってスクリーン印刷をはじめとする印刷方法によって回路を描画することができ、描画された回路は、描画後に硬化工程を行った際にも形状がよく保持され、回路形状の高度な制御が可能である。また、シリコーンゴムを主体とする構造を有するため、形成された回路が熱応力等に対し高い応力緩和能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いる回路描画用インク組成物は、溶剤を実質的に含有せず、シリコーン樹脂形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせと、導電性粒子、及びチクソ化剤を含有する導電性回路描画用インク組成物である。
【0012】
描画後に更に硬化した際に得られる導電性回路パターンの形状を高精度に制御するためには、描画時に形成されたパターン形状をよく維持したまま硬化したパターンを得ることが好ましい。このため、本発明で用いる導電性回路描画用インク組成物は、描画後硬化工程が完了するまでの間、揮発する成分の発生を極力抑制可能な材料から選択する必要があり、インク組成物を調製する際に溶剤を実質的に用いない。
【0013】
[シリコーン樹脂形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせ]
硬化型シリコーン材料は、硬化メカニズムにより縮合型と付加型に分類することができるが、付加型のシリコーン樹脂形成材料は、硬化時に脱ガス成分を伴わないことから、本発明の目的を達するために最適な材料である。また、描画時の形状をよく維持したまま硬化するためには、200℃以下の緩和な条件、特に150℃以下で硬化可能であることが好ましいが、付加型のシリコーン樹脂形成材料はこの要請も容易に満たすことができる。なお、本発明において、シリコーン樹脂はシリコーンゴムを包含する広義の意味で使用する。
【0014】
付加型シリコーン樹脂形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせは、例えば特許文献3(特開2007−53109号公報)をはじめとして、すでに多数の材料が公知であり、基本的にはいずれの材料も用いることができるが、好ましい材料として、以下のものを挙げることができる。
【0015】
付加型シリコーン樹脂形成用前駆体として最も好ましい材料は、少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの混合物であり、より詳細には下記の材料を挙げることができる。
【0016】
(A)少なくとも2個のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン
少なくとも2個のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で表される。
aR’bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rはアルケニル基、R’は脂肪族不飽和結合を持たない非置換又は置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基、a、bは、0<a≦2、0<b<3、0<a+b≦3を満たす数である。)
【0017】
(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、この組成物の主剤(ベースポリマー)であり、一分子中に平均2個以上(通常2〜50個)、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個程度のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する。(A)成分のオルガノポリシロキサンのアルケニル基Rとしては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、特に、ビニル基であることが好ましい。(A)成分のアルケニル基の結合位置としては、例えば、分子鎖末端及び/又は分子鎖側鎖が挙げられる。
【0018】
(A)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基R’としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられ、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。
【0019】
このような(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状等が挙げられるが、基本的に主鎖がジオルガノシロキサン単位(D単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサン、直鎖状のジオルガノポリシロキサンと分岐鎖状あるいは三次元網状のオルガノポリシロキサンの混合物であることが好ましい。
【0020】
この場合、レジン状(分岐鎖状、三次元網状)のオルガノポリシロキサンとしては、アルケニル基とSiO4/2単位(Q単位)及び/又はR”SiO3/2(T単位)(R”はR又はR’)を含有するオルガノポリシロキサンであれば特に制限されないが、SiO4/2単位(Q単位)と、RR’2SiO1/2単位やR’3SiO1/2単位等のM単位からなり、M/Qのモル比が0.6〜1.2であるレジン状オルガノポリシロキサンや、T単位とM単位及び/又はD単位からなるレジン状オルガノポリシロキサン等が例示される。
但し、このようなレジン状のオルガノポリシロキサンの適用は本発明の実施において粘度が高くなり、銀粉を高充填できなくなる理由から多く添加されない。直鎖状オルガノポリシロキサンとレジン状オルガノポリシロキサンの好ましい配合割合は、質量比で好ましくは70:30〜100:0、特に好ましくは80:20〜100:0である。
【0021】
aは、0<a≦2、好ましくは0.001≦a≦1、bは、0<b<3、好ましくは0.5≦b≦2.5、a+bは、0<a+b≦3、好ましくは0.5≦a+b≦2.7を満たす数である。
【0022】
(A)成分の23℃における粘度は、得られるシリコーンゴムの物理的特性が良好であり、また、組成物の取り扱い作業性が良好であることから、100〜5,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に100〜1,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。直鎖状オルガノポリシロキサンにレジン状オルガノポリシロキサンを併用する場合は、レジン状オルガノポリシロキサンは直鎖状オルガノポリシロキサンに溶解するため、混合して均一な状態での粘度とする。なお、本発明において、粘度は回転粘度計により測定することができる。
【0023】
このような(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、式:R13SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R13SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:R1SiO1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:R2SiO1.5で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。
【0024】
ここで、上記式中のR1はアルケニル基以外の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。また、上記式中のR2はアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基などが挙げられる。
【0025】
(B)少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、一分子中に少なくとも2個(通常、2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば、3〜150個程度)、より好ましくは3〜100個程度のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を含有するものであり、直鎖状、分岐状、環状、或いは三次元網状構造の樹脂状物のいずれでもよい。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
【0026】
c3dSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基、又はアルコキシ基であり、c及びdは、0<c<2、0.8≦d≦2かつ0.8<c+d≦3となる数であり、好ましくは0.05≦c≦1、1.5≦d≦2かつ1.8≦c+d≦2.7となる数である。また、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、2〜100個、特に3〜50個が好ましい。)
【0027】
ここで、上記式中R3の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基としては、前記のR’として例示したものと同様のものが挙げられるほか、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、置換一価炭化水素基として、エポキシ基含有一価炭化水素基等が挙げられ、代表的なものは炭素数が1〜10、特に炭素数が1〜7のものであり、好ましくはメチル基等の炭素数1〜3の低級アルキル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。この場合、エポキシ基含有一価炭化水素基としては、上記非置換の一価炭化水素基、特にアルキル基の水素原子の1個又はそれ以上をグリシジル基、グリシドキシ基で置換したものが挙げられる。R3として特に好ましくはメチル基、メトキシ基、エトキシ基、エポキシ基含有一価炭化水素基である。
【0028】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8−ペンタメチルペンタシクロシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン等のシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等;R32(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、任意にR33SiO1/2単位、R32SiO2/2単位、R3(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2単位又はR3SiO3/2単位を含み得るシリコーンレジン(但し、R3は前記と同じである)などの他、これらの例示化合物においてメチル基の一部又は全部をエチル基、プロピル基等の他のアルキル基で置換したものなどが挙げられ、更には下記式
【化1】

(式中、R3は前記と同じであり、s、tはそれぞれ0又は1以上の整数である。)
等で表されるものが挙げられる。
【0029】
また、接着性が重要な場合は、(B)成分の一部又は全部に下記式(3)、(4)で示されるような分子中にアルコキシ基及び/又はエポキシ含有基を有するものを使用することが好ましい。特に式(4)で表されるような分子中にアルコキシ基とエポキシ含有基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、接着性向上には効果的である。
【化2】

【0030】
本発明の組成物に用いるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、公知の方法で得ることができ、例えば、一般式:R3SiHCl2及びR32SiHCl(式中、R3は前記と同じである)から選ばれる少なくとも1種のクロロシランを(共)加水分解し、或いは該クロロシランと一般式:R33SiCl及びR32SiCl2(式中、R3は前記と同じである)から選ばれる少なくとも1種のクロロシランを組み合わせて共加水分解し、縮合することにより得ることができる。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、このように(共)加水分解縮合して得られたポリシロキサンを平衡化したものでもよい。
【0031】
(B)成分の配合量は、(A)成分中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基に対して(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.5〜5.0倍モルとなる量であることが好ましく、より好ましくは0.7〜3.0倍モルとなる量である。0.5未満でも5.0以上でも、架橋バランスが崩れ十分な強度の硬化物が得られない場合がある。
【0032】
(C)ヒドロシリル化反応触媒
本発明に用いる付加(ヒドロシリル化)反応触媒は、前記の(A)成分のアルケニル基と(B)成分のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)との付加反応を促進するための触媒であり、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として白金族金属系触媒等の周知の触媒が挙げられる。
【0033】
この白金族金属系触媒としては、ヒドロシリル化反応触媒として白金、ロジウム、パラジウム等の白金族金属系触媒等の公知のものが全て使用できる。例えば、白金黒、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・yH2O、H2PtCl6・yH2O、NaHPtCl6・yH2O、KHPtCl6・yH2O、Na2PtCl6・yH2O、K2PtCl4・yH2O、PtCl4・yH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・yH2O(式中、yは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックス等が挙げられる。これらの中で、好ましいものとして、相溶性の観点及び塩素不純物の観点から、塩化白金酸をシリコーン変性したものが挙げられ、具体的には例えば塩化白金酸をテトラメチルジビニルジシロキサンで変性した白金触媒が挙げられる。添加量は、白金原子にしてインク組成物成分の合計質量に対し、質量換算で1〜500ppm、好ましくは3〜100ppm、より好ましくは5〜80ppmである。
【0034】
[導電性粒子]
本発明の導電性インク組成物には、導電性粒子が含まれる。導電性粒子としては、銀やアルミニウム等の金属粉、金属メッキした粒子、特に銀メッキシリカ等の粉末が好ましく、高導電性である銀粒子が特に好ましい。また、導電性粒子の大きさは、数μm〜十数μmであることが好ましく、50μmを超える粒子が混入した場合、スクリーンプリントのメッシュに詰まるなどの不都合があるので好ましくない。
【0035】
導電性粒子として金属粉を用いる場合、流動性と導電性の兼ね合いから、その形状は鱗片状が好ましいが、配合量を調整するなどにより他の形状の粒子でも適用可能である。また、構造形成材料として上述の付加型のシリコーンゴム前駆体と白金の触媒の組み合わせを用いた場合には、白金の触媒活性を維持するために、導電性粒子の表面処理方法には注意を要する。例えば金属粉末は凝集防止剤としてアミン系の化合物で表面処理されていることがあるが、これらのアミン化合物は白金の触媒毒となり、硬化阻害を引き起こしかねないので、導電性粒子の表面処理には、例えば、シリコーン樹脂により導電性粒子表面を処理する方法(特許文献4:特開平7−109501号公報)等、これらのアミン系化合物を含まない方法や、アミン系化合物をトラップするような添加剤の添加により白金触媒の活性を維持することが必要である。
【0036】
また、金属メッキした粒子は、市販のものとしてコア材料として銅、アルミニウム、シリカを用い、金、銀等がメッキされたものが入手可能であり、それらをいずれも使用することができるが、特に、銀メッキシリカ粒子はインク組成物としての保存安定性の上から好ましい材料である。
【0037】
本発明に使用する導電性インク組成物における導電性粒子の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して100〜1,500質量部であることが好ましく、より好ましくは300〜1,000質量部である。導電性粒子が100質量部より少ない場合、シリコーンゴムの導電率が低下し、1,500質量部より多い場合組成物の取り扱いが困難となるおそれがある。
【0038】
[チクソ化剤]
チクソ化剤は、インク組成物にチクソ性与え、導電性回路描画後、硬化までに導電性パターンの形状を維持するために必要な材料であり、本発明に添加されるチクソ化剤は、中間的な抵抗値を持つカーボンブラック、亜鉛華、錫酸化物、錫−アンチモン系酸化物、SiCから選ばれ、カーボンブラックが特に好ましい。
【0039】
立体形状を持つパターンを印刷する際、印刷によってインクパターンを形成した後パターンを熱硬化させるまでの間、印刷されたパターン形状を維持するためには、用いるインク組成物にはチクソ性が必要である。また、印刷可能な流動性を持つ材料のチクソ性を高めるためにはチクソ剤を添加する方法が一般的である。本発明者らはチクソ性を高める方法として、乾式シリカ(NSX−200:日本アエロジル社製)の添加を試みたが、シリカ添加量が増加するにつれて、チクソ性は上がるものの、抵抗値も上がってしまい、チクソ性と導電性を共に満足する組成物を得ることは困難であった。そこで、わずかでも導電性が向上させるために中間程度の抵抗値を持つカーボンブラック(HS−100:電気化学工業製)の添加を試みたところ、添加量と共にチクソ性は上がるだけでなく、驚くべきことに抵抗値は不変か、むしろ低下することを見出した。すでにカーボンブラック添加による導電性シリコーン組成物は広く知られているが、その抵抗率は1Ω・cm程度であり、本発明の目的とする1×10-2〜1×10-5Ω・cmレベルの導電性に比較して極めて低いレベルである。導電性粒子を含有するインク組成物中で、このカーボンブラックの添加が抵抗率を低下させることの理由はまだはっきり解明されていないが、このような中程度の抵抗率を持つチクソ化剤を用いることによって、導電性を気にすることなくチクソ性のコントロールが可能となる。
【0040】
カーボンブラックとしては、通常導電性ゴム組成物に常用されているものが使用し得、例えばアセチレンブラック、コンダクティブファーネスブラック(CF)、スーパーコンダクティブファーネスブラック(SCF)、エクストラコンダクティブファーネスブラック(XCF)、コンダクティブチャンネルブラック(CC)、1,500〜3,000℃程度の高温で熱処理されたファーネスブラックやチャンネルブラック等を挙げることができる。これらの中で、アセチレンブラックは不純物含有率が少ない上、発達した2次ストラクチャー構造を有することから導電性に優れており、本発明において特に好適に使用される。
【0041】
上記カーボンブラック等のチクソ化剤を用いた場合の添加量は、(A)成分100質量部に対し0.5〜30質量部であり、特に1〜20質量部であることが好ましい。但し、上述の導電性粒子として平均粒径が2μm以上の材料を選択すると導電性粒子の接触効率を上げることができ、良好な導電性が確保し易くなるが、このような粒径の導電性粒子はチクソ性付与効果が小さいため、必要とするチクソ化剤量が多くなり、その場合(A)成分100質量部に対し5〜30質量部であり、特に6〜20質量部であることが好ましい。添加量が少ない場合には形状保持性が悪くなり、多い場合は粘度が上昇しすぎて組成物の取り扱いが困難となるおそれがある。
【0042】
本発明に用いる導電性インク組成物には、更に、安定化剤、接着性付与剤を加えることが好ましい。
【0043】
[安定化剤]
導電性インク組成物の付加硬化性を安定化を行うため、導電性インク組成物には脂肪酸類やアセチレン化合物等の安定化剤を加えることが好ましく、特に、脂肪酸もしくは脂肪酸誘導体及び/又はその金属塩を加えることが好ましい。脂肪酸もしくは脂肪酸誘導体及び/又はその金属塩を安定化剤として使用する場合の添加量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部である。0.1質量部未満であると保存後の硬化安定化作用が十分得られないおそれがあり、10質量部を超えると付加硬化性悪くなる。ここで、脂肪酸もしくは脂肪酸誘導体及び/又はその金属塩の好ましい炭素数は8以上であり、特に8〜20である。
【0044】
脂肪酸の具体的な例としては、カプリル酸、ウンデシレン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラギン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが例示される。
【0045】
脂肪酸誘導体の例としては、脂肪酸エステル、脂肪族アルコールのエステルなどが挙げられる。脂肪族エステルとしては、上記脂肪酸等とC1〜C5の低級アルコールエステル、ソルビタンエステル、グリセリンエステル等の多価アルコールエステルが例示される。脂肪族アルコールのエステルとしては、カプリリルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール等の飽和アルコールなどの脂肪酸アルコールのグルタル酸エステルやスペリン酸エステルのような2塩基酸エステル、クエン酸エステルのような3塩基酸エステルが例示される。
【0046】
脂肪酸金属塩における脂肪酸の例としては、カプリル酸、ウンデシレン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラギン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられ、金属としては、例えば、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等が挙げられる。
【0047】
上述のうち、安定化剤としてはステアリン酸及びその塩が最も好ましい。また、安定化剤は単独で添加しても、予めヒドロシリル化反応触媒と混合しておいたものを添加してもよい。
【0048】
本発明に使用する導電性インク組成物には、必要に応じて上述のもの以外の各種の添加剤を更に添加することができる。特に、貯蔵安定性向上のために、ヒドロシリル化反応抑制剤を配合することができる。反応抑制剤としては、従来から公知のものを使用することができ、例えばアセチレン系化合物、アルケニル基を2個以上含有する化合物、アルキニル基を含有する化合物や、トリアリルイソシアヌレートやその変性品などが挙げられる。これらの中でも、アルケニル基又はアルキニル基を有する化合物の使用が望ましい。これらの反応抑制剤の添加量は、少なすぎるとヒドロシリル化反応の遅延効果が得られない場合があり、逆に多すぎると硬化そのものが阻害されてしまう場合があるため、インク組成物中の他成分の合計量100質量部に対して0.05〜0.5質量部の範囲であることが望ましい。
【0049】
本発明に用いる導電性インク組成物を調製する方法としては、例えば上述の成分をプラネタリーミキサー、ニーダー、品川ミキサー等の混合機で混合する方法等が挙げられる。
【0050】
本発明に用いるインク組成物が持つ粘度とチクソ係数は、本発明の導電性回路形成を行う際の重要な因子である。E型粘度計を使用したときの回転速度が10rpmの時の23℃における組成物の粘度が10Pa・s以上500Pa・s以下、特に10〜200Pa・sであることが好ましい。粘度が10Pa・s未満であると、ディスペンス等により塗布した際あるいは加熱硬化時に流れて形状が保持できない場合があり、また、500Pa・sより高いと、ディスペンスの際にマスクのパターンに十分に追従できず、パターンの欠損を起こすおそれがある。また、23℃における組成物の10rpmにおける粘度と20rpmにおける粘度との比(10rpm/20rpm)(以下、チクソ係数と示す)は、1.1以上、特に1.5〜5.0であることが好ましい。このチクソ係数が1.1未満であると、塗布した形状を安定させることが困難となる場合がある。
【0051】
本発明の導電性回路形成方法に用いるインク組成物は、溶剤を実質的に含まないため、粘度とチクソ性を調整することによって、直径0.8m、高さ0.4mのドット形状の印刷パターンを形成後、80〜200℃で熱硬化させた場合には、硬化前後のドット形状の高さの変化量が5%以内となる物性が与えられる。なお、インク組成物の形状保持性能の比較は、このような印刷された形状と硬化後の形状の比較により行うことができる。この場合に比較する形状は、ドット形状に限らず、ライン形状を用いて行うこともできるが、ドット形状が性能に応じて鋭敏に変化するため好ましく採用される。形状変化の値の測定は、種々の光学的手法で行うことが可能であるが、例えば、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、硬化前の印刷されたパターン形状と、硬化後のパターン形状を測定し、基板に対するパターンの最高高さを比較することで行うことができる。なお、この検定に合格となるものは、実用上、印刷によるパターン形成から熱硬化までの引き起き時間を変化させてもパターン形状に大きな変化を示さず、また、不合格となるものは、硬化処理中に形状変化を起こすため、検定における印刷から硬化までの引き起き時間は任意に設定できる。
【0052】
本発明の導電性回路形成方法に用いる印刷法としては、上述した導電性回路形成用インク組成物の適用量が高精度に制御可能な方法であればいずれの方法でもよく、好ましい印刷法として、ディスペンス印刷法やスクリーン印刷法を挙げられるが、特にスクリーン印刷法は高度な制御が可能であることから好ましい印刷法である。また、印刷に使用するマスク形状に合わせて本発明の組成物の粘度やチクソ性を調整することにより、最小線幅が数十μm〜数百μmレベルのパターンサイズに対応することができる。
【0053】
本発明の導電性回路形成方法では、印刷により回路を描画した後、硬化工程を経ることによって導電性回路が完成する。描画時の形状をよく維持したまま導電性回路パターンを完成するためには、硬化条件として、100〜150℃で1〜120分間の処理によって硬化させることが好ましい。また、ここでの硬化処理は、用いる基板に合わせ、ホットプレート、オーブン等の公知の加熱装置を用いて行うことができる。なお、本発明において、硬化後の抵抗率は、1.0×10-3Ω・cm以下、特に5.0×10-4Ω・cm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
[実施例1〜3、比較例1〜4]
[インク組成物の調製]
下記に示す成分を、表1,2に示す配合量で、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎:(株)シンキー社製)により均一に混合して実施例1〜3及び比較例1〜4のインク組成物を調製した。表1,2中、粘度は23℃でE型粘度計(東機産業(株)製RE80)により測定した値である。
(A)一分子中にケイ素原子に直結したアルケニル基を2個以上有し、粘度600mPa・sであるオルガノポリシロキサン
(B−1)23℃における粘度が5mPa・sで、水素ガス発生量が350ml/gであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B−2)式(4)で示されるアルコキシ基含有化合物
【化3】

(C)福田金属箔粉工業(株)製銀粉(AgC−237)をアセトンで洗浄、乾燥させたもの
(D−1)電気化学工業(株)製デンカブラックHS−100
(D−2)BET法による比表面積が200m2/gであり、表面がヘキサメチルジシラザンで処理された煙霧質シリカ
(E−1)塩化白金酸から誘導した、テトラメチルジビニルジシロキサンを配位子として有する白金触媒(白金原子量:1質量%)
(E−2)上記(E−1)とステアリン酸を質量比3/2で混合したもの
(F)ステアリン酸
(反応抑制剤)1−エチニル−1−シクロヘキサノール
【0056】
[導電率の測定]
上記の調製されたインク組成物を、枠内に1mm厚さで塗布し、加熱炉中150℃で1時間オーブンキュアすることにより硬化した導電性シリコーンゴムシートを得た。
導電率の測定は、定電流電源としてKEITHLEY社製237 High Voltage Source Measure Unit(定電流電源)とKEITHLEY社製2000 Multimeter(電圧計)を用いて行った。
【0057】
[形状保持性]
形状保持性能については、直径約0.8mm、高さ0.4mmのドット形状を用いて行った。まず、厚さ0.5mm、孔径0.75mmのテフロン(登録商標)製パンチングシートを用いてアルミニウム基板上にインクパターンを形成した。形成されたインクパターンを共焦点レーザー顕微鏡((株)キーエンス製VK−9700)を用いて三次元の形成観察を行い、ドットパターンの直径と基板からの最高高さを測定した。次にパターンが形成されたアルミニウム基板を加熱炉中150℃で1時間オーブンキュアし、ドットパターンを硬化させた。更に、再びレーザー顕微鏡を用いて硬化後のドットパターンの基板からの最高高さを測定した。硬化前のドットパターンの最高高さに対する硬化後のドットパターンの最高高さの比(%)を形状保持性として表1,2に示した。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径0.8mm、高さ0.4mmのドット形状の印刷パターンを形成後、80〜200℃で熱硬化させ、印刷された形状と硬化後の形状を比較した場合、ドット形状の高さの変化量が5%以内であり、溶剤を実質的に含有せず、付加型シリコーン樹脂形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせと、導電性粒子とを含み、更に、カーボンブラック、亜鉛華、錫酸化物、錫−アンチモン系酸化物、SiCから選ばれるチクソ化剤を含有する導電性回路描画用インク組成物を用い、印刷法によって回路を形成することを特徴とする導電性回路形成方法。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせは、少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応触媒の組み合わせである請求項1記載の導電性回路形成方法。
【請求項3】
前記導電性粒子は、金粒子、銀粒子、銅粒子、金メッキ粒子、銀メッキ粒子、銅メッキ粒子から選ばれる請求項1又は2記載の導電性回路形成方法。
【請求項4】
前記チクソ化剤がカーボンブラックである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性回路形成方法。
【請求項5】
前記印刷法はスクリーン印刷法である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導電性回路形成方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の導電性回路形成方法によって形成された導電性回路。

【公開番号】特開2013−89619(P2013−89619A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225661(P2011−225661)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】