説明

導電性基板、導電性基板アセンブリ、および導電性基板の製造方法

【課題】電子部品へ他の電子部品や検査器具を確実に接続することが可能な導電性基板を提供する。
【解決手段】導電性基板1は、基板としてのアルミナ自立基板2と、導電体6とを備える。アルミナ自立基板2は、2つの主表面を有し、当該2つの主表面のうちの一方から他方へ到達する複数の貫通孔5が形成され、アルミナからなる。導電体6は、貫通孔5の内部に配置され、上記2つの主表面のうちの一方から他方まで延在する。導電体6は、基板の内部において分岐している。アルミナ自立基板2の厚みは230μm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導電性基板、導電性基板アセンブリ、および導電性基板の製造方法に関し、より特定的には、複数の貫通孔が形成されたアルミナからなる基板を用いた導電性基板、導電性基板アセンブリ、および導電性基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の接続部材や検査用コネクタとして、異方性の導電性基板が知られている。また、この異方性の導電性基板は、近年、電子装置のコンパクト化の追求として、3次元積層回路(たとえば、回路基板自体に内部に電磁気的あるいは光学的機能を有する領域を構成し、ミクロンレベルの間隔で複数の基板を立体的に積層させることにより大幅なダウンサイジングを行う)への展開など、将来的にも非常に期待できる分野に係わるものである。
【0003】
たとえば、特開2008−270157号公報(以下、特許文献1と呼ぶ)では、絶縁性基板としての陽極酸化アルミナ板のナノホール閉孔を貫通化し、当該貫通化したナノホール(以降、貫通孔とも記す)の内部に導電体を配置し、当該導電体が陽極酸化アルミナ板の2つの主表面から露出している異方性の導電性基板およびその製造方法が開示されている。
【0004】
また、特開2005−85634号公報(以下、特許文献2と呼ぶ)では、絶縁性のフィルム基板中に、当該フィルム基板を貫通するように複数の導電体からなる導通路が形成され、当該導通路は互いに絶縁されており、また当該導通路の平面配置は千鳥配列となっている異方性の導電性部材が開示されている。
【0005】
また、特開2000−12619号公報(以下、特許文献3と呼ぶ)では、接着性の絶縁材料からなるフィルム中に、当該フィルムを貫通するように複数の導電体からなる導通路が形成され、当該導通路は互いに絶縁されており、導通路の径が10μm〜30μmであって、隣接する導通路の間隔が上記径の0.5倍〜3倍である異方性の導電性フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−270157号公報
【特許文献2】特開2005−85634号公報
【特許文献3】特開2000−12619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来の異方性の導電性基板や導電性部材においては、以下のような問題があった。すなわち、いずれの導電性部材においても、導電体はベースとなる絶縁性の基板やフィルム中にそれぞれが独立した1本の線状に延びるように配置されている。そのため、当該導電体が途中で断線するといった異常が発生した場合には、当該導電体により絶縁性の基板の表裏面間の導通を図ることはできなくなる。また、途中の断線であるのかそれ以外の要因であるのかは、例えば、X線透過法などの非破壊調査であっても、さらに、透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いた破壊調査であっても解明は困難を極める。また、導電性部材を介して電子部品と接続されるべき他の電子部品や検査器具と導電性部材の導電体との接触不良などが起きるといった場合もある。この結果、当該導電性部材を電子部品の接続部材や検査用コネクタとして用いる場合に、電子部品へ他の電子部品や検査器具を確実に接続することが困難になる場合があった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、電子部品へ他の電子部品や検査器具を確実に接続することが可能な導電性基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従った導電性基板は、基板と、導電体とを備える。基板は、2つの主表面を有し、当該2つの主表面のうちの一方から他方へ到達する複数の貫通孔が形成され、アルミナからなる。導電体は、貫通孔の内部に配置され、上記2つの主表面のうちの一方から他方まで延在する。貫通孔は基板の内部において単一孔であるか、あるいは少なくとも2つの主表面のうちの一方に相対的に近い領域で分岐している。導電体は貫通孔の形状に応じて単一線状あるいは分岐した形状を有している。基板の厚みは230μm以上である。また、基板の厚みは好ましくは300μm以上、さらに好ましくは400μm以上である。
【0010】
このようにすれば、導電体が基板の内部において分岐している場合、分岐した先の部分(導電体が2本以上のほぼ平行に延びる複数の導電体部分となっている部分)において、導電体部分の一部に断線などが発生しても、他の導電体部分を介して導電体全体としての導通を維持することができる。この結果、当該導電性基板を介して電子部品への他の電子部品や検査器具の接続を確実に行なうことができる。
【0011】
また、導電体が分岐している場合であって、分岐した先の部分が基板の主表面の一方に露出している場合、1つの導電体が上記主表面の複数箇所において露出した導電体部分と電気的に接続された状態となる。このため、導電性基板と接続される検査機器などの電極と、当該導電体とを接続する場合に、複数の導電体部分のうちの一部と検査機器などの電極との間の接続に不具合が発生しても、複数の導電体部分のうちの他の一部と当該電極とが電気的に接続されていれば、当該電極と導電体との導通を確保することができる。
【0012】
また、基板の厚みが230μm以上であるので、自立膜としての導電性基板の取扱いが容易である。すなわち、基板の厚みが十分厚く、導電性基板自体で十分その形状を維持できるので、形状維持のためのサポート材などを導電性基板に接続する必要が無い。また、上述のように基板の厚みが230μm以上となっていることから、上記導電性基板はその形状を外部のサポート無しに維持できる、いわゆる自立基板となっている。なお、この基板の厚みが好ましくは300μm以上、さらに好ましくは400μm以上であると曲げ強度が膜厚とともにさらに高くなるため、外部負荷応力に対して形状維持する耐力が大きくなり、用途展開が広くなる。但し、厚みの上限は用途、要求性能、陽極酸化処理を含む各製造工程における製造能力、トータルコストなどを考慮して選択すればよい。このため、電子部品へ当該導電性基板を介して他の電子部品や検査器具を接続するときに、当該導電性基板が変形することにより当該接続がうまくいかない、といった問題の発生を抑制できる。
【0013】
この発明に従った導電性基板アセンブリは、上記導電性基板と、他の基板とを備える。他の基板は、導電性基板の2つの主表面のうちの少なくとも一方において、導電体と電極を介して電気的に接続される。電極において、導電性基板の導電体に接触する接触部は、当該主表面に形成された複数の貫通孔のうち少なくとも3つを覆うように形成されている。この場合、電極の上記接触部と導電体との接続部は3箇所以上となるため、電極と導電体との接合強度を十分高くすることができる。
【0014】
この発明に従った導電性基板の製造方法は、上述した本発明に従った導電性基板の製造方法であって、以下の工程を実施する。すなわち、2つの主表面を有し、当該2つの主表面のうちの一方から他方へ到達する複数の貫通孔が形成された、アルミナからなる基板を準備する工程を実施する。そして、貫通孔の内部に配置され、2つの主表面のうちの一方から他方まで延在する導電体を形成する工程を実施する。
【0015】
このようにすれば、本発明に従った導電性基板を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子部品へ他の電子部品や検査器具を確実に接続することが可能な導電性基板を得ることができる。また、本発明によれば、当該導電性基板と他の基板とが確実に接続された導電性基板アセンブリを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による導電性基板の断面模式図である。
【図2】図1に示した導電性基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】図1に示した本発明による導電性基板の第1の変形例を示す断面模式図である。
【図4】本発明による導電性基板の実施の形態2を示す断面模式図である。
【図5】本発明による導電性基板の実施の形態3を示す断面模式図である。
【図6】本発明による導電性基板の実施の形態4を示す断面模式図である。
【図7】本発明による導電性基板の実施の形態5を示す断面模式図である。
【図8】図7に示した導電性基板1の変形例を示す断面模式図である。
【図9】本発明による導電性基板の実施の形態6を示す断面模式図である。
【図10】図9に示した導電性基板1の変形例を示す断面模式図である。
【図11】本発明による導電性基板の実施の形態7を示す断面模式図である。
【図12】図11に示した導電性基板の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図13】本発明による導電性基板の実施の形態8を示す断面模式図である。
【図14】本発明による導電性基板の実施の形態9を示す断面模式図である。
【図15】本発明による導電性基板の実施の形態10を示す断面模式図である。
【図16】図15に示した導電性基板の変形例を示す断面模式図である。
【図17】本発明による導電性基板の実施の形態11を示す断面模式図である。
【図18】本発明による導電性基板の実施の形態12を示す断面模式図である。
【図19】本発明による導電性基板の実施の形態13を示す断面模式図である。
【図20】本発明による導電性基板の実施の形態14を示す断面模式図である。
【図21】本発明による導電性基板の実施の形態15を示す断面模式図である。
【図22】本発明による導電性基板の実施の形態16を示す断面模式図である。
【図23】本発明に従った導電性基板を用いた電子部品(導電性基板アセンブリ)としてのアセンブリを示す側面模式図である。
【図24】導電性基板の表面に集電側検出端子が接続された状態を説明するための模式図である。
【図25】図23に示したアセンブリの第1の変形例を示す模式図である。
【図26】図23に示した本発明によるアセンブリの第2の変形例を示す模式図である。
【図27】図23に示した本発明によるアセンブリの第3の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0019】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態1を説明する。
【0020】
図1を参照して、本発明による導電性基板1は、陽極酸化アルミナの自立膜を用いた導電性の基板であって、貫通孔5が形成されたアルミナ自立基板2と、当該貫通孔5の内部に充填された導電体6とを備える。貫通孔5は、相対的に径の大きな貫通孔大径部3と、相対的に径の小さな貫通孔小径部4とからなる。貫通孔大径部3と貫通孔小径部4とは繋がるように配置されている。また、1つの貫通孔大径部3に対して、複数の(図1においては各々2つの)貫通孔小径部4が繋がるようになっている。
【0021】
このようにすれば、導電体6がアルミナ自立基板2の内部において分岐しているので、分岐した先の部分(導電体6のうち、2本のほぼ平行に延びる貫通孔小径部4の内部に配置された導電体部分)において、導電体6の一部(たとえば一方の貫通孔小径部4に位置する導電体6など導電性基板基板1表面に近いほど外的要因に起因する応力負荷を受けやすい−たとえば、検査用パッドなど当該導電性基板1に接続する部品で使用する為、ハンドリング時に応力集中や繰り返し応力を受けやすい)に断線などが発生しても、他の導電体部分(他方の貫通孔小径部4に位置する導電体6)を介して導電体6全体としての導通を維持することができる。この結果、当該導電性基板1を介して電子部品への他の電子部品や検査器具の接続を確実に行なうことができる。
【0022】
また、導電体6が分岐しているので、図1の導電性基板1では、1つの導電体6が、当該導電性基板1の下部表面の複数箇所(図1では2箇所)において露出した導電体6の部分(貫通孔小径部4の内部に配置された部分)を含む。このため、導電性基板1と接続される検査機器などの電極を当該下部表面側に接続すれば、導電体6の複数の部分(貫通孔小径部4の内部に配置された部分)の一部と検査機器などの電極との間の接続に不具合が発生しても、導電体6の複数の部分のうちの他の一部と当該電極とが電気的に接続されていれば、当該電極と導電体6との導通を確保することができる。
【0023】
また、図1に示した導電性基板1では、アルミナ自立基板2の厚みは230μm以上となっている。このため、自立膜としての導電性基板1の取扱いが容易である。すなわち、アルミナ自立基板2の厚みが十分厚く、導電性基板1自体で十分その形状を維持できるので、形状維持のためのサポート材などを導電性基板1に接続する必要が無い。
【0024】
図2を参照して、図1に示した導電性基板1の製造方法を説明する。
図2に示すように、図1に示した導電性基板1の製造方法においては、まず基板準備工程(S10)を実施する。具体的には、純アルミニウムからなる基板を準備する。準備する基板としては、任意のサイズ、任意の形態のものを用いることができる。たとえば準備する基板として平面形状は実質的に正方形状(たとえば縦60mm×横60mm)であって板厚が0.2mm以上2mm以下、好ましくは0.5mmといったサイズの基板を用いることができる。
【0025】
次に陽極酸化工程(S20)を実施する。具体的には、準備した基板を処理液10に浸漬する。そして、当該基板を陽極とし、この基板に対向するように陰極を配置し陰極と陽極との間に所定の電圧を負荷する。このようにして、準備した基板に対する陽極酸化処理を行なう。このとき、陽極酸化処理の処理条件を途中で変更することにより、貫通孔大径部3(図1参照)と貫通孔小径部4(図1参照)を順次形成することができる。たとえば、陽極酸化処理の開始時における印加電圧を、当該処理の途中で低下させることにより、形成される貫通孔の径をより小さくすることができる。
【0026】
なお、ここで用いる処理液としてはたとえば濃度が0.5mol%以上1mol%以下の希硫酸液を用いることができる。また、このときの処理液の処理温度としてはたとえば5℃以上15℃以下とすることができる。また、上述した陰極としてはたとえばプラチナ(Pt)からなる板状の電極を用いることができる。このような陽極酸化処理(S20)を実施することにより、純アルミニウムからなる基板の表面が陽極酸化処理され、複数の非貫通孔(この過程では表面のみが開孔しているナノホール)が基板の表面に対してほぼ垂直な方向に延びる状態のアルミナ自立基板2(図1参照)となるべきアルミナ層が基板1の表面に形成される。
【0027】
次に、図2に示すように基板除去工程(S30)を実施する。具体的には、上述したアルミナ層が表面に形成された基板において、純アルミニウムからなる部分(アルミナ層になっていない部分)を除去する。この基板除去工程(S30)においては、従来周知の任意の方法を用いることができる。たとえば、臭素濃度が5体積%以上10体積%以下の臭素メタノール混合液を25℃以下の温度に保持した状態で、当該臭素メタノール混合液にアルミナ層が形成された基板を1時間以上24時間以下の時間浸漬(あるいは、攪拌を併用しても良い)することにより、当該基板から陽極酸化処理されていないアルミニウムの部分を溶解除去することができる。その後、適宜、貫通孔形成工程(ナノホールがバリア層で閉孔状態になっている裏面側を開孔することで全孔に亘って貫通させるナノホール貫通化処理のみを行なう場合、またはナノホール貫通化処理を行なった後に貫通孔の孔壁を溶解させるナノホールの拡径処理を組合わせる場合がある)を行なった。たとえば当該処理として、作製した陽極酸化アルミナからなる自立基板を、液温が20℃以下とした、濃度が0.5〜1mol%の希硫酸溶液中に10分以上浸漬する。この結果、ナノホールが基板主表面の上部表面から下部裏面にまで完全開孔した貫通孔5が形成されたアルミナ自立基板2を得ることができる。
【0028】
なお、上述した貫通孔形成工程(貫通化およびポアーワイドニング)は周知の処理液を用いて実施することができるため、処理液に応じた条件(濃度、温度、処理時間の組み合わせ)によりアルミナの溶解速度を制御すればよい。そのため、貫通孔形成工程などの条件は、今回の組み合わせ条件に限られることはない。たとえば、量産時において、上記条件は処理コスト(設備、時間など)に合わせて、選択できるものであり、例えば、処理液の温度を5℃以下とすれば(冷却装置が必要にはなるが)、貫通化処理に20時間程度と長時間必要になるものの、皮膜溶解速度(アルミナの溶解速度)が遅いため、ロッドごとの処理時間の固体差(ばらつき)が発生しにくく、結果的に製品の歩留まりの低下を抑制できる、などのメリットなどがある。
【0029】
次に、導電体形成工程(S40)を実施する。具体的には、アルミナ自立基板2に形成された貫通孔5の内部に、アルミナ自立基板2の表面側から裏面側にまで到達するように導電体6を充填する。この導電体形成工程(S40)においては、従来周知の任意の方法を用いて導電体6を形成することができる。たとえば、導電体6となるべき金属を、電着法を用いて貫通孔5の内部に充填してもよい。なお、これらの工程においては適宜、真空ポンプによる脱気処理−ナノホール孔内を排気することによりメッキ液の孔内浸漬性を良くすることができる。この結果、図1に示すような導電性基板1を得ることができる。
【0030】
なお、導電体6を形成する方法としては、以下のような方法を用いてもよい。すなわち、無電解ニッケルメッキ液にアルミナ自立基板2を浸漬し、当該メッキ液を貫通孔5の内部に導入する。そして、貫通孔5の内壁にニッケルメッキ層を形成することにより導電体6を形成してもよい。
【0031】
図3を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態1の変形例を説明する。
図3を参照して、導電性基板1は基本的には図1に示した導電性基板と同様の構造を備えるが、貫通孔5の内部の導電体6の形状が異なっている。すなわち、貫通孔5の内部においては、粒状の複数の導電体6が充填されている。隣接する粒状の導電体6は互いに表面を介して接続された状態になっている。このため、導電性基板1の表面(上部表面)から裏面(下面)まで複数の粒状の導電体6が電気的に接続された状態になっている。このような構成の導電性基板1によっても、図1に示した導電性基板1と同様の効果を得ることができる。
【0032】
また、図3に示した導電性基板1の製造方法は、基本的には図2に示した導電性基板の製造方法と同様であるが、導電体形成工程(S40)における導電体6の形成方法が異なっている。すなわち、図3に示した導電性基板1の製造方法では、図2に示した工程(S10)〜工程(S30)までを実施したあと、工程(S40)として、まず微細な導電性金属粉末(たとえば直径が1nm以上5nm以下のAu粉末)を含有する処理液(たとえば導電性金属粉末を含有するトルエンなどの有機溶媒)を準備する。当該処理液にアルミナ自立基板2を浸漬して貫通孔5の内部に当該処理液を充填する。その後、アルミナ自立基板2を真空中または不活性ガス雰囲気中で所定温度に加熱し、貫通孔5の内部で導電性金属粉末が互いに接続固定された状態とする。この結果、導電性金属粉末(つまり図3の粒状の導電体6)の結合体(焼結体)として導電体6が構成される。
【0033】
(実施の形態2)
図4を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態2を説明する。
【0034】
図4を参照して、本発明による導電性基板1は、基本的には図1に示した導電性基板1と同様の構造を備えるが、導電性基板1の一方の主表面上においてアルミナからなる3次元網目構造層15が形成されている点が異なっている。この3次元多孔構造に相当する3次元網目構造層15においては、微細な貫通孔が網目状に形成されている。この貫通孔の内部には、貫通孔5の内部と同様に導電体6が充填されている。つまり、3次元網目構造層15では、導電体6も3次元網目構造を有している。図4に示した導電性基板1においては、貫通孔小径部4よりも相対的に大きな径を有する貫通孔大径部3に連なるように3次元網目構造層15が配置されている。このような構造の導電性基板1によっても、図1に示した導電性基板と同様の効果を得ることができる。さらに、図4に示した導電性基板1では、3次元網目構造層15の表面において極めて小さな孔径の導電体6の部分が分散して露出しているため、検査機器などの電極と導電体6との接続をより確実に行なうことができる。
【0035】
図4に示した導電性基板1の製造方法は、基本的に図2に示した導電性基板の製造方法と同様であるが、陽極酸化工程(S20)の後に3次元網目構造層を形成する工程を実施する点が異なっている。この3次元網目構造層を形成する工程は、独立した工程として実施してもよいし、陽極酸化工程(S20)や基板除去工程(S30)において当該3次元網目構造層を形成する工程を実施してもよい。この3次元網目構造層を形成する工程においては、任意の方法を用いることができる。たとえば、基板除去工程(S30)において、処理液を所定の温度に(たとえば臭素メタノール混合液の温度を室温(20℃程度)に保持することにより、下地のアルミニウムからなる部分を除去すると共に、3次元網目構造層15を構成する3次元網目構造のアルミナ層を得ることができる。また、陽極酸化工程(S20)において、当該陽極酸化処理が終わった後、基板を処理液に浸漬した状態で、処理液の温度を常温(室温、たとえば20℃〜30℃)にし、電極間に電圧を印加しない状態(無負荷電圧状態)にすることで、3次元網目構造層15を構成する3次元網目構造のアルミナ層を得ることができる。さらに、陽極酸化工程(S20)が完了した後、当該アルミナ自立基板2を別の処理液(たとえば陽極酸化工程(S20)において用いられた処理廃液(希硫酸廃液))に常温下で浸漬する、という方法を用いてもよい。
【0036】
(実施の形態3)
図5を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態3を説明する。
【0037】
図5に示した導電性基板1は、基本的には図4に示した導電性基板1と同様の構造を備えるが、3次元網目構造層15の配置が異なっている。具体的には、図5に示した導電性基板1においては、貫通孔大径部3よりも相対的に小きな径を有する貫通孔小径部4に連なるように3次元網目構造層15が配置されている。3次元網目構造層15では、図4に示した導電性基板1と同様に、導電体6も3次元網目構造を有している。3次元網目構造層15を構成する導電体6は、貫通孔小径部4の内部に充填された導電体6と電気的に接続された状態になっている。
【0038】
このような構造の導電性基板1によっても、図4に示した導電性基板1と同様の効果を得ることができる。また、図5に示した導電性基板1は、基本的に図4に示した導電性基板1と同様の製造方法を用いて製造することができる。
【0039】
(実施の形態4)
図6を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態4を説明する。
【0040】
図6を参照して、導電性基板1は、基本的には図4に示した導電性基板1と同様の構成を備えるが、導電性基板の表面および裏面の両方の主表面に3次元網目構造層15が配置されている点が異なる。2つの主表面上に配置された3次元網目構造層15において、3次元網目構造を有する導電体は、それぞれ貫通孔5の内部に充填された導電体6と電気的に接続される。このような構造の導電性基板1によっても、図4および図5に示した導電性基板1と同様の効果を得ることができる。
【0041】
(実施の形態5)
図7を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態5を説明する。
【0042】
図7を参照して、本発明による導電性基板1は、基本的には図4に示した導電性基板1と同様の構造を備えるが、貫通孔5の構成が異なっている。すなわち、図7に示した導電性基板1では、アルミナからなる自立基板の一方の主表面(3次元網目構造層15が形成された側の主表面)から反対側の主表面にかけて延びるように複数の貫通孔5が形成されている。貫通孔5はそれぞれほぼ全長に亘って同じ径を有している。すなわち、図4などに示したように径の異なる貫通孔大径部3および貫通孔小径部4を有するといった構成ではなく貫通孔5はほぼ全長に亘って同じ径を有する。この貫通孔5の内部には導電体6が充填された状態になっている。そして、3次元網目構造層15に含まれる3次元網目構造の導電体6は、ほぼ同じ径の貫通孔5の内部に充填された導電体6と接続されている。つまり、異なる観点から言えば、導電体6は、貫通孔5の内部に位置する部分から、3次元網目構造層15において分岐している(貫通孔5の内部の1つの導電体6が3次元網目構造層15において複数本の(3次元網目構造を有する)導電体6の部分に分岐している)。このような構成の導電性基板1によっても、図4に示した導電性基板1と同様の効果を得ることができる。
【0043】
図8を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態5の変形例を説明する。
図8を参照して、導電性基板1は、基本的には図7に示した導電性基板1と同様の構造を備えるが、貫通孔5の内部の導電体6の形態が異なっている。すなわち、図8に示した導電性基板1においては、貫通孔5の内部には、当該貫通孔5の内壁に沿って導電体6が所定の厚みだけ堆積した状態で形成されている。そして、貫通孔5のほぼ中央部には、貫通孔5の延在方向に沿って延びるように空孔8が形成された状態となっている。
【0044】
なお、3次元網目構造層15においては、アルミナからなる層に3次元網目構造を有する貫通孔(網目状孔)が多数形成され、当該網目状孔の内部に導電体6が形成されている。導電体6は、網目状孔の内部を充填していてもよいが、貫通孔5の内部と同様に、その中央部に空孔(空隙)が形成されていてもよい。なお、電気的に接続状態が維持されていれば貫通した空孔、断裂した空孔であっても十分機能を有している。さらに、貫通空孔の場合、導電体を形成後、空孔内に例えば有機樹脂などを浸漬、真空吸引などで内部充填させることも可能であり、これにより基板強度を向上させることも出来る。
【0045】
このように空孔8が形成されていても、3次元網目構造層15における網目状孔や貫通孔5の内壁に沿って導電体6が延在するように形成されているため、図7に示した導電性基板1と同様に、3次元網目構造層15の表面に露出した導電体6と、アルミナからなる自立基板2の裏面側(3次元網目構造層15が形成された側の主表面と反対側の主表面)に露出する導電体6とを電気的に接続された状態とすることができる。
【0046】
なお、図8に示した導電性基板1は、基本的には図4、図5、図7に示した導電性基板1と同様の方法により製造することができるが、導電体形成工程(40)(図2参照)において、空孔8を有するように導電体6が形成されている。具体的には、たとえば無電解ニッケルメッキ液を用いて、貫通孔5の内壁上に導電体層を成長させることにより、空孔8を有する導電体6を形成することができる。この場合、図8に示した導電性基板1における導電体6の形成に要する時間を、図7に示した導電性基板1の導電体6の形成に要する時間より短くできる。したがって、導電性基板1の製造に要する時間を短縮できる。
【0047】
(実施の形態6)
図9を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態6を説明する。
【0048】
図9を参照して、本発明による導電性基板1は、基本的には図7に示した導電性基板1と同様の構造を備えるが、導電性基板の一方の主表面のみではなく両方の主表面にそれぞれ3次元網目構造層15が形成されている点が異なっている。両方の3次元網目構造層15における網目状の貫通孔(網目状孔)の内部およびアルミナ自立基板2を貫通するように形成された貫通孔5の内部をそれぞれ充填するように導電体6が形成されている。このようにしても、図7に示した導電性基板1と同様に、一方の主表面に形成された3次元網目構造層15の表面に露出する導電体6と、反対側の主表面に形成された3次元網目構造層15の表面に露出した導電体6とを貫通孔5の内部に充填された導電体6を介して電気的に接続された状態とすることができる。この結果、図6に示した導電性基板1と同様の効果を得ることができる。また、図9に示した導電性基板1は、基本的には図6に示した導電性基板1の製造方法と同様の製造方法を用いて製造することができる。
【0049】
図10を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態6の変形例を説明する。
図10を参照して、本発明による導電性基板1は、基本的には図9に示した導電性基板1と同様の構造を備えるが、貫通孔5の内部における導電体6の構成が異なっている。すなわち、図10に示した導電性基板1においては、貫通孔5の内部においては導電体6が貫通孔5の内壁に沿って延びるように形成されており、貫通孔5の中央部には、貫通孔5の延在方向に沿って延びるように空孔8が形成されている。なお、3次元網目構造層15における貫通孔内部においては導電体が当該貫通孔内を充填するように形成されているが、3次元網目構造層15においても導電体6内部に空孔が形成されていてもよい。このような構成によっても、図9に示した導電性基板1と同様の効果を得ることができる。また、図10に示した導電性基板1の製造方法は、基本的に図9に示した導電性基板1の製造方法と同様であるが、導電体形成工程(S40)において、たとえば無電解ニッケルメッキ液を用いて、導電体中に空孔8が形成されるように導電体6を形成している。
【0050】
(実施の形態7)
図11を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態7を説明する。
【0051】
図11を参照して、本発明による導電性基板1は、基本的には図1に示した導電性基板1と同様の構造を備えるが、導電性基板の一方の主表面17および当該一方の主表面と反対側に位置する他方の主表面18において導電体6の一部が主表面17、18から突出した状態となっている。このようにすれば、主表面17、18から突出した導電体6の部分が、他の部材(たとえば他の基板や検査機器など)の表面に形成された電極と容易に接触することになる。この結果、図1に示した導電性基板1と同様の効果を得られるとともに、当該導電性基板1と他の部材との導通を容易に図ることができる。
【0052】
図12を参照して、図11に示した導電性基板の製造方法を説明する。
図12に示した導電性基板の製造方法において、基板準備工程(S10)、陽極酸化工程(S20)、基板除去工程(S30)、導電体形成工程(S40)はすべて図2に示した導電性基板の製造方法と同様である。但し、図12に示した導電性基板の製造方法においては、導電体形成工程(S40)を実施した後、後処理工程(S50)を実施する点が異なっている。具体的には、導電体6を形成した後、アルミナ自立基板2の主表面17、18を後退させる(すなわちアルミナ自立基板2の主表面17、18を(所定の厚さだけ)部分的に除去する)処理を行なう。たとえば、アルミナ自立基板2を溶解する薬液に導電性基板1を浸漬するといった処理を行なう。この結果、アルミナ自立基板2の厚みは工程(S50)を実施する前より薄くなる。そして、アルミナ自立基板2の主表面17、18が後退することにより導電体6の両端部が表面17、18から突出した状態となる。このようにして、図11に示す導電性基板を得ることができる。
【0053】
(実施の形態8)
図13を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態8を説明する。
【0054】
図13を参照して、本発明による導電性基板1は、基本的には図1に示した導電性基板1と同様の構造を備えるが、貫通孔5の内部に充填された導電体6の構成が異なっている。すなわち、図13に示した導電性基板1においては、貫通孔5の内部に、アルミナ自立基板2の1つの主表面に近い領域に導電体6b、6cの層が形成され、貫通孔5の内周側(すなわち導電体6b、6cによって挟まれた領域)に、導電体6b、6cとは異なる材質あるいは異なる密度を有する導電体6aが配置されている点が異なっている。導電体6a〜6cは互いに電気的に接続された状態になっている。このようにしても、図1に示した導電性基板と同様の効果を得ることができる。さらに、検査機器などの電極と接触する部分である導電体6b、6cについては、たとえば耐磨耗性の高い材料を用い、導電体6aについては別の特性を有する材料(たとえば導電性の相対的に良好な材料)を用いる、といった対応が可能になる。
【0055】
図13に示した導電性基板1は、基本的には図1に示した導電性基板1の製造方法と同様の製造方法によって形成することができるが、導電体6を形成する工程が異なっている。たとえば、以下のような方法で導電体6を形成することができる。すなわち、図2に示した導電性基板の製造方法を実施した後、アルミナ自立基板2の主表面に露出する導電体6の表面層を導電体6の材質のみが溶解される所定の薬液などにより溶解する。そして、導電体6b、6cとなるべき別の導電体(アルミナ自立基板2の厚み方向中央部に位置する導電体6aとは異なる材質の導電体)を新たに貫通孔5の開口端部付近(薬液で導電体6が除去された領域)に形成する。
【0056】
あるいは、図2に示した導電性基板の製造方法を実施した後、表面に導電体6aと合金を構成できる異種導電性元素を、例えばCVDなど化学蒸着法あるいは真空蒸着、スパッタ蒸着などの物理蒸着法により表面蒸着した後、不活性ガス等、適当なガス雰囲気下で適当な時間の合金化熱処理を行うことにより、表面拡散で導電体6の表面近傍では合金化を進行させることが出来る。この結果、最終的に導電体が孔中央部と表面近傍部で組成の異なる導電体6a〜6cからなる導電体6を形成することができる。また、あるいは、図2に示した導電性基板の製造方法を実施した後、表面に所定の元素、例えば、窒素、Si元素などをイオン注入すれば導電体6の表面近傍では注入イオンの元素濃度が高くなる。この結果、導電体の結晶格子に歪が導入されることとなり、導電体6の表面硬度を上げることが出来るので、結果的に耐摩耗性を向上させることができる。
【0057】
このようにして、導電体6a〜6cからなる導電体6を形成することができる。
(実施の形態9)
図14を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態9を説明する。
【0058】
図14を参照して、本発明による導電性基板1は、基本的には図13に示した導電性基板1と同様の構造を備えるが、導電体6の一部分を構成する導電体6aの構成が異なっている。すなわち、図14に示した導電性基板1においては、貫通孔5の内部に充填された導電体6aが、貫通孔5の延在方向に延びる空孔8をその中央部に備えている。導電体6aは、貫通孔5の内壁に沿って延在するように形成されている。図では空孔は均一な配置、寸法で描画されているが、当然、任意の配置、寸法、個数(密度)であっても、導電体6aの両端に亘って電気的に接続されていることが維持されていれば、このような導電体6aによっても、貫通孔5の両端の開口部近傍に位置する導電体6b、6cを互いに電気的に接続することができる。そして、図14に示した導電性基板1は、図13に示した導電性基板1と同様の効果を得ることができる。
【0059】
図14に示した導電性基板1の製造方法は、基本的に図13に示した導電性基板1の製造方法と同様であるが、導電体6aの製造方法が一部異なる。すなわち、導電体6aを形成するときに、空孔8が形成されるように(たとえば無電解ニッケルメッキ液などを用いて)導電体6aを形成する。あるいは、極端な場合として無空孔型の導電体の製造工程で何らかの原因で導電体に空孔が発生した基板を流用活用するといった低コスト化が可能でもある。このようにして、図14に示した導電性基板1を得ることができる。
【0060】
(実施の形態10)
図15を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態10を説明する。
【0061】
図15を参照して、本発明による導電性基板1の実施の形態10は、基本的には図1に示した導電性基板1と同様の構成を備えるが、貫通孔5の形状が異なっている。すなわち、図15に示した導電性基板1においては、アルミナ自立基板2の2つの主表面近傍において相対的に小さな径を有する貫通孔小径部4が分岐形成されている。そして、この両端の貫通孔小径部4を繋ぐように、相対的に大きな径を有する貫通孔大径部3が形成されている。図15に示した導電性基板1においては、一方の主表面(図15における上部表面)近傍に形成された複数(図15では2つ)の貫通孔小径部4と連通するように1つの貫通孔大径部3が形成され、他方の主表面(図15における下部表面)近傍においては同様に上述した貫通孔大径部3と繋がるように複数の貫通孔小径部4が形成されている。貫通孔小径部4と貫通孔大径部3とは、ほぼ同じ方向に延びている。この貫通孔5の内部には導電体6が充填された状態になっている。
【0062】
このような構成の導電性基板1によっても、図1に示した導電性基板と同様の効果を得ることができる。また、図15に示した導電性基板1の製造方法は、基本的に図1に示した導電性基板1の製造方法と同様であるが、陽極酸化工程(S20)における条件が異なっている。具体的には、陽極酸化処理を行なうときの印加電圧を、形成される貫通孔5の径が図15に示すように変化するように変更する。たとえば、最初に、印加電圧を(貫通孔小径部4が形成されるような)初期値から途中で高くし、一定時間そのまま保持することにより貫通孔大径部3を形成した後、再び印加電圧を上記初期値へと低下させて他端側の貫通孔4を形成する、という操作を行なう。このようにして、貫通孔5の形状を制御して図15に示した導電性基板1を得ることができる。
【0063】
図16を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態10の変形例を説明する。
図16を参照して、導電性基板1は、基本的には図15に示した導電性基板1と同様の構造を備えるが、貫通孔5の内部に配置された導電体6の構成が異なっている。すなわち、図16に示した導電性基板1において、貫通孔5の内部においては、当該貫通孔5の内周に沿って延びるように導電体6が形成されるとともに、貫通孔5のほぼ中央部に空孔8が形成されている。当該空孔8は貫通孔5の延びる方向に沿って延びている。このような構造によっても、図15に示した導電性基板1と同様の効果を得ることができる。さらに、導電体6の形成に要する時間を、図15に示した導電性基板1の製造方法における当該時間より短くすることができる。なお、当然ながら空孔8は導電体6の両端に亘って電気的に接続されていれば任意の寸法、形態、個数(密度)に係わらず所望の性能を保持できる。
【0064】
(実施の形態11)
図17を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態11を説明する。
【0065】
図17を参照して、導電性基板1は基本的には図15に示した導電性基板1と同様の構造を備えるが、アルミナ自立基板2の一方の主表面側に3次元網目構造層15が形成されている点が異なっている。この3次元網目構造層15においては、貫通孔5に連なる複数の網目状の貫通孔が形成されている。3次元網目構造層15に形成された3次元構造の貫通孔の内部には、導電体6が充填された状態になっている。つまり、3次元網目構造層15における導電体6も、3次元網目構造を有する。3次元網目構造層15内に配置された導電体6は、貫通孔5の内部に配置された導電体と電気的に接続された状態になっている。このようにすれば、図15に示した導電性基板1によって得られる効果に加えて、図4に示した導電性基板1によって得られる効果も得ることができる。
【0066】
また、図17に示した導電性基板1の製造方法は、基本的には図15に示した導電性基板1の製造方法と同様であるが、3次元網目構造層15を形成する工程をさらに実施する点が異なっている。3次元網目構造層15を形成する工程としては、基本的には図4に示した導電性基板1の製造方法における3次元網目構造層15を形成する工程と同様の工程を用いることができる。
【0067】
(実施の形態12)
図18を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態12を説明する。
【0068】
図18を参照して、導電性基板1は、基本的には図17に示した導電性基板1と同様の構造を備えるが、3次元網目構造層15が図18における上面および下面の両方に形成されている点が異なっている。それぞれの3次元網目構造層15においては、形成されている網目状の貫通孔の内部に導電体6が充填された状態となっている。つまり、3次元網目構造層15における導電体6も、3次元網目構造を有する。そして、それぞれの3次元網目構造層15における貫通孔の内部に充填された導電体6は、貫通孔5の内部に充填された導電体6と電気的に接続された状態となっている。このため、図18に示した導電性基板1は、図15に示した導電性基板1により得られる効果に加えて、図6に示した導電性基板と同様の効果を得ることができる。
【0069】
(実施の形態13)
図19を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態13を説明する。
【0070】
図19を参照して、本発明による導電性基板1は、基本的には図15に示した導電性基板と同様の構成を備えるが、導電体6の両端部がアルミナ自立基板2の主表面17、18から突出した状態になっている点が図14に示した導電性基板1とは異なっている。この結果、図15に示した導電性基板1による効果を得られるとともに、導電性基板1と他の部材との導通をより容易に図ることができる。
【0071】
図19に示した導電性基板1の製造方法は、基本的に図15に示した導電性基板1の製造方法と同様であるが、図12に示した製造方法と同様に、基板準備工程(S10)〜導電体形成工程(S40)を実施した後にアと処理工程(S50)を実施する点が異なっている。アと処理工程(S50)では、図14に示した導電性基板1の製造方法と同様に、アルミナ自立基板2の主表面17、18を後退させる処理を行なう。このようにして、図19に示す導電性基板1を得ることができる。
【0072】
(実施の形態14)
図20を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態14を説明する。
【0073】
図20を参照して、本発明による導電性基板1は、基本的には図15に示した導電性基板1と同様の構造を備えるが、導電体6の構成が異なっている。具体的には、図20に示した導電性基板1においては、アルミナ自立基板2の主表面に近い領域に位置する導電体6b、6cと、貫通孔5の内部において導電体6b、6cの間に挟まれた領域に位置する導電体6aとが異なる組成または異なる密度を有するように構成されている。このようにすれば、図15に示した導電性基板1による効果に加えて、図13に示した導電性基板1と同様の効果を得ることができる。
【0074】
なお、図20に示した導電性基板1の製造方法は、基本的に図15に示した導電性基板1の製造方法と同様であるが、導電体6の製造方法が異なる。つまり、図20に示した導電性基板1における導電体6の製造方法は、図13に示した導電性基板1における導電体6の製造方法と同様である。
【0075】
(実施の形態15)
図21を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態15を説明する。
【0076】
図21を参照して、本発明による導電性基板1は、基本的には図20に示した導電性基板と同様の構成を備えるが、貫通孔5の内部において導電体6b、6cの間に挟まれた位置に配置された導電体6aの構成が異なっている。具体的には、図21に示した導電性基板1においては、導電体6aは貫通孔5の内壁に沿って配置されており、貫通孔5のほぼ中央部に空孔8が形成されている。空孔8は貫通孔5の延在方向に沿って延びるように形成されている。このような構成によっても、図20に示した導電性基板1と同様の効果を得ることができる。
【0077】
図21に示した導電性基板1の製造方法は、基本的には図20に示した導電性基板1の製造方法と同様であるが、導電体6aの製造方法が異なっている。導電体6aの製造方法は、基本的に図14における導電体6aの製造方法と同様である。
【0078】
(実施の形態16)
図22を参照して、本発明による導電性基板の実施の形態16を説明する。
【0079】
図22を参照して、本発明による導電性基板1は、基本的には図1に示した導電性基板1と同様の構成を備えるが、貫通孔5の形状が図1に示した導電性基板1とは異なっている。すなわち、図22に示した導電性基板1に形成された貫通孔5は途中で分岐しておらず、単一の線状に延びるように形成されている。この導電性基板1の厚みは図1に示した導電性基板1と同様に230μm以上となっている。そのため、厚みが相対的に薄い導電性基板などと比べて曲げ強度が高くなっている。このため、電子部品へ当該導電性基板1を介して他の電子部品や検査器具を接続するときに、当該導電性基板1が変形することにより当該接続がうまくいかない、といった問題の発生を抑制できる。
【0080】
なお、図22に示した導電性基板1では、導電体6の構成として図3、図8、図13、図14、図19〜図21などに示す構成を適用してもよい。
【0081】
(実施の形態17)
図23を参照して、本発明によるアセンブリ20の構成を説明する。
【0082】
図23を参照して、本発明によるアセンブリ20は、第1の集電側基板21と第2の集電側基板22との間に本発明による導電性基板1が配置された構成となっている。第1および第2の集電側基板21、22と導電性基板1とは集電側検出端子23により電気的に接続されている。なお、導電性基板1では、図示していないが先に説明した実施の形態1〜16で示した各種の貫通孔5が形成され、当該貫通孔5の内部には導電体6(図1参照)が形成されている。
【0083】
次に、図24を参照して、集電側検出端子23と導電性基板1の表面に露出する導電体6との関係を説明する。図24を参照して、導電性基板1の主表面には貫通孔5の開口部が形成されている。この貫通孔5内部には導電体6が充填された状態となっている。そして、導電性基板1の表面に接触するように上述した集電側検出端子23が配置されている。集電側検出端子23の平面形状はほぼ円形状である。また、貫通孔5の平面形状もほぼ円形状であると考える。
【0084】
ここで、貫通孔5の平均径をd、集電側検出端子23の直径をD、集電側検出端子23の間のピッチ(隣接する集電側検出端子23の中心点間の距離)をL1、L2とする。なお、ここでピッチL1とピッチL2とは、隣接する集電側検出端子23の中心を結ぶ線分のうち互いに直交するものの長さに対応している。このように考えた場合、上記ピッチL1、L2は、1.5D以上とし、また集電側検出端子23の直径Dは貫通孔5の平均直径dの3倍以上であることが好ましい。このようにすれば、集電側検出端子23によって覆われる領域内に少なくとも3個以上の貫通孔5(すなわち少なくとも3個以上の導電体6)を配置することができる。この結果、集電側検出端子23と導電体6との接続をより確実に行なうことができる。また、上述した集電側検出端子23の直径Dは0.1μm以上、好ましくは0.25μm以上、より好ましくは0.50μm以上、さらに好ましくは1μm以上とする。
【0085】
図23に示したアセンブリ20の製造方法は、以下のような方法を用いることができる。すなわち、まず本発明による導電性基板1および第1、第2の集電側基板21、22を準備する工程(第1工程)を実施する。その後、導電性基板1と第1、第2の集電側基板21、22とを接続する工程(第2工程)を実施する。第2工程では、導電性基板1の主表面に露出する導電体6と、第1、第2の集電側基板21、22の集電側検出端子23とを熱融着、超音波接合、溶融ハンダ接合、紫外線硬化型導電性ペーストや導電性接着剤などを介した接合など任意の方法により電気的に接続する。このようにして、図23に示すアセンブリ20を得ることができる。
【0086】
図25を参照して本発明によるアセンブリの第1の変形例を説明する。
図25を参照して、アセンブリ20は基本的には図23に示したアセンブリ20と同様の構成を備えるが、集電側検出端子23と導電性基板1との接続部の構造が異なっている。すなわち、図25に示したアセンブリ20においては集電側検出端子23と導電性基板1との間に導電性の材料からなる接続層24が配置されている。接続層24の材料としては、導電性を有する任意の材料(たとえば導電性の接着剤、あるいは、溶融ハンダ材料など各種適用できる、但し、接合条件としてはアルミナ基板および孔内導電材が侵食しない、または、融解しない処理を選択する)を用いることができる。このようにすれば、集電側検出端子23と導電性基板1の主表面に露出する導電体との接続を、接続層24を用いてより確実に行なうことができる。
【0087】
図25に示したアセンブリ20の製造方法は、基本的に図23に示したアセンブリ20の製造方法と同様である。ただし、第1工程において、導電性基板1の主表面に、集電側検出端子23と接触する領域へ予め接続層24を形成しておく。この結果、図25に示すアセンブリ20を製造することができる。なお、接続層24は、上述した第1工程において、集電側検出端子23の表面に予め形成しておいてもよい。
【0088】
なお、上述した図23、図25に示したアセンブリ20においては、導電性基板1として図1〜図22に示したいずれの導電性基板1を適用してもよい。
【0089】
図26を参照して、本発明によるアセンブリの第2の変形例を説明する。
図26に示したアセンブリ20は、基本的には図23に示したアセンブリと同様の構成を備えるが、導電性基板1の構成および第2の集電側基板22の構成が異なっている。具体的には、図26に示したアセンブリ20においては、図4、図5、図7、図8、図17などに示すように、導電性基板1がアルミナ自立基板2と、当該アルミナ自立基板2の主表面に形成された3次元網目構造層15とを備えている。なお、導電性基板1では、図示していないが貫通孔5が形成され、当該貫通孔5の内部および3次元網目構造層15における網目構造の貫通孔の内部には導電体が形成されている。そして、3次元網目構造層15と対向する第2の集電側基板22と、導電性基板1との間を接続する集電側検出端子23の径は、第1の集電側基板21と導電性基板1とを接続する集電側検出端子23の径よりも小さくなっている。これは、3次元網目構造層15の表面において、表面積の極めて小さな導電体の一部が分散して露出しているため、集電側検出端子23を小さくすることが可能となっているためである。このようなアセンブリ20によっても、図23に示したアセンブリ20と同様の効果を得ることができる。
【0090】
図27を参照して、図23に示したアセンブリの第3の変形例を説明する。
図27に示したアセンブリ20は、基本的には図23に示したアセンブリ20と同様の構造を備えるが、導電性基板1の構成および集電側検出端子23のサイズが異なっている。具体的には、図27に示したアセンブリ20においては、導電性基板1が、図6、図9、図18に示すように、アルミナ自立基板2と、当該アルミナ自立基板2の2つの主表面上に形成された2つの3次元網目構造層15とを備えている。そして、第1および第2の集電側基板21、22と導電性基板1とを接続する集電側検出端子23の径は、図23に示した集電側検出端子23の径よりも小さくなっている。このような構成においても、図23に示したアセンブリと同様の効果を得ることができる。
【0091】
なお、上述した導電性基板1の製造方法における導電体の形成工程については、任意の方法を適用することができる。たとえば、導電体としては、様々な導電性物質(例えば、Au,Pt,Cu,Ni,Co,Fe,Zn,Pbなどをベースとした各種金属系材料、カーボンフィラー、金属材料/無機材料ウィスカー)を用いることができる。そして、これらの導電性物質のうち金属系材料では、適当な酸系またはアルカリ系溶媒に溶解して各種金属めっき液として使用するメッキ法、あるいは、ナノ粉末にして適当な酸系またはアルカリ系溶媒に均一分散した処理液を用いて浸漬-熱処理を組み合わせた方法などを適用してナノホール内に所定の導電体を形成させる。すなわち、アルミナ自立基板を当該処理液に適当な処理温度および所定時間(たとえば5分〜数時間)浸漬した後、所定の熱処理条件で熱処理する(たとえば500℃以下で加熱処理する)ことで、導電性物質を貫通孔5の内部において加熱析出させてもよい。また、上記熱処理においては、一旦、加熱温度を数百℃として加熱処理を行なうことで、貫通孔の内部に微細な結晶粒(成長核)を核生成してもよい。この場合、当該アルミナ自立基板を再度処理液中に浸漬することで、上記生成核をトリガーとして容易に成長させることができる。
【0092】
また、上述した(金属)ナノ粒子以外に、金属酸化物ナノ粒子、導電性複合酸化物ナノ粒子等も適宜、溶媒中に均一分散した処理液とすることができる。このような処理液を用いる導電体の形成方法としては、以下のような方法が考えられる。たとえば、処理液にアルミナ自立基板2を浸漬して貫通孔5の内部に上記金属酸化物ナノ粒子または導電性複合酸化物ナノ粒子を充填する。そして、当該アルミナ自立基板2に対して熱処理を行なう。この熱処理時の雰囲気として、還元雰囲気(例えば、水素ガス)を用いることで、上記ナノ粒子の還元焼結反応を起こすことができる。この結果、導電性のナノ粒子が結合した導電体6を形成することができる。
【0093】
以下、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
【0094】
この発明に従った導電性基板1は、基板としてのアルミナ自立基板2と、導電体6とを備える。アルミナ自立基板2は、2つの主表面17、18を有し、当該2つの主表面17、18のうちの一方から他方へ到達する複数の貫通孔5が形成され、アルミナからなる。導電体6は、貫通孔5の内部に配置され、上記2つの主表面17、18のうちの一方から他方まで延在する。貫通孔5はアルミナ自立基板2の内部において単一孔(図22参照)であるか、あるいは少なくとも2つの主表面17、18のうちの一方に相対的に近い領域で分岐している。導電体6は貫通孔5の形状に応じて単一線状あるいは分岐した形状を有している。アルミナ自立基板2の厚みは230μm以上である。
【0095】
このようにすれば、導電体6がアルミナ自立基板2の内部において分岐している場合、分岐した先の部分(導電体6が2本以上のほぼ平行に延びる複数の導電体部分となっている部分)において、導電体部分の一部に断線などが発生しても、他の導電体部分を介して導電体6全体としての導通を維持することができる。この結果、当該導電性基板1を介して電子部品への他の電子部品や検査器具の接続を確実に行なうことができる。
【0096】
また、導電体6が分岐している場合であって、分岐した先の部分がアルミナ自立基板2の主表面の一方に露出している場合、1つの導電体6が上記主表面の複数箇所において露出した導電体部分と電気的に接続された状態となる。このため、導電性基板1と接続される検査機器などの電極(たとえば集電側検出端子23)と、当該導電体6とを接続する場合に、複数の導電体部分のうちの一部と検査機器などの電極との間の接続に不具合が発生しても、複数の導電体部分のうちの他の一部と当該電極とが電気的に接続されていれば、当該電極と導電体6との導通を確保することができる。
【0097】
また、アルミナ自立基板2の厚みが230μm以上であるので、自立膜としての導電性基板1の取扱いが容易である。すなわち、アルミナ自立基板2の厚みが十分厚く、導電性基板1自体で十分その形状を維持できるので、形状維持のためのサポート材などを導電性基板1に接続する必要が無い。また、上述のようにアルミナ自立基板2の厚みが230μm以上となっていることから、上記導電性基板1はその形状を外部のサポート無しに維持できる、いわゆる自立基板となっている。このため、電子部品へ当該導電性基板1を介して他の電子部品や検査器具を接続するときに、当該導電性基板1が変形することにより接続がうまくいかない、といった問題の発生を抑制できる。
【0098】
上記導電性基板1において、アルミナ自立基板2の厚みは230μm以上、より好ましくは300μm以上、さらに好ましくは400μm以上である。この場合、導電性基板1の形状を確実に維持することができるので、その取扱いがより容易になる。但し、厚みの上限は用途、要求性能、陽極酸化処理を含む各製造工程における製造能力、トータルコストなどを考慮して選択すればよい。
【0099】
上記導電性基板1において、複数の貫通孔5はアルミナ自立基板2においてランダム配置されていてもよい。この場合、アルミナ自立基板2において貫通孔5を所定の配置(たとえば三角格子状、あるいは正方格子状の配置)に形成する場合に比べて、貫通孔5の製造工程を簡略化できるので、導電性基板1の製造コストや検査コストを低減することができる。すなわち、特許文献1に開示されるように、アルミナからなる基板に複数の貫通孔を規則的に形成するためには、アルミニウムからなる基板表面を陽極酸化処理した後、当該陽極酸化処理された層(ナノホールが形成されたアルミナ層)を一度溶解除去してから、再度陽極酸化処理を行なうといった工程、あるいは、アルミニウム基板の表面に事前に複数の窪みを所定の間隔および配列で形成させるといった工程を行ってから陽極酸化処理を実施する必要がある。しかし、本発明による導電性基板1では、貫通孔5をランダム配置としていることから、上記のようなアルミナ層の溶解〜陽極酸化処理の再実施、あるいは事前の窪み形成〜陽極酸化処理の実施といった工程を行なう必要が無い。
【0100】
上記導電性基板1において、貫通孔5はアルミナ自立基板2の内部において2つの主表面17、18のうちの少なくとも一方に相対的に近い領域で分岐しており、導電体6は、図1などに示すように、上記2つの主表面のうちの少なくとも一方に相対的に近い領域で分岐していてもよい。この場合、1つの導電体6が上記2つの主表面のうちの一方側における複数箇所で露出した導電体部分(導電体の分岐した部分)と電気的に接続された状態となる。このため、検査機器などを導電性基板1の上記2つの主表面のうちの一方側に接続する場合、複数の導電体部分のうちの一部と検査機器などの電極との間の接続に不具合が発生しても、複数の導電体部分のうちの他の一部と当該電極とが電気的に接続されていれば、当該電極と導電体6との導通を確保することができる(つまり、容易に代替導通路を確保することができる)。
【0101】
また、上記のように2つの主表面のうちの一方において1つの導電体6が分岐した複数の導電体部分が配置されているため、検査機器などの電極と導電体6との間を流れる電流値が一定の値である場合、1つの導電体部分当たりの入力(あるいは出力)電流値を小さくできる。このため、検査機器の電極と1つの導電体6とが1箇所で接触している場合より、導電体6と電極との接触抵抗による発生するジュール熱の発生箇所を分散することができる。また、異なる観点から言えば、1つの導電体部分と検査機器などの電極との接触部において発生する(接触抵抗による)ジュール熱の発生量を、導電体6と電極とが1箇所だけで接触している場合より小さくできる。このため、当該ジュール熱の基板を介した放熱をよりスムーズに行なうことができる。したがって、ジュール熱に起因する熱サイクルで導電性基板1の熱膨張・収縮により、検査機器などの電極と導電性基板1との接続部における不良(たとえば当該熱膨張・収縮に起因して発生する応力が作用して電極と導電体との接続部が外れる、などの不良)が発生する確率を低減できる。このため、検査機器などと導電性基板1とをより確実に接続することができる。
【0102】
上記導電性基板1において、2つの主表面のうち一方側において露出する複数の導電体6の部分は、上記分岐している部分と分岐していない部分との境界部である分岐点を介して、2つの主表面のうち他方側において露出する1つの導電体の部分(分岐していない部分)と電気的に接続されていてもよい。この場合、2つの主表面のうちの一方側から、複数の導電体6の部分を介して入力された複数の電気信号(電流)を、他方側の1つの導電体の部分へ出力する(つまり複数の電気信号を合成した1つの信号として出力する)ことができる。また、電流を上述した方向とは逆方向に流せば、他方側の1つの導電体6の部分から入力した電気信号を、一方側の複数の導電体6の部分へ並列に出力することができる。
【0103】
上記導電性基板1において、導電体6は、2つの主表面のうちの少なくとも一方に露出する部分が3次元多孔構造としての3次元網目構造層15を有していてもよい。この場合、3次元網目構造を有する導電体部分が露出するアルミナ自立基板2の主表面では、当該3次元網目構造を有する導電体部分が配置された領域全体を電極端子部として利用できる。このため、たとえば検査機器などの複数の電極を1つの導電体6に接続する、といった構成を容易に実現できる。また、3次元網目構造層15に含まれる3次元網目構造を有する導電体6は、導電性基板1に形成された複数の導電体と電気的に接続された状態とすることができる。この場合、3次元網目構造層15が形成される領域の面積を十分大きくすれば(たとえば導電性基板1の主表面全体に3次元網目構造層15を形成すれば)、検査機器などの所定の表面に形成されたすべての電極を、3次元網目構造となった導電体部分を介して複数の導電体6と接続することができる。なお、3次元多孔構造としては、上記のように微細な孔が網目状に形成された構成以外であって、小さな空隙が多数集合・接続されたような構造(たとえばスポンジのような多孔質構造)など、多数の空隙が3次元的に集積した構造を含む。
【0104】
また、3次元網目構造層15では、いわば極めて小さな径の導電体部分が導電性基板1の主表面に高い密度で分散して露出した状態になっている。このため、検査機器などの電極と導電体6との接続において、一部の導電体部分と電極との接続部に不良が発生しても、他の導電体部分と電極とが導通していれば、当該電極と導電体6との電気的接続をより確実に維持することができる。
【0105】
上記導電性基板1において、導電体6は、図5などに示すように、2つの主表面のうち少なくとも一方側で分岐するとともに、当該分岐した導電体6の部分のうち上記主表面に露出する部分が3次元網目構造を含んでいてもよい。この場合、上述のように、検査機器などの複数の電極を1つの導電体に接続する、といった構成を容易に実現できる。また、導電体6が分岐した部分を含むので、当該分岐した部分の一部において導電体6の断線などの不良が発生しても、分岐した部分の他の一部を介して導電体6全体としての導通を確保することができる。
【0106】
また、上記導電性基板1において、図22に示すように、貫通孔5はアルミナ自立基板2の内部において形成された単一孔であってもよく、導電体6は、単一線状の形状を有していてもよい。
【0107】
上記導電性基板1において、貫通孔5のアスペクト比は10000以上であってもよい。また、上記導電体6のアスペクト比が10000以上であってもよい。この場合、導電性基板1の主表面において露出する導電体6の幅(径)を極めて小さくすることになるので、導電性基板1と接続する対象である電子機器や検査機器の電極が小型化した場合であっても、容易に当該電極と導電体6とを接続することができる。
【0108】
上記導電性基板1において、貫通孔5または導電体6のアスペクト比は10000以上50000以下、より好ましくは12000以上30000以下である。
【0109】
なお、ここで導電体6のアスペクト比とは、導電性基板1の主表面において露出している導電体6の平均径と導電性基板1の厚みとの比(導電性基板1の厚み)/(導電体6の平均径)を意味し、また、貫通孔5のアスペクト比とは、導電性基板1の主表面における貫通孔5の平均径と導電性基板1の厚みとの比(導電性基板1の厚み)/(貫通孔5の平均径)を意味する。また、平均径とは、周知の各種計算方法(個数平均径、長さ平均径、面積平均径、などがある)が選択でき、同一方法を設定しておけば基板間の相対比較についても十分適用できる。例えば、導電性基板1の主表面における複数(たとえば5個)の導電体6または貫通孔5について、それぞれの導電体6または貫通孔5の最も広い径を測定し、その測定値の平均を算出、あるいは、円形近似による平均値を統計的に算出すれば良い。これは、陽極酸化処理で形成されるナノホールは母材であるアルミニウム板に組織異方性があったり多数の材料欠陥があったりするような場合を除いて孔径は処理条件(特に処理電圧)に強い相関を有しているからである。
【0110】
上記導電性基板1において、導電体6を構成する材料は、導電性金属、導電性無機材料、導電性有機材料からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。これらの材料を用いることで導電体を容易に形成できる。
【0111】
なお、ここで導電性金属としては、たとえば金(Au)、白金(Pt)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)など良導性を有する元素をベースとして用いることができる。また、導電性無機材料としは、酸化亜鉛などの酸化物、カーボンからなる部材(カーボンファイバー、カーボンナノチューブなど)やウィスカー状の導電性金属などを用いることができる。また、導電性有機材料としては、たとえばポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリンなどの導電性高分子などを用いることができる。
【0112】
上記導電性基板1において、導電体6は、図13などに示すように、アルミナ自立基板2の厚み方向において電気的には接続されている積層した複数の材料層(導電体6a〜6c)を含んでいてもよい。この場合、導電体6の場所により材質を変更することができる。そのため、当該導電体6の場所ごとに要求される特性にあわせて、材料を選択することができる。
【0113】
上記導電性基板1において、導電体6を構成する複数の材料層は、主表面に露出する導電性無機材料(たとえばカーボンファイバー、カーボンナノチューブなど)または導電性金属のウィスカーからなる表面層(導電体6b、6c)と、当該表面層よりアルミナ自立基板2の内側に配置される導電性金属からなる内側層(導電体6a)とを含んでいてもよい。この場合、主表面に露出する表面層(導電体6b、6c)として、曲げ強度、圧縮強度や硬度の相対的に高い材料を用いることで、電極と導電体6との接触や外力に起因する導電体6の変形を抑制できる。また、内側層(導電体6a)として導電性金属を用いることで、貫通孔5の内部への導電体6の充填を容易に行なうことができる。この結果、導電体6における断線といった問題の発生を抑制できる。
【0114】
また、導電体6が接触する電極材料とのなじみを良くする、さらに電極との接触による導電体6の変形を抑制することで、電極との繰返し接触回数の許容回数を多くする(長寿命化を図る)ように、内側層の材料とは独立して、表面層(導電体6b、6c)の材料を選択することも可能である。
【0115】
上記導電性基板1において、導電体6は、貫通孔5の内部に充填されていてもよい。この場合、貫通孔5の内部を充填するように導電体6が形成されているため、導電体6の断線といった可能性を低減できる。
【0116】
上記導電性基板1において、導電体は、図3や図4などに示すように、貫通孔5の内部においてアルミナ自立基板2の厚さ方向における導電性を維持しつつ空隙としての空孔8を形成するように構成されていてもよい。この場合、貫通孔5の内部を充填するように導電体6を形成する場合よりも導電体6の形成に要する時間(たとえばメッキ法により導電体6を形成する場合にはメッキ時間)を短くでき、また、導電体6として用いる原材料使用量も低減することができる。このため、貫通孔5を充填するように導電体6を形成する場合より、導電性基板1の製造コストを低減できる。
【0117】
上記導電性基板1において、導電体6は、貫通孔5の内壁に沿って延在する一方、空孔8は貫通孔5の中心に配置されていてもよい。この場合、導電体6によりアルミナ自立基板2の2つの主表面の間を導通することができるとともに、導電体6の形成に要する時間を短縮できる。
【0118】
上記導電性基板1において、導電体6は、2つの主表面17、18のうち少なくとも一方に露出する貫通孔5の開口端部内部を充填するように形成されていてもよい。また異なる観点から言えば、導電体6では、図14などに示すように、2つの主表面のうち少なくとも一方に露出する部分が貫通孔5の内部を充填するように形成されていてもよい。この場合、たとえば導電体6と電極との接続に熱溶着を用いるときには、主表面に導電体6が露出する部分に空孔8が配置される場合より、導電体6b、6cの熱容量を大きくできる。このため、当該熱溶着を行なうときのプロセス条件について余裕を十分にとることができる。
【0119】
また、検査機器などの電極と接触する部分である主表面に露出する部分について、導電体6b、6cが貫通孔を充填している状態とすることができるので、導電体6と電極との接続をより確実に行なうことができる。
【0120】
上記導電性基板1において、導電体6は、図11などに示すように、2つの主表面のうちの少なくとも一方から突出する突出部を含んでいてもよい。この場合、検査機器などの電極と導電体6との接続をより確実に行なうことができる。また、突出部の高さ(アルミナ自立基板2の主表面に対して垂直な方向における、当該主表面から突出部の最も高い位置までの距離)は、たとえば100nm(1000Å)以上50μm以下とすることができる。あるいは、電極側に相当の凸部を例えば、インクジェット方式などにより噴射形成しても良い。これらの場合、たとえば検査機器などと導電体との接続をワイヤボンディングなどで行なう場合に、突出部の高さが上記数値範囲より低いとボンディング時の局所加熱により当該突出部との接合部が溶損する可能性がある。また、突出部の高さが上記数値範囲より高いと、ワイヤのボンディング時に突出部が挫屈して破損する可能性がある。なお、電極側に凸部を形成した場合は適当に超音波加圧するなどにより接合できる。
【0121】
上記導電性基板1は、図24に示すように、2つの主表面のうちの少なくとも一方上に形成され、複数の貫通孔の内部に配置された導電体のうちの少なくとも一部と電気的に接続された導電性被覆層としての接続層24をさらに備えていてもよい。この場合、検査機器などの電極(集電側検出端子23)と導電体6との接続を上記接続層24を介して行なうことができる。そのため、導電体6の表面や電極表面に凹凸があるような場合であっても、当該凹凸の影響を接続層24により吸収できる。したがって、検査機器などと導電性基板1との接続をより確実に行なうことができる。
【0122】
この発明に従った導電性基板アセンブリであるアセンブリ20は、上記導電性基板1と、他の基板である第1および第2の集電側基板21、22とを備える。第1および第2の集電側基板21、22は、導電性基板1の2つの主表面のうちの少なくとも一方において、導電体6と電極(集電側検出端子23)を介して電気的に接続される。集電側検出端子23において、導電性基板1の導電体6に接触する接触部は、図24に示すように、当該主表面にランダム配列で形成された複数の貫通孔5のうち少なくとも3つを覆うように形成されている。この場合、集電側検出端子23の上記接触部と導電体6との接続部は3箇所以上となるため、集電側検出端子23と導電体6との接合強度を十分高くすることができる。
【0123】
この発明に従った導電性基板の製造方法は、上述した本発明に従った導電性基板1の製造方法であって、以下の工程を実施する。すなわち、2つの主表面を有し、当該2つの主表面のうちの一方から他方へ到達する複数の貫通孔5が形成された、アルミナからなる基板(アルミナ自立基板2)を準備する工程(S10〜S30)を実施する。そして、貫通孔5の内部に配置され、2つの主表面のうちの一方から他方まで電気的な接続を維持して延在する導電体6を形成する工程(S40)を実施する。
【0124】
導電体を形成する工程(S40)は、導電体または導電体を構成する元素を含有する処理液にアルミナ自立基板2を浸漬する工程と、当該浸漬する工程の後、処理液から取出したアルミナ自立基板2を熱処理することにより、貫通孔の内部に残存した処理液から導電体を形成する工程とを含んでいてもよい。
【0125】
また、導電体を形成する工程(S40)は、導電体6を含む処理液にアルミナ自立基板2を浸漬する工程と、浸漬する工程の後、処理液から取出したアルミナ自立基板2を熱処理することにより、貫通孔5の内部に導電体6の成長核を生成する工程と、成長核を生成する工程の後、貫通孔5の内部において成長核をさらに成長させる工程とを含んでいてもよい。
【0126】
導電体膜を形成する工程(S40)では、浸漬する工程と処理液から導電体膜を形成する工程とを複数回繰り返してもよい。
【0127】
また、導電体膜を形成する工程(S40)は、導電体または導電体を構成する元素を含有する処理液にアルミナ自立基板2を浸漬した状態で、処理液に対する電解処理を行なうことにより、貫通孔5の内部において処理液から導電体6を形成する工程を含んでいてもよい。
【0128】
このようにすれば、貫通孔5の孔壁表面に予め成長核を均一形成させることができるため、その後の浸漬で導電体が均一に供給されていくため孔内部を均一に充填させていくことになり、導電体6が形成されるので、アルミナ自立基板2の厚みが厚い場合(つまり貫通孔5の長さが長い場合)でも、貫通孔5の内部において確実に導電体6を形成することができる。この結果、貫通孔5の内部で導電体6が断線するといった可能性を低減できる。
【0129】
(実施例)
本発明の効果を確認するため、以下のような実験を行なった。
【0130】
(試料の作製)
以下のような方法により、実施例1〜実施例11の試料および比較例1の試料を作製した。
【0131】
(1) 基板準備工程(陽極酸化アルミナ自立基板の作製)
まず、陽極酸化処理を行なう対象となる、純アルミニウム(JIS A1085P)からなる原料基板を準備した。原料基板の寸法・サイズは、縦60mm×横60mmの四角形状であり、厚みが0.5〜1mmとした。
【0132】
(2) 陽極酸化工程
処理液として、0.5mol%以上1mol%以下の希硫酸を用いた。処理時の液体温度は5℃以上15℃以下とした。また、処理液を保持する浴槽内では、処理液が循環するようポンプを配置した。なお、原料基板に対して処理液が斜めに噴き付けられるように、ポンプを配置した。
【0133】
陽極酸化処理における陰極としては白金(Pt)板を用いた。また、陽極としては上述した原料基板を用いた。処理条件について、比較例1、比較例2の試料における単一孔のナノホールを形成する条件としては、負荷電圧を直流パルス25V定電圧負荷とし、処理時間を約8〜25時間(hr)とした(第1の陽極酸化処理条件)。また、実施例の試料を形成するため、最表面層でナノホールが2分岐以上している複孔タイプを形成する条件としては、上述した第1の陽極酸化処理条件にて陽極酸化処理を行なった後、負荷電圧を8V定電圧負荷とした(第2の陽極酸化処理条件)、陽極酸化処理を実施した。なお、これら第1および第2陽極酸化処理条件における負荷電圧を変化させることにより、形成されるナノホールの径を変化させることができる。つまり、第2陽極酸化時の負荷電圧を第1陽極酸化時の負荷電圧よりも低くすることによりナノホールの孔径は小さくなる。そのため、負荷電圧を調整することにより、貫通孔の分岐数を2以上にすることは可能である。
【0134】
(3) 基板除去工程
上述した陽極酸化処理の後、陽極酸化アルミナからなる自立基板を作製するためには、陽極酸化が進行していない下地アルミニウム残部を除去する必要がある。なお、この処理はナノホール内への導電材充填処理前後いずれの時点でも適用可能である。これには各種方法があるが、今回、一部の試料については、約5〜10体積%の臭素メタノール混合液を25℃以下に保持した状態で、当該臭素メタノール混合液に陽極酸化処理を行なった後の基板を浸漬した。浸漬時間は1〜24時間とした。なお、浸漬時には臭素メタノール混合液を適宜攪拌した。
【0135】
また、ナノホール貫通化処理を行なった。具体的には、作製した陽極酸化アルミナからなる自立基板を、事前に開孔側表面を耐食性樹脂シールなどで封止を施して置き、液温が20℃以下、濃度が0.5〜1mol%の希硫酸溶液中に10分以上浸漬することで容易に閉孔した部分を溶解除去することができ、良好な貫通孔が得られた。なお、さらに、貫通化後に上記封止用シールを外した状態で浸漬を継続すればナノホール径を広げる処理(周知のポアーワイドニング処理)も可能となりアスペクト比の設定範囲を広く選択することができる。
【0136】
さらに、一部の試料(例えば、実施例7、8など)については表面層に3次元網目構造を形成するため、今回は、基板除去工程において臭素メタノール混合液により下地アルミニウムを除去する時に、当該臭素メタノール混合液の温度を室温(約20℃程度)に保持することにより、3次元網目構造を形成した。
【0137】
以上の如く各種処理を選択適用することにより、膜厚が143μm〜413μmの各種アルミナ自立基板を得た。これらのアルミナ自立基板においては、貫通孔(ナノホール)の形状が異なっている。比較例1および実施例1〜3となるアルミナ自立基板には分岐していない貫通孔(単孔)が形成されている(単純単孔型)。また、実施例4〜6となるアルミナ自立基板については、それぞれ一方の主表面または両方の主表面において相対的に径の小さなナノホールが形成され、当該径の小さなナノホールは内部において相対的に径の大きなナノホールに分岐点を介して接続されている(表面複孔型)。なお、以下では、一方の主表面のみに径の小さなナノホールが形成されている場合を片表面分岐型、両方の主表面において径の小さなナノホールが形成されている場合を両表面分岐型と呼ぶ(実施例4〜6)。
【0138】
また、分岐していない単一のナノホールが多孔構造である3次元網目構造層に直接接続されている試料も作製した(表面3次元網目構造型)。以下では、一方の主表面のみに3次元網目構造層が形成されたものを片面3次元網目構造、両方の主表面に3次元網目構造層が形成されたものを両面3次元網目構造と呼ぶ(実施例7、8)。
【0139】
また、上述した表面複孔型において3次元網目構造層が形成された試料も作製した(ハイブリッド型)。以下、片表面分岐型で径の小さなナノホールが形成された側の表面に3次元網目構造が形成された構成を、「片面分岐+3次元網目構造」と表記する(実施例9)。また、両表面分岐型であって、さらに両面に3次元網目構造が形成された構成を、「両面分岐+3次元網目構造」と表記する(実施例10)。また、両表面分岐型であって、一方の主表面のみに3次元網目構造が形成された構成を、「片面分岐+(他面分岐×3次元網目構造)」と表記する(実施例11)。
【0140】
(4) 導電体形成工程
上述した各試料において、形成されたナノホールの内部に導電体を形成する工程を行った。具体的には、第1の方法としてDC電解Niメッキ法、第2の方法として無電解Niメッキ法および第3の方法としてナノ粉末法によって導電体をアルミナ自立基板のナノホール内に配置した。まず、第1の方法であるDC電解Niメッキ処理方法としては、上記の残留Al下地付き非貫通アルミナの状態に対してはAl下地側を、一方、残留Al下地を削除したアルミナ自立基板の場合には裏面側に白金(Pt)板または、カーボン板電極を接地させて一方の電極とし、当該アルミナ自立基板に対向配置する対向電極として白金(Pt)板からなる電極を用いた。そして、濃度管理した電解メッキ液(硫酸Ni50g/lと硼酸50g/l)を、スターラ攪拌した状態で維持し、当該溶液中に上記アルミナ自立基板を無負荷状態で約30分浸漬した。このようにして、アルミナ自立基板のナノホール内へのメッキ液をなじませた。なお、今回、メッキ処理系は簡易密閉できるように構成し、適宜、簡易真空ポンプによる真空脱気を行い、ナノホール内の気泡を脱泡した。その後、溶液中においてアルミナ自立基板と上記Pt板からなる電極とを対向配置し、常温、直流電圧8〜15Vを上記電極間に負荷した。このようにして、ナノホールの内部においてNiメッキを行った。なお、適宜、メッキ液をサンプリングし、当該メッキ液の硫酸Ni濃度が100g/lの濃度範囲、pH≦5に保たれる様に濃度調整を行った。
【0141】
なお、この方法ではナノホール内が緻密充填となる基板を作製した(比較例1、実施例4、7〜9)。一方、導電体の充填度を変える方法としては、上記(実施例1)に加えて以下の2種類の方法を検討した。
【0142】
まず、一方の方法は、上記第2の方法である無電解Niメッキ法であり、導電体が貫通孔(ナノホール)の壁面に対してほぼ均一な厚みを有するように、導電体を形成するものである。具体的には、市販の無電解Niメッキ液を用いて上記第1の方法と同様に簡易密閉型処理装置の浴槽にて、当該無電解Niメッキ液にアルミナ自立基板を浸漬した。このとき、上記第1の方法と同様に簡易密閉真空脱泡ならびに無電解Niメッキ液の攪拌を行なった。そして、所定時間の浸漬工程の後、アルミナ自立基板の洗浄、乾燥処理を行なう。このようにして、貫通孔の壁面に導電体のNiメッキ層が形成される。
【0143】
この処理では、アルミナ自立基板における貫通孔の壁面でのNiメッキ厚が所定の値になるまで、浸漬-洗浄-乾燥処理を繰り返す。そして、当該処理中には、適宜、アルミナ自立基板から小片を切り出してSEMによる断面観察を行ない、導電体のNiメッキ層の厚みを確認して所定の充填度に設定した(実施例3、6、10、11)。
【0144】
また、他の方法は、上述した第3の方法であるナノ粉末法であり、図3に示したように、貫通孔5内で微細な粒状の導電体6が電気的に結合短絡した状態を形成するものである。例えば、Niナノ粉末含有処理液(たとえば、平均粒径3〜5nmのNiナノ粉末を、有機溶媒―例えば、トルエン―に均一分散させたもの)を用いる。そして、上記の貫通化処理を行ったアルミナ自立基板の主表面が垂直方向に沿うように、当該アルミナ自立基板を円形処理装置浴槽内に配置する。次に、当該浴槽内に上記Niナノ粉末分散処理液を満たす。なお、浸漬後に前記同様、一旦、処理装置内を簡易真空ポンプによって真空脱泡を適用する。そして、攪拌手段(たとえば、スターラ攪拌あるいは、テフロン(登録商標)製ダイヤフラム型送液ポンプによる循環など)により上記処理液を常時対流させておく。このとき、処理液の流れ方向が被処理物であるアルミナ自立基板の主表面に垂直になる様にしておく。このようにして、アルミナ自立基板の貫通孔の内部に処理液を充填する。その後、アルミナ自立基板に対して所定の熱処理(たとえば、真空もしくは窒素ガスまたはアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で加熱温度500℃以下、加熱時間を30〜2時間程度とした熱処理)を行ない、貫通孔の内部においてナノ粉末が互いに結合した状態とした。なお、ナノ粉末の充填度合いは、処理後のアルミナ自立基板の一部を破断取得し、SEMによる断面観察にて形態を確認し、近似補正計算して決定した。なお、適宜、前記の浸漬〜脱泡〜加熱工程を繰り返すことにより目的の充填度の基板を作製した(実施例2、5)。
【0145】
今回、構造起因の特性を比較するため導電体をNiとした比較例1、および実施例1〜11を作製したが、実施例3、6、10、11については、上記第2の方法を用いて導電体を形成した。この結果、実施例3、6、10、11においては、貫通孔の壁面に沿った金属Ni膜により導電体が構成された。また、実施例2、5については、上記第3の方法を用いて導電体を形成した。この結果、実施例2、5においては、ナノホール内部に導電性Ni粒子が充填されたような構成となった。
【0146】
このようにして、比較例1、実施例1〜11の試料を構成する導電性基板を準備した。
(5) Au電極パッドの形成
上述のように作製した導電性基板の一方の主表面に、Auパッド剥がし評価用の電極、および導通性評価用の電極を形成した。
【0147】
Auパッド剥がし評価用の電極:
導電性基板の一方の主表面において、フォトリソグラフィ法を用いてAuパッド剥がし評価用の電極を形成した。具体的には、レジストとしてElectronic Materials社製AZ5206Eを用い、当該レジストを上記主表面に塗布した後、露光用の光源としてDeepUVランプを用いパターン露光を行なった。露光パターンとしては、直径φ100μmの円形パターンを用いた。そして、ポストベーク処理、現像処理を行なうことで、上述した円形パターンの平面形状を有する開口パターンが形成されたレジスト膜を得た。当該レジスト膜上および開口パターンの内部に、Au膜を蒸着した。Au膜の厚みは約300nm(3000Å)とした。その後、レジスト膜を薬液により除去すると同時に、レジスト膜上に形成されたAu膜を除去した(リフトオフ)。このようにして、導電性基板の主表面における10mm×10mmの領域に、平面形状が円形状(直径φ100μm)のAuパッド剥がし評価用の電極を形成した。なおこのAuパッド剥がし評価用の電極は、上記10mm×10mmの領域に複数個規則的に配列された状態で形成した。
【0148】
導通性評価用の電極:
上述したAuパッド剥がし評価用の電極を形成する際、直径φ10μmの円形パターンを、上述した直径φ100μmの円形パターンが形成される領域とは別の領域に露光により転写した。その後、上述した工程を実施することにより、上記Auパッド剥がし評価用の円形電極(直径φ100μm)と同時に、導通性評価用の円形電極(直径φ10μmの電極)を形成した。
【0149】
共有Au電極:
導電性基板において、上記Auパッド剥がし評価用の電極および導通性評価用の電極が形成された一方の主表面とは反対側に位置する他方の主表面に、Auを全面蒸着して共有Au電極を形成した。この共有Au電極の厚みは約100nm(1000Å)とした。
【0150】
(試験方法)
(1) 剥がし評価
剥し評価では、直径φ100μmのAuパッド剥がし評価用の電極に、さらに直径φ30μmのAuワイヤーをワイヤーボンディングすることにより、引張り端末とした。そして、当該引張り端末を、デジタルフォースゲージ付き引張り試験器の測定端子部に接続して導電性基板の表面から離れる方向に応力を加えることで、上記Auパッド剥がし評価用の電極が導電性基板から剥がれるまでのデジタルフォースゲージの最大荷重値を剥がれ強度として測定した。
【0151】
(2) 導通性評価
導通性評価では、上記のように作製した導電性基板の共有Au電極を下面にして、定盤上に設置した配線端子の付いたCu平滑平板に共有Au電極が接触するように当該導電性基板を定盤上に静置した。そして、定盤の上方に、上下動が可能な可動式ステージを配置し、当該可動式ステージにデジタルフォースゲージを固定した。そして、デジタルフォースゲージの測定軸先端に、導通計の針状測定端子を固定した。このようにして、簡易導通圧測定器を準備した。この簡易導通圧測定器を用いることにより、被測定試料である導電性基板の上面に形成された直径φ10μmのAu電極パッド(導通性評価用の電極)の位置を高倍率顕微鏡下で確認しながら、針状測定端子を当該Au電極パッドにゆっくりと接触させた。そして、導通計の短絡ブザーが反応した時点のデジタルフォースゲージの荷重値を記録した。
【0152】
(3) 基板の曲げ強度
常温において、導電性基板の3点曲げ試験を行なうことにより当該基板の特長の1つである曲げ強度について比較した。曲げ試験条件はJIS R1601に準拠した常温3点曲げ試験方法(外部支点間距離30±0.1mm、幅4mm)を適用し、汎用曲げ試験機で実施した。
【0153】
(結果)
各試料の構成および上記の試験結果を表1に示す。
【0154】
【表1】

【0155】
上記表1より、本発明の導電性基板では、基板厚み(アルミナ膜厚と記載)が厚くなるに従って曲げ強度が高くなっており、ハンドリングにも非常に有利である。 また、比較例と実施例とを比較すると、実施例の方が導通性が良好である(つまり導通に必要な力が小さくてすむ)ことがわかる。また、貫通孔が非分岐である場合(比較例1および実施例1〜3)と分岐させている場合(実施例4〜6)とを比べると後者の方が良く、さらに、3次元網目構造を有する場合(実施例7〜11)ではより導通性が良好となっていることがわかる。
【0156】
また、導通性と同様に、電極の剥がし評価についても、特に、比較例1よりも貫通孔が分岐した場合(実施例4〜6)、さらに3次元網目構造を有する場合(実施例7〜11)の方がより電極の密着性が優れていることがわかる。
【0157】
また、貫通孔内の導電性材料の充填度も緻密(100%充填)でなくても両面間の導通があれば(例えば、図3に示したように貫通孔内部に導電性材料粒子が充填されたような構成で有っても、あるいは、貫通孔壁に沿った金属膜により導電体が構成された場合であっても)、電気的導通性を確保し、電気信号接続が可能である。
【0158】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0159】
この発明は、複数の貫通孔が形成されたアルミナからなる基板を用いた導電性基板およびその導電性基板を用いた導電性基板アセンブリに特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0160】
1 導電性基板、2 アルミナ自立基板、3 貫通孔大径部、4 貫通孔小径部、5 貫通孔、6,6a〜6c 導電体、8 空孔、15 3次元網目構造層、17,18 主表面、20 アセンブリ、21,22 集電側基板、23 集電側検出端子、24 接続層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの主表面を有し、前記2つの主表面のうちの一方から他方へ到達する複数の貫通孔が形成された、アルミナからなる基板と、
前記貫通孔の内部に配置され、前記2つの主表面のうちの一方から他方まで延在する導電体とを備え、
前記貫通孔は前記基板の内部において単一孔であるか、あるいは少なくとも前記2つの主表面のうちの一方に相対的に近い領域で分岐しており、
前記導電体は前記貫通孔の形状に応じて単一線状あるいは分岐した形状を有しており、
前記基板の厚みは230μm以上である、導電性基板。
【請求項2】
前記貫通孔は前記基板の内部において前記2つの主表面のうちの少なくとも一方に相対的に近い領域で分岐しており、
前記導電体は、前記2つの主表面のうちの少なくとも一方に相対的に近い領域で分岐している、請求項1に記載の導電体基板。
【請求項3】
前記導電体は、前記2つの主表面のうちの少なくとも一方に露出する部分が3次元多孔構造を有している、請求項1または2に記載の導電性基板。
【請求項4】
前記貫通孔は前記基板の内部において形成された前記単一孔であり、
前記導電体は、前記単一線状の形状を有している、請求項1に記載の導電性基板。
【請求項5】
前記貫通孔のアスペクト比が10000以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項6】
上記導電体を構成する材料は、導電性金属、導電性無機材料、導電性有機材料からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項7】
前記導電体は、複数の材料層を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項8】
前記導電体は、前記貫通孔の内部に充填されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項9】
前記導電体は、前記貫通孔の内部において前記基板の厚さ方向における導電性を維持しつつ空隙を形成するように構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項10】
前記導電体は、前記2つの主表面のうち少なくとも一方に露出する前記貫通孔の開口端部内部を充填するように形成されている、請求項9に記載の導電性基板。
【請求項11】
前記導電体は、前記2つの主表面のうちの少なくとも一方から突出する突出部を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項12】
前記2つの主表面のうちの少なくとも一方上に形成され、前記複数の貫通孔の内部に配置された前記導電体のうちの少なくとも一部と電気的に接続された導電性被覆層をさらに備える、請求項1〜11のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項13】
請求項1に記載の導電性基板と、
前記導電性基板の前記2つの主表面のうちの少なくとも一方において、前記導電体と電極を介して電気的に接続された他の基板とを備え、
前記電極において、前記導電性基板の前記導電体に接触する接触部は、前記主表面に形成された前記複数の貫通孔のうち少なくとも3つを覆うように形成されている、導電性基板アセンブリ。
【請求項14】
請求項1に記載の導電性基板の製造方法であって、
2つの主表面を有し、前記2つの主表面のうちの一方から他方へ到達する複数の貫通孔が形成された、アルミナからなる基板を準備する工程と、
前記貫通孔の内部に配置され、前記2つの主表面のうちの一方から他方まで延在する導電体を形成する工程とを備える、導電性基板の製造方法。
【請求項15】
前記導電体を形成する工程は、
前記導電体または前記導電体を構成する元素を含有する処理液に前記基板を浸漬する工程と、
前記浸漬する工程の後、前記処理液から取出した前記基板を熱処理することにより、前記貫通孔の内部に残存した前記処理液から前記導電体を形成する工程とを含む、請求項14に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項16】
前記導電体膜を形成する工程では、前記浸漬する工程と前記処理液から前記導電体膜を形成する工程とを複数回繰り返す、請求項15に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項17】
前記導電体膜を形成する工程は、
前記導電体または前記導電体を構成する元素を含有する処理液に前記基板を浸漬した状態で、前記処理液に対する電解処理を行なうことにより、前記貫通孔の内部において前記処理液から前記導電体を形成する工程を含む、請求項14に記載の導電性基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−70828(P2011−70828A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219268(P2009−219268)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】