説明

導電性基板の製造方法

【課題】金属錯体含有導電インクによる電子回路形成に使用される薄物で柔軟性に優れ、廃棄処理が簡単な導電性紙基板の製造方法を提供する。
【解決手段】金属錯体含有導電インクを用いた導電性基板に於いて、該基板がJAPANTAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく王研式透気度が40000秒以上に調製された紙基材を用いることを特徴とする導電性基板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性基板の製造方法に関し、さらに詳しくは、金属錯体含有導電インクによる導電性基板として好適な回路形成が可能な紙基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回路形成方式としてエッチングによる回路形成が行われている。エッチングによる方式では、低抵抗で微細な回路を形成することが可能であることから、携帯電子機器の基板を始め多用途にて利用されている。しかしながら、エッチングにより回路を形成するには、導電層の積層、レジスト層の形成、フォトマスクを用いた露光、エッチングによるパターン形成等と工程が繁雑であり、使用される薬品の処理方法の問題、真空装置を要する、大型設備への対応が容易ではない等の問題を抱えている。
【0003】
一方印刷技術を活用し、配線・電極を直接描画形成するプリンテッドエレクトロニクス方式は、このような問題点を解消する有効な手段として実用化されている。微細な金属粉を熱硬化性樹脂に混ぜ込んだ銀ペーストを用いてスクリーン印刷にて電子回路を形成する銀ペースト方式である。この場合、粒子同士の接触面積が低くバインダー・分散剤が残留するため電気抵抗値が高くなり易いと言う問題がある。このような状況のため、印刷方式にて抵抗値を下げるには配線の巾を広げる必要があり、銀ペーストによるスクリーン印刷方式で微細配線を描くには限界があった。
【0004】
そこで液体内に金属のナノ粒子を分散したナノコロイドインクと呼ばれるインクが開発された(特許文献1,2)。そのインクを印刷した後、200℃程度の熱乾燥を与えることにより分散剤を揮発させ、分散剤から開放されたナノ粒子同士が融着し金属膜を形成させる方式で回路形成が行なわれる。ナノコロイドインクでは、インク内に存在する粒子が数ナノから数百ナノオーダーと非常に微細であることから、スクリーン印刷方式以外の印刷方式、例えばオフセット印刷方式、グラビア印刷方式、インクジェット印刷方式にも適用することが可能であり、上記問題に対する対策として有望な回路形成方式の一つとして実用化され、基材も含めた開発が各方面にて行われている(特許文献3,4,5)。ナノコロイドインクは、ナノオーダーの金属粒子を分散剤により液体内に安定に分散させたものである。
【0005】
またインク溶液に金属の錯体化合物を液体に溶解させた金属錯体含有インクが近年開発された(特許文献6,7)。金属錯体含有インクは、インク内に粒子状の物質を含有していないため、ナノコロイドインクより微細な線が描画できると言う特徴を有している。このインクもナノコロイドインクと同様の印刷方式で回路形成が可能である。またこのインクは、金属がイオン化した状態で有機配位子により錯化合物としてインクに溶解しているため、印刷後、熱乾燥により有機成分の配位子を分解・揮発させることで、その後配位子から遊離した金属イオンが基板上で融着し、金属膜が形成される。
それらの回路形成の基板材料としてはガラスエポキシ、耐熱性高分子、PPフィルム、PETフィルムなどが目的に応じて実用化されているが、薄物で柔軟性もあり廃棄も簡単な紙基材については、未だに十分な基材としての品質が得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−214591号公報
【特許文献2】特開2009−114547号公報
【特許文献3】特許第4234970号公報
【特許文献4】特許第4124025号公報
【特許文献5】特開第3774638号公報
【特許文献6】特表2008−531810号公報
【特許文献7】特表2008−530001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記各インクの開発に伴い、それぞれのインクに適した基材が使われている。印刷による回路形成方式は製造コストが安価にできる可能性があることから、ICタグに代表されるようなディスポーサブルでフレキシブルな用途への展開が期待されている。従来のガラスエポキシ基板及び耐熱性高分子基板は、耐熱性に優れるものの、薄い基材とした場合、容易に割れ、欠けが発生し、曲げることが殆ど不可能なことから、フレキシブルな基板としては不向きな素材である。
【0008】
フレキシブルな基板としてはPET等のフィルム基材や紙基材が考えられるが、PET等のフィルム基材の場合、フレキシブル性においては優れるものの、廃棄処理の際、塩化ビニル等に代表される有毒ガスの発生等、環境負荷に課題を抱えており、容易に廃棄処理ができないため、ディスポーサブル適性は劣る。
【0009】
一方、紙基材の場合は、安価で且つフレキシブル性はフイルム基材と同等であり、廃棄処理に関しても大きな課題はなく、容易に処理が可能であり、更にリサイクルも可能であることから、ディスポーサブルなフレキシブル基材として有望な素材である。また、紙は人間の手で容易に破ることが可能な素材であるため、例えば紙にIDを記録した回路を容易に手でID内容を破壊することが可能であることから、セキュリティの面においても優れる素材である。
【0010】
しかしながら、紙基材は液体の浸透性が高いため、金属錯体含有インクのようなインク内に粒子状の物質を有していないインクを紙基材上に直接描画する場合、インクの溶剤成分とともに金属錯体成分が紙の内部に浸透してしまう。その結果、紙基材の表層に残る金属錯体成分が少なくなり、表面に効率良く配線を形成することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)金属錯体含有導電インクを用いた導電性基板に於いて、該基板がJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく王研式透気度が40000秒以上に調製することを特徴とする導電性基板の製造方法である。
(2)また前記金属錯体含有インクの金属成分が銀であることを特徴とする前記(1)記載の導電性基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記現状を鑑み、金属錯体含有導電インクによる電子回路形成に使用される薄物で柔軟性に優れ、廃棄処理が簡単な導電性紙基板の製造方法を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0014】
本発明は、紙基材上に金属錯体含有インクを塗布、乾燥することにより得られる回路基板に於いて、回路基板を構成する基材がJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく王研式透気度が40000秒以上の紙基材とすることで達成し得るものである。
【0015】
金属錯体含有インクは、金属錯体が溶解しており個体粒子は存在せず、溶媒および配位子成分を乾燥・揮発させることで遊離金属イオンが発生し、この遊離金属イオン同士が融着することで導電性の金属被膜が形成されている。
金属錯体含有インクを通常の紙基材上に塗布した場合、インクは紙基材表面の孔から紙基材内部に無数に存在する空隙部へ浸透して行く。その後、乾燥処理により紙基材の内部に浸透したインクから溶媒および配位子成分が揮発し遊離金属イオンが発生するが、紙基材中の各空隙間はパルプ等の絶縁性物質により囲まれており、各空隙内にて生成した金属被膜は空隙間において断線した状態となっており、このことが導電性を下げる大きな要因となっていた。
【0016】
本発明では、紙基材の王研式透気度を40000秒以上にすることで、紙基材内部の空隙が圧縮され、金属錯体含有インクの紙基材内部への過度な浸透を抑制することが可能となり、インクの金属成分が密な状態で紙基材表面付近に留まることが可能となる。その結果、乾燥処理により導電性に優れる被膜が紙基材表面に作成可能となったと推測される。
【0017】
また、王研式透気度を40000秒以上にすることで紙基材表面に存在する孔の大きさが微細に均一化され、紙基材表面でのインクの偏った吸収が抑制される。その結果、インクの吸収ムラが抑制され、より均一性の高い金属膜が形成されると推測される。
【0018】
王研式透気度が40000秒未満の場合では、インクが過度に紙基材内部に浸透し、そのため乾燥後に得られる金属は紙基材の中で点在しているため十分な導電性を得ることが出来ない状態にある。また、紙表面には大きな孔が不均一に存在しており、そのためインクが紙表面で不均一に吸収されインクの吸収ムラが発生し導電性に乏しい不均一な金属膜が形成されると推測される。
【0019】
本発明で40000秒以上の王研式透気度を得る方法としては、プレス処理、ロールプレス処理等が例示できる。特にロールプレス処理は、シート状の基材を連続で、効率よくプレスすることが可能であり、安価にプレスシートを製造することが可能である。本発明のプレスロールとしては、スーパーカレンダー、チルドカレンダー、キャストカレンダー等が好ましい。
【0020】
本発明のプレスロールのロール材質としては、コットン、ウール、金属等から単独でもしくは組み合わせるにより適宜使用することが好ましい。
プレスロールの圧力、温度、ニップ数等の処理条件は王研式透気度を40000秒以上にするように適宜調整される。
【0021】
本発明に使用される紙基材としては、キャストコート紙、アート紙、コート紙、軽量コート紙、等の塗工紙または普通紙が好ましく用いられる。
【0022】
本発明の塗工紙の塗工層に用いられる顔料は、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、シリカ、珪酸アルミニウム、アルミナ、サチンホワイト、コロイダルシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、ハイドロタルサイト、スチレン、エチレン、ブタジエン、スチレン系プラスチックピグメント、スチレンーブタジエン系プラスチックピグメント、スチレンーアクリル系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ウレタン系プラスチックピグメント、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等のプラスチックピグメント、塩化ビニル、ポリウレタン、アクリル、酢酸ビニル、ポリカーボネート、ナイロン、及びこれらの共重合体の有機高分子微粒子等、一般の塗工紙製造分野で公知の各種顔料が挙げられ、これらの中から目的に応じて1種あるいは2種以上が適宜選択して使用される。
【0023】
本発明の塗工紙の塗工層に用いられるバインダーとしては、従来の塗工紙に用いられる公知のバインダーを用いることができる。カチオン性澱粉、両性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白、天然ゴム、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、ポリイソプレン、クロロプレンの重合体や共重合体類、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリアルケン類、ビニルハライド、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系単量体の重合体や共重合体類、スチレン−ブタジエン系、メチルメタクリレート−ブタジエン系等の合成ゴムラテックス類、ポリビニルアルコールやノニオンソープを保護コロイド層として有する合成ゴムラテックス、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン−無水マレイン酸系樹脂、メラミン系樹脂等の合成樹脂類等が例示できる。これらの中から目的に応じて1種あるいは2種以上が適宜選択して使用される。
【0024】
更に必要に応じて、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス等の滑剤、蛍光染料、着色染料、界面活性剤、架橋剤等の各種助剤を添加することもできる。
【0025】
本発明の塗工紙の基材に使用する原紙および普通紙としては、下記の材料から適宜選択して使用される。
パルプとしては、例えば、一般に使用されているLBKPやNBKP等の漂白化学パルプ、砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナ砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、脱墨古紙パルプ(DIP)、損紙などが適宜混合使用される。また、ケナフ等の非木材繊維原料から得られるパルプ繊維、合成パルプ、機械パルプ、DIP、無機繊維等の1種又は2種以上を原紙に配合することもできる。
【0026】
原紙に内添される填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、カオリン、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミカオリン、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機顔料や尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機顔料等が例示でき、古紙や損紙等に含まれる填料も再使用できる。填料は2種以上の混合使用も可能である。
【0027】
なお、原紙中にはパルプや填料の他に、内添サイズ剤、アニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等で例示される各種の抄紙用内添助剤を、必要に応じて添加することができる。内添サイズ剤の具体例としては、例えば、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤、ロジン系サイズ剤等が挙げられる。また、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤の具体例としては、例えば、アルミニウム等の多価金属化合物(具体的には、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物等)、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。
【0028】
また、必要に応じてロジン系、石油樹脂系、酸化澱粉、アセチル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉等の澱粉およびその誘導体、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、スチレン、アルキド、ポリアミド、アクリル、オレフィン、マレイン酸、酢酸ビニル等の重合体または2つ以上の共重合体からなる合成樹脂系およびこれらの合成樹脂エマルジョン系、ワックス系等の表面サイズ剤でサイズ処理を施しても良い。
【0029】
更に、これらの紙基材の表面に水分、振動などの外部要因により紙基材の変形に伴う回路の断線を防止する目的で、本特性を損なわない範囲において基材表面に樹脂層やラミネート加工を施しても良い。
【0030】
本発明における金属錯体含有インクとは、金属イオンがイオン性化合物により配位された金属錯体化合物が溶媒に溶解したものである。
前記金属錯体含有インクの金属イオンとしては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等からなるものを挙げることができる。これらの金属は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
これらのなかでも導電性が良好で取り扱いが容易で比較的安価な点から、銀が好ましく用いられる。
前記金属錯体含有インクの溶媒としては、アルコール類、グリコール類、アセテート類、エーテル類、ケトン類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、水等の溶媒を挙げることができる。
【0032】
前期金属錯体含有インクの配位化合物として、ハロゲン等のイオン性無機物質、イオン性有機物質等から適宜選択することが可能である。特に、β−ケトカルボン酸誘導体、カルバミン酸アンモニウム系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物が金属錯体化合物の安定性が良好であり特に好ましい。
【0033】
アンモニウムカーボネート系銀錯体化合物の具体例としては、前述の特表2008−531810に記載されている導電性インク等がある。
【0034】
本発明における導電性被膜は、金属錯体含有インクを塗布・乾燥することにより形成なされる。
前記金属錯体含有インクを塗布する方法としては特に限定されず、スクリーン印刷、スプレー方式、バーコード法、スピンコート法、インクジェット法、ディスペンサー法による塗布等を挙げることができる。
【0035】
前期金属錯体含有インクの乾燥方法としては、例えば、オーブン中で加熱する方法の他、誘電加熱法、高周波加熱法等を挙げることができる。
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明はそれらの範囲に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
紙基材1の作成
金属製ロールを上下に備えたプレスロール機を用い線圧440kgf/cm、温度40℃の条件でミラーコートプラチナ(王研式透気度 13000秒、厚み175μm、キャストコート紙、王子製紙社製)をプレスロール加工して紙基材1を得た。得られた紙基材1の王研式透気度は48000秒であった。
【0038】
金属錯体含有インクの吐出量の調整
針内径φ0.15mmの金属製ニードルを取り付けたシリンジに金属錯体含有インク(商品名 TEC−IJ−010、インクテック社製、銀含有率15wt%)を充填し、ディスペンサ(商品名SuperΣX−V7、武蔵エンジニアリング社製)にてインク吐出圧を14.3KPaに設定し、シリンジ移動用ロボット(商品名Shot mini、武蔵エンジニアリング社製)にて描画時のシリンジの移動速度を100mm/secとして描画を行い、金属錯体含有インクの吐出量を(0.03mg/10mm)に調整した。
【0039】
回路1の作成
上記描画条件にて、紙基材1上に巾0.2mm×長さ50mmの回路を平行に10本描画を行い、幅2mm×長さ50mmの金属錯体含有インクによる回路を1本描画した。回路を描画した紙基材を150℃に設定したオーブン乾燥機にて20分間乾燥処理を行い銀回路1を得た。
【0040】
回路2の作成
上記描画条件にて、紙基材1上に巾0.2mm×長さ50mmの金属錯体含有インクによる回路を1本描画した。回路を描画した紙基材を150℃に設定したオーブン乾燥機にて20分間乾燥処理を行い銀回路2を得た。
【0041】
(実施例2)
金属製ロールを上下に備えたプレスロール機を用い線圧440kgf/cm、温度40℃の条件でOKトップコート(王研式透気度 14000秒、厚み65μm 塗工紙 王子製紙社製)をプレスロール加工して紙基材2を得た。得られた紙基材2の王研式透気度は89000秒であった。
紙基材2を使用した以外は実施例1と同様の操作を行って、回路1、2を作成した。
【0042】
(比較例1)
紙基材3(ミラーコートプラチナ、王研式透気度 13000秒、厚み175μm キャストコート紙、王子製紙社製)をプレスロール加工を行わずにそのまま使用した以外は実施例1と同様の操作を行って、回路1、2を作成した。
【0043】
(比較例2)
紙基材4(OKトップコート、王研式透気度 14000秒、厚み65μm 塗工紙 王子製紙社製)をプレスロール加工を行わずにそのまま使用した以外は実施例1と同様の操作を行って、回路1、2を作成した。
【0044】
(比較例3)
紙基材5(画彩、王研式透気度 470秒、厚み 230μm インクジェット用紙、富士写真フィルム社製)をプレスロール加工を行わずに使用した以外は実施例1と同様の操作を行って、回路1、2を作成した。
【0045】
(比較例4)
紙基材6(市販PPC用紙、王研式透気度 15秒、 厚み87μm)をプレスロール加工を行わずに使用した以外は実施例1と同様の操作を行って、回路1、2を作成した。
【0046】
実施例1から2および比較例1から4について以下の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0047】
<抵抗値の測定>
各紙基材に描画された回路1および回路2の長さ50mmの抵抗を、市販の直流抵抗計にて測定を行った。
【0048】
<評価>
○:抵抗値が表示され、導電性が確認された。
×:抵抗値が無限大であり、導電性が確認されなかった。
【0049】
【表1】

【0050】
表1の結果から、実施例では回路2の細線においても導電性を有する回路が形成されている。一方、比較例においては、広幅な回路1では導電性を有するものがあるものの、細線の回路2では導電性を有するものはなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属錯体含有導電インクを用いて回路形成する導電性基板に於いて、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に基づく王研式透気度が40000秒以上に調製することを特徴とする導電性基板の製造方法
【請求項2】
前記金属錯体含有インクの金属成分が銀であることを特徴とする請求項1記載の導電性基板の製造方法

【公開番号】特開2012−129343(P2012−129343A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279044(P2010−279044)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】