説明

導電性基板

【課題】優れた初期特性が長期間維持された発光素子、例えば有機EL発光素子、を得ることができる導電性基板を提供する。
【解決手段】X線回折法による(222)面に相当する2θピークの積分強度Aと(440)面に相当する2θピークの積分強度Cとの積分強度比A/Cが5.0以上であるITO膜が形成されていることを特徴とする、導電性基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、透明熱線反射体、透明面状発熱体、透明電極等には、基材としての高分子フィルム表面に透明導電層を設けた透明導電性積層体が広く用いられてきている。
【0003】
この透明導電性積層体に形成する透明導電層については、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)などの金属薄膜タイプ、インジウム酸化物(In)、スズ酸化物(SnO)、これらの混合物であるITO(Indium Tin Oxide)、亜鉛酸化物(ZnO)などの金属酸化物薄膜タイプ、さらにTiO/Ag/TiOなどの金属/金属酸化物の多層薄膜タイプ等の各種のものが知られている。
【0004】
これらの中でもITO等の金属酸化物薄膜は、透光性、導電性がともに非常に良好で、その上エッチング特性にも優れており、電極としてのパターン化が容易であるという特長を有しているものである。このため、ITO薄膜は、精細なパターンを必要とするディスプレイの透明電極などに好適に用いられている。
【0005】
このような金属酸化物薄膜は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、あるいはCVD法などの各種の成膜方法により作成されている。このような金属酸化物薄膜をフレキシブルな基板上に形成することにより、フレキシブル導電性基板を作製することができる。
【0006】
そのようなフレキシブルな導電性基板を用いた、ディスプレイ、照明、太陽電池、サーキットボード、半導体、電子ペーパー等、薄くて軽くて割れない、曲げられるフレキシブル電子機器が種々開発されている。
【0007】
近年では、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイデバイス用に、特に携帯用の小型、薄型、軽量の有機ELディスプレイデバイス用のフレキシブル透明電極基板として、基材である高分子フィルム表面に透明導電層を設けた透明導電性積層体が用いられるようになってきた。
【0008】
そして、有機ELディスプレイデバイスにおけるEL素子は、水分に非常に弱く、特に発光層は水分を含むと劣化は加速されるため、有機EL層への水蒸気の侵入を阻止する構造が種々提案されている。例えば、特開2004−14287号公報(特許文献1)には、結晶性の高い構造と結晶性の低い構造の層とを含む、水蒸気透過防止性を向上させたITO膜と、該ITO膜を用いた有機EL素子の記載があるが、ここには、水分がEL素子本体に侵入することを防止する防止膜(水蒸気透過防止膜、防湿バリア膜)を用いた構造の有機ELディスプレイデバイス用の基板も記載されている。
【特許文献1】特開2004−14287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、近年、基材としての高分子フィルム表面に透明導電層を設けた透明導電性積層体が、特に有機ELディスプレイデバイス用のフレキシブル透明電極基板として、用いられるようになってきている。これに伴い、電子素子の劣化の原因となる水蒸気の電子素子本体への侵入防止を図った構造の導電性基板が種々提案されている。
【0010】
しかしながら、本発明者ら知るところでは、このような従来の基板は、例えば有機ELディスプレイデバイスに用いられた場合に、有機EL素子としての寿命を十分に長くできるものではなく、且つ、基板のフレキシビリティ性、基板の耐久性や強度を同時に十分満足できるものとは言えなかった。また、発光時のショートやダークスポットの発生は素子表示欠陥として好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、これらに対応するものであって、例えば有機ELデバイスに用いられた場合には、有機EL素子としての寿命を十分に長くでき、且つ、基板のフレキシビリティ性、基板の耐久性や強度を同時に十分満足できる有機ELデバイス用の基板を提供しようとするもので、特に、ITO膜の膜質を改善して、有機EL素子としての寿命を長く、輝度−電圧(L−V)特性や電流−電圧(I−V)特性等の発光特性を向上させ、また発光時のダークスポットやショートを低減した有機ELデバイス用の基板を提供しようとするものである。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明による導電性基板は、X線回折法による(222)面に相当する2θピークの積分強度Aと(440)面に相当する2θピークの積分強度Cとの積分強度比A/Cが5.0以上であるITO膜が形成されていること、を特徴とする。
【0013】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記ITO膜が、X線回折法による(400)面に相当する2θピークの積分強度Bと(440)面に相当する2θピークの積分強度Cとの積分強度比B/Cが1.0以下のもの、を包含する。
【0014】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記ITO層が、X線回折法による(222)面に相当する2θピークの積分強度Aが7000カウント以上のもの、を包含する。
【0015】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記ITO層が、X線回折法による(222)面に相当する2θピークの半価幅が0.95deg以下のもの、を包含する。
【0016】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記ITO層が、X線回折法による(222)面に相当する2θピーク角度が30.0deg以上31.0deg以下のもの、を包含する。
【0017】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記ITO層が、160℃、1時間の加熱冷却サイクルを3回繰り返す工程において、その膜に1μm以上1mm以下のクラックが発生しないもの、を包含する。
【0018】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記ITO層が、圧力勾配型プラズマガンを用いた反応性イオンプレーティング法によって形成されたもの、を包含する。 このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記ITO層が、−25℃以上20℃以下の温度条件下の基板上に形成されたもの、を包含する。
【0019】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記ITO層が、エチレングリコールを45〜60体積%で含む有機溶剤によって冷却された基板上に形成されたもの、を包含する。
【0020】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記ITO層が、0.01Pa以上0.2Pa以下の成膜圧力条件下に、反応性イオンプレーティング法により形成されたもの、を包含する。
【0021】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、透明基材が形成されたもの、を包含する。
【0022】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記透明基材が、1.0g/m/day未満の水蒸気透過率のもの、を包含する。
【0023】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記透明基材が、透明樹脂化合物からなる、を包含する。
【0024】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、体積抵抗値が5×10−4Ωcm以下であり、全光線透過率が75%以上であり、前記ITO層の膜密度が7.0g/cm以上である、を包含する。
【0025】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記透明基材と前記ITO層との間に少なくとも1層の透明無機化合物層が形成されたもの、を包含する。
【0026】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記透明無機化合物層が、珪素含有化合物からなるもの、を包含する。
【0027】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記透明基材と前記ITO層との間に少なくとも1層の透明有機化合物層が形成されたもの、を包含する。
【0028】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記透明有機化合物層が、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂または金属アルコキシドの加水分解により得られるゾルゲル化合物の少なくとも1種からなるもの、を包含する。
【0029】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、前記透明基材の前記ITO層が形成されている面とは反対側に、少なくとも1層の透明無機化合物層が形成されたもの、を包含する。
【0030】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、有機EL素子用の透明電極基板として用いられるもの、を包含する。
【0031】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、発光寿命が30000時間以上である有機EL素子用の透明電極基板として用いられるもの、を包含する。
【0032】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、ダークスポット密度が1個/mm以下である有機EL素子用の透明電極基板として用いられるもの、を包含する。
【0033】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、ショート頻度が1回/10素子以下である有機EL素子用の透明電極基板として用いられるもの、を包含する。
【0034】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、有機EL素子に6V印加した際の電流値が1.5mA以上である有機EL素子用の透明電極基板として用いられるもの、を包含する。
【0035】
このような本発明による導電性基板は、好ましくは、有機EL素子の6V印加した際の発光輝度が400cd/m以上である有機EL素子用の透明電極基板として用いられるもの、を包含する。
【0036】
そして、本発明によるITO膜は、X線回折法による(222)面に相当する2θピークの積分強度Aと(440)面に相当する2θピークの積分強度Cとの積分強度比A/Cが5.0以上であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明による導電性基板は、上記構成にすることにより、例えば有機EL素子に用いられた場合には、有機EL素子としての寿命を十分に長くでき、且つ、基板のフレキシビリティ性、基板の耐久性や強度を同時に十分満足できる有機EL素子用の基板の提供を可能としている。特に、有機EL素子としての寿命を10万時間を越えるようにできる有機ELディスプレイデバイス用の基板の提供を可能としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
<ITO膜>
本発明による導電性基板のITO(Indium Tin Oxide)膜は、(1)X線回折法による(222)面に相当する2θピークの積分強度Aと(440)面に相当する2θピークの積分強度Cとの積分強度比A/Cが5.0以上であるITO膜である。積分強度比A/Cは、好ましくは7.0以上、特に好ましくは14.0以上である。積分強度比A/Cが5.0以上あることにより、ITOの結晶状態が等方性になり、加えて結晶格子間の空孔の存在が激減する。それにより電子の輸送(あるいはホールの輸送)がスムーズに進行し、有機EL特性が飛躍的に向上することが測s考えられている。
【0039】
そして、本発明による導電性基板のITOは、(2)X線回折法による(400)面に相当する2θピークの積分強度Bと(440)面に相当する2θピークの積分強度Cとの積分強度比B/Cが1.0以下のものが好ましい。積分強度比B/Cは、好ましくは0.9以下、特に好ましくは0.8以下である。積分強度比B/Cが1.0以下であることにより、さらにITOの結晶状態が等方性になる。ITOのSEM断面写真にて観測すると、結晶の粒境が見られないか、あるいは0.1μm以上と非常に大きいものとなる。これは粒子の成長がフラクタクル状に進行しているためである。なお、A/C、B/Cが上記の範囲外である場合、ITO膜は粒境欠陥の多いものとなる。
【0040】
そして、本発明による導電性基板のITOは、(3)X線回折法による(222)面に相当する2θピークの積分強度Aが7000カウント以上のものが好ましい。積分強度Aは、好ましくは10000カウント以上、特に好ましくは15000カウント以上である。この強い配向性により従来にない低抵抗性が得られる。また、可視域の波長の透過率も高くなる。また、配向面がそろっているために表面も平滑になる。
【0041】
そして、本発明による導電性基板のITOは、(4)X線回折法による(222)面に相当する2θピークの半価幅が1.0deg以下のものが好ましい。この半価幅は、好ましくは0.95deg以下、特に好ましくは0.92deg以下である。半価幅が狭いことは高い結晶性を示しており、これも有機ELの寿命に関し大きく影響を与える。
【0042】
そして、本発明による導電性基板のITOは、(5)X線回折法による(222)面に相当する2θピーク角度が30.0deg以上31.0deg以下のものが好ましい。このピーク角度は、好ましくは30.0deg以上30.8deg以下、特に好ましくは30.3deg以上30.6deg以下、である。ピーク角度が上記範囲外であるとき、特異的に上記性能が得られうようになる。
【0043】
ここで、上記の(1)〜(4)は、ITO膜の結晶格子配列に関連する条件であり、(5)および(6)は、主としてITO膜の結晶性に関連する条件である。なお、ピークの積分強度比、半価値およびピーク角度等は、X線回折法(XRD)により求めることができる。
【0044】
本発明において、ITO膜が(1)〜(4)を満たさず、従ってITO層の結晶格子配列が不均一であると、電界を印加した際にドープされている錫が正孔注入層側にマイグレーションを引き起こし、ホール伝達のエネルギー準位が変化しホールの受け渡しができなくなって、結果として発光寿命が短くなると推測される。
【0045】
したがって、錫がマイグレーションを引き起こさず安定して膜中にいられるためには、半価幅狭く高結晶性であることが好ましい。本発明のように半価値が狭いと結晶性が高く、化学的に安定で、硬く、構造が安定になる。即ち、錫がうまく結晶中に閉じ込められることになる。
【0046】
ITO膜の構成成分は、上記(1)〜(6)を満たす膜を形成することができるものであるならば任意であるが、本発明ではインジウム酸化物(In)とスズ酸化物(SnO)1〜35重量%とからなるものが好ましい。
【0047】
通常、ITOは多結晶であるためさまざまな配光面を有するが、本発明による上記(1)〜(4)を満たすITO膜は、特に(222)結晶面に特色があって、結晶格子配列の均一性が高くかつ高結晶性であることから、従来のITO膜では実現することが難しかった、例えば電子素子の寿命向上、ショート頻度の減少およびダークスポット欠陥の減少等を実現することができる。
【0048】
上記の諸条件を満たすITO層の形成は、例えばイオンプレーティング法、イオンアシスト法、パルスレーザ蒸着法、プラズマCVD法等の方法によって行うことができる。なお、同様の膜質を与える方法であればこれらに限定されることはない。
【0049】
この中では、イオンプレーティング法、特に圧力勾配型プラズマガンを用いた反応性イオンプレーティング法が特に好ましい。この方法は、高エネルギーを保持したまま膜形成粒子が基板に注入ないし累積させることにより、ITO薄膜の結晶粒が大きくなって、高密度状態の膜が容易にかつ安定的に作製される。
【0050】
なお、ITO膜の結晶配向が高度に制御されてくると、あるいは結晶性が高くなるにつれて、膜に応力がかかった際にクラックが生じやすくなる傾向がある。これを防ぐ方法としては、基板温度を低下させる方法がよい。ITO膜を形成させる基板の温度を、好ましくは−25℃以上20℃以下、特に−10℃以上10℃以下、にすることでクラックを防ぎかつ高配向な膜を作製することができる。例えば、160℃、1時間の加熱冷却サイクルを3回繰り返す工程において、その膜に1μm以上1mm以下のクラックが発生しないITO膜を得ることができるようになる。
【0051】
基板温度を上記範囲内に維持するために用いられる基板冷却用の媒体としては、エチレングリコールを含んだ有機溶剤、特にエチレングリコールを45〜60体積%で含む有機溶媒が好ましい。エチレングリコール含有量が45体積%未満では冷媒が凝結しやすくて、真空中に存在する基板を安定的に冷却することが難しくなる。また、60体積%以上では冷媒の粘度が高く、冷媒の循環効率が悪くなり不具合が生じる場合がある。
【0052】
また、成膜圧力は、0.01Pa以上0.2Pa以下、特に0.05Pa以上0.15Pa以下、が好ましい。成膜圧力が上記範囲内であることで、上記に示したような性能を与えることができる。成膜圧力が0.01Pa未満ではプラズマが不安定化してしまうとともに、形成された膜の膜応力が強くクラック等の微小欠陥が生じたり、膜の密着性が悪くなって剥離するおそれが生じる。また、0.2Pa超過では蒸着材料の真空中での運動エネルギーロスにより、配向性をもった結晶性膜を得ることが難しくなる。
【0053】
<導電性基板>
本発明による導電性基板は、上記のITO膜が形成されたものである。
【0054】
このような本発明による導電性基板は、少なくとも一層の上記ITO膜と、このITO膜を支持または保持する少なくとも一層の基材とからなる。なお、本発明による導電性基板は、必要に応じて、上記ITO膜の表面に、あるいはITO膜と基材との中間位置に、あるいは基材のITO膜の非形成面に、他の層を一層または複数形成することができる。そのような他の層を形成することによって、本発明の導電性基板の各種特性を向上、改良ないし制御することにより、具体的用途に特に適した導電性基板をすることができる。そのような他の層には、例えば、ガスバリヤ性や機械的強度を向上させる層、ならびに本発明の導電性基板が適用された各種の素子、装置等の特性、機能等の向上に有利に作用する各層が含まれる。
【0055】
本発明による導電性基板は、各用途に広く適用することができる。本発明の導電性基板の主な用途としては、例えばディスプレイ用基板、照明用基板、太陽電池用基板、サーキットボード用基板、半導体用基板、電子ペーパー等のような電子的ないし光学的な素子ないし機械の導電性基板としての用途を挙げることができる。ほかにも、例えば産業資材用途、包装用途、建材用途、情報記録媒体、セキュリティー分野、出版物、バイオ分野において用いられる導電性基板として利用することができる。
【0056】
本発明による導電性基板の効果が特に顕著に発揮される用途としては、発光素子、特に好ましくは有機EL発光素子用の導電性基板を挙げることができる。
【0057】
本発明による導電性基板、特に体積抵抗値が10×10−4Ωcm以下であり、全光線透過率が70.0%以上であり、前記ITO層の膜密度が6.8g/cm以上である導電性基板は、発光素子用基板、特に有機EL発光素子用の透明電極基板、として適したものである。体積抵抗値が5.0×10−4Ωcm以下であるもの、全光線透過率が75.0%以上であるもの、あるいはITO層の膜密度が7.0g/cm以上である本発明による導電性基板は、上記用途、特に有機EL発光素子用の透明電極基板として、特に適したものである、
その体積抵抗が、10×10−4Ωcmを超過する場合、大面積素子の場合に、発光ムラが生じたり、高速応答に耐えられない、低電圧駆動に耐えられない等の不具合が生じる場合がある。また、全光線透過率が70.0%未満では、十分な輝度が得ることが困難である。そして、膜密度が6.8g/cm未満でな、電流効率が悪く、発光不良が生じるため好ましくない。
【0058】
基 材
本発明による導電性基板における基材は、特に制限なく用いることができる。従って、基板は、具体的用途や目的等に応じ、(イ)ガラス基板や硬質樹脂基板、好ましくは例えばウエハー、プリント基板、また様々なカードやボトル等成型された樹脂からなる非フレキシブル基板、あるいは(ロ)フレキシビリティを有する樹脂基板、好ましくは、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、ポリシルセスキオキサン、ポリノルボルネン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、環状ポリオレフィン等によって形成することができる。樹脂基板である場合、好ましくは100℃以上、特に好ましくは150℃以上の耐熱性を有するものが適当である。
【0059】
基板の厚さについても特に制限はない。フレキシブル基板である場合、基板の厚さは、可とう性および形態保持性の観点から例えば50〜400μmの範囲とすることが好ましい。
【0060】
また、本発明による導電性基板に透明性が必要とされる場合には、この基板は高度の透明性を有する材料によって形成することが好ましい。
【0061】
そして、この基材は、ガスバリヤ性が高いもの、例えば、水蒸気透過性が50g/m/day未満であるもの、特に10g/m/day未満であるもの、が好ましい。なお、ここでのガスバリア性は、Mocon社製のPARMATRAN3/31を用い、37.8℃100%Rhの条件で測定したときのものである。
【0062】
ITO膜
本発明による導電性基板のITO膜は上記のものである。このITO膜は、主として、この導電性基板を用いて構成された各種の電子素子ないし電子機器等に電気を供給する配線層または電極として機能しうるものである。
【0063】
ITO膜の厚さは特に制限はないが、フレキシブル基板の耐屈曲性、エッチングの容易性の観点からは、例えば0.05〜0.8μm、特に0.1〜0.4μm、が好ましい。
【0064】
ガスバリア層
本発明による導電性基板において必要に応じて設けられるガスバリア層は、特に制限されることなく、例えば従来から用いられている各種のガスバリア層形成用材料によって得ることができる。そのようなガスバリア層形成用材料としては、酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化アルミニウムからなる群から選ばれた少なくとの一種の無機化合物を挙げることができる。この中では、特に酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素等の珪素含有化合物からなるものが好ましい。
【0065】
ガスバリヤ層の形成方法も特に制限されることなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、あるいはCVD法などの各種の成膜方法を用いることにより作製することができる。
【0066】
ガスバリア層の必要性能は用途により異なる。本発明では、水蒸気透過率が1.0g/m/day以下、特に1×10−1g/m/day以下、であることが好ましい。また、酸素ガス透過率が1.0cc/m/day以下、特に1×10−1cc/m/day以下、であることが好ましい。
【0067】
特に、本発明による導電性基板を有機EL素子に適用する場合には、水蒸気透過率が1×10−1g/m/day以下がよい。さらに好ましくは、1×10−2g/m/day以下がよい。そしてガス透過率が1×10−1cc/m/day以下、特に1×10−2cc/m/day以下、であることが好ましい。なお、ここでのガスバリア性は、Mocon社製のPARMATRAN3/31を用い、37.8℃100%Rhの条件で測定したときのものである。
【0068】
上記の無機化合物層は、基材とITO層との間に形成することができ、また、基材のITO層とは反対面に形成することができる。基材とITO層との間に形成された場合には、特に高度のガスバリヤ性を達成することができ、また、基材のITO層とは反対面に形成された場合には、該無機化合物層により脱ガスを抑える効果有するとともに、成膜時の応力による基材の変形を抑え、且つフレキシビリティを兼ね備えたものとすることができる。特に有機EL基板としては有効である。
【0069】
有機化合物層
本発明による導電性基板において必要に応じて設けられる有機化合物層は、特に制限されることなく、例えば従来から用いられている各種の高分子材料によって得ることができる。そのような高分子材料としては、エステル、ウレタン、アミド、アラミド、イミド、カーボネート、スチレン、アセタール、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、オレフィン、イソシアネート、エチレンイミン、ブタジエン系の樹脂からなる群から選ばれた少なくとの一種の有機化合物を挙げることができる。この中では、特にエステル、ウレタン、アクリレート、エポキシが好ましい。有機化合物層の形成方法も特に制限されることな。例えば上記化合物材料からなるフィルムを積層したり、あるいは液状の化合物材料を塗布する方法などを挙げることができる。
【0070】
有機化合物材料の種類、性状、厚さ等は、導電性基板の具体的用途に応じた必要性能等を考慮して適宜決定することができる。例えば、本発明による導電性基板に要求される機械的強度、耐熱性、ガスバリヤ性、フレキシブル性、耐薬品性、光学的特性等を考慮して決定することができる。
【0071】
上記の有機化合物層は、基材とITO層との間に形成することができ、また、基材のITO層とは反対面に形成することができる。この有機化合物層は、本発明による導電性基板への応力緩和機能とフレキシビリティを兼ね備えることができる。また表面形状にも変化を与えることが可能となる。このことによって、導電性基板の表面を平坦化したり、また光学的機能を持たせることも可能である。
【0072】
<有機EL素子用の電極基板>
本発明による導電性基板の効果が特に顕著に発揮される用途としては、有機EL発光素子用の導電性基板を挙げることができることは上記した通りである。
【0073】
したがって、本発明による導電性基板には、例えば(1)有機EL素子用の透明電極基板として用いられる導電性基板、(2)発光寿命が30000時間以上である有機EL素子用の透明電極基板として用いられる導電性基板(ここで、発光寿命とは、100cd/m換算にて、その輝度が初期値の50%まで半減する時間を言う)(3)ダークスポット密度が1個/mm以下である有機EL素子用の透明電極基板として用いられる導電性基板、(4)ショート頻度が1回/10素子以下である有機EL素子用の透明電極基板として用いられる導電性基板、(5)有機EL素子に6V印加した際の電流値が1.5mA以上である有機EL素子用の透明電極基板として用いられる導電性基板、(6)有機EL素子の6V印加した際の発光輝度が400cd/m以上である有機EL素子用の透明電極基板として用いられる導電性基板、等が包含される。
【0074】
有機EL素子
本発明による導電性基板は上記の通りのものであり、本発明による導電性基板の効果が特に顕著に発揮される用途としては、有機EL発光素子用の導電性基板があることは上記した通りである。なお、有機EL発光素子の電極基板以外の構成は任意であって、例えば従来から提案されている各構成をそのまま、あるいは必要に応じて本発明の効果が最大限に得られるような改変を加えて用いることができる。
【0075】
以下に、本発明による導電性基板が適用可能な有機EL発光素子の好ましい具体例を記載する。
【0076】
有機EL素子は、基本的には、陽極電極と陰極電極の一対の電極間に有機化合物を含む有機EL層を挟持した構造となっており、陽極電極(アノード電極)/有機EL層/陰極電極(カソード電極)の積層構造が基本になっている。ここでは、このー対の電極間に設けられる全ての層を、総称して、有機EL層(有機発光層とも言う)と呼び、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等をがこれに含まれる。
【0077】
画素電極と対向電極が、それぞれ、陽極電極、陰極電極のいずれかに相当し、一対の電極を構成する。
【0078】
尚、有機EL素子を構成する各層を構成する素材としては、それ自体は公知で、本発明では、例えば次のようなものを用いることができる。
【0079】
陰極電極は、通常の有機EL素子に用いられる素材であれば、いかなるもので構成してもよく、特に電子が注入し易いように仕事関数の小さい導電性材料であることが好ましく、具体的には、例えば、マグネシウム合金(MgAg)、アルミニウム、銀等である。
【0080】
有機EL素子においては、基板上、もしくは陽極上に部分的に、絶縁層を少なくとも一層形成することができる。そのような絶縁層は、好ましくは紫外線硬化樹脂などの光硬化樹脂または熱硬化性樹脂を含む樹脂材料から構成され、表示の際に、絶縁層のある部分が非発光部となるようパターン状に形成することができる。また、この樹脂材料にカーボンブラック等を混合することにより、絶縁層をブラックマトリックスとして形成することもできる。
【0081】
一般的な有機EL素子は、陽極電極と陰極電極との間に、正孔輸送層および発光層、もしくは、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層が積層した積層構造を基本構成とするが、陽極電極と陰極電極との間には、エレクトロルミネッセンスを起こす有機発光材料からなる発光層を必須の層として、任意の層として発光層に正孔を輸送する正孔輸送層、正孔輸送層に正孔を注入する正孔注入層、電子輸送層および電子注入層等を設けることができる。
【0082】
なお、陽極電極と陰極電極との間に積層し得るこれらの各層をまとめて、有機EL層と呼ぶこととする。
【0083】
発光層を構成する有機発光材料としては、大別して、色素系材料、金属錯体系材料、もしくは高分子系材料等の各タイプのものが挙げられる。
【0084】
色素系材料としては、例えば、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリレーン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、もしくはピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0085】
金属錯体系材料としては、例えば、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポリフィリン亜鉛錯体、もしくはユーロピウム錯体等の、中心金属にAl、Zn、もしくはBe等、またはTb、EuもしくはDy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体を挙げることができる。
【0086】
高分子系材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、もしくはポリビニルカルバゾール誘導体等、または上記色素系しくは金属錯体系発光材料を高分子化したものを挙げることができる。
【0087】
上記の有機発光材料からなる発光層中には、必要に応じて、発光効率を向上させる、もしくは発光波長を変化させる等の目的でドーピングを行うことができる。このドーピングを行なうためのドーピング材料としては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポリフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、もしくはフェノキサゾン等を挙げることができる。
【0088】
正孔注入層は、陽極電極と正孔輸送層との間、もしくは陽極電極と発光層との間に設けられるものである。
【0089】
正孔注入層を構成する材料としては、例えば、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、もしくはフタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、もしくは酸化アルミニウム等の酸化物、またはアモルファスカーボン、ポリアニリン、もしくはポリチオフェン誘導体等を挙げることができる。
【0090】
電子輸送層は、発光層と陰極電極との間、もしくは発光層と電子注入層との間に設けられるものである。
【0091】
電子輸送層を構成する材料としては、例えば、オキサジアゾール類もしくはアルミニウムキノリノール錯体等の、一般的に安定なラジカルアニオンを形成し、イオン化ポテンシャルの大きい物質が挙げられ、具体的には、1,3,4−オキサジアゾール誘導体、もしくは1,2,4−トリアゾール誘導体等を挙げることができる。
【0092】
電子注入層は、電子輸送層と陰極電極の間、若しくは陰極電極と発光層との間に設けられるものである。
【0093】
電子注入層を構成する材料としては、1A族もしくは2A族の金属、またはそれらの酸化物もしくはハロゲン化物を挙げることができる。1A族の金属、その酸化物、およびハロゲン化物の例としては、具体的には、フッカリチウム、酸化ナトリウム、および酸化リチウム等を挙げることができる。ここで、2A族の金属、その酸化物、およびハロゲン化物の例としては具体的に、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、および酸化ストロンチウム等を挙げることができる。
【0094】
<測定評価方法>
尚、測定評価方法であるが、表面抵抗は、4端針法(三菱油化製ロレスターAP)で測定する。全光線透過率は、ヘーズメータ(高千穂精機製)にて測定する。
【0095】
膜密度は、X線回折装置(リガク電機工業(株)製、ATX−E)を用いて測定を行い、得られたデータを解析ソフト(リガク電機工業(株)製、RGXR)を用い、反射率を非線形最小二乗法によりフィッティングし求めた。解析の際のR値が1%未満であることを正確性の判断基準とした。X線としては、18kWのX線発生装置を用い、Cuターゲットによる波長(λ);1.5405ÅのCuKα線を発生させ、モノクロメーターとしては放物面人口多層膜ミラーおよびGe(220)モノクロ結晶を用いた。試料の透明導電性シートを基板ホルダーにマグネットで装着し、自動アライメント機能を利用して0°位置調整を行なった後、スキャン速度;0.1000°/min、サンプリング幅;0.002°、およびスキャン範囲;0〜4.0000°の設定条件にてスキャンしながら反射率を測定した。測定で得られた反射率データは、上記の解析ソフトを用い、初期値として薄膜の元素比を入力し、フィッティングエリア;0.600°〜4.000°の条件で最小二乗法によるフィッティングを行なって、膜密度を求めた。
【0096】
また、積分強度比、半価幅等の測定は、例えば、リガク製のX線回折装置(XRD装置とも言う)を用い、下記の測定条件等により行うことができる。
・X線:50kV、300mA
・スキャンスピード:4.0000°/min
・サンプリング幅:0.0400°
・操作範囲:5.0000°〜120.0000°
・インシデントモノクロ:スリットコリメーション
・カウンタモノクロメータ:受光スリット
【実施例】
【0097】
次に、本発明の実施例と、比較例を挙げ、本発明を更に説明する。
【0098】
<実施例1>
乾燥機で160℃で1時間乾燥させた厚さ100μmのPEN樹脂(帝人デュポン製Q65)からなるプラスチックフィルム基材を透明フィルム基材とし、これの両方の面に、膜厚100nmの酸化窒化珪素膜(Siターゲット:豊島製作所製(4N)、成膜圧力:0.3Pa、パワー5kW)を、スパッタ法により形成した。
【0099】
これにより、無機化合物層が形成された。
【0100】
その後、スピンコートにて片面にカルド骨格を有するエポキシ樹脂組成物(新日鐵化学製V−259−EH)を塗布し、160℃、1時間、乾燥させることにより1μmの有機化合物層を得た。
【0101】
その後さらに、有機化合物層上に、膜厚100nmの酸化窒化珪素膜からなる無機化合物層をスパッタ法により形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
【0102】
ガスバリア性を測定したところ測定限界以下の値(1×10−2g/m/day以下)であった。
【0103】
ここでは、ガスバリア性を、Mocon社製、PARMATRAN3/31を用い、37.8℃、100%Rhの条件で測定した。
【0104】
ガスバリア性フィルムの片面に、膜厚160nmのITO膜を、イオンプレーティング法(Ar:16sccm、酸素:22sccm、放電パワー:4.0kW、成膜圧力:0.1Pa)により形成した。その際基板の温度を5℃にした。
【0105】
その後、ITO膜の膜密度、(222)面に相当するピークの積分強度Aと(440)面に相当するピークの積分強度Cとの積分強度比A/C また、(400)面に相当するピークの積分強度Bと(440)面に相当するピークの積分強度Cとの積分強度比等その他評価結果を下記表1に示した。
【0106】
ここでは、X線回折装置(XRD装置とも言う)として、リガク製のX線回折装置を用い、下記の測定条件にて測定した。
・X線:50kV、300mA
・スキャンスピード:4.0000°/min
・サンプリング幅:0.0400°
・操作範囲:5.0000°〜120.0000°
・インシデントモノクロ:スリットコリメーション
・ カウンタモノクロメータ:受光スリット
また全光線透過率を測定した。
【0107】
次いで、作製されたITO薄膜付きガスバリア性フィルムを洗浄した後、ITO膜を所定のパターン状にエッチングを行ない、陽極電極を形成して、フレキシブル透明電極基板を得た。
【0108】
次いで、このようにして作製したフレキシブル透明電極基板を用いて、有機EL素子からなる表示部を作製した。
【0109】
得られた陽極基板の陽極表面を洗浄した後、陽極電極表面上に、下記のPEDOT/PSSの分散液を、スピンコーティングによって塗布し、塗布後、温度;200℃のホットプレート上に載せて30分間加熱して乾燥させた。
【0110】
さらに、純窒素置換されたグローブボックス内に移して再度、温度;200℃のホットプレート上に載せ15分間加熱して乾燥させ、陽極上に、PEDOT/PSSの80nmの薄膜を得た。
PEDOT/PSS=1/20(バイエル社製、バイトロン P VP CH8000を使用。)
【0111】
次いで、有機EL素子用蛍光体(シグマアルドリッチ社製、品番;ADS228GE)をトルエン中に1.0%(質量比)になるよう混合した発光層形成用溶液を準備し、この溶液を、上記で得られたPEDOT/PSSの薄膜上に、やはりグローブボックス内にてスピンコーティングによって塗布し、塗布後、温度;130℃のホットプレート上に載せて1時間加熱して乾燥させ、厚みが80nmの発光層を形成した。
【0112】
次いで、発光層までの各層が形成された基板上の発光層上に、グローブボックス内にて蒸着を行ない、厚みが3nmのLiFの薄膜、および厚みが10nmのCa薄膜を順次形成して電子注入層とし、さらに電子注入層上に、厚みが180nmのAl薄膜を形成して陰極電極とした。
【0113】
その後、周囲に凸部を有する封止用のガラスの凸部に紫外線硬化性接着剤(ナガセケムテック(株)製、品番;XNR5516HP−B1)を塗布したものを、上記の陰極電極まで形成した基板上に重ね合わせ、接着剤の塗布された箇所に紫外線を照射して接着剤を硬化させ、照射後の重ね合わされた基板を、温度;80℃のホットプレート上に載せて1時間加熱して接着剤を十分硬化させて、有機EL素子を形成した。
【0114】
以上のようにして得られた有機EL素子からなる表示部の陽極電極(ITO電極)と陰極電極(背面電極層とも言う)との間に、直流電圧を印可することにより、両電極が交差する所望の位置における発光層を発光させた結果、いずれの位置においても、良好な発光が得られた。
【0115】
それらの評価結果を表1に示す。
【0116】
尚、ここでは、上記のように形成した有機EL素子について、初期の輝度が100Cdになるように連続して電圧を印加し、時間の経過に伴なう輝度の変化を測定し、初期の輝度が半減する、輝度半減時間を有機ELの発光寿命と定義した。
【0117】
<実施例2〜10および比較例1〜3>
実施例1と同様にして、サンプルを作製、評価を行った。実施例1と異なる点や結果を表1にまとめた。
【表1】

【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折法による(222)面に相当する2θピークの積分強度Aと(440)面に相当する2θピークの積分強度Cとの積分強度比A/Cが5.0以上であるITO膜が形成されていることを特徴とする、導電性基板。
【請求項2】
前記ITO膜が、X線回折法による(400)面に相当する2θピークの積分強度Bと(440)面に相当する2θピークの積分強度Cとの積分強度比B/Cが1.0以下のものである、請求項1に記載の導電性基板。
【請求項3】
前記ITO層が、X線回折法による(222)面に相当する2θピークの積分強度Aが7000カウント以上のものである、請求項1または2に記載の導電性基板。
【請求項4】
前記ITO層が、X線回折法による(222)面に相当する2θピークの半価幅が0.95deg以下のものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項5】
前記ITO層が、X線回折法による(222)面に相当する2θピーク角度が30.0deg以上31.0deg以下のものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項6】
前記ITO層が、160℃、1時間の加熱冷却サイクルを3回繰り返す工程において、その膜に1μm以上1mm以下のクラックが発生しないものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項7】
前記ITO層が、圧力勾配型プラズマガンを用いた反応性イオンプレーティング法によって形成されたものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項8】
前記ITO層が、−25℃以上20℃以下の温度条件下の基板上に形成されたものである、請求項7に記載の導電性基板。
【請求項9】
前記ITO層が、エチレングリコールを45〜60体積%で含む有機溶剤によって冷却された基板上に形成されたものである、請求項7または8に記載の導電性基板。
【請求項10】
前記ITO層が、0.01Pa以上0.2Pa以下の成膜圧力条件下に、反応性イオンプレーティング法により形成されたものである、請求項7〜9のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項11】
透明基材が形成された、請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項12】
前記透明基材が、1.0g/m/day未満の水蒸気透過率のものである、請求項11に記載の導電性基板。
【請求項13】
前記透明基材が、透明樹脂化合物からなる、請求項11または12に記載の導電性基板。
【請求項14】
体積抵抗値が5×10−4Ωcm以下であり、全光線透過率が75%以上であり、前記ITO層の膜密度が7.0g/cm以上である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項15】
前記透明基材と前記ITO層との間に少なくとも1層の透明無機化合物層が形成された、請求項11〜14のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項16】
前記透明無機化合物層が、珪素含有化合物からなる、請求項15に記載の導電性基板。
【請求項17】
前記透明基材と前記ITO層との間に少なくとも1層の透明有機化合物層が形成された、請求項11〜14のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項18】
前記透明有機化合物層が、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂または金属アルコキシドの加水分解により得られるゾルゲル化合物の少なくとも1種からなる、請求項17に記載の導電性基板。
【請求項19】
前記透明基材の前記ITO層が形成されている面とは反対側に、少なくとも1層の透明無機化合物層が形成された、請求項11〜18のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項20】
有機EL素子用の透明電極基板として用いられる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項21】
発光寿命が30000時間以上である有機EL素子用の透明電極基板として用いられる請求項1〜20のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項22】
ダークスポット密度が1個/mm以下である有機EL素子用の透明電極基板として用いられる、請求項1〜21のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項23】
ショート頻度が1回/10素子以下である有機EL素子用の透明電極基板として用いられる、請求項1〜22のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項24】
有機EL素子に6V印加した際の電流値が1.5mA以上である有機EL素子用の透明電極基板として用いられる、請求項1〜23のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項25】
有機EL素子の6V印加した際の発光輝度が400cd/m以上である有機EL素子用の透明電極基板として用いられる、請求項1〜24のいずれか1項に記載の導電性基板。
【請求項26】
X線回折法による(222)面に相当する2θピークの積分強度Aと(440)面に相当する2θピークの積分強度Cとの積分強度比A/Cが5.0以上であることを特徴とする、ITO膜。

【公開番号】特開2007−141755(P2007−141755A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336749(P2005−336749)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】