説明

導電性塗料組成物、導電性塗料塗布液、および、導電性プレコートステンレス鋼

【課題】ステンレス鋼の表面に、導電性に優れ、かつ、密着性、耐屈曲性、耐薬品性、耐水性、耐ブロッキング性に優れた黒色を呈する塗膜を形成する。
【解決手段】塗膜を形成する導電性塗料組成物は、カーボンブラックおよびグラファイトのいずれか一方または両方の炭素質物とアクリル−スチレン樹脂の合成樹脂とからなり、前記炭素質物は体積平均径(MV)が0.1〜30.0μm、前記合成樹脂はガラス転移点が0〜35℃、数平均分子量が10万以上、前記導電性物質と前記合成樹脂との固形分質量比は0.1:20〜40:20のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼板に導電性を付与するための導電性塗料組成物、同導電性塗料組成物を主体とする導電性塗料塗布液、および、同導電性塗料塗布液を塗布して形成される導電性塗膜を備える導電性プレコートステンレス鋼に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、デジタルカメラ、パソコン、テレビ等の電気機器や電子機器の筺体、これらの機器の内部部品等には、静電気対策を施すことが必要である。これらの筺体、内部部品、内部部材等がステンレス鋼にて形成されている場合には、ステンレス鋼の表面には不働態皮膜が形成されているため導電性に乏しく、アースを取ることが難しい。このため、予め、ステンレス鋼の表面に存在する不働態皮膜を除去し、不働態皮膜の除去後のステンレス鋼の表面にニッケルめっき処理を施して、導電性を確保するのが一般的である。
【0003】
しかしながら、このように、ステンレス鋼の表面にニッケルめっき処理を施して導電性を確保する場合には、ニッケルめっき処理が高価であることから、導電性のステンレス鋼は高価なものとなる。例えば、ステンレス鋼の表面にニッケルめっき処理を施す場合には、ニッケルの価格が高いことに合わせて、ニッケルめっき処理には高価な設備を必要とし、ニッケルめっき処理のランニングコストが高くなり、ニッケルめっき処理の費用がステンレス鋼材の価格と同等またはこれを上回ることさえある。これに加えて、ニッケルめっき処理の工程から排出される廃液を処理して、環境対策に当たることが必要となる。
【0004】
近年、ニッケルめっき処理に起因するこれらの問題に対処すべく、ステンレス鋼板等ステンレス鋼の表面に導電性を付与する技術が種々提案されている。例えば、ステンレス鋼板の表面に、鱗片状ニッケルを配合した適宜の合成樹脂を主体とする塗料を塗布して、ステンレス鋼板の表面に導電性の塗膜を形成する技術(導電性プレコート金属板を形成する技術)が提案されている(特許文献1を参照)。
【0005】
また、マフラー用のステンレス鋼板等の表面に、ニッケル粉末やステンレス粉末等の導電剤、および、カーボンブラックや黒鉛等の黒色顔料を配合した特定のシリコーン樹脂を主成分とする塗料を塗布して、ステンレス鋼板の表面に導電性の塗膜を形成する技術(マフラー用プレコート鋼板を形成する技術)が提案されている(特許文献2を参照)。
【0006】
また、ステンレス鋼板の表面に導電性の塗膜を形成するため、ステンレス鋼板の表面に多数のピットを形成されたステンレス鋼板を採用して、その表面に、カーボン基質を配合してなる塗料を塗布して、ステンレス鋼板の表面に導電性の塗膜を形成する技術(ステンレス鋼製導電材を形成する技術)が提案されている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−314601号公報
【特許文献2】特開2001−98921号公報
【特許文献3】特開2001−243839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した「ステンレス鋼板等ステンレス鋼の表面に導電性の塗膜を形成する技術」においては、ステンレス鋼の表面に塗布する導電性塗料が安価であること、ステンレス鋼の表面に形成された塗膜(プレコート皮膜)がステンレス鋼の表面に対して強固な密着性を有すること、ステンレス鋼の加工時の屈曲変形に対する耐屈曲性に優れていること等が要請される。また、ステンレス鋼から形成される部品の意匠性の点から、ステンレス鋼の表面に塗膜を形成する導電性塗料には、黒色塗料が望まれる場合が多い。
【0009】
しかしながら、上記した各特許文献にて開示されている「ステンレス鋼の表面に導電性の塗膜を形成する技術」には、上記した全ての要請を満たす技術は存在しない。本発明の目的は、「ステンレス鋼の表面に導電性の塗膜を形成する技術」に関して、これらの全ての要請に対処し得る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ステンレス鋼の表面に導電性を付与するための導電性塗料組成物、同導電性塗料組成物を主体とする導電性塗料塗布液、および、同導電性塗料塗布液を塗布して形成される導電性の塗膜を備える導電性プレコートステンレス鋼に関する。
【0011】
しかして、本発明に係る導電性塗料組成物は、ステンレス鋼の表面に導電性の塗膜を形成するための導電性塗料組成物であり、当該導電性塗料組成物は、カーボンブラックおよびグラファイトのいずれか一方または両方の炭素質物とアクリル−スチレン樹脂の合成樹脂とからなり、前記炭素質物は体積平均径(MV)が0.1〜30.0μmであり、前記合成樹脂はガラス転移点が0〜35℃、数平均分子量が10万以上であり、前記導電性物質と前記合成樹脂との固形分質量比は0.1:20〜40:20であることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明に係る導電性塗料塗布液は、本発明に係る導電性塗料組成物を主成分とする導電性塗料塗布液であり、当該導電性塗料塗布液は、前記導電性塗料組成物を分散媒にて分散してなる分散液、また、前記導電性塗料組成物中の合成樹脂を溶媒で溶解してなる分散液であって、前記導電性塗料組成物の濃度は0.1〜80.0重量%のものであることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明に係る導電性プレコートステンレス鋼は、本発明に係る導電性塗料塗布液を塗布されて表面に導電性の塗膜を形成された導電性プレコートステンレス鋼であり、当該導電性プレコートステンレス鋼における塗膜の膜厚は0.1〜30.0μmであり、膜硬度は鉛筆硬度で3B〜3Hであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る導電性塗料組成物は、ステンレス鋼の表面に対して優れた導電性を付与するものであって、黒色を呈するものである。このため、当該導電性塗料組成物を基剤とする導電性塗料塗布液をステンレス鋼の表面に塗布して形成される塗膜は黒色を呈するとともに、優れた導電性を発揮する。このため、本発明に係る導電性プレコートステンレス鋼は、優れた導電性を有するとともに、当該導電性プレコートステンレス鋼にて形成される電気機器や電子機器等の内部部品は黒色を呈して、外部からの目隠しとしての意匠性に優れたものとなる。
【0015】
本発明に係る導電性塗料組成物では、特に、樹脂バインダーとして機能する合成樹脂としてアクリル−スチレン樹脂を採用して、カーボンブラック、グラファイト等の炭素質物とアクリル−スチレン樹脂の合成樹脂と固形分質量比を0.1:20〜40:20としている。このため、本発明に係る導電性プレコートステンレス鋼の表面を被覆する塗膜は、優れた導電性を有することは勿論のこと、ステンレス鋼の表面に対する密着性や曲げ加工に対する耐屈曲性に優れ、さらには、耐水性、耐薬品性、耐アルカリ性、耐ブロッキング性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ステンレス鋼の表面に導電性を付与するための導電性塗料組成物、同導電性塗料を主体とする導電性塗料塗布液、および、同導電性塗料塗布液を塗布して形成される塗膜を備える導電性プレコートステンレス鋼に関する。
【0017】
本発明に係る導電性塗料組成物は、基本的には、カーボンブラックおよびグラファイトのいずれか一方または両方の炭素質物とアクリルースチレン樹脂からなるものであるが、これらの成分の分散剤、および/または、アクリルースチレン樹脂の溶媒を構成成分とすることができる。さらには、必要に応じて、通常の塗料の構成成分として使用される各種の成分を配合することができる。配合可能な成分としては、潤滑剤、造膜助剤、界面活性剤、キレート剤、香料、可塑剤、乾燥剤、硬化剤、シランカップリング剤、増粘剤、皮張り防止剤、顔料、染料等を挙げることができる。
【0018】
本発明者等は、ステンレス鋼の表面に導電性の塗膜を形成する導電性塗料組成物について、優れた導電性、ステンレス鋼板の表面に対する優れた密着性、曲げ加工に対する優れた耐屈曲性、優れた耐水性、耐薬品性、耐アルカリ性、耐ブロッキング性を有する塗膜を形成し得る導電性塗料組成物を得るべく鋭意研究した結果、導電性塗料の主要成分である樹脂バインダーとして、特定のガラス転移点および分子量をもつアクリル−スチレン樹脂を採用することが最適であることを見出した。
【0019】
本発明は、かかる知見に基づくもので、本発明に係る導電性塗料組成物においては、導電性物質としてカーボンブラックおよびグラファイトのいずれか一方または両方の炭素質物を採用するとともに、樹脂バインダーとしてアクリル−スチレン樹脂を採用するものである。また、炭素質物としては体積平均径(MV)が0.1〜30.0μmのもの、および、アクリル−スチレン樹脂としてはガラス転移点が0〜35℃、数平均分子量が10万以上のものを採用して、導電性物質である炭素質物と樹脂バインダーであるアクリル−スチレン樹脂との固形分質量比を0.1:20〜40:20としている。
【0020】
本発明に係る導電性塗料組成物の組成成分である炭素質物は、カーボンブラックおよび/またはグラファイトである。採用するカーボンブラックは、特に限定されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック等を挙げることができる。特に好ましくは、ケッチェンブラックである。
【0021】
これらのカーボンブラックやグラファイトは、単独でまたは適宜に組み合わせて使用することができ、導電性塗料中の導電性物質として機能するものである。また、電気機器や電子機器の内部部品の黒色コーティング剤としても機能し、当該内部部品の外部からの目隠しとして高い意匠性を有する。
【0022】
導電性塗料組成物として採用するカーボンブラック、グラファイト等炭素質物の粒子径は、体積平均径(MV)として0.1〜30.0μmのものであり、好ましくは0.2〜10.0μmである。炭素質物の体積平均径(MV)が0.1μm未満である場合には、導電性塗料塗布液を調製した後に長期間放置して炭素質物が沈降した場合、沈降した炭素質物の再分散が難しい。また、炭素質物の体積平均径(MV)が30.0μmを超える場合には、導電性塗料塗布液を調製後、塗布液中に分散している炭素質物がすぐに沈降し、使用時に安定した炭素質濃度を確保することが難しいとともに、形成される塗膜の平滑性が低下する。
【0023】
本発明に係る導電性塗料組成物の組成成分である樹脂バインダーとしては、アクリル−スチレン樹脂を採用する。アクリル−スチレン樹脂は、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル等のアクリル酸エステル類とスチレンとの共重合体であって、ガラス転移点が0〜35℃、数平均分子量が10万以上のものを採用している。
【0024】
例えば、アクリル−スチレン樹脂のガラス転移点が0℃未満である場合には、生成される塗膜の硬度が低すぎ、密着性および耐ブロッキング性を大きく損なうことになる。一方、アクリル−スチレン樹脂のガラス転移点が35℃を超える場合には、塗膜の硬度が高くなりすぎて耐屈曲性が低下し、ステンレス鋼の表面の塗膜の形成には不適なものとなる。また、アクリル−スチレン樹脂の分子量が10万未満である場合には、ステンレス鋼の表面に成形される塗膜の密着性が低下することになる。
【0025】
本発明に係る導電性塗料組成物では、導電性物質である炭素質物(カーボンブラック、グラファイト等)と樹脂バインダーであるアクリル−スチレン樹脂との固形分質量比は0.1:20〜40:20である。炭素質物の質量比が0.1:20より低い場合には、導電性が劣るため導電性塗料としての機能を損なうことになる。また、炭素質物の質量比が40:20より高い場合には、炭素質物の粉末に起因して塗膜の強度や密着性が低下して、塗膜の形成に供することが難しい。
【0026】
本発明に係る導電性塗料組成物は、水や低級アルコール等の分散媒にて分散させた分散液の形態の導電性塗料塗布液として使用され、また、組成成分であるアクリル−スチレン樹脂を有機溶媒で溶解した溶液中に炭素質物が分散する形態の導電性塗料塗布液として使用される。すなわち、当該導電性塗料組成物は、これらの導電性塗料塗布液の形態でステンレス鋼の表面に塗布してステンレス鋼の表面に塗膜を形成する。
【0027】
本発明に係る導電性塗料塗布液の調製に使用される分散媒および溶媒は、組成成分であるアクリル−スチレン樹脂の種類によって適宜選定される。但し、調製された導電性塗料塗布液のステンレス鋼の表面に対する塗布性、形成される塗膜の乾燥性、形成される塗膜の硬度を考慮して適宜選定される。
【0028】
当該分散媒およびアクリル−スチレン樹脂の溶媒として選定可能なものとしては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等低級アルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等ケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等エステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等エーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼン等芳香族系溶剤、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド等アミド系溶剤、ジクロロホルム、クロロホルム等塩素系溶剤、その他の脂肪族系溶剤、アミン系溶剤、鉱物油等を挙げることができる。
【0029】
これらの分散媒または溶媒を使用して導電性塗料塗布液を調製する場合、導電性塗料組成物の濃度を0.1〜80.0重量%とすることが好ましく、導電性塗料塗布液の塗布作業の容易性や、塗膜の成膜性等を考慮して、この範囲内の濃度に適宜設定する。本発明に係る導電性塗料塗布液においては、ステンレス鋼の表面に塗布して、ステンレス鋼の表面に導電性の塗膜を形成すべく使用される。
【0030】
本発明に係る導電性塗料塗布液をステンレス鋼の表面に塗布する方法としては、適宜の方法を採用することができる。例えば、ローラー塗布、スプレー塗布、静電塗布、浸漬塗布、垂れかけ塗布、刷毛塗り等を挙げることができる。これらの方法のうち、ローラー塗布は、塗布液のロスを少なくすることができるとともに、ステンレス鋼の表面に形成される塗膜の厚みを制御し易くて好ましい方法である。ステンレス鋼の表面に形成された塗膜は、乾燥して溶媒を除去することにより、黒色を呈する導電性の塗膜となる。
【0031】
本発明に係る導電性プレコートステンレス鋼は、本発明に係る導電性塗料塗布液を、ステンレス鋼の表面に塗布することにより形成される。例えば、ステンレス鋼板にあっては、その表裏の片面または両面に塗布することにより、また、部品に加工されたステンレス鋼にあっては、部品の表面に塗布することにより、塗布面に導電性の塗膜が形成される。
【0032】
本発明に係る導電性プレコートステンレス鋼の表面に形成される塗膜の膜厚は、0.1〜30.0μmであり、好ましくは、0.5〜10.0μmである。また、塗膜の硬度は、鉛筆硬度で3B〜3Hである。塗膜の膜厚が0.1μm未満である場合には、塗膜の導電性が低く、また、導電性塗料塗布液の塗布時の塗膜の厚みの制御が難しい。また、塗膜の膜厚が30.0μmを超える場合には、基材であるステンレス鋼に対する密着性が低くなるため塗膜に剥離が発生するおそれがあり、特に、プレス加工時に金型との型当たりが生じて塗膜の剥離が起こりやすくなる。
【0033】
また、本発明に係る導電性プレコートステンレス鋼の表面に形成されている塗膜の硬度は、鉛筆硬度で3B〜3Hである。導電性の塗膜の膜硬度が3B未満の場合には、塗膜が柔らかくて傷付きやすい。また、塗膜の膜硬度が3Hを超える場合には、塗膜が硬くて曲げた際に割れが発生しやすい。
【0034】
本発明に係る導電性プレコートステンレス鋼は、上記した導電性の塗膜にて被覆されているものである。このため、当該導電性プレコートステンレス鋼は優れた導電性を有するとともに、当該塗膜はステンレス鋼の表面に対する密着性や曲げ加工に対する耐屈曲性に優れ、さらには、耐水性、耐薬品性、耐アルカリ性、耐ブロッキング性に優れている。また、当該塗膜は黒色を呈していて、基材であるステンレス鋼の光沢を遮蔽していることから、電気機器や電子機器等の内部部品を当該プレコートステンレス鋼に形成すれば、外部からの目隠しとして機能し、意匠性に優れたものとなる。
【実施例1】
【0035】
本実施例では、厚み0.2mmのSUS304のステンレス鋼板を用いて、導電性プレコートステンレス鋼板を作製し、プレコートされた塗膜の特性を測定する実験を試みた。 当該実験では、表1に示す導電性塗料組成物(実施例1〜8)、および、表2に示す導電性塗料組成物(比較例1〜6)を調製するとともに、これらの各導電性塗料組成物を主成分とする導電性塗料塗布液を調製し、これらの各導電性塗料塗布液を、ステンレス鋼板の片面にバーコーターを使用して塗布して、導電性プレコートステンレス鋼板を作製した。
【0036】
導電性塗料組成物の調製に採用した組成成分である各カーボンブラックは、その体積平均径(MV)が3.4μmのものであり、アクリル−スチレン樹脂は、その数平均分子量が20万のものである。また、調製された導電性塗料塗布液は、導電性塗料組成物の濃度が20.0wt%のものである。また、ステンレス鋼板の表面に形成した塗膜は、膜厚が5.0μmのものである。
【0037】
測定すべき塗膜の特性は、導電性、密着性、耐屈曲性、外観意匠性、塗膜硬度、耐アルカリ性、耐水性、耐ブロッキング性の9項目であって、下記に示すように測定した。塗膜の測定結果を表3に示す。
【0038】
(1)導電性:プレコートステンレス鋼板の表面に形成されている塗膜について、テスターを使用して、2端子法によって抵抗値(kΩ)を測定し、当該抵抗値に基づいて導電性の評価を行った。
(2)密着性:プレコートステンレス鋼板の表面に形成されている塗膜について、JIS G3320に基づく碁盤目試験を行い、碁盤目状に区画された塗膜に貼り付けたセロハンテープを剥離する際、剥離されずに残存する塗膜の区画数をカウントして、密着性を評価した(残存数/区画数)。
(3)耐屈曲性:プレコートステンレス鋼板を180度に折り曲げて、その曲部における割れの発生状況を目視にて確認して評価した(○:割れ無し △:一部割れが発生 ×:完全に割れが発生)。
(4)外観意匠性:プレコートステンレス鋼板で電子機器等の内部部品を作製された場合、塗膜の色による外部からの隠蔽性について評価した(○:完全に黒色で隠蔽性良好 △:黒色が一部薄く鋼板素地が透けている ×:黒色が全体で透けている)。
(5)塗膜の硬度:プレコートステンレス鋼板の表面の塗膜について、JIS G3320に基づく鉛筆硬度試験を行って硬度を評価した(硬度をB,Hで示す)。
(6)耐薬品性試験:プレコートステンレス鋼板をアセトンに30分間浸漬し、その後、アセトンから取り出して乾燥した後、塗膜の状態を目視にて確認して評価した(○:異常なし △:一部塗膜剥離あり ×:全体に塗膜剥離あり)。
(7)耐アルカリ性試験:プレコートステンレス鋼板を1wt%NaOH水溶液に30分間浸漬し、その後、NaOH水溶液から取り出して乾燥後、塗膜の状態を目視にて確認して評価した(○:異常なし △:一部塗膜剥離あり ×:全体に塗膜剥離あり)。
(8)耐水性試験:プレコートステンレス鋼板を水に30分間浸漬し、その後、水から取り出して乾燥後、塗膜の状態を目視にて確認して評価した(○:異常なし △:一部塗膜剥離あり ×:全体に塗膜剥離あり)。
(9)耐ブロッキング性:2枚のプレコートステンレス鋼板(長さ100mm×幅100mm×厚み0.2mm)を、その塗膜面を互いに合わせた状態で重ねて平面に静置し、その上から100kgの荷重をかけ、その後、荷重を除いて2枚のプレコートステンレス鋼板のくっつき状態を目視にて確認して評価した(○:2枚の鋼板はくっついていない ×:2枚の鋼板はくっついている)。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼の表面に導電性の塗膜を形成するための導電性塗料組成物であり、当該導電性塗料組成物は、カーボンブラックおよびグラファイトのいずれか一方または両方の炭素質物とアクリル−スチレン樹脂の合成樹脂とからなり、前記炭素質物は体積平均径(MV)が0.1〜30.0μmであり、前記合成樹脂はガラス転移点が0〜35℃、数平均分子量が10万以上であり、前記導電性物質と前記合成樹脂との固形分質量比は0.1:20〜40:20であることを特徴とする導電性塗料組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性塗料組成物を主成分とする導電性塗料塗布液であり、当該導電性塗料塗布液は、前記導電性塗料組成物を分散媒にて分散してなる分散液、または、前記導電性塗料組成物中の前記合成樹脂を溶媒にて溶解してなる分散液であって、前記導電性塗料組成物の濃度が0.1〜80.0重量%のものであることを特徴とする導電性塗料塗布液。
【請求項3】
請求項2に記載の導電性塗料塗布液を塗布して表面に導電性の塗膜を形成された導電性プレコートステンレス鋼であり、当該導電性プレコートステンレス鋼の塗膜の膜厚は0.1〜30.0μmであり、膜硬度は鉛筆硬度で3B〜3Hであることを特徴とする導電性プレコートステンレス鋼。

【公開番号】特開2012−12530(P2012−12530A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151679(P2010−151679)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000230869)日本金属株式会社 (29)
【出願人】(591019782)スギムラ化学工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】