説明

導電性塗膜

【課題】導電性、熱安定性、膜強度のいずれもが優れた導電性塗膜を提供する。
【解決手段】本発明の導電性塗膜は、導電性高分子溶液が塗布されて形成された導電性塗膜であって、表面抵抗が5000Ω以下であり、前記導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、アクリルアミド基及び/又はメタクリルアミド基を1つ以上有する(メタ)アクリルアミド化合物と、溶媒とを含有し、前記ポリアニオンは、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸のいずれかであり、前記(メタ)アクリルアミド化合物の含有量は、前記ポリアニオンに対して2〜50モル当量である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含有する導電性塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリンなどのπ共役系導電性高分子に、電子供与性化合物や電子受容性化合物(ドーパント)を添加(ドーピング)した導電性材料が開発され、その用途は広がっている。
特に、π共役系導電性高分子の透明性に着目され、現在、透明導電体として広く利用されているITO膜(インジウム−錫−酸化物)の代替が検討されている。
しかしながら、π共役系導電性高分子自体は、いかなる溶媒にも溶解しないため、加工性が低い上に、塗膜の形成やパターニングが困難であった。
【0003】
そこで、π共役系導電性高分子を含む導電性塗膜を形成する方法として、酸化剤と、塩化ビニル系共重合体と、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーとを溶剤に溶解して基材に塗布し、溶剤により酸化電位を制御しながら、前駆体モノマーを重合する方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、分子量が2,000〜500,000のポリスチレンスルホン酸(ポリアニオン)の存在下で、酸化剤を用いて、3,4−ジアルコキシチオフェンを化学酸化重合してポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)溶液を製造し、その溶液を基材に塗布する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
ところで、導電性塗膜としては、導電性が高いだけでなく、実用の点から、熱安定性及び膜強度が高いものが求められている。熱安定性を高める方法としては、酸化防止剤として使用可能なスルホン化された物質と類似の構造を有する化合物をドーパント及び熱安定剤として前駆体モノマーに混合して重合する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−186619号公報
【特許文献2】特許第2636968号公報
【特許文献3】特許第2546617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の方法では、基材の種類によって溶剤が限定されるために、前駆体モノマーが限定され、高い導電性を有するπ共役系導電性高分子が得られない。また、絶縁性樹脂である塩化ビニル系共重合体が含まれてしまうことも、高い導電性を確保できない一因である。
特許文献2に記載の方法では、π共役系導電性高分子を容易に水分散できる反面、非導電性のポリアニオンの添加量が多くなるため、高い導電性が得られにくいという問題があった。
特許文献3に記載の方法では、熱安定性には優れるものの、π共役系導電性高分子の溶媒溶解性が得られにくいという問題があった。
また、特許文献1〜3の方法では、膜強度を向上させることができなかった。
すなわち、従来、導電性、熱安定性、膜強度のいずれもが優れた導電性塗膜を形成できる上に、π共役系導電性高分子の溶媒溶解性に優れた導電性高分子溶液は得られていなかった。
本発明は、導電性、熱安定性、膜強度のいずれもが優れた導電性塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の導電性塗膜は、導電性高分子溶液が塗布されて形成された導電性塗膜であって、表面抵抗が5000Ω以下であり、前記導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、アクリルアミド基及び/又はメタクリルアミド基を1つ以上有する(メタ)アクリルアミド化合物と、溶媒とを含有し、前記ポリアニオンは、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸のいずれかであり、前記(メタ)アクリルアミド化合物の含有量は、前記ポリアニオンに対して2〜50モル当量であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の導電性塗膜は、導電性、熱安定性、膜強度のいずれもが優れている。このような導電性塗膜は、ITO膜などの無機系材料の導電膜を代替できる上に、フォトリソグラフィなどの方法によりパターンを形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(導電性高分子溶液)
[π共役系導電性高分子]
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用できる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性を得ることができるが、導電性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0010】
このようなπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0011】
これらの中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選ばれる1種又は2種からなる(共)重合体が抵抗値、反応性の点から好適に用いられる。さらには、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性がより高い上に、耐熱性が向上する点から、より好ましい。
また、透明性に優れる点では、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリチエノチオフェンが好ましい。
また、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)などのアルキル置換化合物は溶媒溶解性や、疎水性樹脂を添加した場合の相溶性及び分散性が向上するため、好ましい。また、アルキル置換化合物のアルキル基の中では、導電性の低下を防ぐことから、メチル基が好ましい。
【0012】
導電性高分子溶液中のπ共役系導電性高分子の含有量は、0.01〜10質量%であることが好ましい。
【0013】
[ポリアニオン]
ポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステルから選ばれた単独重合体又は共重合体であって、アニオン基を有する構成単位を有するものである。また、必要に応じてアニオン基を有さない構成単位を有してもよい。
なお、ポリアニオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させるだけでなく、π共役系導電性高分子のドーパントとしても機能する。
【0014】
ここで、ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0015】
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和結合(ビニル基)が1個以上含まれる構成単位からなるポリマーである。これらの中でも、不飽和結合とπ共役系導電性高分子との相互作用があること、置換若しくは未置換のブタジエンを出発物質として合成しやすいことから、置換若しくは未置換のブテニレンが好ましい。
ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる一種以上の構成単位を含む重合体が挙げられる。
【0016】
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物とオキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0017】
ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシル基、カルボニル基等が挙げられる。溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシル基、フェノール基、エステル基が好ましい。
アルキル基は、極性溶媒又は非極性溶媒への溶解性及び分散性、樹脂への相溶性及び分散性等を高くすることができ、ヒドロキシル基は、他の水素原子等との水素結合を形成しやすくでき、有機溶剤への溶解性、樹脂への相溶性、分散性、接着性を高くすることができる。また、シアノ基及びヒドロキシフェニル基は、極性樹脂への相溶性、溶解性を高くすることができ、しかも、耐熱性も高くすることができる。
上記置換基の中では、アルキル基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基が好ましい。
【0018】
前記アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等の鎖状アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
前記ヒドロキシル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したヒドロキシル基又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシル基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。ヒドロキシル基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。これらの中では樹脂への相溶及び有機溶剤への溶解性から、主鎖に結合した炭素数1〜6のアルキル基の末端に結合したヒドロキシル基がより好ましい。
前記エステル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアルキル系エステル基、芳香族系エステル基、他の官能基を介在してなるアルキル系エステル基又は芳香族系エステル基が挙げられる。
シアノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数1〜7のアルキル基の末端に結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数2〜7のアルケニル基の末端に結合したシアノ基等を挙げることができる。
【0019】
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基がより好ましい。
【0020】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。
これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらのうち、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリアニオンは、π共役系導電性高分子の熱分解を緩和することができる。
【0021】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0022】
導電性高分子溶液中のポリアニオンの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.1モルより少なくなると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。その上、溶媒への分散性及び溶解性が低くなり、均一な分散液を得ることが困難になる。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、導電性高分子溶液中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0023】
導電性高分子溶液中で、π共役導電性高分子とポリアニオンとは化学的結合により複合体を形成することが多い。複合体を形成するπ共役系導電性高分子とポリアニオンとの好ましい組み合わせは、塗膜の熱安定性及び透明性がより高くなることから、π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリチエノチオフェンのいずれかで、ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸であることが好ましい。
【0024】
[(メタ)アクリルアミド化合物]
(メタ)アクリルアミド化合物は、アクリルアミド基(CH=CH−CO−NR−(RはH又は任意の置換基))及び/又はメタクリルアミド基(CH=C(CH)−CO−NR−(RはH又は任意の置換基))を1つ以上有する化合物である。
具体的には、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0025】
導電性高分子溶液中の(メタ)アクリルアミド化合物の含有量は0.001〜95質量%であることが好ましい。導電性高分子溶液中の(メタ)アクリルアミド化合物の含有量が0.001質量%以上であれば、導電性、熱安定性、膜強度をより向上させることができる。ただし、95質量%を超えると、非導電性の(メタ)アクリルアミド化合物量の割合が多くなるため、導電性を低下させる傾向にあるため、好ましくない。
【0026】
(メタ)アクリルアミド化合物は、ポリアニオンに対して0.001〜10000モル当量含まれることが好ましく、2〜50モル当量含まれることがより好ましい。(メタ)アクリルアミド化合物の含有量がポリアニオンに対して0.001モル当量以上であれば、膜強度、熱安定性を充分に確保することができる。10000モル当量以下であれば、過剰な(メタ)アクリルアミド化合物が含まれないため、導電性の低下を確実に防ぐことができる。
【0027】
[溶媒]
溶媒としては特に限定されず、例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の溶媒との混合物としてもよい。
【0028】
[ドーパント]
導電性高分子溶液においては、π共役系導電性高分子の導電性を向上させるために、ポリアニオン以外の他のドーパントを添加してもよい。
他のドーパントとしては、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸などが用いられ、具体的には、有機カルボン酸、有機スルホン酸等の有機酸、有機シアノ化合物、フラーレン、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、カルボン酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレンなどが挙げられる。
【0029】
有機酸としては、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンジスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸、ピレンスルホン酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸などが挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。
【0030】
[他の成分]
導電性高分子溶液には、上記成分のほかに、膜強度の向上や耐環境特性の向上を図るために、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能アクリレートまたは多官能メタクリレート、エポキシシラン、ビニルシランなどのシランカップリング剤、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、ポリイソシアネートなどの架橋性樹脂、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾールなどの酸化防止剤、紫外線吸収剤などが含まれていてもよい。
【0031】
[製造方法]
次に、導電性高分子溶液の製造方法の一例について説明する。
この例の導電性高分子溶液の製造方法では、まず、溶媒中、ポリアニオンの存在下、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを化学酸化重合して、π共役系導電性高分子とポリアニオンとが複合した複合体を形成する。その複合体の形成の際には、π共役系導電性高分子の主鎖の成長と共にポリアニオンのアニオン基がπ共役系導電性高分子と塩を形成するため、π共役系導電性高分子の主鎖はポリアニオンに沿って成長する。よって、得られたπ共役系導電性高分子とポリアニオンは無数に塩を形成した複合体になる。この複合体においては、π共役系導電性高分子のモノマー3ユニットに対して1ユニットのアニオン基が塩を形成し、短く成長したπ共役系導電性高分子の数本が、長いポリアニオンに沿って塩を形成しているものと推定されている。
次いで、複合体を含む溶液に、(メタ)アクリルアミド化合物を添加して導電性高分子溶液を得る。
【0032】
上述した導電性高分子溶液では、(メタ)アクリルアミド化合物が重合することにより、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの複合体を擬似架橋することができ、分子間距離を短縮して収束することができる。そのため、π共役系導電性高分子間の電子移動におけるホッピングにかかる活性化エネルギーが小さくてすみ、塗膜の導電性が高くなる(具体的には、電気伝導度で100S/cm以上を実現し得る。)と考えられる。したがって、π共役系導電性高分子を可溶化させるポリアニオン量を多くしても高い導電性を維持できるため、溶媒溶解性を高くできる。
また、前記複合体の架橋によって、塗膜の熱安定性、膜強度も向上する。
【0033】
(導電性塗膜)
本発明の導電性塗膜は、上述した導電性高分子溶液が塗布され、(メタ)アクリルアミド化合物が重合されて形成されたものである。
導電性高分子溶液の塗布方法としては、例えば、コーティング、浸漬、スプレーなどの公知の手法が挙げられる。
導電性高分子溶液が塗布される基材としては、例えば、ガラス板、プラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0034】
重合では、熱または放射線による重合を適用でき、例えば、ラジカル重合法、熱重合法、光ラジカル重合法、プラズマ重合、カチオン重合法などの各種重合法を適用することができる。
重合においてラジカル重合法を適用した場合には、重合開始剤として、例えばアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシエステル類、ヒドロペルオキシド類等の過酸化物などを用いる。これら重合開始剤はあらかじめ導電性高分子溶液に含有させておくことが好ましい。
【0035】
光ラジカル重合法では、重合開始剤として、カルボニル化合物、硫黄化合物、有機過酸化物、アゾ化合物などを用いて重合する。具体的には、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェンノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、フルオレノン、アクドリン、ミヒラーズケトン、キサントン、チオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル-プロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、テトラメチルチウラム、ジチオカーバメート、過酸化ベンゾイル、N−ラウリルピリジウムアジド、ポリメチルフェニルシランなどが挙げられる。これら光重合開始剤はあらかじめ導電性高分子溶液に含有させておくことが好ましい。
【0036】
光ラジカル重合する場合には、光感度を向上させる増感剤を添加してもよい。増感剤の具体的な例として、2,5−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4’−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−ジエチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)等が挙げられる。これらの増感剤を1種または2種以上使用することができる。
なお、増感剤の中には光重合開始剤としても作用するものもある。
プラズマ重合では、プラズマを短時間照射し、プラズマの電子衝撃によるエネルギーを受けて、フラグメンテーションとリアレンジメントをしたのち、ラジカルの再結合により重合体を生成する。
【0037】
以上説明した導電性塗膜は、上記導電性高分子溶液から形成されたものであるから、導電性、熱安定性、膜強度のいずれもが優れている。特に、表面抵抗を5×10Ω以下にでき、かつ、全光線透過率を80%以上にできる。導電性塗膜の表面抵抗が5×10Ω以下、かつ、全光線透過率が80%以上であれば、高導電化かつ高透明化の要求に充分に応えることができる。
【実施例】
【0038】
(調製例1)
14.2g(0.1mol)の3,4−エチレンジオキシチオフェンと、27.5g(0.15mol)のポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶解した溶液とを混合させた。
この混合液を20℃に保ち、掻き混ぜながら200mlのイオン交換水に溶解した29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムを8.0g(0.02mol)の硫酸第二鉄の酸化触媒溶液をゆっくり加え、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液を透析し、未反応モノマー、酸化剤を除去して、約1.5質量%の青色ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)溶液を得た。これを複合体溶液1とした。
【0039】
(調製例2)
6.6g(0.1mol)のピロールと27.5g(0.15mol)のポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶解した溶液とを混合させた。
この混合液を20℃に保ち、掻き混ぜながら200mlのイオン交換水に溶解した29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムを8.0g(0.02mol)の硫酸第二鉄の酸化触媒溶液をゆっくり加え、2時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
得られた反応液を透析し、未反応モノマー、酸化剤を除去して、約1.5質量%の青色ポリスチレンスルホン酸ドープポリピロール溶液を得た。これを複合体溶液2とした。
【0040】
(実施例1)
100mlの複合体溶液1に、3.48g(ポリスチレンスルホン酸に対して6モル当量)の2−ヒドロキシエチルアクリルアミドと、0.104g(2−ヒドロキシエチルアクリルアミドに対して3質量%)の4,4’−ジメトキシベンゾフェノンを添加し、均一に分散させて導電性高分子溶液を得た。得られた導電性高分子溶液を#12のバーコートを用いて、表面を親水化処理した厚さ85μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ポリエステル社製T630E)上に塗布した。その後、100℃のオーブン中で乾燥させ、UV露光機によって積算光量500mJ/cmの照射をして導電性塗膜を形成した。
その導電性塗膜の導電性、熱安定性、透明性、膜強度を以下のように評価した。その結果を表1に示す。
【0041】
表面抵抗(Ω):ローレスタ(ダイアインスツルメンツ製)を用いて導電性塗膜の表面抵抗を測定した。
高温表面抵抗維持率(%):温度25℃における導電性塗膜の表面抵抗R25Bを測定し、測定後の導電性塗膜を温度85℃の環境下に300時間放置した後、該導電性塗膜を温度25℃に戻し、表面抵抗R25Aを測定した。そして、下記式より算出した。
高温表面抵抗維持率(%)=100×R25B/R25A
高湿表面抵抗維持率(%):温度25℃における導電性塗膜の表面抵抗R25Bを測定し、測定後の導電性塗膜を温度60℃、相対湿度95%の環境下に300時間放置した後、該導電性塗膜を温度25℃に戻し、表面抵抗R25Cを測定した。そして、下記式より算出した。
高湿表面抵抗維持率(%)=100×R25B/R25C
高温表面抵抗維持率及び高湿表面抵抗維持率により熱安定性を評価できる。
【0042】
全光線透過率(%)、ヘイズ(%):ヘイズメータ(ビーワイケー ガードナー(BYK Gardner)社製、ヘイズガードプラス(JIS K 7361−1準拠))を使用した。
【0043】
膜強度は以下のようにして評価した。すなわち、不織布(アドクリーンワイパーF1タイプ)に直径50mm、200gの荷重をかけながら、導電性塗膜の表面を10往復払拭した。そして、払拭前の導電性塗膜の表面抵抗R25Aと、払拭後の導電性塗膜の表面抵抗R25Dとから磨耗表面抵抗維持率(%)を求めた。磨耗表面抵抗維持率により膜強度を評価でき、具体的には、磨耗表面抵抗維持率が高いほど、膜強度が高い。
磨耗表面抵抗維持率(%)=100×R25D/R25A
【0044】
【表1】

【0045】
(実施例2)
3.48gの2−ヒドロキシエチルアクリルアミドの代わりに3.03g(ポリスチレンスルホン酸に対して6モル当量)のN−メチロールアクリルアミドを複合体溶液1に添加したこと以外は実施例1と同様にして導電性高分子溶液を得た。
そして、実施例1と同様にして導電性塗膜を形成して、導電性、熱安定性、透明性を評価した。その結果を表1に示す。
【0046】
(実施例3)
100mlの複合体溶液2に、4.95g(ポリスチレンスルホン酸に対して10モル当量)のN,N−ジメチルアクリルアミドと、0.104g(N,N−ジメチルアクリルアミドに対して3質量%)の4,4’−ジメトキシベンゾフェノンを添加し、均一に分散させて導電性高分子溶液を得たこと以外は実施例1と同様にして導電性高分子溶液を得た。
そして、実施例1と同様にして導電性塗膜を形成して、導電性、熱安定性、透明性を評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
(比較例1)
複合体溶液1を、#12のバーコートを用いて、表面を親水化処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布した。その後、100℃のオーブン中で乾燥させて導電性塗膜を形成した。
そして、実施例1と同様にして導電性塗膜を形成して、導電性、熱安定性、透明性を評価した。その結果を表1に示す。
【0048】
(比較例2)
複合体溶液2を、#12のバーコートを用いて、表面を親水化処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布した。その後、100℃のオーブン中で乾燥させて導電性塗膜を形成した。
そして、実施例1と同様にして導電性塗膜を形成して、導電性、熱安定性、透明性を評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
(メタ)アクリルアミド化合物を含有する実施例1〜3の導電性高分子溶液を塗布し、(メタ)アクリルアミド化合物を重合して形成した導電性塗膜は、表面抵抗値が低く、導電性が高かった。また、高温表面抵抗維持率及び高湿表面抵抗維持率が高く、熱安定性に優れていた。さらに、全光線透過率が高く、ヘイズが低く、透明性に優れ、磨耗表面抵抗維持率が高く、膜強度も高かった。
これに対し、(メタ)アクリルアミド化合物を含有しない比較例1,2の導電性高分子溶液を塗布して形成した導電性塗膜は、表面抵抗値が高く、導電性が低かった。また、高温表面抵抗維持率及び高湿表面抵抗維持率が低く、熱安定性に劣っていた。さらに、全光線透過率が低く、ヘイズが高く、透明性に劣っており、磨耗表面抵抗維持率が高く、膜強度も低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子溶液が塗布されて形成された導電性塗膜であって、
表面抵抗が5000Ω以下であり、
前記導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、アクリルアミド基及び/又はメタクリルアミド基を1つ以上有する(メタ)アクリルアミド化合物と、溶媒とを含有し、前記ポリアニオンは、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸のいずれかであり、
前記(メタ)アクリルアミド化合物の含有量は、前記ポリアニオンに対して2〜50モル当量であることを特徴とする導電性塗膜。

【公開番号】特開2012−97274(P2012−97274A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−169(P2012−169)
【出願日】平成24年1月4日(2012.1.4)
【分割の表示】特願2006−35497(P2006−35497)の分割
【原出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】