説明

導電性微粒子、異方性導電接着剤組成物、および異方性導電成形体

【課題】異方性導電接着剤やこれを用いた異方性導電成形体の耐湿性をより一層させうる導電性微粒子を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る導電性微粒子は、アミノ樹脂架橋粒子からなる核材と、当該核材の表面を被覆する導電性金属層とからなる。そして、上記アミノ樹脂架橋粒子が、フェノール化合物由来のフェノール縮合単位を含む点に特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性微粒子に関する。より詳細には、本発明は、導電性微粒子の核材を構成するアミノ樹脂架橋粒子に、フェノール化合物由来のフェノール縮合単位を含ませてなる導電性微粒子に関する。また本発明は、このような導電性微粒子を含む異方性導電接着剤組成物に関する。さらに本発明は、このような異方性導電接着剤組成物から得られる異方性導電成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのガラス基板やプリント配線基板に実装部品を電気的に接続する場合などに、異方性導電フィルム(ACF)や異方性導電ペースト(ACP)などの異方性導電材料が使用されている。かかる異方性導電材料は、一般に導電性微粒子をバインダー樹脂中で分散させてフィルム状やペースト状にすることにより得られる。これらの材料の使用時には、これらの材料を電極間に配置させ、該電極間に圧力または熱および圧力を作用させることで、対向する電極間に導電性を生じさせ、かつ、隣接する電極間を絶縁する。
【0003】
このような異方性導電材料を構成する導電性微粒子としては、金属材料等の導電性材料からなる微粒子のほかに、高分子材料からなる核材の表面を導電性金属層で被覆したものを用いることが提案されている(特許文献1)。特許文献1では、導電性微粒子の核材を構成する高分子重合体(樹脂)として、ポリスチレンやエポキシ樹脂のほか、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴムなどが例示されている。また、特許文献1等に記載の技術をさらに改良するものとして、メラミンやベンゾグアナミンといったアミノ化合物をホルムアルデヒドと縮合・硬化させてなるアミノ樹脂からなる樹脂粒子(アミノ樹脂架橋粒子)を導電性微粒子の核材として採用する技術も提案されている(例えば、特許文献2〜4)。アミノ樹脂架橋粒子は十分な架橋密度を有していることから、導電性微粒子としての硬度や弾性に優れ、良好な接続抵抗値を示すという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−259766号公報
【特許文献2】特開平8−311655号公報
【特許文献3】特開2003−308728号公報
【特許文献4】特開2000−243132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討により、アミノ樹脂架橋粒子を導電性微粒子の核材として採用した場合の欠点が浮き彫りとなった。すなわち、かような形態によると、高湿度条件下での接続信頼性が低下するという問題があることが、本発明者らの検討によって判明したのである。かような問題が発生する原因は定かではないが、アミノ樹脂架橋粒子の骨格の有する耐酸性が比較的低く、導電性金属層を被覆する無電解めっき工程において酸性条件下で処理を行なう際に樹脂表面が分解して吸湿性の高い状態でめっきされ、その結果めっき層のピンホールから水分が浸透して導電性微粒子を劣化させ、導通性を低下させているという原因が考えられる。
【0006】
本発明のような導電性微粒子は、典型的には異方性導電接着剤の構成材料として用いられ、最終的には、半導体素子やプリント回路基板;液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネルといった各種ディスプレイ;などの電子・電機製品に用いられる。そして、これらの電子・電機製品の製造時の環境や、これらの製品の使用される環境(季節・地域)によっては、湿度の高い条件に曝されることも十分に想定される。
【0007】
そこで本発明は、異方性導電接着剤やこれを用いた異方性導電成形体の耐湿性をより一層させうる導電性微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述した課題に鑑みさらに検討を行なった。その結果、導電性微粒子の核材を構成するアミノ樹脂架橋粒子に、フェノール化合物由来のフェノール縮合単位を含ませることで、当該課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一形態に係る導電性微粒子は、アミノ樹脂架橋粒子からなる核材と、当該核材の表面を被覆する導電性金属層とからなる。そして、上記アミノ樹脂架橋粒子が、フェノール化合物由来のフェノール縮合単位を含む点に特徴を有する。この際、当該形態の好ましい実施形態として、アミノ樹脂架橋粒子におけるフェノール縮合単位の含有量が、当該フェノール縮合単位を構成するフェノール化合物の量と当該アミノ樹脂架橋粒子を構成するアミノ化合物との合計100質量%に対して1〜60質量%であると好ましいことも判明した。
【0010】
なお、アミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5〜30μmである。そして、アミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径の変動係数(CV)は、好ましくは10%以下である。
【0011】
また、本発明の他の形態によれば、上記導電性微粒子がバインダー樹脂中に分散してなる、異方性導電接着剤組成物が提供される。
【0012】
さらに、本発明のさらに他の形態によれば、上記異方性導電接着剤組成物から得られる、異方性導電成形体が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性微粒子を用いて構成される異方性導電接着剤や異方性導電成形体は、耐湿性に優れる。したがって、これら接着剤や成形体は高湿環境に(しかも長期間)曝された場合であっても、抵抗値の上昇が最小限に抑制されるという優れた効果を発揮しうる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一形態は、アミノ樹脂架橋粒子からなる核材と前記核材の表面を被覆する導電性金属層とからなる導電性微粒子であって、前記アミノ樹脂架橋粒子が、フェノール化合物由来のフェノール縮合単位を含む、導電性微粒子である。
【0015】
なお、フェノール縮合単位とは、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合単位から構成されるものである。
【0016】
≪A.導電性微粒子≫
まず、「導電性微粒子」について説明する。導電性微粒子は、核材と、核材の表面を被覆する導電性金属層とからなる。
【0017】
[核材(アミノ樹脂架橋粒子)]
本形態において、核材は、アミノ樹脂架橋粒子からなる。以下、核材を構成するアミノ樹脂架橋粒子について、詳細に説明する。
【0018】
アミノ樹脂架橋粒子は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合単位を含み、架橋(網目状)構造を有する粒子である。そして、本形態において、アミノ樹脂架橋粒子は、フェノール化合物由来のフェノール縮合単位を含む。
【0019】
ここで、アミノ樹脂架橋粒子がフェノール縮合単位を含む形態としては、以下のようにいくつかの形態が存在する。
【0020】
(1)アミノ樹脂架橋粒子がアミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物からなる均一組成を有する形態;
(2)アミノ樹脂架橋粒子がコアシェル構造(コアの外周に当該コアと異なる組成のシェル層が配置されてなる構造)を有し、
(2−1)コアがアミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物からなり、シェル層がアミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物からなる形態;
(2−2)コアがアミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物からなり、シェル層がアミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物からなる形態;
(2−3)コアおよびシェル層のそれぞれが、組成の異なるアミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物からなる形態;
(2−4)コアがアミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物からなり、シェル層がフェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物からなる形態
(3)上述した(1)および(2−1)〜(2−3)のそれぞれの形態において、最表層にフェノール化合物−ホルムアルデヒド縮合物(フェノール樹脂)からなる層(フェノール樹脂層)が配置されてなる形態;
(4)コアおよびシェル層のそれぞれが組成の異なるアミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物からなるコアシェル構造を有するアミノ樹脂架橋粒子の最表層に、フェノール化合物−ホルムアルデヒド縮合物(フェノール樹脂)からなる層が配置されてなる形態。
【0021】
なお、本発明者らの検討によれば、アミノ樹脂架橋粒子を構成するフェノール化合物の好ましい量が判明している。すなわち、本形態で用いられるアミノ樹脂架橋粒子において、これを構成するアミノ化合物とフェノール化合物との合計100質量%に対するフェノール化合物の量の下限値は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。フェノール化合物の量がこれらの下限値以上の値であると、フェノール縮合単位を含ませることによる耐湿性の向上という本発明の作用効果が十分に発揮されうるという利点がある。一方、同様の基準でフェノール化合物の量の上限値は、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。フェノール化合物の量がこれらの上限値以下の値であると、アミノ樹脂架橋粒子(またはコアとしてのアミノ樹脂粒子)を製造する際の粒子間での凝集の発生が防止され、粒度分布等の物性に優れるアミノ樹脂架橋粒子が製造されうるという利点がある。ただし、上記の数値範囲は本発明における必須要件ではなく、これらの範囲を外れる量のフェノール化合物が用いられる場合であっても、本発明の技術的範囲に包含されうる。
【0022】
アミノ樹脂架橋粒子を構成するアミノ化合物としては、特に限定はされないが、例えば、メラミンまたは下記一般式(1):
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、Rは、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基を表すが、それらの少なくとも1つが置換基を有してもよいアルキル基である。Rはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるメラミン化合物;ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym.−トリアジン)、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、アセトグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、スピログアナミンなどのグアナミン化合物;下記一般式(2):
【0025】
【化2】

【0026】
(式中、Rは、直鎖構造または側鎖を有する構造である炭素数1〜2の炭化水素基を表す。)
で表されるジアミノトリアジン化合物や、下記一般式(3):
【0027】
【化3】

【0028】
(式中、Rは、直鎖構造、側鎖を有する構造、芳香環を有する構造および脂環を有する構造の何れかである炭素数1〜8の炭化水素基を表す。なお、芳香環を有する構造および脂環を有する構造は、側鎖を有する構造および/または置換基を有する構造であってもよい。)
で表されるジアミノトリアジン化合物などが挙げられる。これらアミノ化合物は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0029】
ここで、一般式(1)で表されるメラミン化合物において、非置換のR(つまり、アルキル基)の炭素数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜12であり、さらに好ましくは1〜8であり、特に好ましくは1〜4であり、最も好ましくは1〜2である。また、Rが置換基を有するアルキル基である場合、アルキル基を置換する置換基としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基、エポキシ基が挙げられる。
【0030】
上述したアミノ化合物のなかでも、トリアジン環を有するアミノ化合物がより好ましい。なお、原料として用いられるアミノ化合物の全量に占めるトリアジン環を有するアミノ化合物の量(複数の場合には合計量)は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、いっそう好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。かような形態によれば、耐熱性、耐溶剤性の優れたアミノ樹脂架橋粒子が得られるといった効果がある。
【0031】
また、アミノ樹脂架橋粒子を構成する「フェノール化合物」とは、フェノール性水酸基を有する化合物を意味する。フェノール化合物の具体的な形態について特に制限はないが、例えば、フェノール、o−エチルフェノール、p−エチルフェノール、混合クレゾール、p−n−プロピルフェノール、o−イソプロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、混合イソプロピルフェノール、o−sec−ブチルフェノール、m−tert−ブチルフェノ−ル、p−tert−ブチルフェノール、ペンチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、2,4−ジ−s−ブチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,6−ジ−s−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、3−メチル−5−イソプロピルフェノール、3−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、3−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−エチルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール等のフェノール性水酸基を有する化合物;カテコール、レゾルシン、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF等の分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物が挙げられる。特に好ましくはフェノールまたはo−フェニルフェノールである。これらのフェノール化合物は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
アミノ樹脂架橋粒子を構成するアミノ化合物およびフェノール化合物の合計量とホルムアルデヒドとのモル比(アミノ化合物およびフェノール化合物(合計モル)/ホルムアルデヒド(モル))は、1/3.5〜1/1.5であることが好ましく、1/3.5〜1/1.8であることがより好ましく、1/3.2〜1/2であることがさらにより好ましい。
【0033】
核材を構成するアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5〜30μmである。平均粒子径の上限値について、より好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは3.4μm以下であり、特に好ましくは3.0μm以下である。一方、平均粒子径の下限値について、より好ましくは1.0μm以上であり、さらに好ましくは1.5μm以上である。平均粒子径が0.5μmより小さいと、無電解めっきなどで導電性金属層を被覆する際に、粒子が凝集しやすくなり、均一な導電性金属層を形成できない虞がある。一方、平均粒子径が30μmより大きいと、隣接する電極間の間隔が狭い場合には適用しにくいなど適用用途が限られて、工業上の利用分野が少なくなる傾向がある。なお、アミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径の値は、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0034】
また、核材を構成するアミノ樹脂架橋粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは4%以下、特に好ましくは3%以下である。この変動係数(CV値)が10%以下であると、導電性微粒子の粒子径が均一なものが得られるため、多数の電極間を均一に導通させる点で有利になるという利点がある。なお、アミノ樹脂架橋粒子の粒子径の変動係数(CV値)の値は、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0035】
また、核材を構成するアミノ樹脂架橋粒子の水分含有量は、好ましくは0.1〜3質量%である。さらに好ましくは2.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。なお、アミノ樹脂架橋粒子の水分含有量は、解砕後の粉体(アミノ樹脂架橋粒子)1gをカールフィッシャー法にて定量し、得られた水分量の百分率(%)として算出される。
【0036】
核材を構成するアミノ樹脂架橋粒子の飽和吸湿量は、好ましくは10%未満であり、より好ましくは7%以下である。さらに好ましくは6%以下、特に好ましくは5%以下である。また下限値は1%以上であることが好ましい。アミノ樹脂架橋粒子の飽和吸湿量がこれらの範囲内の値であると、無電解メッキ処理を行う際のメッキ浴への核材の分散が良好となって均一な導電性金属層を被覆することができ、また得られる導電性微粒子を用いて構成される異方性導電接着剤や異方性導電成形体が耐湿性に優れたものになるという利点がある。なお、アミノ樹脂架橋粒子の飽和吸湿量は、解砕後の粉体(アミノ樹脂架橋粒子)を温度30℃、湿度90%RHの雰囲気下で1日放置した後、上述した水分含有量と同様にして水分測定を行い、得られた水分量の百分率(%)として算出される。
【0037】
核材を構成するアミノ樹脂架橋粒子がコアシェル構造を有する場合(つまり、上述した(2−1)〜(2−4)の形態(およびこれらを受けた(3)の形態)並びに(4)の形態)におけるコアシェル構造の好ましい実施形態は、以下のとおりである。
【0038】
アミノ樹脂架橋粒子の有するコアシェル構造におけるシェル層の厚み(平均値)tは、0.01μm以上であることが好ましい。シェル層がフェノール縮合単位を有する場合は、上記厚み(平均値)tが0.01μm以上であると、吸湿性の抑制された粒子となりやすい。アミノ樹脂架橋粒子のシェル層の厚み(平均値)tとしては、吸湿性が特に低くなる観点から、好ましくは0.02μm以上、より好ましくは0.03μm以上、特に好ましくは0.04μm以上である。一方、吸湿性抑制の観点からは厚みは大きいほど好ましいが、分散性に優れる観点からは本形態に係るアミノ樹脂架橋粒子のシェル層の厚み(平均値)tは、好ましくは5μm以下である。なお、アミノ樹脂架橋粒子のシェル層の厚み(平均値)tは、シェル層形成後のアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径D(μm)、コアの平均粒子径d(μm)より、式:t=(D−d)/2により算出されうる。
【0039】
また、アミノ樹脂架橋粒子の有するコアシェル構造における、コアの平均粒子径d(μm)に対するシェル層の厚み(平均値)t(μm)の比(t(μm)/d(μm);「シェル層比」ともいう。)は、好ましくは0.1〜1.5の範囲である。シェル層比が0.1〜1.5の範囲内であると、吸湿性が低くかつ分散性に優れる。シェル層比の値としては、吸湿性が低いという観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.3以上である。
【0040】
さらに、核材を構成するアミノ樹脂架橋粒子が最表層にフェノール樹脂層を有する場合(つまり、上述した(2−4)、(3)および(4)の形態)において、フェノール樹脂層の厚みは、好ましくは0.01〜1μmであり、より好ましくは0.02〜0.1μmである。
【0041】
以上、核材を構成するアミノ樹脂架橋粒子の好ましい形態について説明したが、上述した形態のみには制限されず、その他の形態も適宜採用されうる。
【0042】
[核材(アミノ樹脂架橋粒子)の製造方法]
核材を構成するアミノ樹脂架橋粒子を製造する方法についても、特に制限はない。一例としては、例えば、アミノ化合物(および必要に応じてフェノール化合物)をホルムアルデヒドによりメチロール化して初期縮合物を得た後、この初期縮合物を縮合硬化させるという手法が採用されうる。この手法を用いたアミノ樹脂架橋粒子の製造は通常、水系媒体中において行なわれるが、より詳細には以下の2つの手法が用いられうる(例えば、特開2004−99878号公報を参照)。
【0043】
第1の手法では、まず、アミノ化合物(および必要に応じてフェノール化合物)とホルムアルデヒドとを縮合反応させて、初期縮合物(アミノ樹脂前駆体)を得る。次いで、得られた初期縮合物(アミノ樹脂前駆体)を水系媒体中で界面活性剤と混合し、得られた混合液に触媒を添加して、アミノ樹脂前駆体を硬化および粒子化させて析出させる。なお、この手法は、アミノ樹脂前駆体の組成が比較的親水性である場合に適した手法である。
【0044】
第2の手法においても、まず、アミノ化合物(および必要に応じてフェノール化合物)とホルムアルデヒドとを縮合反応させて、初期縮合物(アミノ樹脂前駆体)を得るが、その後の工程が第1の手法とは異なる。すなわち、第2の手法では、得られた初期縮合物(アミノ樹脂前駆体)を水系媒体中で乳化し、得られた乳濁液に触媒を添加して、アミノ樹脂前駆体を硬化および粒子化させる。なお、この手法は、アミノ樹脂前駆体の組成が比較的疎水性である場合に適した手法である。
【0045】
上述した2つの手法のいずれかを経て得られるアミノ樹脂架橋粒子は、均一組成を有する。したがって、上記(1)の形態では、この段階で得られたアミノ樹脂架橋粒子がそのまま核材を構成する粒子として用いられうる。また、(1)+(3)の形態では、後述するように表層へのフェノール樹脂層の形成を経て、核材を構成する粒子としてのアミノ樹脂架橋粒子が得られる。
【0046】
[コアシェル構造(シェル層)の形成]
一方、上記(2)の形態(および(2)+(3)の形態)並びに(4)の形態では、上述した2つの手法のいずれかを経て得られるアミノ樹脂架橋粒子(均一組成を有する)は、コアシェル構造のコアを構成することになる。以下、これらの形態において、上記で得られたコアの外周にシェル層を形成する工程(シェル層形成工程)について、説明する。
【0047】
[アミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物またはアミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物からなるシェル層の形成]
シェル層形成工程は、上記で得られたアミノ樹脂架橋粒子を分散させた水系媒体を、加熱・保持しながら、アミノ化合物(場合によっては、さらにフェノール化合物)をホルムアルデヒドとともに添加混合する。これにより、アミノ化合物(場合によっては、さらにフェノール化合物)とホルムアルデヒドとを縮合・硬化させ、アミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物(または、アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物)をコア(アミノ樹脂架橋粒子)の表面に成長させて、当該(共)縮合物からなるシェル層を形成させる工程である。
【0048】
本工程の好ましい実施形態では、上記で得られたコア(アミノ樹脂架橋粒子)を分散させた水系媒体中に、アミノ化合物(場合によっては、さらにフェノール化合物)、ホルムアルデヒド(ホルマリン)、硬化触媒、界面活性剤等を適時、適量添加する。ただし、かような形態のみには限定されず、所望のシェル層を形成しうるものであれば、そうした製造方法も十分に適用可能である。
【0049】
本工程で用いられる水系媒体としては、特に制限されるものではなく、水、アルコール類等が挙げられ、好ましくは水である。
【0050】
水系媒体中に分散させるコアの濃度(つまり、固形分濃度)は、特に制限されないが、3〜25質量%の範囲内となるように調整するのが好ましい。コアの濃度を3質量%以上とすることで、得られるアミノ樹脂架橋粒子の生産性を向上することができる点で優れている。一方、コアの濃度を25質量%以下とすることで、得られるアミノ樹脂架橋粒子の肥大化、粒子同士の凝集を効果的に防止でき、粒度分布の狭いアミノ樹脂架橋粒子とすることができる。
【0051】
なお、コアを製造する段階で水系媒体を用い、当該コアが水系媒体中に分散した形態で得られる場合には、水系媒体中のアミノ樹脂粒子の濃度(固形分濃度)を上記範囲内になるように、必要があれば、水系媒体をさらに追加すればよい。コアを水系媒体中に混合、分散させるには、一般的な撹拌手段を用いて混合、分散させればよく、例えば、ディスクタービン、ファンタービン、ファウドラー型、プロペラ型および多段翼などの撹拌翼を使用して撹拌する方法等が挙げられる。これらの撹拌方法は、後述する硬化(架橋)反応の際の反応液の撹拌にそのまま適用することもできる。
【0052】
本工程において、シェル層を形成するのに添加混合されるアミノ化合物としては、上述したアミノ化合物が同様に用いられうるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、得られるアミノ樹脂架橋粒子がコアシェル構造を有する上記(2)の形態(および(2)+(3)の形態)並びに(4)の形態のうち、(2−1)および(2−3)の形態(並びに、これらを受けた(3)の形態)では、シェル層がフェノール縮合単位を含む。かような形態においてシェル層を形成するのに添加混合されるフェノール化合物の具体的な形態についても、上述した形態が同様に採用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0053】
アミノ化合物の使用量(シェル層がフェノール縮合単位を含む場合には、アミノ化合物とフェノール化合物との合計使用量)は、コア100質量部に対して、10〜1000質量部の範囲が好ましく、より好ましくは25〜700質量部、さらに好ましくは50〜500質量部の範囲である。10質量部以上では、吸湿性を抑制する効果に優れるシェル層を形成しやすく、1000質量部以下であれば、粒度分布の特にシャープな粒子が得られやすい。
【0054】
なお、シェル層形成工程においてアミノ化合物と併せてフェノール化合物を用いる場合には、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子におけるフェノール化合物の含有量が上述した好ましい形態(数値範囲)を満たすこととなるように、フェノール化合物の添加量を設計するとよい。
【0055】
本工程にて必要なホルムアルデヒドの含有量は、ホルムアルデヒド/アミノ化合物のモル比で、1.5〜6、より好ましくは2〜4の範囲である。かかる範囲内とすることで、モノマー架橋反応の促進ができるほか、粒度分布の狭いアミノ樹脂架橋粒子を得ることができる。なお、シェル層が「アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド縮合物」の組成を有する場合には、「ホルムアルデヒド/アミノ化合物のモル比」を「ホルムアルデヒド/(アミノ化合物およびフェノール化合物の合計量)のモル比」と置き換えた上で、上記と同様の好ましい形態(数値範囲)が採用されうる。
【0056】
なお、場合によっては、コアを製造する段階で水系媒体中にホルムアルデヒドを過剰に添加しておくことで、得られるコアを分散させた水系媒体中に、予めホルムアルデヒドを含有させることができる。
【0057】
シェル層形成工程において用いられる界面活性剤、触媒(硬化触媒)等の具体的な形態についても、上述した形態が同様に採用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0058】
シェル層形成工程において、水系媒体に添加されるアミノ化合物(およびフェノール化合物)、硬化触媒、ホルムアルデヒド、界面活性剤の好適な添加混合形態につき、以下に例示する。ただし、本発明では、縮合・硬化反応により所望のシェル層を形成しうるものであればよく、以下に例示する添加混合形態に何ら制限されるものではない。
【0059】
具体的には、ホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒は、(i)アミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液を添加するに先立ち、予め、コアが分散した水系媒体に共存させておいてもよいし、(ii)アミノ化合物(およびフェノール化合物)を添加する際に添加してもよい。添加する場合は、(ii−1)アミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液に共存させた混合状態で添加してもよいし、(ii−2)アミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液とは異なる経路で添加してもよい。
【0060】
好ましい形態は、ホルムアルデヒド、硬化触媒、界面活性剤いずれも、上記(ii)の形態が好ましく、上記(ii−1)の形態が特に好ましい。これは、所定濃度のアミノ化合物(およびフェノール化合物)、ホルムアルデヒド、硬化触媒、界面活性剤を水系媒体中に素早く溶解または分散させることができ、縮合反応、硬化反応のコントロールが容易であるためである。
【0061】
上記(i)(ii)いずれの形態であっても、コアが分散した水系媒体へのアミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液の添加は、連続して行なってもよく、断続的に所定量を分割して添加してもよい。好ましくは、連続的に滴下する方が好ましい。連続的の方が系内で均一になり、分布がシャープになりやすいためである。なお、分割して添加する場合には、添加液を2等分〜10等分し、それぞれの画分を10〜60分毎にそれぞれ一括添加することが好ましい。
【0062】
上記(ii−2)の場合、アミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液とは異なる経路で添加されるホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒の添加も、連続して行なってもよく、断続的に所定量を分割して添加してもよい。好ましくは、ホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒を含む添加液を連続的に滴下する方が好ましい。この際、ホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒は、それぞれ別々の添加液を作製して添加してもよいし、これらの2以上を含む添加液を作製して添加してもよい。特に好ましくは2以上含む添加液の形態である。
【0063】
上記「同様に添加する」場合の硬化触媒と前記アミノ化合物(およびフェノール化合物)の添加は、上記アミノ化合物(およびフェノール化合物)の速度と同じ範囲内で添加するのが好適である。
【0064】
なお、上記アミノ化合物(およびフェノール化合物)、ホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒は、いずれの添加混合形態であっても、そのまま添加してもよいが、好ましくは上記したように予めアミノ化合物(およびフェノール化合物)やホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒を含む添加液を作製しておき、かかるアミノ化合物(およびフェノール化合物)、および/または、ホルムアルデヒド、界面活性剤および硬化触媒の少なくとも1種、好ましくは全部を含む添加液を用いることが好ましい。より好ましくは、添加後に均一に拡散されやすいことから、かかるアミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液として、該アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を水系媒体に分散または溶解した液状添加液を用いるのが好ましい。また、該添加液において、アミノ化合物(およびフェノール化合物)は、界面活性剤で微分散させてなるのが好ましい。
【0065】
なお、アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間(添加工程の時間、断続の場合は添加開始から添加が全て終了するまでの時間)t(hr)は、以下の関係を満足することが好ましい。
【0066】
【数1】

【0067】
式中、Wxは、添加するアミノ化合物(およびフェノール化合物)の質量(kg)であり、Wyは、コアの質量(kg)である。
【0068】
アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間tを上記範囲内とすることで、水系媒体(反応液)中に分散されてなるアミノ樹脂架橋粒子(コア)表面に所望のシェル層を選択的(優先的)に成長させることができ、個々の粒子間で成長厚みにバラツキが少なく、所望の厚さ(平均値)を有するシェル層を形成させることができる。さらに、アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間tを上記範囲内とすることで、アミノ樹脂架橋粒子(コア)の持つ粒度分布のシャープな特性を損なうことなく、粒子径の変動係数CV値を小さい値とすることができる。アミノ化合物(およびフェノール化合物)の添加によって、コア表面だけでなく、水系媒体(反応液)中でも、アミノ化合物(およびフェノール化合物)とホルムアルデヒドとの縮合反応が進行して新たにアミノ樹脂前駆体からアミノ樹脂架橋粒子が形成される可能性がある。その一方で多くのアミノ化合物(およびフェノール化合物)はその近傍に存在するコアの表面で成長するシェル層に吸着・結合して取り込まれていくものであるが、とりわけアミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間tを上記範囲内にコントロールすることで、新たなアミノ樹脂粒子の生成を抑えることができるのである。また、tを上記範囲内とすることで、残留未反応モノマーを抑制し得る点でも有利である。一方、前記アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間tが(Wx/Wy)×0.5(hr)未満の場合には、前述した新たなアミノ樹脂粒子の生成や粒子の2次凝集を起こす虞がある。(Wx/Wy)×5.0t(hr)を超える場合には生産効率が悪くなる虞がある。なお、Wx/Wyの具体的な値について特に制限はなく、得られるシェル層の厚みや、アミノ樹脂架橋粒子のシェル層比が所望の値となるように適宜調節すればよい。一例として、Wx/Wyの値は、好ましくは0.1〜10であり、より好ましくは0.25〜7であり、さらに好ましくは0.5〜5である。また、本工程では、上記反応液を常に適当な温度域に保持し、適当な撹拌力にて撹拌・混合しながら縮合・硬化反応を進めていくのがよい。
【0069】
本工程では、シェル層形成工程は、上記で得られたアミノ樹脂架橋粒子を分散させた水系媒体を、加熱・保持しながら、アミノ化合物(場合によっては、さらにフェノール化合物)をホルムアルデヒドとともに添加混合する。これにより、アミノ化合物(およびフェノール化合物)とホルムアルデヒドを縮合反応、硬化反応させて、コアの表面にアミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物(フェノール化合物が用いられる場合には、アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物)を成長させて、当該縮合物からなるシェル層を形成せしめ、コアシェル構造を形成する。
【0070】
縮合・硬化反応の際の反応条件について特に制限はないが、一例として、反応(硬化)温度は、好ましくは50〜98℃であり、より好ましくは60〜95℃であり、さらに好ましくは70〜90℃である。また、反応(硬化)時間は、好ましくは1〜12時間であり、好ましくは1〜10時間であり、さらに好ましくは2〜5時間である。硬化反応の反応温度が50℃以上であれば、硬化が十分に進行しうる。一方、硬化反応の反応温度が98℃以下であれば、強固な加圧反応器などを必要とせず、経済的である。なお、硬化反応の終点は、サンプリングまたは目視によって判断すればよい。
【0071】
上述したように、縮合・硬化反応の際の反応系の圧力は、特に制限されるものではなく、大気圧下でも、減圧下でも、加圧下でもよい。安全性や経済性(生産コスト)の観点からは大気圧下で行うのが好ましい。
【0072】
また、縮合・硬化反応の際の反応液は、撹拌下に保持するのが好ましい。かかる撹拌方法としては、通常公知の撹拌装置などを用いて行なうことが好ましい。
【0073】
縮合・硬化反応を行なう際には、上述したのと同様の目的で、無機粒子を添加してもよい。添加されうる無機粒子の具体的な形態については上述したとおりである。
【0074】
シェル層形成工程においては、上述した縮合・硬化反応の終了後に、上述したのと同様の中和工程や粉砕工程、分級工程などを実施してもよい。これらの具体的な形態についても、上述したとおりである。その他、架橋度を高めるための熱処理工程をさらに行なってもよい。
【0075】
[フェノール樹脂層の形成]
一方、(1)+(3)の形態、(2−4)の形態、(2)+(3)の形態、および(4)の形態では、上記で得られたアミノ樹脂架橋粒子(均一組成またはコアシェル構造を有する)の表層にフェノール樹脂層を形成することで、核材を構成するアミノ樹脂架橋粒子が得られる。
【0076】
これらの形態におけるフェノール樹脂層の形成は、上述したシェル層形成工程と同様にして行なうことができ、この際、層形成のためにホルムアルデヒドと縮合させるための化合物として、アミノ化合物(およびフェノール化合物)に代えてフェノール化合物を用いるように変更すればよい。
【0077】
[導電性金属層]
導電性金属層は、金属から構成される導電性の層である。導電性金属層を構成する金属としては、任意の適切な金属が採用され、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム、ニッケル−リン、ニッケル−ホウ素などの金属や金属化合物、および、これらの合金などが挙げられる。これらの中でも、導電性に優れ、工業的に安価である点で、金、銀、銅、ニッケル、パラジウムが好ましい。
【0078】
導電性金属層の厚みは、好ましくは10〜500nm、より好ましくは20〜400nm、さらに好ましくは50〜300nmである。導電性金属層の厚みが10nm未満であると、絶縁化導電性粒子としたときに安定した電気的接続を発現しにくくなる虞がある。導電性金属層の厚みが500nmを超えると、導電性粒子としたときの表面の硬度が高くなりすぎ、回復率等の機械的特性が低下する虞がある。
【0079】
導電性金属層は、その表面に、実質的な割れや、導電性金属層が形成されていない面が存在しないものであることが好ましい。ここで、「実質的な割れや、導電性金属層が形成されていない面」とは、電子顕微鏡(倍率2000倍)を用いて任意の10000個の導電性粒子の表面を観察したときに、導電性金属層の割れまたは基材粒子表面の露出が認められる割合が全体の5%以下であることを意味する。
【0080】
核材の表面に導電性金属層を被覆する方法は、任意の適切な方法が採用され、特に制限はない。例えば、無電解めっき法、置換めっき法などによるめっき方法;金属微粉を単独またはバインダーに混ぜ合わせて得られるペーストを基材粒子にコーティングする方法;真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリングなどの物理的蒸着方法;などが挙げられる。これらの中でも、大掛かりな装置を必要とせず、容易に導電性金属層を形成できる点で、無電解めっき法が好ましい。
【0081】
通常、無電解めっき法は、(1)親水化工程(エッチング)、(2)触媒化工程、(3)無電解めっき工程、の3工程からなる。親水化工程(エッチング)は、基材粒子の種類に応じて、省略することができる。
【0082】
親水化工程(エッチング工程)では、基材粒子をクロム酸、無水クロム酸−硫酸混合液、過マンガン酸などの酸化剤;塩酸、硫酸、フッ酸、硝酸などの強酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの強アルカリ溶液等を用いて基材粒子の表面に微小な凹凸を形成させ、その凹凸のアンカー効果によって、後述する無電解めっき後の基材粒子と導電性金属層の密着性の向上を図る目的で行なわれる。
【0083】
触媒化工程では、基材粒子の表面に、次工程で行う無電解めっきの基点となる触媒層を形成する。触媒層を形成する方法は特に限定されず、無電解めっき用として市販されている触媒化試薬を用いて行なえばよい。例えば、塩化パラジウムと塩化第一スズとを含む溶液を触媒化試薬とし、これに基材粒子を浸漬することにより基材粒子表面に触媒金属を吸着させ、その後、硫酸や塩酸などの酸や水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液で前記パラジウムイオンを還元することにより、基材粒子表面にパラジウムを析出させる方法(キャタリスト−アクセレレーション法)や、基材粒子を塩化第一スズと接触させることによりスズイオンを基材粒子表面に吸着させた後、塩化パラジウム溶液に浸漬させることにより、基材粒子表面にパラジウムを析出させる方法(センシタイジング−アクチベーション法)等が挙げられる。
【0084】
無電解めっき工程においては、好ましくは、核材を水性媒体に十分に分散させ、水性スラリーを調製する。ここで、核材は水性媒体に十分に分散させておくことが好ましい。核材が凝集した状態で導電性金属層の形成を行なうと、未処理面が露出する虞がある。水性媒体への核材の分散には、任意の適切な分散方法が採用されうる。例えば、通常撹拌、高速撹拌、コロイドミルやホモジナイザーのようなせん断分散装置を用いた分散、などが挙げられる。分散の際に、超音波照射を併用してもよい。また、分散の際に、界面活性剤などの分散剤を用いてもよい。
【0085】
次いで、金属塩、還元剤、錯化剤などを含んだ無電解めっき浴に、上記で分散処理した核材スラリーを添加し、無電解めっきを行なう。
【0086】
金属塩としては、例えば、導電性金属層を構成する金属として上述した金属の塩が挙げられる。例えば、ニッケル塩を用いる場合、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられる。無電解めっき浴中における上記金属塩の濃度は、所望の厚みの導電性金属層が形成されるように、核材のサイズ(表面積)に応じて適宜設定すればよい。
【0087】
還元剤としては、次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ヒドラジンなどが挙げられる。
【0088】
錯化剤としては、例えば、クエン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、またはそれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩などのカルボン酸塩、グリシンなどのアミノ酸、エチレンジアミン、アルキルアミンなどのアミン酸、アンモニウム化合物、EDTA、ピロリン酸(塩)などが挙げられる。上記錯化剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
無電解めっき法における無電解めっき浴のpHは、好ましくは4〜14である。
【0090】
無電解めっき法においては、核材のスラリーを添加すると、速やかに反応が始まり、水素ガスの発生を伴う。無電解めっき法における、無電解めっき工程の終了は、その水素ガスの発生が完全に認められなくなった時点をもって判定することができる。反応終了後、反応系内から導電性微粒子を取り出し、必要に応じて洗浄、乾燥を行なう。
【0091】
無電解めっき工程は、複数回繰り返してもよい。このようにすることで、核材に複層の導電性金属層を被覆することができる。例えば、核材にニッケルめっきを施してニッケル被覆粒子を得た後に、無電解金めっき浴に該ニッケル被覆粒子を投入して金めっきを施すことにより、最外層に金の被覆層を有する導電性微粒子が得られる。
【0092】
≪B.絶縁被覆導電性微粒子≫
上記導電性微粒子の表面に絶縁層が存在してなる絶縁被覆導電性微粒子である形態も、本発明の導電性微粒子における好ましい一形態である。
【0093】
導電性微粒子の表面に絶縁層を形成する方法としては、任意の適切な形成方法が採用されうる。例えば、無電解めっき処理後の導電性微粒子および絶縁性材料を有機溶媒または水性媒体などの液体中に分散させた後にスプレードライを行なう方法、有機溶媒または水性媒体などの液体中で導電性微粒子の表面に絶縁性材料を付着させた後に導電性微粒子と絶縁性材料とを化学結合させる方法、導電性微粒子の粉体と絶縁性材料の粉体とが共存する状態で高速撹拌機による撹拌やハイブリダイゼーション処理を行なう方法、などが挙げられる。
【0094】
絶縁層を構成する材料について特に制限はなく、導電性微粒子の表面に層を形成することで、最終的に得られる絶縁被覆導電性微粒子の表面を絶縁性とすることができるのであれば、任意の材料が適宜用いられうる。
【0095】
絶縁層を構成する材料としては、例えば、電気絶縁性の高分子材料であるフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アリル樹脂、フラン樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン、テフロン樹脂等の熱硬化性高分子;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、アイオノマー樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリ(フェニルオキシド)、ポリ(プェニレンスファイド)、ポリスルホン、ポリウレタン、フッ化樹脂(PTFE、PCTFE、ポリフッ化ビニリデン)等の熱可塑性高分子;繊維素系樹脂(エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、硝酸セルロース等)の有機−無機化合物;シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア等の無機酸化物などが挙げられる。ただし、これら以外の材料が用いられてもよいことはもちろんである。
【0096】
絶縁層の具体的な形態について特に制限はなく、略均一な厚みを有する層の形態であってもよいし、上記絶縁性材料が微粒子の形態で多数集合することで、粒子全体を絶縁性とできる程度に層をなしている形態であってもよい。
【0097】
本発明の絶縁被覆導電性微粒子において、絶縁層による導電性微粒子の被覆率は、好ましくは1%以上70%以下、より好ましくは5%以上60%以下、さらに好ましくは10%以上50%以下である。絶縁性材料による導電性粒子の被覆率が前記範囲であることにより、充分な導通性を確保しつつ、隣接する絶縁被覆導電性粒子間を確実に絶縁することができる。なお、上記被覆率は、例えば電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて任意の100個の絶縁被覆導電性粒子の表面を観察したときに、絶縁被覆導電性粒子の正投影面における絶縁性材料の被覆されている部分と絶縁性材料の被覆されていない部分の面積比率を測定することにより評価できる。
【0098】
本発明の絶縁被覆導電性微粒子は、異方性導電材料の構成材料として好適である。異方性導電材料とは、さまざまな形態により相対向する基板同士や電極端子同士を電気的に接続するものである。
【0099】
異方性導電材料を用いて電極同士を電気的に接続する方法としては、任意の適切な方法が採用されうる。例えば、絶縁性のバインダー樹脂中に本発明の絶縁被覆導電性微粒子を分散させて異方性導電接着剤組成物を作製した上で、この異方性導電接着剤組成物により接続する方法;絶縁性のバインダー樹脂と本発明の絶縁被覆導電性微粒子とを別々に使用して接続する方法;等が挙げられる。
【0100】
≪C.異方性導電接着剤組成物≫
本発明の異方性導電接着剤組成物は、本発明の導電性微粒子がバインダー樹脂中に分散してなる。
【0101】
バインダー樹脂としては、任意の適切なバインダー樹脂が採用されうる。例えば、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂;グリシジル基を有するモノマーやオリゴマーおよびイソシアネート等の硬化剤との反応により得られる硬化性樹脂組成物等の光や熱による硬化性樹脂組成物;等が挙げられる。
【0102】
異方性導電接着剤組成物は、任意の適切な用途に適用されうる。例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電接着剤、液晶表示素子(LCD)のシール剤に含有される導電性スペーサ等が挙げられる。
【0103】
異方性導電ペーストは、例えば、異方性導電接着剤組成物をペースト状にすることにより得られる。得られた異方性導電ペーストは、例えば、適当なディスペンサーに入れられ、接続すべき電極上に所望の厚さに塗工され、塗工された異方性導電ペースト上に対向電極を重ね合わせ、加熱するとともに加圧して樹脂を硬化させることにより、電極間の接続に使用される。
【0104】
異方性導電インクは、例えば、異方性導電接着剤組成物に溶媒を加えて印刷に適した粘度にすることにより得られる。得られた異方性導電インクは、例えば、接着すべき電極上にスクリーン印刷し、その溶媒を蒸発させた後、印刷された異方性導電インクの上に対向電極を重ね合わせ、加熱圧縮することにより電極間の接続に使用される。
【0105】
≪D.異方性導電成形体≫
本発明の異方性導電成形体は、本発明の異方性導電接着剤組成物から得られる。本発明の異方性導電成形体の具体例としては、例えば、異方性導電膜、異方性導電フィルム、異方性導電シートなどが挙げられる。
【0106】
本発明の異方性導電成形体は、例えば、本発明の異方性導電接着剤組成物に溶媒を加えて溶液状にし、この溶液を離型フィルム上に流し込んだ後、溶媒を蒸発させて異方性導電接着剤組成物を被膜状にすることにより得られる。
【0107】
本発明の異方性導電成形体は、例えば、接着すべき電極上に配置され、配置された異方性導電成形体上に対向電極を重ね合わせ、加熱圧縮することにより電極間の接続に使用される。
【0108】
異方性導電成形体における膜厚、塗工膜厚および印刷膜厚は、含有する導電性微粒子の平均粒子径と接続すべき電極の仕様とから計算し、接続すべき電極間に導電性微粒子が挟持され、接続すべき電極が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるよう設定することが好ましい。
【0109】
本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電成形体は、高い導電性を示すばかりでなく、高湿条件下に曝された場合であっても、水分によって受ける悪影響が最小限に抑制され、相対向する電極基板間の電気的な接続を十分に確保することができる。
【実施例】
【0110】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0111】
[実施例1]
(核材の合成)
撹拌機、還流冷却管および温度計を備えた4つ口の500ccセパラブルフラスコに、メラミン30質量部、ベンゾグアナミン30質量部、フェノール40質量部、37質量%ホルマリン194質量部、10質量%炭酸ナトリウム0.4質量部を仕込み混合物とした。この混合物を攪拌しながら70℃に昇温して60分重合を行ない、初期縮合物(アミノ樹脂粒子)を得た。
【0112】
別に、撹拌機、還流冷却管および温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ノニオン系界面活性剤(花王製:「エマルゲン430」)5質量部とイオン交換水1355質量部を撹拌しながら、70℃に昇温した均一な界面活性剤水溶液を調製しておいた。
【0113】
上記の70℃の撹拌状態下にある界面活性剤水溶液に、初期縮合物294.4質量部を投入して、次いで2.3質量%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液131質量部を加えた。この状態で70℃にて2時間保持した後、さらに1質量%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液250質量部を加えた後、90℃に昇温して、5時間保持してメラミン−ベンゾグアナミン−フェノール−ホルムアルデヒド縮合樹脂粒子分散液(1)を得た。
【0114】
粒子をろ別により分離し、純水で数回洗浄した後、160℃で4時間加熱処理することで乾燥し、その後解砕して、メラミン−ベンゾグアナミン−フェノール−ホルムアルデヒド縮合樹脂架橋粒子(1)(以下、「核材粒子(1)」ともいう。)を得た。得られた粒子の粒度分布を粒度分布測定機(ベックマンコールター社製、コールターマルチサイザーIII型)で測定したところ、平均粒子径が2.91μm、変動係数(CV値)が2.9%であった。
【0115】
(導電性微粒子の合成)
ビーカーに「ピンクシューマー」(日本カニゼン株式会社製)10質量部とイオン交換水70質量部を入れ、混合して混合液を得た。別途、イオン交換水10質量部に核材粒子(1)2質量部を加えて超音波分散を行なったものを準備し、上記混合液に投入し、30℃で10分間撹拌して懸濁液とし、この懸濁液を固液分離し、得られたケーキを、イオン交換水、メタノールの順で洗浄した後、窒素雰囲気下100℃で2時間真空乾燥して、乾燥粒子を得た。
【0116】
次に、ビーカーに「レッドシューマー」(日本カニゼン株式会社製)20質量部とイオン交換水70質量部を入れ、混合して混合液を得た。別途、イオン交換水10質量部に上記で得られた乾燥粒子2質量部を加えて超音波分散を行なったものを準備し、上記混合液に投入し、30℃で10分間撹拌して懸濁液とした後、この懸濁液を固液分離し、得られたケーキを、イオン交換水、メタノールの順で洗浄した後、窒素雰囲気下100℃で2時間真空乾燥した。
【0117】
以上の操作により、核材粒子(1)の表面にパラジウムが吸着されたパラジウム活性核材粒子(1)を得た。
【0118】
ビーカーにパラジウム活性核材粒子(1)2部とイオン交換水80質量部を入れて懸濁させ、70℃に調温した。また、別途、無電解めっき液「シューマーS680」(日本カニゼン株式会社製)60質量部を別のビーカーに入れ、70℃に調温した。70℃に調温した上記パラジウム活性核材粒子(1)の懸濁液を撹拌子を用いて300rpmで撹拌させながら、70℃に調温した上記無電解めっき液を投入した。投入から10秒後、水素ガスの発泡が始まり、溶液の色が緑色から黒褐色に変化した。水素ガスの発生が終了した時点を反応終点と判断し、そこから30分間、70℃で撹拌を行なった。室温まで冷却後、この懸濁液を固液分離し、得られたケーキを、イオン交換水、メタノールの順で洗浄した後、窒素雰囲気下100℃で2時間真空乾燥した。以上の操作により、導電性微粒子(1)を得た。
【0119】
(異方性導電接着剤組成物の合成)
エポキシ樹脂(YL980、ジャパンエポキシレジン社製)65質量部、エポキシ硬化剤(ノバキュアHX3941HP、旭化成工業社製)35質量部、導電性微粒子(1)20質量部、1mmφのジルコニアビーズ200質量部を混合し、30分間ビーズミル分散を行い、異方性導電接着剤組成物(1)を得た。
【0120】
(異方性導電成形体の合成と評価)
剥離処理済みポリエチレンテレフタレートフィルムに、乾燥厚みで25μmとなるように異方性導電接着剤組成物(1)を塗布して接着層を形成し、異方性導電シートである異方性導電成形体(1)を作製した。異方性導電成形体(1)を、150μm幅のパターンを有するITO付きガラス基板2枚の間に挟み、180℃で15秒間加熱加圧して、導電接続構造体を得た。得られた導電接続構造体について、まず、対向する電極間の導通抵抗(初期抵抗値)を測定した。次いで導電接続構造体を50℃−90%RHで500時間静置した後の抵抗値(高湿処理後抵抗値)を測定した。測定結果を下記の表1に示す。
【0121】
[比較例1]
(核材粒子の合成)
四つ口フラスコにメラミン75質量部、ベンゾグアナミン75質量部、濃度37%のホルマリン238質量部および濃度10%の炭酸ナトリウム水溶液1.07質量部を仕込み混合物とした。この混合物を攪拌しながら85℃に昇温して重合を行ない、水混和度250%の初期縮合物を得た。別に、ノニオン系界面活性剤(花王製:「エマルゲン430」)8.0質量部を水2455質量部に溶解しておき、この界面活性剤水溶液の温度を50℃に昇温して攪拌した。攪拌状態下にある界面活性剤水溶液に上記初期縮合物を投入して、初期縮合物の乳濁液を得た。これに5%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液90質量部を加え、50〜60℃の温度で3時間保って縮合硬化し、硬化樹脂の乳濁液を得た。この乳濁液を冷水3000部に投入し急冷した。次いで、この乳濁液から硬化樹脂を沈降分離して得られたペーストを上記エマルゲン430(花王製、ポリオキシエチレンオレイルエーテル)7.5質量部とドデシルベンゼンスルホン酸4.5質量部とを水2000質量部に溶解させて得た水溶液中に、超音波分散機を用いて分散した。分散して得られた乳濁液を徐々に90℃まで昇温することにより再縮合硬化し、1時間保持した後に急冷した。この乳濁液から硬化樹脂を沈降分離することにより、メラミン/ベンゾグアナミン/ホルムアルデヒドのアミノ樹脂の硬化球状微粒子を得た。
【0122】
上記アミノ樹脂の硬化球状微粒子50質量部、水450質量部、スルファミン酸アンモニウム0.5質量部を、2リットルのオートクレーブに仕込んだ。窒素で置換した後、170℃まで昇温して3時間加熱加圧処理した。この処理後、粒子をろ別により分離し、純水で数回洗浄した後、160℃で4時間加熱処理することで乾燥し、その後解砕して、メラミンーベンゾグアナミンーホルムアルデヒド縮合樹脂粒子(以下、「比較核材粒子(1)」ともいう。)を得た。得られた粒子の粒度分布を粒度分布測定機(ベックマンコールター社製、コールターマルチサイザーIII型)で測定したところ、平均粒子径が2.95μm、変動係数が2.9%であった。
【0123】
(導電性微粒子の合成)
ビーカーに「ピンクシューマー」(日本カニゼン株式会社製)10質量部とイオン交換水70質量部を入れ、混合して混合液を得た。別途、イオン交換水10質量部に比較粒子(1)2質量部を加えて超音波分散を行ったものを準備し、上記混合液に投入し、30℃で10分間撹拌して懸濁液とし、この懸濁液を固液分離し、得られたケーキを、イオン交換水、メタノールの順で洗浄した後、窒素雰囲気下100℃で2時間真空乾燥した。
【0124】
次に、ビーカーに「レッドシューマー」(日本カニゼン株式会社製)20質量部とイオン交換水70質量部を入れ、混合して混合液を得た。別途、イオン交換水10質量部に上記で得られた乾燥粒子2部を加えて超音波分散を行ったものを準備し、上記混合液に投入し、30℃で10分間撹拌して懸濁液とした後、この懸濁液を固液分離し、得られたケーキを、イオン交換水、メタノールの順で洗浄した後、窒素雰囲気下100℃で2時間真空乾燥した。
【0125】
以上の操作により、比較核材粒子(1)の表面にパラジウムが吸着されたパラジウム活性比較核材粒子(1)を得た。
【0126】
ビーカーにパラジウム活性比較核材粒子(1)2質量部とイオン交換水80質量部を入れて懸濁させ、70℃に調温した。また、別途、無電解めっき液「シューマーS680」(日本カニゼン株式会社製)60質量部を別のビーカーに入れ、70℃に調温した。70℃に調温した上記パラジウム活性比較核材粒子(1)の懸濁液を撹拌子を用いて300rpmで撹拌させながら、70℃に調温した上記無電解めっき液を投入した。投入から10秒後、水素ガスの発泡が始まり、溶液の色が緑色から黒褐色に変化した。水素ガスの発生が終了した時点を反応終点と判断し、そこから30分間、70℃で撹拌を行った。室温まで冷却後、この懸濁液を固液分離し、得られたケーキを、イオン交換水、メタノールの順で洗浄した後、窒素雰囲気下100℃で2時間真空乾燥した。以上の操作により、比較導電性微粒子(1)を得た。
【0127】
(異方性導電接着剤組成物の合成)
エポキシ樹脂(YL980、ジャパンエポキシレジン社製)65質量部、エポキシ硬化剤(ノバキュアHX3941HP、旭化成工業社製)35質量部、比較導電性微粒子(1)20質量部、1mmφのジルコニアビーズ200質量部を混合し、30分間ビーズミル分散を行い、比較異方性導電接着剤組成物(1)を得た。
【0128】
(異方性導電成形体の合成と評価)
剥離処理済みポリエチレンテレフタレートフィルムに、乾燥厚みで25μmとなるように比較異方性導電接着剤組成物(1)を塗布して接着層を形成し、異方性導電シートである比較異方性導電成形体(1)を作製した。比較異方性導電成形体(1)を、150μm幅のパターンを有するITO付きガラス基板2枚の間に挟み、180℃で15秒間加熱加圧して、導電接続構造体を得た。得られた導電接続構造体について、まず、対向する電極間の導通抵抗(初期抵抗値)を測定した。次いで導電接続構造体を50℃−90%RHで500時間静置した後の抵抗値(高湿処理後抵抗値)を測定した。測定結果を下記の表1に示す。
【0129】
【表1】

【0130】
表1に示すように、本発明(実施例1)の導電性微粒子を用いた異方性導電成形体では、高湿処理後であっても抵抗値の上昇が抑えられていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の導電性微粒子は、電気接続用異方導電材料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ樹脂架橋粒子からなる核材と、
前記核材の表面を被覆する導電性金属層と、
からなる導電性微粒子であって、
前記アミノ樹脂架橋粒子が、フェノール化合物由来のフェノール縮合単位を含む、導電性微粒子。
【請求項2】
前記アミノ樹脂架橋粒子における前記フェノール縮合単位の含有量が、当該フェノール縮合単位を構成するフェノール化合物の量と当該アミノ樹脂架橋粒子を構成するアミノ化合物との合計100質量%に対して1〜60質量%である、請求項1に記載の導電性微粒子。
【請求項3】
前記アミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径が0.5〜30μmである、請求項1または2に記載の導電性微粒子。
【請求項4】
前記アミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径の変動係数(CV値)が10%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性微粒子。
【請求項5】
前記導電性微粒子が、その表面の少なくとも一部に絶縁性樹脂層を有するものである、請求項1〜4のいずれかに記載の導電性微粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性微粒子がバインダー樹脂中に分散してなる、異方性導電接着剤組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の異方性導電接着剤組成物から得られる、異方性導電成形体。

【公開番号】特開2012−69361(P2012−69361A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212787(P2010−212787)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】