説明

導電性微粒子およびその製造方法

【課題】粒径が微細で、薄膜形成時に高い透明性を保持したまま低い抵抗値を達成できる導電性微粒子を提供する。
【解決手段】ピロールおよび/またはピロール誘導体の重合体、アニオン界面活性剤およびドーパントを含有する導電性微粒子を製造する方法であって、有機溶媒と、水と、アニオン系界面活性剤と、酸化剤とを混合攪拌してなるO/W型の乳化液中に攪拌下で、ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーおよびドーパントをそれぞれ一部づつ交互に添加して該モノマーを酸化重合することを特徴とする、導電性微粒子の製造方法。得られる導電性微粒子は、ピロール重合体単位ユニット当たり0.01〜0.3分子のドーパントを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性微粒子およびその製造方法に関する。詳しくは、粒径が微細で、導電性の観点から好ましい数のドーパントを含む導電性微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンに代表される導電性高分子は、空気中で比較的安定であり、また合成が容易であることから、導電性塗料、防錆塗料、半導体材料、コンデンサ用電解質、有機EL素子の正孔輸送材、2次電池用電極材等の用途で工業的に広く使用されている。特にポリピロールは電解コンデンサ、ポリチオフェンは高分子有機EL素子、またポリアニリンは2次電池における適用が注目されている。しかしながら、これらの導電性高分子は概して不溶であり、また加熱によって融解させることも不可能であるため、成形加工が非常に困難であった。
【0003】
そこで、上記した導電性高分子の加工性に関する問題を解決する手段として、例えば、溶媒中で等モルのアニオン系界面活性剤とアニリンを反応させ、アニリン−界面活性剤塩を形成した後、反応熱の上昇を抑制しながら酸化剤を添加し、酸化重合することを特徴とする水および/または有機溶媒に可溶なポリアニリンの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、アニリンと等モルの界面活性剤とを組み合わせることにより、得られるポリアニリンが各種溶媒、特に水に可溶となり、ポリアニリン溶液の塗布により導電性薄膜を容易に形成できる。
【0004】
また、金属、炭素、無機酸化物、無機リン酸塩、無機亜リン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の無機微粒子およびπ−共役2重結合を有する有機高分子との複合体からなることを特徴とする導電性高分子複合微粒子も知られている(例えば、特許文献2参照)。ここで該有機高分子としては、アニリン、ピロール、チオフェンおよびこれらの置換体を使用でき、得られる導電性高分子複合微粒子は、良好な加工性を有するのみならず、耐熱性、耐水性、金属に対する接着性、導電性、酸化還元性、紫外線・可視光遮断性、隠蔽性、硬さ、磁性等の無機微粒子が元来有する機能をも兼備したものとなる。
【0005】
さらには、ピロール類をポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコールとノニオン系界面活性剤またはアニオン系界面活性剤より選択される1種以上の界面活性剤の存在下で重合することを特徴とするポリピロール類水分散液の製造方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。この方法によれば、均一で安定なポリピロール水分散液を製造でき、エマルジョン、ラテックス等の高分子水溶液と混合して任意の導電性を有する複雑な形状の成形体を製造することが可能となる。
【特許文献1】特許第3426637号公報
【特許文献2】特開平11−241021号公報
【特許文献3】特公平7−78116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで本発明者等は、ピロール重合体を有機溶媒中にナノスケールで微分散させた新たな導電性微粒子およびその新たな製造方法を見出し、提案している。ここで得られる導電性微粒子は、従来の導電性塗料と異なり、1)湿度変化に対する抵抗値の変化が見られず、2)酸の遊離に基づく金属への腐食性がなく、3)水系塗料に見られる濡れ性および乾燥性の欠点がないという優れた溶剤分散系を提供できる。該導電性微粒子はピロール重合体とアニオン界面活性剤を含有することを特徴とし、該アニオン系界面活性剤が導電性
高分子間に介在するドーパントとして作用して、導電性高分子の抵抗値を低下させることが推察されている。
【0007】
しかしながら、この種の導電性微粒子を有機溶媒中に分散させて得られる導電性塗料では、ガラス板にコーティングした場合、約10712Ωという高い表面抵抗値しか達成し得なかった。これは、通常、導電性高分子が導電性パスを形成して低い表面抵抗値を達成するためには、単位ユニット当たり0.3分子のドーパントを含むことが理想的であるとされているのに対し、該導電性微粒子では、ドーパントとして作用するアニオン界面活性剤をポリピロール単位ユニット当たり0.01分子以下の不十分な量しか含まないためであると推察される。表面抵抗値を改良する目的で塗膜の厚さを増すと、光線透過率が大幅に低下してしまうため、低抵抗値でかつ透明性に優れた導電性薄膜を形成するには至っていなかった。
【0008】
本発明はこれら課題を解決するものであり、有機溶媒中での分散安定性に優れた導電性微粒子であって、薄膜形成時に、高い透明性を保持したまま、より低い抵抗値を達成できる導電性微粒子の製造方法、および該微粒子を用い優れた性能を有する用途商品、特に溶剤系導電性塗料の提供を目的とする。特に上記したアニオン界面活性剤を含有してなる導電性微粒子において、理想値である単位ユニット当たり0.3分子のドーパントに近い数のドーパントを含有し、導電性塗料としたときに低い抵抗値の薄膜を形成できる導電性微粒子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、この課題に対して鋭意研究を行った結果、ドーパントを添加して導電性モノマーの重合を行い導電性高分子を生成する際に、反応系中にモノマーおよびドーパントを小分けして一部づつ添加すると共に、これらを時間的にずらして交互に添加して重合することで、極めて効率良く導電性高分子中にドーパントが取り込まれることを見出し、さらにこうして得られた導電性微粒子を用いた導電性塗料を塗布した場合、従来にない低い抵抗値の薄膜が得られることを見出して、本発明を完成させた。
【0010】
従って本発明は、
ピロールおよび/またはピロール誘導体の重合体、アニオン界面活性剤およびドーパントを含有する導電性微粒子を製造する方法であって、
有機溶媒と、水と、アニオン系界面活性剤と、酸化剤とを混合攪拌してなるO/W型の乳化液中に攪拌下で、ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーおよびドーパントをそれぞれ一部づつ交互に添加して該モノマーを酸化重合することを特徴とする、導電性微粒子の製造方法
に関する。
【0011】
前記製造方法の好ましい態様は、
前記モノマーおよびドーパントの添加は、その全量を少なくとも3回以上に小分けして行うことを特徴とする、前記製造方法、および
前記ドーパントの量は、生成するピロール重合体単位ユニット当たり0.01〜0.3分子となる量であることを特徴とする、前記製造方法
である。
【0012】
また本発明は、
前記製造方法により得られた導電性微粒子を有機溶媒中に分散させてなることを特徴とする導電性塗料
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーを酸化重合するに際し、モノマーとドーパントとを交互に一部づつ添加して重合することにより、ピロール重合体単位ユニット当たり0.01〜0.3分子のドーパントを含む導電性微粒子を得ることができる。そして該導電性微粒子を用いた導電性塗料は、低い抵抗値と高い透明性を兼備し、優れた特性の導電性薄膜を形成するために好ましく使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で得られる導電性微粒子は、ピロールおよび/またはピロール誘導体の重合体、アニオン系界面活性剤およびドーパントを含有してなる微粒子である。そしてその特徴は、ピロール重合体単位ユニット当たり0.01〜0.3分子のドーパントを含むことにある。
【0015】
本発明で得られる導電性微粒子の粒径は具体的には100nm程度以下であり、従来の導電性微粒子が有する数百nmの粒径と比較して格段に小さい。この非常に小さな粒径が、本発明の導電性微粒子が有する長期にわたる分散安定性の要因の1つであると考えられる。また粒径が小さいために、導電性塗料として形成した薄膜が透明性を有すると考えられる。
【0016】
本発明で得られる導電性微粒子は、O/W型の乳化液中でピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーを以下のように酸化重合させて得られる。先ず、有機溶媒、水、アニオン系界面活性剤および酸化剤を用いてO/W型の乳化液を形成させる。ここで、該アニオン系界面活性剤は、乳化液中の有機相を中心にミセルを形成し、ミセルの表面側にはアニオン系界面活性剤の親水基が現れる。この乳化液中に水溶性のピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーを添加すると、アニオン系界面活性剤の親水基を核としてモノマーが重合し、鎖長延長が行われてピロール重合体が形成する。そして該モノマーの重合が進行するにつれてピロール重合体は水相に溶解し難くなり、導電性微粒子が析出する。こうして、アニオン系界面活性剤が導電性微粒子中に取り込まれ、該アニオン系界面活性剤の親水基がドーパントとしても機能する本発明の導電性微粒子が得られると推測される。
【0017】
本発明で得られる導電性微粒子は、無機微粒子を核として製造された導電性微粒子と異なり、有機化合物であるアニオン系界面活性剤を核とするため、合成樹脂中への分散性等の面において有利である。
【0018】
本発明で使用するピロールおよびその誘導体としては、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール、3−フェニルナフチルアミノピロール等が挙げられる。特に好ましいのはピロールである。
【0019】
また本発明で使用するアニオン系界面活性剤としては、種々のものが挙げられるが、疎水性末端を複数有するもの(例えば、疎水基に分岐構造を有するものや、疎水基を複数有するもの)が好ましい。このような疎水性末端を複数有するアニオン系界面活性剤を使用することにより、安定したミセルを形成できる。疎水性末端を複数有するアニオン系界面
活性剤の中でも、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(疎水性末端4つ)、スルホコハク酸ジ−2−エチルオクチルナトリウム(疎水性末端4つ)および分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(疎水性末端2つ)が特に好適に使用できる。
【0020】
反応系中でのアニオン系界面活性剤の量は、ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマー1molに対し0.2mol未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.05mol〜0.15molである。0.05mol未満では収率や分散安定性が低下し、一方、0.2mol以上では得られた導電性微粒子に導電性の湿度依存性が生じてしまう場合がある。
【0021】
前記乳化液の有機相を形成する有機溶媒は疎水性であることが好ましい。なかんずく、芳香族系の有機溶媒であるトルエンやキシレンは、O/W型の乳化液の安定性およびピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーとの親和性の観点から好ましい。両性溶媒でもモノマーの重合を行うことはできるが、得られた導電性微粒子を回収する際の有機相と水相との分離が困難になる。
【0022】
乳化液中の有機相と水相の割合は、水相が75体積%以上であることが好ましい。水相が20体積%以下ではピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーの溶解量が少なくなり、生産効率が悪くなる。
【0023】
本発明で使用する酸化剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸およびクロロスルホン酸のような無機酸、アルキルベンゼンスルホン酸およびアルキルナフタレンスルホン酸のような有機酸、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよび過酸化水素のような過酸化物が使用できる。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。塩化第2鉄等のルイス酸でもポリピロールを重合できるが、生成した粒子が凝集し、ポリピロールを微分散できない場合がある。特に好ましい酸化剤は、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩である。
【0024】
反応系中での酸化剤の量は、重合するピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマー1molに対して0.1mol以上、0.8mol以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜0.6molである。0.1mol未満ではモノマーの重合度が低下し、導電性微粒子を分液回収することが困難になり、一方、0.8mol以上ではピロール重合体が凝集して導電性微粒子の粒径が大きくなり、分散安定性および薄膜としたときの透明性が悪化する。
【0025】
本発明で使用するドーパントとしては、一般的にピロールおよび/またはピロール誘導体の重合体を含んでなる導電性微粒子に好適に用いられるアクセプター性ドーパントであれば特に制限はないが、代表的なものとしては、例えば、パラトルエンスルホン酸、メタスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アリルスルホン酸等のスルホン酸類、過塩素酸、塩素、臭素等のハロゲン類、ルイス酸、プロトン酸等がある。これらは、酸形態であってよいし、塩形態にあることもできる。
【0026】
反応系中でのドーパントの量は、生成するピロール重合体単位ユニット当たりドーパント0.01〜0.3分子となる量が好ましい。0.01分子以下では、十分な導電性パスを形成するに必要なドーパント量としては不十分であり、高い導電性を得ることが難しい。一方、0.3分子以上加えてもドープ率は向上しないから、0.3分子以上のドーパントの添加は経済上好ましくない。ここでピロール重合体単位ユニットとは、ピロールモノマーが重合して得られるピロール重合体のモノマー1分子に対応する繰返し部分のことを指す。
【0027】
本発明の導電性微粒子の製造方法は、例えば以下のような工程で行われる:
(a)有機溶媒、水、アニオン系界面活性剤および酸化剤を混合攪拌して乳化液を調製する工程、
(b)ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーとドーパントとを乳化液中に一部づつ交互に添加して酸化重合する工程、
(c)有機相を分液し導電性微粒子を回収する工程。
【0028】
前記各工程は、当業者に既知である手段を利用して行うことができる。例えば、乳化液の調製時に行う混合攪拌は、特に限定されないが、例えばマグネットスターラー、攪拌機、ホモジナイザー等を適宜選択して行うことができる。また重合温度は0〜25℃、好ましくは20℃以下である。重合温度が25℃を越えると副反応が起こるので好ましくない。
【0029】
前記モノマーの酸化重合工程は、O/W型の乳化液中に前記モノマーと前記ドーパントとを一部づつ交互に時間をずらして添加して行なう。ここで、モノマーおよびドーパントの添加はその全量を数回に、好ましくは3回以上に小分けして行う。このように小分けして添加することにより、最初のモノマー添加で生じた極めて微細な種ミセルの周囲に、その後に添加したドーパントおよびモノマーを交互に取り込んで粒径を成長させることができる。そして重合の進行により、最終的には1〜100nm程度の粒径を有する導電性微粒子が得られるが、この内部においては均一にかつ効率良くドーパントが取り込まれており、得られた導電性微粒子は極めて高い導電性を達成できる。なお、モノマーおよびドーパントの添加完了後は、30分以上重合を続けることが望ましい。
【0030】
前記酸化重合反応を停止すると、反応系は有機相と水相の二相に分かれるが、この際に未反応のモノマー、酸化剤および塩は水相中に溶解して残存する。従って有機相を分液回収し、イオン交換水で数回洗浄すると、有機溶媒に分散した形態で本発明の導電性微粒子を入手できる。
【0031】
こうして得られた本発明の導電性微粒子は、有機溶媒への分散安定性が高いので、導電性塗料の導電性成分として好ましく使用できる。該導電性塗料は本発明の導電性微粒子を有機溶媒中に分散してなり、さらに用途や塗布対象物等の必要に応じて、分散安定剤、増粘剤、インキバインダ等の樹脂を加えることも可能である。
【0032】
前記導電性塗料を基材に塗布し、乾燥させることによって導電性薄膜が得られる。塗布する対象は特に限定されないが、導電性塗料中に含まれる有機溶媒により損傷を受けないよう選択する必要がある。また塗布方法も特に限定されず、例えばグラビア印刷機、インクジェット印刷機、ディッピング、スピンコーター、ロールコーター等を用いて印刷またはコーティングできる。こうして得られる導電性薄膜は、106Ω以下の低い抵抗値を示す。
【0033】
また本発明の導電性微粒子は乾燥させて粉末状の導電性微粒子とすることができ、該導電性微粒子粉末を合成樹脂成型品等の導電性充填材等として用いることもできる。さらに導電性塗料以外にも、防錆塗料、半導体材料、コンデンサ用電解質、有機EL素子の正孔輸送材、二次電池用電極材等の様々な用途に好ましく適用できる。
【0034】
以下の実施例により本発明をより詳しく説明する。但し、実施例は本発明を説明するためのものであり、いかなる方法においても本発明を限定することを意図しない。
【0035】
実施例1〜3
攪拌装置を備えた2L反応容器に、トルエン250mL、イオン交換水650mL、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム7mmolを加え、20℃に保持して乳化するまで十分に撹拌(300rpm)した。その後、該乳化液に酸化剤として過硫酸アンモニウム43mmolを添加し、さらに10分撹拌を行った。
次いで、ピロール120mmolおよび各12mmolのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(実施例1)、パラトルエンスルホン酸ナトリウム(実施例2)またはナフタレントリスルホン酸トリナトリウム(実施例3)をイオン交換水100mLに溶解してなるドーパント液を、それぞれ表1に示す添加時期および添加量で反応容器へ添加し重合反応を行った。実施例1では、30分間でモノマー40mmolを滴下し、次いで10分間でドーパント4mmolを滴下して、表1に示すようにモノマーとドーパントを交互に加えた。実施例2では、30分間でモノマー30mmolを滴下した後にドーパント3mmolを瞬時に加え、10分経過後に同じ操作を繰り返して、モノマーとドーパントを交互に加えた。実施例3では、表1に示す添加量を実施例1と同様に滴下して交互に加えた。
最初のモノマー添加から220分間攪拌しながら反応を継続した後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエン中に分散した状態の黒色の導電性微粒子を得た。
【表1】

【0036】
比較例1
攪拌装置を備えた2L反応容器に、トルエン250mL、イオン交換水650mL、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム7mmolを加え、20℃に保持して乳化するまで十分に撹拌(300rpm)した。その後、該乳化液に酸化剤として過硫酸アンモニウム43mmolを添加し、さらに10分撹拌を行った。
次いで、ピロール120mmolおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12mmolをイオン交換水100mLに溶解してなるドーパント液を、重合開始時にモノマー60mmolとドーパント6mmol相当のドーパント液を同時に一括添加し、60分後と120分後に表2に示すモノマーとドーパントのそれぞれを同時に一括添加した。重合開始から攪拌下に220分経過した後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエン中に分散した状態の黒色の導電性微粒子を得た。
【表2】

【0037】
比較例2〜4
攪拌装置を備えた2L反応容器に、トルエン250mL、イオン交換水650mL、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム7mmolを加え、20℃に保持して乳化するまで十分に撹拌した。その後、該乳化液に酸化剤として過硫酸アンモニウム43mmolを添加し、さらに10分撹拌を行った。
次いで、ピロール120mmolおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12mmolをイオン交換水100mLに溶解してなるドーパント液を、それぞれ表2に示す添加時期および添加量で反応容器へ添加して攪拌しながら重合反応を行った。比較例2では、モノマー120mmolとドーパント12mmolの全量を初期段階で一括添加した。比較例3では、最初の30分間でモノマー120mmolを滴下しながら加え、次の10分間でドーパント12mmolを滴下しながら加えた。比較例4は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを添加しなかった以外は、比較例2と同様に行った。重合開始から220分経過した後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して、トルエン中に分散した状態の黒色の導電性微粒子を得た。
【表3】

【0038】
試験例1
実施例1〜3および比較例1〜4で得た導電性微粒子について、ピロール重合体単位ユニット当たりのドーパントの分子数を決定した。分子数の決定方法を、ドーパントがスルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウムとアニオンとして1個のSO3-を持つドーパントAである場合を例として以下に示す:
先ず、パーキン・エルマー2400II元素分析装置をそれぞれCHNSモードおよびOモードで測定することにより窒素原子、硫黄原子および酸素原子の含有量を決定し、それぞれx、yおよびzとした。
ここで、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウムは1個の硫黄原子および7個酸素原子を含み、またドーパントAは1個の硫黄原子および3個の酸素原子を含むので、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム分子数をm、またドーパントA分子数をnとすると以下の式が成り立つ:
式(1):窒素原子数:x/14
式(2):硫黄原子数:m+n=y/32
式(3):酸素原子数:7m+3n=z/16
そして上記式よりmおよびnの値を求め、さらに上記式(1)並びにmおよびnの値から、全ての硫黄原子がドーパントであると仮定して、ピロール重合体単位ユニット当たりのドーパントの分子数を:(スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム分子数m+ドーパントA分子数n)/窒素原子数として求めた。
ドーパントがアニオンとしてSO3-以外を持つ場合にも、同様にして、燃焼分解−濃縮
イオンクロマトグラフィー等により該アニオン中の原子の含有量を測定し、ピロール重合体単位ユニット当たりのドーパントの分子数を決定した。
結果を表4に示す。
【0039】
試験例2
実施例1〜3および比較例1〜4で得た導電性微粒子を同一の方法を用いて導電性塗料とし、該導電性塗料をガラス板にバーコーター#8を用いて均一に塗布して得られる導電性薄膜の特性を評価した。該評価では、導電性薄膜の表面抵抗値(Ω)をハイレスタ抵抗計およびローレスタ抵抗計(それぞれ三菱化学株式会社製)を用いて測定し、またその光線透過率(透明性、%)を分光光度計(島津製作所株式会社製)を用いて550nmで測定した。
結果を表4に示す。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピロールおよび/またはピロール誘導体の重合体、アニオン界面活性剤およびドーパントを含有する導電性微粒子を製造する方法であって、
有機溶媒と、水と、アニオン系界面活性剤と、酸化剤とを混合攪拌してなるO/W型の乳化液中に攪拌下で、ピロールおよび/またはピロール誘導体のモノマーおよびドーパントをそれぞれ一部づつ交互に添加して該モノマーを酸化重合することを特徴とする、導電性微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記モノマーおよびドーパントの添加は、その全量を少なくとも3回以上に小分けして行うことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記ドーパントの量は、生成するピロール重合体単位ユニット当たり0.01〜0.3分子となる量であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載の製造方法により得られた導電性微粒子を有機溶媒中に分散させてなることを特徴とする導電性塗料。

【公開番号】特開2006−182959(P2006−182959A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379677(P2004−379677)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】