説明

導電性微粒子

【課題】ニッケル系金属層を導電性金属層とする粒子径の小さい導電性微粒子でありながら、電気的接続に供した際に充分な低抵抗を実現できる導電性微粒子を提供する。
【解決手段】本発明の導電性微粒子は、樹脂からなる基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された少なくとも一層の導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、前記導電性金属層の少なくとも一層として、ニッケル又はニッケル合金から形成されたニッケル系金属層を有し、前記基材粒子の平均粒子径が1.0μm〜2.5μmであり、前記ニッケル系金属層の膜厚(d)と前記基材粒子の平均粒子径(D)が0.0045≦d/D≦0.014を満たすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な導電性微粒子に関するものであり、特に、電気的接続に用いた場合に、低抵抗値を実現できる導電性微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高機能化が益々進展している。それに伴い、電気機器に搭載される電子部品の小型化、高密度実装化が進んでおり、電子回路における電極や配線は一層微細化、狭小化する流れにある。
【0003】
従来、電子機器の組み立てにおいて、対向する多数の電極や配線間の電気的接続を行うために、異方性導電材料による接続方式が採用されている。異方性導電材料は、導電性微粒子をバインダー樹脂等に混合した材料であり、例えば異方性導電ペースト(ACP)、異方性導電インク、異方性導電フィルム(ACF)、異方性導電シート等がある。また、異方性導電材料に用いられる導電性微粒子としては、金属粒子や基材とする樹脂粒子の表面を導電性金属層で被覆したものが使用されている。そして、上述したように電子回路の電極や配線の微細化、狭小化が進展するなか、異方性導電材料に用いられる導電性微粒子についても、粒子径がより小さなものが要求されている。
【0004】
このような粒子径の小さな導電性微粒子として、例えば、特許文献1には、樹脂や無機化合物からなり、平均粒子径が0.5〜2.5μm、粒子径のCV値が20%以下である微球を基材とし、導電性金属層としてニッケルめっきを施した導電性微粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−30526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粒子径が小さい導電性微粒子を異方性導電材料に適用した場合、加圧接続時において、導電性微粒子の変形により得られる接続面積が非常に小さくなってしまい、電気的接続における接続抵抗が大きくなる傾向がある。しかも、ニッケル系金属層を導電性金属層とする導電性微粒子では導電性金属層が硬いために、この導電性金属層により基材粒子の変形が阻害されてしまう。そのため、導電性微粒子の変形量がさらに小さくなり、接続抵抗はさらに高くなる。また、導電性微粒子の粒子径が小さいと、異方性導電材料とする際に二次凝集しないよう高いシェアで分散させる必要があるが、ニッケルめっきからなる導電性金属層は硬く脆いため、分散時に導電性金属層に割れや剥がれを生じやすい。このように導電性金属層に割れや剥がれを生じた場合、電気的な接続が不可能となってしまうため、接続抵抗は一層高くなるという問題もある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ニッケル系金属層を導電性金属層とする粒子径の小さい導電性微粒子でありながら、電気的接続に供した際に充分な低抵抗を実現できる導電性微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、一般に、接続抵抗を低減するためには、導電性金属層とするニッケル系金属層の膜厚は厚いほうが有利であると考えられていたところ、この技術常識に反して、基材粒子が非常に小さい場合には、ニッケル系金属層の膜厚を厚くするとかえって抵抗値が高くなることを見出した。この原因は定かではないが、ニッケル系金属層の膜厚が厚くなると、ニッケル系金属層が基材粒子の変形に追随して変形し難くなり、ニッケル系金属層に割れ(クラック)や亀裂が入るためであると考えられる。本発明者らはこの知見を勘案し、導電性微粒子を構成する基材粒子の平均粒子径が1.0〜2.5μmの範囲である場合に、該基材粒子の直径に対するニッケル系金属層の厚みを所定範囲に制御すると、非常に小さな粒子径の導電性微粒子でありながら、電気的接続の際の抵抗を低く抑えることができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明に係る導電性微粒子は、樹脂からなる基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された少なくとも一層の導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、前記導電性金属層の少なくとも一層として、ニッケル又はニッケル合金から形成されたニッケル系金属層を有し、前記基材粒子の平均粒子径が1.0μm〜2.5μmであり、前記ニッケル系金属層の膜厚(d)と前記基材粒子の平均粒子径(D)が0.0045≦d/D≦0.014を満たすことを特徴とする。
本発明の導電性微粒子においては、導電性微粒子自体の平均粒子径が1.1μm〜2.8μmであることが好ましく、前記ニッケル系金属層の膜厚が0.010μm〜0.030μmであることが好ましい。また、表面の少なくとも一部に絶縁性樹脂層を有する導電性微粒子も本発明の好ましい態様である。
本発明に係る異方性導電材料は、上記本発明の導電性微粒子がバインダー樹脂に分散してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ニッケル系金属層を導電性金属層とする粒子径の小さい導電性微粒子でありながら、電気的接続に供した際に充分な低抵抗を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(導電性微粒子)
本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された少なくとも一層の導電性金属層とを有する。
本発明における基材粒子は、樹脂からなるものであるが、樹脂成分を含んでいればよく、有機材料のみから構成される粒子であってもよいし、有機無機複合材料から構成される粒子であってもよい。樹脂からなる基材粒子を用いることで、弾性変形特性に優れた導電性微粒子となる。
【0012】
前記基材粒子を構成する有機材料としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等)、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル樹脂等のビニル重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリアミド;ポリイミド;フェノールホルムアルデヒド樹脂;メラミンホルムアルデヒド樹脂;メラミンベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂;尿素ホルムアルデヒド樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。また、有機無機複合材料としては、前記有機材料とポリシロキサン骨格とを含む材料(例えば、ポリシロキサン骨格とビニル重合体が複合化されてなる材料等)が挙げられる。これらの基材粒子を構成する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0013】
前記基材粒子を構成する材料の中でも、ビニル重合体及び/又はポリシロキサン骨格を含むものが好ましい。ビニル重合体を含む材料で構成された基材粒子は、ビニル基が重合して形成された有機系骨格を有し、加圧接続時の弾性変形に優れる。特に、ジビニルベンゼン及び/又はアルカンジオールジアクリレートを重合成分として含むビニル重合体は、導電性金属被覆後の粒子強度の低下が少ないので好ましい。また、ポリシロキサン骨格を含む材料で構成された基材粒子は、加圧接続時において被接続体に対する接触圧に優れる。特に、ポリシロキサン骨格とビニル重合体を複合化した材料で構成された基材粒子は、弾性変形性及び接触圧に優れ、得られる導電性微粒子の接続信頼性がより優れたものとなるため好ましい。
【0014】
前記ビニル重合体はビニル基含有単量体を重合(ラジカル重合)したものであり、「ビニル基」には、炭素−炭素二重結合のみならず、(メタ)アクリロキシ基、アリル基、イソプロペニル基、ビニルフェニル基、イソプロペニルフェニル基のような重合性炭素−炭素二重結合を有する置換基も含まれる。なお、本明細書において「(メタ)アクリロキシ基」、「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル」は、「アクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」や「アクリル及び/又はメタクリル」を示すものとする。
【0015】
前記ビニル基含有単量体には、分子中に一つのビニル基を有する単量体(1)、分子中に一つのビニル基とビニル基以外の官能基(カルボキシル基、水酸基等のプロトン性水素含有基、アルコキシ基等の末端官能基等)を有する単量体(2)、1分子中に2以上のビニル基を有する架橋性のビニル基含有単量体(3)(以下「架橋性ビニル基含有単量体」と称することがある。)が含まれる。これらの単量体(1)〜(3)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも架橋性ビニル基含有単量体(3)が好ましい。
【0016】
前記単量体(1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等のスチレン系単官能モノマー;等が挙げられる。これらの中でも、スチレン系単官能モノマーが好ましく、スチレンがより好ましい。単量体(1)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記単量体(2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシ基含有スチレン類等のヒドロキシ基を有する単量体;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類等のアルコキシ基を有する単量体;等が挙げられる。ここで、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基等は、反応(結合)相手となる基が他の単量体に存在する場合には架橋構造を形成し得る。単量体(2)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記単量体(3)(架橋性ビニル基含有単量体)としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族炭化水素系架橋剤(好ましくはジビニルベンゼン等のスチレン系多官能モノマー);N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等のヘテロ原子含有架橋剤;等が挙げられる。これらの中でも、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体、スチレン系多官能モノマーが好ましい。さらに、前記1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体の中でも、1分子中に2以上のアクリロイル基を有する単量体が好ましく、1分子中に2個のアクリルイル基を有する単量体(ジアクリレート類)がより好ましく、アルカンジオールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレートがさらに好ましく、特にアルカンジオールジアクリレートが好ましい。前記スチレン系多官能モノマーの中では、ジビニルベンゼンが好ましい。これらの架橋性ビニル基含有単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記ビニル重合体としては、構成成分として、前記架橋性ビニル基含有単量体(3)を含む態様;前記単量体(1)と前記架橋性ビニル基含有単量体(3)とを含む態様が好ましい。具体的には、前者としては、構成成分として、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体を含む態様;スチレン系多官能モノマーを含む態様;1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体とスチレン系多官能モノマーとを含む態様;が好ましく、後者としては、スチレン系単官能モノマーと1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体とを含む態様、スチレン系単官能モノマーとスチレン系多官能モノマーとを含む態様が好ましい。
【0020】
前記ポリシロキサン骨格は、シラン系単量体を加水分解縮合することで得られ、前記シラン系単量体としては、非架橋性シラン系単量体、架橋性シラン系単量体が挙げられる。
前記非架橋性シラン系単量体として、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルシラン等の2官能性シラン系単量体;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルシラン等の1官能性シラン系単量体等が挙げられる。これらの非架橋性シラン系単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記架橋性シラン系単量体は、架橋構造を形成し得る。架橋性シラン系単量体により形成される架橋構造としては、有機重合体骨格(例えば、ビニル系重合体骨格)と有機重合体骨格とを架橋するもの(第一の形態);ポリシロキサン骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第二の形態);有機重合体骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第三の形態);が挙げられる。
【0022】
第一の形態を形成し得るものとしては、例えば、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン等が挙げられる。第二の形態を形成し得るものとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン系単量体;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性シラン系単量体等が挙げられる。第三の形態を形成し得るものとしては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等の;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のビニル基を有するもの;等が挙げられる。これらの架橋性シラン系単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
特に前記ポリシロキサン骨格は、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合(例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基)を有する重合性ポリシロキサン由来の骨格を有することが好ましい。つまり、ポリシロキサン骨格は、構成成分として、少なくとも前記第三の形態の架橋構造を形成し得る架橋性シラン系単量体(好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するもの、より好ましくは3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)を加水分解及び縮合することにより形成されたポリシロキサン骨格を含有することが好ましい。
【0024】
前記基材粒子は、重合体を構成する全単量体成分中、架橋性単量体(架橋性ビニル基含有単量体、架橋性シラン系単量体)の含有量が5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、95質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0025】
本発明において、前記基材粒子の平均粒子径(D)は、個数平均粒子径で、1.0μm〜2.5μmであることが重要である。基材粒子の個数平均粒子径が1.0μmよりも小さいと、得られる導電性微粒子の接続抵抗値が高くなる虞がある。一方、基材粒子の個数平均粒子径が2.5μmよりも大きくなると、導電性微粒子としての適用した際に電極間でショートが発生しやすくなる虞がある。基材粒子の個数平均粒子径は、好ましくは1.1μm以上、より好ましくは1.2μm以上、さらに好ましくは1.3μm以上であり、好ましくは2.3μm以下、より好ましくは2.1μm以下、さらに好ましくは1.9μm以下である。
【0026】
なお、本発明において、基材粒子の平均粒子径(D)は、具体的には、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマンコールター(株)製「コールターマルチサイザーIII型」)により測定される個数基準の値とする。
【0027】
前記基材粒子の粒子径における変動係数(CV値)は、10%以下が好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは7%以下、特に好ましくは6%以下である。なお、粒子径の変動係数とは、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置により測定される粒子の個数平均粒子径と、粒子の粒子径の標準偏差とを下記式に当てはめて求められる値である。
粒子の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/個数平均粒子径)
【0028】
前記基材粒子の10%K値は、8000N/mm2以上、40000N/mm2以下であることが好ましい。基材粒子の10%K値が小さすぎると、異方性導電材料として用いた際に、周囲のバインダーを十分に排除できなかったり、電極への食い込み具合が弱かったりする結果、低い接続抵抗値を得ることができない虞がある。一方、基材粒子の10%K値が大きすぎると、接続部位に対して電気的に良好な接触状態を確保できない虞がある。基材粒子の10%K値は10000N/mm2以上、38000N/mm2以下であるのがより好ましい。
【0029】
なお、基材粒子の10%K値とは、粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率であり、例えば、公知の微小圧縮試験機(例えば、島津製作所製「MCT−W500」など)を用い、室温で粒子の中心方向へ荷重負荷速度2.2295mN/secで荷重をかけ、圧縮変位が粒子径の10%となるまで粒子を変形させたときの圧縮荷重(N)と圧縮変位(mm)を測定し、下記式に基づき求めることができる。
【0030】
【数1】

(ここで、E:圧縮弾性率(N/mm2)、F:圧縮荷重(N)、S:圧縮変位(mm)、R:粒子の半径(mm)である。)
【0031】
前記基材粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、回転楕円体状、金平糖状、薄板状、針状、まゆ状等のいずれでも良いが、球状が好ましく、特に真球状が好ましい。
【0032】
前記基材粒子の製造方法としては、特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、分散重合、シード重合、ゾルゲルシード重合法等が採用できるが、特にシード重合やゾルゲルシード重合法は、粒度分布を小さくすることができるため好ましい。ここで、ゾルゲルシード重合法とは、シード重合の一態様であって、特にシード粒子がゾルゲル法により合成される場合を意味するものであり、例えば、アルコキシシランの加水分解縮合反応により得られたポリシロキサンをシード粒子とする場合などが挙げられる。つまり、シード重合には、シード粒子が、有機質材料からなる場合と、有機質と無機質とが複合された材料からなる場合(ゾルゲルシード重合法の場合)とが存在する。上述したように、基材粒子としては、ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格を有するものが好ましく、かかる基材粒子を得るには、基材粒子の製造方法として、ラジカル重合性基を有する架橋性シラン単量体を加水分解、縮合反応を行って重合性ポリシロキサン粒子を調製した後、該重合性ポリシロキサン粒子に前記ビニル基含有単量体等を吸収させ重合する方法が好ましく採用できる。
【0033】
本発明の導電性微粒子は、前記基材粒子の表面に形成された少なくとも一層の導電性金属層として、ニッケル又はニッケル合金から形成されたニッケル系金属層を有する。ここで、ニッケル合金を構成するニッケル以外の金属としては、Niと共析し合金皮膜を形成し得るものであれば良い。このような金属としては、例えは、リン(P)、ホウ素(B)、タングステン(W)、コバルト(Co)等が挙げられる。これらの金属はニッケル合金において1種のみを含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよい。ニッケル合金におけるニッケルの含有率は50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0034】
本発明において、前記ニッケル系金属層は、前記基材粒子の平均粒子径に対して所定の比率を満足する膜厚とすることが重要である。具体的には、ニッケル系金属層の膜厚(d)と基材粒子の平均粒子径(D)が0.0045≦d/D≦0.014を満たさなければならない。これにより、上述したように基材粒子の平均粒子径が1.0μm〜2.5μmと非常に小さいにも拘わらず、電気的接続に供した際に抵抗を低く抑えることができ、しかもショートの発生も回避することができる接続信頼性の高い導電性微粒子となる。d/Dの値が0.0045よりも小さいと、導電性金属層の厚みが不十分となり、電気的接続に供した際に抵抗値が高くなる虞があり、一方、0.014よりも大きいと、基材粒子とニッケル系金属層との密着安定性が低くなり、やはり抵抗値が高くなる虞がある。前記d/Dの値は、好ましくは0.005<d/D<0.014の範囲、より好ましくは0.008<d/D<0.0135の範囲、さらに好ましくは0.01<d/D<0.013の範囲である。
【0035】
前記ニッケル系金属層の膜厚(d)は、基材粒子の平均粒子径(D)に応じてd/Dの値が上記範囲を満足するように設定すればよいが、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.010μm以上であり、好ましくは0.036μm以下、より好ましくは0.030μm以下である。ニッケル系金属層が0.005μm以上であれば、電気的接続に供した際に十分に低い抵抗を実現させることができ、0.036μm以下であれば、基材粒子の平均粒子径が2.5μm以下と微細であっても、その変形に追随して変形し得るとともに、異方性導電材料とする際の分散時の割れや剥がれも回避でき、結果として電気的接続に供した際の接続抵抗をより低くすることが可能になる。なお、ニッケル系金属層は異なる組成の層を複数設けてもよく、この場合、複数のニッケル系金属層の合計の膜厚を前記範囲とすればよい。
【0036】
前記ニッケル系金属層を所定の膜厚に制御するには、ニッケル系金属層を形成するにあたり、例えば、後述する無電解めっき処理を行う際の基材粒子濃度(無電解めっき処理の処理液に対する基材粒子の量)、無電解めっき処理で使用する無電解めっき液の濃度、あるいは無電解めっき処理の処理液のpHや温度、無電解めっき処理時間等を調整すればよい。具体的には、基材粒子濃度を高くしたり、無電解めっき液の濃度を低くしたり、或いは無電解めっき処理時間を短くすると、ニッケル系金属層の膜厚は薄くなる。
【0037】
前記ニッケル系金属層の膜厚は、例えば、以下のような方法で求めることができる。
例えば、導電性金属層を構成する金属種がニッケル又はニッケル合金のみからなる場合には、基材粒子の平均粒子径X(μm)と導電性微粒子の平均粒子径Y(μm)とを測定し、下記式(1)に基づき導電性金属層全体の膜厚を求め、これをニッケル系金属層の膜厚とすればよい。
導電性金属層膜厚(μm)=(Y−X)/2 (1)
この場合、基材粒子及び導電性微粒子の平均分子量X、Yとしては、フロー式粒子像解析装置(例えば、シスメックス社製「FPIA(登録商標)−3000」など)を用い1000個以上(好ましくは3000個以上)の粒子について測定した個数平均粒子径を採用することが好ましい。
導電性微粒子からニッケル系金属層の膜厚を求める場合、導電性微粒子から導電性金属層(ニッケル系金属層)を溶解等により除去して基材粒子を得る必要があるが、例えば、溶解除去方法としては、導電性微粒子1gに20%食塩水を10g加えて超音波分散を行った後、69%硝酸を1g添加して80℃で攪拌を行うなどして、ニッケル系金属層を完全に溶解させる方法を採用することが好ましい。
【0038】
一方、導電性金属層が、基材粒子の表面に隣接して形成されたニッケル又はニッケル合金からなる層と、さらにその表面に形成されたニッケル又はニッケル合金以外の金属からなる層(以下「その他の金属層」と称する)を有する2層構造からなる場合には、まず、導電性微粒子1gに20%食塩水を10g加えて超音波分散を行った後、69%硝酸を1g添加して80℃で攪拌を行うなどして、全ての金属層を完全に溶解させ、溶解させた液中におけるニッケル及びニッケル合金以外の金属の濃度(すなわち、その他の金属層を構成する金属の合計濃度)をICP発光分析装置を用いて分析し、導電性微粒子に占めるその他の金属層の含有率W(質量%)を求める。次いで、その他の金属層の含有率W(質量%)と、導電性微粒子の個数平均粒子径Y(μm)と、導電性微粒子の比重ρ(g/cm)と、その他の金属層の比重ρ(g/cm)とから、下記式(2)に基づき、その他の金属層の膜厚M(μm)を求める。
100×〔Y−(Y−2M)〕×ρ=W×Y×ρ (2)
Y:導電性微粒子の個数平均粒子径(μm)
M:その他の金属層の膜厚(μm)
:導電性微粒子に占めるその他の金属層の含有率(質量%)
ρ:その他の金属層の比重(g/cm
ρ:導電性微粒子の比重(g/cm
そして、得られたその他の金属層の膜厚M(μm)の値と、基材粒子の個数平均粒子径X(μm)の値と、導電性微粒子の個数平均粒子径Y(μm)の値とから下記式(3)によりニッケル層(ニッケル系金属層)の膜厚を算出することができる。
ニッケル層(ニッケル系金属層)の膜厚(μm)=〔(Y−X)/2〕−M (3)
【0039】
前記式(2)と前記式(3)における基材粒子の個数平均粒子径X及び導電性微粒子の個数平均分子量Yは、フロー式粒子像解析装置(例えば、シスメックス社製「FPIA(登録商標)−3000」など)を用い1000個以上(好ましくは3000個以上)の粒子について測定した個数平均粒子径を採用することが好ましい。また、前記式(2)における導電性微粒子の比重ρは、真比重計(例えば「ウルトラピクノメーター1000」ユアサアイオニクス社製など)を用いて測定するなどして求めることができる。また、前記式(2)におけるその他の金属層の比重ρは、例えば化学便覧(日本化学会編)などを参照するなどして当該金属層を構成する金属の既知の比重値(例えば、その他の金属が金の場合ρ=19.3g/cm、銀の場合ρ=10.49g/cm、銅の場合ρ=8.92g/cm、パラジウムの場合ρ=12.03g/cmなど)を用いればよい。
【0040】
なお、上述したいずれの場合も、ニッケル系金属層の膜厚を求める際に使用する基材粒子の個数平均粒子径Xとしては、導電性金属層を形成する前の基材粒子を用いて予め測定した値を採用してもよいし、例えば導電性微粒子1gに20%食塩水を10g加えて超音波分散を行った後69%硝酸を1g添加して80℃で攪拌するなどして、導電性微粒子における全ての導電性金属層を完全に溶解させ、得られた溶解処理後の粒子を用いて測定した値を採用してもよい。通常、前者の値と後者の値は実質的に一致する。
【0041】
前記ニッケル系金属層は、平滑で突起部を有しないことが好ましい。具体的には、ニッケル系金属層表面からの高さが0.05μm以上である突起部の数が、導電性微粒子1個あたり10個未満であることが好ましく、さらに5個未満であることが好ましく、特に2個未満であることが好ましい。ここで突起部は、ニッケル系金属層と同様のニッケル又はニッケル合金で構成されており、ニッケル系金属層を構成するニッケル又はニッケル合金と突起を形成するするニッケル又はニッケル合金とが一体となっている部分を意味するものとする。ニッケル系金属層と同様のニッケル又はニッケル合金で一体となっている突起部が存在すると、該突起部がクラックの基点となって金属層が割れ、電気的接続の際の抵抗値が高くなる虞がある。
【0042】
なお、前記ニッケル系金属層には、本発明の効果を損なわない範囲で、ニッケルやニッケル合金以外の他の金属成分からなる相が含まれていてもよい。他の金属成分からなる相としては、例えば、ニッケル系金属層中に他の金属成分が粒状で分散した形態が挙げられる。他の金属成分としては、例えば、上述したニッケル合金を構成するニッケル以外の金属が挙げられる。このようにニッケル系金属層が他の金属成分からなる相を有する場合、ニッケル系金属層におけるニッケル系金属(ニッケル又はニッケル合金)の含有率は、ニッケル系金属層100質量%に対して90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
【0043】
前記導電性金属層は、単層でも多層(二層以上)であってもよい。導電性金属層が多層である場合、ニッケル又はニッケル合金以外の金属からなる層(以下「その他の金属層」と称する)を有していてもよい。導電性金属層がその他の金属層を含む多層で構成される場合、基材粒子と導電性金属層との密着性等の観点から、ニッケル系金属層を最も内側(換言すれば基材粒子の表面)に配するようにすることが好ましい。その他の金属層を構成する金属としては、例えば、銅、銀、錫、金、パラジウム等の金属のほか、これらの金属から選択される1種以上の金属を含む合金が挙げられる。これらの中でも、金またはパラジウムが導電性微粒子表面の酸化を抑えるとともに、電気的接続に供した際の抵抗を下げる効果が得られる点で好ましい。このようにその他の金属層が形成される場合、ニッケル系金属層とその他の金属層の膜厚の総和は、0.008μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.015μm以上であり、0.10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.09μm以下、さらに好ましくは0.085μm以下である。勿論、その他の金属層が形成される場合においても、ニッケル系金属層のみの膜厚(d)と基材粒子の平均粒子径(D)は、上述したd/Dの範囲を満足することが重要である。
【0044】
導電性金属層(上記ニッケル系金属層やその他の金属層)の形成方法は、特に限定されず、例えば、基材粒子表面に無電解めっき法、電解めっき法等によってめっきを施す方法;基材粒子表面に真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリング等の物理的蒸着方法により導電性金属層を形成する方法;のような従来公知の方法を採用することができる。これらの中でも特に、無電解めっき法が、大掛かりな装置を必要とせず容易に導電性金属層を形成できる点で好ましい。以下、無電解めっき法による導電性金属層の形成について詳細に説明する。
【0045】
無電解めっき法により導電性金属層を形成する際には、エッチング工程、触媒化工程を経た後、無電解めっき工程を行うことが好ましい。
前記エッチング処理工程では、例えばクロム酸、無水クロム酸−硫酸混合液、過マンガン酸等の酸化剤;塩酸、硫酸、フッ酸、硝酸等の強酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ溶液;等を用いて、基材粒子の表面に微小な凹凸を形成させる。これにより、凹凸のアンカー効果によって後述する無電解めっき工程後の基材粒子と導電性金属層との密着性の向上を図ることができる。
【0046】
前記触媒化工程では、基材粒子の表面にめっき析出の基点となる触媒層(パラジウム触媒などの層)を形成する。触媒層を形成する方法は特に限定されず、無電解めっき用として市販されている触媒化試薬を用いて行えばよい。例えば、二塩化パラジウムと二塩化スズとを含む溶液を触媒化試薬とし、これに基材粒子を浸漬することにより基材粒子表面に触媒金属を吸着させ、その後、硫酸や塩酸などの酸や水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液で前記パラジウムイオンを還元することにより、基材粒子表面にパラジウム核を析出させる方法(キャタリスト−アクセレレーション法)や、スズイオン(Sn2+)を含有する溶液(二塩化スズ溶液など)に基材粒子を接触させることによりスズイオンを基材粒子表面に吸着させた後、パラジウムイオン(Pd2+)を含有する溶液(二塩化パラジウム溶液など)に浸漬させることにより、基材粒子表面にパラジウム核を析出させる方法(センシタイジング−アクチベーティング法)等が好ましく採用される。なお、前記スズイオン含有溶液やパラジウムイオン含有溶液に基材粒子を浸漬する際の液温及び浸漬時間は、各イオンが基材粒子に充分に吸着できる範囲で適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、液温は10℃〜60℃が好ましく、浸漬時間は1分〜120分が好ましい。
【0047】
前記無電解めっき工程では、前記触媒化工程にて触媒層(例えばパラジウム核)を形成した基材粒子(以下「触媒化基材粒子」と称する)表面に、無電解めっき処理を施して導電性金属層を形成する。無電解めっき処理は、還元剤と所望の金属塩を溶解しためっき液中に触媒化基材粒子を浸漬することにより、触媒を起点として、めっき液中の金属イオンを還元剤で還元し、基材粒子表面に所望の金属を析出させて、導電性金属層を形成するものである。
【0048】
前記無電解めっき工程では、まず、触媒化基材粒子を水に十分に分散させ、触媒化基材粒子の水性スラリーを調製する。ここで、安定した導電特性を発現させるためには、触媒化基材粒子をめっき処理を行う水性媒体に十分に分散させておくことが好ましい。触媒化基材粒子が凝集した状態で無電解めっき処理を行うと、基材粒子同士の接触面に未処理面(導電性金属層が存在しない面)が生じるからである。触媒化基材粒子を水性媒体に分散させる手段としては、例えば、通常攪拌装置、高速攪拌装置、コロイドミル又はホモジナイザーのような剪断分散装置など従来公知の分散手段を採用すればよく、必要に応じて超音波や分散剤(界面活性剤等)を併用してもよい。
【0049】
次に、所望の導電性金属の塩、還元剤、錯化剤及び各種添加剤等を含有する無電解めっき液に、上記で調製した触媒化基材粒子の水性スラリーを添加することにより、無電解めっき反応を生じさせる。無電解めっき反応は、触媒化基材粒子の水性スラリーを添加すると速やかに開始する。また、この反応には水素ガスの発生を伴うので、水素ガスの発生が認められなくなった時点をもって無電解めっき反応を終了すればよい。無電解めっき反応の終了後、反応系内から導電性金属層が形成された基材粒子を取り出し、必要に応じて洗浄、乾燥を施すことにより、導電性微粒子を得ることができる。
【0050】
前記無電解めっき液に含有させる導電性金属塩としては、導電性金属層を構成する金属として例示した金属の塩化物、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。例えば、導電性金属層としてニッケル層を形成する場合には、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等のニッケル塩等を無電解めっき液に含有させればよい。導電性金属塩は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。無電解めっき液中における導電性金属塩の濃度は、所望の膜厚の導電性金属層が形成されるように、基材粒子のサイズ(表面積)等を考慮して適宜決定すればよい。
【0051】
前記無電解めっき液に含有させる還元剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、テトラヒドロホウ酸カリウム、グリオキシル酸、ヒドラジン等が挙げられる。還元剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0052】
前記無電解めっき液に含有させる錯化剤としては、導電性金属のイオンに対して錯化作用のある化合物が使用できる。例えば、ニッケルに対して錯化作用のある化合物としては、クエン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸またはそれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩などのカルボン酸(塩);グリシン等のアミノ酸;エチレンジアミン、アルキルアミン等のアミン酸;その他のアンモニウム、EDTA、ピロリン酸(塩);などが挙げられる。錯化剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
前記無電解めっき液のpHは、限定されないが、好ましくは4〜14である。
【0053】
無電解めっき工程は、必要に応じて繰返し行ってもよい。例えば金属種の異なる無電解めっき液を用いて無電解めっき工程を繰返すことにより、基材粒子の表面に異種金属を幾層にも被覆できる。具体的には、基材粒子にニッケルめっきを施してニッケル被覆粒子を得た後、該ニッケル被覆粒子をさらに無電解金めっき液に投入して金置換めっきを行うことにより、最外層が金層で覆われ、その内側にニッケル層を有する導電性微粒子が得られる。
【0054】
なお、前記導電性金属層は、基材粒子表面の少なくとも一部を被覆していればよいが、導電性金属層の表面には、実質的な割れや、導電性金属層が形成されていない面が存在しないことが好ましい。ここで、「実質的な割れや、導電性金属層が形成されていない面」とは、電子顕微鏡(倍率1000倍)を用いて任意の10000個の導電性粒子の表面を観察したときに、導電性金属層の割れ、および、基材粒子表面の露出が、実質的に目視で観察されないことを意味する。
【0055】
前記導電性金属層の最表面には、防錆処理が施されていることが好ましい。防錆処理の方法としては特に限定されず、例えば、導電性金属層を形成した後に防食剤を付与する方法が挙げられる。防食材としては、例えば、リン酸アルミニウム、リン酸ナトリウム等のリン酸系防食材;クロム酸カリウム、無水クロム酸等のクロム酸系防食材;有機樹脂;等が挙げられる。また、前記導電性金属層の最表面には、酸化防止剤を付与してもよい。前記酸化防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物、イミダゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン、2−メルカプトピリミジン、インドール、ピロール、アデニン、チオバルビツル酸、チオウラシル、ロダニン、チオゾリジンチオン、1−フェニル−2−テトラゾリン−5−チオン、2−メルカプトピリジン等の窒素含有化合物等が挙げられる。これらの防食剤や酸化防止剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
本発明は、微細な導電性微粒子を電気的接続に供した際の接続信頼性を高めること(具体的には、初期抵抗を低く抑え、ショートの発生を回避すること)を目的とするものである。したがって、本発明において導電性微粒子自体の平均粒子径は、個数平均粒子径で、1.1μm以上、好ましくは1.2μm以上、より好ましくは1.3μm以上、さらに好ましくは1.4μm以上であり、2.8μm以下、好ましくは2.6μm以下、より好ましくは2.4μm以下、さらに好ましくは2.2μm以下である。個数平均粒子径がこの範囲内であれば、微細化、狭小化された電極や配線を対象とした電気的接続においても好適に使用できる。なお、導電性微粒子の個数平均粒子径は、例えば、実施例(ニッケル系金属層の膜厚の測定)で後述するようにフロー式粒子像解析装置を用いて求めることができる。
【0057】
本発明の導電性微粒子は、表面の少なくとも一部に絶縁性樹脂層を有することが好ましい。つまり、前記導電性金属層の表面にさらに絶縁性樹脂層を設けた態様が好ましいのである。このように表面の導電性金属層にさらに絶縁性樹脂層が積層されていると、高密度回路の形成時や端子接続時などに生じやすい横導通を防ぐことができる。
【0058】
前記絶縁性樹脂層としては、導電性微粒子の粒子間における絶縁性が確保でき、一定の圧力及び/又は加熱により容易にその絶縁性樹脂層が崩壊あるいは剥離するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンなどのポリオレフィン類;ポリメチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート重合体および共重合体;ポリスチレン;等の熱可塑性樹脂やその架橋物;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂およびこれらの混合物;等が挙げられる。但し、基材粒子に比べて絶縁性樹脂層が硬過ぎる場合には、絶縁性樹脂層の破壊よりも先に基材粒子自体が破壊してしまうおそれがある。したがって、絶縁性樹脂層には、未架橋または比較的架橋度の低い樹脂を用いることが好ましい。
【0059】
前記絶縁性樹脂層は、単層であっても、複数の層からなるものであってもよい。例えば、単一又は複数の皮膜状の層が形成されていてもよいし、絶縁性を有する粒状、球状、塊状、鱗片状その他の形状の粒子を導電性金属層の表面に付着させた層であってもよいし、さらには、導電性金属層の表面を化学修飾することにより形成された層であってもよく、または、これらが組み合わされたものであってもよい。絶縁性樹脂層の厚さは0.01μm〜1μmが好ましく、より好ましくは0.02μm以上、0.5μm以下、さらに好ましくは0.03μm以上、0.4μm以下である。絶縁性樹脂層の厚さが前記範囲内であれば、導電性粒子による導通特性を良好に維持しつつ、粒子間の電気絶縁性が良好となる。
【0060】
(異方性導電材料)
本発明の異方性導電材料は、上記本発明の導電性微粒子がバインダー樹脂に分散してなる。異方性導電材料の形態は特に限定されず、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インクなど様々な形態が挙げられる。これらの異方性導電材料を相対向する基材同士や電極端子間に設けることにより、良好な電気的接続が可能になる。なお、本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電材料には、液晶表示素子用導通材料(導通スペーサーおよびその組成物)も含まれる。
【0061】
前記バインダー樹脂としては、絶縁性の樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などの熱可塑性樹脂;グリシジル基を有するモノマーやオリゴマーおよびイソシアネートなどの硬化剤との反応により硬化する硬化性樹脂組成物;光や熱により硬化する硬化性樹脂組成物;等が挙げられる。
なお、本発明の異方性導電材料は、前記バインダー樹脂中に本発明の導電性微粒子を分散させ、所望の形態とすることで得られるが、例えば、バインダー樹脂と導電性微粒子とを別々に使用し、接続しようとする基材間や電極端子間に導電性微粒子をバインダー樹脂とともに存在させることによって接続してもかまわない。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0063】
なお、実施例及び比較例における各種測定は以下の方法で行なった。
<基材粒子の平均粒子径及び変動係数(CV値)>
基材粒子0.005部に、乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製「ハイテノール(登録商標)N−08」)の1%水溶液20部を加え、超音波で10分間分散させた後、粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径を測定し、個数平均粒子径、粒子径の標準偏差を求め、個数平均粒子径(μm)を平均粒子径とするとともに、下記式に従って粒子径のCV値(変動係数)を算出した。このようにして得られた値を基材粒子の平均粒子径(D)として表1に示した。
粒子の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/個数平均粒子径)
【0064】
<ニッケル層(ニッケル系金属層)の膜厚>
導電性微粒子0.05部に、乳化剤であるポリオキシエチレンオレイルエーテル(「エマルゲン430」花王株式会社製)の1.4%水溶液17.5部を加え、超音波で10分間分散させた後、フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて、導電性微粒子3000個の個数平均粒子径Y(μm)を測定した。他方、導電性微粒子1gに20%食塩水を10g加えて超音波分散を行った後69%硝酸を1g添加して80℃で攪拌し、導電性微粒子におけるニッケル系金属層を完全に溶解させた。この基材粒子(溶解処理後の基材粒子)0.05部に、乳化剤であるポリオキシエチレンオレイルエーテル(「エマルゲン430」花王株式会社製)の1.4%水溶液17.5部を加え、超音波で10分間分散させた後、基材粒子3000個の個数平均粒子径X(μm)を測定した。そして、下記式に従ってニッケル系金属層の膜厚を算出した。このようにして得られた値を導電性微粒子におけるニッケル層膜厚(d)として表1に示した。
ニッケル系金属層膜厚(μm)=(Y−X)/2
【0065】
(合成例1(基材粒子の製造))
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水1800.0部と、25%アンモニア水24.0部、メタノール555.0部を入れ、攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン100.0部及びメタノール45.0部の混合液を添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、メタクリロイル基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を調製した。このポリシロキサン粒子の個数粒子平均径は1.25μmであった。
【0066】
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製「ハイテノール(登録商標)NF−08」)の20%水溶液10.0部をイオン交換水400.0部で溶解した溶液に、スチレン200.0部及びジビニルベンゼン(新日鐡化学社製「DVB960」)200.0部と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)4.8部とを加え、乳化分散させて単量体成分の乳化液を調製した。この乳化液を2時間攪拌後、得られた乳化液を、上記ポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から1時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体を吸収して肥大化していることが確認された。
【0067】
次いで、上記混合液に、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の20%水溶液96.0部、イオン交換水500.0部を加え、窒素雰囲気下で65℃まで昇温させて、65℃で2時間保持し、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下280℃で1時間焼成処理して重合体粒子を得、これを基材粒子(1)とした。この基材粒子(1)の個数平均粒子径及び変動係数(CV値)は表1に示すとおりであった。
【0068】
(合成例2〜6(基材粒子の製造))
合成例1においてポリシロキサン粒子の乳濁液を調製する際の条件を変更して、個数平均粒子径が異なる種々のポリシロキサン粒子の乳濁液を得、該乳濁液を用いたこと以外は、合成例1と同様にして、基材粒子(2)〜(6)を製造した。各基材粒子(2)〜(6)の個数平均粒子径及び変動係数(CV値)は表1に示すとおりであった。
【0069】
(実施例1)
基材粒子(1)に水酸化ナトリウムによるエッチング処理を施した後、二塩化スズ溶液に接触させることによりセンシタイジングし、次いで二塩化パラジウム溶液に浸漬させることによりアクチベーティングする方法(センシタイジング−アクチベーション法)によって、パラジウム核を形成させた。
このようにしてパラジウム核を形成させた基材粒子10部をイオン交換水400部に添加し、超音波分散処理を行った後、70℃の温浴で基材粒子懸濁液を加温した。このように懸濁液を加温した状態で、別途70℃に加温した無電解めっき液(日本カニゼン(株)製「シューマーS680」)600部を加えることにより、無電解ニッケルめっき反応を生じさせた。水素ガスの発生が終了したことを確認した後、固液分離を行い、イオン交換水、メタノールの順で洗浄した後、100℃で2時間真空乾燥して、ニッケルめっきを施した導電性微粒子(1)を得た。得られた導電性微粒子(1)のニッケル層(ニッケル系金属層)の膜厚は表1に示すとおりであった。
得られた導電性微粒子について、下記の方法で初期抵抗及びショートの有無を評価した。結果を表1に示す。
【0070】
<初期抵抗およびショートの有無>
導電性微粒子1質量部に、バインダー樹脂としてのエポキシ樹脂(三菱化学製「JER828」)100質量部と、硬化剤(三新化学社製「サンエイド(登録商標)SI−150」)2質量部と、トルエン100質量部とを加え、さらにφ1mmのジルコニアビーズ50質量部を加えて、ステンレス製の2枚攪拌羽根を用いて300rpmで10分間攪拌して分散させ、得られたペースト状組成物をバーコーターにて剥離処理を施したPETフィルム上に塗布して乾燥させることにより異方性導電フィルムを得た。
【0071】
得られた異方性導電フィルムを、抵抗測定用の線を有した全面アルミ蒸着ガラス基板と30μmピッチに銅パターンを形成したポリイミドフィルム基板との間に挟みこみ、5MPa、190℃の圧着条件で熱圧着した後、電極間の初期抵抗値を測定した。初期抵抗値が3Ω未満の場合を「◎」、3Ω以上5Ω未満の場合を「○」、5Ω以上の場合を「×」と評価した。また、このときにショート発生の有無も併せて確認した。
【0072】
(実施例2〜6及び比較例1〜4)
基材粒子(1)に代えて表1に示す基材粒子を用い、ニッケル層の膜厚が表1に示す膜厚となるように無電解めっき液の使用量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ニッケルめっきを施した導電性微粒子を得た。
得られた導電性微粒子について、実施例1と同様の方法で初期抵抗及びショートの有無を評価した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から明らかなように、実施例1〜6の導電性微粒子は、基材粒子の平均粒子径が本発明の範囲であり、かつニッケル層の膜厚d/基材粒子の平均粒子径Dの値が本発明の範囲であるので、いずれも初期抵抗が充分に低くショートも発生しない。これに対して、ニッケル層の膜厚d/基材粒子の平均粒子径Dの値が本発明の範囲を外れている比較例1、2の導電性微粒子は、初期抵抗が高くなることが分かる。また、基材粒子の平均粒子径が本発明の範囲よりも大きい比較例3の導電性微粒子は、d/Dの値が本発明の範囲であってもショートが発生するという問題が生じ、逆に基材粒子の平均粒子径が本発明の範囲よりも小さい比較例4の導電性微粒子は、d/Dの値が本発明の範囲であっても初期抵抗が高くなることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の導電性微粒子は、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等の異方性導電材料に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなる基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された少なくとも一層の導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、
前記導電性金属層の少なくとも一層として、ニッケル又はニッケル合金から形成されたニッケル系金属層を有し、
前記基材粒子の平均粒子径が1.0μm〜2.5μmであり、
前記ニッケル系金属層の膜厚(d)と前記基材粒子の平均粒子径(D)が0.0045≦d/D≦0.014を満たすことを特徴とする導電性微粒子。
【請求項2】
導電性微粒子自体の平均粒子径が1.1μm〜2.8μmである請求項1に記載の導電性微粒子。
【請求項3】
前記ニッケル系金属層の膜厚が0.010μm〜0.030μmである請求項1又は2に記載の導電性微粒子。
【請求項4】
表面の少なくとも一部に絶縁性樹脂層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の導電性微粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の導電性微粒子がバインダー樹脂に分散してなることを特徴とする異方性導電材料。

【公開番号】特開2012−156066(P2012−156066A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15665(P2011−15665)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】