説明

導電性微粒子

【課題】導電性が良く、且つ、基材粒子に対する導電性金属層の密着性に優れた導電性微粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有し、前記導電性金属層として、前記基材粒子表面に直接形成されたニッケルメッキ層を含む導電性微粒子であって、任意に選択した10個の粒子について、前記ニッケルメッキ層の厚さ方向断面を、走査型電子顕微鏡を使用し100000倍の拡大倍率で観察し、長さ500nmのニッケルメッキ層内縁と、その両端から径方向外方に向けて延出する2本の直線と、外周縁から形成される領域を、任意に3つ選択し、少なくとも1つの領域において、破断面に表れる粒界が形成する長径10〜70nmのうろこ形状が、断面積10000nm2当りに3個以上存在する粒子が6個以上存在することを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性微粒子に関するものであり、基材粒子に対する導電性金属層の密着性に優れた導電性微粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の組み立てにおいて、対向する多数の電極や配線間の電気的接続を行うために、異方性導電材料による接続方式が採用されている。異方性導電材料は、導電性微粒子をバインダー樹脂等に混合した材料であり、例えば異方性導電ペースト(ACP)、異方性導電フィルム(ACF)、異方性導電インク、異方性導電シート等がある。また、異方性導電材料に用いられる導電性微粒子としては、金属粒子や、基材となる樹脂粒子の表面を導電性金属層で被覆したものが使用されている。
【0003】
このような導電性微粒子として、例えば、有機質又は無機質の基材粒子の表面に、無電解メッキにより、微細な金属粒子を濃密で実質的な連続被膜として形成した導電性微粒子(特許文献1参照)が提案されている。また、高温の酸化性雰囲気に曝された場合においても導電性を維持できるものとして、基材粒子表面に形成されたニッケル皮膜中の粒界が、ニッケル皮膜の厚さ方向に配向している導電性微粒子(特許文献2(段落[0007]、[0063])参照)が提案されている。しかし、特許文献1、2に記載された導電性微粒子では、基材粒子に対する金属層の密着性について、検討の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−242782号公報
【特許文献2】特開2004−131801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、金属層が微細な金属粒子から形成されている場合、導電性微粒子を用いて加圧接続した際に、金属層が破断すると、微細な金属微粒子が脱落してしまう。この場合、脱落した金属微粒子によって、リークが発生し易くなり、接続信頼性に劣ることとなる。特許文献2のように厚さ方向に配向する結晶粒界を有する場合、導電性には優れるものの、基材粒子に対する金属層の密着性が低下する傾向がある。この場合、導電性微粒子を用いて加圧接続した際に、金属層が剥落し易く、剥落した金属層により、リークが発生し易くなって、接続信頼性に劣ることとなる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、導電性が良好であり、且つ、基材粒子に対する導電性金属層の密着性に優れた導電性微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することができた本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有し、前記導電性金属層として、前記基材粒子表面に直接形成されたニッケルメッキ層を含む導電性微粒子であって、任意に選択した10個の粒子について、前記ニッケルメッキ層の厚さ方向断面を、走査型電子顕微鏡を使用し100000倍の拡大倍率で観察し、長さ500nmのニッケルメッキ層内縁と、その両端から径方向外方に向けて延出する2本の直線と、外周縁から形成される領域を、任意に3つ選択し、少なくとも1つの領域において、破断面に表れる粒界が形成する長径10〜70nmのうろこ形状が、断面積10000nm2当りに3個以上存在する粒子が6個以上存在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の導電性微粒子は、基材粒子に対する導電性金属層の密着性が優れたものである。本発明の導電性微粒子は、異方性導電材料を調製する際に高いせん断力が付加された場合や、加圧接続によって粒子が変形した場合でも、導電性金属層が剥落しにくい。そのため、剥落した導電性金属層に起因するリークが抑制され、接続安定性に優れた異方性導電材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】製造例1の導電性微粒子における導電性金属層の破断面を示すSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.導電性微粒子
本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有し、前記導電性金属層が、前記基材粒子表面に直接形成されたニッケルメッキ層(以下、「下地ニッケル層」と称する場合がある。)を含んでいる。そして、この下地ニッケル層は、その破断面に表れる粒界が、単位面積当りに所定個数のうろこ形状を形成していることを特徴とする。破断面に現れる粒界がうろこ形状を形成するものが、導電性及び密着性に優れる理由は必ずしも明らかでないが、粒界が同一方向に配向せずに分散しており、また、粒界が形成するうろこの大きさや形状が不規則であるために、外力が負荷されたとき衝撃が分散されるためと考えられる。なお、粒界とは、破断面に認められる線を意味する。
【0011】
本発明において、「うろこ形状」とは、輪郭(外周)の一部に、連続した略円弧からなり外周縁(輪郭)全長の30%以上の長さを有する曲線部を含む形状であって、長径が10nm以上70nm以下、且つ、アスペクト比が0.5以上1.0未満である形状をいう。
【0012】
前記曲線部は、連続した略円弧状であり、うろこ形状の外部に向かって凸の曲線であればよい。このような曲線部としては、真円の円弧、楕円弧、放物線の一部からなる曲線や、これらの曲線が複数組み合わされた形態等が挙げられる。
なお、輪郭における前記曲線部以外の部分、すなわち、前記曲線部の両端を結ぶ粒界の態様は特に制限されない。具体的には、一様な直線である形態;2本以上の直線が任意の角度で稜角をなして繋がった形態;直線と曲線(上記の曲線部に含まれないもの)とが交互につながった形態;等が挙げられる。うろこ形状としては、例えば、略円形状、略半円形状、略楕円形状、略半楕円形状等;三角形の1辺が前記曲線部である形態、四角形の1辺が前記曲線部である形態等の多角形の少なくとも1辺が前記曲線部となっている形態が挙げられる。これらの中でも、略円形状以外が好ましい。
【0013】
前記アスペクト比は、うろこ形状の長径と短径との比(短径/長径)の平均である。前記長径は、うろこ形状の外形(粒界)において、最も径が長くなる部分の長さである。前記短径は、前記長径と直交する垂線の中で、うろこ形状の外周(粒界)との2つの交点間距離が、最長となる径の長さである。
【0014】
本発明においては、下地ニッケル層破断面に表れる粒界が前記うろこ形状を形成することが特徴である。すなわち、破断面において、うろこ形状の表面は、平坦であることが好ましい。また、破断面は、大小の瘤が形成されるようなものでないことが好ましく、凹凸が少ないものが好ましい。破断面にみられる粒界の配向性については特に限定されず、特定方向に配向していても、不規則であってもよい。また、配向した部分と配向していない部分が混在していてもよい。なお、本発明では、破断面にうろこ形状が形成されていれば良く、下地ニッケル層を形成するニッケルの結晶状態は特に限定されない。
【0015】
本発明において、単位面積当りに所定個数のうろこ形状が形成されているか否かは以下のようにして判断する。具体的には、1個の粒子について、前記下地ニッケル層の厚さ方向断面を、走査型電子顕微鏡を使用し100000倍の拡大倍率で観察する。このとき、長さ500nmの下地ニッケル層内周縁と、その両端から径方向外方に向けて延出する2本の直線と、下地ニッケル層外周縁から形成される領域を、任意に3つ選択する。詳細には、下地ニッケル層内周縁に沿った長さ500nmの曲線、この曲線の両末端からニッケルメッキ粒子(導電性微粒子)の径方向外方に延びる2本の直線、及び、前記2本の直線と下地ニッケル層外周縁との交点を結び、下地ニッケル層の外周縁に沿った曲線によって囲まれる範囲を1つの領域とし、それぞれの領域が重ならないように、3つの領域を無作為に選択する。
【0016】
そして、各領域について、下地ニッケル層の破断面に表れる粒界が形成するうろこ形状を全て数え、断面積10000nm2当りに換算する。そして、少なくとも1領域において、破断面の粒界が形成するうろこ形状が、断面積10000nm2当りに3個以上存在している場合、その粒子は所定個数のうろこ形状が形成されていると判断する。前記導電性微粒子は、少なくとも1領域において、破断面の粒界が形成するうろこ形状が、断面積10000nm2当りに3.2個以上存在していることが好ましく、より好ましくは3.4個以上であり、100個以下が好ましく、より好ましくは50個以下、さらに好ましくは30個以下である。前記個数が3個未満では、導電性金属層の基材粒子に対する密着性が不十分となる。一方、前記個数が100個を超えると、うろこ状が微細になるため、導電性微粒子の導電性が不十分となる傾向がある。なお、前記導電性微粒子は、上記の観察において、2領域において所定個数のうろこ形状が存在することが好ましく、より好ましくは3領域である。
【0017】
前記観察において、所定個数のうろこ形状が形成されていると判断された粒子は、前記断面積10000nm2当りに存在するうろこ形状の個数は、3領域の平均値が、3.0個以上が好ましく、より好ましくは3.2個以上、さらに好ましくは3.4個以上であり、100個以下が好ましく、より好ましくは50個以下、さらに好ましくは30個以下である。前記個数が3.0個以上であれば、導電性金属層の基材粒子に対する密着性が一層向上し、100個以下であれば、導電性微粒子の導電性がさらに向上する。
【0018】
また、導電性微粒子は、所定個数のうろこ形状が形成されていると判断された全ての粒子(6個以上)について、前記3領域の平均値を平均したとき、3.0個以上が好ましく、より好ましくは3.2個以上、さらに好ましくは3.4個以上であり、100個以下が好ましく、より好ましくは50個以下、さらに好ましくは30個以下である。前記個数が3.0個以上であれば、導電性金属層の基材粒子に対する密着性が一層向上し、100個以下であれば、導電性微粒子の導電性がさらに向上する。
【0019】
また、導電性微粒子は、断面積10000nm2当りに存在するうろこ形状の個数は、観察した30領域(粒子10個について、それぞれ3領域)の平均値が、3.0個以上が好ましく、より好ましくは3.2個以上、さらに好ましくは3.4個以上であり、100個以下が好ましく、より好ましくは50個以下、さらに好ましくは30個以下である。前記個数が3.0個以上であれば、導電性金属層の基材粒子に対する密着性が一層向上し、100個以下であれば、導電性微粒子の導電性がさらに向上する。
【0020】
前記導電性微粒子は、前記破断面に存在するうろこ形状の長径の平均値が、15nm以上が好ましく、より好ましくは20nm以上であり、65nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下である。また、前記導電性微粒子は、前記破断面に存在するうろこ形状のアスペクト比の平均値が、0.5以上が好ましく、より好ましくは0.55以上、さらに好ましくは0.6以上であり、1.0未満が好ましく、より好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下である。
【0021】
前記導電性微粒子は、下地ニッケル層の破断面に表れる粒界が形成するうろこ形状が、単位面積当りに所定個数存在しない粒子を含んでいてもよい。この場合、本発明の効果を得るために、所定個数のうろこ形状が存在する粒子が、個数基準で60%(好ましくは70%)以上である必要がある。つまり、無作為に10個の導電性微粒子を選択して、これらについて下地ニッケル層の厚さ方向断面を観察したとき、少なくとも1領域に所定個数のうろこ形状が存在する粒子が6個以上、好ましくは7個以上、より好ましくは8個以上である。
【0022】
1−1.金属層
前記下地ニッケル層は、ニッケル又はニッケル合金により構成される。ニッケル合金を使用する場合、ニッケル合金中のニッケル含有率は50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
前記ニッケル合金としては、Ni−Au、Ni−Pd、Ni−Pd−Au、Ni−Ag、Ni−P、Ni−B、Ni−Zn、Ni−Sn、Ni−W、Ni−Co、Ni−W、Ni−Ti等が好ましく、これらの中でもNi−Pが好ましい。
【0023】
前記ニッケル合金(Ni−P)中のP濃度は、8質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは13質量%以上であり、20質量%以下が好ましく、より好ましくは18質量%以下である。なお、P濃度は、ニッケル合金中のNiとPとの合計質量に対するP質量の比率である。
【0024】
前記下地ニッケル層の厚さは、0.02μm以上が好ましく、より好ましくは0.05μm以上であり、0.3μm以下が好ましく、より好ましくは0.25μm以下である。前記下地ニッケル層の厚さが0.02μm以上であれば、導電性微粒子の導電性がより良好となり、0.3μm以下であれば、導電性微粒子の密度が高くなり過ぎず、バインダー等に分散した場合の沈降が抑制され、分散安定性が向上する。
【0025】
前記導電性微粒子は、下地ニッケル層の上に、さらに導電性金属層を積層してもよい。
導電性金属層を構成する金属としては特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム及びニッケル−リン、ニッケル−ホウ素等の金属や金属化合物、及び、これらの合金等が挙げられる。これらの中でも、金、ニッケル、パラジウム、銀が導電性に優れており好ましい。また、導電性金属層は、例えば、下地ニッケル層−金層、下地ニッケル層−パラジウム層、下地ニッケル層−パラジウム層−金層、下地ニッケル層−銀層等の組合せが好ましく挙げられる。特に最外層として金層を有することが好ましい。
【0026】
最外層に金層を形成する場合、金層の厚さは、0.005μm以上が好ましく、より好ましくは0.01μm以上であり、0.1μm以下が好ましく、より好ましくは0.06μm以下である。前記金層の厚さが上記範囲内であれは、バインダー等への分散安定性に優れ、且つ、導電性に優れた導電性微粒子が得られる。
【0027】
前記導電性微粒子の導電性金属層の厚さ(下地ニッケル層と他の金属層との合計の厚さ)は、0.02μm以上が好ましく、より好ましくは0.05μm以上であり、0.4μm以下が好ましく、より好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.25μm以下である。前記導電性金属の厚さが上記範囲内であれは、バインダー等への分散安定性に優れ、且つ、導電性に優れた導電性微粒子が得られる。
【0028】
前記導電性微粒子の個数平均粒子径は、1μm以上が好ましく、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、50μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。また前記導電性微粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。
【0029】
1−2.基材粒子
前記基材粒子は、樹脂成分を含む樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子を用いることで、弾性変形特性に優れた導電性微粒子が得られる。基材粒子としては、有機材料のみから構成される樹脂粒子に限られず、有機無機複合材料から構成される樹脂粒子でもよい。
【0030】
前記樹脂粒子を構成する有機材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル樹脂等のビニル重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリカーボネート類;ポリアミド類;ポリイミド類;フェノールホルムアルデヒド樹脂;メラミンホルムアルデヒド樹脂;メラミン−ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂;尿素ホルムアルデヒド樹脂;等が挙げられる。また、有機無機複合材料としては、シリコーン樹脂、前記有機材料とポリシロキサン骨格とを含む材料(例えば、ポリシロキサン骨格とビニル重合体が複合化されてなる材料等)が挙げられる。これらの樹脂粒子を構成する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
前記樹脂粒子を構成する材料の中でも、ビニル重合体及び/又はポリシロキサン骨格を含むものが好ましい。ビニル重合体を含む材料は、ビニル基が重合して形成された有機系骨格を有し、加圧接続時の弾性変形に優れる。また、ポリシロキサン骨格を含む材料は、加圧接続時において被接続体に対する接触圧が優れる。特にポリシロキサン骨格とビニル重合体を複合化した材料は、弾性変形性及び接触圧に優れ、得られる導電性微粒子の接続信頼性がより優れたものとなるため好ましい。
【0032】
前記ビニル重合体はビニル系単量体(ビニル基含有単量体)を重合(ラジカル重合)することによって形成でき、このビニル系単量体はビニル系架橋性単量体とビニル系非架橋性単量体とに分けられる。また前記ポリシロキサン骨格は、シラン系単量体を用いることによって形成でき、このシラン系単量体はシラン系架橋性単量体とシラン系非架橋性単量体とに分けられる。
【0033】
なお、「ビニル基」には、炭素−炭素二重結合のみならず、(メタ)アクリロキシ基、アリル基、イソプロペニル基、ビニルフェニル基、イソプロペニルフェニル基のような官能基と重合性炭素−炭素二重結合から構成される置換基も含まれる。なお、本明細書において「(メタ)アクリロキシ基」、「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル」は、「アクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」や「アクリル及び/又はメタクリル」を示すものとする。
【0034】
前記樹脂粒子を構成する全単量体に占める架橋性単量体(ビニル系架橋性単量体及びシラン系架橋性単量体の合計)の割合は、1質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。架橋性単量体の割合が前記範囲であると、得られる導電性微粒子に十分な耐溶剤性を付与することが可能となる。
【0035】
前記樹脂粒子が、ビニル重合体とポリシロキサン骨格を含む有機無機複合材料からなる場合、ビニル系単量体の使用量は、シラン系単量体100質量部に対して1質量部以上が好ましく、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、5000質量部以下が好ましく、より好ましくは4000質量部以下、さらに好ましくは3000質量部以下である。
【0036】
前記ビニル系架橋性単量体とは、ビニル基を有し架橋構造を形成し得るものであり、具体的には、1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体(単量体(1))、又は、1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基(カルボキシル基、ヒドロキシ基等のプロトン性水素含有基、アルコキシ基等の末端官能基等)を有する単量体(単量体(2))が挙げられる。ただし、単量体(2)によって架橋構造を形成させるには、当該単量体(2)の結合性官能基と反応(結合)可能な相手方単量体の存在が必要である。
【0037】
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(1)(1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体)の例として、例えば、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;アルカンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族炭化水素系架橋剤(好ましくはジビニルベンゼン等のスチレン系多官能モノマー);N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等のヘテロ原子含有架橋剤;等が挙げられる。
これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(多官能(メタ)アクリレート)や、芳香族炭化水素系架橋剤(特にスチレン系多官能モノマー)が好ましい。前記スチレン系多官能モノマーの中では、ジビニルベンゼンのように1分子中に2個のビニル基を有する単量体が好ましい。単量体(1)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシ基含有スチレン類等のヒドロキシ基を有する単量体;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類等のアルコキシ基を有する単量体;等が挙げられる。単量体(2)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記ビニル系非架橋性単量体としては、1分子中に1個のビニル基を有する単量体(単量体(3))か、もしくは相手方単量体が存在しない場合の前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)が挙げられる。
【0040】
前記ビニル系非架橋性単量体のうち前記単量体(3)(1分子中に1個のビニル基を有する単量体)には、(メタ)アクリレート系単官能モノマーやスチレン系単官能モノマーが含まれる。(メタ)アクリレート系単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類が挙げられ、メチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。スチレン系単官能モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等が挙げられ、スチレンが好ましい。単量体(3)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記ビニル系単量体としては、少なくとも前記ビニル系架橋性単量体(1)を含む態様が好ましく、中でも前記ビニル系架橋性単量体(1)と前記ビニル系非架橋性単量体(3)とを含む態様(特に単量体(1)と単量体(3)との共重合体)が好ましい。
【0042】
前記ポリシロキサン骨格は、シラン系単量体を加水分解し縮合反応によりシロキサン結合を生じさせることで形成され、特にシラン系単量体としてシラン系架橋性単量体を用いると、架橋構造を形成し得る。シラン系架橋性単量体により形成される架橋構造としては、有機重合体骨格(例えば、ビニル系重合体骨格)と有機重合体骨格とを架橋するもの(第一の形態);ポリシロキサン骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第二の形態);有機重合体骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第三の形態);が挙げられる。
【0043】
第一の形態(有機重合体間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン等の2つ以上のビニル基を有するシラン化合物が挙げられる。第二の形態(ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン系単量体;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等の3官能性シラン系単量体等が挙げられる。第三の形態(有機重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;が挙げられる。これらのシラン系架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記シラン系非架橋性単量体として、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルシラン等の2官能性シラン系単量体;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルシラン等の1官能性シラン系単量体等が挙げられる。これらのシラン系非架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
特に前記ポリシロキサン骨格は、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合(例えば、(メタ)アクリロイル基等のビニル基)を有する重合性ポリシロキサン由来の骨格であることが好ましい。つまり、ポリシロキサン骨格は、構成成分として、少なくとも前記第三の形態(有機重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体(好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するもの、より好ましくは3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン)を加水分解及び縮合することにより形成されたポリシロキサン骨格であることが好ましい。
【0046】
前記樹脂粒子の製造方法としては、乳化重合、懸濁重合、分散重合、シード重合、ゾルゲルシード重合法等が採用できるが、シード重合やゾルゲルシード重合法は粒度分布を小さくすることができるため好ましい。なお、上記ゾルゲルシード重合法とは、シード重合の一態様であって、特に、シード粒子がゾルゲル法により合成される場合を意味する。例えば、アルコキシシランの加水分解縮合反応により得られたポリシロキサンをシード粒子とする場合等が挙げられる。したがって、シード重合には、シード粒子が、有機材料からなる場合と、有機材料と無機材料とが複合された材料からなる場合(ゾルゲルシード重合法の場合)とが存在する。
【0047】
上述したように、前記樹脂粒子としては、ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格を有するものが好ましい。よって、樹脂粒子の製造方法としては、ラジカル重合性基を有する架橋性シラン単量体を加水分解、縮合反応を行って重合性ポリシロキサン粒子を調製した後、該重合性ポリシロキサン粒子に前記ビニル系有単量体等を吸収させ重合する方法が好ましい。
【0048】
また、前記ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機無機複合粒子の場合、基材粒子に加熱処理を施すことも好ましい態様である。前記加熱処理は空気雰囲気下又は不活性雰囲気下で行うことが好ましく、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で行うことがより好ましい。前記加熱処理の温度は120℃(より好ましくは180℃、さらに好ましくは200℃)以上が好ましく、熱分解温度(より好ましくは350℃、さらに好ましくは330℃)以下が好ましい。前記加熱処理の時間は、0.3時間(より好ましくは0.5時間、さらに好ましくは0.7時間)以上が好ましく、10時間(より好ましくは5.0時間、さらに好ましくは3.0時間)以下が好ましい。
【0049】
前記基材粒子(樹脂粒子)の個数平均粒子径は、1μm以上が好ましく、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、50μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。前記基材粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、20%以下が好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。
【0050】
前記基材粒子は、表面が親水性であるものが好ましい。表面が親水性であれば、無電解メッキ液に対する濡れ性が高く、基材粒子表面に均一に導電性金属層を形成できる。
表面が親水性である基材粒子は、上述した樹脂粒子に親水化処理を施すことにより得られる。前記親水化処理は、特に限定されず、従来公知の方法を採用できる。例えば、クロム酸、無水クロム酸−硫酸混合液、過マンガン酸等の酸化剤;塩酸、硫酸、フッ酸、硝酸等の強酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ溶液;その他市販の種々の親水化剤(エッチング剤)を用いる方法や、オゾンガス処理等の気相処理が挙げられる。また、親水化処理により、樹脂粒子表面に微小な凹凸が形成された場合、その凹凸のアンカー効果によって、後述する無電解メッキ後の基材粒子と導電性金属層との密着性が一層向上するという効果も得られる。
【0051】
1−3.導電性微粒子の製法
本発明の導電性微粒子において、下地ニッケル層は、錯化剤として有機カルボン酸又はその塩を少なくとも3種含有する無電解メッキ液を用いて、無電解メッキを行うことで形成できる。以下、本発明の導電性微粒子の製造方法の一例を説明する。
【0052】
触媒化工程
無電解メッキに供される基材粒子には、触媒化処理が施される。前記触媒化処理では、基材粒子表面に貴金属イオンを捕捉させた後、これを還元して前記貴金属を基材粒子表面に担持させる。基材粒子自体が貴金属イオンの捕捉能を有さない場合、触媒化を行う前に、表面改質処理を行うことも好ましい。表面改質処理は、表面処理剤を溶解した水又は有機溶媒に、基材粒子を接触させることで行うことができる。前記表面処理剤としては、例えば、カチオン系界面活性剤が好適である。前記カチオン系界面活性剤としては、例えば、アミン塩、四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0053】
前記触媒化処理方法としては、例えば、塩化パラジウムと塩化スズとを含む溶液を触媒化試薬とし、これに基材粒子を浸漬することにより基材粒子表面に触媒金属を吸着させ、その後、硫酸や塩酸等の酸や水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液で前記パラジウムイオンを還元することにより、基材粒子表面にパラジウムを析出させる方法(キャタリスト−アクセレータ法)や、基材粒子をスズイオン(Sn2+)を含有する溶液と接触させることによりスズイオンを基材粒子表面に吸着させた後、パラジウムイオン(Pd2+)を含有する溶液に浸漬させることにより、基材粒子表面にパラジウムを析出させる方法(センシタイジング−アクチベーティング法)等が挙げられる。
【0054】
無電解メッキ工程
無電解メッキでは、前記触媒化処理によってパラジウム触媒を吸着させた触媒化基材粒子表面に、導電性金属層を形成する。ここで、錯化剤として有機カルボン酸又はその塩を少なくとも3種、還元剤、ニッケル塩を含有する無電解メッキ液を用いて、無電解メッキ処理を行うことにより、所望とする粒界構造を有する下地ニッケル層を形成できる。
【0055】
無電解メッキ工程では、まず、触媒化基材粒子を水に十分に分散させ、触媒化基材粒子の水性スラリーを調製する。ここで、均一なニッケル層を形成するためには、触媒化基材粒子を、メッキ処理を行う水性媒体に十分分散させておくことが好ましい。触媒化基材粒子を水性媒体に分散させる手段としては、例えば、通常攪拌装置、高速攪拌装置、コロイドミル又はホモジナイザーのような剪断分散装置等従来公知の分散手段を採用すればよく、必要に応じて超音波を併用してもよい。また、この際に、基材粒子の分散性を向上させる目的として、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の界面活性剤を添加してもよく、特に、カチオン系界面活性剤を添加することが好ましい。なお、界面活性剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記カチオン系界面活性剤としては、例えば、アミン塩、四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0056】
次に、ニッケル塩、還元剤、錯化剤及び各種添加剤等を含有する無電解メッキ液を、上記で調製した触媒化基材粒子の水性スラリーに添加することにより、無電解メッキ反応を生じさせる。無電解メッキ反応は、触媒化基材粒子の水性スラリーに無電解メッキ液を添加すると速やかに開始する。また、この反応には水素ガスの発生を伴うので、水素ガスの発生が完全に認められなくなった時点をもって無電解メッキ反応を終了すればよい。また、無電解メッキ工程において、無電解メッキ処理をカチオン系界面活性剤の存在下で行うことも好ましい。前記カチオン系界面活性剤を添加する方法としては、基材粒子の表面処理剤として添加する方法;水性スラリーを調製する際に、基材粒子を分散させるために添加する方法;無電解メッキ液に配合しておく方法が挙げられる。無電解メッキ反応の終了後、反応系内から導電性金属層が形成された基材粒子を取り出し、必要に応じて洗浄、乾燥を施すことにより、導電性微粒子を得ることができる。
【0057】
前記ニッケル塩としては、例えば、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられる。ニッケル塩は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。無電解メッキ液中におけるニッケル塩の濃度は、所望の膜厚の導電性金属層が形成されるように、基材粒子のサイズ(表面積)等を考慮して適宜決定すればよい。
【0058】
前記還元剤としては、例えば、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ヒドラジン等が挙げられる。還元剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0059】
前記錯化剤として用いられる有機カルボン酸としては、例えば、ヒドロキシ酢酸、乳酸、グルコン酸等のモノカルボン酸;酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等のジカルボン酸;クエン酸等のトリカルボン酸;等が挙げられる。前記有機カルボン酸の塩としては、例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム)塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
本発明の導電性微粒子を製造する場合、これらの有機カルボン酸又はその塩は、少なくとも3種を併用する必要がある。3種の組合せとしては、ジカルボン酸又はその塩を3種以上含む組合せが好ましく、ジカルボン酸を3種以上含む組合せがより好ましく、特に、酒石酸、リンゴ酸及びコハク酸を含む組合せが好ましい。
【0060】
前記錯化剤の使用量は、前記ニッケル塩100質量部に対して、100質量部以上が好ましく、より好ましくは150質量部以上、さらに好ましくは200質量部以上であり、500質量部以下が好ましく、より好ましくは450質量部以下、さらに好ましくは400質量部以下である。
【0061】
前記無電解メッキは、水性スラリーに徐々に添加する(滴下する)ことが好ましい。無電解メッキ液の滴下速度は適宜調整すればよいが、基材粒子100質量部に対して、ニッケル塩の添加量を5質量部/min以上とすることが好ましく、より好ましくは10質量部/min以上、さらに好ましくは15質量部/min以上であり、35質量部/min以下とすることが好ましく、より好ましくは30質量部/min以下、さらに好ましくは25質量部/min以下である。
前記メッキ液を、水性スラリーに滴下する際の液温は、適宜調整すればよいが、液温は50℃以上100℃未満が好ましい。また、前記無電解メッキ液のpHは、限定されないが、好ましくは4〜14である。なお、無電解メッキ液のpHは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水等のアルカリ性水溶液、硫酸、塩酸等の酸性水溶液を適宜添加することで調整できる。
【0062】
上述のように、錯化剤として有機カルボン酸又はその塩を少なくとも3種含有する無電解メッキ液を用いることにより、厚さ方向断面の粒界構造に所定個数のうろこ形状が存在する下地ニッケル層が形成できる。また、特に基材粒子として、カチオン系界面活性剤で表面改質した基材粒子であって、該粒子に触媒を担持させた触媒化基材粒子を用いることが好ましい。
【0063】
無電解メッキ工程は、必要に応じて繰返し行ってもよい。例えば金属種の異なる無電解メッキ液を用いて無電解メッキ工程を繰返すことにより、基材粒子の表面に異種金属を幾層にも被覆できる。具体的には、基材粒子にニッケルメッキを施してニッケル被覆粒子を得た後、該ニッケル被覆粒子をさらに無電解金メッキ液に投入して金置換メッキを行うことにより、最外層が金層で覆われ、その内側にニッケル層を有する導電性微粒子が得られる。
【0064】
2.突起を有する導電性微粒子
導電性微粒子はその表面が平滑であっても凹凸状であっても良いが、バインダー樹脂を効果的に排除して電極との接続を行える点で複数の突起を有することが好ましい。突起を有することで、導電性微粒子を電極間の接続に用いた際の接続信頼性を高めることができる。
【0065】
導電性微粒子の表面に突起を形成させる方法としては、(1)基材粒子合成における重合工程において高分子の相分離現象を利用して表面に突起の形成された基材粒子を得た後、無電解メッキにより導電性金属層を形成させる方法;(2)基材粒子表面に金属粒子、金属酸化物粒子等の無機粒子、或いは有機重合体からなる有機粒子を付着させた後、無電解メッキにより導電性金属層を形成させる方法;(3)基材粒子表面に無電解メッキを行った後、金属粒子、金属酸化物粒子等の無機粒子、或いは有機重合体からなる有機粒子を付着させ、さらに無電解メッキを行う方法;(4)無電解メッキ反応時におけるメッキ浴の自己分解を利用して基材粒子表面に突起の核となる金属を析出させ、さらに無電解メッキを行うことによって、突起部を含む導電性金属層が連続皮膜となった導電性金属層を形成する方法等が挙げられる。このなかで、前記(4)の方法により突起を形成する場合には、得られるニッケルメッキ膜の断面における粒界の形状が本発明の範囲に入るよう適宜メッキ条件を選択すればよい。
【0066】
前記突起の高さは20nm〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは30nm〜800nm、さらに好ましくは40nm〜600nm、もっとも好ましくは50nm〜500nmである。突起の高さが前記範囲であると、接続信頼性が一層向上する。なお、突起の高さは、任意の導電性微粒子10個を電子顕微鏡で観察し、観察された導電性微粒子の周縁部の突起を導電性微粒子1個につき任意の10個の突起高さを測定し、その測定値を算術平均することにより求められる。
【0067】
前記突起の数は特に限定されないが、高い接続信頼性を確保する点から導電性微粒子の表面を電子顕微鏡で観察したときの任意の正投影面において、少なくとも1個以上の突起を有することが好ましく、より好ましくは5個以上、さらに好ましくは10個以上である。
【0068】
3.絶縁被覆導電性微粒子
本発明の導電性微粒子は、表面の少なくとも一部に絶縁層を有する態様(絶縁被覆導電性微粒子)であってもよい。このように表面の導電性金属層にさらに絶縁層が積層されていると、高密度回路の形成時や端子接続時等に生じやすい横導通を防ぐことができる。
【0069】
絶縁層の厚さは0.005μm〜1μmが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.8μmである。絶縁層の厚さが前記範囲内であれば、導電性微粒子による導通特性を良好に維持しつつ、粒子間の電気絶縁性が良好となる。
【0070】
前記絶縁層としては、導電性微粒子の粒子間における絶縁性が確保でき、一定の圧力及び/又は加熱により容易にその絶縁層が崩壊あるいは剥離するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン類;ポリメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート重合体及び共重合体;ポリスチレン;等の熱可塑性樹脂やその架橋物;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂及びこれらの混合物;シリコーン樹脂等の有機化合物、或いはシリカ、アルミナ等の無機化合物が挙げられる。
【0071】
前記絶縁層は、単層であっても、複数の層からなるものであってもよい。例えば、単一又は複数の皮膜状の層が形成されていてもよいし、絶縁性を有する粒状、球状、塊状、鱗片状その他の形状の粒子を導電性金属層の表面に付着させた層であってもよいし、さらには、導電性金属層の表面を化学修飾することにより形成された層であってもよく、又は、これらが組み合わされたものであってもよい。これらの中でも絶縁性を有する粒子(以下、「絶縁粒子」という。)が導電性金属層表面に付着した態様が好ましい。
【0072】
絶縁粒子の平均粒子径は導電性微粒子の平均粒子径や絶縁被覆導電性微粒子の用途によって適宜選択されるが、絶縁粒子の平均粒子径は0.005μm〜1μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.8μmである。絶縁粒子の平均粒子径が0.005μmより小さくなると、複数の導電性微粒子間の導電層どうしが接触しやすくなり、1μmより大きくなると対向する電極間に導電性微粒子が挟み込まれた際に発揮するべき導電性が不十分となる虞がある。
【0073】
絶縁粒子の平均粒子径における変動係数(CV値)は、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、最も好ましくは20%以下である。CV値が40%を超えると導通性が不十分となる虞がある。
【0074】
絶縁粒子の平均粒子径は、導電性微粒子の平均粒子径の1/1000以上、1/5以下であることが好ましい。絶縁粒子の平均粒子径が前記範囲であると、導電性微粒子の表面に均一に絶縁粒子層を形成させることができる。また、粒子径の異なる2種類以上の絶縁粒子を使用してもよい。
絶縁粒子はその表面に導電性微粒子への付着性を高めるため官能基を有していても良い。前記官能基としては、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、リン酸基、シラノール基、アンモニウム基、スルホン酸基、チオール基、ニトロ基、ニトリル基、オキサゾリン基、ピロリドン基、スルホニル基、水酸基等が挙げられる。
【0075】
導電性微粒子表面における絶縁粒子の被覆率(絶縁被覆導電性微粒子の正投影面)は、好ましくは1%以上98%以下、より好ましくは5%以上95%以下である。絶縁粒子による導電性微粒子の被覆率が前記範囲であることにより、充分な導通性を確保しつつ、隣接する絶縁被覆導電性微粒子間を確実に絶縁することができる。なお、上記被覆率は、例えば電子顕微鏡を用いて任意の100個の絶縁被覆導電性微粒子表面を観察したときに、絶縁被覆導電性微粒子の正投影面における絶縁粒子の被覆されている部分と樹脂粒子の被覆されていない部分の面積比率を測定することにより評価できる。
【0076】
4.異方性導電材料
本発明の導電性微粒子は、異方性導電材料として有用である。
前記異方性導電材料としては、前記導電性微粒子がバインダー樹脂に分散してなるものが挙げられる。異方性導電材料の形態は特に限定されず、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等様々な形態が挙げられる。これらの異方性導電材料を相対向する基材同士や電極端子間に設けることにより、良好な電気的接続が可能になる。なお、本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電材料には、液晶表示素子用導通材料(導通スペーサー及びその組成物)も含まれる。
【0077】
前記バインダー樹脂としては、絶縁性の樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0078】
バインダー樹脂組成物には、必要に応じて充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、酸化防止剤、各種カップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導向上剤、有機溶剤等を配合することができる。
【0079】
なお、前記異方性導電材料は、前記バインダー樹脂中に導電性微粒子を分散させ、所望の形態とすることで得られるが、例えば、バインダー樹脂と導電性微粒子とを別々に使用し、接続しようとする基材間や電極端子間に導電性微粒子をバインダー樹脂とともに存在させることによって接続してもかまわない。
【0080】
前記異方性導電材料において、導電性微粒子の含有量は、用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、異方性導電材料の全量に対して0.01体積%以上が好ましく、より好ましくは0.03体積%以上、さらに好ましくは0.05体積%以上であり、50体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下である。導電性微粒子の含有量が少なすぎると、充分な電気的導通が得られ難い場合があり、一方、導電性微粒子の含有量が多すぎると、導電性微粒子同士が接触してしまい、異方性導電材料としての機能が発揮され難い場合がある。
【0081】
前記異方性導電材料におけるフィルム膜厚、ペーストや接着剤の塗工膜厚、印刷膜厚等については、使用する導電性微粒子の粒子径と、接続すべき電極の仕様とを考慮し、接続すべき電極間に導電性微粒子が狭持され、且つ接続すべき電極が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるように、適宜設定することが好ましい。
【実施例】
【0082】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断らない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0083】
1.評価方法
1−1.個数平均粒子径、変動係数(CV値)
<シード粒子、基材粒子(樹脂粒子)>
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径を測定し、個数基準の平均粒子径、粒子径の標準偏差を求めるとともに、下記式に従って粒子径の個数基準のCV値(変動係数)を算出した。
粒子径の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/個数基準平均粒子径)
なお、基材粒子では、基材粒子0.005部に界面活性剤(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) N−08」)の1%水溶液20部を加え、超音波で10分間分散させた分散液を測定試料とした。シード粒子では、加水分解、縮合反応で得られた分散液を、界面活性剤(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) N−08」)の1%水溶液により希釈したものを測定試料とした。
【0084】
1−2.金属層断面観察
導電性微粒子0.1gを、メノウ鉢に取り、すり潰すことにより導電性金属層を破断させた。すり潰した導電性微粒子の導電性金属層の厚さ方向断面を、走査型電子顕微鏡(拡大倍率100000倍)で観察した。
(単位面積あたりのうろこ形状の個数)
破断面が認められる導電性微粒子10個を任意に選び、各粒子の各領域について、以下のようにして単位面積あたりのうろこ形状(長径10〜70nm、アスペクト比が0.5以上1.0未満)の個数を求めた。
具体的には、長さ500nmのニッケルメッキ層内縁と、その両端から径方向外方に向けて延出する2本の直線と、外周縁から形成される領域を、任意に3つ選択し、各領域における、長径10〜70nmのうろこ形状の個数をカウントし、断面積10000nm2当りに換算することにより求めた。
また、粒子10個に関する単位面積あたりのうろこ形状の平均個数は、粒子10個のそれぞれの3領域(合計30領域)について求めたうろこ形状の個数を単純平均することにより求めた。
(うろこ形状の平均長径)
うろこ形状(長径10〜70nm、アスペクト比が0.5以上1.0未満)の平均長径は、粒子3個のそれぞれの3領域(合計9領域)の平均から求めた。
(うろこ形状のアスペクト比の平均値)
うろこ形状(長径10〜70nm、アスペクト比が0.5以上1.0未満)のアスペクト比の平均値は、粒子3個のそれぞれの3領域(合計9領域)の平均から求めた。
【0085】
1−3.導電性金属層膜厚
導電性微粒子0.02gに王水20mlを加え、加熱することにより金属層を溶解し、ろ別した後、ろ液をICP発光分析装置を用いて金属層成分を分析した。
以下の式(1)からニッケル層の厚みを算出した。なお、式中、rは基材粒子の半径(μm)、tはニッケル層の厚み、dNiはニッケル層の密度、dbaseは基材粒子の密度、Wはニッケル層成分(ニッケル、リン)含有率(質量%)、Xは金の含有率(質量%)である。
【0086】
【数1】

【0087】
続いて、上記Xが0超である場合には、以下の式(2)から金層の厚みを算出した。なお、式中、aは金層の厚み、dAuは金層の密度、d(base+Ni)はニッケル品(ニッケル層+基材粒子)の密度、Xは金の含有率(質量%)である。ここで、ニッケル品の密度d(base+Ni)は計算式(3)を使用して算出した。なお、式中、dNiはニッケル層の密度、dbaseは基材粒子の密度、Wはニッケル層成分(ニッケル、リン)含有率(質量%)である。
【0088】
【数2】

【0089】
1−4.ニッケル合金中のP濃度
導電性微粒子0.02gに王水20mlを加え、加熱することにより金属層を溶解しろ別した。その後、ろ液をICP発光分析装置を用いて、ニッケル及びリンの含有量を分析した。
【0090】
1−5.密着性
導電性微粒子1部にトルエン100部を加え、さらに1mmのジルコニアビーズ250部を加えて、ステンレス製の2枚攪拌羽根を用いて200rpmで10分間分散を行った。分散処理後の粒子を取出し、乾燥後、デジタル走査型電子顕微鏡(日立協和エンジニアリング社製、「S−3500N」)により、導電性微粒子の表面観察を行った。1000個の粒子を観察し、導電性金属層が剥離している粒子の個数をカウントし、剥離粒子個数が10個未満を「A」、10個以上30個未満を「B」とした。
【0091】
1−6.接続抵抗値
導電性微粒子を試料粒子とし、島津微小圧縮試験機(島津製作所製「MCT−W200」)抵抗測定キット付属装置を用いて、室温(25℃)において測定した。具体的には、試料台上に散布した試料粒子1個について、直径50μmの円形平板圧子を用いて、粒子の中心方向へ一定の負荷速度(2.6mN/秒(0.27gf/秒))で荷重をかけて測定を行った。10回測定を行い、粒子径の30%圧縮変形時の抵抗値の平均値を求めた。
【0092】
2.基材粒子の合成
2−1.基材粒子1
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水1800部と、25%アンモニア水24部、メタノール355部を入れた。攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン100部及びメタノール245部の混合液を添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、メタクリロイル基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を調製した。このポリシロキサン粒子の個数平均粒子径は3.01μmであった。
【0093】
次いで、乳化剤としてのポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) NF−08」)の20%水溶液10部をイオン交換水400部で溶解した溶液に、スチレン200部及びDVB960(新日鐡化学社製、ジビニルベンゼン含量96質量%)200部と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)4.8部とを加え、乳化分散させて単量体成分の乳化液を調製した。この乳化液を2時間攪拌後、得られた乳化液を、上記ポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から1時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体を吸収して肥大化していることが確認された。
【0094】
前記混合液に、前記ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の20%水溶液96部、イオン交換水500部を加え、窒素雰囲気下で65℃まで昇温させて、65℃で2時間保持し、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下280℃で1時間焼成処理して重合体粒子を得た。
得られた重合体粒子を水酸化ナトリウム等によりエッチング処理を行い親水化処理し、これを基材粒子1とした。この基材粒子の個数平均粒子径は6.02μm、変動係数(CV値)は3.6%であった。
【0095】
2−2.基材粒子2
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水1800部と、25%アンモニア水24部、メタノール245部を入れた。攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン100部及びメタノール355部の混合液を添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、メタクリロイル基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を調製した。このポリシロキサン粒子の個数平均粒子径は4.40μmであった。
【0096】
次いで、乳化剤としてのポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) NF−08」)の20%水溶液10部をイオン交換水400部で溶解した溶液に、スチレン200部及びDVB960(新日鐡化学社製、ジビニルベンゼン含量96質量%)200部と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)4.8部とを加え、乳化分散させて単量体成分の乳化液を調製した。この乳化液を2時間攪拌後、得られた乳化液を、上記ポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から1時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体を吸収して肥大化していることが確認された。
【0097】
前記混合液に、前記ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の20%水溶液96部、イオン交換水500部を加え、窒素雰囲気下で65℃まで昇温させて、65℃で2時間保持し、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下280℃で1時間焼成処理して重合体粒子を得た。
得られた重合体粒子を水酸化ナトリウム等によりエッチング処理を行い親水化処理し、これを基材粒子とした。この基材粒子の個数平均粒子径は8.98μm、変動係数(CV値)は3.0%であった。
【0098】
3.導電性微粒子の製造
製造例1
上記で得た基材粒子1を21g秤量し、カチオン系界面活性剤にて処理して基材粒子1の表面改質を行い、表面改質後の基材粒子1を水洗した。表面改質後の基材粒子1を、混合水溶液(塩化パラジウム100mg/L、塩化スズ10g/L、濃塩酸(濃度37質量%)100mL/L)に浸漬し、ろ過及び水洗後、10%塩酸水溶液で処理して基材粒子表面にパラジウム触媒を担持させた。
触媒を担持させた基材粒子1を水洗した後、純水50mLとカチオン系界面活性剤を加えてスラリーを作製した。このスラリーを、95℃に加温した純水2000mLに投入し、分散液を調製した。
別途、組成が、硫酸ニッケル30g/L、リンゴ酸30g/L、酒石酸30g/L、コハク酸30g/L、硫黄系添加剤3ppm、次亜リン酸ナトリウム30g/Lの無電解ニッケルメッキ液2000mLを調製した。この無電解ニッケルメッキ液を、pH4.5、液温95℃に調整した。
前記分散液に、滴下法を用い、160mL/minの速度にて無電解ニッケルメッキ液を滴下した。滴下終了後、反応が終了するまで60分間攪拌を継続した。無電解メッキを施した粒子をろ過し、水洗後乾燥して導電性微粒子を得た。
導電性金属層のニッケル層の厚さは190nmであった。また、得られた導電性微粒子のニッケル層中のリン濃度は16.1質量%であった。また、得られた導電性微粒子における導電性金属層の破断面を示すSEM像を図1に示した。
【0099】
製造例2
前記基材粒子1を21g秤量し、カチオン系界面活性剤にて処理して基材粒子1の表面改質を行い、表面改質後の基材粒子1を水洗した。表面改質後の基材粒子1を、混合水溶液(塩化パラジウム100mg/L、塩化スズ10g/L、濃塩酸(濃度37質量%)100mL/L)に浸漬し、ろ過及び水洗後、10%塩酸水溶液で処理して基材粒子表面にパラジウム触媒を担持させた。
触媒を担持させた基材粒子1を水洗した後、純水50mLとカチオン系界面活性剤を加えてスラリーを作製した。このスラリーを、95℃に加温した純水1200mLに投入し、分散液を調製した。
別途、組成が、硫酸ニッケル30g/L、リンゴ酸30g/L、酒石酸30g/L、コハク酸30g/L、硫黄系添加剤3ppm、次亜リン酸ナトリウム30g/Lの無電解ニッケルメッキ液1200mLを調製した。この無電解ニッケルメッキ液を、pH4.5、液温95℃に調整した。
前記分散液に、滴下法を用い、124mL/minの速度にて無電解ニッケルメッキ液を滴下した。滴下終了後、反応が終了するまで60分間攪拌を継続した。無電解メッキを施した粒子をろ過し、水洗後乾燥して導電性微粒子を得た。
導電性金属層のニッケル層の厚さは130nmであった。また、得られた導電性微粒子のニッケル層中のリン濃度は15.3質量%であった。
【0100】
製造例3
前記基材粒子1を21g秤量し、カチオン系界面活性剤にて処理して基材粒子1の表面改質を行い、表面改質後の基材粒子1を水洗した。表面改質後の基材粒子1を、混合水溶液(塩化パラジウム100mg/L、塩化スズ10g/L、濃塩酸(濃度37質量%)100mL/L)に浸漬し、ろ過及び水洗後、10%塩酸水溶液で処理して基材粒子表面にパラジウム触媒を担持させた。
触媒を担持させた基材粒子1を水洗した後、純水50mLとカチオン系界面活性剤を加えてスラリーを作製した。このスラリーを、95℃に加温した純水1600mLに投入し、分散液を調製した。
別途、組成が、硫酸ニッケル30g/L、リンゴ酸30g/L、酒石酸30g/L、コハク酸30g/L、硫黄系添加剤3ppm、次亜リン酸ナトリウム30g/Lの無電解ニッケルメッキ液1600mLを調製した。この無電解ニッケルメッキ液を、pH4.5、液温95℃に調整した。
前記分散液に、滴下法を用い、174mL/minの速度にて無電解ニッケルメッキ液を滴下した。滴下終了後、反応が終了するまで60分間攪拌を継続した。
ニッケルメッキを施した粒子をろ過、水洗後、純水とカチオン系界面活性剤に加えてスラリーを作製した。このスラリーを液温80℃の金メッキ液(クエン酸100g/L、シアン化金カリウム5g/L)に投入して無電解金メッキを行った。メッキは120分間行い、無電解メッキを施した粒子をろ過し、水洗後乾燥して導電性微粒子を得た。
導電性金属層のニッケル層の厚さは120nm、金層の厚さは50nmであった。また、得られた導電性微粒子のニッケル層中のリン濃度は16.8質量%であった。
【0101】
製造例4
前記基材粒子1を21g秤量し、カチオン系界面活性剤にて処理して基材粒子1の表面改質を行い、表面改質後の基材粒子1を水洗した。表面改質後の基材粒子1を、混合水溶液(塩化パラジウム100mg/L、塩化スズ10g/L、濃塩酸(濃度37質量%)100mL/L)に浸漬し、ろ過及び水洗後、10%塩酸水溶液で処理して基材粒子表面にパラジウム触媒を担持させた。
触媒を担持させた基材粒子1を水洗した後、純水50mLとカチオン系界面活性剤を加えてスラリーを作製した。このスラリーを95℃に加温した純水1600mLに投入し、分散液を調製した。
別途、組成が、硫酸ニッケル30g/L、リンゴ酸30g/L、酒石酸30g/L、コハク酸30g/L、硫黄系添加剤3ppm、次亜リン酸ナトリウム30g/Lの無電解ニッケルメッキ液1600mLを調製した。この無電解ニッケルメッキ液を、pH4.5、液温95℃に調整した。
前記分散液に、滴下法を用い、174mL/minの速度にて無電解ニッケルメッキ液を滴下した。滴下終了後、反応が終了するまで60分間攪拌を継続した。
ニッケルメッキを施した粒子をろ過、水洗後、純水とカチオン系界面活性剤に加えてスラリーを作製した。このスラリーを液温80℃の金メッキ液(クエン酸100g/L、シアン化金カリウム5g/L)に投入して無電解金メッキを行った。メッキは120分間行い、無電解メッキを施した粒子をろ過し、水洗後乾燥して導電性微粒子を得た。
導電性金属層のニッケル層の厚さは165nm、金層の厚さは25nmであった。得られた導電性微粒子のニッケル層中のリン濃度は16.9質量%であった。得られた導電性微粒子について接続抵抗値を評価したところ、30%圧縮変形時の抵抗値の平均値が20Ω以下であり、導電性に優れていることが確認された。
【0102】
製造例5
前記基材粒子2を29g秤量し、カチオン系界面活性剤にて処理して基材粒子2の表面改質を行い、表面改質後の基材粒子2を水洗した。表面改質後の基材粒子2を、混合水溶液(塩化パラジウム100mg/L、塩化スズ10g/L、濃塩酸(濃度37質量%)100mL/L)に浸漬し、ろ過及び水洗後、10%塩酸水溶液で処理して基材粒子表面にパラジウム触媒を担持させた。
触媒を担持させた基材粒子2を水洗した後、純水70mLとカチオン系界面活性剤を加えてスラリーを作製した。このスラリーを95℃に加温した純水2200mLに投入し、分散液を調製した。
別途、組成が、硫酸ニッケル30g/L、リンゴ酸30g/L、酒石酸30g/L、コハク酸30g/L、硫黄系添加剤3ppm、次亜リン酸ナトリウム30g/Lの無電解ニッケルメッキ液2200mLを調製した。この無電解ニッケルメッキ液を、pH4.5、液温95℃に調整した。
前記分散液に、滴下法を用い、174mL/minの速度にて無電解ニッケルメッキ液を滴下した。滴下終了後、反応が終了するまで60分間攪拌を継続した。
ニッケルメッキを施した粒子をろ過、水洗後、純水とカチオン系界面活性剤に加えてスラリーを作製した。このスラリーを液温80℃の金メッキ液(クエン酸100g/L、シアン化金カリウム5g/L)に投入して無電解金メッキを行った。メッキは120分間行い、無電解メッキを施した粒子をろ過し、水洗後乾燥して導電性微粒子を得た。
導電性金属層のニッケル層の厚さは140nm、金層の厚さは13nmであった。得られた導電性微粒子のニッケル層中のリン濃度は17.2質量%であった。
【0103】
製造例6
前記基材粒子2を29g秤量し、カチオン系界面活性剤にて処理して基材粒子2の表面改質を行い、表面改質後の基材粒子2を水洗した。表面改質後の基材粒子2を、混合水溶液(塩化パラジウム100mg/L、塩化スズ10g/L、濃塩酸(濃度37質量%)100mL/L)に浸漬し、ろ過及び水洗後、10%塩酸水溶液で処理して基材粒子表面にパラジウム触媒を担持させた。
触媒を担持させた基材粒子2を水洗した後、純水70mLとカチオン系界面活性剤を加えてスラリーを作製した。このスラリーを95℃に加温した純水2200mLに投入し、分散液を調製した。
別途、組成が、硫酸ニッケル30g/L、リンゴ酸30g/L、酒石酸30g/L、コハク酸30g/L、硫黄系添加剤3ppm、次亜リン酸ナトリウム30g/Lの無電解ニッケルメッキ液2200mLを調製した。この無電解ニッケルメッキ液を、pH4.5、液温95℃に調整した。
前記分散液に、滴下法を用い、174mL/minの速度にて無電解ニッケルメッキ液を滴下した。滴下終了後、反応が終了するまで60分間攪拌を継続した。
ニッケルメッキを施した粒子をろ過、水洗後、純水とカチオン系界面活性剤に加えてスラリーを作製した。このスラリーを液温80℃の金メッキ液(クエン酸100g/L、シアン化金カリウム5g/L)に投入して無電解金メッキを行った。メッキは120分間行い、無電解メッキを施した粒子をろ過し、水洗後乾燥して導電性微粒子を得た。
導電性金属層のニッケル層の厚さは140nm、金層の厚さは6nmであった。得られた導電性微粒子のニッケル層中のリン濃度は17.1質量%であった。得られた導電性微粒子について接続抵抗値を評価したところ、30%圧縮変形時の抵抗値の平均値が20Ω以下であり、導電性に優れていることが確認された。
【0104】
製造例7
前記基材粒子1を使用し、製造例1の条件を変更してニッケル−リン合金メッキ皮膜を有する導電性微粒子を得た。得られた導電性微粒子の導電性金属層の厚さ方向断面を観察したところ、断面にはうろこ形状が認められず、皮膜の粒界が厚さ方向に配向していた。また、導電性金属層の厚さは150nmであった。また、得られた導電性微粒子のニッケル層中のリン濃度は12.1質量%であった。
【0105】
得られた導電性微粒子について評価を行い、結果を表1、2に示した。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
表2に示したように、下地ニッケル層の厚さ方向断面の粒界構造に所定個数のうろこ形状が存在する製造例1〜6の導電性微粒子では、いずれも導電性金属層の密着性評価が優れている。
これに対して、下地ニッケル層の厚さ方向断面の粒界構造が柱状構造である製造例7の導電性微粒子は、導電性金属層の密着性が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の導電性微粒子は、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等の異方性導電材料に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有し、前記導電性金属層として、前記基材粒子表面に直接形成されたニッケルメッキ層を含む導電性微粒子であって、
任意に選択した10個の粒子について、前記ニッケルメッキ層の厚さ方向断面を、走査型電子顕微鏡を使用し100000倍の拡大倍率で観察し、
長さ500nmのニッケルメッキ層内縁と、その両端から径方向外方に向けて延出する2本の直線と、外周縁から形成される領域を、任意に3つ選択し、
少なくとも1つの領域において、破断面に表れる粒界が形成する長径10〜70nmのうろこ形状が、断面積10000nm2当りに3個以上存在する粒子が6個以上存在することを特徴とする導電性微粒子。

【図1】
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【公開番号】特開2013−84537(P2013−84537A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−264101(P2011−264101)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】