説明

導電性成形体の製造方法およびこれにより得られる導電性成形体

【課題】導電性材料の量を増やすことなく、表面抵抗性を大きくすることができる、導電性成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】導電性成形体材料を押出成形する製造方法において、押し出された成形体を延伸倍率2倍以上で延伸する工程を含むことにより、導電性成形体の表面抵抗性を大きくすることができる。さらに、より安価な熱可塑性樹脂を用いて導電性成形体を製造することができ、管状の導電性成形体をも押出成形により容易に製造することができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性成形体の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、導電性材料の添加量を増加させることなく、導電性成形体の表面抵抗率を大きくすることができる導電性成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導電性中間転写ベルトは、複写機の中間転写システムを構成する部材の一つであり、広く採用されている。このような中間転写ベルト等に用い得る半導電性ベルトの一例として、ポリイミド系樹脂に導電性フィラーとしてアセチレンブラック等のカーボンブラックを分散してなる中間転写ベルトが提案されている(特許文献1)。ポリイミド系材料を用いた場合、製品自体の価格が高価になるため、より低価格の製品が求められている。
【0003】
また、半導電性中間転写ベルトは、半導電性を付与するために、導電性材料が添加されている。しかしながら、導電性材料の添加量の増加に伴い、得られるフィルムの機械物性等が劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−311263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、導電性材料の添加量を増加させることなく、表面抵抗率を増加させることができる導電性成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の導電性成形体の製造方法は、導電性成形体材料を押出成形する導電性成形体の製造方法であって、押し出された成形体を延伸倍率2倍以上で延伸する工程を含む。
好ましい実施形態においては、上記導電性成形体は管状である。
好ましい実施形態においては、上記導電性成形体は熱可塑性樹脂を含む。
好ましい実施形態においては、上記導電性成形体材料はガラス転移温度の異なる2種以上の樹脂のアロイを含む。
本発明の別の局面によれば、導電性成形体が提供される。この導電性成形体は上記の導電性成形体の製造方法により得られる。
好ましい実施形態においては、上記導電性成形体は導電性中間転写ベルトである。
本発明の別の局面によれば、画像形成装置が提供される。この画像形成装置は、上記の導電性中間転写ベルトを用いる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、押出成形品を延伸倍率2倍以上で延伸することにより、導電性材料の添加量を増加させることなく、導電性成形体の表面抵抗率を大きくすることができる。さらに、本発明の製造方法によれば、より安価な熱可塑性樹脂を用いることができ、管状の導電性成形体をも押出成形により容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の好ましい実施形態における導電性成形体の製造方法の概念を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例における成形品の厚み分布の測定位置を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例における成形品の厚みおよび表面抵抗率の測定位置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<A.導電性成形体材料>
導電性成形体材料は、成形体を構成する樹脂成分と導電性材料を含む。該樹脂成分は、ガラス転移温度の異なる2種以上の樹脂をアロイ化したポリマーアロイを用いることが好ましい。該ポリマーアロイを用いることにより、一方の樹脂に導電性材料を偏在的に分散させ、導電性材料を高分散化した組成物を得ることができ、導電性材料の添加量を減らしても、所望の導電率を得ることができる。さらに、導電性材料の添加量を少なくすることにより、得られたフィルムの機械的物性を向上させることができる。
【0010】
導電性成形体材料に含まれる樹脂成分としては、任意の適切な熱可塑性樹脂を用いることができる。具体的には、高、中、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ−1,2−ブタジエン樹脂、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンとメチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−の各アクリレートもしくはメタクリレートとの共重合体またはこれらをそれぞれ塩素化したもの、あるいはこれらの2種以上の混合物等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン系樹脂;ポリエチレンフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリフタレート系樹脂;6−ナイロン樹脂、6,6−ナイロン樹脂等のポリアミド系樹脂;ポリサルフォン樹脂、変性ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルサルフォン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂等のスーパーエンジニアリング樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等の一種または二種以上の混合物が挙げられる。なかでも、ポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。本明細書において、上記熱可塑性樹脂をベース樹脂ともいう。
【0011】
上記熱可塑性樹脂とアロイ化させる他の樹脂(以下、アロイ化用樹脂という)としては、該熱可塑性樹脂よりもガラス転移温度の低いものであればよく、特に制限はない。熱可塑性樹脂よりもガラス転移温度の低い樹脂をアロイ化することにより、ガラス転移温度の低い樹脂層に導電性材料を偏在させることができ、導電性材料をより高分散化させることができる。好ましくは、ポリエステル樹脂が用いられる。
【0012】
樹脂成分として、ポリマーアロイを用いる場合、ベース樹脂100重量部に対して、アロイ化用樹脂を好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは5〜20重量部用いる。
【0013】
導電性材料としては、任意の適切なものを用いることができ、例えば、各種カーボン、アルミニウム、ニッケル、酸化錫、チタン酸カリウム等の無機化合物、ポリアニリンやポリピロール等の導電性高分子を用いることができる。なかでも、カーボンブラックを用いることが好ましい。カーボンブラックの特性としては、好ましくは、DBP吸油量が100ml/100g以上、より好ましくは、150〜700ml/100gのものが好ましい。このようなカーボンブラックの例としては、導電性カーボンブラックとして市販されているもの(ライオン社ケッチェンブラックEC、キャボット社製バルカンXC−72、電気化学工業社製デンカブラックなど)、その他、ナフサなどの炭化水素を水素及び酸素の存在下部分酸化して、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを製造する際に副生するカーボンブラック、あるいはこれを酸化または還元処理したカーボンブラック等が挙げられる。
【0014】
導電性材料と樹脂成分との配合比(重量部)は、好ましくは10:90〜60:40であり、さらに好ましくは20:80〜50:50である。導電性材料が60重量部を超え、樹脂成分が40重量部未満では、これらを混練することが困難となり、さらに、導電性材料の凝集塊が生じるおそれがある。導電性材料が10重量部未満であり、樹脂成分が90重量部を超えると、導電性が不十分となるおそれがある。
【0015】
導電性成形体材料としては、市販品を用いてもよい。例えば、レオパウンドシリーズ(ライオン(株)製)のFED03、FED05等が好適に用いられる。
【0016】
また、上記市販品をマスターバッチとし、さらに分散補助樹脂を添加して導電性成形体材料としてもよい。該分散補助樹脂としては、任意の適切な樹脂を用いることができる。好ましくは、分散補助樹脂は、マスターバッチよりも高い粘度を有する樹脂である。マスターバッチよりも高い粘度を有する分散補助樹脂を用いることにより、導電性を発現する導電性材料同士の連結構造をほとんど破壊することなく、導電性材料をさらに高分散させることができる。また、粘度の高い分散補助樹脂を含むことにより、より低い延伸倍率で表面抵抗性を大きくすることができ、より高い延伸倍率でも導電性を保つことができる。分散補助樹脂としては、上記で例示した熱可塑性樹脂を用いることができる。好ましくは、分散補助樹脂は、マスターバッチに含まれる樹脂成分が単独の樹脂である場合には、該樹脂成分と同一の樹脂であり、マスターバッチに含まれる樹脂成分がポリマーアロイである場合には、ポリマーアロイに含まれる樹脂のうち、ベース樹脂と同一の樹脂である。上記マスターバッチに含まれる全樹脂成分と分散補助樹脂の配合割合(重量)は、好ましくは10:90〜50:50である。
【0017】
導電性成形体材料の溶融粘度は、メルトフローレート(JIS K−7210準拠)が1〜200g/10分であることが好ましい。このような溶融粘度を有することにより、本発明の製造方法により、容易に押出成形をすることができる。
【0018】
<B.導電性成形体の製造方法>
導電性成形体の製造方法の一例について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の好ましい実施形態における導電性成形体の製造方法の概念を示す模式図である。図1に示した例においては、導電性成形体は、押出機100およびダイ151,152により導電性成形体材料を押し出し成形し、押し出された成形品を引取機400にて延伸しながら引き取ることにより製造される。導電性成形体材料は、ホッパー101から投入され、バレル111,112,113,114にて溶融混練される。溶融状態の導電性成形体材料は、ギアポンプ130により、一定量がヘッド120を経て、ダイ151,152へと押し出される。押し出された溶融状態の導電性成形体材料は、ダイ151,152を経て、所望の形状に成形される。上記バレル111,112,113,114、ヘッド120、および、ダイ151,152は、熱媒循環装置140により、用いる導電性成形体材料に含まれる樹脂成分が溶融状態になる温度に設定される。押し出された成形体200は、ロール301,302を介して、引取機400にて引き取ることにより、延伸処理が施される。該延伸処理において、適切な引取速度で成形体200を引き取ることにより、延伸倍率を2倍以上とすることができる。押出機としては、特に制限はなく、単軸押出機であっても、二軸押出機等の多軸押出機であってもよい。
【0019】
導電性成形体材料の投入方法としては、例えば、樹脂成分および導電性材料、または、マスターバッチと分散補助樹脂を予備混合したペレットをフィーダーで一括投入する方法、導電性成形体材料として用いる材料の数だけフィーダーを用意し、同時に投入する方法が挙げられる。このような方法で導電性成形体材料を投入することにより、長手方向にバラつきが少ないシートを作製することができる。導電性成形体材料として、マスターバッチおよび分散補助樹脂を用いる場合、分散補助樹脂を投入後、マスターバッチを投入してもよい。この順で投入することにより、分散補助樹脂とマスターバッチとをより均一に混合することができる。
【0020】
別の実施形態においては、ベント口(図示せず)を有する押出機が用いられる。ベント口を有する押出機を用いることにより、得られる導電性成形体の表面平滑性を向上させることができる。上記ベント口には、真空ポンプや減圧装置等の吸引機構(図示せず)がさらに備えられていてもよい。吸引機構を用いてベントを行うことにより、ベントアップする場合には、ベント口を大気開放することで、吸引機構を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0021】
上記バレル、ヘッド、および、ダイの温度は、導電性成形体材料に含まれる樹脂成分が溶融する温度に設定すればよい。2種以上の樹脂が樹脂成分として含まれる導電性成形体材料を用いる場合には、全ての樹脂が溶融する温度とし、混合溶融した状態にすることが好ましい。
【0022】
上記ダイについては、特に制限はなく、成形品の形状に合わせて選択することができる。管状の成形品を製造する場合には、スパイラルダイが好適に用いられる。スパイラルダイを用いることにより、抵抗均一性および膜厚均一性に優れた管状の導電性成形体が得られる。スパイラルダイにおいて、スパイラルの条数が多いものが、導電性成形体材料の押出機からダイへの流入のバランスがよくなり、膜厚および導電性の均一性が向上するという点から好ましい。
【0023】
本発明の製造方法において、上記延伸工程で延伸倍率2倍以上で成形品を延伸することにより、導電性成形体の表面抵抗率を大きくすることができる。上記延伸倍率は2倍以上であればよく、好ましくは2〜13倍である。上記延伸倍率は、分散補助樹脂の使用の有無、所望の表面抵抗率に応じて、適宜選択すればよい。
【0024】
上記延伸工程は、図1に図示したように押出成形と連続で行ってもよく、押出成形とは別個の工程として行ってもよい。成形品の延伸方向は、長手方向(成形品の長さ方向)であっても、横方向(フィルム状の成形品の幅方向、管状成形品の周方向)であってもよく、二軸に延伸してもよい。
【0025】
上記延伸工程を、押出成形と連続して行うことにより、製造効率が向上する。押出成形と連続して延伸工程を行う場合、ダイから押し出された成形品を適切な速度で引き取ることにより延伸処理を施すことができる。延伸倍率は、ダイ押出速度と引取速度の比を設定することにより、決定することができる。押出成形と連続して延伸工程を行う場合、延伸方向は好ましくは長手方向である。
【0026】
上記延伸工程を押出成形とは別個の工程として行う場合、フィルムの延伸は、任意の適切な方法で行うことができる。例えば、長手方向に一軸延伸する自由端縦延伸方法、フィルムの長手方向を固定した状態で幅方向に一軸延伸する固定端横延伸方法、長手方向および幅方向の両方に延伸を行う逐次または同時二軸延伸方法、幅方向に延伸し長手方向に収縮する方法等を用いることができる。
【実施例】
【0027】
本発明について、以下の実施例および比較例を用いてさらに説明する。本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた分析方法は、以下の通りである。
(1)表面抵抗率の測定方法:
表面抵抗値は、ハイレスタ−UP MCP−HT450(三菱化学アナリテック社製、プローブ:URS)を用いて、印加電圧100V、250V、500V、1000Vで、10秒間膜抵抗を測定した。印加電圧が100Vおよび250Vの場合、表面抵抗率が10Ω/□以下、および、1013Ω/□以上の場合は値が検出できないため、under(10Ω/□以下)、または、over(1013Ω/□以上)とした。印加電圧が500Vの場合、表面抵抗率が10Ω/□以下、および、1014Ω/□以上の場合は値が検出できないため、under(10Ω/□以下)、または、over(1014Ω/□以上)とした。印加電圧が1000Vの場合、表面抵抗率が10Ω/□以下、および、1015Ω/□以上の場合は値が検出できないため、under(10Ω/□以下)、または、over(1015Ω/□以上)とした。
【0028】
実施例1:連続フィルム成形試験
[実施例1−1〜1−5]
市販の導電性成形体材料(ライオン社製、商品名「レオパウンドFED03」、ポリカーボネートとポリエステル樹脂のアロイにケッチェンブラックを分散させたもの)、および、分散補助樹脂(出光興産製、商品名「タフロン#2600」、ポリカーボネート樹脂)は、120℃で24時間予備乾燥を行った。
二軸混練押出機((株)東洋精機製作所製、二軸混練押出機「2D30W2」、基本仕様:表1)に、フィーダー2台を用いて、分散補助樹脂および市販の導電性成形体材料を同時に投入し、混練、成形し、得られた成形品を延伸しながらロールで引き取ることにより、延伸処理を施したフィルムを得た。混練条件、フィルム成形条件、吐出圧、トルク、得られたフィルムの厚み等については、表2に示す。なお、フィード回転数は、スクリュー回転数と吐出量の検量線を作成し、決定した。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
[実施例1−6〜1−8]
市販のポリマーアロイ(ユニチカ(株)製、商品名「P−5001」、ポリアリレートとポリカーボネートのアロイ(50/50))とカーボンブラック(デグサ製、チャンネルブラック「SB4」)を、二軸混練機((株)長田製作所製、基本仕様:表3)にて、混練、ペレタイジングすることにより、ペレットを得た。
二軸混練押出機((株)東洋精機製作所製、二軸混練押出機「2D30W2」、基本仕様:表1)に上記ペレット20重量部を投入し、混練、成形をし、得られた成形品を延伸しながらロールで引き取ることにより、延伸処理を施したフィルムを得た。混練条件、フィルム成形条件、吐出圧、トルク、得られたフィルムの厚み等については、表4に示す。なお、フィード回転数は、スクリュー回転数と吐出量の検量線を作成し、決定した。
【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
実施例1−1〜1−8のフィルムを20cmでカットし、試験片(20cm×15cm)とした。この試験片の所定の4つの部分を測定位置1〜4として、それぞれ厚みおよび表面抵抗値を測定した。また、得られたフィルムの厚みと押出機のダイリップの厚みから、延伸倍率を算出した。評価結果を表5に示す。
【0035】
【表5】

【0036】
[比較例1]
市販の導電性成形体材料(ライオン社製、商品名「レオパウンドFED03」)を、温度300℃、加圧10MPaで2分間熱プレスすることにより、フィルム化した。得られたフィルムの厚みと表面抵抗率の評価結果を後述の比較例2−1〜2−3の結果と併せて表6に示す。
【0037】
【表6】

【0038】
比較例2:高せん断バッチ試験
[比較例2−1]
市販の導電性成形体材料(ライオン社製、商品名「レオパウンドFED03」)および分散補助樹脂(出光興産製、商品名「タフロン#2600」、ポリカーボネート樹脂)は、120℃で6時間以上、65cmHgの条件で予備真空乾燥を行った。
高せん断混練機((株)井元製作所製、HSE3000mini、基本仕様:表7)に、市販の導電性成形体材料と分散補助樹脂を1:9で混合した配合物(以下、配合物A)30gを投入し、内部掃除吐出した。次いで、ダイからの吐出を止め、配合Aを6g投入し、機内循環させた。市販の導電性成形体材料と分散補助樹脂を1:9で混合した配合物(以下、配合物B)30gを投入し、配合Aを排出させ、サンプルを得ると同時に、混練機内を配合Bに置き換えた。得られたサンプルを温度280℃、加圧10MPaで2分間熱プレスし、フィルムを得た。混練条件を表8に示す。得られたサンプルの混練時の樹脂温度およびトルクデータを表9に、得られたフィルムの厚み及び表面抵抗率の評価結果を上記表6に示す。
【0039】
【表7】

【0040】
【表8】

【0041】
【表9】

【0042】
[比較例2−2]
市販の導電性成形体材料と分散補助樹脂の混合比を2:8にしたこと以外は比較例2−1と同様にして、サンプルを得た。得られたサンプルの混練時の樹脂温度およびトルクデータを上記表9に、得られたフィルムの厚みおよび表面抵抗率を上記表6に示す。
【0043】
[比較例2−3]
市販の導電性成形体材料と分散補助樹脂の混合比を5:5にしたこと以外は比較例2−1と同様にして、サンプルを得た。得られたサンプルの混練時の樹脂温度およびトルクデータを上記表9に、得られたフィルムの厚みおよび表面抵抗率の評価結果を上記表6に示す。
【0044】
実施例2:連続管状成形試験
[実施例2−1]
市販の導電性成形体材料(ライオン社製、商品名「レオパウンドFED03」)は、120℃で6時間予備乾燥を実施した。単軸押出機(GT40−32−A、(株)プラスチック工学研究所製、基本仕様:表10)およびスパイラル状に流路が形成されている環状押出ダイを用いて、管状成形体を製造した。単軸押出機の設定条件および実際のフィルムを得た際の各条件を表11に示す。引取速度は、引取後のフィルムの平均厚みが100μmとなるように調整した。なお、ベント口から真空引きを行ったが、ベントアップしたため、減圧はせず、大気開放した。
【0045】
【表10】

【0046】
【表11】

【0047】
[実施例2−2]
導電性成形体材料として、実施例1−6〜1−8で用いたポリマーアロイ/カーボンブラックのペレットを用いた以外は、実施例2−1と同様にして、管状成形体を製造した。単軸押出機の設定した条件および実際のフィルムを得た際の条件を上記表11に示す。
【0048】
実施例2−1で得られた管状成形体を50cm切り出し、図2に示した測定位置1〜8について、管状成形体の両端(a、c)および中央(b、端から25cm)の3点で、それぞれ厚みを測定した。各測定位置での厚みを、表12に示す。
【0049】
【表12】

【0050】
実施例2−1および2−2で得られた管状成形体を50cmに切り出し、サンプルとした。各サンプルの図3に示した測定位置1〜6について、サンプル表面と裏面の表面抵抗率および厚みを測定した。なお、サンプル表面とは、管状成形体の表面であり、裏面とはインナコア面に接触している面である。これらはサンプルの両端(図3のaとc)でそれぞれ測定した。測定結果を実施例2−1については、表13に、実施例2−2については、表14に示す。
【0051】
【表13】

【0052】
【表14】

【0053】
[評価]
実施例1−1〜1−8においては、ほぼ全ての実施例の表面抵抗率が1013Ω/□以上であった。一方、熱プレスによりフィルムを成形した比較例2−1〜2−3(市販の導電性成形体材料および分散補助樹脂としてポリカーボネート樹脂を使用)においては、分散補助樹脂の割合の多い比較例2−1を除いて、ほとんどの印加電圧で表面抵抗率がunderであった。延伸倍率が2倍以上となるようにフィルムに延伸処理を施すことにより、成形体の表面抵抗率が顕著に大きくなった。市販のポリマーアロイ(ユニチカ(株)製のP−5001)とカーボンブラック(デグサ製、SB4)とを含む導電性成形体材料をプレス成膜した場合には、通常、100Vで1011Ω/□オーダー、1000Vで1010Ω/□の表面抵抗率となる。導電性成形体材料として、市販のポリマーアロイとカーボンブラックとを用いた場合でも、延伸倍率が2倍以上になるようにフィルムに延伸処理を施すことにより、表面抵抗率は顕著に大きくなった。
【0054】
実施例2−1および2−2において、押出成形により管状成形体を成形することができた。管状成形体の厚みのバラつきは、±15%程度であった。実施例2−1では、得られた管状成形体の表面は平滑で光沢があったが、実施例2−2で得られた管状成形体は、実施例2−1の管状成形体に比べて表面に凝集物が多く確認された。
【0055】
市販の導電性成形体材料(ライオン社製、商品名「レオパウンドFED03」)を熱プレスしたフィルムである比較例1では、100V及び250V印加時の表面抵抗率はunderであったが、実施例2−1の管状成形体の100Vおよび250V印加時の表面抵抗率は8.54×10〜2.07×10Ω/□であり、値が大きくなった。市販のポリマーアロイ(ユニチカ(株)製のP−5001)とカーボンブラック(デグサ製、SB4)とを含む導電性成形体材料を熱プレスしたフィルムでは、通常、100V印加時の表面抵抗率が1011Ω/□オーダー、1000V印加時の表面抵抗率が1010Ω/□オーダーとなるが、実施例2−2の管状成形体の表面抵抗率は全てoverであった。これらの結果から、管状成形体を製造する場合においても、押出成形品を適度に(実施例2−1および2−2では7.5〜12.3倍)に延伸することにより、成形体の表面抵抗率を大きくすることができることがわかる。
【0056】
また、表12の結果から、管状成形体の表面の表面抵抗率よりも、管状成形体の裏面の表面抵抗率が高いことがわかる。管状成形体の裏面はインナコアに接触しているため、大気に接触している管状成形体の表面に比べて、冷却速度が速く、そのため、表面抵抗率が大きくなったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の導電性成形体は、導電性の要求される用途に好適に用いることができる。本発明の導電性成形体を用いた導電性中間転写ベルトは、プリンタや複写機等の画像形成装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
100 押出機
101 ホッパー
111,112,113,114 バレル
120 ヘッド
130 ギアポンプ
140 熱媒循環装置
151,152 ダイ
200 導電性成形体
301,302 ローラー
400 引取機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性成形体材料を押出成形する導電性成形体の製造方法であって、
押し出された成形体を延伸倍率2倍以上で延伸する工程を含む、導電性成形体の製造方法。
【請求項2】
前記導電性成形体が管状である、請求項1に記載の導電性成形体の製造方法。
【請求項3】
前記導電性成形体が熱可塑性樹脂を含む、請求項1または2に記載の導電性成形体の製造方法。
【請求項4】
前記導電性成形体材料がガラス転移温度の異なる2種以上の樹脂のアロイを含む、請求項1から3のいずれかに記載の導電性成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の導電性成形体の製造方法により得られる、導電性成形体。
【請求項6】
導電性中間転写ベルトとして用いられる、請求項5に記載の導電性成形体。
【請求項7】
請求項6に記載の導電性中間転写ベルトを用いた、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−126145(P2011−126145A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287213(P2009−287213)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】