説明

導電性接着剤を有する耐久電子アセンブリ

第1の電子要素と、第2の電子要素と、それらの間の耐久柔軟結合部と、を含む電子アセンブリ。前記結合部が、細長い電気伝導性粒子を含有する異方性導電性接着剤を含む。前記結合部が、細長いコンタクト領域にわたって前記第1の電子要素と前記第2の電子要素との間の少なくとも1つの電気経路を提供する。前記結合部が、少なくとも約200回の屈曲の間、機能維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子要素と異方導電性接着剤によって設けられた耐久柔軟結合部とを含む電子アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル回路が導電性接着剤で結合され、適切な電気接続について試験される。結合領域は製造および使用する間、硬質な状態に保持され、逆応力は結合部にほとんどまたは全くかからない。この用途は、結合された領域の屈曲を意図的に避けるように設計される。
【0003】
構造用接着剤が接着強さおよび耐タンパー性のために望ましいが、通常は脆く(高いガラス転移温度)、新型の電子デバイスを使用する間に必要とされる耐久性をもたず、又、通常、導電性ではない。
【0004】
接着剤が接着された時に接着剤の厚さを維持するために、例えば硬質スペーサー粒子を有する電気伝導性接着シートが記載されている。例えば、パターン化によって厚さにわたって電気伝導性を有する球形粒子または領域を有する異方性接着剤が記載されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要約すると、本発明は、第1の電子要素と、第2の電子要素と、それらの間の耐久柔軟結合部とを含む電子アセンブリを提供するものであり、前記結合部が、細長い電気伝導性粒子を含む異方性導電性接着剤と、細長いコンタクト領域によって設けられた、前記第1の電子要素と前記第2の電子要素との間の少なくとも1つの電気経路とを含み、前記結合部が少なくとも約200回の曲げサイクルの間、機能維持される。
【0006】
又、本発明は、前述の電子アセンブリを提供する工程を含み、そこにおいて、接着剤が硬化性であり、前記接着剤を硬化させることを含むか、または前記接着剤が非硬化性であり、前記接着剤を前記電子要素に結合することを含む、電子デバイスの製造方法を提供する。
【0007】
本明細書中で用いるとき、「主寸法(major dimension)」は、粒子の直径、長さ、幅、断面、または厚さの最大を意味し、「小さいほうの寸法(minor dimension)」は、粒子の直径、長さ、幅、断面、または厚さの最小を意味し、主寸法および小さいほうの寸法の両方とも標準スクリーニング技術、分粒装置、または供給元の説明書によって直接に測定または分類することができる。
「機能維持された(functionally maintained)」は、電子要素の間の接着力が著しく悪影響を及ぼされることがなく、この結合部を必要とする電子アセンブリの構造的結合性が維持されると同時に、第1の電子要素と第2の電子要素との間の少なくとも1つの電気経路が、(以下に定義された)曲げサイクルの少なくとも一部、すなわち、少なくとも1つのモードでの少なくとも1回の曲げの間維持されることを意味し、
「曲げサイクル(Flexural Cycle)」は、4つのモード、すなわち、(約8.5cmの長さ、約5.4cmの幅、および約0.8mmの厚さの寸法を有する)業界標準試料のスマートカードの長さ(x方向)において上に1回、下に1回、同じ試料カードの幅(y方向)において上に1回、下に1回、の各々の1組の曲げを意味する。有用な機器およびより詳細な手順を以下に記載する。
【0008】
先行技術の電気伝導性接着結合が硬質領域を必要としたのに対し、本発明の電子アセンブリは耐久柔軟結合部を有する。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の以下のより詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。開示内容の原理の上記の要約は、本開示内容の各々の例示された実施態様または全ての実施について記載することを意図しない。より具体的に以下に記載する詳細な説明は、本明細書に開示された原理を用いる現在のところ好ましい実施態様を例示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
すべての数は本明細書において用語「約」によって修飾されると考えられる。端点による数の範囲の記載には、その範囲内に包括されたすべての数を含める(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含める)。
【0011】
本発明は、第1の電子要素と、第2の電子要素と、それらの間の耐久柔軟結合部と、を含む電子アセンブリを提供する。前記結合部は、細長い電気伝導性粒子を含有する異方性導電性接着剤を含む。前記結合部はまた、細長いコンタクト領域にわたって前記第1の電子要素と前記第2の電子要素との間の少なくとも1つの電気経路を提供する。前記結合部は、少なくとも約200の曲げサイクルの間、機能維持される。
【0012】
どんな周知の電子要素を使用してもよい。具体的な選択を本明細書によってさらに示す。例えば、フレキシブル回路を硬質回路に付着させてもよく、2つのフレキシブル回路同士を付着させてもよい、等々。特に、電子要素は、集積回路、集積回路のチップコンタクト、フレキシブルまたは部分フレキシブル電子回路または硬質電子回路、スマートカード、高周波識別(RFID)タグなどの高周波デバイス、移動電話などの携帯用電子デバイス、パーソナル・デジタル・アシスタント、カメラ、単純なコンピュータまたは複合コンピュータ、タイマー、およびそれらの組合せであってもよい。
【0013】
耐久柔軟結合部を用いて少なくとも1つの電気経路によって、細長いコンタクト領域にわたって電子要素を電気接続する。さらに、2つ以上の細長いコンタクト領域が設けられてもよい。好ましくは、複数のコンタクト領域を各々の電子要素上で用いて接触の所望の時間にわたって電気コンタクトを提供するが、それが電子アセンブリの所望の寿命である場合がある。前記結合部が異方性導電性接着剤を含み、この接着剤が細長い電気伝導性粒子を含有する。
【0014】
本発明において異方性導電性接着材料は、(好ましくは、コンタクト領域ごとに1つより多い細長い粒子によって)電子要素の間の不連続な電気相互接続を提供し、他方、隣接した領域からの電気絶縁ももたらす。例えば、かかる接着剤は通常、その厚さにわたって導電性であり、他方、横方向に非導電性である。
【0015】
接着剤の基礎組成物は熱可塑性または硬化性、もしくはそれらの組合せであってもよい。本明細書中で用いるとき、「熱可塑性」は、熱を適用したときに物理的変化を受ける材料を指し、すなわち、熱によって材料が軟化し、流動することもあり、冷却した時にその初期の非流動状態に戻る。熱可塑性材料と硬化性材料との組合せは、熱を適用したときに物理的変化および化学的変化を受ける熱可塑性材料に影響を与えることがあり、すなわち、熱の適用によって材料が軟化し、流動することもあり、冷却した時にその初期の非流動状態に戻る。熱可塑性材料を再び加熱してそれを再び軟化させるかまたは流動させることができるが、組合せの材料は通常、流動が少なく、加熱下で再び流動しないことがある。適した熱可塑性樹脂には、ポリエステルおよびそれらのコポリマー、ポリアミド、コ−ポリアミド、ポリエーテル−コ−ポリアミド、ポリエステル−コ−ポリアミド、およびそれらの組み合わせなどがある。ポリエステルのブレンドが現在のところ好ましい。
【0016】
接着剤は、ホットメルト、感圧、構造用接着剤、硬化性などの様々なクラス、およびそれらの組み合わせから選択されてもよい。本明細書中で用いるとき、「構造用接着剤」は、好ましくは高温および/または多湿である場合がある使用条件にある間、材料が長時間の応力〜永久応力下で(例えば、数日、数週間、数ヶ月、またはそれ以上)接着力を保持することができることを意味する。1つの実施態様において、接着剤は、所期の機能を損なう程度まで流動しないのが好ましい。接着剤が硬化性であるとき、硬化反応は、30秒未満、より好ましくは約15秒未満、さらにより好ましくは約10、8、または5秒もしくはそれ以下で生じるなど、急速であるのが好ましい。硬化反応は、高温において、例えば約100℃より高温、より好ましくは約150℃より高温において、より速く進行することがある。最高硬化温度は好ましくは、周囲の材料が悪影響を及ぼされるレベルよりも低い。1つの態様においてこの温度は約220℃より低く、より好ましくは約210℃より低く、または約200℃よりも低い。
【0017】
1つの態様において、接着剤のガラス転移温度(Tg)は、硬化した後に25°Cを超えて変化しない(より好ましくは約10℃未満)。
【0018】
1つの態様において、接着剤は、約100MPa未満、約75MPa未満、および約50MPa未満から選択される貯蔵剪断弾性率を有する。かかる性質は、下記のようなレオロジー試験などの公知の技術によって測定される。
【0019】
接着剤が、熱可塑性材料、熱硬化性材料などの硬化性材料、および/またはエラストマー材料の組合せを含有してもよい。1つの態様において、接着剤が、エラストマーを約30〜約70重量部(pbw)(より好ましくは約30〜約60pbw)および相応して熱硬化性ポリマーを約70〜30pbw(より好ましくは少なくとも約40またはさらに50pbw)含む。例えば、接着剤が、エラストマーを約45〜約60pbwおよび硬化性ポリマーを少なくとも約40pbwで含んでもよい。又、接着剤がエラストマーおよび熱可塑性ポリマーを任意選択的に熱硬化性ポリマーと共に含んでもよい。
【0020】
適したエラストマーには、天然ゴムおよび合成ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、合成ポリイソプレン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM)、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリ(アルファオレフィン)、スチレン−ブタジエンランダムコポリマー、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、およびそれらの組み合わせなどがある。かかるエラストマーには、ポリ(ブタジエン−コ−アクリロニトリル)コポリマーなどがある。
【0021】
適した硬化性材料には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、シリコーン、およびそれらの組み合わせ、例えばかかる樹脂のコポリマーを必要とするハイブリッド材料がある。熱、光、紫外線、および/または湿分などのどんな公知の硬化機構を用いてもよく、この選択は本技術分野の範囲内である。スマートカードの場合、1つの好ましい硬化機構は熱である。
【0022】
又、適した接着剤には、公知のハイブリッド材料、例えば湿分硬化材料、および感圧硬化性材料などがある。
【0023】
フェノール樹脂が必要とされる場合、この樹脂は任意選択的にヘキサメチレンテトラミン(HMTA)を含有してもよい。HMTAの含有量は、フェノール樹脂の重量(重量%)を基準として少なくとも約5重量%または6重量%から約15重量%未満またはさらに、約10重量%未満までの範囲であってもよい。この樹脂中の遊離フェノール量は、約2重量%未満、より好ましくは約1重量%未満またはさらに約0.2重量%未満の範囲であってもよい。
【0024】
1つの態様において、適したフェノール樹脂は、約90〜約110℃の融点を有する。
【0025】
又、粘着付与剤、例えばロジンおよびロジン誘導体、ポリテルペン、クマロンインデン、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、水素化樹脂および炭化水素樹脂、例えば:アルファピネン系樹脂、ベータピネン系樹脂、リモネン系樹脂、ピペリレン系炭化水素樹脂の他、ロジン、ポリテルペンのエステル、テルペン−フェノール類、およびスチレン−無水マレイン酸などが異方性接着剤に含有されてもよい。一般に、粘着付与剤は、基礎接着材料100重量部当たり約10〜約200重量部を占める。
【0026】
任意選択的に、接着剤が、他の充填剤、スペーサー粒子、酸化防止剤、紫外線安定剤、腐蝕防止剤、補強材、および熱伝導性粒子などの添加剤を含有することもできる。
【0027】
本発明の異方性導電性接着剤の成分は、どんな公知の方法によって製造されてもよい。粒子は好ましくは、液体接着剤中への粒子のブレンド、溶融加工、またはスクリーンを通しての粒子の散布によるなどのどれかの公知の混合技術などによって、接着剤中に均一に分散される。例えば、繊維などの細長い粒子を有する接着剤は、繊維と選択された接着剤配合物とのフレンドのダイコーティング、またはライナー、基材、電子要素、またはキャリアフィルム上への接着剤の予備コーティング、およびスクリーン装置を用いて導電性繊維を接着剤上に分散させるなどの様々な公知の方法によって製造されてもよい。別の例については、粉末篩(flour sifters)またはソルトシェーカーなどの粒子分配装置が一般に、粒子を分散させる時に使用される。適した粒子分配装置を用いることができ、そこにおいて、例えば撹拌または清掃用部材のどちらかを用いて、適した大きさの孔を有するスクリーンを通して粒子を分配する。かかる方法の例は、米国特許第6,569,494号明細書に記載されており、導電性粒子を電気帯電させる任意の余分の工程を用いて粒子を互いに分離状態に保つことができる。又、繊維を含有する接着剤層、シート、またはウェブを単一のローラーでまたは2つのローラーの間で加圧またはニップに送ることにより、分散された粒子をさらに埋め込むことができる。
【0028】
1つの実施態様において、導電性繊維を接着剤中に固定するかまたは部分的に埋めることができ、これにより、結合する前に繊維の一部が環境に暴露される。これは、構造体が複数の小さなばね押し電気コンタクトとして作用することを可能にする場合がある。結合した後、繊維は結合部の平面内にあり、好ましくは接着剤の厚さ内にある。
【0029】
図1は、接着剤ベース中の分散された(この画像において8表面積パーセント(SA%))細長い電気伝導性細長い粒子を示す光学顕微鏡写真のデジタル画像である。
【0030】
電気伝導性粒子のレベルは、横方向の電気絶縁(x−およびy方向の非導電性)を行いながら、所望の方向の電気伝導性(一般に厚さまたはz方向)をもたらすように選択される。電気伝導性粒子のレベルは好ましくは、各々のコンタクト領域のために多数の粒子を提供するように選択される。例えば、1つの態様において粒子の密度は、1つのコンタクト領域またはパッド当たり少なくとも約6(より好ましくは少なくとも約30)の粒子である。電気コンタクトパッドの大きさは、非常に小さい(例えば、約0.5mmより小さい)から比較的大きい(例えば、約9mmまで)、の範囲であり、スマートカードについての平均が約4mmである)。
【0031】
粒子のレベルの尺度は、覆われた表面積のパーセント(SA%)である。この尺度において、ランダムに選択された領域の(接着剤の厚さにわたってとられた)デジタル画像を好ましくは画像処理ソフトウエアを利用して検査し、粒子を有さない接着剤の面積に対して粒子によって覆われた面積を決定する。粒子面積を全面積で割ることによって、表面積のパーセンテージが得られる。本発明において、接着剤中の電気伝導性粒子のレベルは少なくとも約5SA%、より好ましくは少なくとも約10SA%である。本発明において、接着剤中の電気伝導性粒子のレベルは約50表面積パーセント(SA%)未満、より好ましくは約40SA%未満、より好ましくは約30SA%未満である。
【0032】
粒子の表面積の被覆面積のレベルは一般に、接着剤母材の約1SA%〜約30SA%(より好ましくは約5SA%〜約15SA%)の範囲である。低いほうのレベルが1パッド中に少なくとも約6粒子を提供するのがよく、高いほうのレベルが、パーコレーションまたは望ましくないレベルのx−y面の導電率が生じるレベルより下であるのがよい。
【0033】
概して細長い粒子の主寸法が約10〜約500μm、より好ましくは約30μm〜約250μmの範囲である。概して、平均粒度に基づいて細長い粒子の最大寸法は、約15〜約200μm、より好ましくは約30μm〜約180μmの範囲である。概して、細長い粒子の小さいほうの寸法は約5〜約100μm、より好ましくは約10μm〜約50μmの範囲である。
【0034】
細長い粒子は高アスペクト比を有し、例えば非球形粒子、楕円形粒子、繊維(ウィスカーおよび針など)、フレークおよびそれらの組合せである。
【0035】
1つの態様において、電気伝導性粒子が、電気伝導性コーティングを有する繊維から選択される。概して細長い粒子の主寸法(例えば、繊維の場合は長さ)は、約10μm〜約200μmの平均粒度にわたり、低いほうの粒度は、より狭いピッチ用途のために選択される。基礎材料は、ガラスなどの非導電性材料であってもよい。例えば、金属コーティングなどのどんな公知の電気伝導性コーティングを使用することもできる。市販の細長い電気伝導性粒子は、ペンシルベニア州、バレーフォージ(Valley Forge,PA)のポッター・インダストリーズ(Potters Industries)製のコンダクト・O・フィル(Conduct−O−Fil)(登録商標)銀被覆粒子として入手可能である。
【0036】
別の実施態様において、繊維などの細長い粒子が、球形および/または不規則な形状を含めて他の形状を有する粒子と組み合わせて用いられる。概して球形および不規則な粒子の主寸法(例えば、球形粒子の場合は直径であるが、この直径はまた、球形粒子の特殊な場合では小さいほうの寸法である)は、約2μm〜約80μmの平均粒度にわたり、低いほうの粒度は、より狭いピッチ用途のために選択される。1つの態様において、導電性または非導電性であり得る、かかる二次粒子を用いて、電子要素が結合される時の結合ラインの厚さを決定することができる。
【0037】
別の態様において、細長い粒子の小さいほうの寸法を用いて接着結合部の厚さを制御する。この態様において、任意の細長でない粒子のレベルが、結合部の厚さを有害なまで増大させないように低く保たれる。
【0038】
本発明の1つの態様において、球形および/または不規則な粒子の最大平均粒度は、細長い粒子の小さいほうの寸法(例えば、繊維の幅または直径)より実質的に大きくない。本明細書中で用いるとき、「実質的により大きい」は、少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約25%大きいことを意味し、ある場合には50%、100%、200%またはそれ以上大きいことを意味する。他の態様において、球形および/または不規則な粒子の最大平均粒度が細長い粒子の小さいほうの寸法(例えば、繊維の幅または直径)より実質的に大きいとき、細長でない粒子の量は好ましくは、重量を基準として細長い粒子の量よりも少ない(好ましくは非常に少ない)。別の態様において、細長でない粒子の量は、細長い粒子の量よりも少なくとも約5重量%少ない(より好ましくは少なくとも約10重量%少なく、いくつかの実施態様において少なくとも約20重量%少ない)。
【0039】
導電性繊維を含む接着フィルムを使用して、スマートカード上のキャビティ中にマイクロプロセッサモジュールを付着させることができ、そしてこのカードは例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)あるいはポリエステル(PET)から製造される。カードブランクは例えば、作付けアンテナを有するコンビネーション・カードであってもよい。接着フィルムおよびどれかの周知の結合方法を用いてモデュールをカードに結合することができる。1つのそのような方法は、データカード(Datacard)(Semoy,France)から入手可能なモデルENC3000G4自動モデュール結合装置を必要とする。
【0040】
自動装置を用いて完全に使用可能なマイクロプロセッサをカードブランクに結合するための作業パラメーターとしては、予備粘着温度(接着剤を粘着性にするために十分に高い温度、例えば、約80℃〜約200℃、電子デバイスをカードに付着させるために十分な予備粘着圧力、例えば、約0.5バール(0.5×10Pa)〜約12バール(12×10Pa)、および約1〜約10秒(より好ましくは約1.5〜約5秒)の時間、予備粘着温度/圧力条件を保持することなどが挙げられる。さらに別のパラメーターとしては、約90℃〜約220℃の結合ヘッド温度が挙げられ、特定温度は、迅速な実験または類似の接着剤化学のための接着剤製造元のガイドラインによって選択される。さらに、上述の自動結合装置はまた、約0℃〜約200℃のキャビティの予備加熱(脈動空気温度)、約50ニュートン(N)〜約100N(より好ましくは約60N〜約80N)の加熱力(この加熱力は、約1〜約10秒(より好ましくは約3〜約7秒)の間保持される)、および結合温度より低い温度および好ましくは周囲温度より低く、より好ましくは約20℃より低い温度での任意の(好ましい)冷却、を使用することができる。
【0041】
本発明の1つの態様において、電子アセンブリが機能維持される。すなわち、電子要素の間の接着力は、著しく悪影響を及ぼされず、耐久柔軟結合部を必要とする電子アセンブリの構造的結合性が維持され、同時に、第1の電子要素と第2の電子要素との間の少なくとも1つの電気経路が、曲げサイクルの少なくとも一部の間、維持される。「スマートカード」などの集積回路カードを必要とする実施例の1つにおいて、これは、集積回路カードの読み取りおよび/または書き込みモードが使用可能な状態であることを意味する。電気経路にわたる抵抗は好ましくは、約30オームより低く維持され、より好ましくは約20オームより低いかまたはさらに、約10オームより低く維持される。
【0042】
本発明の耐久柔軟結合部は好ましくは、少なくとも約200の曲げサイクル、より好ましくは少なくとも約500、1000、2000、4000、5000またはさらに多くの曲げサイクルの間、機能維持される。本発明の1つの態様において、電子アセンブリは、1000の曲げサイクルの後に機能可能な状態であり、それは、本発明を備えるスマートカードなどのデバイスが数年の所期の使用にわたって機能することを確実にするはずである。別の態様において、電子アセンブリは、4000の曲げサイクルの後に機能可能な状態であり、それは、本発明を備えるスマートカードなどのデバイスが、酷使にもかかわらず機能することを確実にするはずである。
【0043】
例えば、長さ8.5cmのスマートカード試料を、カードの各端部にクランプされたジョーをカードの中心の方向に移動させることによって上方に屈曲して2.4cm垂直移動して7.2cmの「新しい長さ」とし、次いで初期状態に緩めることができる。次いで、幅5.4cmのこのカードを同様に上方に屈曲して1.4cm垂直移動して4.6cmの「新しい幅」とし、次いで初期状態に緩めることができる。次いでカードを下方に屈曲して同様な「新しい長さ」とし、緩め、そして下方に屈曲して垂直移動して同様な「新しい幅」とし、緩めることができる。この曲げサイクルに要するのは1秒未満であり、1000の曲げサイクルは約20分かかる。少なくとも1つの方向に屈曲する前、中、後ならびにこの屈曲の45分後の抵抗を記録することにより、結合耐久性の指標を与えることができる。公知の異方性導電性接着剤は、屈曲した時に劣化または破損するか(抵抗が約20オームを超えて増加する)、または抵抗の増加を示し、好ましくない耐久性の期待値を示す。本発明の1つの態様の電子アセンブリは、数千の曲げサイクル全体にわたった同様な抵抗を維持し、良好〜すぐれた耐久性の期待値につながる。より詳細な内容を以下に記載し、そこにおいて本発明は、数千の曲げサイクル全体にわたって耐久性をもたらす。
【0044】
耐久柔軟結合部は、湿度、熱衝撃、および/または高温に耐性がある場合がある。より具体的には、耐久柔軟結合部は、耐湿性、耐熱性、および/または耐熱衝撃性の1つ以上の試験に耐える。好ましい実施態様において、前記結合部は、1つより多いかかる試験に耐える。本明細書中で用いるとき、「耐える」は、前記結合部が機能維持されることを意味し、好ましくは、前記結合部および/または電子アセンブリが、それが使用されるどんなデバイスにおいても最も弱いリンクではないことを意味する。
【0045】
例えば、耐湿性は、相対湿度が少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90%またはさらに95%である間、少なくとも約50℃、より好ましくは少なくとも約60℃またはさらに65℃または70℃の温度において7日(より好ましくは10日またはさらに、14日)後の導電率によって測定されてもよい。
【0046】
別の例については、耐熱衝撃性は、多数のサイクルの間、高温から低温、およびその逆に戻るなど、電子アセンブリを繰返し温度変化にかけた後の導電率を測定することによって決定されてもよい。高温は少なくとも約50℃、より好ましくは少なくとも約60℃または70℃、もしくはさらに高い(好ましくは、約210℃など、最高結合温度より低い)。低温は約0℃より低く、より好ましくは、約−20℃、−30℃、−35℃、−40℃より低く、またはさらに、より低い(好ましくは、極低温の極値より高い)。サイクル数は、少なくとも約3、より好ましくは少なくとも約10、25、50、100、またはさらにそれ以上である(50サイクルが通常、電子アセンブリが数ヶ月〜数年の通常使用にもちこたえることを確実にするのに十分である)。耐熱衝撃性の試験のための1つの有用な組合せは、70℃〜−35℃で50回の衝撃後に導電率を測定することを必要とする。これらの試験において、サイクル経過した後の導電率は、電子アセンブリの機能のために十分でなければならない。
【0047】
さらに別の例のために、耐熱性は、少なくとも約70℃、より好ましくは少なくとも約85℃、100℃、125℃、150℃またはさらにそれ以上などの高温に暴露した後の導電率を測定することによって決定されてもよいが、最高温度は、電子アセンブリ中の他の成分によって制限されることがある。かかる試験において、アセンブリは、少なくとも約24時間、より好ましくは少なくとも約48、72、100、250、500、1000、1500、またはさらに、2000時間、高温に保持され、この暴露後に電子アセンブリは、機能可能なままである周囲温度に戻される。
【0048】
図2は、本発明の様々な実施態様、ならびに本発明の必要とされる特徴をもたない比較例の電子アセンブリによる電子アセンブリの合格率の累計を示す。各試験は100%の最高合格率を有し、従ってこのチャートの全最大値は300%である。アセンブリA(実施例1)は、アセンブリB(C1)よりもさらに良い性能を示す。アセンブリC(実施例3)は、アセンブリD(C2)よりもさらに良い性能を示し、それはまた、本発明の先行の実施態様(アセンブリA)よりも改良を示す。アセンブリE(実施例5)は、全ての先行の材料よりもさらに良い性能を示し、又、アセンブリF(C3)よりも改良を示す。比較用材料BおよびDの試料のどれも湿度試験を合格せず、10〜13%だけが熱衝撃試験に合格した。3つの試験の総計が少なくとも100%であることによって、その電子アセンブリのさらに別の問題が保証されることが示される。各試験について様々なアセンブリを比較すると、本発明によるアセンブリの性能が劇的によくなることを示す。アセンブリA、C、およびEは全て、比較用アセンブリよりもすぐれているが、アセンブリEが全体的な最良の性能を示す。
【0049】
第1および第2の電子要素の間の結合部を分離すると、一般に、一方または両方の電子要素、1つ以上の接触点、および/または全電子アセンブリを破壊し、電子アセンブリを機能不可能にする。この態様は、耐タンパー性の特徴をアセンブリに与える。
【0050】
本発明の接着構造体は、球形粒子を有する公知の導電性接着剤より低い電気抵抗、より高い耐機械的歪み性、および/またはより高い耐熱衝撃性などの特徴を有するすぐれた電気性能を提供する。
【0051】
接着剤は、この接着剤で作製された結合部の機能および耐久性を妨げない限りにおいて、熱伝導性粒子、非電気導電性粒子(同じく熱伝導性であってもよい)、酸化防止剤、染料、顔料、充填剤、定着剤、難燃剤等の付加的な成分を含有することができる。
【0052】
本発明は、電子部品および/またはサブコンポーネントを有する電子デバイスにおいて有用である。1つのこのようなデバイスはスマートカードである。
【0053】
本発明の目的および利点は、以下の実施例によってさらに示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料およびそれらの量、ならびに他の条件および詳細は、本発明を不当に限定すると考えられるべきではない。
【実施例】
【0054】
材料
エラストマー ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー(結合アクリロニトリル含有量41重量パーセント(重量%)、英国、サウスグラモーガン、サリーのゼオン・ケミカル・ヨーロッパ社(Zeon Chemicals Europe,Ltd.,Sully,South Glamorgan,UK)からBREON N41H80として入手可能)。
【0055】
樹脂 フェノールノボラック樹脂とヘキサメチレンテトラミンの配合物(遊離フェノール<0.2%および9%のヘキサメチレンテトラミンを有するものとして記載。ドイツ、イーザローン・レトマテのベークライトAG(Bakelite AG,Iserlohn−Letmathe,Germany)から0222 SP 06として入手可能)。
【0056】
接着剤1 ポリエステル系熱可塑性非硬化結合用フィルム(ミネソタ州、セントポールの3M社(3M Company,St.Paul,MN)から商品名3M(登録商標)サーモ・ボンド・フィルム(Thermo−Bond Film)615EGとして入手可能)であり、レオメトリクス・ダイナミック・アナライザ(Rheometrics Dynamic Analyzer)(RDA)によって測定され、以下に記載された試験方法によって試験されたレオロジー性質は、Tgが34℃、G’が1×10ダイン/平方センチメートル(dyn/sq.cm)(10メガパスカル(MPa))、およびG”が5×10dyn/sq.cm(5MPa)である。
【0057】
接着剤2 ポリエステル系熱可塑性樹脂非硬化結合用フィルム(ミネソタ州、セントポールの3M社から商品名3M(登録商標)サーモ・ボンド・フィルム668EGとして入手可能)であり、RDAによって測定されたレオロジー性質は、Tgが10.8℃、G’が2×10dyn/sq.cm(2MPa)、およびG”が1×10dyn/sq.cm(1MPa)である。
【0058】
電気伝導性粒子1(ECP1) 銀で被覆された短いガラス繊維(ペンシルベニア州、バレーフォージのポッター・インダストリーズ(Potters Industries,Valley Forge,PA)からコンダクト−O−フィル(Conduct−O−Fil)(登録商標)SF82TF8として入手可能)、平均粒度が130μm、D10が50μmおよびD90が175μmであり、ならびに8重量%の銀を有するものとして記載され、又、平均直径が約20〜30μmであると考えられる。
【0059】
電気伝導性粒子2(ECP2) 銀被覆ガラスビード、平均粒径43μm(ポッター・インダストリーズからコンダクト−O−フィル(登録商標)S−3000−S3Pとして入手可能)。
【0060】
試験方法
A.接着剤の試験
1)PVCおよびPETFからの180°剥離接着力
約200mmの長さおよび約25mmの幅を有する接着フィルムの試料を、加熱プレスを用いて、190℃の温度および3バール(3×10Pa)の圧力および5秒の結合時間を用いてポリ塩化ビニル(PVC)の試験板(フランス、ラ・ガレン・コロンブ(La Garenne Colombes,France)のALTからW/M2XB190μmとして入手可能なカード)またはポリエチレンテレフタレート(PETF)(デラウェア州、ウィルミントンのデュポンカンパニー(DuPont Co.,Wilmington,DE)からメリネックス・コアー(MELINEX Core)1として入手可能な厚さ307μmのポリマーフィルム)に結合した。次に、同様な第2のシートを積層によって接着フィルムの露出面に結合した。次いで、180°の剥離の測定を実施するために、試料の露出端を把持し、インストロン(Instron)モデル4301(マサチューセッツ州、カントンのインストロン・コーポレーション(Instron Corp.,Canton,MA)製)を用いて150mm/分の速度において180°で剥離した。試験を3つの試料について行い、平均の結果をニュートン/センチメートル(N/cm)単位で記録した。
【0061】
2)ガラス転移温度、Tg ℃
動的機械的熱分析(DMTA)を使用して、接着剤のガラス転移温度(Tg)(℃単位)を示す。ニュージャージー州、ピスキャタウエィのレオメトリック・サイエンティフィック社(Rheometric Scientific,Inc.,Piscataway,NJ)から入手可能な動的機械的熱分析器(Dynamic Mechanical Thermal Analyzer)Vを用いて、フィルム試料を−100℃〜200℃の範囲にわたって毎分2℃の率で加熱し、熱転移を1ヘルツの周波数および0.05%の歪において記録した。試験を引張モードで行なった。試験を少なくとも2つの試料について行い、平均の結果が報告された。
【0062】
3)レオロジー性質
レオメトリー・サイエンティフィックから入手可能なレオメトリクス・ダイナミック・アナライザ(RDA)を用いて貯蔵剪断弾性率(G’)、損失剪断弾性率(G”)、およびガラス転移温度Tgを25℃および1ヘルツ(Hz)において決定した。ASTM D5279は概して、この試験方法のための計測について記載する。試料フィルムを層状に重ね、厚さ1〜3mmの試料を得た。試料を直径8mmの平行なプレート間のRDA内に置き、RDAを6.28ラジアン/秒(1ヘルツ)の剪断速度において動作させた。貯蔵剪断弾性率(G’)および損失剪断弾性率(G”)をダイン/cmにおいて記録し、メガパスカル(MPa)に変換し、ガラス転移温度Tgを度(摂氏)(℃)単位で記録した。
【0063】
4)動的剪断
長さ約200mmおよび幅約25mmの接着フィルムの試料を、エッチングされたアルミニウムの試験板に結合し、25mm×25mmの結合領域を形成した。結合部を、接着剤1ベースの実施例1、2、およびC1については5分間140℃および2バール(2×10Pa)の圧力において製造し、接着剤2ベースの実施例3、4、およびC2については5分間、160℃および2バール(2×10Pa)の圧力において製造し、(下記の)実施例5、6、およびC3の接着剤については5分間190℃および5バールの圧力(5×10Pa)において製造した。結合部を2.5mm/分のクロスヘッド速度において試験した。試験を3〜4の試料について行い、平均の結果をMPa単位で記録した。
【0064】
5)表面積のパーセント
埋め込まれた粒子によって覆われた表面積を顕微鏡を用いて測定した。それらの表面の上に埋め込み粒子を有する物品を、ビデオカメラを備えたオリンパス(OLYMPUS)BX60F5(日本のオリンパス光学工業社(Olympus Optical Co.Ltd.,Japan)から入手可能)顕微鏡を用いて20倍の倍率において検査した。ランダムに選択された領域の写真を撮り、画像を後で検査するためにデジタルフォーマットで記録した。各々が約1mmの領域を有するいくつかの画像を、シグマスキャン(SIGMASCAN)PRO5画像処理ソフトウェア(イリノイ州、シカゴのSPSS社(SPSS Inc.,Chicago.IL)から入手可能)を用いて分析し、粒子によって覆われた面積を得た。覆われた面積のパーセンテージを求めるために、試料中のすべての粒子の平均面積を画像化領域の全面積で割った。この数を100で乗じてパーセンテージを得た。試験を3つの試料について行い、平均の結果が報告された。
【0065】
B.カード関連の試験
カードの作製および電気抵抗
内部に埋め込みアンテナおよび電子配線を有するデュアル・インターフェースPVCカードブランク(フランス国、パレソ・セデのACGフランス(ACG France,Palaiseau Cedex,France)からデュアル・インターフェース・バージョン・オーネ・モデュール・メンゲ(Dual interface Version Ohne Modul Menge) S13として入手可能)を、工業規格に記載された結合手順を用いて、すなわち、180℃および9バール(9×10Pa)の圧力において5秒間、自動モデュール結合装置(モデルENC3000G4としてデータカードから入手で可能)を用いて、ダミーマイクロプロセッサーモデュールに結合した。実施例において作製された接着フィルムを用いて、各実施例の接着剤を有する合計で約200の結合されたカードを製造した。ダミーモデュール上に設けられた2つの露出した測定点を接触させることによって、電気抵抗をオーム単位でオーム・メータ(ワシントン州、エバレットのフルーク・コーポレーション(Fluke Corp.,Everett,WA)製のフルーク(Fluke)83IIIマルチメータ)を用いて測定した。抵抗には、ダミーモデュールおよび埋め込みアンテナの抵抗が含まれる。カードのすべての抵抗を最初と応力試験の1つを行なった後に測定した。
【0066】
1)初期抵抗
電気抵抗を、結合後にすぐに測定した。試験を各実施例の接着剤から作製された80〜150のカードについて行い、全てのカードの平均を記録した。
【0067】
2)曲げサイクル試験
結合されたカードを、データカード(Datacard)から「トゥイスター(Twister)」として入手可能な試験装置を用いてISO¥ICE10373第1−3部によって試験した。試験には、23℃において4つのモードで屈曲することが含まれる。モードは次の通りである。すなわち、(各カードの端を保持するジョーをカードの中心の方向に移動させることによって長さにおいて)20mm上に曲げ、その後に元の位置に戻し、250回反復することと、(各カードの側面を保持するジョーをカードの中心の方向に移動させることによって幅において)10mm上に曲げ、その後に元の位置に戻し、250回反復することと、同様に(長さにおいて)20mm下に曲げ、その後に元の位置に戻し、250回反復することと、同様に(幅において)10mm下に曲げ、その後に元の位置に戻し、250回反復することである。これによって1000回の曲げサイクルが行なわれ、約20分かかる。この試験を反復して、記載したように1000回の単位で数千の曲げサイクルを行い、結果を以下に記載する。試験を各実施例の接着剤から作製された最低20のカードについて行なった。
【0068】
3)湿度老化
結合されたカードを10日間、65℃および95%の相対湿度に暴露した。試験を各実施例の接着剤から作製された最低20のカードについて、湿潤環境から除去された数分以内に行なった。
【0069】
4)熱衝撃
結合されたカードを15分間−35℃の温度に暴露し、次いで(1分以内に)低温環境から70℃の温度の炉に移動させ、そこにカードを15分間、保持した。次いでカードを(1分以内に)炉から低温環境(−35℃)に移動させた。この温度サイクルを50サイクル反復した。熱衝撃サイクルの終了から数分以内に試験を行なった。試験を各実施例の接着剤から作製された最低20のカードについて行なった。
【0070】
この試験において、「合格」は、個々の結合されたカードが20オーム以下の抵抗の測定値を有したことを意味し、「損傷されたカード」は、個々の結合されたカードが20オームを超える抵抗の測定値を有したことを意味し、「開」は、個々の結合されたカードが無限抵抗(接続されていないカードまたは開回路)を有したことを意味する。以下の表には、各試験の結果として最低20のカードの「合格」のパーセントおよび「開」のパーセントの結果が記載される。
【0071】
5)モデュールの接着力
上に記載されたようにモデュールをカードに結合した(カードの作製)。次いで、モデュール下のカードの小片を切り取り、モデュールの後部へのアクセスを可能にする。次に、カードを引張試験機内のジグに保持し、直径6.5mmの平らな端部を有する円筒プローブを、10mm/分のクロスヘッド速度においてカードの後側から結合モデュールの方へ送った。結合部の破損時の最大力をニュートン単位で記録した。試験を実施例の接着剤ごとに3〜4のカードについて行い、平均の結果が報告された。
【0072】
6)モデュールの除去試験(耐タンパー性)
これは、耐タンパー性の尺度である。モデュールをカードから除去すると、自己破壊するかまたはモデュールに損傷を与えることができ、それを使用不能にするかまたはデータを別のカードに移すことを不可能にするのがよい。試験は、カード−モデュール結合の耐タンパー性の主観的な指標である。一般的なタンパー技術は、モデュールを無損傷に除去するために使用される。これらには、手作業で剥離することが含まれる。モデュールを除去すると常にそれを破壊する結合されたアセンブリは、「+」として示された。モデュールおよび/またはカードに損傷を与えずにモデュールを除去することができる結合されたアセンブリは、「−」として示された。モデュールおよび/またはカードに若干の損傷を与えるがそれを完全には破壊せずにモデュールを除去することができる結合されたアセンブリは、「(+/−)」の中間結果として示された。
【0073】
粒子の埋め込み
実施例1〜6において、様々な被覆ウェブに、リザーバを撹拌するための手段および粒子の分配を促進するためのブラシと共に篩を有するリザーバを備えた機器を用いて粒子を埋め込んだ。適した機器の1つの例は、米国特許第6,569,494号明細書に完全に記載されている。より具体的には、電気接地された熱板を用いて、接着剤を粘着性状態に軟化させ、次いで粒子をリザーバから接着剤ウェブ上に散布した。このリザーバは、(接着剤ウェブに最も近い)その前壁の矩形の開口を有した。開口を、スクリーン印刷に一般に用いられるナイロンスクリーン(80μmの大きさ、ニューヨーク州、サマースのサーティ・アメリカのマジェスティク・デヴィジョン(Saati America’s Majestic Division,Somers,NY)から販売されている)で覆った。粒子を高電圧(一般に7kV)において電気帯電させ、散布中にそれらを十分に分散された状態に保つ。合成繊維のフェルト裏材から製造された塗装ローラーブラシ(ニューヨーク州、ニューヨークのコリンズ&エイトケン・カンパニー(Collins & Aitken Co.,New York.NY)から販売されている)をナイロンスクリーンと接触させたまま回転させてスクリーンを通して粒子を分配させるのを助けた。ブラシの回転速度を変えるために、毎分3〜90回転(rpm)でブラシを回転させるモーターにDC電圧(0.6V〜12Vの範囲)を印加し、分配速度を制御した。4V(29rpm)の値によって、10%〜14%の表面積のパーセントが得られた。均一な分配を容易にするために、リザーバ内の粒子を機械的に撹拌した。粒子を散布した後、ウェブを2つのロールのニップに通過させ、分散された粒子を接着剤ウェブにさらに埋め込んだ。
【0074】
実施例の全てを湿度制御された環境において行なった。機器内の代表的な相対湿度は約10%より低く保たれ、周囲温度は約30℃であった。
【0075】
実施例1および2
ECP1粒子を、上述の一般的方法および装置を用いて接着剤1のフィルムに埋め込んだ。下記のパラメーターを用いた。すなわち、ウェブ速度が0.46メートル/分(m/min)(1.5フィート/分(fpm))、熱板温度が90℃、ブラシ上のチャージワイヤと熱板との間の距離が30mm、およびブラシを回転させるための動作電圧が4ボルト(V)である。7kVの負のDC電位を分配装置に印加した。被覆された接着フィルムを、1平方インチ(psi)当たり20ポンド(0.138MPa)のニップ圧力に設定された2つのシリコーンゴムロールのニップ中に送った。
【0076】
次に、導電性繊維を含む接着フィルムを用いて、ダミーのマイクロプロセッサモデュールをPVCから製造されたスマートカード上のキャビティに付着させた。上述の結合装置を用いて実施例1の接着フィルムを用いてモデュールをPVCカードに結合した。
【0077】
自動装置を用いて完全に使用可能なマイクロプロセッサをカードブランクに結合するための作業パラメーターを挙げると、以下の通りである。予備粘着温度:実施例1、2、およびC1については100℃、実施例3、4、およびC2については160℃、および実施例5、6、およびC3については150℃。予備粘着圧力:5.5バール。予備粘着時間:1.5〜4.5秒。結合ヘッド温度:実施例1、2、およびC1については160℃、実施例3、4、およびC2については190℃、および実施例5、6、およびC3については200℃。キャビティの予備加熱(脈動空気温度):0〜200℃。加熱力:5〜6秒間、62〜78.5ニュートン。15℃においての冷却:連続的である。
【0078】
実施例2を実施例1の場合と同様に製造したが、ただし、(1)電気伝導性粒子の混合物を接着剤の表面に埋め込んだ。導電性粒子の適用された混合物は、50pbwのECP1粒子および50pbwのECP2粒子を含み、(2)導電性粒子の混合物を接着フィルムに適用するための作業パラメーターは、4.6m/分(15fpm)およびブラシを回転(17rpm)させるための動作電圧2.5Vにおいてウェブが移動するように調節された。
【0079】
上述の試験方法によって接着フィルムについて試験を行なった。接着フィルムの性質を表1にまとめる。全ての接着フィルムが約60μmの厚さであった。結合されたカードの試験結果を表2にまとめる。
【0080】
実施例3および4
実施例3において、実施例1において使用されたのと本質的に同じ方法によってECP1粒子を接着剤2に適用し、他方、実施例4において、実施例2の粒子混合物を、実施例2の方法によって接着剤2に適用した。
【0081】
実施例5および6
55重量部(pbw)のエラストマーと45pbwの樹脂との溶液を調製するために、最初にエラストマーをメチルエチルケトン(MEK)に溶解し、次いで樹脂を添加した。混合によって溶解を終えた後、溶媒の比がMEK/トルエン80/20pbw重量となるようにトルエンを添加した。溶液の粘度は約5,000〜10,000mPa.secであった。
【0082】
このように調製された溶液を、コーティングの厚さが約200μmとなるようにナイフコータを用いてシリコーン−コーテッドペーパーを含む剥離ライナー上にコートした。溶媒を除去するために有効な最低温度の約60℃において強制空気炉を用いてコーティングを乾燥させ、約60μmの厚さの不粘着性フィルムをもたらした。不粘着性フィルムを上述の試験方法を用いてレオロジー性質について試験した。結果は、Tgが36.3℃、G’が3×10dyn/sq.cm(30MPa)、およびG”が2.5×10dyn/sq.cm(25MPa)であった。実施例1に使用されたのと本質的に同じ方法によってECP1粒子をフィルムに適用した。
【0083】
特に、実施例5は、それぞれ、湿度(10%だけが損傷された)、熱衝撃(カードが損傷されなかった)および屈曲試験(6%のカードだけが損傷された)を含めた3つの老化試験に暴露した後に少数のカードが損傷されたことを示す。
【0084】
実施例6は、実施例5と同じ方法によって作製されたが、ただし、実施例2の粒子混合物を、実施例2の方法によって実施例5の接着剤に適用した。
【0085】
比較例1〜3(C1、C2、C3)
接着剤1、接着剤2、および実施例5の接着剤配合物を有する接着フィルムにそれぞれ、銀被覆ガラス球だけがそれらの表面に埋め込まれる方法を実施した。作業変数は繊維と球との混合物に使用された作業変数と同じであった。すなわち、:熱板の温度90℃、ウェブ速度4.6m/分(15ft/分)、14SA%の粒子を提供するための回転ブラシ(12rpm)の動作電圧1.8V、負のDC電位7kVおよびシリコーンロールニップ圧力20psi(0.138MPa)を使用した。
【0086】
C1を上記の実施例1に示したように作製したが、ただし、ECP2粒子をECP1粒子の代わりに用いた。C2を上記の実施例3に示したように作製したが、ただし、ECP2粒子をECP1粒子の代わりに用いた。C3を上記の実施例5に示したように作製したが、ただし、ECP2粒子をECP1粒子の代わりに用いた。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
種々の修正が本発明の範囲および原理から逸脱することなく実施できることは、上記の説明から当業者には明白であり、本発明は、本明細書に示した例示的な実施態様によって不当に制限しようとするものではないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】伝送モードでとられた本発明に有用な接着剤表面の光学顕微鏡写真のデジタル画像である。
【図2】本発明の電子アセンブリを比較用材料と比較するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電子要素と、
第2の電子要素と、
それらの間の耐久柔軟結合部と、を含み、前記結合部が、
細長い電気伝導性粒子を含む異方性導電性接着剤と、
細長いコンタクト領域によって設けられた、前記第1の電子要素と前記第2の電子要素との間の少なくとも1つの電気経路とを含み、
前記結合部が少なくとも約200回の曲げサイクルの間、機能維持される、電子アセンブリ。
【請求項2】
前記細長い電気伝導性粒子が、非球形粒子、楕円粒子、繊維、およびフレーク、ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項3】
前記電気伝導性粒子が、電気伝導性コーティングを有する繊維から選択される、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項4】
前記結合部が少なくとも約500、少なくとも約1000、少なくとも約2000、少なくとも約4000、および少なくとも約5000から選択される多数の曲げサイクルの間、機能維持される、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項5】
前記接着剤が硬化性である、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項6】
前記接着剤が構造用接着剤である、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項7】
前記接着剤のTgが、硬化後に25℃を超えて変化しない、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項8】
前記接着剤が約100MPa未満、約75MPa未満、および約50MPa未満から選択される貯蔵剪断弾性率を有する、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項9】
前記接着剤が約210℃より低い温度において約10秒未満で硬化可能である、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項10】
前記接着剤が熱可塑性である、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項11】
前記接着剤が、ポリエステル、コ−ポリアミド、ポリエーテル−コ−ポリアミド、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項10に記載の電子アセンブリ。
【請求項12】
前記結合部が耐湿性である、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項13】
前記結合部が耐熱衝撃性であり、および/または少なくとも約100時間、約200℃を超える温度に耐性がある、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項14】
前記接着剤がエラストマーを約30〜約70重量部、相応して硬化性ポリマーを約70〜30重量部含む、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項15】
前記エラストマーが、天然ゴムおよび合成ゴム、フルオロエラストマー、およびシリコーンエラストマー、並びにそれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の電子アセンブリ。
【請求項16】
前記エラストマーがブタジエン−アクリロニトリルコポリマーから選択され、任意選択的に、前記硬化性ポリマーが、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、およびそれらの組み合わせから選択され、フェノール樹脂が必要とされる場合、前記樹脂が任意選択的に、ヘキサメチレンテトラミン(HMTA)を含有してもよい、請求項14に記載の電子アセンブリ。
【請求項17】
前記フェノール樹脂が約90〜約110℃の間の融点を有する、請求項16に記載の電子アセンブリ。
【請求項18】
前記フェノール樹脂のHMTA含有量が、約5〜15%の範囲、任意選択的に約6〜10%の範囲である、請求項16に記載の電子アセンブリ。
【請求項19】
前記フェノール樹脂が、約2%未満、約1%未満、および約0.2%未満から選択される遊離フェノール量を有する、請求項16に記載の電子アセンブリ。
【請求項20】
前記接着剤がエラストマーを約30〜約60重量部および硬化性ポリマーを少なくとも約40重量部含む、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項21】
前記接着剤がエラストマーを少なくとも約50重量部および硬化性ポリマーを少なくとも約30重量部含む、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項22】
前記接着剤がエラストマーを約45〜約60重量部および硬化性ポリマーを少なくとも約40重量部含む、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項23】
前記接着剤がエラストマーおよび熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項24】
1つの電子要素が集積回路のチップコンタクトである、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項25】
1つの電子要素がフレキシブル電子回路である、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項26】
1つの電子要素が硬質である、請求項25に記載の電子アセンブリ。
【請求項27】
スマートカードであるか、またはスマートカードに含有される、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項28】
1つの電子要素が高周波デバイスであるか、または高周波デバイスに含有され、それが任意選択的にRFIDタグである、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項29】
1つの電子要素が、移動電話、パーソナル・デジタル・アシスタント、カメラ、コンピュータ、タイマー、およびそれらの組み合わせから任意選択的に選択される携帯用電子デバイスに含有される、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項30】
前記電子アセンブリが耐タンパー性である、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項31】
細長でない粒子をさらに含み、前記細長でない粒子が任意選択的に、電気伝導性粒子を含む、請求項1に記載の電子アセンブリ。
【請求項32】
前記細長でない粒子が、前記細長い電気伝導性粒子の小さいほうの寸法の平均粒度よりも小さい主寸法の平均粒度を有する、請求項31に記載の電子アセンブリ。
【請求項33】
前記細長い粒子が、重量を基準として細長い粒子と細長でない粒子との合計の大部分を占める、請求項31に記載の電子アセンブリ。
【請求項34】
湿度試験の合格率が少なくとも約10%、熱衝撃試験の合格率が少なくとも約15%、および5000回の曲げサイクル試験の合格率が少なくとも約60%である、請求項31に記載の電子アセンブリ。
【請求項35】
第1の電子要素と第2の電子要素との間の耐久柔軟結合部を設ける工程を含み、前記結合部が、細長い電気伝導性粒子を含む異方性導電性接着剤と、細長いコンタクト領域によって設けられた、前記第1の電子要素と前記第2の電子要素との間の少なくとも1つの電気経路とを含み、前記結合部が少なくとも約200回の曲げサイクルの間、機能維持される、電子アセンブリの製造方法。
【請求項36】
前記接着剤が硬化性であり、前記接着剤を硬化させる工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−527462(P2006−527462A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509038(P2006−509038)
【出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/006487
【国際公開番号】WO2004/095644
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】