説明

導電性材料用組成物、導電性材料、導電層、電子デバイスおよび電子機器

【課題】キャリア輸送能の優れた導電層を形成することができる導電性材料用組成物を提供する。
【解決手段】導電性材料用組成物は、下記式で表される化合物を含有する。


[Xは下記式で表される置換基を表す。Yは2価の芳香族基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料用組成物、導電性材料、導電層、電子デバイスおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機材料を使用したエレクトロルミネッセンス素子(以下、単に「有機EL素子」という。)は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子(発光素子)としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。
一般に、有機EL素子は、陰極と陽極との間に発光層を有する構成であり、陰極と陽極との間に電界を印加すると、発光層に陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入される。
【0003】
そして、注入された電子と正孔とが発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際の励起エネルギーを光エネルギーとして放出することにより、発光層が発光する。
このような有機EL素子において、有機EL素子の高効率化、すなわち、高い発光を得るためには、電子または正孔のキャリア輸送性の異なる有機材料で構成される有機層を、発光層と、陰極および/または陽極との間に積層する素子構造が有効であることが判っている。
【0004】
そこで、キャリア輸送特性の異なる発光層と有機層と(以下、これらを併せて「有機層」という。)を電極上に積層する必要があるが、従来の塗布法を用いる製造方法においては、有機層を積層する際に、隣接する有機層との間で相溶解が生じ、その結果として、有機EL素子としての発光効率、発色の色純度またはパターン精度が悪くなる等の特性が低下するという問題があった。
【0005】
そのため、有機層を積層する場合には、有機材料として溶解性の異なるものを組み合わせて用いることにより、積層するのに限られていた。
このような問題点を解決する方法として、下層となる有機層を構成する有機材料同士を重合化させることにより、下層の耐久性すなわち耐溶剤性を向上させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、下層となる有機層を構成する有機材料に硬化性樹脂を添加し、この硬化性樹脂と一緒に硬化させることによって、下層の耐溶剤性を向上させる方法も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、これらのような方法を用いた場合においても、有機EL素子の特性の向上は、期待するほど得られていないのが実情である。
また、このような問題は、有機材料を使用した薄膜トランジスタにおいても同様に生じている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−255774号公報
【特許文献2】特開2000−208254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、キャリア輸送能の優れた導電層を形成することができる導電性材料用組成物、かかる導電性材料用組成物を用いて得られたキャリア輸送能の優れた導電性材料、かかる導電性材料を主材料とする導電層、信頼性の高い電子デバイスおよび電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の導電性材料用組成物は、下記一般式(A1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【化1】

[式中、2つのXは、下記一般式(B1)〜(B4)で表される置換基のうちのいずれかを表す。ただし、2つのXは、その炭素数は、同一であっても、異なっていてもよい。2つのRは、それぞれ独立して、置換または無置換の一価の芳香族基(ただし、フェニル基を除く。)を表す。4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。Yは、置換または無置換の下記一般式(C1)〜(C3)のうちのいずれかで表される2価の芳香族基を表す。]
【化2】

[これらの式中、nは、2〜8の整数を表し、nは、3〜8の整数を表し、nは、3〜8の整数を表す。mは、0〜3の整数を表し、mは、0〜2の整数を表す。Zは、水素原子またはメチル基を表し、Zは、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。]
【化3】

[これらの式中、nは、1〜3の整数を表す。]
これにより、前記一般式(A1)で表される化合物の置換基X以外の部分である主骨格同士による相互作用を好適に防止して、置換基Xを重合反応させて得られた高分子(導電性材料)を優れたキャリア輸送能を発揮するものとすることができる。
【0010】
本発明の導電性材料用組成物では、2つの前記置換基Xは、その炭素数が同一であることが好ましい。
これにより、隣接する主骨格同士の離間距離をほぼ一定とすることができる。その結果、この高分子中において電子密度に偏りが生じるのを好適に防止することができ、高分子のキャリア輸送能を確実に向上させることができる。
本発明の導電性材料用組成物では、前記置換基Xは、ベンゼン環の3位、4位または5位のうちのいずれかに結合していることが好ましい。
これにより、隣接する主骨格同士をより確実に離間させることができる。
【0011】
本発明の導電性材料用組成物では、2つの前記置換基Rは、同一であることが好ましい。
これにより、主骨格の共役系の化学構造における電子密度の偏り、すなわち、π電子の局在化を好適に防止しつつ、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)等を確実に変化させることができ、その結果、高分子のキャリア輸送能の特性が変化することとなる。
【0012】
本発明の導電性材料用組成物では、前記置換基Rの総炭素数は、2〜30であることが好ましい。
置換基Rの総炭素数をかかる範囲内とすることにより、主骨格における平面性を保つことができ、高分子におけるキャリア輸送能が低下するのを確実に防止しつつ、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)等を確実に変化させることができる。
【0013】
本発明の導電性材料用組成物では、前記置換基Rは、単環系または縮合多環系の芳香族基であることが好ましい。
これにより、主骨格における平面性をより確実に保持しつつ、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)等をより確実に変化させることができる。
【0014】
本発明の導電性材料は、下記一般式(A1)で表される化合物同士を置換基Xにおいて重合反応させて得られることを特徴とする。
【化4】

[式中、2つのXは、下記一般式(B1)〜(B4)で表される置換基のうちのいずれかを表す。ただし、2つのXは、その炭素数は、同一であっても、異なっていてもよい。2つのRは、それぞれ独立して、置換または無置換の一価の芳香族基(ただし、フェニル基を除く。)を表す。4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。Yは、置換または無置換の下記一般式(C1)〜(C3)のうちのいずれかで表される2価の芳香族基を表す。]
【化5】

[これらの式中、nは、2〜8の整数を表し、nは、3〜8の整数を表し、nは、3〜8の整数を表す。mは、0〜3の整数を表し、mは、0〜2の整数を表す。Zは、水素原子またはメチル基を表し、Zは、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。]
【化6】

[これらの式中、nは、1〜3の整数を表す。]
これにより、優れたキャリア輸送能を有する導電性材料とすることができる。
【0015】
本発明の導電性材料では、2つの前記置換基Xは、その炭素数が同一であることが好ましい。
これにより、隣接する主骨格同士の離間距離をほぼ一定とすることができる。その結果、この高分子中において電子密度に偏りが生じるのを好適に防止することができ、高分子のキャリア輸送能を確実に向上させることができる。
本発明の導電性材料では、前記置換基Xは、ベンゼン環の3位、4位または5位のうちのいずれかに結合していることが好ましい。
これにより、隣接する主骨格同士をより確実に離間させることができる。
【0016】
本発明の導電性材料では、2つの前記置換基Rは、同一であることが好ましい。
これにより、主骨格の共役系の化学構造における電子密度の偏り、すなわち、π電子の局在化を好適に防止しつつ、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)等を確実に変化させることができ、その結果、高分子のキャリア輸送能の特性が変化することとなる。
【0017】
本発明の導電性材料では、前記置換基Rの総炭素数は、2〜30であることが好ましい。
置換基Rの総炭素数をかかる範囲内とすることにより、主骨格における平面性を保つことができ、高分子におけるキャリア輸送能が低下するのを確実に防止しつつ、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)等を確実に変化させることができる。
【0018】
本発明の導電性材料では、前記置換基Rは、単環系または縮合多環系の芳香族基であることが好ましい。
これにより、主骨格における平面性をより確実に保持しつつ、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)等をより確実に変化させることができる。
【0019】
本発明の導電性材料では、前記化合物は、光照射により重合反応することが好ましい。
光照射によれば、高分子化させる領域および程度を比較的容易に選択することができる。
本発明の導電層は、本発明の導電性材料用組成物を用いて形成されたことを特徴とする。
これにより、キャリア輸送能に優れる導電層を形成することができる。
【0020】
本発明の導電層は、本発明の導電性材料を主材料とすることを特徴とする。
これにより、キャリア輸送能に優れる導電層を形成することができる。
本発明の導電層では、前記導電層は、正孔輸送層であることが好ましい。
これにより、正孔輸送能に優れる正孔輸送層を形成することができる。
本発明の導電層では、前記正孔輸送層の平均厚さは、10〜150nmであることが好ましい。
これにより、信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる導電層とすることができる。
【0021】
本発明の導電層は、有機半導体層であることが好ましい。
これにより、優れた半導体特性を示す有機半導体層を形成することができる。
本発明の導電層では、前記有機半導体層の平均厚さは、0.1〜1000nmであることが好ましい。
これにより、信頼性の高い有機薄膜トランジスタを得ることができる導電層とすることができる。
【0022】
本発明の電子デバイスは、本発明の導電層を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子デバイスが得られる。
本発明の電子デバイスは、本発明の導電層を有する積層体を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子デバイスが得られる。
本発明の電子デバイスでは、前記電子デバイスは、発光素子または光電変換素子であることが好ましい。
これにより、信頼性の高い発光素子および光電変換素子が得られる。
【0023】
本発明の電子デバイスでは、前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。
これにより、信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子が得られる。
本発明の電子デバイスは、本発明の導電層を有する積層体を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子デバイスが得られる。
【0024】
本発明の電子デバイスは、スイッチング素子であることが好ましい。
これにより、信頼性の高いスイッチング素子が得られる。
本発明の電子デバイスでは、前記スイッチング素子は、有機薄膜トランジスタであることが好ましい。
これにより、信頼性の高い有機薄膜トランジスタが得られる。
本発明の電子機器は、本発明の電子デバイスを備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の導電性材料用組成物、導電性材料、導電層、電子デバイスおよび電子機器を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<導電層>
まず、本発明の導電性材料を主材料として構成される導電層(本発明の導電層)について説明する。
【0026】
本発明の導電性材料は、下記一般式(A1)で表される化合物(アリールアミン誘導体)同士を置換基Xにおいて重合反応させて得られた高分子(ポリマー)、すなわち、置換基X以外の主骨格(アリールアミン骨格)同士を、置換基Xが反応して生成した化学構造(以下、この化学構造を「連結構造」という。)により連結してなる高分子を主成分とするものである。
【0027】
【化7】

[式中、2つのXは、下記一般式(B1)〜(B4)で表される置換基のうちのいずれかを表す。ただし、2つのXは、その炭素数は、同一であっても、異なっていてもよい。2つのRは、それぞれ独立して、置換または無置換の一価の芳香族基(ただし、フェニル基を除く。)を表す。4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。Yは、置換または無置換の下記一般式(C1)〜(C3)のうちのいずれかで表される2価の芳香族基を表す。]
【0028】
【化8】

[これらの式中、nは、2〜8の整数を表し、nは、3〜8の整数を表し、nは、3〜8の整数を表す。mは、0〜3の整数を表し、mは、0〜2の整数を表す。Zは、水素原子またはメチル基を表し、Zは、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。]
【0029】
【化9】

[これらの式中、nは、1〜3の整数を表す。]
【0030】
ここで、このような高分子では、連結構造を介して前記主骨格が繰り返して結合する構成、すなわち、主骨格が所定の距離を離間して繰り返し存在している構成となっていることから、隣接する主骨格同士の相互作用が低減する。
また、前記主骨格は、共役系の化学構造を有し、その特有な電子雲の広がりにより、高分子における円滑なキャリア輸送に寄与する。
【0031】
このようなことから、この高分子は、優れたキャリア輸送能を発揮し、かかる高分子を主材料とする層は、キャリア輸送能に優れたものとなる。
なお、このような高分子において、主骨格同士の離間距離が短くなり過ぎると、隣接する主骨格同士の相互作用が大きくなる傾向を示し、主骨格の離間距離が長くなり過ぎると、主骨格同士間におけるキャリアの受け渡しが困難となり、高分子のキャリア輸送能が低減する傾向を示す。
【0032】
かかる観点から、置換基Xの構造を設定するのが好ましく、2つの置換基Xは上記一般式(B1)〜(B4)のうち同種のものが選択されるが、置換基Xとして上記一般式(B1)または(B2)のものを選択した場合には、nが2〜8、特に3〜6の直鎖状の炭素−炭素結合のものが好ましい。また、上記一般式(B3)のものを選択した場合には、nが3〜8、および、mが0〜3の直鎖状の炭素−炭素結合のものが好ましく、特にnが4〜6、および、mが1または2の直鎖状の炭素−炭素結合のものが好ましい。さらに、上記一般式(B4)のものを選択した場合には、nが3〜6、および、mが0〜2の直鎖状の炭素−炭素結合のものが好ましく、特にnが3〜6、および、mが0の直鎖状の炭素−炭素結合のものが好ましい。
【0033】
かかる関係を満足するより、主骨格同士の距離を適度に保つことが可能となり、高分子中において、隣接する主骨格同士の相互作用をより確実に低減することができるとともに、主骨格同士間におけるキャリアの受け渡しがより確実に行われることから、高分子のキャリア輸送能が優れたものとなる。
ここで、置換基Xとして(B1)、(B2)および(B4)のものを選択した場合には、その末端に、それぞれ、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニルエーテル基に置換基Zを導入したビニルエーテル誘導体基が存在する。(メタ)アクリロイル基、エポキシ基およびビニルエーテル誘導体基は、高い反応性および結合安定性を有することから、比較的容易に置換基X同士を重合反応させて、鎖長の長い高分子を形成することができる。
【0034】
さらに、(メタ)アクリロイル基を用いて重合反応させることにより生じた連結構造中には、酸素原子と炭素原子との内に二重結合(π結合)が2つ存在することとなる。これにより、主骨格同士の距離が比較的長くなった場合においても、2つのπ結合(共役系の結合)を介して、主骨格同士間におけるキャリアの受け渡しを確実に行うことができる。また、この2つのπ結合と主骨格との間には直鎖状の炭素−炭素結合(アルキレン基)が存在することから、主骨格同士の相互作用の増強を防止することができる。
【0035】
エポキシ基またはビニルエーテル誘導体基を用いて重合反応させることにより生じた連結構造中には、エーテル結合と、直鎖状の炭素−炭素結合(アルキレン基)とが存在することとなる。このような構造を有する連結構造中においては、電子の移動が抑制されることとなる。これにより、主骨格同士の距離が比較的短くなった場合においても、主骨格同士の相互作用が増強するのを防止または抑制することができる。
【0036】
なお、例えば、ベンゼン環のように、π結合の中でも共役系の結合が多い構造が存在すると、この構造を介して隣接する主骨格同士が相互作用を及ぼすようになり、主骨格同士を離間することによる効果が相殺されてしまう。
ところで、置換基Xとして(B3)のものを選択した場合には、置換基Xが、上記一般式(B3)に示すように、その末端に官能基として、スチレン基に置換基Zを導入したスチレン誘導体基を有していることから、連結構造中には、ベンゼン環が存在することとなる。
【0037】
そのため、ベンゼン環と共役系の化学構造を有する主骨格とが接近しすぎる場合、例えば、ベンゼン環と主骨格とがエーテル結合により結合している場合や、nとmとの合計数が2の場合等では、このベンゼン環を介して隣接する主骨格同士が相互作用を及ぼすようになる。
ところが、この高分子では、主骨格とこのベンゼン環との結合がnとmとの合計数が3以上、すなわち3つ以上のメチレン基とエーテル結合とを介して形成される。これにより、主骨格とベンゼン環との離間距離が好適な状態に保たれることとなる。その結果、隣接する主骨格同士が相互作用を及ぼしあうのを好適に抑制または防止にすることができる。
なお、置換基(B3)および置換基(B4)に含まれる置換基Zは、水素原子、メチル基またはエチル基であるが、置換基Zは、nとmまたはnとmとの合計数、すなわちメチレン基の合計数に応じて選択するようにすればよい。
【0038】
例えば、前記合計数が小さい場合には、置換基Zとしては、メチル基またはエチル基を選択するようにすればよい。ここで、メチル基とエチル基が電子供与性の置換基であることから、置換基Zとして、メチル基およびエチル基を選択することにより、電子を主骨格側に偏らせることができる。その結果、ベンゼン環を介して隣接する主骨格同士が相互作用を及ぼすようになるのを好適に防止することができる。
【0039】
また、2つの置換基Xは、その炭素数がほぼ同一のものであるのが好ましく、同一のものであるのがより好ましい。これにより、隣接する主骨格同士の離間距離をほぼ一定とすることができる。その結果、この高分子中において電子密度に偏りが生じるのを好適に防止することができ、高分子のキャリア輸送能を確実に向上させることができる。
また、置換基Xは、ベンゼン環の2位から6位のいかなる位置に結合してもよいが、特に、3位、4位または5位のうちのいずれかに結合しているのが好ましい。これにより、隣接する主骨格同士の結合を置換基Xを介して行うことの効果をより顕著に発揮させることができる。すなわち、隣接する主骨格同士をより確実に離間させることができる。
【0040】
次に、高分子において、キャリアの輸送に寄与する主骨格について説明する。
また、基(結合基)Yは、置換または無置換の下記一般式(C1)〜(C3)のうちのいずれかで表される2価の芳香族基である。基Yをかかる化学構造を備える2価の芳香族基で構成することにより、主骨格における電子雲の広がりが安定化して、主骨格に優れたキャリア輸送能を付与することができる。その結果、高分子は、優れたキャリア輸送能を発揮するものとなる。
【0041】
なお、nは、1〜3の範囲内に設定される。nをかかる範囲内に設定することにより、主骨格における平面性を保つことができ、前述したような効果を確実に得ることができる。
ここで、この化合物(A1)において、置換基Rをフェニル基で構成すると、この化合物(A1)同士を置換基Xにおいて重合反応させることにより得られた高分子は、正孔輸送性を示すものとなる。
【0042】
これに対して、置換基Rを、フェニル基に代えて、置換または無置換の一価の芳香族基(ただし、フェニル基を除く。)で構成することにより、得られる高分子におけるキャリア輸送能の特性を容易に調整することができる。すなわち、置換または無置換の一価の芳香族基の種類を適宜選択することにより、例えば、本発明の導電層を後述するような有機エレクトロルミネッセンス素子が備える正孔輸送層に適用して、類似する骨格を備えかつ異なる発光特性を有する発光材料に対して、最適なキャリア注入バランスを実現させる必要がある場合、すなわち、正孔輸送材料と発光材料との組み合わせを考慮してこの正孔輸送材料のキャリア輸送能を制御する(変化させる)必要がある場合において、高分子(正孔輸送材料)におけるキャリア輸送能の特性を比較的容易に変化させることができる。
これは、キャリア輸送に寄与する主骨格における電子雲の広がり(電子の分布状態)が変化することに伴って、高分子において、例えば、その価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさ等が変化することに起因すると考えられる。
【0043】
なお、基Yを上記一般式(C1)〜(C3)で構成するのに代えて、これら以外の2価の芳香族複素環で構成することによっても、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)等を変化させることができるが、本発明のように、置換基Rの種類を、フェニル基を除く置換または無置換の一価の芳香族基から適宜選択する構成とすることにより、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)等を比較的小さく変化させることができる。
【0044】
このような化合物(A1)において、2つの置換基Rは、その炭素数がほぼ同一のものであるのが好ましく、同一のものであるのがより好ましい。これにより、主骨格の共役系の化学構造における電子密度の偏り、すなわち、π電子の局在化を好適に防止しつつ、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)等をより確実に変化させることができ、その結果、高分子のキャリア輸送能の特性がより確実に変化することとなる。
【0045】
また、置換基Rの総炭素数は、2〜30であるのが好ましく、2〜15であるのがより好ましい。置換基Rの総炭素数をかかる範囲内とすることにより、主骨格における平面性を保つことができ、高分子におけるキャリア輸送能が低下するのを確実に防止しつつ、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)等を確実に変化させることができる。
【0046】
置換基Rは、単環系または縮合多環系の芳香族環であるのが好ましい。これにより、主骨格における平面性をより確実に保持しつつ、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)等をより確実に変化させることができる。
これらのことを考慮すると、置換基Rすなわち置換または無置換の一価の芳香族基としては、例えば、下記化学式(D1)〜(D9)で表されるものが特に好ましい構造である。
【0047】
【化10】

[これらの式中、Qは、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表す。Qは、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CH、CまたはPhを表す。)を表す。]
【0048】
これらの内、例えば、置換基Rとして、上記化学式(D1)、(D3)〜(D8)(ただし、QがS、SeまたはTeの場合)のうちのいずれかを選択した場合、置換基Rをフェニル基で構成する場合に対して、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位を上げる方向に変化させることができる。
一方、置換基Rとして、上記化学式(D2)、(D5)、(D6)、(D8)および(D9)(ただし、QがN-TまたはOの場合)のうちのいずれかを選択した場合、その骨格由来の電子吸引性効果により、置換基Rをフェニル基で構成する場合に対して、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位を下げる方向に変化させることができる。
【0049】
なお、同一の置換基Rを選択した場合であっても、置換基Rと、この置換基Rが結合する窒素原子との置換(結合)位置を適宜選択することによっても高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位、さらにバンドギャップ(禁止帯幅)等を変化させることができる。
以上のように、置換基Rの化学構造や置換位置を適宜設定することにより、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)等を、その用途に合わせて比較的容易に変化させる(制御する)ことができる。
【0050】
また、置換基Rには、主骨格における平面性が大きく阻害されないような置換基が導入されていてもよい。このような置換基としては、例えば、アルキル基やハロゲン基等が挙げられる。
また、置換基Rは、水素原子、メチル基またはエチル基であり、置換基Rは、置換基Xの炭素数に応じて選択するようにすればよい。例えば、置換基Xの炭素数が大きい場合には、置換基Rとしては、水素原子を選択し、置換基Xの炭素数が小さい場合には、置換基Rとしては、メチル基またはエチル基を選択するようにすればよい。
【0051】
ところで、置換基X同士の間で重合反応を進行させて高分子を得る際に、この置換基X同士の重合反応に架橋剤を介在させるようにしてもよい。これにより、置換基Xとして、その炭素数が比較的小さいもの、換言すれば、その鎖長が比較的短いものを選択した場合においても、主骨格同士の離間距離が小さくなりすぎるのを好適に防止して、主骨格同士の相互作用の増強を確実に防止することができる。
【0052】
置換基Xとして、前記一般式(B1)で表されるものを選択した場合、架橋剤としては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート架橋剤、エポキシ(メタ)アクリレート架橋剤およびポリウレタン(メタ)アクリレート架橋剤等のアクリル系架橋剤のうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。
なお、ポリエステル(メタ)アクリレート架橋剤としては、例えば、下記一般式(E1)〜(E3)で表される化合物が挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリレート架橋剤としては、例えば、下記一般式(E4)〜(E8)で表される化合物が挙げられる。
ポリウレタン(メタ)アクリレート架橋剤としては、例えば、下記一般式(E9)で表される化合物が挙げられる。
【0053】
【化11a】

【化11b】

[これらの式中、nは、4500以下の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。nは、0〜1500の整数を表す。各nは、それぞれ独立して、1〜10の整数を表し、同一であっても、異なっていてもよい。nは、1〜40の整数を表す。n10は、1〜100の整数を表す。各Rは、それぞれ独立して、炭素数が1〜10のアルキレン基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Rは、炭素数が1〜100のアルキレン基を表す。各Aは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。各Aは、それぞれ独立して、ジイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基を除いた基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
【0054】
また、前記一般式(B2)で表されるものを選択した場合、架橋剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系エポキシ架橋剤、ビスフェノール型エポキシ架橋剤、グリシジルエステル系エポキシ架橋剤、脂環式系エポキシ架橋剤、ウレタン変性エポキシ架橋剤、ケイ素含有エポキシ架橋剤、多官能性フェノール系エポキシ架橋剤およびグリシジルアミン系エポキシ架橋剤等のエポキシ架橋剤のうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0055】
なお、(メタ)アクリル酸エステル系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(F1)で表される化合物が挙げられる。
ビスフェノール型エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(F2)〜(F6)で表される化合物が挙げられる。
グリシジルエステル系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(F7)〜(F8)で表される化合物が挙げられる。
【0056】
脂環式系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(F9)〜(F12)で表される化合物が挙げられる。
ウレタン変性エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(F13)で表される化合物が挙げられる。
ケイ素含有エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(F14)で表される化合物が挙げられる。
多官能性フェノール系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(F15)〜(F22)で表される化合物が挙げられる。
グリシジルアミン系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(F23)〜(F25)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
【化12a】

【化12b】

【化12c】

【化12d】

[これらの式中、Aは、水素原子またはメチル基を表す。各nは、それぞれ独立して、0〜10の整数を表し、同一であっても、異なっていてもよい。各n11は、それぞれ独立して、1〜20の整数を表し、同一であっても、異なっていてもよい。n12は、1〜30の整数を表す。n13は、0〜8の整数を表す。Aは、ジイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基を取り除いた基を表し、各Aは、それぞれ独立して、ジオール化合物から2つの水酸基を取り除いた基を表し、同一であっても異なっていてもよい。]
【0058】
前記一般式(B3)で表されるものを選択した場合、架橋剤としては、例えば、ビニル化合物を用いることができるが、これらの中でも、下記一般式(G1)で表されるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートやジビニルベンゼンのうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0059】
【化13】

[式中、n14は、5〜15の整数を表し、各Aは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
【0060】
さらに、前記一般式(B4)で表されるものを選択した場合、前記一般式(B3)で表されるもの場合と同様に、架橋剤としては、例えば、ビニル化合物を用いることができるが、前記一般式(G1)で表されるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを用いるのが好ましい。
このような導電層は、重合反応により得られた高分子を主材料とすることから、耐溶剤性に優れたものとなる。その結果、この導電層上に接触して上層を形成する場合に、この上層を形成するための材料に含まれる溶媒または分散媒により、導電層が膨潤または溶解するのを確実に防止することができる。
【0061】
また、このような導電層を有する積層体を用いて、後述するような電子デバイスを構築した場合、この導電層が高分子を主材料として構成されていることから、この導電層と接触する層(接触層)の界面付近において、導電層の構成材料と接触層の構成材料とが経時的に混ざり合うのを確実に防止することができる。その結果、電子デバイスの特性が経時的に劣化するのを防止することができる。
【0062】
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
次に、本発明の電子デバイスを、発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に「有機EL素子」という。)に適用した場合の実施形態について説明する。
図1は、有機EL素子の一例を示した縦断面図である。
図1に示す有機EL素子1は、透明な基板2と、基板2上に設けられた陽極3と、陽極3上に設けられた有機EL層4と、有機EL層4上に設けられた陰極5と、各前記層3、4、5を覆うように設けられた保護層6とを備えている。
【0063】
基板2は、有機EL素子1の支持体となるものであり、この基板2上に各前記層が形成されている。
基板2の構成材料としては、透光性を有し、光学特性が良好な材料を用いることができる。
このような材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような各種樹脂材料や、各種ガラス材料等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0064】
基板2の厚さ(平均)は、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
陽極3は、有機EL層4(後述する正孔輸送層41)に正孔を注入する電極である。また、この陽極3は、有機EL層4(後述する発光層42)からの発光を視認し得るように、実質的に透明(無色透明、有色透明、半透明)とされている。
【0065】
かかる観点から、陽極3の構成材料(陽極材料)としては、仕事関数が大きく、導電性に優れ、また、透光性を有する材料を用いるのが好ましい。
このような陽極材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0066】
陽極3の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。陽極3の厚さが薄すぎると、陽極3としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陽極3が厚過ぎると、陽極材料の種類等によっては、光の透過率が著しく低下し、実用に適さなくなるおそれがある。
【0067】
なお、陽極材料には、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂材料を用いることもできる。
一方、陰極5は、有機EL層4(後述する電子輸送層43)に電子を注入する電極である。
陰極5の構成材料(陰極材料)としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
【0068】
このような陰極材料としては、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
特に、陰極材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極材料として用いることにより、陰極5の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
【0069】
陰極5の厚さ(平均)は、1nm〜1μm程度であるのが好ましく、100〜400nm程度であるのがより好ましい。陰極5の厚さが薄すぎると、陰極5としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陰極5が厚過ぎると、有機EL素子1の発光効率が低下するおそれがある。
陽極3と陰極5との間には、有機EL層(有機層)4が設けられている。有機EL層4は、正孔輸送層41と、発光層42と、電子輸送層43とを備え、これらがこの順で陽極3上に形成されている。
【0070】
正孔輸送層41は、陽極3から注入された正孔を発光層42まで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層41として、本発明の導電性材料を用いることができる。
ここで、正孔輸送層41を本発明の導電性材料を主材料として構成する場合、例えば、後述する発光層42の構成材料(発光材料)の発光特性に応じて、すなわち、赤色、緑色または青色といった発光色の違いに応じて、前述したような本発明の導電性材料のキャリア注入バランス(キャリア輸送能の特性)を考慮して、正孔輸送層41の構成材料を選択すればよい。
【0071】
すなわち、後述する電子輸送層43から発光層42への電子の注入効率が比較的低い場合には、正孔輸送層41から発光層42への正孔の注入効率をやや抑え得るように、この正孔輸送層41の構成材料を選択すればよい。
具体的には、正孔の注入効率をやや抑えたい場合、例えば、正孔輸送層41に用いる導電性材料としては、置換基Rの化学構造が前記化学式(D2)、(D5)、(D6)、(D8)および(D9)(ただし、QがN-TあるいはOの場合)のうちのいずれかを選択するのが好ましい。これにより、前述したような効果を確実に得ることができる。
【0072】
これとは逆に、電子輸送層43から発光層42への電子の注入効率が比較的高い場合には、正孔輸送層41から発光層42への正孔の注入効率をやや促進し得るように、この正孔輸送層41の構成材料を選択すればよい。
具体的には、正孔注入効率をやや促進したい場合、例えば、正孔輸送層41に用いる導電性材料としては、置換基Rの化学構造が前記化学式(D1)、(D3)〜(D8)(ただし、QがS、SeまたはTeの場合)を選択するのが好ましい。これにより、前述したような効果を確実に得ることができる。
また、正孔輸送層41は、その体積抵抗率が10Ω・cm以上であるのが好ましく、10Ω・cm以上であるのがより好ましい。これにより、発光効率のより高い有機EL素子1を得ることができる。
【0073】
正孔輸送層41の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。正孔輸送層41の厚さが薄すぎると、ピンホールが生じるおそれがあり、一方、正孔輸送層41が厚過ぎると、正孔輸送層41の透過率が悪くなる原因となり、有機EL素子1の発光色の色度(色相)が変化してしまうおそれがある。
なお、本発明の導電性材料は、かかる比較的薄い正孔輸送層41を形成する場合に、特に有用である。
また、電子輸送層43は、陰極5から注入された電子を発光層42まで輸送する機能を有するものである。
【0074】
電子輸送層43の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)、1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリスフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)のようなベンゼン系化合物(スターバースト系化合物)、ナフタレンのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセンのようなクリセン系化合物、ペリレンのようなペリレン系化合物、アントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、BBOTのようなチオフェン系化合物、ブタジエンのようなブタジエン系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、キノリンのようなキノリン系化合物、ビスチリルのようなビスチリル系化合物、ピラジン、ジスチリルピラジンのようなピラジン系化合物、キノキサリンのようなキノキサリン系化合物、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−パラ−ベンゾキノンのようなベンゾキノン系化合物、ナフトキノンのようなナフトキノン系化合物、アントラキノンのようなアントラキノン系化合物、オキサジアゾール、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、BMD、BND、BDD、BAPDのようなオキサジアゾール系化合物、トリアゾール、3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、オキサゾール系化合物、アントロンのようなアントロン系化合物、フルオレノン、1,3,8−トリニトロ−フルオレノン(TNF)のようなフルオレノン系化合物、ジフェノキノン、MBDQのようなジフェノキノン系化合物、スチルベンキノン、MBSQのようなスチルベンキノン系化合物、アントラキノジメタン系化合物、チオピランジオキシド系化合物、フルオレニリデンメタン系化合物、ジフェニルジシアノエチレン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体のような各種金属錯体等が挙げられる。
【0075】
また、電子輸送材料は、以上のような化合物のうちの少なくとも1種を用いることができる。
さらに、電子輸送層43の厚さ(平均)は、特に限定されないが、1〜100nm程度であるのが好ましく、20〜50nm程度であるのがより好ましい。電子輸送層43の厚さが薄すぎると、ピンホールが生じショートするおそれがあり、一方、電子輸送層43が厚過ぎると、抵抗値が高くなるおそれがある。
【0076】
さて、陽極3と陰極5との間に通電(電圧を印加)すると、正孔輸送層41中を正孔が、また、電子輸送層43中を電子が移動し、発光層42において正孔と電子とが再結合する。そして、発光層42では、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、このエキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。
【0077】
この発光層42の構成材料(発光材料)としては、電圧印加時に陽極3側から正孔を、また、陰極5側から電子を注入することができ、正孔と電子が再結合する場を提供できるものであれば、いかなるものであってもよい。
このような発光材料には、以下に示すような、各種低分子の発光材料、各種高分子の発光材料があり、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0078】
なお、低分子の発光材料を用いることにより、緻密な発光層42が得られるため、発光層42の発光効率が向上する。また、高分子の発光材料を用いることにより、比較的容易に溶剤へ溶解させることができるため、インクジェット印刷法等の各種塗布法による発光層42の形成を容易に行うことができる。さらに、低分子の発光材料と高分子の発光材料とを組み合わせて用いることにより、低分子の発光材料および高分子の発光材料を用いる効果を併有すること、すなわち、緻密かつ発光効率に優れる発光層42を、インクジェット印刷法等の各種塗布法により、容易に形成することができるという効果が得られる。
【0079】
低分子の発光材料としては、例えば、ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物、ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、コロネンのようなコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、ペリノンのようなペリノン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、(2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン)プラチナム(II)のような各種金属錯体等が挙げられる。
【0080】
高分子の発光材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物、ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物、ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物、ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物等が挙げられる。
【0081】
また、正孔輸送層41と電子輸送層43とに用いる構成材料の組み合わせによっては、発光材料として本発明の導電性材料を用いることもできる。
例えば、正孔輸送層41の構成材料として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)のようなポリ(チオフェン/スチレンスルホン酸)、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(α−NPD)のようなアリールアミン化合物等を用い、電子輸送層43の構成材料として3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、2−(4−t−ブチルフェニル)−5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,5−オキサジアゾール(PBD)のようなオキサジアゾール化合物等を用いた場合には、発光層42を構成する導電性材料として、例えば、置換基Rの化学構造が前記化学式(D2)のものを用いることができる。
【0082】
発光層42の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。発光層の厚さを前記範囲とすることにより、正孔と電子との再結合が効率よくなされ、発光層42の発光効率をより向上させることができる。
なお、有機EL素子1は、正孔輸送層41または発光層42のうちのいずれか一方が本発明の導電性材料で構成されるようなものであってもよく、これらの双方が本発明の導電性材料で構成されるようなものであってもよい。
【0083】
また、発光層42は、正孔輸送層41および電子輸送層43と別個に設けられているが、正孔輸送層41と発光層42とを兼ねた正孔輸送性発光層や、電子輸送層43と発光層42とを兼ねた電子輸送性発光層とすることもできる。この場合、正孔輸送性発光層の電子輸送層43との界面付近が、また、電子輸送性発光層の正孔輸送層41との界面付近が、それぞれ、発光層42として機能する。
【0084】
さらに、正孔輸送性発光層を用いた場合には、陽極から正孔輸送性発光層に注入された正孔が電子輸送層によって閉じこめられ、また、電子輸送性発光層を用いた場合には、陰極から電子輸送性発光層に注入された電子が電子輸送性発光層に閉じこめられるため、いずれも、正孔と電子との再結合効率を向上させることができるという利点がある。
なお、各層3、4、5同士の間には、任意の目的の層が設けられていてもよい。例えば、正孔輸送層41と陽極3との間には、陽極3からの正孔の注入効率を向上させる正孔注入層を設けることができる。このように、有機EL素子1に正孔注入層を設ける場合には、この正孔注入層の構成材料として、本発明の導電性材料を用いることができる。
【0085】
また、電子輸送層43と陰極5との間には、陰極5からの電子の注入効率を向上させる電子注入層等を設けることができる。正孔注入層の構成材料としては、本発明の導電性材料の他、例えば、銅フタロシアニンや4,4’,4’’−トリス(N,N−フェニル−3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(M−MTDATA)等を用いることができる。
【0086】
保護層6は、有機EL素子1を構成する各層3、4、5を覆うように設けられている。この保護層6は、有機EL素子1を構成する各層3、4、5を気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。保護層6を設けることにより、有機EL素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止等の効果が得られる。
保護層6の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、保護層6の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、保護層6と各層3、4、5との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
【0087】
この有機EL素子1は、例えばディスプレイ用として用いることができるが、その他にも光源等としても使用可能であり、種々の光学的用途等に用いることが可能である。
また、有機EL素子1をディスプレイに適用する場合、その駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
このような有機EL素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0088】
[A1]陽極形成工程
まず、基板2を用意し、この基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0089】
[A2]正孔輸送層形成工程(第1の構成)
[A2−1] まず、前記一般式(A1)で表される化合物(以下、単に「化合物(A1)」という。)を含有する導電性材料用組成物(正孔輸送材料)を陽極3上に塗布(供給)する。
この塗布には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることができる。かかる塗布法によれば、正孔輸送材料を比較的容易に陽極3上に供給することができる。
【0090】
化合物(A1)を溶媒に溶解または分散媒に分散する場合、用いる溶媒または分散媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0091】
なお、導電性材料用組成物には、重合開始剤を添加するのが好ましい。これにより、次工程[A2−2]において、加熱や光照射のような所定の処理を施す際に、置換基Xにおける重合反応を促進させることができる。
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、光カチオン重合開始剤や光ラジカル重合開始剤のような光重合開始剤、熱重合開始剤および嫌気重合開始剤等が挙げられる。
【0092】
なお、置換基Xとして、前記一般式(B1)または前記一般式(B3)で表されるものを選択した場合、重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤を用いるのが特に好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、各種の光ラジカル重合開始剤を用いることができるが、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、ベンジケタ−ル系、ミヒラ−ズケトン系、アシルフォスフィンオキサイド系、ケトクマリン系、キサンテン系およびチオキサントン系等の光ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0093】
また、置換基Xとして、前記一般式(B2)または前記一般式(B4)で表されるものを選択した場合、重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤を用いるのが特に好ましい。
光カチオン重合開始剤としては、各種の光カチオン重合開始剤を用いることができるが、例えば、芳香族スルホニウム塩系、芳香族ヨードニウム塩系、芳香族ジアゾニウム塩系、ピリジウム塩系および芳香族ホスホニウム塩系等のオニウム塩系の光カチオン重合開始剤や、鉄アレーン錯体およびスルホン酸エステル等の非イオン系の光カチオン重合開始剤を用いることができる。
【0094】
選択する置換基Xの種類に応じて、上述したような重合開始剤を適宜選択することにより、次工程[A2−2]において、置換基Xを比較的容易に重合反応させることができる。
なお、重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始剤に適した増感剤を導電性材料用組成物に添加してもよい。
【0095】
[A2−2] 次に、陽極3上に供給された正孔輸送材料に光照射する。
これにより、正孔輸送材料に含まれる、化合物(A1)同士を置換基Xにおいて重合反応させた高分子(本発明の導電性材料)を得ることができる。その結果、本発明の導電性材料を主材料とする正孔輸送層41が陽極3上に形成される。
正孔輸送層41を本発明の導電性材料を主材料として構成することにより、次工程[A3]において、発光層材料を供給した際に、この発光層材料に含まれる溶媒または分散媒により、正孔輸送層41が膨潤および溶解するのを防止することができる。その結果、正孔輸送層41と発光層42との相溶解を確実に防止することができる。
【0096】
また、正孔輸送層41を本発明の導電性材料(高分子)を主材料として構成することにより、得られた有機EL素子1において、正孔輸送層41と発光層42との界面付近において、これらの構成材料同士が経時的に混ざり合うのを確実に防止することができる。
この高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、10000〜1000000程度であるのが好ましく、15000〜300000程度であるのがより好ましい。これにより、高分子の膨潤および溶解をより確実に抑制または防止することができる。
【0097】
なお、正孔輸送層41は、この正孔輸送層41と発光層42との相溶解が防止される範囲において、化合物(A1)の低分子(モノマーやオリゴマー)を含んでいてもよい。
正孔輸送材料に光照射する光としては、例えば、赤外線、可視光線、紫外線およびX線等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、紫外線を用いるのが特に好ましい。これにより、置換基Xにおける重合反応を容易かつ確実に進行させることができる。
【0098】
置換基Xとして、前記一般式(B1)または前記一般式(B3)で表されるものを選択した場合、光照射する紫外線の波長は、100〜420nm程度であるのが好ましく、150〜400nm程度であるのがより好ましい。
また、紫外線の照射強度は、1〜600mW/cm程度であるのが好ましく、1〜300mW/cm程度であるのがより好ましい。
【0099】
さらに、紫外線の照射時間は、60〜600秒程度であるのが好ましく、90〜500秒程度であるのがより好ましい。
また、置換基Xとして、前記一般式(B2)または前記一般式(B4)で表されるものを選択した場合、光照射する紫外線の波長は、200〜420nm程度であるのが好ましく、250〜400nm程度であるのがより好ましい。
【0100】
また、紫外線の照射強度は、10〜5000mW/cm程度であるのが好ましく、20〜1000mW/cm程度であるのがより好ましい。
さらに、紫外線の照射時間は、5〜300秒程度であるのが好ましく、10〜150秒程度であるのがより好ましい。
選択する置換基Xの種類に応じて、紫外線の波長、照射強度および照射時間をかかる範囲にすることにより、陽極3上に供給された正孔輸送材料の重合反応の進行を比較的容易に制御することができる。
【0101】
[2’]正孔輸送層形成工程(第2の構成)
また、置換基Xとして、前記一般式(B4)で表されるものを選択した場合には、正孔輸送層を、以下に示すような工程により形成するようにしてもよい。
[2’−1] まず、化合物(A1)を溶解し得る反応溶媒に、化合物(A1)を溶解させて導電性材料用組成物を得る。
【0102】
反応溶媒としては、前記工程[2−1]で説明した溶媒または分散媒と同様のものを用いることができる。ただし、前記工程[2−1]で説明したもののうち、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、芳香族複素環化合物系溶媒、ハロゲン化合物系溶媒、硫黄化合物系溶媒のような比較的塩基性の弱いものを選択するのが好ましい。これにより、次工程[2’−2]における化合物(A1)の高分子化を、選択した反応溶媒により阻害されることなく確実に進行させることができる。また、これらの中でも、特に、誘電率が小さいものを選択するのが好ましい。これにより、化合物(A1)の高分子化の重合速度が低下し、比較的分子量の小さい高分子を容易に得ることができることから、得られる化合物(A1)の重合物の分子量の制御を比較的容易に行うことができる。
【0103】
[2’−2] 次に、導電性材料用組成物に含まれる、化合物(A1)同士を置換基Xにおいて重合反応させて、化合物(A1)の重合物(可溶性ポリマー)が反応溶媒中に可溶な範囲内にまで、化合物(A1)を高分子化させる。
この際、導電性材料用組成物に、重合触媒を添加することにより、置換基Xにおける重合反応すなわち化合物(A1)の高分子化を促進させることができる。
【0104】
このような化合物(A1)の重合物(可溶性ポリマー)の重量平均分子量は、化合物(A1)の種類によっても若干異なり、特に限定されるものではないが、800〜10000程度であるのが好ましく、1500〜5000程度であるのがより好ましい。これにより、化合物(A1)の重合物が不溶化して、導電性材料用組成物中に析出(沈殿)するのを確実に防止することができる。
【0105】
このような化合物(A1)の重合物は、重合触媒の存在下において、例えば、反応温度の制御、光照射、嫌気処理のような所定の処理を導電性材料用組成物に行うことにより得ることができる。
化合物(A1)同士の重合反応は、前記所定の処理の条件を適宜設定することにより比較的容易に制御することができる。そのため、不溶性の高分子が生成されるより前に、すなわち、重合反応が進行して形成された高分子が不溶化する前に、化合物(A1)の高分子化を確実に停止させることができる。
【0106】
また、所定の処理としては、前述したものの中でも、反応温度の制御を選択するのが好ましい。反応温度を制御する際の処理条件を適宜設定することにより、化合物(A1)の高分子化をより容易に制御することができる。
反応温度を制御する際の導電性材料用組成物の温度は、前述した反応溶媒の種類によっても若干異なるが、−78〜25℃程度であるのが好ましく、−40〜0℃程度であるのがより好ましい。
【0107】
反応温度を制御する時間も、前述した反応溶媒の種類によっても若干異なるが、0.5〜24時間程度であるのが好ましく、1〜5時間程度であるのがより好ましい。
導電性材料用組成物の温度、および反応温度を制御する時間をかかる範囲にすることにより、化合物(A1)を不溶化させることなく高分子化させることができる。
なお、化合物(A1)の重合物(可溶性ポリマー)が得られた際には、導電性材料用組成物に、重合停止剤を添加するようにしてもよい。これにより、化合物(A1)の高分子化をより確実に停止させることができる。
このような重合停止剤としては、例えば、アンモニア水のような塩基性化合物を含有するメタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコール等の低級アルコールや、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が挙げられる。
【0108】
また、前記重合触媒としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲノカルボン酸、スルホン酸、硫酸モノエステル、リン酸モノエステルのようなプロトン酸、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテレート(BF/OEt)、ニ塩化チタン、四塩化チタン、塩化第一スズ、塩化第二スズ、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、臭化マグネシウム、塩化第二鉄のようなルイス酸等が挙げられる。ただし、重合触媒としてルイス酸を用いる場合には、水、アルコール、カルボン酸、エーテルのような不対電子を有する化合物を共触媒として導電性材料用組成物に添加するのが好ましい。これにより、化合物(A1)の高分子化をより確実に行うことができる。
【0109】
[2’−3] 次に、導電性材料用組成物に含まれる化合物(A1)の重合物(可溶性ポリマー)以外の不純物を導電性用組成物から除去する。
この不純物としては、例えば、化合物(A1)の低分子(モノマーやオリゴマー)、重合触媒、共触媒、化合物(A1)を合成する際に生成および/または混入したものおよび反応溶媒中に混入したもの等が挙げられる。
【0110】
このような不純物は、カチオン性、アニオン性およびノニオン性の不純物に分類される。これらの内、カチオン性およびアニオン性の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルトレーション法、吸着クロマトグラフィー法およびイオン交換クロマトグラフィー法等が挙げられるが、これらの中でも、フィルトレーション法を用いるのが好ましい。フィルトレーション法によれば、用いるフィルターの種類を適宜選択するだけで、目的とするカチオン性不純物やアニオン性不純物を効率よく確実に除去することができる。
【0111】
すなわち、フィルターとして、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂、重金属を選択的に除去し得るキレート樹脂のような陽イオン交換樹脂を主材料として構成されるものを選択することにより、カチオン性不純物を除去することができる。
また、フィルターとして、例えば、最強塩基性陰イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂、中塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂等のような陰イオン交換樹脂を主材料として構成されるものを選択することにより、アニオン性不純物を除去することができる。
【0112】
また、ノニオン性の不純物を除去する方法としては、例えば、限外ろ過膜法やゲル浸透クロマトグラフィー法等が挙げられるが、これらの中でも、限外ろ過膜法を用いるのが好ましい。限外ろ過膜法は、分子量に応じた各種物質の分離特性に優れており、用いる限外ろ過膜の種類を適宜選択するだけで、目的とする分子量より小さいノニオン性不純物を効率よく確実に除去することができる。
【0113】
[2’−4] 次に、化合物(A1)の重合物(可溶性ポリマー)を含有する導電性材料用組成物を陽極3上に塗布(供給)する。
この塗布には、前記工程[2−1]で説明したのと同様の方法を用いることができる。
なお、この導電性材料用組成物には、重合開始剤を添加するのが好ましい。これにより、次工程[2’−5]において、加熱や光照射のような所定の処理を施す際に、化合物(A1)の重合物同士の置換基Xにおける重合反応を促進させることができる。
この重合開始剤としても、前記工程[2−1]で説明したのと同様のものを用いることができる。
【0114】
[2’−5] 次に、陽極3上に供給された導電性材料用組成物に光照射する。
これにより、導電性材料用組成物に含まれる、化合物(A1)の重合物同士を置換基Xにおいて重合反応させることができる。これにより、化合物(A1)の重合物(可溶性ポリマー)がさらに高分子化することにより不溶化して、導電性材料用組成物中に析出することとなる。その結果、化合物(A1)の重合物(不溶性ポリマー)すなわち本発明の導電性材料を主材料とする正孔輸送層41が陽極3上に形成される。
【0115】
この化合物(A1)の重合物(不溶性ポリマー)の重量平均分子量は、特に限定されないが、15000〜1000000程度であるのが好ましく、20000〜300000程度であるのがより好ましい。これにより、高分子の膨潤および溶解をより確実に抑制または防止することができる。
導電性材料用組成物に光照射する光としては、前記工程[2−2]で説明したのと同様のものを用いることができる。
【0116】
以上のような[2’]の工程を経て正孔輸送層41が形成される。かかる工程により正孔輸送層41を形成することにより、前記工程[2’−5]において、陽極3上に供給される導電性材料用組成物に、化合物(A1)の重合物(可溶性ポリマー)が含まれていることから、重合開始剤の添加量を、比較的少なく設定することができる。その結果、得られる正孔輸送層41に残存する重合開始剤の量が比較的少なくなる。これにより、正孔輸送層41中の正孔が重合開始剤により捕捉されるのを好適に防止または抑制することができることから、得られる正孔輸送層41により優れた正孔輸送能を発揮させることができる。
【0117】
また、[2’]の方法では、化合物(A1)の重合物(可溶性ポリマー)を陽極3上に供給した後に、この重合物をさらに高分子化することにより不溶化させて正孔輸送層41が形成されることから、正孔輸送層41を比較的容易に、かつ分子量分布の狭い均一な膜を形成(成膜)できるという利点もある。
なお、得られた正孔輸送層41には、必要に応じて、例えば大気中、不活性雰囲気中、減圧(または真空)下等において熱処理を施すようにしてもよい。これにより、例えば、正孔輸送層41の乾燥・固化(脱溶媒または脱分散媒)等を行うことができる。なお、正孔輸送層41は、熱処理によらず乾燥してもよい。
また、置換基Xにおいて重合反応させるための所定の処理としては、前記工程[2−2]および前記工程[2’−5]で説明した光照射の他、例えば、加熱および嫌気処理等が挙げられるが、これらの中でも、光照射を用いるのが好ましい。光照射によれば、高分子化させる領域および程度を比較的容易に選択することができる。
【0118】
[A3]発光層形成工程
次に、正孔輸送層41上に発光層42を形成する。
発光層42は、例えば、前述したような発光材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる発光層材料(発光層形成用材料)を、正孔輸送層41上に塗布して形成することができる。
発光材料を溶解または分散させる溶媒または分散媒としては、正孔輸送層41を形成する際に用いた溶媒または分散媒と同様のものを用いることができる。
また、発光層材料を、正孔輸送層41上に塗布する方法としても、正孔輸送層41を形成する際に用いた塗布方法と同様の方法を用いることができる。
【0119】
[A4]電子輸送層形成工程
次に、発光層42上に電子輸送層43を形成する。
電子輸送層43は、発光材料に代えて前述したような電子輸送材料を用いる以外は、前記発光層形成工程[A3]と同様にすることにより形成される。
なお、発光層42が本発明の導電性材料のような高分子により構成されない場合、電子輸送層43を形成するために用いる導電性材料用組成物を、溶解または分散するための溶媒または分散媒としては、発光層42が膨潤および溶解しないものを選択するようにすればよい。これにより、発光層42と電子輸送層43との相溶解を確実に防止することができる。
【0120】
[A5]陰極形成工程
次に、電子輸送層43上に陰極5を形成する。
陰極5は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
[A6]保護層形成工程
次に、陽極3、有機EL層4および陰極5を覆うように、保護層6を形成する。
保護層6は、例えば、前述したような材料で構成される箱状の保護カバーを、各種硬化性樹脂(接着剤)で接合すること等により形成する(設ける)ことができる。
硬化性樹脂には、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、反応性硬化樹脂、嫌気性硬化樹脂のいずれも使用可能である。
以上のような工程を経て、有機EL素子1が製造される。
【0121】
<有機薄膜トランジスタ>
次に、本発明の電子デバイスを、スイッチング素子である有機薄膜トランジスタ(以下、単に「有機TFT」という。)に適用した場合の実施形態について説明する。
図2は、有機TFT10を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。なお、以下の説明では、図2(a)中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
図2に示す有機TFT10は、基板20上に設けられており、ソース電極30およびドレイン電極40と、有機半導体層(本発明の導電層)50と、ゲート絶縁層60と、ゲート電極70とが、この順で基板20側から積層されて構成されている。
【0122】
具体的には、有機TFT10は、基板20上に、ソース電極30およびドレイン電極40が分離して設けられ、これら電極30、40を覆うように有機半導体層50が設けられている。さらに有機半導体層50上には、ゲート絶縁層60が設けられ、さらにこの上に、少なくともソース電極30とドレイン電極40の間の領域に重なるようにゲート電極70が設けられている。
【0123】
この有機TFT10では、有機半導体層50のうち、ソース電極30とドレイン電極40との間の領域が、キャリアが移動するチャネル領域510となっている。以下、このチャネル領域510において、キャリアの移動方向の長さ、すなわちソース電極30とドレイン電極40との間の距離をチャネル長L、チャネル長L方向と直交する方向の長さをチャネル幅Wと言う。
このような有機TFT10は、ソース電極30およびドレイン電極40が、ゲート絶縁層60を介してゲート電極70よりも基板20側に設けられた構成の有機TFT、すなわち、トップゲート構造の有機TFTである。
【0124】
以下、有機TFT10を構成する各部について、順次説明する。
基板20は、有機TFT10を構成する各層(各部)を支持するものである。基板20には、例えば、前述した有機EL素子1で説明した基板2と同様のものを用いることができる他、シリコン基板、ガリウム砒素基板等を用いることができる。
基板20上には、ソース電極30およびドレイン電極40が、チャネル長L方向に沿って、所定距離離間して並設されている。
【0125】
これらのソース電極30およびドレイン電極40の構成材料としては、導電性を有するものであればいかなるものであってもよく、例えば、Pd、Pt、Au、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cuまたはこれらを含む合金等の金属材料、ITO、FTO、ATO、SnO等の導電性酸化物材料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素材料、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)のようなポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等の導電性高分子材料等が挙げられ、これらのうち導電性高分子材料は、通常塩化鉄、ヨウ素、強酸、有機酸、ポリスチレンサルフォニック酸などの高分子でドープされ導電性を付与された状態で用いられる。さらに、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0126】
ソース電極30およびドレイン電極40の厚さ(平均)は、特に限定されないが、それぞれ、30〜300nm程度であるのが好ましく、50〜200nm程度であるのがより好ましい。
ソース電極30とドレイン電極40との間の距離(離間距離)、すなわち、チャネル長Lは、2〜30μm程度であるのが好ましく、2〜20μm程度であるのがより好ましい。
チャネル幅Wは、0.1〜5mm程度であるのが好ましく、0.3〜3mm程度であるのがより好ましい。
【0127】
また、基板20上には、ソース電極30およびドレイン電極40を覆うように、有機半導体層50が設けられている。
この有機半導体層50の構成材料として、本発明の導電性材料を用いることができる。
前述したように、本発明の導電性材料は、置換基Rを適宜選択することにより、形成される高分子のキャリア輸送能の特性を調整することができるものである。
そこで、置換基Rを適宜選択することにより、高分子に正孔輸送性または電子輸送性の半導体特性を付与することができることから、本発明の導電性材料を有機半導体層50に用いるのは、特に有効である。
【0128】
具体的には、有機TFT10をp型のものとする場合、有機半導体層50の構成材料としては、正孔輸送能に優れたものが選択されることから、特に、置換基Rとして前記化学式(D1)、(D4)または(D5)(ただし、QがS、O、SeまたはTeの場合)を備える高分子が好適に用いられる。また、有機TFT10をn型のものとする場合、有機半導体層50の構成材料としては、電子輸送能に優れたものが選択されることから、特に、置換基Rとして前記化学式(D2)、(D6)または(D9)(ただし、QがN-TあるいはOの場合)を備える高分子が好適に用いられる。
【0129】
有機半導体層50の厚さ(平均)は、0.1〜1000nm程度であるのが好ましく、1〜500nm程度であるのがより好ましく、10〜100nm程度であるのがさらに好ましい。これにより、優れたキャリア輸送能を維持しつつ、有機TFT10が大型化すること(特に、厚さが増大すること)を防止することができる。
なお、有機半導体層50として、本発明の導電性材料のような高分子を主材料として構成されるものを用いることにより、得られる有機TFT10は、薄型化・軽量化が可能であるとともに、可撓性にも優れたものとなる。このような有機TFT10は、前述した有機EL素子を備えるフレキシブルディスプレイのスイッチング素子への適用に適している。
【0130】
なお、有機半導体層50は、ソース電極30およびドレイン電極40を覆うように設けられる構成のものに限定されず、少なくともソース電極30とドレイン電極40との間の領域(チャネル領域510)に設けられていればよい。
有機半導体層50上には、ゲート絶縁層60が設けられている。
このゲート絶縁層60は、ソース電極30およびドレイン電極40に対してゲート電極70を絶縁するものである。
【0131】
ゲート絶縁層60は、主として有機材料(特に有機高分子材料)で構成されているのが好ましい。有機高分子材料を主材料とするゲート絶縁層60は、その形成が容易であるとともに、有機半導体層50との密着性の向上を図ることもできる。
このような有機高分子材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルフェニレン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂、ポリビニルフェノールあるいはノボラック樹脂のようなフェノール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテンなどのオレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0132】
ゲート絶縁層60の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜5000nm程度であるのが好ましく、100〜1000nm程度であるのがより好ましい。ゲート絶縁層60の厚さを前記範囲とすることにより、ソース電極30およびドレイン電極40とゲート電極70とを確実に絶縁しつつ、有機TFT10が大型化すること(特に、厚さが増大すること)を防止することができる。
【0133】
なお、ゲート絶縁層60は、単層構成のものに限定されず、複数層の積層構成のものであってもよい。
ゲート絶縁層60上には、ゲート電極70が設けられている。
ゲート電極70の構成材料としては、前述したソース電極30およびドレイン電極40の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0134】
ゲート電極70の厚さ(平均)は、特に限定されないが、0.1〜5000nm程度であるのが好ましく、1〜5000nm程度であるのがより好ましく、10〜5000nm程度であるのがさらに好ましい。
以上のような有機TFT10は、ゲート電極70に印加する電圧を変化させることにより、ソース電極30とドレイン電極40との間に流れる電流量が制御される。
【0135】
すなわち、ゲート電極70に電圧が印加されていないOFF状態では、ソース電極30とドレイン電極40との間に電圧を印加しても、有機半導体層50中にほとんどキャリアが存在しないため、微少な電流しか流れない。一方、ゲート電極70に電圧が印加されているON状態では、有機半導体層50のゲート絶縁層60に面した部分に電荷が誘起され、チャネル領域510にキャリアの流路が形成される。この状態でソース電極30とドレイン電極40との間に電圧を印加すると、チャネル領域510を通ってキャリア(正孔または電子)が流れる。
このような有機TFT10は、例えば、次のようにして製造することができる。
図3〜図4は、それぞれ、図2に示す有機TFT10の製造方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図3〜図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0136】
[B1]ソース電極およびドレイン電極形成工程
[B1−1] まず、図3(a)に示すような基板20を用意し、この基板20を、例えば、水(純水等)、有機溶媒等を単独または適宜組み合わせて洗浄する。
次に、基板20上に、フォトレジストを供給し、被膜80’を形成する(図3(b)参照。)。
【0137】
基板20上に供給するフォトレジストとしては、光が照射(露光)された領域が硬化し、この露光された領域以外の領域が現像によって溶解し、除去されるネガ型フォトレジスト、および、露光された領域が現像によって溶解し、除去されるポジ型フォトレジストのいずれを用いてもよい。
ネガ型フォトレジストとしては、ロジン−重クロム酸塩、ポリビニルアルコール(PVA)−重クロム酸塩、セラック−重クロム酸塩、カゼイン−重クロム酸塩、PVA−ジアゾ、アクリル系フォトレジスト等のような水溶性フォトレジスト、ポリケイ皮酸ビニル、環化ゴム−アジド、ポリビニルシンナミリデンアセタート、ポリケイ皮酸β−ビニロキシエチルエステル等のような油溶性フォトレジスト等が挙げられる。
【0138】
また、ポジ型フォトレジストとしては、o−ナフトキノンジアジド等のような油溶性フォトレジスト等が挙げられる。
フォトレジストを、基板20上に、供給する方法としては、いかなる方法であってもよいが、塗布法が好適に用いられる。
塗布法としては有機EL素子1の製造方法の正孔輸送層形成工程[A2]で説明したものと同様の方法を用いることができる。
次に、被膜80’を、フォトマスクを介して露光および現像し、ソース電極30およびドレイン電極40を形成する領域に開口部820を有するレジスト層80を形成する(図3(c)参照。)。
【0139】
[B1−2] 次に、図3(d)に示すように、前述したような処理が施された基板20の開口部820内に、形成すべきソース電極30およびドレイン電極40に応じて、これら電極の構成材料またはその前駆体を含有する所定量の液状材料90を供給する。
【0140】
この液状材料90において、ソース電極30およびドレイン電極40の構成材料またはその前駆体を、溶解または分散する溶液または分散媒としては、前記正孔輸送層形成工程[A2]で説明したものと同様のものを用いることができる。
また、この液状材料90を開口部820内に供給する方法には、前述したものと同様の塗布法を用いることができるが、これらの中でも、インクジェット法(液滴吐出法)を用いるのが好ましい。インクジェット法によれば、液状材料90を、液滴吐出ヘッドのノズルから液滴として吐出して、開口部820内に確実に供給することができる。その結果、レジスト層80に液状材料90が付着するのを確実に阻止することができる。
【0141】
[B1−3] 次に、開口部820に供給された液状材料90から溶媒または分散媒を除去して、ソース電極30およびドレイン電極40を形成する。
前記溶媒または分散媒を除去する際の温度(除去温度)は、特に限定されず、溶媒または分散媒の種類によって若干異なるが、20〜200℃程度であるのが好ましく、50〜100℃程度であるのがより好ましい。これにより、液状材料90中に含まれる溶媒または分散媒を、確実に除去することができる。
なお、この溶媒または分散媒の除去を、減圧下で加熱するようにしてもよい。これにより、液状材料90中に含まれる溶媒または分散媒を、より確実に除去することができる。
【0142】
[B1−4] 次に、基板20からレジスト層80を除去して、基板20上に形成されたソース電極30およびドレイン電極40を得る(図4(f)参照。)。
レジスト層80の除去方法は、レジスト層80の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、プラズマ処理やオゾン処理のようなアッシング、紫外線の照射、Ne−Heレーザー、Arレーザー、COレーザー、ルビーレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー、ガラスレーザー、YVOレーザー、エキシマレーザー等の各種レーザーの照射、レジスト層80を溶解または分解し得る溶剤との接触(例えば浸漬)等により行うことができる。
【0143】
[B2]有機半導体層形成工程
次に、図4(h)に示すように、ソース電極30およびドレイン電極40が形成された基板20上に、ソース電極30およびドレイン電極40を覆うように、有機半導体層50を形成する。
このとき、ソース電極30とドレイン電極40との間(ゲート電極70に対応する領域)には、チャネル領域510が形成される。
この有機半導体層50は、有機EL素子1の製造方法の正孔輸送層形成工程[A2]で説明したのと同様の方法により、本発明の導電性材料用組成物を用いて形成される。
【0144】
そして、有機半導体層50は、本発明の導電性材料(高分子)を主材料として構成されるものである。これにより、次工程[B3]において、ゲート絶縁層材料を有機半導体層50上に供給した際に、このゲート絶縁層材料に含まれる溶媒または分散媒により、高分子が膨潤および溶解することを好適に抑制または防止することができる。その結果、有機半導体層50とゲート絶縁層60との相溶解を確実に防止することができる。
また、有機半導体層50を本発明の導電性材料のように高分子を主材料として構成することにより、得られた有機TFT10において、有機半導体層50とゲート絶縁層60との界面付近において、これらの構成材料同士が経時的に混ざり合うのを確実に防止することができる。
【0145】
[B3]ゲート絶縁層形成工程
次に、図4(i)に示すように、有機半導体層50上に、ゲート絶縁層60を塗布法を用いて形成する。
具体的には、ゲート絶縁層60は、絶縁材料またはその前駆体を含む溶液を、前述した塗布法を用いて、有機半導体層50上に塗布(供給)した後、必要に応じて、この塗膜に対して後処理(例えば加熱、赤外線の照射、超音波の付与等)を施すことにより形成することができる。
【0146】
[B4]ゲート電極形成工程
次に、図4(j)に示すように、ゲート絶縁層60上に、ゲート電極70を塗布法を用いて形成する。
具体的には、ゲート電極70は、電極材料またはその前駆体を含む溶液を、塗布法を用いて、ゲート絶縁層60上に塗布(供給)した後、必要に応じて、この塗膜に対して後処理(例えば加熱、赤外線の照射、超音波の付与等)を施すことにより形成することができる。
【0147】
また、塗布法には、前述したのと同様の方法を用いることができるが、特に、インクジェット法を用いるのが好ましい。インクジェット法によれば、電極材料またはその前駆体を含む溶液を、液滴吐出ヘッドのノズルから液滴を吐出してパターニングすることができる。その結果、ゲート絶縁層60上に、所定形状のゲート電極70を、容易かつ確実に形成することができる。
以上のような工程を経て、有機TFT10が製造される。
【0148】
<電子機器>
また、前述したような、有機EL素子(発光素子)1や有機TFT(スイッチング素子)10のような本発明の電子デバイスは、各種電子機器に用いることができる。
図5は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【0149】
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100においては、例えば、表示ユニット1106が前述の有機EL素子(発光素子)1と有機TFT(スイッチング素子)10とを備えている。
【0150】
図6は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、例えば、この表示部が前述の有機EL素子(発光素子)1と有機TFT(スイッチング素子)10とを備えている。
【0151】
図7は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0152】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、例えば、この表示部が前述の有機EL素子(発光素子)1と有機TFT(スイッチング素子)10とを備えている。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
【0153】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0154】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0155】
なお、本発明の電子機器は、図5のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図6の携帯電話機、図7のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
【0156】
以上、本発明の導電性材料用組成物、導電性材料、導電層、電子デバイスおよび電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
例えば、本発明の電子デバイスは、導電層を正孔輸送層として用いる場合、前述した表示素子(発光素子)の一例である有機EL素子に適用することができる他、例えば、受光素子(光電変換素子)の一例である太陽電池等に適用することができる。
【0157】
また、本発明の電子デバイスは、導電層を有機半導体層として用いる場合、前述したスイッチング素子の一例である有機TFTに適用することができる他、例えば、半導体素子等に適用することができる。
さらに、本発明の導電層は、上述した正孔輸送層として用いる他、例えば、配線および電極等に適用することができる。そして、この場合、本発明の電子デバイスは、例えば、配線基板等に適用することができる。
【実施例】
【0158】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.化合物の合成
まず、以下に示すような化合物(A)〜(S)を用意した。
<化合物(A)>
−1A− まず、6−(p−アミノフェニル)ヘキサノールを無水ジメチルホルムアミド中で、ベンジルブロミドと水素化ナトリウムで処理し、ヒドロキシル基をベンジルエーテル基に変換し保護した。
【0159】
−2A− 次に、その得られた化合物1molを酢酸150mLに溶解し、室温で無水酢酸を滴下後、撹拌した。反応終了後、析出した固体をろ過し、水洗後、乾燥した。
−3A− 次に、6−(p-アミノフェニル)ヘキサノールから得られたベンジルエーテル誘導体0.37mol、1−ブロモナフタレン0.66mol、炭酸カリウム1.1mol、銅粉、ヨウ素を混合し、200℃で加熱した。放冷後、イソアミルアルコール130mL、純水50mL、水酸化カリウム0.73molを加え撹拌後、乾燥した。
【0160】
−4A− さらに、そこで得られた化合物130mmol、4,4’−ジヨードビフェニル62mmol、酢酸パラジウム1.3mmol、t−ブチルホスフィン5.2mmol、t−ブトキシナトリム260mmol、キシレン700mLを混合して、120℃で撹拌した。その後、放冷し、結晶化した。
−5A− その得られた化合物を、Pd−C触媒下水素ガスで還元し、ベンジルエーテル基からヒドロキシル基へ変換し脱保護した。
【0161】
−6A− 次に、その化合物100mmolとアクリロイルクロライド200mmolとをキシレン溶液中に加え加熱しながら撹拌後、放冷し結晶化して化合物を得た。
そして、質量スペクトル(MS)法、1H-核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトル法、13C-核磁気共鳴(13C-NMR)スペクトル法、およびフーリエ変換赤外吸収(FT−IR)スペクトル法により、得られた化合物が下記化合物(A)であることを確認した。
【0162】
<化合物(B)>
アクリロイルクロライドに代えてp−(ブロモメチル)スチレンを用いた以外は、前記化合物(A)と同様にして、化合物(B)を得た。
<化合物(C)>
前記工程−6A−に代えて、下記工程−6A’−とした以外は、前記化合物(A)と同様にして、化合物(C)を得た。
−6A’− 次に、その化合物100mmolを50%水酸化カリウム水溶液中に加え、加熱しながら撹拌した。次に、加圧下(5MPa)で150℃に保ちながら、アセチレンを毎時1リットルの流速で10時間反応させた後、放冷し結晶化して化合物を得た。
【0163】
<化合物(D)>
前記工程−6A−に代えて、下記工程−6A”−とした以外は、前記化合物(A)と同様にして、化合物(D)を得た。
−6A”− 次に、その化合物100mmolとエピクロルヒドリン2000mmolを少量のテトラ−n−ブチルアンモニウム硫酸水素塩(相間移動触媒)を添加した50%水酸化ナトリウム水溶液中に加え、室温下で10時間攪拌した後、放冷し結晶化して化合物を得た。
【0164】
<化合物(E)>
6−(p-アミノフェニル)ヘキサノールに代えて2−(p−アミノフェニル)エタノールを用いた以外は、前記化合物(D)と同様にして、化合物(E)を得た。
<化合物(F)>
6−(p-アミノフェニル)ヘキサノールに代えて8−(p−アミノフェニル)オクタノールを用いた以外は、前記化合物(D)と同様にして、化合物(F)を得た。
【0165】
<化合物(G)>
6−(p-アミノフェニル)ヘキサノールに代えて1−(p−アミノフェニル)メタノールを用いた以外は、前記化合物(D)と同様にして、化合物(G)を得た。
<化合物(H)>
4,4’−ジヨードビフェニルに代えて3,3’−ジヨード−1,1’−ビイソベンゾチオフェンを用いた以外は、前記化合物(D)と同様にして、化合物(H)を得た。
【0166】
<化合物(I)>
4,4’−ジヨードビフェニルに代えて2,5−ビス(4−ヨードフェニル)−チオフェンを用いた以外は、前記化合物(D)と同様にして、化合物(I)を得た。
<化合物(J)>
1−ブロモナフタレンに代えて2−ブロモ−9,9−ジオクチルフルオレンを用いた以外は、前記化合物(D)と同様にして、化合物(J)を得た。
【0167】
<化合物(K)>
1−ブロモナフタレンに代えて2−ブロモチオフェンを用いた以外は、前記化合物(D)と同様にして、化合物(K)を得た。
<化合物(L)>
1−ブロモナフタレンに代えて2−ブロモ−1,3,4−オキサジアゾールを用いた以外は、前記化合物(D)と同様にして、化合物(L)を得た。
【0168】
<化合物(M)>
下記化合物(M)として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−ベンジジン(トスコ社製、「OSA6140」)を用意した。
<化合物(N)>
下記化合物(N)として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(バイエル社製、「バイトロンP」)を用意した。
【0169】
<化合物(O)>
下記化合物(O)として、3,5−ビス(4−tert−ブチル−フェニル),4−フェニル−1,2,4−トリアゾール(トスコ社製、「OPA2938」)を用意した。
<化合物(P)>
下記化合物(P)として、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−コ(9,10−アントラセン)](American Dye Source社製、「ADS106RE」)を用意した。
【0170】
<化合物(Q)>
下記化合物(Q)として、ポリ[9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン−オルト−コ(4,4’−ビフェニレン)]
(American Dye Source社製、「ADS107GE」)を用意した。
<化合物(R)>
下記化合物(R)として、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ(1,4−ビニレンフェニレン)]
(American Dye Source社製、「ADS128GE」)を用意した。
【0171】
<化合物(S)>
下記化合物(S)として、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ(N,N ' −ジフェニル)−N,N'−ジ((p−ブチルフェニル)−1,4−
ジアミノベンゼン))](American Dye Source社製、「ADS132GE」)を用意した。
【0172】
【化14】

【0173】
【化15】

【0174】
【化16】

【0175】
2.有機EL素子の製造
以下の各実施例および各比較例において、有機EL素子を5個ずつ製造した。
(実施例1A)
[正孔輸送材料の調製]
アリールアミン誘導体として化合物(A)を用い、化合物(A)とラジカル重合開始剤(長瀬産業社製、「イルガキュア 651」)とを重量比で95:5の比率でキシレンに溶解させて、正孔輸送材料(導電性材料用組成物)を得た。
【0176】
[有機EL素子の作製]
−1B− まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板上に、真空蒸着法により、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
−2B− 次に、ITO電極上に、前記正孔輸送材料を、スピンコート法により塗布し乾燥した。
その後、水銀ランプ(ウシオ電機社製、「UM−452型式」)にフィルターを用いて、大気中で波長185nm、照射強度3mW/cmの紫外線を400秒間照射することにより、化合物(A)を重合反応させて、平均厚さ50nmの正孔輸送層を形成した。
【0177】
−3B− 次に、正孔輸送層上に、化合物(P)(発光材料)の1.5wt%キシレン溶液を、スピンコート法により塗布した後、乾燥して、平均厚さ50nmの発光層を形成した。
−4B− 次に、発光層上に、化合物(O)を真空蒸着し、平均厚さ20nmの電子輸送層を形成した。
−5B− 次に、電子輸送層上に、真空蒸着法により、平均厚さ300nmのAlLi電極(陰極)を形成した。
−6B− 次に、形成した各層を覆うように、ポリカーボネート製の保護カバーを被せ、紫外線硬化性樹脂により固定、封止して、有機EL素子を完成した。
(実施例2A)
アリールアミン誘導体として化合物(B)を用いた以外は、前記実施例1Aと同様にして、正孔輸送材料の調製を行った後、有機EL素子を製造した。
【0178】
(実施例3A)
[正孔輸送材料の調製]
アリールアミン誘導体として化合物(C)を用い、化合物(C)と光カチオン重合開始剤(住友スリーエム社製、「FC−508」)とを重量比で99:1の比率でキシレンに溶解させて、正孔輸送材料(導電性材料用組成物)を得た。
【0179】
[有機EL素子の作製]
−1C− 前記工程−1B−と同様にして、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板上に、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
−2C− 次に、ITO電極上に、前記正孔輸送材料を、スピンコート法により塗布し乾燥した。
その後、水銀ランプ(ウシオ電機社製、「UM−452型式」)にフィルターを用いて、乾燥大気中で波長365nm、照射強度500mW/cmの紫外線を15秒間照射後、110℃で60分間加熱することにより、化合物(A)を重合反応させて、平均厚さ50nmの正孔輸送層を形成した。
【0180】
−3C− 前記工程−3B−と同様にして、正孔輸送層上に、化合物(P)が発光材料として構成される、平均厚さ50nmの発光層を形成した。
−4C− 前記工程−4B−と同様にして、発光層上に、化合物(O)を主材料として構成される、平均厚さ20nmの電子輸送層を形成した。
−5C− 前記工程−5B−と同様にして、電子輸送層上に、平均厚さ300nmのAlLi電極(陰極)を形成した。
−6C− 前記工程−6B−と同様にして、ポリカーボネート製の保護カバーにより封止して、有機EL素子を完成した。
【0181】
(実施例4A〜6A)
アリールアミン誘導体として表1に示すものを用いた以外は、前記実施例3Aと同様にして、正孔輸送材料の調製を行った後、有機EL素子を製造した。
(実施例7A〜14A)
アリールアミン誘導体および発光材料として表1に示すものを用いた以外は、前記実施例3Aと同様にして、正孔輸送材料の調製を行った後、有機EL素子を製造した。
【0182】
(比較例1A)
[正孔輸送材料の調製]
化合物(M)をキシレンに溶解させて、正孔輸送材料を得た。
[有機EL素子の作製]
前記工程−2A−において、水銀ランプによる紫外線の照射を省略した以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
【0183】
(比較例2A)
[正孔輸送材料の調製]
化合物(N)を水に分散させることにより、2.0wt%水分散液を調製して、正孔輸送材料を得た。
なお、化合物(N)としては、3,4−エチレンジオキシチオフェンとスチレンスルホン酸との比率が、重量比で1:20のものを用いた。
[有機EL素子の作製]
正孔輸送材料として、ここで調製した正孔輸送材料を用いた以外は、前記比較例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
【0184】
(比較例3A)
[正孔輸送材料の調製]
アリールアミン誘導体誘導体として化合物(M)を用い、光架橋剤としてポリエステルアクリレート化合物(東亞合成社製、「アロニックス M−8030」)を用いて、化合物(M)とポリエステルアクリレート化合物、ラジカル重合開始剤(長瀬産業(株)社製:イルガキュア 651)を重量比で30:65:5の比率でキシレンに混合して、正孔輸送材料を得た。
[有機EL素子の作製]
正孔輸送材料として、ここで調製した正孔輸送材料を用いた以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
(比較例4A)
アリールアミン誘導体として化合物(G)を用いた以外は、前記実施例3Aと同様にして、正孔輸送材料の調製を行った後、有機EL素子を製造した。
【0185】
3.有機EL素子の評価
各実施例および各比較例の有機EL素子について、それぞれ、発光輝度(cd/m)、最大発光効率(lm/W)を測定すると共に、発光輝度が初期値の半分になる時間(半減期)を測定した。
また、各測定値は、いずれも、5個の有機EL素子から求めた。
【0186】
なお、発光輝度の測定は、ITO電極とAlLi電極との間に6Vの電圧を印加することで行った。
そして、比較例1Aで測定された各測定値(発光輝度、最大発光効率、半減期)を基準値として、各実施例および各比較例で測定された各測定値を、それぞれ、以下の4段階の基準に従って評価した。
【0187】
◎:比較例1Aの測定値に対し、1.50倍以上である
○:比較例1Aの測定値に対し、1.25倍以上、1.50倍未満である
△:比較例1Aの測定値に対し、1.00倍以上、1.25倍未満である
×:比較例1Aの測定値に対し、0.75倍以上、1.00倍未満である
これらの評価結果を、それぞれ、以下の表1に示す。
【0188】
【表1】

【0189】
表1に示すように、各実施例の有機EL素子は、いずれも、各比較例の有機EL素子と比較して、発光輝度、最大発光効率および半減期ともに、優れた結果が得られた。
これにより、本発明の有機EL素子は、主骨格同士の相互作用が好適に低減されていることが明らかとなった。また、正孔輸送層と発光層との相溶解が好適に防止されていることが明らかとなった。
【0190】
また、置換基Xを適宜選択することにより、各実施例において、主骨格の離間距離が適切な大きさに保たれているものほど、優れた発光輝度の向上、最大発光効率の向上および半減期の延長を示す結果が得られた。
さらに、実施例9A〜14Aにおいても、形成された有機EL素子が優れた発光輝度、最大発光効率および半減期を示す結果が得られた。このことは、化合物(A1)の置換基Rを適宜選択することにより、導電性材料のキャリア輸送能の特性が変化して、発光材料との組み合わせが好適なものとなっていることに起因すると推察された。
【0191】
4.有機TFTの製造
以下の各実施例および各比較例において、有機TFTを5個ずつ製造した。
(実施例1B)
[有機半導体材料の調製]
アリールアミン誘導体として化合物(D)を用いた以外は、前記実施例3Aの正孔輸送材料と同様にして、有機半導体材料(導電性材料用組成物)を得た。
【0192】
[有機TFTの製造]
−1E− まず、平均厚さ1mmのガラス基板を用意し、水(洗浄液)を用いて洗浄した。
次に、ガラス基板上に、スピンコート法によってフォトレジストを塗布した後、プレベーク処理を行うことによって被膜を形成した。
次に、この被膜に対して、フォトマスクを介して紫外線を照射(露光)した後に、現像を行った。これにより、ソース電極およびドレイン電極を形成する領域に開口部を有するレジスト層を形成した。
【0193】
−2E− 次に、この開口部内に、金コロイド水溶液を、インクジェット法により供給した。その後、金コロイド水溶液が供給されたガラス基板を加熱乾燥して、ソース電極およびドレイン電極を得た。
−3E− 次に、レジスト層を、酸素プラズマ処理によって除去した後、ソース電極およびドレイン電極が形成されたガラス基板を、水およびメタノールで順次洗浄した。
【0194】
−4E− 次に、正孔輸送材料に代えてここで調製した有機半導体材料を用いた以外は、前記工程−2C−と同様にすることにより、化合物(D)を重合反応させて、平均厚さ50nmの有機半導体層を形成した。
−5E− 次に、有機半導体層上に、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)の酢酸ブチル溶液を、スピンコート法により塗布した後、乾燥させることにより、平均厚さ500nmのゲート絶縁層を形成した。
−6E− 次に、ゲート絶縁層上の、ソース電極とドレイン電極との間の領域に対応する部分に、ポリエチレンジオキシチオフェンの水分散液を、インクジェット法により塗布した後乾燥した。これにより、平均厚さ100nmのゲート電極を形成した。
以上の工程により、有機TFTを製造した。
(実施例2B〜8B)
有機半導体材料に用いるアリールアミン誘導体として表2に示すものを用いた以外は、前記実施例1Bと同様にして、有機半導体材料の調製を行った後、有機TFTを製造した。
【0195】
(比較例1B)
[有機半導体材料の調製]
化合物(M)をキシレンに溶解させて、有機半導体材料を得た。
[有機TFTの作製]
前記工程−4E−において、水銀ランプによる紫外線の照射と加熱処理とを省略した以外は、前記実施例1Bと同様にして、有機TFTを製造した。
【0196】
(比較例2B)
[有機半導体材料の調製]
アリールアミン誘導体として化合物(M)を用い、光架橋剤として2官能エポキシ化合物(ナガセケムテックス社製、「デナコール EX−212」)を用いて、化合物(M)とエポキシ化合物、光カチオン重合開始剤(住友スリーエム社製、「FC−508」)を重量比で50:49:1の比率でキシレンに混合させて、有機半導体材料を得た。
[有機TFTの作製]
有機半導体材料として、ここで調製した有機半導体材料を用いた以外は、前記実施例1Bと同様にして、有機TFTを製造した。
(比較例3B)
有機半導体材料に用いるアリールアミン誘導体として化合物(G)を用いた以外は、前記実施例1Bと同様にして、有機半導体材料の調製を行った後、有機TFTを製造した。
【0197】
5.有機TFTの評価
各実施例および各比較例で製造した有機TFTについて、それぞれ、OFF電流、ON電流の値を測定した。
ここで、OFF電流とは、ゲート電圧を印加しないときに、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流の値のことであり、ON電流とは、ゲート電圧を印加したときに、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流の値のことである。
【0198】
したがって、OFF電流の絶対値と、ON電流の絶対値との比(ON/OFF比)の値が大きいもの程、良好な特性を有する有機TFTであることを意味する。
OFF電流は、ソース電極とドレイン電極との電位差を30Vとして測定し、ON電流は、ソース電極とドレイン電極との電位差を30Vとし、ゲート電圧の絶対値を40Vとして測定した。
そして、各実施例および各比較例で測定されたON/OFF比の値を、それぞれ、以下の4段階の基準に従って評価した。
【0199】
◎:ON/OFF比の値が、10以上である
○:ON/OFF比の値が、10以上、10未満である
△:ON/OFF比の値が、10以上、10未満である
×:ON/OFF比の値が、10未満である
これらの評価結果を、それぞれ、以下の表2に示す。
【0200】
【表2】

【0201】
表2に示すように、各実施例の有機TFTは、いずれも、各比較例の有機TFTと比較して、ON/OFF比の値が大きく、特性に優れた結果が得られた。
これにより、主骨格同士の相互作用が好適に低減されていることが明らかとなった。また、有機半導体層とゲート絶縁層との相溶解が好適に防止されていることが明らかとなった。
また、置換基Xを適宜選択することにより、各実施例において、主骨格の離間距離が適切な大きさに保たれているものほど、ON/OFF比の値が大きく、良好な特性を示す結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】有機EL素子の一例を示した縦断面図である。
【図2】有機TFTの実施形態を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【図3】図2に示す有機TFTの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図4】図2に示す有機TFTの製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図5】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0203】
1……有機EL素子 2……基板 3……陽極 4……有機EL層 41……正孔輸送層 42……発光層 43……電子輸送層 5……陰極 6……保護層 10……有機薄膜トランジスタ 20……基板 30……ソース電極 40……ドレイン電極 50……有機半導体層 510……チャネル領域 60……ゲート絶縁層 70……ゲート電極 80……レジスト層 80’……被膜 820……開口部 90……液状材料 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A1)で表される化合物を含有することを特徴とする導電性材料用組成物。
【化1】

[式中、2つのXは、下記一般式(B1)〜(B4)で表される置換基のうちのいずれかを表す。ただし、2つのXは、その炭素数は、同一であっても、異なっていてもよい。2つのRは、それぞれ独立して、置換または無置換の一価の芳香族基(ただし、フェニル基を除く。)を表す。4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。Yは、置換または無置換の下記一般式(C1)〜(C3)のうちのいずれかで表される2価の芳香族基を表す。]
【化2】

[これらの式中、nは、2〜8の整数を表し、nは、3〜8の整数を表し、nは、3〜8の整数を表す。mは、0〜3の整数を表し、mは、0〜2の整数を表す。Zは、水素原子またはメチル基を表し、Zは、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。]
【化3】

[これらの式中、nは、1〜3の整数を表す。]
【請求項2】
2つの前記置換基Xは、その炭素数が同一である請求項1に記載の導電性材料用組成物。
【請求項3】
前記置換基Xは、ベンゼン環の3位、4位または5位のうちのいずれかに結合している請求項1または2に記載の導電性材料用組成物。
【請求項4】
2つの前記置換基Rは、同一である請求項1ないし3のいずれかに記載の導電性材料用組成物。
【請求項5】
前記置換基Rの総炭素数は、2〜30である請求項1ないし4のいずれかに記載の導電性材料用組成物。
【請求項6】
前記置換基Rは、単環系または縮合多環系の芳香族基である請求項1ないし5のいずれかに記載の導電性材料用組成物。
【請求項7】
下記一般式(A1)で表される化合物同士を置換基Xにおいて重合反応させて得られることを特徴とする導電性材料。
【化4】

[式中、2つのXは、下記一般式(B1)〜(B4)で表される置換基のうちのいずれかを表す。ただし、2つのXは、その炭素数は、同一であっても、異なっていてもよい。2つのRは、それぞれ独立して、置換または無置換の一価の芳香族基(ただし、フェニル基を除く。)を表す。4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。Yは、置換または無置換の下記一般式(C1)〜(C3)のうちのいずれかで表される2価の芳香族基を表す。]
【化5】

[これらの式中、nは、2〜8の整数を表し、nは、3〜8の整数を表し、nは、3〜8の整数を表す。mは、0〜3の整数を表し、mは、0〜2の整数を表す。Zは、水素原子またはメチル基を表し、Zは、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。]
【化6】

[これらの式中、nは、1〜3の整数を表す。]
【請求項8】
前記化合物は、光照射により重合反応する請求項7に記載の導電性材料。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれかに記載の導電性材料用組成物を用いて形成されたことを特徴とする導電層。
【請求項10】
請求項7または8に記載の導電性材料を主材料とすることを特徴とする導電層。
【請求項11】
前記導電層は、正孔輸送層である請求項9または10に記載の導電層。
【請求項12】
前記正孔輸送層の平均厚さは、10〜150nmである請求項11に記載の導電層。
【請求項13】
前記導電層は、有機半導体層である請求項9または10に記載の導電層。
【請求項14】
前記有機半導体層の平均厚さは、0.1〜1000nmである請求項13に記載の導電層。
【請求項15】
請求項9ないし14のいずれかに記載の導電層を備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項16】
請求項11または12に記載の導電層を有する積層体を備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項17】
前記電子デバイスは、発光素子または光電変換素子である請求項16に記載の電子デバイス。
【請求項18】
前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項17に記載の電子デバイス。
【請求項19】
請求項13または14に記載の導電層を有する積層体を備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項20】
前記電子デバイスは、スイッチング素子である請求項19に記載の電子デバイス。
【請求項21】
前記スイッチング素子は、有機薄膜トランジスタである請求項20に記載の電子デバイス。
【請求項22】
請求項15ないし21のいずれかに記載の電子デバイスを備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−197587(P2007−197587A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18606(P2006−18606)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】