説明

導電性架橋ポリオレフィン系発泡体及びその製造方法

【課題】導電性、柔軟性に優れた導電性架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂に導電性酸化亜鉛、導電性可塑剤、発泡剤及び架橋剤を添加混練して加熱、発泡させてなる導電性架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法において、ポリオレフィン系樹脂100重量部に体積抵抗値が1×10Ω・cm以下、比表面積が20〜70m/g、嵩比容が500〜1,200ml/100gである導電性酸化亜鉛50〜200重量部及び導電性可塑剤10〜50重量部を練和することを特徴とする導電性架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性架橋ポリオレフィン系発泡体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品使用の各種機器類の包装、輸送、保存用材料や静電防止マット等、導電性発泡体の用途が広範に拡大してきている。
従来より、導電性を有するプラスチックフォームとしてはウレタンフォームが知られているが(特公昭52−36902号公報)、カーボンの脱落や色落ち等の問題があり、また基材がウレタンであるため耐候性が非常に悪いなどの問題があった。
【0003】
本出願人は、ポリオレフィンにカーボンブラック、発泡剤及び架橋剤を添加混練し、加圧下金型中にて架橋させ、次いで常圧下にて加熱発泡させる導電性架橋ポリオレフィン気泡体の製造方法(特公平2−29095号公報)を開発した。
【0004】
また、本出願人は、ポリオレフィンに導電性亜鉛華及び酸化チタン粒子の周囲を酸化錫と酸化アンチモンからなる金属酸化物によって被覆せしめた導電性粉末を練り込んだ導電性架橋ポリオレフィン気泡体の製造方法(特公平3−20419号公報)を開発した。
【特許文献1】特公昭52−36902号公報
【特許文献2】特公平2−29095号公報
【特許文献3】特公平3−20419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術のカーボンブラック練り込み導電性架橋ポリオレフィン気泡体は黒色の発泡体しか得られず、導電性亜鉛華を練り込んだ導電性架橋ポリオレフィン気泡体は、白色等の様々な色の発泡体が得られるが、導電性亜鉛華の添加部数が50〜300部数と多いため、柔軟性に劣っていた。従って、本発明の目的は、十分な導電性を有しながら、黒色以外の色を有し、柔軟性に富む導電性架橋ポリオレフィン系発泡体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特定の導電性酸化亜鉛と導電性可塑剤との併用により、少ない添加部数で、高い導電性が得られることに着目したものであり、本発明の導電性架橋ポリオレフィン系発泡体は、ポリオレフィン系樹脂に導電性酸化亜鉛、導電性可塑剤、発泡剤及び架橋剤を添加混練して加熱、発泡させてなる導電性架橋ポリオレフィン系発泡体である。
【0007】
本発明において、導電性酸化亜鉛の体積抵抗値が1×10Ω・cm以下、比表面積が20〜70m/g、嵩比容が500〜1,200ml/100gであることが好ましい。
【0008】
本発明の導電性架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に導電性酸化亜鉛50〜200重量部、導電性可塑剤10〜50重量部、発泡剤及び架橋剤を添加混練し、得られた架橋性発泡性組成物を加圧下に加熱した後、除圧し、発泡体を生成させることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の製造方法において、導電性酸化亜鉛の体積抵抗値が1×10Ω・cm以下、比表面積が20〜70m/g、嵩比容が500〜1,200ml/100gであることが好ましい。
【0010】
本発明の製造方法において、導電性酸化亜鉛及び導電性可塑剤が上記範囲未満である場合、十分な導電性及び柔軟性が得られず、上記範囲を越えて添加する場合、発泡成形を阻害し、満足な発泡体が得られない。
【0011】
また、導電性酸化亜鉛の体積抵抗値が1×10〜1×10Ω・cmの範囲を外れる場合は、表面抵抗値が大きく、導電性発泡体が得られない。比表面積が30〜50m/g、嵩比容が700〜1,000ml/100gの範囲を外れる場合は、発泡成形を阻害し、満足な発泡体が得られない。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、十分な導電性を有し、且つ、黒色以外の色を有し、柔軟性に富む導電性発泡体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明においてポリオレフィンとは、例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、エチレン共重合体を挙げることができる。
【0014】
本発明でいう導電性酸化亜鉛とは、体積抵抗値が1×10〜1×10Ω・cm、比表面積が30〜50m/g、嵩比容が700〜1,000ml/100gの酸化亜鉛である。
【0015】
本発明でいう導電性可塑剤とは、脂肪族二塩基酸エステルを主成分とする導電性の可塑剤である。
【0016】
本発明でいう架橋剤とは、ポリエチレン系樹脂中において少なくともポリエチレン樹脂の流動開始温度以上の分解温度を有するものであって、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してその分子間もしくは分子内に架橋結合を生じせしめるラジカル発生剤であるところの有機過酸化物、例えばジクミルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキサイド、1,1−ジターシャリーブチルパーオキシー3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン、α、α―ジターシャリーブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、ターシャリーブチルパーオキシケトン、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエートなどがあるが、その時に使用される樹脂によって最適な有機過酸化物を選択しなければならない。
【0017】
本発明でいう発泡剤とは、ポリエチレン系樹脂の溶融温度以上の分解温度を有する化学発泡剤であり、例えばアゾ系化合物のアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等;ニトロソ系化合物のジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリニトロトリメチルトリアミン等;ヒドラジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等;スルホニルセミカルバジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、トルエンスルホニルセミカルバジッド等がある。
【0018】
本発明において、発泡助剤を発泡剤の種類に応じて添加することができる。発泡助剤としては尿素を主成分とした化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物、即ち高級脂肪酸あるいは高級脂肪酸の金属化合物などがある。
【0019】
本発明においては、使用する組成物の物性の改良或いは価格の低下を目的として、架橋結合に著しい悪影響を与えない配合剤(充填剤)、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、あるいはパルプ等の繊維物質、又は各種染料、顔料並びに蛍光物質、その他常用のゴム配合剤等を必要に応じて添加することができる。
【0020】
次に、本発明の導電性架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法について説明する。
【0021】
前記したポリオレフィン系樹脂100重量部と、導電性酸化亜鉛50〜200重量部、導電性可塑剤10〜50重量部からなる混合物に、周知の発泡剤、発泡助剤及び架橋剤を添加し、これを加熱したミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機等によって練和する。得られた発泡性組成物をプレス中の金型に仕込み、加圧下に加熱した後、除圧し、発泡体を生成させることを特徴とする導電性架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法である。
【0022】
本発明の製造方法によって得られる導電性架橋ポリオレフィン系発泡体は、十分な導電性を有し、且つ、黒色以外の色を有有し、柔軟性に富む発泡体であり、電気、電子機器の帯電防止材や緩衝材等に適用できる。
【実施例1】
【0023】
直鎖状低密度ポリエチレン(商品名:アフィニティーEG8200、密度0.920g/cm、メルトフローレート5.0g/10分、ダウ・ケミカル日本製)50重量部、オレフィン系エラストマー(商品名:L−601、密度0.99
g/cm、メルトフローレート2.6g/10min、旭化成株式会社製)50重量部、導電性酸化亜鉛(商品名:パゼットCK、体積抵抗値1×10〜1×10Ω・cm、比表面積30〜50m/g、嵩比容700〜1,000ml/100g、ハクスイテック株式会社製)110重量部、導電性可塑剤(商品名:US−600、主成分脂肪族二塩基酸エステル、田岡化学工業株式会社製)30重量部、アゾジカルボンアミド3重量部、ジクミルパーオキサイド1.4重量部からなる組成物を100℃のニーダーにて混練し、155℃に加熱されたプレス内の金型(160×160×20)に練和物を充填し、100kg/cmの圧力で40分間加熱し、発泡剤及び架橋剤を分解後、除圧して発泡体を得た。
【0024】
得られた発泡体の見掛け密度は250kg/mであり、表面抵抗値を測定したところ8×10Ωであり、導電性を有していた。
【実施例2】
【0025】
導電性酸化亜鉛の添加量を70重量部、導電性可塑剤の添加量を20重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0026】
得られた発泡体の見掛け密度は230kg/mであり、表面抵抗値を測定したところ9×10Ωであり、導電性を有していた。
【0027】
導電性酸化亜鉛の添加量を180重量部、導電性可塑剤の添加量を40重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0028】
得られた発泡体の見掛け密度は280kg/mであり、表面抵抗値を測定したところ6×10Ωであり、導電性を有していた。
比較例1
【0029】
導電性酸化亜鉛の添加量を30重量部、導電性可塑剤の添加量を5重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させ、発泡体を得た。
【0030】
得られた発泡体の見掛け密度は210kg/mであり、表面抵抗値を測定したところ6×10Ωであり、導電性に劣っていた。
比較例2
【0031】
導電性酸化亜鉛の添加量を250重量部、導電性可塑剤の添加量を80重量部に変えた以外は実施例1と同じ配合及び条件で発泡させが、導電性酸化亜鉛及び導電性可塑剤の添加部数が多すぎて満足な気泡体を得ることが出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明の方法によれば、導電性、柔軟性に優れた導電性架橋ポリオレフィン系発泡体を製造できる。本発明の方法によって製造された導電性架橋ポリオレフィン系発泡体は、電気、電子機器の帯電防止材や緩衝材等に適用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂に導電性酸化亜鉛、導電性可塑剤、発泡剤及び架橋剤を添加混練して加熱、発泡させてなる導電性架橋ポリオレフィン系発泡体。
【請求項2】
導電性酸化亜鉛の体積抵抗値が1×10Ω・cm以下、比表面積が20〜70m/g、嵩比容が500〜1,200ml/100gである請求項1記載の導電性架橋ポリオレフィン系発泡体。
【請求項3】
ポリオレフィン系樹脂100重量部に導電性酸化亜鉛50〜200重量部、導電性可塑剤10〜50重量部、発泡剤及び架橋剤を添加混練し、得られた架橋性発泡性組成物を加圧下に加熱した後、除圧し、発泡体を生成させることを特徴とする導電性架橋ポリオレフィン系発泡体の製造方法。
【請求項4】
導電性酸化亜鉛の体積抵抗値が1×10Ω・cm以下、比表面積が20〜70m/g、嵩比容が500〜1,200ml/100gである請求項3記載の製造方法。


【公開番号】特開2006−63249(P2006−63249A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−249855(P2004−249855)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000177380)三和化工株式会社 (21)
【Fターム(参考)】