説明

導電性樹脂チューブの製造方法、導電性樹脂チューブの製造装置およびローラの製造方法

【課題】外周面へのプラズマ処理が低減された導電性樹脂チューブを製造することが可能な導電性樹脂チューブの製造方法、導電性樹脂チューブの製造装置、およびその導電性樹脂チューブを用いたローラの製造方法を提供する。
【解決手段】導電性樹脂チューブ前駆体を第1の電極とし、導電性樹脂チューブ前駆体の内側に配置された電極を第2の電極として、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加することによってガスのプラズマを発生させて、導電性樹脂チューブ前駆体の内周面をプラズマにより連続的に処理する導電性樹脂チューブの製造方法および導電性樹脂チューブの製造装置、ならびにそのようにして製造された導電性樹脂チューブを用いたローラの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂チューブの製造方法、導電性樹脂チューブの製造装置およびローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえば複写機、プリンタまたはファクシミリなどにおいて用紙にトナーを定着させるための定着ローラとしては、金属芯の外周面上にシリコーンゴムからなる弾性層および導電性樹脂チューブが順次被覆されたローラが用いられている。
【0003】
このような構成のローラは、たとえば、円筒状金型の内面に樹脂チューブを固定し、樹脂チューブの内周面で取り囲まれた内側の空間に金属芯を挿通した後に、導電性樹脂チューブと金属芯との間にシリコーンゴムを注入し、注入されたシリコーンゴムを加熱して硬化させることにより形成されている。
【0004】
ここで、導電性樹脂チューブとしては、導電性樹脂チューブとシリコーンゴムとの間の接着性を向上させることを目的として、その内周面がプラズマ処理されたものが用いられている。
【0005】
たとえば特許文献1(特開2002−337210号公報)および特許文献2(WO2007/055066号パンフレット)には、押出し成形装置から連続的に排出される樹脂チューブの内側にガスを導入し、樹脂チューブの内側に配置された内側固体電極と樹脂チューブの外側に配置された外側固体電極との間に高周波電圧を印加することによってプラズマを発生させ、樹脂チューブの内周面をプラズマ処理する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−337210号公報
【特許文献2】WO2007/055066号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法においては、樹脂チューブの外周面と樹脂チューブの外側に配置された外側固体電極の内周面との間に所定の距離を設けた状態で樹脂チューブのプラズマ処理が行なわれるため、樹脂チューブの内周面だけでなく、樹脂チューブの外周面もプラズマ処理されることになる。
【0008】
また、特許文献2に記載の方法においては、樹脂チューブの外周面と外側固体電極の内周面とを接触させた状態で樹脂チューブのプラズマ処理を行なっているが、樹脂チューブの移動時に樹脂チューブの外周面と外側固体電極の内周面との間にわずかな隙間が形成される。そのため、特許文献2に記載の方法においても、樹脂チューブの外周面がプラズマ処理されることになる。
【0009】
このように外周面がプラズマ処理された樹脂チューブを用いてトナー定着用の定着ローラを作製した場合には、定着ローラの外周面を構成する樹脂チューブの外周面が親水性を有することになる。そのため、定着ローラによる用紙へのトナーの定着時に定着ローラの外周面からトナーが剥離せず、印刷不良が生じることがあった。
【0010】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、外周面へのプラズマ処理が低減された導電性樹脂チューブを製造することが可能な導電性樹脂チューブの製造方法、導電性樹脂チューブの製造装置、およびその導電性樹脂チューブを用いたローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、導電性樹脂チューブ前駆体を成形して排出する工程と、排出された導電性樹脂チューブ前駆体の内側にガスを導入する工程と、導電性樹脂チューブ前駆体を第1の電極とし、導電性樹脂チューブ前駆体の内側に配置された電極を第2の電極として、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加することによってガスのプラズマを発生させて、排出されてくる導電性樹脂チューブ前駆体の内周面をプラズマにより連続的に処理する工程と、を含む導電性樹脂チューブの製造方法である。
【0012】
ここで、本発明の導電性樹脂チューブの製造方法においては、第1の電極はアース電極であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の導電性樹脂チューブの製造方法においては、導電性樹脂チューブ前駆体の内側の圧力を調整しながら導電性樹脂チューブ前駆体の内周面を処理することが好ましい。
【0014】
また、本発明の導電性樹脂チューブの製造方法においては、導電性樹脂チューブ前駆体がPFAを含むことが好ましい。
【0015】
また、本発明は、導電性樹脂チューブ前駆体を成形して排出するための成形排出装置と、成形排出装置から排出された導電性樹脂チューブ前駆体の内側に配置されるように設けられた電極と、成形排出装置から排出された導電性樹脂チューブ前駆体の内側にガスを導入するためのガス導入路と、導電性樹脂チューブ前駆体の内側のガスを排出するためのガス排出路と、成形排出装置から排出される導電性樹脂チューブ前駆体に電気的に接続するように設けられたアース電極と、を備えた、導電性樹脂チューブの製造装置である。
【0016】
また、本発明の導電性樹脂チューブの製造装置においては、ガス導入路は電極の内部に設けられ、ガス排出路は電極の外周面の少なくとも一部を覆う絶縁性被覆部材の内部に設けられており、アース電極は絶縁性被覆部材の外周面の少なくとも一部を覆うようにして設けられていることが好ましい。
【0017】
また、本発明の導電性樹脂チューブの製造装置は、成形排出装置から排出された導電性樹脂チューブ前駆体の内側の圧力を調整するための調圧装置をさらに備えていることが好ましい。
【0018】
また、本発明の導電性樹脂チューブの製造装置は、第2の電極を冷却するための流路をさらに備えていることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明は、導電性樹脂チューブ前駆体を成形して排出する工程と、排出された導電性樹脂チューブ前駆体の内側にガスを導入する工程と、導電性樹脂チューブ前駆体を第1の電極とし、導電性樹脂チューブ前駆体の内側に配置された電極を第2の電極として、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加することによってガスのプラズマを発生させて、排出されてくる導電性樹脂チューブ前駆体の内周面をプラズマにより連続的に処理して導電性樹脂チューブを形成する工程と、導電性樹脂チューブの内周面で取り囲まれた空間の内部に中芯を設置する工程と、導電性樹脂チューブの内周面と中芯の外周面との間に弾性層を設置する工程と、を含む、ローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外周面へのプラズマ処理が低減された導電性樹脂チューブを製造することが可能な導電性樹脂チューブの製造方法、導電性樹脂チューブの製造装置、およびその導電性樹脂チューブを用いたローラの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態1の導電性樹脂チューブの製造装置の模式的な断面図である。
【図2】実施の形態1の導電性樹脂チューブの製造装置を用いて作製された導電性樹脂チューブの一例の模式的な斜視図である。
【図3】図2に示す導電性樹脂チューブを用いて作製されたローラがトナー定着用の定着ローラとして用いられる場合の一例を図解する模式的な断面図である。
【図4】実施の形態2の導電性樹脂チューブの製造装置の模式的な断面図である。
【図5】実施の形態3の導電性樹脂チューブの製造装置の模式的な断面図である。
【図6】実施の形態4の導電性樹脂チューブの製造装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0023】
<実施の形態1>
図1に、本発明の導電性樹脂チューブの製造装置の一例である実施の形態1の導電性樹脂チューブの製造装置の模式的な断面図を示す。
【0024】
実施の形態1の導電性樹脂チューブの製造装置は、導電性樹脂チューブ前駆体1aを成形して外部に排出するための成形排出装置2と、成形排出装置2から排出された導電性樹脂チューブ前駆体1aの内側に配置されるように設けられた内側電極4と、内側電極4の外周面の一部を被覆するようにして設けられた絶縁性被覆部材9と、絶縁性被覆部材9の外周面の一部を被覆するようにして設けられたアース電極を兼ねるインサート3と、内側電極4の先端に取り付けられた絶縁材14に接するようにして設けられたガイド部材10とを備えている。
【0025】
ここで、成形排出装置2は、樹脂ペレットを供給するためのホッパ5を上部に備えた樹脂移送管6と、ホッパ5から樹脂移送管6に供給された樹脂ペレットを加熱して溶融させるためのヒータ(図示せず)と、樹脂移送管6の内部で樹脂ペレットが加熱されて溶融した溶融樹脂を樹脂移送管6の外部に送り出すためのスクリュー装置(図示せず)とを備えている。樹脂移送管6は水平方向に伸長するように構成されているが、水平方向の端部においては鉛直下方に屈曲しており、樹脂移送管6の鉛直下方の端部には導電性樹脂チューブ前駆体1aの形状をチューブ状に規定するためのリング状のダイス13が設けられている。そして、リング状のダイス13の内周面と所定の間隔をあけて円筒状のインサート3が設けられている。
【0026】
インサート3は、電気導電性の物質からなるものであれば特に限定されないが、たとえば、アルミニウムおよび鉄などの金属の少なくとも1種を用いることができるが、ステンレスなどの耐食性に優れた金属を用いることがより好ましい。
【0027】
絶縁性被覆部材9は、外径の小さい円筒状の小径部9aと、小径部9aよりも外径の大きい円筒状の大径部9bとを有しており、小径部9aの一端と大径部9bの一端とが接合して一体化することによって構成されている。そして、円筒状のインサート3の内部の中空部に絶縁性被覆部材9の小径部9aが差し込まれることによって、円筒状のインサート3の外径と絶縁性被覆部材9の外径とが一致するように円筒状のインサート3が絶縁性被覆部材9に取り付けられて1つの大きな円筒状の部材が構成されている。
【0028】
絶縁性被覆部材9は、電気絶縁性の物質からなるものであれば特に限定されないが、たとえば、電気絶縁性のゴムおよび樹脂などの少なくとも1種を用いることができるが、セラミックなどの耐熱性に優れた絶縁材を用いることがより望ましい。また、大径部9bには、摩擦抵抗の小さいフッ素系樹脂などを用いても良い。
【0029】
内側電極4も、外径の小さい円筒状の小径部4aと、小径部4aよりも外径の大きい円筒状の大径部4bとを有しており、小径部4aの一端と大径部4bの一端とが接合して一体化することによって構成されている。そして、円筒状のインサート3が絶縁性被覆部材9に取り付けられることによって構成された円筒状の部材の内部の中空部(絶縁性被覆部材9の内部の中空部)に内側電極4の小径部4aが差し込まれることによって、内側電極4が絶縁性被覆部材9に接するようにして取り付けられている。
【0030】
内側電極4は、電気導電性の物質からなる電極であれば特に限定されないが、たとえば、銅若しくはアルミニウムなどの金属単体からなる電極、ステンレス若しくは真鍮などの合金からなる電極、金属間化合物からなる電極または導電性のカーボンからなる電極などを用いることができる。
【0031】
内側電極4の大径部4bの外周面には絶縁材8が被覆されており、内側電極4の先端となる内側電極4の大径部4bの一方の円形状の表面上には略円柱状の絶縁材14が取り付けられている。なお、内側電極4の大径部4bの外周面に被覆された絶縁材8の外周面と導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面との間にプラズマを発生させるための空間が設けられるように、内側電極4の大径部4bの外径は、インサート3および絶縁性被覆部材9のそれぞれの外径よりも小さくされている。
【0032】
絶縁材8および絶縁材14はそれぞれ、電気絶縁性の物質からなるものであれば特に限定されないが、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン若しくはポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック、ガラス、マイカ、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム若しくは二酸化チタンなどの金属酸化物またはチタン酸バリウムなどの複酸化物などを用いることができる。
【0033】
略円柱状の絶縁材14の一方の表面に接するように略円柱状のガイド部材10が設けられている。ここで、略円柱状のガイド部材10の外径は、円筒状のインサート3および円筒状の絶縁性被覆部材9の大径部4bのそれぞれの外径と同一とされる。そして、ガイド部材10は、導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面がプラズマ処理することによって形成される導電性樹脂チューブ1の形状の保持を補助する。
【0034】
ガイド部材10としては、たとえば、絶縁材8および絶縁材14の同様の材質ものを用いることができる。
【0035】
内側電極4の内部および絶縁材14の内部にはそれぞれ、絶縁材8の外周面と導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面との間の空間にプラズマを発生させるためのガス20を導入するためのガス導入路11が設けられている。ここで、ガス導入路11は、内側電極4の小径部4aおよび大径部4bの内部を鉛直方向に貫通するように伸長するとともに、絶縁材14の内部の一部を鉛直方向に貫通した後に絶縁材14の内部を水平方向に貫通するように設けられた中空部から構成されている。
【0036】
絶縁性被覆部材9の大径部9bの内部およびインサート3の内部にはそれぞれ、絶縁材8の外周面と導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面との間の空間に存在するガスを導電性樹脂チューブの製造装置の外部に排出するためのガス排出路12が設けられている。ここで、ガス排出路12は、絶縁性被覆部材9の大径部9bの内部を一部屈曲して鉛直方向に貫通するように伸長するとともに、インサート3の内部を鉛直方向に貫通するように設けられた中空部から構成されている。
【0037】
また、内側電極4の小径部4aには内側電極4に高周波電圧を印加するための高周波電源7が接続されており、インサート3はアースに接続されている。そのため、インサート3はアース電極を兼ねることになる。
【0038】
以下、図1に示す実施の形態1の導電性樹脂チューブの製造装置を用いて導電性樹脂チューブを製造する方法の一例について説明する。
【0039】
まず、成形排出装置2の上部に備え付けられたホッパ5から導電性樹脂チューブ前駆体1aの形成用の樹脂ペレットを樹脂移送管6の内部に投入し、樹脂移送管6に備えられているヒータ(図示せず)によって樹脂ペレットを溶融させて導電性の溶融樹脂を作製する。
【0040】
ここで、樹脂ペレットとしては、たとえば、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ECTFE(クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVF(ポリフッ化ビニル)およびテトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体からなる群から選択された樹脂成分の少なくとも1種を主成分として含むとともに、たとえばカーボンブラックおよび/またはアセチレンブラックなどの導電性物質などを添加剤として含む導電性樹脂組成物をペレット状に成形したものなどを用いることができる。
【0041】
なかでも、樹脂ペレットとしては、PFAを樹脂成分として含む導電性樹脂組成物をペレット状に成形したものを用いることが好ましい。PFAを樹脂成分として含む導電性樹脂組成物は撥水性が高く、たとえば親水性のトナーを定着させるための定着ローラの外周面を構成する材料として好適であるためである。
【0042】
なお、本発明は、上記に列挙されたフッ素系樹脂以外の樹脂成分を用いた導電性樹脂チューブの製造にも適用可能であることは言うまでもない。
【0043】
次に、上記のようにして作製された導電性の溶融樹脂を成形排出装置2のスクリュー装置によってダイス13からチューブ状に成形された状態で押出し、その後、インサート3との接触により冷却することによって、導電性樹脂チューブ前駆体1aを作製する。
【0044】
ここで、導電性樹脂チューブ前駆体1aの導電率は、後述するプラズマを発生させる観点からは、0.1μS/m以上であることが好ましく、1μS/m以上であることがより好ましい。
【0045】
上記の樹脂ペレットの溶融工程および押出し成形工程がそれぞれ連続して行なわれることによって、成形排出装置2から導電性樹脂チューブ前駆体1aが連続的に排出されることになる。
【0046】
成形排出装置2から連続的に排出された導電性樹脂チューブ前駆体1aは、インサート3の外周面および絶縁性被覆部材9の大径部9bの外周面に接しながら、矢印21で表わされる鉛直下方に向けて進行する。
【0047】
上記のようにして成形排出装置2から導電性樹脂チューブ前駆体1aを排出する一方で、内側電極4の小径部4aの先端の開口部からプラズマ生成用のガス20を導入する。
【0048】
ここで、プラズマ生成用のガス20としては、アルゴンとヘリウムと二酸化炭素とメタンとからなる混合ガス、アルゴンとアンモニアとからなる混合ガス、ヘリウムとアンモニアとからなる混合ガス、アルゴンとヘリウムとアンモニアとからなる混合ガス、アルゴンと窒素と水素とからなる混合ガス、アルゴンと二酸化炭素とメタンとからなる混合ガス、ヘリウムと二酸化炭素とメタンとからなる混合ガス、ヘリウムと窒素と水素とからなる混合ガス、またはアルゴンとヘリウムと窒素と水素とからなる混合ガスのうちいずれか1種の混合ガスを用いることが好ましい。プラズマ生成用のガス20としてこれらの混合ガスを用いた場合には、たとえば中芯と導電性PFA製チューブとをシリコーンゴムによって接着して作製されるローラの作製時において、導電性PFA製チューブの内周面とシリコーンゴムとの接着性を向上させることができる傾向にある。また、上記混合ガス中のアルゴンとヘリウム以外のガスは、PFAを樹脂成分として含む導電性樹脂組成物から形成された導電性PFA製チューブの内周面の平坦性を向上させる観点から、混合ガス全体の2体積%以下であることがより好ましい。
【0049】
内側電極4の小径部4aの先端の開口部から導入されたガス20は、内側電極4の小径部4aの内部のガス導入路11、内側電極4の大径部4bの内部のガス導入路11および絶縁材14の内部のガス導入路11をこの順に通って、内側電極4の大径部4bの外周面に設けられた絶縁材8の外周面と導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面との間の空間に導入される。
【0050】
そして、成形排出装置2から連続的に排出されてインサート3の外周面および絶縁性被覆部材9の大径部9bの外周面にそれぞれ接しながら鉛直下方に進行する導電性樹脂チューブ前駆体1aを第1の電極とし、内側電極4を第2の電極として、高周波電源7を用いて内側電極4の大径部4bと導電性樹脂チューブ前駆体1aとの間に高周波電圧を印加することによって、内側電極4の大径部4bに設けられた絶縁材8の外周面と導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面との間の空間にガス20のプラズマを発生させる。このように発生させたガス20のプラズマに導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面を曝すことによって導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面が処理されて導電性樹脂チューブ1が作製される。
【0051】
ここで、導電性樹脂チューブ前駆体1aは、アース電極を兼ねているインサート3に接することによってインサート3に電気的に接続されているため、第1の電極として機能させることができる。
【0052】
そして、上記のようにして作製された導電性樹脂チューブ1は、ガイド部材10の外周面に接するようにして鉛直下方に引き出され、その後、所定の長さに切り取られ、または切り取られることなく巻き取り装置などに巻き取られて回収される。
【0053】
なお、上記のようにして作製された導電性樹脂チューブ1が巻き取られることなく切り取って回収される場合には、導電性樹脂チューブ1に折り目が形成されることなく導電性樹脂チューブ1を回収することができるため、たとえば導電性樹脂チューブ1をトナーの定着用の定着ローラの外周面に用いたときに折り目付近の凹凸の存在によるトナーの定着不良が発生するのを抑えることができる。
【0054】
また、内側電極4の大径部4bの外周面に設けられた絶縁材8の外周面と導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面との間の空間に存在するガス20および/またはガス20のプラズマは新たなガス20の導入によりガス排出路12に押し出され、ガス排出路12を通って実施の形態1の導電性樹脂チューブの製造装置の外部に排出されることになる。
【0055】
実施の形態1の導電性樹脂チューブの製造装置を用いた導電性樹脂チューブ1の製造においては、導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面と、内側電極4の大径部4bの外周面に設けられた絶縁材8の外周面との間の空間にのみガス20のプラズマが発生し、導電性樹脂チューブ前駆体1aの外周面はガス20のプラズマに接触しないことから、導電性樹脂チューブ前駆体1aの外周面はガス20のプラズマによって処理されない。
【0056】
したがって、実施の形態1の導電性樹脂チューブの製造装置を用いた場合には、外周面へのプラズマ処理が低減された導電性樹脂チューブ1を製造することが可能となる。
【0057】
図2に、実施の形態1の導電性樹脂チューブの製造装置を用いて作製された導電性樹脂チューブ1の一例の模式的な斜視図を示す。上述のように、導電性樹脂チューブ1の内周面はガス20のプラズマによって処理されていることから、導電性樹脂チューブ1の外周面とは異なる特性(たとえば親水性等)を有している。
【0058】
以下、図2に示す導電性樹脂チューブ1を用いてローラを製造する方法の一例について説明する。
【0059】
まず、図2に示す導電性樹脂チューブ1は円筒状金型の内周面に固定され、導電性樹脂チューブ1の内周面にたとえば従来から公知のシリコーン系プライマーなどのプライマーが塗布された後に、導電性樹脂チューブ1の内周面で取り囲まれた空間にアルミニウムなどの金属芯からなる中芯が挿通される。
【0060】
次に、導電性樹脂チューブ1の内周面と中芯の外周面との間にたとえば液状のシリコーンゴムなどの弾性層前駆体を注入し、この弾性層前駆体を加熱等によって硬化させることによって、中芯の外周面上に弾性層および導電性樹脂チューブ1がこの順序で設けられたローラが作製される。
【0061】
なお、導電性樹脂チューブ1がPFAを樹脂成分として含む導電性樹脂組成物から形成された導電性PFA樹脂チューブからなり、弾性層がシリコーンゴムからなる場合には、上記のガス20のプラズマ処理によって導電性PFA樹脂チューブの内周面は親水性を有することになる。そのため、この場合には、導電性PFA樹脂チューブとシリコーンゴムからなる弾性層との接着性に優れたローラを作製することができる。なお、シリコーンゴムからなる弾性層は、シリコーンゴムを主成分とするものであれば、充填剤などの添加剤が含まれていてもよいことは言うまでもない。
【0062】
図3に、図2に示す導電性樹脂チューブ1を用いて作製されたローラがトナー定着用の定着ローラとして用いられる場合の一例を図解した模式的な断面図を示す。
【0063】
ここで、定着ローラ33は、中芯34と、中芯34の外周面上に設置された弾性層35と、弾性層35の外周面上に被覆された導電性樹脂チューブ1とを含んでいる。そして、定着ローラ33と向かい合うようにして加圧ローラ38が設置されており、定着ローラ33と加圧ローラ38との間にトナー36が塗布された用紙37が搬送される。
【0064】
そして、定着ローラ33と加圧ローラ38との間の線圧によってトナー36が用紙37に定着され、その後、定着ローラ33と加圧ローラ38との間から排出される。
【0065】
<実施の形態2>
図4に、本発明の導電性樹脂チューブの製造装置の他の一例である実施の形態2の導電性樹脂チューブの製造装置の模式的な断面図を示す。
【0066】
実施の形態2の導電性樹脂チューブの製造装置は、導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面と、内側電極4の大径部4bの外周面に設けられた絶縁材8の外周面との間の空間の圧力を調節することが可能な調圧装置16を備えているとともに、プラズマ処理後の導電性樹脂チューブ1を絞って回収するための挟持ローラ15を備えている点に特徴がある。
【0067】
ここで、調圧装置16は、ガス排出路12に接続されており、ガス排出路12から実施の形態2の導電性樹脂チューブの製造装置の外部に排出されてくるガスの量に基づいて、導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面と内側電極4の大径部4bの外周面に設けられた絶縁材8の外周面との間の空間の圧力を推定することができる。
【0068】
そして、調圧装置16は、当該空間の圧力が所定の基準の圧力以上であると判断した場合には、ガス導入路11に導入されるガス20の量を低減し、当該空間の圧力が所定の基準の圧力未満であると判断した場合には、ガス導入路11に導入されるガス20の量を増大させる。
【0069】
これにより、調圧装置16は、導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面と内側電極4の大径部4bの外周面に設けられた絶縁材8の外周面との間の空間の圧力を調節することが可能となる。
【0070】
このように、調圧装置16によって、導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面と内側電極4の大径部4bの外周面に設けられた絶縁材8の外周面との間の空間の圧力を調節しながらガス20のプラズマ処理を行なった場合には、導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面の処理のばらつきを低減することができるため、導電性樹脂チューブ1の内周面の特性の均一性を向上させることができる。
【0071】
調圧装置16による導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面と内側電極4の大径部4bの外周面に設けられた絶縁材8の外周面との間の空間の圧力の調節は、導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面を連続的にプラズマ処理する場合に特に有効である。
【0072】
なお、調圧装置16としては、たとえば、従来から公知の一般的な圧力調整器または水圧で圧力を調整する内圧調整タンクなどを用いることができる。
【0073】
また、挟持ローラ15は、ガイド部材10の鉛直下方に設けられており、ガイド部材10から導電性樹脂チューブ1を挟み込みながら連続的に引き出すことができる。そして、挟持ローラ15によって連続的に引き出された導電性樹脂チューブ1は、その後、巻き取り装置などに巻き取られて回収されることになる。
【0074】
実施の形態2における上記以外の説明は、実施の形態1と同様であるため、その説明については省略する。
【0075】
<実施の形態3>
図5に、本発明の導電性樹脂チューブの製造装置の他の一例である実施の形態3の導電性樹脂チューブの製造装置の模式的な断面図を示す。
【0076】
実施の形態3の導電性樹脂チューブの製造装置は、実施の形態1および実施の形態2の導電性樹脂チューブの製造装置と比べて絶縁性被覆部材9の小径部9aの径が大きく形成されており、絶縁性被覆部材9の内部にガス排出路12がすべて組み込まれている点に特徴がある。
【0077】
実施の形態3の導電性樹脂チューブの製造装置においては、実施の形態1および実施の形態2の導電性樹脂チューブの製造装置と異なり、ガス排出路12が小径部9aと大径部9bとが接合して一体化された絶縁性被覆部材9の内部にすべて組み込まれているため、ガス排出路12の形成のためにインサート3と絶縁性被覆部材9との位置合わせを行なう必要がない。
【0078】
そのため、実施の形態3の導電性樹脂チューブの製造装置は、実施の形態1および実施の形態2の導電性樹脂チューブの製造装置と比べて組み立てが容易となる。
【0079】
実施の形態3における上記以外の説明は、実施の形態1および実施の形態2と同様であるため、その説明については省略する。
【0080】
<実施の形態4>
図6に、本発明の導電性樹脂チューブの製造装置の他の一例である実施の形態4の導電性樹脂チューブの製造装置の模式的な断面図を示す。
【0081】
実施の形態4の導電性樹脂チューブの製造装置は、冷却水40aを流すための流路41が内側電極4に形成されているとともに、冷却水40bを流すための流路42がインサート3、内側電極4の小径部4aおよび絶縁性被覆部材9の小径部9aの各々に形成されている点に特徴がある。
【0082】
実施の形態4の導電性樹脂チューブの製造装置においては、流路41に冷却水40aを流すことによって内側電極4全体を冷却することができるとともに、流路42に冷却水40bを流すことによって内側電極4の小径部4aを冷却することができるため、導電性樹脂チューブ1を長時間製造する場合における内側電極4の過熱を有効に防止することができ、導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面の表面処理を効率的に行なうことができる。
【0083】
実施の形態4における上記以外の説明は、実施の形態1〜3と同様であるため、その説明については省略する。
【実施例】
【0084】
<実施例1>
図1に示す導電性樹脂チューブの製造装置を用いて、以下のようにして導電性樹脂チューブを製造した。
【0085】
まず、PFAとカーボンブラックとを含む導電性樹脂組成物からなる樹脂ペレットを成形排出装置2のホッパ5から樹脂移送管6の内部に投入し、ヒータによって樹脂ペレットを溶融させて導電性の溶融樹脂を形成した。
【0086】
次に、上記のようにして形成した導電性の溶融樹脂をスクリュー装置によって押出速度2m/分でダイス13からチューブ状に成形された状態で押出し、その後、インサート3との接触により冷却することによって内径28.8mmであって、厚みが50μmの導電性樹脂チューブ前駆体1aを形成して、成形排出装置2から連続的に鉛直下方に向けて排出した。
【0087】
そして、内側電極4の小径部4aの先端の開口部からアルゴンとヘリウムと二酸化炭素とメタンとからなる混合ガスからなるプラズマ生成用のガス20をガス導入路11に導入することによって、ガス導入路11から導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面と内側電極4の大径部4bの外周面との間の空間に上記のガス20を導入した。
【0088】
続いて、導電性樹脂チューブ前駆体1aを鉛直下方に連続的に移動させながら、高周波電源7を用いて、内側電極4の大径部4bと導電性樹脂チューブ前駆体1aとの間に、周波数が5kHzで、電圧が13kVである高周波電圧を印加した。
【0089】
これにより、導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面と、内側電極4の大径部4bの外周面に設けられた絶縁材8の外周面との間に上記のガス20のプラズマを発生させ、導電性樹脂チューブ前駆体1aを連続的に鉛直下方に移動させながら導電性樹脂チューブ前駆体1aの内周面のプラズマ処理を連続的に行なった後に所定の長さに切り取って、実施例1の導電性PFA樹脂チューブを作製した。
【0090】
そして、上記のようにして作製した実施例1の導電性PFA樹脂チューブについて、内周面の濡れ性、外周面の濡れ性、およびシリコーンゴムとの接着性についてそれぞれ以下のようにして評価した。その結果を表1に示す。
【0091】
(1)内周面の濡れ性
実施例1の導電性PFA樹脂チューブの内周面に、JIS K 6768に規定されるぬれ張力30.0mN/mの試験用液を滴下し、試験用液が滴下された時点から2秒後に濡れが発生している場合にはA評価とし、濡れが発生していない場合にはB評価とした。
【0092】
なお、実施例1の導電性PFA樹脂チューブの内周面は上記のプラズマ処理により親水性とされていることが上記のプラズマ処理が適正に行なわれていることの証明となるため、内周面の濡れ性の評価については、A評価の方がB評価よりも優れた評価となる。
【0093】
(2)外周面の濡れ性
実施例1の導電性PFA樹脂チューブの外周面に、JIS K 6768に規定されるぬれ張力22.6mN/mの試験用液を滴下し、試験用液が滴下された時点から2秒後に濡れが発生している場合にはB評価とし、濡れが発生していない場合にはA評価とした。
【0094】
なお、実施例1の導電性PFA樹脂チューブの外周面は上記のプラズマ処理後においても疎水性が維持されていることが上記のプラズマ処理が行なわれていないことの証明となるため、外周面の濡れ性の評価についても、A評価の方がB評価よりも優れた評価となる。
【0095】
(3)シリコーンゴムとの接着性
まず、実施例1の導電性PFA樹脂チューブを490mmの長さに切り取り、切り取られた実施例1の導電性PFA樹脂チューブの内周面にシリコーン系プライマーを塗布した。
【0096】
次に、アルミニウム製の金属芯と、長さが450mmで内径が29mmの円筒状ステンレス金型とを準備した。
【0097】
次に、この円筒状ステンレス金型の内周面に490mmの長さに切り取られた実施例1の導電性PFA樹脂チューブを真空吸引によって固定し、円筒状ステンレス金型の内周面に固定された実施例1の導電性PFA樹脂チューブの内周面で取り囲まれた空間にアルミニウム製の金属芯を挿通させた。
【0098】
次に、アルミニウム製の金属芯の外周面と、実施例1の導電性PFA樹脂チューブの内周面との間の空間に液状のシリコーンゴムを注入し、150℃で30分間熱風により加熱加硫してシリコーンゴムからなる弾性層を形成した。その後、上記のステンレス金型を脱離してローラを作製した。
【0099】
そして、上記のようにして作製したローラの外周面を構成する実施例1の導電性PFA樹脂チューブの一部に切れ込みを入れ、その切れ込みから実施例1の導電性PFA樹脂チューブを引っ張って、実施例1の導電性PFA樹脂チューブを引き剥がし、実施例1の導電性PFA樹脂チューブの剥離状態を目視により観察して以下の基準によりシリコーンゴムとの接着性を評価した。なお、シリコーンゴムとの接着性の評価についてもA評価の方がB評価よりも優れた評価となる。
A評価:シリコーンゴムが破壊して、実施例1の導電性PFA樹脂チューブが剥離した。
B評価:シリコーンゴムが破壊することなく、実施例1の導電性PFA樹脂チューブが剥離した。
【0100】
表1に示すように、実施例1の導電性PFA樹脂チューブの内周面の濡れ性、外周面の濡れ性、およびシリコーンゴムとの接着性の評価はそれぞれA評価であった。
【0101】
これにより、実施例1の導電性PFA樹脂チューブは、外周面が疎水性を有し、内周面が親水性を有してシリコーンゴムと強固に接着可能であるため、特に定着ローラの形成に好適な材料であることが確認された。
【0102】
<実施例2>
内径を34mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の導電性PFA樹脂チューブを作製した。
【0103】
そして、上記のようにして作製した実施例2の導電性PFA樹脂チューブについて、内周面の濡れ性および外周面の濡れ性の評価については実施例1と同様にして評価するとともに、シリコーンゴムとの接着性については以下の(3’)シリコーンゴムとの接着性のようにして評価した。その結果を表1に示す。
【0104】
(3’)シリコーンゴムとの接着性
まず、シリコーンゴムシートにシリコーン用接着剤(信越化学工業(株)製の「信越シリコーンKE45脱オキシム型RTVゴム」)を塗布し、その後、実施例2の導電性PFA樹脂チューブの内周面が上記の接着剤に接するように実施例2の導電性PFA樹脂チューブをシリコーンゴムシートに貼り付けた。
【0105】
次に、上記のようにして、実施例2の導電性PFA樹脂チューブをシリコーンゴムシートに貼り付けた状態で、50℃の温度雰囲気下に24時間放置して、上記の接着剤を乾燥させた。
【0106】
その後、実施例2の導電性PFA樹脂チューブを引っ張って、実施例2の導電性PFA樹脂チューブをシリコーンゴムシートから引き剥がし、実施例2の導電性PFA樹脂チューブの剥離状態を目視により観察して以下の基準によりシリコーンゴムとの接着性を評価した。なお、このシリコーンゴムとの接着性の評価についてもA評価の方がB評価よりも優れた評価となる。
A評価:シリコーンゴムが破壊して、実施例2の導電性PFA樹脂チューブが剥離した。
B評価:シリコーンゴムが破壊することなく、実施例2の導電性PFA樹脂チューブが剥離した。
【0107】
表1に示すように、実施例2の導電性PFA樹脂チューブの内周面の濡れ性、外周面の濡れ性、およびシリコーンゴムとの接着性の評価もそれぞれA評価であった。
【0108】
これにより、実施例2の導電性PFA樹脂チューブについても、外周面が疎水性を有し、内周面が親水性を有してシリコーンゴムと強固に接着可能であるため、特に定着ローラの形成に好適な材料であることが確認された。
【0109】
<実施例3>
アルゴンとヘリウムと窒素と水素とからなる混合ガスからなるプラズマ生成用のガス20を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の導電性PFA樹脂チューブを作製した。
【0110】
そして、上記のようにして作製した実施例3の導電性PFA樹脂チューブについて、実施例2の導電性PFA樹脂チューブと同様の方法で、内周面の濡れ性、外周面の濡れ性およびシリコーンゴムとの接着性についてそれぞれ評価した。その結果を表1に示す。
【0111】
表1に示すように、実施例3の導電性PFA樹脂チューブの内周面の濡れ性、外周面の濡れ性、およびシリコーンゴムとの接着性の評価もそれぞれA評価であった。
【0112】
これにより、実施例3の導電性PFA樹脂チューブについても、外周面が疎水性を有し、内周面が親水性を有してシリコーンゴムと強固に接着可能であるため、特に定着ローラの形成に好適な材料であることが確認された。
【0113】
<実施例4>
導電性樹脂チューブの樹脂成分をPFAからPTFEに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の導電性PTFE樹脂チューブを作製した。
【0114】
そして、上記のようにして作製した実施例4の導電性PTFE樹脂チューブについて、実施例1の導電性PFA樹脂チューブと同様にして、内周面の濡れ性、外周面の濡れ性、およびシリコーンゴムとの接着性についてそれぞれ評価した。その結果を表1に示す。
【0115】
表1に示すように、実施例4の導電性PTFE樹脂チューブの内周面の濡れ性、外周面の濡れ性、およびシリコーンゴムとの接着性の評価もそれぞれA評価であった。
【0116】
これにより、実施例4の導電性PTFE樹脂チューブについても、外周面が疎水性を有し、内周面が親水性を有してシリコーンゴムと強固に接着可能であるため、特に定着ローラの形成に好適な材料であることが確認された。
【0117】
<比較例1>
図1に示す導電性樹脂チューブの製造装置のインサート3とアースとの接続を解除するとともに、導電性樹脂チューブ前駆体1aの外周面に接する外側電極を設けて、この外側電極をアースと接続してアース電極としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の導電性PFA樹脂チューブを作製した。
【0118】
そして、上記のようにして作製した比較例1の導電性PFA樹脂チューブについて、実施例1の導電性PFA樹脂チューブと同様にして、内周面の濡れ性、外周面の濡れ性、およびシリコーンゴムとの接着性についてそれぞれ評価した。その結果を表1に示す。
【0119】
表1に示すように、比較例1の導電性PFA樹脂チューブについては、外周面の濡れ性の評価がB評価であるため、外周面の疎水性が維持できないことが確認された。
【0120】
これにより、比較例1の導電性PFA樹脂チューブについて外周面が疎水性を有しないことから、定着ローラの形成には好適な材料ではないことが確認された。
【0121】
【表1】

【0122】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、導電性樹脂チューブの製造方法、導電性樹脂チューブの製造装置およびローラの製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 導電性樹脂チューブ、1a 導電性樹脂チューブ前駆体、2 成形排出装置、3 インサート、4 内側電極、4a 小径部、4b 大径部、5 ホッパ、6 樹脂移送管、7 高周波電源、8 絶縁材、9 絶縁性被覆部材、9a 小径部、9b 大径部、10 ガイド部材、11 ガス導入路、12 ガス排出路、13 ダイス、14 絶縁材、15 挟持ローラ、16 調圧装置、20 ガス、21 矢印、33 定着ローラ、34 中芯、35 弾性層、36 トナー、37 用紙、38 加圧ローラ、40a,40b 冷却水、41,42 流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性樹脂チューブ前駆体を成形して排出する工程と、
前記排出された導電性樹脂チューブ前駆体の内側にガスを導入する工程と、
前記導電性樹脂チューブ前駆体を第1の電極とし、前記導電性樹脂チューブ前駆体の内側に配置された電極を第2の電極として、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加することによって前記ガスのプラズマを発生させて、排出されてくる前記導電性樹脂チューブ前駆体の内周面を前記プラズマにより連続的に処理する工程と、
を含む、導電性樹脂チューブの製造方法。
【請求項2】
前記第1の電極はアース電極であることを特徴とする、請求項1に記載の導電性樹脂チューブの製造方法。
【請求項3】
前記導電性樹脂チューブ前駆体の内側の圧力を調整しながら前記導電性樹脂チューブ前駆体の内周面を処理することを特徴とする、請求項1または2に記載の導電性樹脂チューブの製造方法。
【請求項4】
前記導電性樹脂チューブ前駆体がPFAを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の導電性樹脂チューブの製造方法。
【請求項5】
導電性樹脂チューブ前駆体を成形して排出するための成形排出装置と、
前記成形排出装置から排出された導電性樹脂チューブ前駆体の内側に配置されるように設けられた電極と、
前記成形排出装置から排出された導電性樹脂チューブ前駆体の内側にガスを導入するためのガス導入路と、
前記導電性樹脂チューブ前駆体の内側のガスを排出するためのガス排出路と、
前記成形排出装置から排出される導電性樹脂チューブ前駆体に電気的に接続するように設けられたアース電極と、を備えた、導電性樹脂チューブの製造装置。
【請求項6】
前記ガス導入路は前記電極の内部に設けられ、
前記ガス排出路は前記電極の外周面の少なくとも一部を覆う絶縁性被覆部材の内部に設けられており、
前記アース電極は前記絶縁性被覆部材の外周面の少なくとも一部を覆うようにして設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の導電性樹脂チューブの製造装置。
【請求項7】
前記成形排出装置から排出された導電性樹脂チューブ前駆体の内側の圧力を調整するための調圧装置をさらに備えたことを特徴とする、請求項5または6に記載の導電性樹脂チューブの製造装置。
【請求項8】
前記第2の電極を冷却するための流路をさらに備えたことを特徴とする、請求項5から7のいずれかに記載の導電性樹脂チューブの製造装置。
【請求項9】
導電性樹脂チューブ前駆体を成形して排出する工程と、
前記排出された導電性樹脂チューブ前駆体の内側にガスを導入する工程と、
前記導電性樹脂チューブ前駆体を第1の電極とし、前記導電性樹脂チューブ前駆体の内側に配置された電極を第2の電極として、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加することによって前記ガスのプラズマを発生させて、排出されてくる前記導電性樹脂チューブ前駆体の内周面を前記プラズマにより連続的に処理して導電性樹脂チューブを形成する工程と、
前記導電性樹脂チューブの内周面で取り囲まれた空間の内部に中芯を設置する工程と、
前記導電性樹脂チューブの内周面と前記中芯の外周面との間に弾性層を設置する工程と、を含む、ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−104945(P2011−104945A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265057(P2009−265057)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】