説明

導電性樹脂パターンを有する積層体の製造方法、および、積層体

【課題】エッチング後の導電性能、および、信頼性に優れた、導電性樹脂パターンを有する積層体の製造方法を提供すること。
【解決手段】(a)透明基体、および、該透明基体に設けられた導電性樹脂組成物層を有する導電性積層体を準備する工程、(b)前記導電性樹脂組成物層上にレジストパターンを形成する工程、(c)硝酸セリウムアンモニウム、硫酸セリウムアンモニウム、および、次亜塩素酸塩よりなる群から選択された少なくとも1種類を含有するエッチング剤を用いてレジストパターン非形成部の導電性樹脂組成物層を除去する工程、並びに、(d)レジストパターンを、窒素原子を含有しない非プロトン性有機溶剤、および/または、化学構造中に窒素原子を有し、かつ、第一級、第二級アミン化合物および第四アンモニウム塩以外の有機溶剤を含有する剥離剤により除去する工程、をこの順で含むことを特徴とする導電性樹脂パターンを有する積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂パターンを有する積層体の製造方法、および、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、透明導電膜としては、インジウム(In)を含むITO(酸化インジウムスズ)が主に使われているが、Inは可採埋蔵量が3千トンという希少元素で、早ければ2011年〜2013年頃には可採埋蔵量を使い切ってしまう、といった予測もあり、Inを使わないITOの代替材料の開発が急務である。導電性高分子の導電率は目覚しく向上しており、ITOの代替材料として導電性高分子は有望である。
この導電性高分子は、導電性、光の透過性、発光性、製膜後もフレキシブルであるという特徴をもっており、透明導電膜、電解コンデンサー、帯電防止剤、電池、および有機EL素子、タッチパネル等への応用が研究され、一部では実用化されている。
【0003】
電解コンデンサーの電解液よりも導電性が高く安定性も高い導電性高分子を使うことで、周波数特性が改善され、耐熱性にも優れた電解コンデンサーを得ることができる。
また、導電性高分子をポリマーフィルムの表面に薄く製膜することで透明性を保ったまま静電気を防止することができるため、このようなものは使い勝手のよい帯電防止フィルムや帯電防止容器として使用されている。
【0004】
導電性高分子は2次電池の正極として用いることができ、リチウムポリアニリン電池やリチウムイオンポリマー電池等に使われている。
発光層に導電性高分子を用いた高分子有機ELディスプレイがあり、基板にガラスではなくプラスチックを用いることで、フレキシブルなディスプレイが作製できる。また、正孔輸送層にも導電性高分子を用いることができる。高分子有機ELディスプレイを含む有機ELディスプレイは、自発光のディスプレイなので視野角が広く、薄型化しやすく、色の再現性に優れる。また、正孔と電子の再結合による発光なので応答速度が速い。有機ELディスプレイはこのような優れた特徴を持っているために、将来有望なディスプレイである。導電性高分子はITOよりも屈曲性に優れているので、有機ELと導電性高分子を透明導電膜に用いた、折り曲げ可能なフレキシブルディスプレイの開発も行われている。
また、導電性高分子を使用してダイオードやトランジスタなどの電子素子を作製することができ、性能の向上が研究されている。導電性高分子を白金の代わりに色素増感型太陽電池の二酸化チタンの対極として使用することにより、現在主流となっているシリコンを利用した太陽電池よりも安価な太陽電池の開発を目指し研究されている。
このように導電性高分子は将来のエレクトロニクス産業にとって有益な材料で、導電性高分子のパターニング方法は導電性高分子を使用するにあたって重要な技術である。
【0005】
特許文献1には、導電性重合体のような機能性高分子を含む溶液または分散液を含み特定の粘度を有する印刷ペーストを用いてスクリーン印刷法により直接パターンを描き、ペースト中の溶剤または分散媒を除去することにより目的とする機能性薄膜のパターンを形成することを記載している。
【0006】
さらに、特許文献2には、インクジェットプリント装置により機能性材料として発光材料をパターニングする方法が示されている。この方法では、液状の発光材料をインクジェット装置により基板上に付与し、加熱処理により高分子化している。
【0007】
特許文献3には、基板上に目的とする機能性薄膜の逆パターンを、感放射線樹脂組成物により形成し、その上に導電性ポリマーを塗布・乾燥し、その後、基板を剥離剤で処理することにより、逆パターンを、パターン上の導電性ポリマー層とともに除去することにより、パターンを形成する方法が示されている。
【0008】
これに対し、パターニングに広く用いられているフォトエッチング方法は均一な膜を製膜後にパターニングを行うので、簡単な製膜方法を採用できる利点がある。
導電性高分子をエッチングによってパターニングする方法については、例えば特許文献4に開示されている。
【0009】
また、特許文献5には、基体と、導電性粒子および導電性高分子を含有する導電層と、を備え、前記導電層が前記基体の一面上に設けられている、透明導電体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2002−500408号公報
【特許文献2】特開平10−153967号公報
【特許文献3】特開2004−14215号公報
【特許文献4】特開2008−91487号公報
【特許文献5】特開2006−286418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の機能性薄膜のパターンを形成する方法では、その解像度は必ずしも十分ではなく、印刷ペーストを特定の粘度に調整するという手間がかかるという問題がある。
また、特許文献2に記載の発光材料のパターニング方法では、液状の発光材料を基板上に付与する際に、あらかじめ垂れ防止壁を形成する必要があり、さらには、液状の発光材料の粘度および表面張力を調整する手間がかかる。
特許文献3に記載の方法では、そのエッジ形状は必ずしも適正ではなく、また、パターン作製後に、導電性を維持すること、信頼性を維持することが困難である。
さらに、特許文献4に記載の方法では、エッチング処理後の導電層の導電性能については記載がなく、パターニングされた導電層が耐久性を持つかは不明である。
特許文献5には、一般的に、透明導電体を高湿度環境下や有機溶剤、有機ガス等の化学物質雰囲気で用いると、透明導電体自体の電気抵抗値が上昇し、さらに電気抵抗値の経時的変化も大きくなるとの記載がある。
【0012】
本発明の目的は、エッチング後の導電性能、および、信頼性に優れた、導電性樹脂パターンを有する積層体の製造方法を提供することである。さらに、本発明は前記製造方法により得られる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、本発明を完成した。すなわち本発明は、以下に列挙する通りである。
[1] (a)透明基体、および、該透明基体の少なくとも一面に設けられた導電性樹脂組成物層を有する導電性積層体を準備する工程、(b)前記導電性樹脂組成物層上にレジストパターンを形成する工程、(c)硝酸セリウムアンモニウム、硫酸セリウムアンモニウム、および、次亜塩素酸塩よりなる群から選択された少なくとも1種類を含有するエッチング剤を用いてレジストパターン非形成部の導電性樹脂組成物層を除去する工程、並びに、(d)レジストパターンを、窒素原子を含有しない非プロトン性有機溶剤、並びに、化学構造中に窒素原子を有し、かつ、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物および有機第四アンモニウム塩以外の有機溶剤よりなる群から選択された少なくとも1種の有機溶剤を含有する剥離剤により除去する工程、をこの順で含むことを特徴とする導電性樹脂パターンを有する積層体の製造方法、
[2] 前記導電性樹脂組成物が、ポリ(3,4−二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体を含む、[1]に記載の積層体の製造方法、
[3] [1]または[2]に記載の方法によって得られた積層体、
[4] 全光線透過率が80%以上、かつ、表面抵抗率が2,000Ω/□以下である、[3]に記載の積層体、
[5] 80℃の熱環境下で240時間放置した後の表面抵抗率が2,000Ω/□以下である、[3]または[4]に記載の積層体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エッチング後の導電性能、および、信頼性に優れた、導電性樹脂パターンを有する積層体の製造方法を提供することができた。さらに、本発明によれば、前記製造方法により得られる積層体を提供することができた。
本発明によれば、他のパターニング方法と比べ導電性樹脂組成物の表面抵抗の上昇が少なく、導電性に優れた導電性積層体を供給できる。なおかつ、本発明によってパターニングした導電性積層体は耐熱性に優れた特徴を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】導電性高分子上に直接形成したレジスト膜を剥離する方法を示す工程図である。
【図2】導電性高分子上に他の膜を介して形成されたレジスト膜を剥離する方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の導電性樹脂パターンを有する積層体の製造方法は、(a)透明基体、および、該透明基体の少なくとも一面に設けられた導電性樹脂組成物層を有する導電性積層体を準備する工程、(b)前記導電性樹脂組成物層上にレジストパターンを形成する工程、(c)硝酸セリウムアンモニウム、硫酸セリウムアンモニウム、および、次亜塩素酸塩よりなる群から選択された少なくとも1種類を含有するエッチング剤を用いてレジストパターン非形成部の導電性樹脂組成物層を除去する工程、並びに、(d)レジストパターンを、窒素原子を含有しない非プロトン性有機溶剤、並びに、化学構造中に窒素原子を有し、かつ、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物および有機第四アンモニウム塩以外の有機溶剤よりなる群から選択された少なくとも1種の有機溶剤を含有する剥離剤により除去する工程、をこの順で含むことを特徴とする。
すなわち、本発明の積層体の製造方法は、(1)導電性積層体を(2)レジスト(3)エッチング剤(4)レジストパターンの剥離剤を用いて、(5)導電性樹脂パターンを有する積層体を製造する方法である。
以下に詳細な方法を説明する。
【0017】
(1)導電性積層体
本発明に用いる導電性積層体は、透明基体、および、該透明基体の少なくとも一面に設けられた導電性樹脂組成物層を有する。
前記透明基体は、透明樹脂基体または透明ガラス基体であることが好ましい。
ここで、「透明」とは全光透過率が80%以上であることを意味する。基体の全光透過率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
【0018】
(透明樹脂基体または透明ガラス基体)
本発明において、導電性樹脂組成物層は透明樹脂基体または透明ガラス基体に設けることが好ましい。
本発明に用いる透明樹脂基体または透明ガラス基体は、特に制限はなく、使用目的や用途に従い適宜選択することができる。
透明樹脂基体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン類、その他にポリスチレン、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート(例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA))等が例示される。
これらの透明樹脂基体の形状に制限はないが、ロールtoロールでの生産性に優れるのでロール状であることが好ましい。
透明ガラス基体としては、ソーダ石灰硝子、ケイ酸硝子、バリウム硝子、燐酸塩硝子、ホウ酸塩硝子、フッ化物硝子、石英硝子等の無機硝子類等が例示される。
【0019】
(導電性樹脂組成物層)
本発明に使用する導電性樹脂組成物層はπ共役系導電性高分子を含有する導電性樹脂組成物を成膜して作製する。π共役系導電性高分子としては、公知のπ共役系導電性高分子を使用することができ、例えば、以下に示すモノマーの1種または2種以上を単量体として、重合させて得られる導電性高分子が挙げられる。
モノマーとしては、例えば、ピロール、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−フェニルピロール、N−ナフチルピロール、N−メチル−3−メチルピロール、N−メチル−3−エチルピロール、N−フェニル−3−メチルピロール、N−フェニル−3−エチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−ブチルピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−n−プロポキシピロール、3−n−ブトキシピロール、3−フェニルピロール、3−トルイルピロール、3−ナフチルピロール、3−フェノキシピロール、3−メチルフェノキシピロール、3−アミノピロール、3−ジメチルアミノピロール、3−ジエチルアミノピロール、3−ジフェニルアミノピロール、3−メチルフェニルアミノピロール、3−フェニルナフチルアミノピロールなどのピロール誘導体;アニリン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−メトキシアニリン、m−メトキシアニリン、p−メトキシアニリン、o−エトキシアニリン、m−エトキシアニリン、p−エトキシアニリン、o−メチルアニリン、m−メチルアニリン、p−メチルアニリン、スルホン化アニリンなどのアニリン誘導体;チオフェン、3−メチルチオフェン、3−n−ブチルチオフェン、3−n−ペンチルチオフェン、3−n−ヘキシルチオフェン、3−n−ヘプチルチオフェン、3−n−オクチルチオフェン、3−n−ノニルチオフェン、3−n−デシルチオフェン、3−n−ウンデシルチオフェン、3−n−ドデシルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ナフトキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどのチオフェン誘導体などが挙げられる。これらの中でも、ピロール、アニリン、チオフェン、および、3,4−エチレンジオキシチオフェンが好ましく、3,4−エチレンジオキシチオフェンがより好ましい。これらのモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明においては導電性高分子の電気伝導度を高める目的で、ドーパントを併用することができる。該ドーパントとしては、アクセプターおよびドナーのいずれでもよく、ヨウ素、塩素等のハロゲン類、BF3、PF5等のルイス酸類、硝酸、硫酸等のプロトン酸類や、ポリ陰イオン(ポリマー型ポリアニオン)、遷移金属、アルカリ金属、アミノ酸、核酸、界面活性剤、色素、クロラニル、テトラシアノエチレン、TCNQ等、公知のものが例示される。ポリチオフェン類を用いる場合のドーパントとしてはポリ陰イオンを用いることが好ましく、ポリスチレンスルホン酸を用いることが特に好ましい。
【0021】
また、導電性高分子は上市されており、具体的な導電性高分子としては、Panipol社により製造され「Panipol」の商品名で市販されているポリアニリンが知られており、機能性スルホン酸でドープした有機溶剤可溶型ポリアニリンである。Ormecon社により製造され「Ormecon」の商品名で市販されたポリアニリンは、有機酸をドーパントに用いた溶剤分散型ポリアニリンである。
他にも、エイチ・シー・スタルク社により製造され「CLEVIOS」(登録商標)の商品名で、あるいは帝人デュポンフィルム社により製造された「カレンファイン」の商品名で市販されているポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が例示できる。なお、「カレンファイン」はポリスチレンスルホン酸をドーパントとしている。
その他に、アキレス社から商品名「STポリ」で市販されるポリピロール、東洋紡績社から商品名「PETMAX」で市販されるスルホン化ポリアニリン、マルアイ社から商品名「SCS−NEO」で市販されるポリアニリンも本発明に使用できる。
さらに、特許流通促進事業として特許流通支援チャートの平成13年度化学6「有機導電性ポリマー」に記載されている導電性高分子も本発明に使用できる。
【0022】
(2)レジスト
本発明に使用するレジストとしては、汎用のフォトレジストやドライフィルムレジストが使用できる。
当該フォトレジストは、紫外線を照射した部分が現像液に溶解するポジ型と紫外線を照射した部分が現像液に不溶化するネガ型があり、ポジ型は液体のレジストが多く、ディスプレイではLCD等の線幅(ライン)が数μm〜数十μmのオーダーのエッチングに用いられる。ポジ型の液体レジストはナフトキノンジアジド化合物とノボラック樹脂を含むものが好ましい。ノボラック樹脂はクレゾールノボラック樹脂であることがより好ましい。
ネガ型は液体レジスト以外にドライフィルムレジストがあり、ディスプレイではPDP(プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel))等の線幅が数十μmオーダーのエッチングに用いられている。
ポジ型とネガ型どちらのタイプのレジストも本発明において使用可能であり、目的とするパターンの精細度と使い勝手から選択すればよい。
【0023】
(3)エッチング剤
本発明の導電膜のパターニングに用いる導電性高分子用エッチング剤は、硝酸セリウムアンモニウム、硫酸セリウムアンモニウムおよび次亜塩素酸よりなる群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する。本発明において、導電性高分子用エッチング剤は、以下の(エッチング剤A)〜(エッチング剤C)よりなる群から選択されることが好ましい。
(エッチング剤A)
硝酸セリウムアンモニウム(NH42Ce(NO36を含有するエッチング剤
(エッチング剤B)
硫酸セリウムアンモニウム(NH44Ce(SO44を含有するエッチング剤
(エッチング剤C)
次亜塩素酸塩水溶液であるエッチング剤
【0024】
上記(エッチング剤A)〜(エッチング剤C)に示したそれぞれのエッチング剤について説明する。
(エッチング剤A):(NH42Ce(NO36を含有するエッチング剤
本発明において、第1のエッチング剤(エッチング剤A)は、硝酸セリウムアンモニウム((NH42Ce(NO36)を含有する。0.5重量%を超え70重量%以下の(NH42Ce(NO36を含むことが好ましい。
本発明において、エッチング剤の溶媒としては、前記セリウム塩を溶解でき、エッチング処理に影響のない媒体であれば、特に制限はないが、水であることが好ましい。また、溶媒として、水と無機酸を混合して用いることも好ましい。
【0025】
本発明において(NH42Ce(NO36を用いる場合はエッチング剤の処理能力から0.5%を超える添加量であることが好ましく、1.0重量%以上がより好ましい。また、濃度とともに処理速度が上がるが、溶解度の点から70重量%以下であることが好ましく、40重量%以下がより好ましく、さらに好ましくは2.0〜30重量%(本発明において、「2.0重量%以上30重量%以下」を「2.0〜30重量%」とも記載することとする。以下、同様。)であり、特に好ましくは5.0〜15重量%である。本発明において、(NH42Ce(NO36を用いたエッチング剤(エッチング剤A)において、上記範囲の濃度であるとエッチングの処理能力に優れるので好ましい。
【0026】
(NH42Ce(NO36を用いたエッチング剤(エッチング剤A)において、当該エッチング剤の分解を防止するため、安定剤を用いることができ、当該エッチング剤については安定剤を配合した方が好ましい。当該安定剤としてはHNO3またはHClO4が好ましい。
当該安定剤としてHNO3を用いた場合、その濃度は、0.1重量%より多いことが好ましく、また、70重量%以下であることが好ましく、1.0〜60重量%であることがより好ましく、5〜50重量%であることがさらに好ましく、10〜20重量%であることが特に好ましい。また、当該安定剤としてHClO4を用いた場合、その濃度は、0.1重量%より多いことが好ましく、また、60重量%以下であることが好ましく、1.0〜50重量%であることがより好ましく、5〜40重量%であることがさらに好ましい。なお、硫酸は、(NH42Ce(NO36エッチング剤を白濁させるので安定剤として好ましくない。(NH42Ce(NO36を用いたエッチング剤において、安定剤が上記範囲の濃度であるとエッチング剤の安定性が向上するので好ましい。
【0027】
(エッチング剤B):(NH44Ce(SO44を含有するエッチング剤
本発明において、第2のエッチング剤(エッチング剤B)の溶媒としては、前記セリウム塩を溶解でき、エッチング処理に影響のない媒体であれば、特に制限はないが、水であることが好ましい。また、溶媒として、水と無機酸を混合して用いることも好ましい。
【0028】
本発明において、(NH44Ce(SO44の含有量は、エッチング剤の処理能力から0.5重量%を超える添加量であることが好ましく、1.0重量%以上がより好ましく、また、濃度とともに処理速度が上がるが、溶解度の点から30重量%以下であることが好ましく、25重量%以下がより好ましく、さらに好ましくは2.0〜25重量%であり、特に好ましくは5〜15%である。本発明において、エッチング剤(エッチング剤B)の含有する(NH44Ce(SO44が上記範囲の濃度であると、エッチングの処理能力が優れるので好ましい。
【0029】
第2のエッチング剤(エッチング剤B)において、当該エッチング剤の分解を防止するため、安定剤を用いることができ、当該エッチング剤については安定剤を配合した方が好ましい。当該安定剤としては、H2SO4が好ましい。
当該安定剤としてH2SO4を用いた場合、その濃度は、1.0重量%より多いことが好ましく、また、40重量%以下であることが好ましく、2.0〜30重量%であることがより好ましく、3〜20重量%であることがさらに好ましい。なお、硝酸は、(NH44Ce(SO44を含有する第2のエッチング剤(エッチング剤B)を白濁させるので安定剤として好ましくない。第2のエッチング剤(エッチング剤B)において、安定剤が上記範囲の濃度であるとエッチング剤の安定性が向上するので好ましい。
【0030】
(エッチング剤C):次亜塩素酸塩水溶液であるエッチング剤
本発明において、第3のエッチング剤(エッチング剤C)は、次亜塩素酸塩の水溶液を用いるものであり、当該塩としては、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が例示でき、好ましくはアルカリ金属塩である。当該アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩またはカリウム塩が好ましく、より好ましくはナトリウム塩である。当該アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩が好ましい。
なお、本発明において、第3のエッチング剤(エッチング剤C)の溶媒としては、エッチング処理に影響のない媒体であれば、特に制限はないが、水であることが好ましい。
【0031】
次亜塩素酸塩は、水酸化アルカリ金属または水酸化アルカリ土類金属に塩素を吸収させて製造するので、未反応の水酸化アルカリ金属または水酸化アルカリ土類金属の影響でその水溶液は強アルカリ性を示す。このように強アルカリ性を示す導電性高分子用エッチング剤は、レジストに悪影響を与えるので、第3のエッチング剤(エッチング剤C)のpHは、3を超え8未満であることが好ましく、pH4〜7.5であることがより好ましく、pH4.5〜7であることがさらに好ましく、特に好ましくはpHが5〜6である。
エッチング剤のpHが8未満であると、レジストに対する影響が少ないので好ましい。また、pHが3以上であると、塩素ガスの発生による有効塩素濃度の低下が抑制され、エッチング所要時間が短く、また、発生した塩素ガスによるエッチング装置およびエッチング装置近辺の機器への障害が少ないので好ましい。また、エッチング剤のpHが4.0以上であると塩素ガスの発生ほとんどないことから好ましく、pHが4.5以上であると塩素ガスの発生がないことから特に好ましい。
【0032】
本発明において、エッチング剤CのpHを上記範囲内とするためには、酸を添加することが好ましい。添加する酸としては無機酸および有機酸のいずれも使用することができる。
具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、酢酸、クエン酸等が好ましく例示でき、これらの中でも硫酸および硝酸がより好ましい。
本発明において、エッチング剤のpHは、市販されているpHメーターを用いて測定することができる。
【0033】
本発明において、第3のエッチング剤(エッチング剤C)は、次亜塩素酸の有効塩素濃度が0.06重量%以上であることが好ましい。エッチング剤の有効塩素濃度が0.06重量%以上であると、良好なエッチング処理能力が得られるので好ましい。
有効塩素濃度は、より好ましくは0.1重量%以上であり、さらに好ましくは0.2重量%以上であり、3重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。本発明において、第3のエッチング剤(エッチング剤C)の有効塩素濃度がこの範囲内であると、導電性高分子のエッチングが効率よくできるので好ましい。
【0034】
本発明において、有効塩素濃度は、Na2SO3での滴定法により測定することが好ましい。すなわち、測定する試料をWグラム採取し、イオン交換水で250mlにメスアップする。この試料液10mlを分取し、ヨウ化カリウム10%水溶液10mlを加える。そして、酢酸(1:2)10mlを加えpHを酸性にし、0.1規定濃度チオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定する(滴定の途中で終点を判定しやすくするため可溶性でんぷんを加える)。0.1規定濃度Na2SO3の滴定量および試料採取量Wと次式から有効塩素濃度を求める。
有効塩素濃度(重量%)=
0.003546×(Na2SO3滴定量:ml)×100/W/(10/250)
【0035】
(4)剥離剤
本発明において、レジストパターンを除去するための剥離剤は、レジストパターンの剥離能を有するものであり、(a)窒素原子を含有しない非プロトン性有機溶剤(非プロトン性有機溶剤(a))、並びに、(b)化学構造中に窒素原子を有し、かつ、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物および第四級アンモニウム塩以外の有機溶剤(有機溶剤(b))よりなる群から選択された少なくとも1種の有機溶剤を含有することが必要であり、前記非プロトン性有機溶剤(a)および/または前記有機溶剤(b)を主成分とすることがより好ましく、前記非プロトン性有機溶剤(a)または前記有機溶剤(b)を主成分とすることがさらに好ましい。
すなわち、本発明は、非プロトン性有機溶剤(a)および有機溶剤(b)よりなる群から選択された少なくとも1つの有機溶剤を含有し、2種以上の非プロトン性有機溶剤(a)または2種以上の有機溶剤(b)を使用することもできるし、非プロトン性有機溶剤(a)と有機溶剤(b)を併用してもよい。
以下、非プロトン性有機溶剤(a)、および、有機溶剤(b)について詳述する。
【0036】
(a)窒素原子を含有しない非プロトン性有機溶剤
本発明において、前記非プロトン性有機溶剤(a)は、ジアルキルスルホン類、ジアルキルスルホキシド類、炭酸アルキレン類、および、アルキロラクトン類よりなる群から三択された、窒素原子を含有しない非プロトン性有機溶剤であることが好ましい。
本発明において、非プロトン性有機溶剤とは、プロトンを供与する能力が著しく低い有機溶剤を意味する。これに対してプロトン性有機溶剤とは、自分自身で解離してプロトンを生じる溶剤をいい、水、メタノールやエタノールのようなアルコール、酢酸のようなカルボン酸、フェノール、液体アンモニアなどがその例である。
【0037】
また、本発明において、非プロトン性有機溶剤(a)は、化学構造中に酸素原子および/または硫黄原子を含み、かつ、窒素原子を含まないことが好ましい。
かかる非プロトン性有機溶剤(a)は、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類、ジメチルスルホン等のジアルキルスルホン類、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の炭酸アルキレン類、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のアルキロラクトン類よりなる群から選択された溶剤であることが好ましい。これらの非プロトン性有機溶剤(a)は、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
また、前記ジアルキルスルホキシド類および前記ジアルキルスルホン類は、2つのアルキル基が結合して環を形成してもよく、例えば、ジアルキルスルホン類は、スルホラン類をも含む意である。
【0038】
前記ジアルキルスルホン類において、2つのアルキル基は炭素数1〜6であることが好ましく、炭素数1〜3であることがより好ましく、炭素数1または2(メチル基またはエチル基)であることがさらに好ましい。また、2つのアルキル基は同一でも異なっていてもよい。また、前記2つのアルキル基が結合して環を形成していてもよく、スルホラン類が例示できる。前記スルホラン類は、置換または非置換のスルホランを意味し、前記置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基が例示できる。前記置換基は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。前記置換基は任意の炭素原子に置換することができ、その置換数は限定されない。前記スルホラン類としては、スルホラン、テトラメチルスルホランが例示できる。
前記ジアルキルスルホキシド類において、2つのアルキル基は炭素数1〜6であることが好ましく、炭素数1〜3であることがより好ましく、炭素数1または2(メチル基またはエチル基)であることがさらに好ましい。また、2つのアルキル基は同一でも異なっていてもよい。
前記炭酸アルキレン類において、前記アルキレン基の炭素数は1〜6であることが好ましく、より好ましくは、炭素数1〜4であり、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が例示できる。
前記アルキロラクトン類の炭素数は3〜6であることが好ましく、4〜6であることがより好ましく、入手の容易性から、炭素数は4または6(ブチロラクトンまたはカプロラクトン)であることがさらに好ましい。
【0039】
沸点が比較的低く乾燥性がよく、安全性が高く取り扱いしやすい点から、非プロトン性有機溶剤(a)は、好ましくは、ジアルキルスルホキシド、炭酸アルキレン、および、アルキロラクトンよりなる群から選択された少なくとも1つの非プロトン性有機溶剤であり、より好ましくは、ジメチルスルホキシド、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、および、γ−ブチロラクトンよりなる群から選択された少なくとも1つの非プロトン性有機溶剤であり、さらに好ましくは、ジメチルスルホキシド、炭酸エチレン、および、γ−ブチロラクトンよりなるから選択された少なくとも1つの非プロトン性有機溶剤であり、特に好ましくはγ−ブチロラクトンである。
【0040】
なお、本発明において、化学構造中に酸素原子および/または硫黄原子を含み、かつ、窒素原子を含まない他の非プロトン性有機溶剤を併用することができる。
前記非プロトン性有機溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルビニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類が例示できるが、沸点が低く、揮発性が高く、臭気が強く、引火性があり、貯蔵中に過酸化物が生じやすく爆発の危険があるなど、取り扱いが難しく好ましくない。さらに、基材と導電性高分子の界面に浸透しやすく密着性を低下させるおそれがある。したがって、本発明において、剥離剤におけるエーテル類の含有量は、剥離剤全体の30重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることがさらに好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0041】
(b)化学構造中に窒素原子を有し、かつ、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物および有機第四アンモニウム塩以外の有機溶剤
ここで、第一級アミン化合物(primary amine compound)とは、アンモニア(NH3)の水素原子の1つを炭化水素残基で置換した化合物であり、第二級アミン化合物(secondary amine compound)とは、アンモニア(NH3)の水素原子2つを炭化水素残基で置換した化合物である。また、第四アンモニウム塩(quaternary ammouium salt)は、アンモニウム塩(NH4X)の窒素原子についている4個の水素原子を全て炭化水素残基で置換したイオン性の化合物である。
本発明において有機溶剤(b)は、第三級アミン化合物またはアミド化合物であることが好ましい。なお、本発明において、アミド化合物は、−C=O−NRa−の部分構造を有するものであればよく、ウレア化合物を含む意である。ここで、Raは水素原子または一価の置換基を表す。
これらの中でも、有機溶剤(b)は、アミド化合物であることが好ましい。
【0042】
かかる有機溶剤(b)としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン類やN−アルケニルピロリドン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のジアルキルカルボアミド類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、トリエタノールアミン等が例示される。
【0043】
前記アルキルピロリドン類は、炭素数1〜6であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜4であり、さらに好ましくは炭素数1〜2(メチル基またはエチル基)である。前記アルケニルピロリドン類は、炭素数2〜6であることが好ましく、より好ましくは炭素数2〜4であり、ビニル基またはアリル基がさらに好ましい。
前記ジアルキルカルボアミド類は、下記式(1)で表されることが好ましい。
1−(C=O)−NR23 (1)
前記式(1)において、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素数6〜10のアリール基を表す。R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子またはメチル基であることがさらに好ましい。
前記式(1)において、R2およびR3はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を表し、炭素数1〜4であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。
【0044】
取り扱いの容易さと安全性の点から、好ましくは、N−アルキルピロリドンおよびジアルキルカルボアミドよりなる群から選択された少なくとも1つの有機溶剤であり、より好ましくは、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドよりなる群から選択された少なくとも1つの有機溶剤である。これらの有機溶剤(b)は、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
有機溶剤(b)が、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物および/または有機第四アンモニウム塩であると、導電性高分子の表面抵抗値を高め、導電性を悪化させるため、有機溶剤(b)は、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物および有機第四アンモニウム塩でない有機溶剤であることが好ましい。特に剥離剤は、モノエタノールアミンとテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含有しないことが好ましい。
なお、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物および有機第四アンモニウム塩は、剥離剤全体としても含有しないことが好ましく、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物および有機第四アンモニウム塩の含有量は剥離剤全体の5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3重量%以下であり、さらに好ましくは含有しないことである。
【0046】
本発明において、非プロトン性有機溶剤(a)または有機溶剤(b)をそれぞれ単独で使用することもできるし、非プロトン性有機溶剤(a)および有機溶剤(b)を併用することもできる。
非プロトン性有機溶剤(a)と有機溶剤(b)との混合物は、導電性高分子からのレジスト膜の剥離性がよく、導電性高分子の表面抵抗を高めない、つまり導電性を悪化させず、かつ、基材と導電性高分子の密着性も悪化させない点で好ましい。
非プロトン性有機溶剤(a)と有機溶剤(b)との割合は、(a)/(b)=99/1〜10/90(重量比)が好ましく、(a)/(b)=70/30〜20/80(重量比)がより好ましい。
【0047】
本発明において、剥離剤には、前記非プロトン性有機溶剤(a)および有機溶剤(b)の他に、剥離特性を落とさない範囲で、その他の化合物を添加することができる。かかる化合物としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のアルキレングリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等の引火点が21℃以上のグリコールエーテル類、水等が例示される。
非プロトン性有機溶剤(a)および/または有機溶剤(b)以外の成分は、合計で、剥離剤の総重量に対して0〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは0〜30重量%であり、さらに好ましくは0〜10重量%であり、特に好ましいのは0〜5重量%であり、最も好ましくは0〜3重量%である。
【0048】
(5)導電性樹脂パターンを有する積層体の製造方法
本発明において、導電性樹脂パターンを有する積層体の製造方法は、
(a)導電性樹脂組成物層を有する導電性積層体を準備する工程、
(b)導電性樹脂組成物層上にレジストパターンを形成する工程、
(c)エッチング剤を用いてレジストパターン非形成部の導電性樹脂組成物層を除去する工程、および、
(d)レジストパターンを剥離剤により除去する工程、
をこの順で有する。
以下、それぞれの工程について詳述する。
【0049】
(工程a)導電性樹脂組成物層を有する導電性積層体を準備する工程
透明基体上に導電性樹脂組成物層を形成する工程は、用いる導電性樹脂組成物や導電性樹脂組成物が含有する導電性高分子化合物によって適宜選択すればよい。例えば、導電性高分子としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を使用する場合には、水に分散して、透明基体上に導電性高分子の溶液をコーティングし、乾燥して導電性高分子の薄膜(導電性樹脂組成物層)を形成させる。
なお、ドーパントは公知の方法で添加することができる。予め導電性高分子膜を成膜してから、ドーパントを後で導入する方法、導電性高分子膜を作製する際にドーパントを導入する方法のいずれを使用することもできる。
前記導電性樹脂組成物層の厚みは、1nm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは5nm以上1,000nm以下であり、さらに好ましくは10nm以上500nm以下であり、特に好ましいのは10nm以上300nmである。
【0050】
(工程b)前記導電性樹脂組成物層上にレジストパターンを形成する工程
(工程b)では、導電性積層体上の導電性樹脂組成物層上にレジストパターンを形成する。前記レジストパターンは、レジスト膜を成膜する工程およびレジスト膜に紫外線を用いて選択的に露光し現像液で現像する工程を含むことが好ましく、上記の工程をこの順で有することがより好ましい。
【0051】
導電性樹脂組成物層上にレジスト膜を成膜する工程は、レジスト溶液を導電性樹脂組成物層上にコーティングし、ベーキングを行ってレジスト膜を形成する工程であることが好ましい。
次に、レジスト膜に所定のフォトマスクを介して紫外線を照射し、所定のパターン様に露光し現像液で現像する工程を含むことが好ましい。
【0052】
なお、本発明において、レジストパターンの形成方法はこれに限定されるものではない。他のレジストパターンの形成方法としては、レジスト層形成用材料をインクジェットにより吐出し、硬化させてレジストパターンを形成する方法、レジスト膜を成膜した後、パターン様にレーザーを照射してパターンを形成する方法等が例示できる。
なお、パターン形成した後、さらに、ポストベーク処理を行ってもよい。
【0053】
(工程c)エッチング剤を用いてレジストパターン非形成部の導電性樹脂組成物層を除去する工程
(工程c)では、パタ−ンを形成したレジスト膜を一種のマスクとしてレジストパターン非形成部の導電性樹脂組成物層をエッチング処理し、導電性樹脂のパターンを形成する。
エッチング剤を用いてレジストパターン非形成部の導電性樹脂組成物層を除去する工程は、浸漬法とスプレー法どちらでも使用可能である。
スプレー法において使用する噴霧ノズルは銃円錐ノズルが好ましい。エッチング剤をスプレーする圧力は、圧力を高くするとエッチングにかかる時間を短縮できるため、0.01MPa以上が好ましい。スプレーする圧力を高くすると導電性積層体が破壊されたり、導電性積層体の固定が難しくなるので0.5MPa以下が好ましい。より好ましくは0.05MPa以上0.4MPa以下であり、さらに好ましくは0.1MPa以上0.3MPa以下であり、特に好ましくは0.15MPa以上0.25MPa以下である。
【0054】
エッチング剤を使用する際のエッチング剤の液温は、10〜70℃であることが好ましく、20〜60℃がより好ましい。本発明において、エッチング剤が上記範囲の液温であると、エッチングの処理能力に優れるので好ましい。
本発明おいて、エッチング剤を使用する際のエッチング時間は、0.2〜30分間が好ましく、0.3〜25分間がより好ましく、0.4〜15分間がさらに好ましい。本発明において、上記範囲のエッチング時間であるとエッチング処理において導電性積層体等に与えるダメージが少ないので好ましい。
【0055】
本発明において、エッチング剤の濃度の制御は、酸化還元電位、pH、電気伝導度、または比重など、あるいはこれらを組み合わせて制御することで可能である。
【0056】
(工程d)レジストパターンを剥離剤により除去する工程(剥離工程)
最後に、(工程d)において、導電性樹脂組成物層上のレジストパターンを、剥離剤により除去して、導電性樹脂パターンを得る。なお、前記導電性樹脂パターンは、導電性樹脂組成物層から形成された、パターンである。
該(工程d)(剥離工程)では、導電性樹脂組成物層をパターニング処理した後の導電性積層体(以下、テスト基板という)と剥離剤とを接触させることが必要である。かかる剥離工程としては、テスト基板を剥離剤の入った容器中に入れる方法や、剥離剤をテスト基板上に噴霧する方法が例示できる。
テスト基板を容器中に入れる方法では、剥離剤は、テスト基板上のレジスト層が完全に浸るように使用することが好ましい。
テスト基板と剥離剤の接触は、少なくともレジスト膜が導電性樹脂組成物層から完全に剥離するまで必要であり、最大でも5分以内とすることが装置の大きさ等からも経済的であり、好ましくは3分以内、さらに好ましくは2分以内、特に好ましくは10秒〜1分の間で適宜選択される。
なお、これらの処理時間は剥離剤を撹拌することによっても短縮できるため、前記噴霧以外にも浸漬揺動、液循環、超音波などの方法が用いることができる。
【0057】
前記剥離工程において、剥離剤の温度を制御することが好ましい。剥離時間の短縮および剥離残り防止のためには剥離温度が5℃以上であることが好ましく、剥離後の導電性樹脂パターンの導電性の悪化、すなわち表面抵抗の上昇を防ぐためには剥離温度が60℃以下であることが好ましい。剥離剤の温度は、5℃以上50℃以下であることがより好ましく、さらに好ましくは10℃以上40℃以下であり、特に好ましくは10℃以上30℃以下である。
剥離処理の終了後、テスト基板を引き上げ、必要により蒸留水や有機溶剤で洗浄し、乾燥させる。
【0058】
剥離工程の終了後、テスト基板を引き上げ、水や有機溶剤などの洗浄液で洗浄する、洗浄工程を有することが好ましい。
洗浄に使う洗浄液は、水もしくは低級アルコール、または、これらの混合物であることが好ましい。なお、本発明において低級アルコールとは、炭素数1〜4の分岐してもよいアルキル基を有するアルコールであり、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールである。これら低級アルコールは混合して使用してもよく、洗浄性を落とさない範囲で、それ以外の比較的沸点の低いアルコール、例えばn−ヘキサノール、シクロヘキサノールを混合してもよい。好ましい洗浄液はイオン交換水、メタノールおよび/またはエタノールであり、これらの混合物であってもよい。
【0059】
本発明における、洗浄工程の時間は、30秒〜5分が好ましい。洗浄工程の時間が30秒以上であると、十分な洗浄性を得ることができ、また、5分以下であると、導電性樹脂の基体からの脱離を抑制できるので好ましい。洗浄工程の時間を上記範囲内とすることにより導電性樹脂パターンを有する積層体の歩留まりが良好であるので好ましい。
【0060】
前記洗浄工程において、洗浄液の温度を制御することが好ましい。洗浄時間の短縮および洗浄残り防止のためには洗浄温度が5℃以上であることが好ましく、洗浄後の導電性樹脂パターンの導電性の悪化、すなわち表面抵抗の上昇を防ぐためには洗浄温度が60℃以下であることが好ましい。洗浄液の温度は、5℃以上50℃以下であることが好ましく、より好ましくは10℃以上40℃以下であり、さらに好ましくは10℃以上30℃以下である。
【0061】
本発明において、剥離工程および洗浄工程の少なくとも一方を5℃〜60℃の温度で行うことが好ましく、剥離工程および洗浄工程の両方を5℃〜60℃の温度で行うことがより好ましい。
【0062】
また、本発明において、洗浄工程の後に乾燥工程を行うことが好ましい。前記乾燥工程としては公知の方法から適宜選択することができる。
【0063】
以下に図を参照して詳述する。なお、以下の図において、同一の符号は、同一の対象を指すものである。
図1は、導電性樹脂組成物層上に直接形成したレジストパターンを剥離する方法を示す工程図である。
図1(a)において、透明基体20上に導電性樹脂組成物層10を形成する。次いで、導電性樹脂組成物層10上にレジスト膜30を成膜する(図1(b))。マスクパターン40を介してレジスト膜30を露光し(図1(c))、パターン様に現像する(図1(d))。なお、図1では、レジスト膜30としてポジ型レジストを使用しており、露光された部分が可溶性となる。なお、露光に使用する光源は特に限定されないが、紫外線を好適に使用することができる。
次いで、導電性樹脂組成物層10をエッチングし(図1(e))、さらに導電性樹脂組成物層10上のレジスト膜30を剥離する(図1(f))。本発明において、剥離剤および剥離方法は、前記図1(f)に示す導電性樹脂組成物層10上のレジスト膜30の剥離剤および前記レジスト膜の剥離方法として好適に使用することができる。
【0064】
図2は、導電性樹脂組成物層上に他の膜を介して形成されたレジスト膜を剥離する方法を示す工程図である。
図2(a)において、基板20上に導電性樹脂組成物層10および他の膜50がこの順で成膜されている。次に、他の膜50上に、レジスト膜30を成膜し(図2(b))、図1(c)と同様にマスクパターン40を介してレジスト膜30を露光する(図2(c))。レジスト膜30をパターン様に現像し(図2(d))、次いで、他の膜50をエッチングする(図2(e))。最後に、他の膜50を介して導電性樹脂組成物層10上に形成されたレジスト膜30を剥離する、この段階で剥離剤が導電性樹脂組成物層10と接するので、導電性樹脂組成物層10の導電性を損なわず表面抵抗の上昇を防ぐことができる(図2(f))。
本発明の積層体の製造方法は、図2(f)に示すように、他の膜50を介して導電性樹脂組成物層10上に設けられているレジスト膜30を介しての導電性樹脂パターンを有する積層体の製造にも使用することができる。
ここで、他の膜は特に限定されず、例えば、LCDや有機EL等の配線金属(アルミニウム、銅、銀、モリブデン、チタン、タンタル、クロム)、反射式LCDに用いられる外光の反射材(銀など)が例示できる。
【0065】
(6)導電性樹脂パターンを有する積層体の性能
本発明の方法によってパターニングした導電性樹脂パターンは単にパターニングしただけでなく、光の透過性、導電性、耐熱試験後の導電性の維持に優れており、本発明の積層体(導電性積層体)は全光線透過率、表面抵抗率、耐熱試験後の表面抵抗率に優れている。
【0066】
(全光線透過率)
導電性樹脂パターンと基体を含めた積層体の全光線透過率は80%以上であることが好ましく、84%以上がより好ましい。
全光線透過率は透明性の目安であり、前記全光線透過率が80%以上であると、透明性に優れ、ディスプレイ用途等の透明性を要求される材料への応用が可能である。透過する光が増加することにより、視認性が良好となるため、特にディスプレイ用途ではバックライト等の発光強度のレベルが高くなくても良好に性能を発揮でき、ディスプレイの寿命も長くなるので好ましい。
また、全光線透過率が上記範囲内となるように、導電性樹脂組成物等を適宜選択することが好ましい。また、上述したエッチング剤および剥離剤は、積層体の透過率の低下が少なく、高い透過率の積層体を得ることができるので好ましい。
【0067】
(表面抵抗率)
パターニングした直後の導電性樹脂パターンと基体を含めた積層体の表面抵抗率は2,000Ω/□以下であることが好ましく、1,500Ω/□以下がより好ましく、1,300Ω/□以下がさらに好ましく、1,200Ω/□以下が特に好ましく、10Ω/□〜1,100Ω/□が最も好ましい。
表面抵抗率が上記範囲内であると、液晶の画素電極などの透明電極としての使用において、スムーズに電流が流れ、回路設計が容易となること、また、抵抗膜式タッチパネルの電極などの用途においては、押圧時の導通が取りやすくなるため好ましい
また、表面抵抗率が上記範囲内となるように、導電性樹脂組成物等を適宜選択することが好ましい。また、上述したエッチング剤および剥離剤は、積層体の表面抵抗率の上昇が少なく、低い表面抵抗率の積層体を得ることができるので好ましい。
【0068】
(耐熱試験後の表面抵抗率)
導電性樹脂パターンと基体を含めた積層体の耐熱試験後の表面抵抗率としては、好ましくは10Ω/□〜2,000Ω/□である。ここで、前記耐熱試験は、80℃の熱環境下で240時間放置する。
表面抵抗率が2,000Ω/□以下であると、表面抵抗率が適当であり、タッチパネル用の基材として使用した場合に、荷重をかけても導電性が低下せず、誤作動の発生が少ないので好ましい。また、有機エレクトロルミネッセンス素子、無機エレクトロルミネッセンスランプ等の透明電極として使用した場合にも、所定の導電性を得ることができるので好ましい。一方、表面抵抗率が10Ω/□以上であると、導電性樹脂の使用量を抑制することができ、結果として積層体の製造コストが安価となり、経済性に優れるので好ましい。また、表面抵抗率が10Ω/□以上であると、透明導電性薄膜の膜厚を薄くすることができ、全光線透過率を低くすることができるので好ましい。
なお、前記表面抵抗率は、例えば、JIS K7150などに準拠して測定することができ、また、市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することもできる。
【0069】
(パターニング線幅)
本発明において、導電性樹脂組成物層をパターニングする方法は微細な線幅をパターニングするのに適している。具体的には1,000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましく、30μm以下がさらに好ましい。
露光機が高価になるため、パターニングする限界の線幅は1μm以上にするのが好ましい。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を挙げ本発明について説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0071】
[実施例1]
(導電性樹脂組成物の調製)
20.8部のポリスチレンスルホン酸を含む1,887部の水溶液中に、49部の1%硫酸鉄(III)水溶液、8.8部の3,4−エチレンジオキシチオフェン、および117部の10.9%のペルオキソ二硫酸水溶液を加えた。この反応混合物を18℃で、23時間撹拌した。次いで、この反応混合物に、154部の陽イオン交換樹脂および232部の陰イオン交換樹脂を加えて、2時間撹拌した後、イオン交換樹脂をろ別して、脱塩されたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体の水分散体(2,041部:固形分1.32%)を得た(以下、水分散体(A)と表記)。
【0072】
上記の水分散体(A)10.4部に、3.0部のポリエステル樹脂水分散体(ナガセケムテックス(株)製:ガブセンES−210)、1.0部のメラミン系架橋剤(住友化学(株)製:SumitexResinM−3)、20部のN−メチルホルムアミド、少量の界面活性剤、少量のレベリング剤、適量の水、および変性エタノールを加え、1時間撹拌したのち、400meshのSUSにてろ過し、導電性樹脂組成物を得た。
【0073】
透明ガラス基体として青板丸ガラス(JIS−R3202)を使用し、ミカサ(株)製ミカサコーターで、700rpm、30秒の条件にて、上記導電性樹脂組成物を塗布し、115℃のホットプレートで15分乾燥させ、導電性積層体を得た。
次いで、ポジ形フォトレジストとして、ナフトキノンジアジド化合物とクレゾールノボラック樹脂を含むレジスト(東亞合成(株)製、TRP−43)をスピンコーターを用いてコーティングし、90℃で15分間プリベークを行って、膜厚1μmのレジスト層を形成した。
このレジスト層付のテスト基板の中央に、遮光部分が50mm角のフォトマスクを置き、露光装置((株)ハイテック製)を用いて100mJ/cm2で露光し、0.5重量%水酸化カリウム(KOH)水溶液にて現像し、水洗後、乾燥してレジストパターンを形成した。
【0074】
レジストパターン付のテスト基板に対して、レジストパターンをマスクとして、10重量%の硝酸セリウムアンモニウムと10重量%の硝酸との混合物であるエッチング剤を用いて、30℃にて1分間導電性樹脂組成物層をエッチング処理し、水洗して導電性樹脂組成物のパターンを形成した。
最後に、導電性樹脂組成物上のレジストパターンを、剥離剤として700mlのγ‐ブチロラクトンを1リットルのビーカーに入れ撹拌羽で400回転/分で撹拌しながら10℃にて1分間浸漬して剥離した。その後洗浄液として700mlのイオン交換水を1リットルのビーカーに入れ撹拌羽で400回転/分で撹拌しながら10℃にて1分間浸漬して洗浄した。洗浄した基板を冷風で乾燥させた。
これによりテスト基板中央に50mm角にパターニングした導電性高分子を有するテスト基板Aを1枚得た。
該テスト基板Aについて、以下の測定と試験を行った。
【0075】
<全光線透過率測定>
テスト基板中央に存在する50mm角の導電性樹脂パターン部分に対してヘイズメーター(スガ試験機(株)製、ヘイズコンピューターHGM−2B)でガラス基体を含む全光線透過率を測定した。全光線透過率は、JIS K7150に従い測定した。
【0076】
<耐熱性試験>
テスト基板中央に存在する50mm角の導電性樹脂パターンの表面抵抗を表面抵抗計((株)ダイアインスツルメント製、ロレスターGP MCP−T600)で測定しパターニング直後の表面抵抗率とした。次にテスト基板に対して乾燥炉にて80℃で240時間の耐熱試験を行った耐熱試験後に表面抵抗計で表面抵抗率を測定し、耐熱試験後の表面抵抗率とした。
これらの結果を表1に記載した。
【0077】
[実施例2]
レジスト剥離液をγ‐ブチロラクトン50重量%N−メチル−2−ピロリドン重量50%にした以外は、実施例1と同じ操作を行い、その結果を表1に記載した。
【0078】
[実施例3]
ガラス基体の種類をJIS−R3202で定められたものとし、導電性樹脂組成物の塗工方法をNo.8のワイヤーバーにて、上記導電性樹脂組成物を塗布し、130℃の送風乾燥機で15分乾燥させたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、その結果を表1に記載した。
【0079】
[実施例4]
ガラス基体の種類をJIS−R3202で定められたものとし、導電性樹脂組成物の塗工方法をNo.8のワイヤーバーにて、上記導電性樹脂組成物を塗布し、130℃の送風乾燥機で15分乾燥させたこと以外は、実施例2と同じ操作を行い、その結果を表1に記載した。
【0080】
[実施例5]
ガラス基体の種類をコーニング#1737で定められたものとし、導電性樹脂組成物の塗工方法をNo.8のワイヤーバーにて、上記導電性樹脂組成物を塗布し、130℃の送風乾燥機で15分乾燥させたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、その結果を表1に記載した。
【0081】
[実施例6]
ガラス基体の種類をコーニング#1737で定められたものとし、導電性樹脂組成物の塗工方法をNo.8のワイヤーバーにて、上記導電性樹脂組成物を塗布し、130℃の送風乾燥機で15分乾燥させたこと以外は、実施例2と同じ操作を行い、その結果を表1に記載した。
【0082】
[比較例1]
パターニング方法を特開2004−14215に準ずる条件にて、リフトオフ処理とした以外は実施例1と同じ測定と試験を行い、その結果を表1に記載した。
すなわち、ポジ型感放射線性樹脂組成物層として、29.6重量部のクレゾールノボラック樹脂(m体およびp体の混合物)と、7.4重量部の2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルと、0.1重量部のフッ素系界面活性剤と、63.0重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを混合し、得られた混合物を用い、基板上にスピンコーターを用いて2,500rpmで30秒間の条件で塗布し、ホットプレートにて90℃で2分間、加熱・乾燥させた。
このポジ型感放射線性樹脂組成物層が形成された基板にフォトマスクを載置し、キヤノン(株)製露光機PLA−501Fを用い、150mJ/cm2の露光量でコンタクト露光した。次いで、これを23℃の現像液(2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液)に1分間浸漬して、露光部分を溶解・除去し、水洗することで、ポジ型感放射線性樹脂組成物の所定のパターンを形成した。
次に、このポジ型感放射線性樹脂組成物で形成されたパターンを有する基板表面に、上記導電性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて700rpmで8秒間の条件で塗布し、ホットプレートにて115℃で5分間、加熱・乾燥させた。
最後に、基板を23℃の剥離剤(ナガセケムテックス(株)製剥離剤N−321(1級アミン水溶液))に1分間浸漬して、該パターンの感放射線性樹脂組成物を溶解させ、これを水洗しパターンを得た。
【0083】
【表1】

【0084】
[実施例7]
透明基体としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:188μm)を用い、グラビアコート方式にて、実施例1と同じ導電性樹脂組成物をウェット膜厚10μmで塗布し、130℃で1分乾燥させた。その後、90℃で24時間エージング処理を行うことにより、導電性積層体を得た。
その他は実施例1と同じ操作でテスト基板中央に50mm角にパターニングした導電性樹脂パターンを有するテスト基板Bを2枚得た。
該テスト基板B2枚について、実施例1と同じ測定と試験を行い、その結果を表2に記載した。
【0085】
[実施例8]
レジスト剥離液をn−メチルピロリドンにした以外は実施例7と同じ操作を行い、その結果を表2に記載した。
【0086】
[比較例2]
レジスト剥離液をモノエタノールアミンにした以外は実施例7と同じ操作を行い、その結果を表2に記載した。パターニング後の表面抵抗が2,000Ω/□を超えたので耐熱試験は行わなかった。
【0087】
【表2】

【0088】
[実施例9]
エッチング剤を硫酸セリウムアンモニウム6重量%と硫酸6重量%に調整したものにした以外は実施例7と同じ操作を行い、その結果を表3に記載した。
【0089】
[実施例10]
エッチング剤を次亜塩素酸ナトリウム(東亞合成(株)製、アロンクリンRLB10)と硫酸を用いて有効塩素が0.54重量%でpH5.6に調整したものにした以外は実施例7と同じ操作を行い、その結果を表3に記載した。
【0090】
【表3】

【0091】
[実施例11]
フォトマスクを最小線幅が2μmのもの(L/S=2/20)にした以外は実施例7と同じ操作を行った。
パターニング後の導電膜の線幅を顕微鏡((株)キーエンス製のレーザー式表面形状観察顕微鏡 VF−7510)で測定したところ、パターニングできた線幅は4μmのもの(L/S=4/20)で、実測値は3.9μmだった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によりフレキシブルで全光線透過率かつ低表面抵抗でありながら耐熱性に優れた、パターニングした導電膜を持つ導電性積層体が得られる。この導電性積層体はタッチパネルや有機ELなどのフレキシブルなディスプレイの実用化を推進する。
【符号の説明】
【0093】
10 導電性樹脂組成物層
20 透明基体
30 レジスト膜
40 マスクパターン
50 他の膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)透明基体、および、該透明基体の少なくとも一面に設けられた導電性樹脂組成物層を有する導電性積層体を準備する工程、
(b)前記導電性樹脂組成物層上にレジストパターンを形成する工程、
(c)硝酸セリウムアンモニウム、硫酸セリウムアンモニウム、および、次亜塩素酸塩よりなる群から選択された少なくとも1種類を含有するエッチング剤を用いてレジストパターン非形成部の導電性樹脂組成物層を除去する工程、並びに、
(d)レジストパターンを、窒素原子を含有しない非プロトン性有機溶剤、並びに、化学構造中に窒素原子を有し、かつ、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物および有機第四アンモニウム塩以外の有機溶剤よりなる群から選択された少なくとも1種の有機溶剤を含有する剥離剤により除去する工程、をこの順で含むことを特徴とする
導電性樹脂パターンを有する積層体の製造方法。
【請求項2】
前記導電性樹脂組成物が、ポリ(3,4−二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体を含む、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法によって得られた積層体。
【請求項4】
全光線透過率が80%以上、かつ、表面抵抗率が2,000Ω/□以下である、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
80℃の熱環境下で240時間放置した後の表面抵抗率が2,000Ω/□以下である、請求項3または4に記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−161013(P2010−161013A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3579(P2009−3579)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【出願人】(000215615)鶴見曹達株式会社 (49)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】