説明

導電性樹脂組成物、及び導電性フィルムの製造方法

【課題】本発明は、外観良好で高倍率延伸後も導電性低下の少ない導電性フィルムを形成できる導電性樹脂組成物、および生産性良好な導電性フィルムの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)と、カーボンブラック(B)と、樹脂(C)とを含む樹脂組成物であって、樹脂(C)のガラス転移温度が熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度よりも低く、カーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーが、カーボンブラック(B)と熱可塑性樹脂(A)との界面自由エネルギーよりも低く、カーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーが、0〜50mN/mであることを特徴とする導電性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂組成物、および二軸延伸の導電性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂に導電性を付与した導電性樹脂組成物は、電子部品包装容器用途、画像形成装置用中間転写ベルト、帯電(除電)ブラシ用途、衣料用途など様々な分野に展開されている。
【0003】
そして導電性物質としては、カーボンブラック、炭素繊維などの炭素系材料、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウムなどの金属酸化物、銅、銀、ニッケルなどの金属粉が知られており、中でも安価で導電性の良好なカーボンブラックが導電剤として使用されるのが一般的である。
【0004】
ところで、熱可塑性樹脂からなるフィルムに導電性を付与する方法としては、主に塗工方式または練り込み方式が知られている。
【0005】
塗工方式はフィルム表面にカーボンブラックなどの導電性物質を含む塗工剤を塗布し皮膜を形成する方法である。この方式によると、ピンホールや塗工ムラを完全に避けることが難しく品質性能が低いうえに不安定になりがちである。また、基材タック性の強い溶剤型塗工剤を使用することから基材を劣化させることも多い。更に、練り込み方式に比べて、製造工程が煩雑かつ製造コストが高価であるという問題点が存在する。
【0006】
一方、練り込み方式は、カーボンブラックなどの導電性物質を溶融させた熱可塑性樹脂中に練り込み、成形する方法である。この方式によると、塗工式に比べて製造工程が比較的簡便かつ製造コストが安価であるという利点があるが、高導電性発現のためには、導電性物質を大量に添加する必要が有るため、外観良好な成形体を得ることが難しいという問題が存在する。
【0007】
また、熱可塑性樹脂からなるフィルムに延伸加工を施した延伸フィルムは、優れた機械物性や光学特性を有することから、高付加価値フィルムとして多方面で利用されている。しかしながら、カーボンブラックにより導電性を付与したフィルムは、この延伸によって導電性が低下する。この理由は、フィルムを延伸することによって、樹脂中に分散しているカーボンブラックによる導電ネットワーク構造が破壊されるためであると考えられる。
【0008】
前記の問題を解決するために、不飽和カルボン酸または誘導体を添着したカーボンブラックを熱可塑性樹脂に配合してなる導電性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、低倍率(5倍)延伸下におけるフィルムの表面抵抗率が記載されているだけであり、満足な導電性は得られていない。また、不飽和カルボン酸をカーボンブラックに添着する際に、アセトンやトルエン等の有機溶媒を使用するため、環境面において問題がある。更に、不飽和カルボン酸誘導体を添着したカーボンブラックを使用するために、製造工程が煩雑化し、製造コストが高くなるという問題点がある。
【0009】
また、前記問題を解決するために、マトリックス樹脂中に炭素繊維を分散させてなる半導電性樹脂組成物を用いた成形体が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、一般的に炭素繊維は比表面積が大きく凝集エネルギーが高いため、その凝集を抑制することは困難である。さらに炭素繊維の凝集を抑制するために特定の比表面積とアスペクト比を有する炭素繊維を使用しているが、依然として成形体中の凝集塊の存在割合は多く、外観良好な成形体は得られていない。また、樹脂との混練中に炭素繊維の一部が破断されるため、安定的な導電性を有する成形体は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−81925号公報
【特許文献2】特開2009−126985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、外観良好で高倍率延伸後も導電性低下の少ない導電性フィルムを形成できる導電性樹脂組成物、および生産性良好な導電性フィルムの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決するため、鋭意研究した。
すなわち、本発明の第1の発明は、熱可塑性樹脂(A)と、カーボンブラック(B)と、樹脂(C)とを含む樹脂組成物であって、
樹脂(C)のガラス転移温度が熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度よりも低く、
カーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーが、カーボンブラック(B)と熱可塑性樹脂(A)との界面自由エネルギーよりも低く、
カーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーが、0〜50mN/mであることを特徴とする導電性樹脂組成物に関する。
【0013】
本発明の第2の発明は、カーボンブラック(B)のDBP吸油量が30〜750ml/100gであることを特徴とする上記発明の導電性樹脂組成物に関する。
【0014】
本発明の第3の発明は、樹脂(C)が、熱可塑性エラストマーまたはポリエチレンであることを特徴とする上記発明の導電性樹脂組成物に関する。
【0015】
本発明の第4の発明は、上記発明の導電性樹脂組成物を含むことを特徴とする導電性マスターバッチに関する。
【0016】
本発明の第5の発明は、上記発明の導電性樹脂組成物を用いて形成され、かつ延伸されてなる導電性フィルムに関する。
【0017】
本発明の第6の発明は、上記発明の導電性樹脂組成物を含む樹脂組成物を溶融混練する工程(1)、次に、フィルムを形成する工程(2)、更に、前記フィルムを延伸する工程(3)を含むことを特徴とする導電性フィルムの製造方法に関する。
【0018】
本発明の第7の発明は、前記工程(3)において、フィルムを二軸延伸することを特徴とする上記発明の導電性フィルムの製造方法に関する。
【0019】
本発明の第8の発明は、前記工程(3)において、フィルムの延伸倍率が面積比で1.5〜25倍であることを特徴とする上記発明の導電性フィルムの製造方法に関する。
【0020】
本発明の第9の発明は、上記発明の製造方法で得られた導電性フィルムに関する。
【0021】
本発明の第10の発明は、上記発明の導電性フィルムの表面抵抗率が、1×107Ω/□以下であることを特徴とする導電性フィルムに関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、高倍率延伸後も導電性低下の少ない導電性樹脂組成物、これを用いた外観良好な導電性フィルム及び生産性良好な導電性フィルムの製造方法が実現できた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の導電性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、カーボンブラック(B)と、樹脂(C)とを含むことを特徴とする。また導電性樹脂組成物は、二軸延伸される導電性フィルムの形成用に用いることが好ましい。本発明では、樹脂(C)のガラス転移温度が熱可塑性樹脂(A)より低いものを用い、さらにカーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーが、カーボンブラック(B)と熱可塑性樹脂(A)との界面自由エネルギーよりも低く、かつカーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーが、0〜50mN/mであることが重要である。これにより導電性樹脂組成物中のカーボンブラック(B)が樹脂(C)中に偏在するため、カーボンブラック(B)間の距離を短くできる。そして本発明の導電性樹脂組成物は二軸延伸される導電性フィルムに用いた場合に、単にカーボンブラック(B)を熱可塑性樹脂(A)中に均質に練り込んだ場合と比較して、延伸時にカーボンブラック(B)による導電ネットワーク構造が破壊されにくいため、導電性フィルムの延伸後の導電性の低下を最小限に抑えることができる。
以下、本発明について具体的に説明する。
【0024】
<熱可塑性樹脂(A)>
本発明において熱可塑性樹脂(A)としては、加熱溶融により成形可能な樹脂であれば特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂やこれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい熱可塑性樹脂としては、安価かつ加工性に優れ、耐熱性、機械物性、耐薬品性、軽量性などの特徴により電子部品包装材、家電や自動車部品、繊維等幅広く使用されている結晶性ポリプロピレンが挙げられる。
【0025】
また、熱可塑性樹脂(A)はメルトフローレート(以下、MFRという)(JIS K 7210に準拠し、230℃、荷重2.16kgで測定)が、0.1〜100g/10分が好ましく、より好ましくは1〜50g/10分である。MFRが0.1g/10分より小さいと、導電性樹脂組成物の溶融粘度が著しく増加し、フィルムの成形性が悪化する恐れがある。MFRが100g/10分を超えると、カーボンブラック(B)の樹脂中への溶融分散が難しく、外観良好なフィルムが得られないことがある。
【0026】
本発明において熱可塑性樹脂(A)の使用量は、導電性樹脂組成物100重量%中、40〜90重量%であることが好ましく、47〜85重量%がより好ましく55〜80重量%が特に好ましい。40重量%より少ないとフィルムの延伸による機械物性向上の効果が十分に発揮されない場合がある。また、フィルムの耐熱性が低下し、延伸時にフィルムが破れる場合がある。一方、90重量%より多いとカーボンブラック(B)及び樹脂(C)の分散が困難になるため、安定的な導電性を有するフィルムが得られないことがある。
【0027】
また、上記熱可塑性樹脂(A)の使用量は、樹脂(C)の使用量に比べて多量であることが好ましい。熱可塑性樹脂(A)の使用量が、樹脂(C)の使用量に比べて少量である場合、樹脂(C)中に偏在したカーボンブラック(B)間の距離が熱可塑性樹脂(A)の使用量が樹脂(C)の使用量に比べて多量である場合と比べて長くなるため、フィルム延伸後に導電性が低下しすぎることがある。
【0028】
<カーボンブラック(B)>
本発明においてカーボンブラック(B)は、アスペクト比が1〜5の範囲にある粒子状の形態であることが好ましい。具体的には、例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック並びにナフサなどの炭化水素を水素及び酸素の存在下で部分酸化して、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスを製造する際に副生するカーボンブラック、あるいはこれを酸化または還元処理したカーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレンなどが挙げられる。特に好ましいカーボンブラックとしては、デンカブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。カーボンブラックは平均粒子径が50nm以下のものが好ましく使用される。なお、本発明においてアスペクト比とは、カーボンブラック(B)が粒子状の形態である場合、カーボンブラックのストラクチャーを構成する球状成分の長軸の長さを球状成分の短軸の長さで割った値を指す。一方、カーボンブラック(B)が繊維状の形態である場合、繊維長を繊維径で割った値を指す。
【0029】
更に、上記カーボンブラック(B)のDBP吸油量は、30〜750ml/100gが好ましく、100〜400ml/100gがより好ましい。DBP吸油量が30ml/100g未満のカーボンブラックでは、樹脂中への溶融分散は良好であるが、目的とする導電性が得られないことがある。DBP吸油量が750ml/100gを超えるカーボンブラックでは、目的とする導電性は得られるが、樹脂中への溶融分散が難しく、カーボンブラックの未分散凝集塊が残り、フィルム形成過程及び延伸過程における安定性が著しく低下する傾向がある。
なお、本発明においてDBP吸油量とは、カーボンブラック粒子間の化学的ないし物理的結合による複雑な凝集形態(ストラクチャー)の尺度で、カーボンブラック100g当りに包含することのできるジブチルフタレート(DBP)の量(ml)であって、この数値が大きいカーボンブラックほど優れた導電性能を示す。
【0030】
更に、本発明においては、カーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーがカーボンブラック(B)と熱可塑性樹脂(A)との界面自由エネルギーより低いことが必要である。カーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーが、カーボンブラック(B)と熱可塑性樹脂(A)との界面自由エネルギーより高くなると、フィルム延伸後に導電性が低下しすぎることがある。これは、カーボンブラック(B)が樹脂(C)に比べて熱可塑性樹脂(A)中に偏在しやすくなり、樹脂組成物中における導電ネットワーク構造の形成が不十分であるためと考えられる。
【0031】
更に、本発明においては、カーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーが0〜50mN/mであることが必要である。更に好ましくは0〜40mN/mであり、特に好ましくは0〜30mN/mである。カーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーが50mN/mを超えると、カーボンブラック(B)の樹脂(C)への分散が悪化する傾向がある。その結果、樹脂組成物中に導電ネットワーク構造が形成されにくくなるため、フィルム延伸後に導電性が低下しすぎることがある。
【0032】
カーボンブラック(B)を複数種類用いる場合は、カーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーが、カーボンブラック(B)と熱可塑性樹脂(A)との界面自由エネルギーよりそれぞれ低く、カーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーがそれぞれ50mN/m以下であることが好ましい。1種類でも上記条件を満たさないと、カーボンブラック(B)の樹脂(C)への分散が悪化する傾向がある。その結果、樹脂組成物中に導電ネットワーク構造が形成されにくくなるため、フィルム延伸後に導電性が低下しすぎることがある。
【0033】
また、上記界面自由エネルギーを調整するため、カーボンブラックの表面処理をしても良い。
なお、本発明において界面自由エネルギーとは試料間の親和性を表すファクターであり、各試料の表面自由エネルギーより拡張Fowkesの式を用いて算出されるものである。界面自由エネルギーの値が小さいほど試料間の親和性が高いことを示す。
各試料の表面自由エネルギーは、自動接触角計(協和界面科学(株)製、DCA−VZ)及び表面自由エネルギー解析ソフトウェア(協和界面科学(株)製、EG−11)を用いて測定した。具体的には、まず、上記接触角計(環境温度:23℃、50%RH)を使用し、標準液を試料表面に滴下して接触角を測定した。標準液として非極性液体、極性液体、水素結合性液体の3種類の液体が必要であり、本発明においては非極性液体としてヘキサデカン、極性液体としてヨウ化メチレン、水素結合性液体として水を用いて測定した値を用いた。
次いで、上記表面自由エネルギー解析ソフトウェアを使用し、得られた接触角の測定結果に基づき、各試料の表面自由エネルギーを解析した。最後に、得られた表面自由エネルギーの測定結果に基づき、拡張Fowkesの式(日本接着協会誌、8(3)、131 (1972))を用いて、各試料間の界面自由エネルギーを算出した。
【0034】
本発明においてカーボンブラック(B)の使用量は、導電性樹脂組成物100重量%中、5〜30重量%であることが好ましく、5〜28重量%がより好ましく5〜25重量%が特に好ましい。5重量%より少ないとフィルム形成の際、良好な導電性が得られない恐れがある。一方、30重量%より多いとカーボンブラックの分散不良が生じ、外観良好なフィルムを得ることができない可能性がある。また、押出時やフィルム成形時にカーボンブラックの未分散凝集塊による目詰まりが発生し、生産効率が悪化することがある。
【0035】
<樹脂(C)>
本発明において樹脂(C)としては、熱可塑性エラストマーやポリエチレンが好ましい。そして熱可塑性樹脂(A)で使用する樹脂とは異種で、熱可塑性樹脂(A)とは非相溶の樹脂を使用することが好ましい。また、樹脂(C)のガラス転移温度が熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度よりも低く、かつ、カーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーが、カーボンブラック(B)と熱可塑性樹脂(A)との界面自由エネルギーよりも低く、かつ、カーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーが、50mN/m以下であることが必要である。
【0036】
熱可塑性エラストマーとは、加熱により軟化して流動性を示すが、常温ではゴム弾性を示す材料を指す。分子構造としては、ゴム弾性を発揮するソフトセグメントと高温では流動するが常温で塑性変形を防止するハードセグメントから成り、ハードセグメントが会合又は凝集してミクロ相分離構造を形成しているものを指す。例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)やエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)のようなオレフィン系エラストマー、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS)やスチレン−エチレン−ブタジエン共重合体(SEBS)から成るスチレン系エラストマー、シリコン系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ブタジエン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ナイロン系エラストマー、エステル系エラストマー、フッ素系エラストマー、およびそれらのエラストマーに反応部位(二重結合、無水カルボキシル基等)を導入した変性物などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
前記熱可塑性エラストマーには、硫黄等で分子鎖間を架橋した、いわゆる架橋ゴムも含めることができる。架橋ゴムとしては、例えば、天然ゴム、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴムなどの架橋化物を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明においてポリエチレンとは、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、密度0.90未満の超低密度ポリエチレン(VLDPE)及びエチレンと他のα−オレフィン、不飽和カルボン酸またはその誘導体の中から選ばれる2種以上の化合物の共重合体、例えばエチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等を挙げることが出来る。
【0039】
本発明における樹脂(C)のガラス転移温度(以下、Tgともいう)は、熱可塑性樹脂(A)のTgよりも低いことが必要であり、好ましくは熱可塑性樹脂(A)のTgに対して10℃以上低温であり、より好ましくは20℃以上低温である。樹脂(C)のTgが熱可塑性樹脂(A)のTgよりも高い場合又は樹脂(C)のTgが熱可塑性樹脂(A)のTgよりも10℃未満低温である場合、延伸後に導電性が低下する傾向がある。これは、カーボンブラック(B)の樹脂(C)への偏在が不十分であり、樹脂組成物中に十分に発達した導電ネットワーク構造を形成できないためと考えられる。
なお本発明においてTgは、示差走査型熱量計(セイコーインスツルメンツ社製、DSC220)により窒素雰囲気下においてJIS K 7121に準拠して測定を行った。容量50μlの密閉型サンプル容器に15〜20mgの試料を詰め、昇温速度10℃/分にて測定を行った。具体的には、得られたDSC曲線の階段状変化を示す部分において、各ベースラインの延長した直線上から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をTgとした。またTgが複数存在する場合、本発明においては最も低温の値を採用するものとする。
【0040】
樹脂(C)の使用量は、本発明の目的とする導電性フィルムの特性を損なわない範囲で用いることが好ましい。すなわち導電性樹脂組成物100重量%中に、5〜30重量%が好ましく、10〜25重量%がより好ましく、15〜20重量%が特に好ましい。樹脂(C)の使用量が5重量%未満であると、フィルム延伸後に導電性が低下しすぎることがある。これは、樹脂(C)中に偏在するカーボンブラック(B)の割合が減少し、フィルム中に十分に発達した導電ネットワーク構造を形成できなくなるためと考えられる。逆に、樹脂(C)の添加量が30重量%を超えると、フィルムの耐熱性が低下し、延伸時にフィルムが破れる場合がある。
【0041】
<導電性樹脂組成物>
本発明の導電性樹脂組成物は、上記(A)〜(C)成分を混合し溶融混練して得られた溶融混練物と希釈樹脂との混合物、いわゆるマスターバッチや上記(A)〜(C)成分を混合し溶融混練して得られた溶融混練物、いわゆるコンパウンドの形態が好ましい。
【0042】
また、前記導電性樹脂組成物には、前記(A)〜(C)の主成分以外に、導電性フィルムの成形性、ブロッキング性、導電性に影響を及ぼさない範囲で、1種類以上の添加剤を適宜混合しても良い。使用する添加剤としては、特に制限は無く、例えば、一般に使用される各種レベリング剤、染料、顔料、顔料分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘性改質剤、耐光安定剤、金属不活性剤、過酸化物分解剤、充填剤、補強剤、可塑剤、潤滑剤、防食剤、防錆剤、乳化剤、鋳型脱色剤、蛍光性増白剤、有機防炎剤、無機防炎剤、滴下防止剤、溶融流改質剤、帯電防止剤などを挙げることができる。
【0043】
<導電性フィルム>
本発明の導電性フィルムとは、前記導電性樹脂組成物を用いて形成され、かつ延伸されてなる導電性フィルムである。導電性フィルムの製造方法は、導電性樹脂組成物を含む樹脂組成物を溶融混練する工程(1)、次に、フィルムを形成する工程(2)、更に、前記フィルムを延伸する工程(3)を含むことが好ましい。
以下、各工程について具体的に説明する。
【0044】
まず始めに、導電性樹脂組成物を含む樹脂組成物を溶融混練する工程(1)について述べる。本発明において、導電性樹脂組成物を含む樹脂組成物を溶融混練する方法としては、熱可塑性樹脂(A)および樹脂(C)の融点より高温で溶融混練する方法であれば特に限定されない。溶融混練に用いられる装置としては、特に制限されるものではなく、公知の溶融混練装置が挙げられ、例えば単軸押出機や二軸押出機、バンバリーミキサーなどが挙げられるが、高い分散能力と生産性を有することから二軸押出機による混練が望ましい。二軸押出機に使用するスクリューエレメントとしては、カーボンブラックの凝集とストラクチャーの破壊を防ぐため、せん断を低減したスクリューエレメントを使用することが好ましい。また、加圧ニーダーのような、高せん断力が掛からなくて、時間をかけて分散が達成できるものも好ましく用いられる。
【0045】
このとき溶融混練温度としては、樹脂組成により異なるが、熱可塑性樹脂(A)として結晶性ポリプロピレンを用いた場合、180〜230℃、更には200℃〜220℃で好ましく行われる。溶融混練温度が180℃未満の場合、熱可塑性樹脂(A)が十分に可塑化されず、熱可塑性樹脂(A)とカーボンブラック(B)(又は樹脂(C))との混練が不十分になることがある。逆に、230℃を超える場合、熱可塑性樹脂(A)及び樹脂(C)の劣化が必要以上に進行し、フィルム強度が低下することがある。
【0046】
上記導電性樹脂組成物を含む樹脂組成物を溶融混練する順序としては、初めに(A)と(B)とを混合し、溶融混練後、次いで(C)を添加して更に溶融混練しても良いし、又は、初めに(B)と(C)とを混合し、溶融混練後、次いで(A)を添加して更に溶融混練しても良いし、又は、(A)、(B)、(C)を同時に混合し、溶融混練しても良い。
更に(B)を複数種類用いる場合は、まず、(B)1種類と(A)又は(C)とを混合し、溶融混練して溶融混練物を作製した後に、複数種類の(B)(A)又は(B)(C)溶融混練物を混合し、再度溶融混練しても良い。
【0047】
次に、導電性フィルムを形成する工程(2)について述べる。本発明で用いられる導電性フィルムの形成方法については特に制限されるものではなく、例えばTダイ法、インフレーション法などの溶融押出法、カレンダー法などが挙げられる。
【0048】
本発明の導電性フィルムの形成温度は樹脂組成により異なるが、熱可塑性樹脂(A)として結晶性ポリプロピレンを用いた場合、前記導電性樹脂組成物の溶融混練時の温度と同じ温度で行うことができる。
【0049】
最後に、前記導電性フィルムを延伸する工程(3)について述べる。本発明で用いられる導電性フィルムの延伸方法については特に制限しないが、例えば、湿式一軸延伸法、乾式一軸延伸法、テンター式逐次二軸延伸法、テンター式同時二軸延伸法、チューブラー式二軸延伸法などが挙げられる。
【0050】
また、延伸温度は樹脂組成により異なるが、熱可塑性樹脂(A)として結晶性ポリプロピレンを用いた場合、通常120〜150℃、好ましくは125℃〜145℃で行われる。上記範囲を外れると、均一にフィルムを延伸することが困難になる傾向がある。
【0051】
本発明で用いられる導電性フィルムの延伸倍率は1.5〜25倍が好ましく、4〜16倍の範囲内がより好ましい。なお本発明において延伸倍率とは、未延伸フィルムを流れ方向(以下、MD方向ともいう)に延伸したときの倍率と垂直方向(以下、TD方向ともいう)に延伸したときの倍率とを掛けた値(単位:倍)を差す。
延伸倍率が1.5倍未満であると、十分な機械物性を有するフィルムを得ることは難しい。一方、延伸倍率が25倍を超えると、延伸後に導電性が大きく低下する恐れがある。また、延伸時にフィルムが破損する可能性がある。
更に二軸延伸の場合、MD,TD各方向の延伸倍率はそれぞれ1倍より大きく5倍以下が好ましい。MD,TD各方向の延伸倍率が5倍を超えると、延伸後にこの方向における導電性が大きく低下する恐れがある。また、延伸時にフィルムが破損する可能性がある。
【0052】
また、上記製造方法で得られた本発明の導電性フィルムの表面抵抗率は、1×107Ω/□以下、更には1×106Ω/□以下が好ましい。延伸後における導電性フィルムの表面抵抗率が1×107Ω/□を超えると、フィルムを各種部材として使用した場合、十分な帯電防止効果が発揮されない場合が有る。
【0053】
本発明の成形体は、外観に優れ、その表面において優れた導電性を示し、フィルム、シート、容器、テープ、フラットヤーンなどに好適である。従って、精密電子部品、電子機器などの包装体、トレイなどの収容体、各種保護用部材、フレキシブルコンテナ材、磁気記録用テープなどとして有効である。
【実施例】
【0054】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例及び比較例において用いられる熱可塑性樹脂(A)と樹脂(C)のガラス転移温度、カーボンブラック(B)と熱可塑性樹脂(A)又は樹脂(C)との界面自由エネルギーについて表1にまとめた。
【0056】
また、実施例および比較例における導電性樹脂組成物の配合を表2および表3に示す。
【0057】
(実施例1)
(1)溶融混練
PP(熱可塑性樹脂(A))59.9重量部に対して、デンカブラック粒状品(カーボンブラック(B))40重量部と、イルガノックス1010(酸化防止剤)0.1重量部とをスクリュー直径32mm、L/D(スクリュー径/スクリュー長さ)=45.75の二軸押出機に供給し、シリンダー温度200℃〜230℃、スクリュー回転数230rpmの条件で溶融混練、押出してペレット状となし、カーボンマスターバッチ(CMB−1)を作製した。
上記CMB−1 52.5重量部に対して、SBS(ア)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドした。この混合物をスクリュー直径30mm、L/D(スクリュー径/スクリュー長さ)=42の二軸押出機に供給し、シリンダー温度200℃〜220℃、スクリュー回転数230rpmの条件で溶融混練、押出してペレット状となし、導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した。
【0058】
(2)フィルムの形成
上記導電性樹脂組成物をTダイ押出成形機((株)東洋精機製製作所、ラボプラストミル)に供給し、Lip開度0.35mm 120メッシュ、シリンダー温度200℃〜230℃、スクリュー回転数100rpmの条件で溶融混練、押出して厚さ0.1mmの導電性フィルムを作製した。
【0059】
(3)フィルムの延伸
上記導電性フィルムを二軸延伸装置((株)東洋精機製作所、EX−10B)を用いて、125℃、延伸速度500mm/分の条件で同時二軸延伸(延伸倍率9倍;MD方向の延伸倍率:3倍、TD方向の延伸倍率:3倍)し、導電性二軸延伸フィルムを得た。
【0060】
(4)フィルムの評価
上記導電性フィルムを以下の方法により評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0061】
[生産安定性]
フィルム成形時において、成形機内の樹脂圧の上昇値が1時間後に3MPa未満の場合を◎(特に良好)、3MPa以上5MPa未満の場合を○(良好)、5MPa以上7MPa未満の場合を△(やや不良)、7MPa以上の場合を×(不良)とした。7MPa以上の場合、メッシュの目詰まりにより樹脂温度が上昇し樹脂劣化が進行する傾向があるため(かつ吐出が安定せず厚み一定のフィルムが得られなくなる傾向があるため)、Tダイヘッドを外してメッシュを交換する必要が有り、生産効率が特に低下する。
【0062】
[外観]
延伸前のフィルム10cm角(100cm2)当たりのブツ個数を目視により数えて評価した。ブツは形状が円、楕円、四角等の各種形状で、フィルムの平面の最長の長さが
0.1mm以上の突起物とした。ブツが50個未満の場合を◎(特に良好)、50個以上75個未満の場合を○(良好)、75個以上100個未満の場合を△(やや不良)、100個以上の場合を×(不良)とした。
【0063】
[導電性]
延伸前及び延伸後のフィルムについて、恒温恒湿室(23℃、50%RH)において表面抵抗計(シムコジャパン社製、ワークサーフェイステスターST−3、印加電圧15V以下)を用いて表面抵抗率を測定した。なお測定は、恒温恒湿室に1日間静置したフィルムを用いて1試料につき3回測定し、その平均値を求めた。
【0064】
(実施例2)
実施例1で得られたCMB−1 52.5重量部とSBS(イ)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0065】
(実施例3)
実施例1で得られたCMB−1 52.5重量部とSEBS(ア)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0066】
(実施例4)
実施例1で得られたCMB−1 52.5重量部とSEBS(イ)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0067】
(実施例5)
実施例1で得られたCMB−1 52.5重量部とポリウレタン(ア)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0068】
(実施例6)
実施例1で得られたCMB−1 52.5重量部とポリウレタン(イ)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0069】
(実施例7)
実施例1で得られたCMB−1 52.5重量部とポリエーテル(ア)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0070】
(実施例8)
実施例1で得られたCMB−1 52.5重量部とポリエーテル(イ)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0071】
(実施例9)
実施例1で得られたCMB−1 52.5重量部とEPDM(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0072】
(実施例10)
実施例1で得られたCMB−1 52.5重量部とLDPE(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0073】
(実施例11)
実施例1で得られたCMB−1 37.5重量部とSBS(ア)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))47.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):69.96重量%、カーボンブラック(B):15重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.04重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0074】
(実施例12)
実施例1で得られたCMB−1 75重量部とSBS(ア)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))10重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):54.92重量%、カーボンブラック(B):30重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.08重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0075】
(実施例13)
実施例1で得られたCMB−1 52.5重量部とSBS(ア)(樹脂(C))10重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))37.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):68.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):10重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0076】
(実施例14)
実施例1で得られたCMB−1 52.5重量部とSBS(ア)(樹脂(C))25重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))22.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):53.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):25重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0077】
(実施例15)
PP(熱可塑性樹脂(A))84.93重量部に対して、ケッチェンブラックEC300−J(カーボンブラック(B))15重量部と、イルガノックス1010(酸化防止剤)0.07重量部とをスクリュー直径32mm、L/D(スクリュー径/スクリュー長さ)=45.75の二軸押出機に供給し、シリンダー温度200℃〜230℃、スクリュー回転数230rpmの条件で溶融混練、押出してペレット状となし、カーボンマスターバッチ(CMB−2)を作製した。
上記CMB−2 66.7重量部に対して、SBS(ア)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))18.3重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):74.95重量%、カーボンブラック(B):10重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0078】
(実施例16)
実施例15で得られたCMB−2 66.7重量部とポリウレタン(ア)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))18.3重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):74.95重量%、カーボンブラック(B):10重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0079】
(実施例17)
実施例15で得られたCMB−2 66.7重量部とLDPE(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))18.3重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):74.95重量%、カーボンブラック(B):10重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0080】
(実施例18)
PP(熱可塑性樹脂(A))59.9重量部に対して、#650B(カーボンブラック(B))40重量部と、イルガノックス1010(酸化防止剤)0.1重量部とをスクリュー直径32mm、L/D(スクリュー径/スクリュー長さ)=45.75の二軸押出機に供給し、シリンダー温度200℃〜230℃、スクリュー回転数230rpmの条件で溶融混練、押出してペレット状となし、カーボンマスターバッチ(CMB−3)を作製した。
上記CMB−3 52.5重量部に対して、SBS(ア)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0081】
(実施例19)
実施例18で得られたCMB−3 52.5重量部とポリウレタン(ア)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0082】
(実施例20)
実施例18で得られたCMB−3 52.5重量部とLDPE(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0083】
(比較例1)
実施例1で得られたCMB−1 52.5重量部に対して、希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))47.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):78.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0084】
(比較例2)
実施例1で得られたCMB−1 75重量部に対して、希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))25重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):69.92重量%、カーボンブラック(B):30重量%、酸化防止剤:0.08重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0085】
(比較例3)
実施例15で得られたCMB−2 66.7重量部に対して、希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))33.3重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):89.95重量%、カーボンブラック(B):10重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0086】
(比較例4)
実施例18で得られたCMB−3 52.5重量部に対して、希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))47.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):78.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0087】
(比較例5)
実施例1で得られたCMB−1 52.5重量部に対して、PS(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0088】
(比較例6)
実施例15で得られたCMB−2 66.7重量部に対して、PS(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))18.3重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):74.95重量%、カーボンブラック(B):10重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0089】
(比較例7)
実施例18で得られたCMB−3 52.5重量部に対して、PS(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))32.5重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):63.95重量%、カーボンブラック(B):21重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0090】
(比較例8)
PP(熱可塑性樹脂(A))84.93重量部に対して、VGCF(カーボンブラック(B))15重量部と、イルガノックス1010(酸化防止剤)0.07重量部とをスクリュー直径32mm、L/D(スクリュー径/スクリュー長さ)=45.75の二軸押出機に供給し、シリンダー温度200℃〜230℃、スクリュー回転数230rpmの条件で溶融混練、押出してペレット状となし、カーボンマスターバッチ(CMB−4)を作製した。
上記CMB−4 66.7重量部に対して、希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))33.3重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):89.95重量%、カーボンブラック(B):10重量%、樹脂酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0091】
(比較例9)
比較例8で得られたCMB−4 66.7重量部に対して、SBS(ア)(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))18.3重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):74.95重量%、カーボンブラック(B):10重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0092】
(比較例10)
比較例8で得られたCMB−4 66.7重量部に対して、PS(樹脂(C))15重量部と希釈樹脂としてPP(熱可塑性樹脂(A))18.3重量部とをドライブレンドして導電性樹脂組成物(各成分の重量比 熱可塑性樹脂(A):74.95重量%、カーボンブラック(B):10重量%、樹脂(C):15重量%、酸化防止剤:0.05重量%)を作製した以外は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製し、二軸延伸を行った。導電性フィルムの評価結果を表4に示した。
【0093】
【表1】

【0094】
[熱可塑性樹脂(A)]
PP:(株)プライムポリマー 結晶性ポリプロピレン樹脂 J105G MFR=9g/10分
【0095】
[カーボンブラック(B)]
電気化学工業(株) デンカブラック(粒状品) 粒子径=35nm DBP吸油量=160ml/100g アスペクト比≒1
ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株) ケッチェンブラックEC−300J 粒子径=40nm DBP吸油量=365ml/100g アスペクト比≒1
三菱化学(株) #650B 粒子径=22nm DBP吸油量=114ml/100gアスペクト比≒1
昭和電工(株) VGCF(気相法炭素繊維) 繊維径=150nm 繊維長=10〜20μm アスペクト比=10〜500
【0096】
[樹脂(C)]
SBS(ア):旭化成ケミカルズ(株)スチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマー タフプレン126S
SBS(イ):旭化成ケミカルズ(株)スチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマー アサフレックス805
SEBS(ア):旭化成ケミカルズ(株)水添スチレン−エチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマー タフテックH1043
SEBS(イ):旭化成ケミカルズ(株)水添スチレン−エチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマー タフテックH1221
ポリウレタン(ア):ディーアイシーバイエルポリマー(株)ポリウレタン系熱可塑性エラストマー パンデックスT−2190
ポリウレタン(イ):ディーアイシーバイエルポリマー(株)ポリウレタン系熱可塑性エラストマー パンデックスT−8190
ポリエーテル(ア):三洋化成工業(株)ポリエーテル系熱可塑性エラストマー ペレスタット230
ポリエーテル(イ):三洋化成工業(株)ポリエーテル系熱可塑性エラストマー ペレスタット6500
EPDM:JSR(株) エチレン−プロピレン−ジエンゴム EP57P
LDPE:旭化成ケミカルズ(株) 低密度ポリエチレン サンテックLD M2270
PS:日本ポリスチレン(株) ポリスチレン679
【0097】
[酸化防止剤]
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株) イルガノックス1010
【0098】
【表2】

【0099】
【表3】

【0100】
【表4】

【0101】
表4の結果から、比較例は、樹脂(C)が未添加の場合(比較例1〜4)、二軸延伸フィルムの表面抵抗率は1×1012Ω/□程度を示し、延伸によって導電性が大きく低下した。このとき生産安定性は良好〜やや不良、外観はやや不良〜不良であった。また、熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度より高いガラス転移温度を示す樹脂(C)を使用した場合(比較例5〜7)も、二軸延伸フィルムの表面抵抗率は1×1012Ω/□を示し、延伸によって導電性が大きく低下した。このとき生産安定性はやや不良〜不良、外観は不良であった。また、カーボンブラック(B)としてVGCF(気相法炭素繊維)を使用した場合(比較例8〜10)は、生産安定性、外観共に不良であり、延伸時に炭素繊維の身分散凝集塊を起点としてフィルムが破れたため、表面抵抗率を測定することは不可能であった。
一方、実施例は、熱可塑性樹脂(A)と、カーボンブラック(B)と、樹脂(C)とを含む導電性樹脂組成物から得られた導電性フィルムであるため、二軸延伸後も導電性を維持(1×107Ω/□以下)しており、外観、生産安定性についても共に良好であった(実施例1〜10)。また、カーボンブラック(B)の使用量を変化した場合(実施例11又は12)又は樹脂(C)の使用量を変化した場合(実施例13又は14)又はカーボンブラック(B)の種類・グレードを変化した場合(実施例15〜20)においても、二軸延伸後のフィルムは導電性を維持(1×107Ω/□以下)しており、外観、生産安定性についても共に良好であった。
以上のことから、本発明により、外観良好で高倍率延伸後も導電性低下の少ない導電性フィルムを形成できる導電性樹脂組成物、および生産性良好な導電性フィルムの製造方法を提供できる。従って、本発明の産業上の利用価値は極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)と、カーボンブラック(B)と、樹脂(C)とを含む樹脂組成物であって、
樹脂(C)のガラス転移温度が熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度よりも低く、
カーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーが、カーボンブラック(B)と熱可塑性樹脂(A)との界面自由エネルギーよりも低く、
カーボンブラック(B)と樹脂(C)との界面自由エネルギーが、0〜50mN/mであることを特徴とする導電性樹脂組成物。
【請求項2】
カーボンブラック(B)のDBP吸油量が30〜750ml/100gであることを特徴とする請求項1記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂(C)が、熱可塑性エラストマーまたはポリエチレンであることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の導電性樹脂組成物を含むことを特徴とする導電性マスターバッチ。
【請求項5】
請求項1〜3いずれか記載の導電性樹脂組成物を用いて形成され、かつ延伸されてなる導電性フィルム。
【請求項6】
請求項1〜3いずれか記載の導電性樹脂組成物を含む樹脂組成物を溶融混練する工程(1)、次に、フィルムを形成する工程(2)、更に、前記フィルムを延伸する工程(3)を含むことを特徴とする導電性フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記工程(3)において、フィルムを二軸延伸することを特徴とする請求項6記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記工程(3)において、フィルムの延伸倍率が面積比で1.5〜25倍であることを特徴とする請求項6又は7記載の導電性フィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項6〜8いずれか記載の製造方法で得られた導電性フィルム。
【請求項10】
請求項5又は9記載の導電性フィルムの表面抵抗率が、1×107Ω/以下であることを特徴とする導電性フィルム。

【公開番号】特開2011−144270(P2011−144270A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6379(P2010−6379)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】