説明

導電性樹脂組成物及び導電性樹脂組成物を用いたプリント配線板

【課題】光学素子への入射光や光学素子からの出射光等が、光学素子と基板との接続部にて反射や拡散するのを抑制して、光学素子への光情報の誤入力、光学素子からの光情報の誤出力が発生するのを防止できる導電性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)硬化性樹脂、(B)金属系の導電性フィラー、(C)黒色着色剤を含有する導電性樹脂組成物であって、前記導電性樹脂組成物中での前記(B)金属系の導電性フィラーと前記(C)黒色着色剤の配合割合の合計が60質量%以上90質量%以下であり、前記(C)黒色着色剤の質量/前記(B)金属系の導電性フィラーの質量が0.01以上0.15以下である導電性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子や電子部品等を電気的に接合するための導電性樹脂組成物に関し、特に、光学素子を基板へ搭載するために使用され、光の反射や拡散を抑制できる導電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の回路基板への搭載には、はんだ合金を有するはんだペーストや金属粉末をバインダーに結着させた導電体を形成できる導電性ペーストの接着剤が使用されている。はんだペーストを使用するはんだ付け法は、はんだ付け後にフラックス残渣や飛散したはんだペーストを洗浄除去する工程が必要となる。しかし、導電性ペーストを用いた電子部品の回路基板への搭載には、この洗浄工程が不要な点で優れている。この導電性ペーストとしては、エポキシ樹脂と固体のイミダゾール系硬化剤を使用したものが知られている(特許文献1)。
【0003】
しかし、特許文献1の導電性ペーストは、常温下、エポキシ樹脂と固体のイミダゾール系硬化剤との反応により増粘傾向が大きくなるので、保管時に、導電性ペーストの粘度が増加し、塗工性が劣化し易いという問題があった。そこで、保管時の増粘傾向を抑えて、塗工性を改善するために、ホウ素系化合物を配合することでエポキシ樹脂と硬化剤との反応性を抑えた導電性ペーストが開示されている(特許文献2)。
【0004】
一方、導電性ペーストの主成分は導電性フィラー(例えば、銀等の金属粉末)なので、導電性ペーストの硬化物は高い反射率を有している。また、導電性をより効率的に得るために金属粉末の形状をフレーク状や板状とする場合がある。そのとき、金属粉の平滑性によって、導電性ペーストの硬化物の反射率は、球状の金属粉と比較して少なくともさらに50%程度高くなる。そして、光学素子を回路基板やプリント配線板等の基板へ搭載して光学デバイスを製造する場合にも、光学素子を基板へ電気的に接続するために導電性ペーストが使用される。例えば、光学素子にレンズ部が設けられている場合、上記のように、高反射率である導電性ペーストの硬化物が形成されると、上記硬化物によって入射光や出射光等の反射や拡散が生じ、光学素子への光情報の誤入出力が発生する。
【0005】
そこで、光学素子を基板へ電気的に接続するには、まず、入射光や出射光等の反射や拡散を防止するために、黒色に着色した樹脂製接着剤を用いて基板の表面に光学素子の接続部位を接着し、次に、光学素子と基板を電気的に接続するために、上記導電性ペーストを該接続部位と基板の表面との境界部を中心に塗工していた。
【0006】
このように、従来の導電性ペーストを用いて光学素子を基板へ電気的に接続するには2工程を要するので、作業が煩雑で、生産効率に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−345331号公報
【特許文献2】特開2004−185884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、光学素子への入射光や光学素子からの出射光等が、光学素子と基板との接続部にて反射や拡散するのを抑制して、光学素子への光情報の誤入力、光学素子からの光情報の誤出力が発生するのを防止できる導電性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、(A)硬化性樹脂、(B)金属系の導電性フィラー、(C)黒色着色剤を含有する導電性樹脂組成物であって、前記導電性樹脂組成物中での前記(B)金属系の導電性フィラーと前記(C)黒色着色剤の配合割合の合計が60質量%以上90質量%以下であり、前記(C)黒色着色剤の質量/前記(B)金属系の導電性フィラーの質量が0.01以上0.15以下である導電性樹脂組成物である。
【0010】
上記態様では、導電性樹脂組成物中に、金属系の導電性フィラーと黒色着色剤が、合計60質量%以上90質量%以下配合されている。従って、金属系の導電性フィラーと黒色着色剤以外の成分、つまり、主に、金属系の導電性フィラーと黒色着色剤のバインダーとなる成分が、10質量%以上40質量%以下配合されている。また、黒色着色剤の質量:金属系の導電性フィラーの質量は1〜15:100の比率、すなわち、金属系の導電性フィラー100質量部に対して黒色着色剤が1質量部以上15質量部以下の割合にて、導電性樹脂組成物中に金属系の導電性フィラーと黒色着色剤が配合されている。
【0011】
本発明の態様は、前記(A)硬化性樹脂がエポキシ樹脂であり、さらに、(D)潜在性硬化剤を含有する導電性樹脂組成物である。エポキシ樹脂(例えば、室温(25℃)にて液状(50Pa・s以下の粘度)のエポキシ樹脂)に潜在性硬化剤を配合すると、通常の150℃よりも低温(例えば、60〜130℃)でエポキシ樹脂と潜在性硬化剤とが反応し、導電性樹脂組成物が硬化する。なお、「潜在性硬化剤」とは、硬化処理温度(例えば、60〜130℃)未満では、エポキシ樹脂を硬化させる作用を生じないが、硬化処理温度(例えば、60〜130℃)になると、エポキシ樹脂を硬化させる作用を生じる硬化剤である。
【0012】
本発明の態様は、さらに、(E)分散剤を含有する導電性樹脂組成物である。
【0013】
本発明の態様は、さらに、(F)エポキシ安定化剤を含有する導電性樹脂組成物である。「エポキシ安定化剤」とは、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤との反応を抑制する化合物を意味する。
【0014】
本発明の態様は、上記導電性樹脂組成物を用いて光学素子を実装したプリント配線板である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、金属系の導電性フィラーと黒色着色剤以外の成分、すなわち、主にバインダーとなる成分が10質量%以上40質量%以下配合されているので、導電性樹脂組成物の抵抗値が高くなるのを抑制できる。さらに、黒色着色剤の質量:金属系の導電性フィラーの質量が1〜15:100の割合で配合されているので、導電性を損なうことなく、黒色系に着色され反射率の抑制された硬化物を得ることができる。このように、本発明の導電性樹脂組成物は、導電性を損なうことなく反射率の低減した硬化物を得ることができるので、例えば、光学素子と基板との接着剤として使用すると、光学素子への入射光や光学素子からの出射光等が光学素子と基板との接続部にて反射や拡散するのを抑制して、光学素子への光情報の誤入力と光学素子からの光情報の誤出力の発生を防止できる。
【0016】
また、本発明の導電性樹脂組成物を用いると、光学素子と基板との間の接着と電気的接続を1工程で行なえるので、2工程を要する従来技術よりも、光学素子の搭載作業が容易で、生産効率が向上する。
【0017】
本発明の態様によれば、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用し、さらに潜在性硬化剤を配合することで、従来の150℃よりも低温(例えば、60〜130℃)で硬化させることができるので、光学素子や電子部品の熱損傷を確実に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の導電性樹脂組成物について説明する。本発明の導電性樹脂組成物は、(A)硬化性樹脂、(B)金属系の導電性フィラー、(C)黒色着色剤を含有する導電性樹脂組成物であって、前記導電性樹脂組成物中での前記(B)金属系の導電性フィラーと前記(C)黒色着色剤の配合割合の合計が60質量%以上90質量%以下であり、前記(C)黒色着色剤の質量/前記(B)金属系の導電性フィラーの質量が0.01以上0.15以下である。上記各成分は、以下の通りである。
【0019】
(A)硬化性樹脂
硬化性樹脂は、金属系の導電性フィラーと黒色着色剤のバインダーとして配合する。硬化性樹脂を配合することにより、例えば、導電性樹脂組成物を室温にてペースト状とし、導電性樹脂組成物に塗工性を付与する。硬化性樹脂は、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂を挙げることができる。
【0020】
熱硬化性樹脂は、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型など)、シクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂等を挙げることができる。上記硬化性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0021】
導電性樹脂組成物中における硬化性樹脂の含有量の下限値は、導電性樹脂組成物をペースト化して塗工性を付与する点から10質量%であり、より塗工性を向上させる点から13質量%が好ましく、強固に下地に密着した導電性樹脂組成物を得る点から15質量%が特に好ましい。一方、導電性樹脂組成物中における硬化性樹脂の含有量の上限値は、導電性樹脂組成物の導電性の低下を防止する点から40質量%であり、導電性の低下を確実に防止する点から30質量%が好ましく、比抵抗値を1×10−1Ω・cm以下まで確実に低減して良好な導電性を得る点から25質量%が特に好ましい。
【0022】
(B)金属系の導電性フィラー
金属系の導電性フィラーは、導電性樹脂組成物に導電性を付与するために配合する。金属系の導電性フィラーには、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、錫等の金属粉末を挙げることができる。上記金属粉末は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。導電性フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、球状、フレーク状、板状等であり、金属粉末間の接触面積を大きくして導電性を向上させる点からフレーク状、板状が好ましい。
【0023】
導電性フィラーの平均一次粒子径は、特に限定されないが、その下限値は、導電性フィラー間の接触抵抗を抑制する点から3μmが好ましく、5μmが特に好ましい。一方、その上限値は、導電性樹脂組成物の塗工性の点から30μmが好ましく、微細な塗工部位に対応する点から20μmが特に好ましい。
【0024】
(C)黒色着色剤
黒色着色剤は、導電性樹脂組成物を黒色に着色して反射率を低減させるために配合する。黒色着色剤には、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、黒色酸化鉄、グラファイト、活性炭等が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
導電性樹脂組成物中における金属系の導電性フィラーと黒色着色剤の含有量の合計について、その下限値は、導電性樹脂組成物に導電性と低反射率性とを付与する点から60質量%であり、導電性を確実に向上させる点から65質量%が好ましく、比抵抗値を1×10−1Ω・cm以下に低減して良好な導電性を得る点から70質量%が特に好ましい。一方、上記含有量の合計の上限値は、導電性樹脂組成物の塗工性の低下を防止し、かつ導電性樹脂組成物の調製を容易化する点から90質量%であり、塗工性の低下を確実に防止する点から85質量%が好ましく、より強固に下地に密着した導電性樹脂組成物を得る点から80質量%が特に好ましい。
【0026】
また、本発明の導電性樹脂組成物では、金属系の導電性フィラーと黒色着色剤について、上記した所定範囲の配合割合に加えて、さらに下記のように所定範囲の配合比率となっている。
【0027】
つまり、黒色着色剤の質量/金属系の導電性フィラーの質量の値について、その下限値は、金属系の導電性フィラーの形状をフレーク状や板状とし且つ金属系の導電性フィラーと黒色着色剤の配合割合の合計が60質量%であっても低反射率性を付与する点から0.01(すなわち、金属系の導電性フィラー100質量部に対して黒色着色剤が1質量部)であり、導電性と低反射率性の良好なバランスの点から0.03(すなわち、金属系の導電性フィラー100質量部に対して黒色着色剤が3質量部)が好ましく、金属系の導電性フィラーと黒色着色剤の配合割合の合計が60質量%であっても、導電性を損なうことなく確実に反射率を低減させる点から0.04(すなわち、金属系の導電性フィラー100質量部に対して黒色着色剤が4質量部)が特に好ましい。一方、その上限値は、金属系の導電性フィラーと黒色着色剤の配合割合の合計が60質量%であっても導電性の低下を防止する点から0.15(すなわち、金属系の導電性フィラー100質量部に対して黒色着色剤が15質量部)であり、導電性と低反射率性の良好なバランスの点から0.12(すなわち、金属系の導電性フィラー100質量部に対して黒色着色剤が12質量部)が好ましく、金属系の導電性フィラーと黒色着色剤の配合割合の合計が60質量%であっても、低反射率性を損なうことなく確実に導電性を付与する点から0.10(すなわち、金属系の導電性フィラー100質量部に対して黒色着色剤が10質量部)が特に好ましい。
【0028】
本発明では、さらに、必要に応じて、その他成分として(D)潜在性硬化剤、(E)分散剤及び/または(F)エポキシ安定化剤を含有してもよい。本発明の導電性樹脂組成物では、金属系の導電性フィラーと黒色着色剤の配合割合の合計が60質量%以上90質量%以下なので、(A)〜(C)以外の成分を使用する場合には、(A)〜(C)以外の成分の含有量の合計に応じて硬化性樹脂の含有量を減らすことで、硬化性樹脂とその他の成分の含有量の合計が10質量%以上40質量%以下の範囲とする。その他成分は、以下の通りである。
【0029】
(D)潜在性硬化剤
潜在性硬化剤は、(A)硬化性樹脂として熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を使用する場合に、硬化処理温度未満ではエポキシ樹脂の硬化を抑制して室温での保存安定性を付与しつつ、硬化処理温度に達した時点でエポキシ樹脂の硬化を促進するために配合する。特に、室温(25℃)で液状のエポキシ樹脂を使用する場合、潜在性硬化剤が含有していると、従来と比較して低温硬化性(60℃〜130℃での硬化)を付与することができる。
【0030】
潜在性硬化剤は特に限定されないが、例えば、マイクロカプセル化アミン系、脂肪族ポリアミン系、ヒダントイン系、ヒドラジン系、ジシアンジアミド系、メラミン系等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。潜在性硬化剤の含有量は、導電性樹脂組成物中におけるエポキシ樹脂の含有量に応じて適宜選択可能であるが、例えば、導電性樹脂組成物中のエポキシ樹脂100質量部に対して、速やかな硬化性と保存安定性のバランスの点から5〜30質量部が好ましい。
【0031】
(E)分散剤
分散剤は、導電性樹脂組成物の粘度を低下させて、黒色着色剤の分散性を向上させるため、特に、黒色着色剤としてカーボンブラックを使用する場合に、その分散性を向上させるために配合する。分散剤には、例えば、ビックケミー・ジャパン製の「BYK‐9077」(顔料親和性を有する高分子共重合体)、「BYK‐9076」(高分子共重合体のアルキルアンモニウム塩)、「BYK‐220S」(不飽和酸性ポリカルボン酸ポリエステルとポリシロキサン)等を挙げることができる。より好ましくは、アミン価を持つ高分子型分散剤である。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
分散剤の含有量は、導電性樹脂組成物中における黒色着色剤の含有量に応じて適宜選択可能であるが、例えば、導電性樹脂組成物中の黒色着色剤100質量部に対して、15〜90質量部が好ましい。
【0033】
(F)エポキシ安定化剤
エポキシ安定化剤とは、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤との反応を抑制して保存安定性をより向上させるための成分であり、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用い、潜在性硬化剤を配合する場合に使用する。エポキシ安定化剤には、例えば、下記一般式のホウ素化合物を挙げることができる。
【0034】
【化1】

【0035】
(式中R、R は炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。)
【0036】
上記一般式のホウ素化合物には、例えば、Rがメチル基、R がメチル基のホウ素化合物である「キュアダクトL‐07N」(四国化成工業(株)製)を挙げることができる。エポキシ安定化剤の含有量は、エポキシ樹脂の含有量に応じて適宜選択可能であり、例えば、その下限値は、室温にてエポキシ樹脂と潜在性硬化剤との反応を抑制する点からエポキシ樹脂100質量部に対して2.5質量部が好ましい。一方、その上限値は、硬化速度が遅くなるのを防止する点からエポキシ樹脂100質量部に対して15質量部が好ましい。
【0037】
本発明では、上記各成分に加えて、その他に、消泡剤、チキソ剤、カップリング剤、導電性樹脂組成物の粘度や乾燥性を調節するための溶剤等の成分をさらに使用してもよい。
【0038】
上記した本発明の導電性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されないが、例えば、上記成分(A)〜(C)および必要に応じてその他の成分を所定割合で配合後、室温にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の攪拌手段により混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合してもよい。
【0039】
上記のように製造された導電性樹脂組成物は、例えば、導電性接着剤や導電性塗装材料として使用できる。導電性接着剤としては、例えば、光学素子を回路基板やプリント配線板等の基板のランドに接合するために使用できる。また、導電性塗装材料としては、例えば、光学素子に電極を形成するためのメッキの下地の導電膜を形成するために使用できる。
【0040】
次に、上記した本発明の導電性樹脂組成物の塗工方法例について説明する。本発明の導電性樹脂組成物は、スクリーン印刷法やディスペンサー法等の一般的な方法により、所望の形状になるよう、光学素子または基板に塗布する。ついで、オーブンやリフロー炉等の加熱装置中で、所定時間(例えば、5分間〜60分間)、所定温度(例えば、60℃〜150℃)にて加熱して、塗布した導電性樹脂組成物を硬化させる。
【0041】
例えば、カメラレンズなどの光学デバイスの製造に、本発明の導電性樹脂組成物を導電性接着剤として使用する場合には、本発明の導電性樹脂組成物をシリンジ等に充填した後、ディスペンサーを用いて基板上に吐出し、この吐出された導電性樹脂組成物を介して光学素子を上記基板上にマウントし、加熱処理により導電性樹脂組成物を硬化させて光学素子を基板上に接合する。
【0042】
本発明の導電性樹脂組成物は、上記塗工方法例の他、例えば、電子部品を基板上に接合したり、基板上に配線用導線を塗布して形成したり、電子部品に電極を形成するためのメッキの下地の導電膜を形成するために使用してもよい。
【実施例】
【0043】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0044】
実施例1〜3、比較例1〜5
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて添加し、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1〜3及び比較例1〜5の導電性樹脂組成物を調製した。そして、調製した導電性樹脂組成物を以下のように塗工して試験片を作成した。
【0045】
【表1】

【0046】
なお、表1中の各成分についての詳細は以下の通りである。
(A)硬化性樹脂
・EPICLON EXA‐830LVP:ビスフェノールA型とビスフェノールF型の混合したエポキシ樹脂(エポキシ当量160g/eq、25℃の粘度1500mPa・s、全塩素750ppm)、DIC(株)製。
・アデカレジン EP−3900S:3官能グリシジルアニリン型エポキシ樹脂(エポキシ当量100g/eq、25℃の粘度600mPa・s、全塩素0.12%、官能基数3)、(株)ADEKA製。
【0047】
(B)金属系の導電性フィラー
・FA‐8‐1:フレーク状の銀粉、DOWAハイテック社製。
(C)黒色着色剤
・#3230B:カーボンブラック、三菱化学(株)製。
【0048】
(D)潜在性硬化剤
・フジキュア‐FXR−1081:変性脂肪族ポリアミン、(株)T&K TOKA製。
(E)分散剤
・BYK−9077:顔料親和性を有する高分子共重合体、固形分98質量%、アミン価48mgKOH/g(固形分換算)、ビックケミー・ジャパン社製。
(F)エポキシ安定化剤
・キュアダクトL‐07N:ホウ素化合物(ホウ素化合物含有量5質量%)、四国化成工業(株)製。
【0049】
試験片作成工程1
硬化物の反射率を評価するための試験片作成工程であり、上記のように調製した導電性樹脂組成物を、PETフィルム上に、アプリケーターを用いて厚さ100μmに均一に塗布した後、BOX炉内にて、70℃にて20分間加熱後、さらに100℃にて20分間加熱して導電性樹脂組成物を硬化させた。
【0050】
試験片作成工程2
硬化物の比抵抗を評価するための試験片作成工程であり、上記のように調製した導電性樹脂組成物を、ガラスプレート上に、アプリケーターを用いて厚さ(T)100μm、幅(W)1.0cm、長さ(L)3.0cmに均一に塗布した後、BOX炉内にて、70℃にて20分間加熱後、さらに100℃にて20分間加熱して導電性樹脂組成物を硬化させた。
【0051】
評価
(1)反射率(%)
試験片作成工程1にて作成した試験片について、TiOを基準として550nmにおける反射率を分光光度計U‐4100((株)日立製作所製:φ60mm積分球)を用いて測定した。
(2)比抵抗
試験片作成工程2にて作成した試験片について、デジタルマルチメータを用いて硬化物の抵抗値R(Ω)を2端子法で測定し、(R×T×W)/Lから算出した。
【0052】
評価結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
上記表2に示すように、金属系の導電性フィラーと黒色着色剤の配合割合の合計が60質量%以上90質量%以下であり、かつ黒色着色剤の質量/金属系の導電性フィラーの質量が0.01以上0.15以下である実施例1〜3では、比抵抗値を1×10−1Ω・cm以下に抑えつつ、反射率を30%以下に低減できた。従って、実施例1〜3では、導電性を損なうことなく低反射率性を得ることができた。特に、導電性フィラーと黒色着色剤の配合割合の合計が76.3質量%、黒色着色剤の質量/金属系の導電性フィラーの質量が0.05である実施例3では、比抵抗値と反射率がともにより良好に低減し、導電性と低反射率性がバランスよく向上した。
【0055】
これに対し、黒色着色剤が配合されていない比較例1、4及び黒色着色剤の質量/金属系の導電性フィラーの質量が0.0075の比較例2では、反射率がそれぞれ48%、47%、38%と、いずれも30%超となり、低反射率性を得ることができなかった。また、金属系の導電性フィラーと黒色着色剤の配合割合の合計が60質量%未満(55.5質量%)、黒色着色剤の質量/金属系の導電性フィラーの質量が0.25の比較例3では、低反射率性は得られたものの、比抵抗値が3.00Ω・cmと1×10−1Ω・cm超となって、導電性を得ることができなかった。比較例5では、金属系の導電性フィラーと黒色着色剤の配合割合の合計が91質量%と、90質量%超の値、つまり、その他の成分が9質量%(バインダー成分である硬化性樹脂は6.7質量%)と少量なので、導電性樹脂組成物はペースト状とならず、結果、塗工性を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の導電性樹脂組成物は、導電性を損なうことなく低反射率性を有する硬化物を得ることができるので、例えば、光学素子を基板へ電気的に接続して光学デバイスを製造する分野や電子部品を基板上に接合する分野で利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硬化性樹脂、(B)金属系の導電性フィラー、(C)黒色着色剤を含有する導電性樹脂組成物であって、
前記導電性樹脂組成物中での前記(B)金属系の導電性フィラーと前記(C)黒色着色剤の配合割合の合計が60質量%以上90質量%以下であり、前記(C)黒色着色剤の質量/前記(B)金属系の導電性フィラーの質量が0.01以上0.15以下である導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)硬化性樹脂がエポキシ樹脂であり、さらに、(D)潜在性硬化剤を含有する請求項1に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(E)分散剤を含有する請求項1または2に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、(F)エポキシ安定化剤を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の導電性樹脂組成物を用いて光学素子を実装したプリント配線板。

【公開番号】特開2013−91748(P2013−91748A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236055(P2011−236055)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】