説明

導電性樹脂組成物及び硬化体

【課題】十分な導電性と、優れた塗布作業性とを兼ね備えた導電性樹脂組成物、およびその硬化体を提供すること。
【解決手段】熱又は光により硬化する樹脂成分と、導電性粒子と、を含有する導電性樹脂組成物。樹脂成分が硬化したときに、当該導電性樹脂組成物が、樹脂成分により形成された硬化樹脂と、硬化樹脂中に分散する前記導電性粒子と、を含む硬化体を形成し、硬化樹脂が、2以上の相を含む相分離構造を有する、導電性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂組成物及びこれから得られる硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性接着剤や導電性塗料等の用途において、金属を主成分とする導電性粒子が樹脂中に分散されている導電性樹脂組成物が使用されている。樹脂の主成分として、熱又は光のエネルギーにより架橋反応を起こして硬化する、いわゆる熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂を用い、樹脂組成物として導電性を発現させる目的で、多量の金属粒子を混合することが多い。
【0003】
特許文献1には、エポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂を主成分とし、フェノキシ樹脂に代表される熱可塑性樹脂を含む樹脂成分100重量部に対して、錫や銅からなる導電性金属粒子を900重量部という極めて多量の金属粒子を混合した導電性接着剤が開示されている。ここで、フェノキシ樹脂はエポキシ樹脂に相溶するとされている。特許文献2には、フェノキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂100重量部に対して複合導電性フィラー900重量部を添加した導電性接着剤が開示されている。
【0004】
特許文献3には金属粉、熱硬化性樹脂および溶剤からなる導電性接着剤が開示されている。この導電性接着剤の場合も、同文献の実施例によれば樹脂成分4.90〜10.85重量部に対して金属粒子が83.89〜89.24重量部であり、やはり多量に金属粒子が添加されている。
【0005】
さらに、特許文献4には、エポキシ樹脂を主成分としフラックス活性剤を添加した樹脂成分に金属粒子を混合した導電性接着剤が開示されている。同文献の実施例によれば金属粒子の添加量は、樹脂成分5〜15重量部に対して金属粒子が70重量部とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−172606号公報
【特許文献2】特開2001−294844号公報
【特許文献3】特開2006−083377号公報
【特許文献4】特開2011−023577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の先行例が開示する内容からわかるように、金属系の導電性粒子を含有する従来の導電性樹脂組成物の場合、十分な導電性を発現させるために導電性粒子を80質量%程度以上混合することが必要とされることが多い。しかし、多量の粒子を添加すると、樹脂の塗布作業性が損なわれるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、十分な導電性と、優れた塗布作業性とを兼ね備えた導電性樹脂組成物、およびその硬化体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討の結果、導電性粒子を含有する導電性樹脂組成物において、硬化後に相分離構造を形成する樹脂成分を用いることにより、導電性粒子が比較的少量であっても、硬化後に十分な導電性が発現されることを見出し、係る知見に基づいて本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、熱又は光により硬化する樹脂成分と、導電性粒子と、を含有する導電性樹脂組成物に関する。前記樹脂成分が硬化したときに、当該導電性樹脂組成物は、前記樹脂成分により形成された硬化樹脂と、前記硬化樹脂中に分散する前記導電性粒子と、を含む硬化体を形成する。前記硬化樹脂が、2以上の相を含む相分離構造を有する。
【0011】
上記導電性樹脂組成物によれば、導電性粒子が比較的少量であっても、硬化後に十分な導電性が発現され得る。導電性粒子の量を少なくできることから、未硬化の導電性樹脂組成物の良好な塗布作業性を得やすい。
【0012】
特に良好な導電性を得るために、硬化体中の導電性粒子が、相分離構造の2以上の相のうちいずれか1つの相中に偏在することが好ましい。同様の観点から、導電性粒子が偏在している相が、相分離構造において連続相を形成することが好ましい。
【0013】
別の側面において、本発明は、熱又は光により硬化する樹脂成分が硬化して形成された硬化樹脂と、前記硬化樹脂中に分散する導電性粒子と、を含む導電性の硬化体に関する。前記硬化樹脂は、2以上の相を含む相分離構造を有する。係る硬化体は、優れた導電性を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る導電性樹脂組成物よれば、十分な導電性を有する硬化体が形成される。しかも、未硬化段階の樹脂組成物の塗布作業性も優れる。さらに、本発明に係る導電性樹脂組成物は、接着性の点でも優れる。また、導電性粒子の量を少なくできることから、本発明に係る導電性樹脂組成物は経済的にも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態に係る導電性樹脂組成物は、熱又は光により硬化する樹脂成分と、導電性粒子と、を含有する。樹脂成分は、硬化されたときに、2以上の相を含む(ミクロ)相分離構造を有する。このとき、導電性樹脂組成物は、硬化樹脂と、硬化樹脂中に分散する導電性粒子とを含む導電性の硬化体を形成する。
【0017】
硬化樹脂が相分離構造を形成していると、導電性粒子が有効に活用されやすくなるために、導電性粒子が比較的少量であっても高い導電性が発現されると考えられる。導電性粒子の量を少なくすることにより、樹脂組成物の良好な塗布作業性が得られる。さらには、良好な接着性をも発現され得る。
【0018】
特に、硬化体において、導電性粒子が、相分離構造を構成する2以上の相のうちいずれか1つの相に偏って分布していることが好ましい。これにより、粒子相互の接触機会が増加し、効果的に連続した導電パスが形成される。このことが、比較的少量の導電粒子により高い導電性が発現される理由と考えられる。
【0019】
上記と同様の観点から、硬化体中の導電性粒子全量のうち、1つの相に含まれる導電性粒子の割合は、好ましくは80%以上である。言い換えると、硬化体中の導電性粒子全量のうち80%以上が、硬化樹脂の相分離構造を構成する2以上の相のうちいずれか1つの相に偏在することが好ましい。1つの相に偏在する導電性粒子の割合(偏在化の割合)が80%以上であることにより、より顕著な導電性向上の効果が得られる。同様の観点から、上記割合は、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
【0020】
硬化体における導電性粒子の偏在化の割合は、次のような方法により測定することができる。まず、硬化体の断面を2000倍以上に拡大して、200mm×200mm以上の断面写真を作成する。次いで、この断面写真において硬化樹脂の相分離構造の形成を確認する。その上で、断面写真内に観察されるそれぞれの導電性粒子が、いずれの相中に存在するかを判定し、最も多くの導電性粒子が存在している相(以下「偏在相」ということがある。)中の個々の導電性粒子の面積を3/2乗した値の合計値Vを算出する。同様に、断面写真中に観察される全導電性粒子の個々の導電性粒子の面積を3/2乗した値の合計値Vを算出する。そして、VのVに対する割合(%)を、「導電性粒子の体積比」に換算された、導電性粒子の偏在化の割合として求める。樹脂断面の5箇所以上についてこの作業を行い、平均値を求める。この平均値が、80%以上であることが好ましい。
【0021】
硬化樹脂により形成される相分離構造は、典型的には2つの相からなる。相分離構造は、海島構造であってもよいし、2つの相が連続相を形成している両相連続構造であってもよい。導電性粒子が偏在する偏在相は、連続相を形成することが好ましい。これにより、偏在相が不連続であるときと比較して、導電パスが形成され易く、導電率向上の効果が特に顕著に奏され得る。
【0022】
相分離構造を構成する相のうち、偏在相以外の相の大きさ(幅)は、数nm〜20μmの範囲にあることが、導電性及び接着性の観点から好ましい。この大きさが数nmより小さいと、少量の導電性粒子により高い導電性を得る効果が、相対的に小さくなることがある。この大きさが20μmより大きいと、接着強さが相対的に低下することがある。その意味で、偏在相以外の相の大きさ(幅)は20nm〜10μmの範囲にあることがより好ましく、30nm〜5μmの範囲にあることがさらに好ましい。
【0023】
導電性樹脂組成物の樹脂成分がエポキシ樹脂を含む場合、偏在相は、硬化したエポキシ樹脂を主成分として含む相であることが、接着性及び導電性の観点から好ましい。
【0024】
以上説明したような、相分離構造及び導電性粒子の分布状態は、当業者であれば、光学顕微鏡及び電子顕微鏡等の顕微鏡的手法を用い、必要に応じて元素分析手法及び画像処理を併用することにより特定できる。相分離構造の観察の際、コントラストをつけるために、観察試料に溶剤処理、プラズマ処理、コロナ処理等によるエッチングを併用してもよい。
【0025】
導電性樹脂組成物に含まれる導電性粒子の量は、導電性樹脂組成物100質量部に対して3〜300質量部の範囲にあることが好ましい。導電性粒子の量が3質量部未満では導電性発現の効果が低下することがある。導電性粒子の量が300質量部を超えると導電性粒子の塗布作業性及び接着性が相対的に損なわれることがある。特に塗布作業性の観点から、導電性粒子の量は、より好ましくは70質量部以下である。また、導電性粒子の量の下限は、40質量部であってもよい。
【0026】
導電性粒子は、金、銀、銅、白金、ニッケル、アルミニウム、パラジウム、スズ、ビスマス、亜鉛、インジウム、マグネシウム、タングステン、チタン及び炭素から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの粒子素材は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。導電性粒子は、複数の素材を複合化した複合粒子であってもよい。
【0027】
導電性粒子は、有機酸又はその塩によって表面処理を施されていることが好ましい。これにより、樹脂成分が形成する相分離構造の特定の相に導電性粒子が偏在し易くなる。有機酸は、例えばカルボキシル基を含有する。有機酸塩は、有機酸と塩基との組み合わせにより形成される。有機酸又はその塩は、例えば、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、及びこれらの塩から選ばれ得る。特に、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、及びこれらのアンモニウム塩は、少量の使用で表面処理の効果を得やすいため好ましい。有機酸塩を使用すれば、水中で導電性粒子の表面処理を行うことができるため好ましい。
【0028】
表面処理剤としての有機酸又は有機酸塩の量は、導電性粒子100質量部に対して0.001〜0.5質量部の範囲にあることが好ましい。表面処理剤の量が0.001質量部より少ないと、表面処理の効果が少なく、導電性粒子を積極的に偏在化させる効果が得られにくくなることがある。表面処理剤の量が0.5質量部より多いと、導電性向上の効果が小さくなる可能性がある。
【0029】
導電性粒子の形状は、球状、らくがん状(複数の球が凝集した形状)、平板状、針状、棒状等のいずれであってもよい。
【0030】
導電性粒子の平均粒子径は、0.01〜20μmの範囲にあることが好ましい。導電性粒子の平均粒子径が0.01μmより小さいと、導電性粒子の添加による樹脂組成物の粘度増加が著しく、導電性樹脂組成物の被着体への塗布性が相対的に低下することがある。導電性粒子の平均粒子径が20μmより大きいと、微細な構造を有する被着体を接着するときに、導電性樹脂組成物を狭い隙間に均一に浸透させること困難になる可能性がある。その意味で、導電性粒子の平均粒子径は0.03〜10μmの範囲にあることがより好ましく、0.05〜5μmの範囲にあることがさらに好ましい。
【0031】
導電性粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置により測定可能である。あるいは、電子顕微鏡観察や、観察結果の画像処理によっても導電性粒子の平均粒径を求めることができる。
【0032】
導電性樹脂組成物に含まれる樹脂成分は、架橋構造を形成する硬化性成分として、熱又は光により硬化する1種又は2種以上の硬化性樹脂を含む。樹脂成分は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ウレア樹脂、及びメラミン樹脂から選択される少なくとも1種の硬化性樹脂を含むことが好ましい。これらのなかでも、接着性を高める観点から、エポキシ樹脂が好ましい。速硬化性の観点からは、アクリル樹脂も好ましい。これらの硬化性樹脂の組み合わせ(例えば、エポキシ樹脂とアクリル樹脂の組み合わせ)は、適切な相分離構造を形成する目的を達するために好ましい。例えば、エポキシ樹脂の量は、高い接着性と導電性の両立の観点から、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは55質量部以上、より好ましくは65質量部以上、さらに好ましくは75質量部以上である。
【0033】
樹脂成分は、2個のエポキシ基を有する2官能エポキシ樹脂をエポキシ樹脂として含むことが好ましい。2官能エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールジグリシジルエーテル、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エチレングリコールジグリジジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル、テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラックグリシジルエーテル、クレゾールノボラックグリシジルエーテル、フェノールとジシクロペンタジエンの縮合物のグリシジルエーテル、フェノールアラルキル樹脂のグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、N−グリシジルフタルイミド、5−エチル−1,3−ジグリシジル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、ビスフェノールA ジグリシジルエーテルとトリレンイソシアネートの付加により得られるオキサゾリドン型エポキシ樹脂、およびフェノールアラルキル型エポキシ樹脂から選ばれる。
【0034】
硬化性成分は、耐湿熱性を著しく損なわない範囲で、1個以上のエポキシ基を有する反応性希釈剤を含んでいてもよい。この反応性希釈剤は、例えば、シクロへキサンジメチロール型エポキシ樹脂、フェニルグリシジルエーテル、o−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−クレジルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、フェノール(EO)グリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、及び1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルから選ばれる。
【0035】
硬化性成分は、エポキシ樹脂とともに、エポキシ樹脂用の硬化剤を含むことが好ましい。この硬化剤は、エポキシ基と反応してエポキシ樹脂の硬化を進行させ得る活性基を有する化合物であれば、特に限定されない。硬化剤は、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンのような芳香族アミン、脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリフェノール化合物、ノボラック樹脂、及びポリメルカプタンから選ばれる。イミダゾール化合物、二級アミン化合物、三級アミン化合物、変性脂肪族アミン化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物から選ばれる1種又は二種以上の組み合わせが、導電性発現の観点において好ましい。特に、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物は、室温における潜在性が高い上に、60〜90℃において速硬化性であることから、好ましい硬化剤である。エポキシ樹脂アミンアダクト化合物の市販品としては、例えば、アミキュアPN−23、PN−31、PN−40、MY−24(以上、味の素ファインテクノ(株)製)、キュアダクトP−0505(四国化成工業(株))が挙げられる。
【0036】
硬化剤に硬化触媒を併用することもできる。硬化触媒は、例えば、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のような、いわゆるルイス酸錯体である。ジシアンジアミドに、硬化促進剤として3-(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)等の尿素誘導体又はイミダゾール誘導体を組み合わせてもよい。カルボン酸無水物又はノボラック樹脂に、硬化促進剤として第三アミンを組み合わせてもよい。
【0037】
硬化剤又は硬化促進剤がマイクロカプセル化されていることは、保存安定性が高まることから、好適である。
【0038】
樹脂成分に含まれる硬化性樹脂としてのアクリル樹脂は、1個又は2個以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル化合物から構成される。このような化合物として、アクリル酸又はメタクリル酸と各種アルコール化合物のエステル化により得られる(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。これらは単体あるいは複数種を組み合わせて使用することができる。
【0039】
(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ベンジルメタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ラウリル−トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸−1,3−ブチレングリコール、ジメタクリル酸−1,4−ブタンジオール、ジメタクリル酸−1,6−ヘキサンジオール、ジメタクリル酸グリセリン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、およびジメタクリル酸ビスフェノールA プロピレンオキシド付加物、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9−ビス[4-(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、及びN−メチロールアクリルアミドから選ばれる。
【0040】
アクリル樹脂が、1分子中に3個以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことも、アクリル樹脂の架橋を促進させゲル化時間の制御に役立つため好適である。かかるアクリレート化合物は、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド付加物トリアクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートとトリレンジイソシアネートの2:1付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの2:1付加物、3官能以上のエポキシ化合物(例えばフェノールノボラックのグリシジルエーテルなど)にアクリル酸を付加させたエポキシアクリレート化合物、及び、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートから選ばれる。
【0041】
樹脂成分の量を基準とするアクリル樹脂((メタ)アクリル化合物)の量は、好ましくは1〜45質量%であり、より好ましくは3〜35質量%である。アクリル樹脂の量が1質量%より少ないと、高い靱性を有する硬化樹脂が得られにくい傾向がある。アクリル樹脂の量が45質量%より多いと、硬化樹脂の耐熱性や弾性率が低下してしまうことがある。
【0042】
アクリル樹脂は、適切な相分離構造を形成し、接着性を特に顕著に向上させるために、(メタ)アクリル基と、1個以上の官能基とを有する(メタ)アクリル化合物を含むことができる。官能基は、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基、又はグリシジル基である。かかる化合物は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ターシャリーブチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、およびメタクリル酸テトラヒドロフルフリルから選ばれる。なかでもメタクリル酸グリシジルは、エポキシ樹脂と併用したときに、特に良好な接着性が得られるため、特に好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル基と1個以上の官能基を有する(メタ)アクリル化合物は、アクリル樹脂中に1〜20質量%配合されることが好ましく、5〜15重量%配合されることがより好ましい。この配合量が1質量%より少ないと、樹脂組成物による接着性が相対的に低下することがある。この配合量が20質量%より多いと、過度な架橋構造が形成されて、硬化樹脂の靱性が低下することがある。
【0044】
樹脂成分がアクリル樹脂を含む場合、樹脂成分は、硬化性成分として、熱又は光によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を更に含むことが好ましい。ラジカル重合開始剤として、例えば、アゾ化合物又は有機過酸化物を使用することができる。
【0045】
アゾ化合物は、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、及び1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)から選ばれる。有機過酸化物は、例えば、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,2,5− トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、1,1,3,3−テトラメチルヒドロペルオキシド、1,1−ジメチルブチルペルオキシド、ビス(1−t−ブチルペルオキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、t−ブチル2−エチルペルヘキサノエート、(1,1−ジメチルプロピル)2−エチルペルヘキサノエート、(1,1−ジメチルブチル)2−エチルペルヘキサノエート、t−ブチル3,5,5−トリメチルペルヘキサノエート、ペルオキシ炭酸イソプロピル−1,1−ジメチルブチル、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、過マレイン酸t−ブチル、過ラウリン酸t−ブチル、及び過安息香酸t−ブチルから選ばれる。これらのラジカル重合開始剤は1種単独でも、複数種を組み合わせても用いてもよい。
【0046】
樹脂成分の量を基準とするラジカル重合開始剤の量は、好ましくは0.001〜8質量%であり、より好ましくは0.002〜7質量%である。ラジカル重合開始剤の量が0.001質量%より少ないと、アクリル樹脂の重合が十分に進行せず、力学特性や接着性が低下する傾向がある。ラジカル重合開始剤の量が8質量%より多いと、形成されるアクリル樹脂の分子量が低下し、耐熱性や力学強度が低下する可能性がある。
【0047】
樹脂成分は、ラジカル重合開始剤の重合禁止剤又は促進剤を含んでもよい。重合禁止剤は、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、p−ベンゾキノン、2−エチルアントラキノン、ジラウリルチオジプロピオネート、及びクペロンから選ばれる。促進剤としては、遷移金属の塩、例えば、ナフテン酸コバルトなどを使用することができる。
【0048】
樹脂成分又は導電性樹脂組成物は、硬化系に応じて、好適には20〜200℃の範囲の任意温度で、好適には0.1〜10時間の範囲の任意の時間で加熱することにより硬化して、硬化樹脂又は硬化体を形成することができる。加熱硬化の場合、1段階の加熱でもよいし、複数の加熱条件を組み合わせた多段階条件の加熱でもよい。紫外線等を利用した光硬化も好適に用いることができる。この場合、エポキシ樹脂の光硬化のために、酸発生によるカチオン重合触媒を樹脂成分が含むことが好ましい。
【0049】
エポキシ樹脂とアクリル樹脂とを組み合わせた樹脂成分の硬化の際、エポキシ樹脂の重付加反応と、アクリル樹脂のラジカル重合反応とが並行して進行する。結果として、海島構造形態の相分離構造が形成される。典型的には、エポキシ重付加反応物は連続相を形成し、ラジカル反応物は分散相を形成する。硬化樹脂が海島構造を形成することにより、少量の導電性粒子の接触が増え導電性を発現しやすくなり、また剥離接着強さや樹脂靱性が向上する効果をもたらされ得る。
【0050】
樹脂成分は、硬化樹脂の相分離構造の形成のために、上述の硬化性成分に加えて、熱可塑性樹脂及び/又はエラストマーを含むことができる。これにより、硬化樹脂において、硬化した硬化性成分を主成分とする相とは別に、熱可塑性樹脂及び/又はエラストマーを主成分とする相が形成され得る。この熱可塑性樹脂又はエラストマーとしては、例えば、主鎖に炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合(ポリエーテルイミド等)、エステル結合、エーテル結合、シロキサン結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルフォン結合、イミダゾール結合及びカルボニル結合から選ばれる結合を有する重合体が挙げられる。中でも、ポリエーテルスルホン等のスルフォン結合を有する熱可塑性樹脂(ポリエーテルスルホン等)、イミド結合を有する熱可塑性樹脂(ポリエーテルイミド等)、及び、炭素−炭素結合又はエステル結合を有するエラストマーは、導電性発現に適切な相分離構造を得やすく、また、硬化樹脂の耐湿熱性、靭性、耐衝撃性、剥離接着強さを高める観点から好ましい。
【0051】
この熱可塑性樹脂及びエラストマーは、分子量が比較的低いオリゴマーであってもよい。成形時の樹脂粘度が過大となって樹脂の流動性が低下することを防止する観点から、熱可塑性樹脂及びエラストマーの数平均分子量は、好ましくは10000以下、より好ましくは7000以下である。さらに、熱可塑性樹脂による改質効果、得られる硬化体の耐衝撃性を維持する観点から、熱可塑性樹脂の数平均分子量は好ましくは3000以上、より好ましくは4000以上である。
【0052】
熱可塑性樹脂及びエラストマーは、硬化性樹脂と反応する官能基を末端又は分子鎖中に有していることが、相分離構造制御の観点から好ましい。かかる熱可塑性樹脂(特に、オリゴマー)としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル等の耐熱性と靭性とを兼備したものが挙げられる。
【0053】
樹脂成分が、熱可塑性樹脂又はエラストマーとしてブロック共重合体を含むことにより、形成される相分離構造のサイズを小さくする効果が得られることが多くある。相分離構造のサイズが小さくなると、少量の導電性粒子が連続した状態を形成しやすくなって、効率的に導電性を高めることができる。かかるブロック共重合体は、好ましくは、アクリル系ブロック共重合体、スチレン系ブロック共重合体、ポリイミド系ブロック共重合体、及びポリスルホン系ブロック共重合体から選ばれる。これらブロック共重合体を用いることにより、導電性発現に適切な相分離構造を得やすく、また硬化樹脂の靭性、耐衝撃性、剥離接着強さを高める観点から好ましい。
【0054】
熱可塑性樹脂及びエラストマーの量(これらを組み合わせるときはその合計量)は、全樹脂成分100質量部に対して、好ましくは3〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部である。この量が3質量部未満であると、硬化樹脂の相分離構造の形成が困難となる傾向ある。この量が30質量部を超えると、樹脂組成物の流動性が相対的に低下することがある。樹脂成分が、熱可塑性樹脂又はエラストマーと、エポキシ樹脂及びその硬化剤等を含む硬化性成分とを含有するとき、硬化性成分の量(例えば、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量)は、全樹脂成分100質量部に対して、好ましくは70〜97質量部、より好ましくは80〜95質量部である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER828、三菱化学株式会社製)100質量部にポリエーテルスルホン(5003P、住友化学株式会社製)の粉末(粒子径約5μm)22.3質量部を室温で分散させた。得られた分散物を120℃のオイルバス中で4時間加熱して、ポリエーテルスルホン(PES)がエポキシ樹脂に溶解している樹脂組成物を得た。樹脂組成物を80℃にまで冷却した後、そこに銀粒子(DOWAエレクトロニクス株式会社製AG−2−1c、平均粒子径0.8μm)148.5質量部を混合及び分散させ、さらに4,4’−ジアミノジフェニルメタン(東京化成工業株式会社製、平均粒子径5μm以下に粉砕)26.2質量部を混合及び分散させた。
【0057】
樹脂組成物を、120℃に昇温して真空脱泡した後、モールド中に注ぎ込んだ。モールドは、あらかじめ離型処理を施し150℃のオーブン中で加熱しておいた。モールド中の樹脂組成物を150℃にて2時間加熱することでゲル化させ、その後、オーブンを180℃に昇温して2時間保持することで、厚さ1mmの硬化体(樹脂硬化板)を作製した。硬化体中の銀粒子の含有率は50質量%であり、銀粒子以外の樹脂成分中のPESの含有率は15質量%であった。
【0058】
樹脂硬化板の一部にカッターナイフで傷を入れ、液体窒素中で30秒冷却した後、樹脂硬化板を割断した。破断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、エポキシ樹脂を主成分とする相とPESを主成分とする相とが共に連続相を形成した相分離構造が観察され、硬化体中の銀粒子のうち96%(体積比換算値、以下同じ。)がエポキシを主成分とする相中に局在化していた。
【0059】
この樹脂硬化板について、三菱化学アナリテック製Loresta−GPを用いた4探針法により体積抵抗率を測定したところ、5点の平均値は7.5×10−4Ω・cmと低く、樹脂硬化板は、後述の比較例1と比較して体積抵抗率が約1/320という高導電性を示した。
【0060】
同樹脂組成物を用いた金属接着試験を行った。接着試験の被着体として冷間圧延鋼板SPCC−Dを用いた。前処理として、被着体をアセトンで脱脂した。鋼板寸法は長さ、幅、厚さを125mm×25mm×1.6mm、接着部分のラップ長さを12.5mm(接着面積312.5mm)とし、接着剤としての樹脂組成物を一方の鋼板の片面の接着部分に塗布し、そこに他方の鋼板の接着ラップ部分を重ね、クリップ止めにて固定し樹脂組成物を加熱硬化した。硬化終了後、温度25℃において材料強度試験機の引張りモードにて5mm/分の変位速度で引張り荷重を負荷し、せん断接着強さを測定した。5試験体について評価し、その平均値を取ったところ、19.1MPaという接着強さが示された。比較例1に比べ著しく高い接着強さである。また、同樹脂組成物の接着剤としての塗布性は良好であった。
【0061】
(実施例2)
添加する銀粒子の量を222.7質量部に増加したこと以外は実施例1と同様の手順により、硬化体(樹脂硬化板)を作製した。硬化体中の銀粒子の含有率は60質量%であり、銀粒子以外の樹脂成分中のPESの含有率は15質量%であった。硬化体の破断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、エポキシ樹脂を主成分とする相とPESを主成分とする相とが共に連続相を形成した相分離構造が観察され、硬化体中の銀粒子のうち95%の数の粒子がエポキシ樹脂を主成分とする相中に局在化していた。
【0062】
この樹脂硬化板について、体積抵抗率を測定したところ、5点平均値は2.9×10−4Ω・cm(後述の比較例2の体積抵抗率と比較して約1/169に相当する)と低く、樹脂硬化板は非常に高い導電性を示した。同樹脂組成物によるせん断接着強さを、実施例1と同様の手順で測定したところ、14.8MPaであった。これは比較例2に比べ著しく高い接着強さである。また、同樹脂組成物の接着剤としての塗布性は良好であった。
【0063】
(実施例3)
添加する銀粒子の量を594質量部に増加したこと以外は実施例1と同様の手順にて硬化体(樹脂硬化板)を作成した。硬化体中の銀粒子の含有率は80質量%であり、銀粒子以外の樹脂成分中のPESの含有率は15質量%であった。硬化体の破断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、エポキシ樹脂を主成分とする相とPESを主成分とする相とが共に連続相を形成した相分離構造が観察され、硬化体中の銀粒子のうち91%の数の粒子がエポキシを主成分とする相中に局在化していた。
【0064】
この樹脂硬化板の体積抵抗率を測定したところ、5点平均値は1.0×10−4Ω・cm(後述の比較例3と比較して約1/75に相当する)と低く、樹脂硬化板は非常に高い導電性を示した。同樹脂組成物によるせん断接着強さを、実施例1と同様の手順で測定したところ、11.9MPaであった。これは比較例3に比べ著しく高い接着強さである。また、同樹脂組成物の接着剤としての塗布性は、実施例1や実施例2に比べるとやや劣るものの、塗布可能な程度であった。
【0065】
(比較例1)
ポリエーテルスルホン(PES)をビスフェノールA型エポキシ樹脂に添加しないこと以外は、実施例1と同じ手順にて硬化体(樹脂硬化板)を作成し、その破断面を観察したところ、硬化体中の樹脂成分に相分離構造は観察されなかった。硬化体中の銀粒子の含有率は50質量%であった。硬化体の体積抵抗率を測定したところ5点平均値は2.4×10−2Ω・cmであった。つまり、この硬化体は、実施例1の約320倍の体積抵抗率を示し、相対的に導電性が低かった。また、同樹脂組成物によるせん断接着強さを実施例1と同様の手順で測定したところ6.6MPaであり、実施例1と比較して著しく低い値であった。
【0066】
(比較例2)
ポリエーテルスルホン(PES)をビスフェノールA型エポキシ樹脂に添加しないこと以外は、実施例2と同じ手順にて硬化体(樹脂硬化板)を作成し、その破断面を観察したところ、硬化体中の樹脂成分に相分離構造は観察されなかった。硬化体中の銀粒子の含有率は60質量%であった。硬化体の体積抵抗率を測定したところ5点平均値は4.9×10−2Ω・cmであった。つまり、この硬化体は、実施例2の約169倍の体積抵抗率を示し、相対的に導電性が低かった。また、同樹脂組成物によるせん断接着強さを実施例1と同様の手順で測定したところ6.9MPaであり、実施例1と比較して著しく低い値であった。
【0067】
(比較例3)
ポリエーテルスルホン(PES)をビスフェノールA型エポキシ樹脂に添加しないこと以外は、実施例3と同じ手順にて硬化体(樹脂硬化板)を作成し、その破断面を観察したところ、硬化体中の樹脂成分に相分離構造は観察されなかった。硬化体中の銀粒子の含有率は80質量%であった。硬化体の体積抵抗率を測定したところ5点平均値は7.5×10−3Ω・cmであった。つまり、この硬化体は、実施例3の約75倍の体積抵抗率を示し、相対的に導電性が低かった。また、同樹脂組成物によるせん断接着強さを実施例1と同様の手順で測定したところ5.5MPaであり、実施例1と比較して著しく低い値であった。
【0068】
(比較例4)
銀粒子を添加しないこと以外は実施例1と同じ手順にてPESを含むエポキシ樹脂組成物により硬化体(樹脂硬化板)を作成した。硬化体の体積抵抗率は、Loresta−GPを用いた4探針法では当然ながら測定限界を超えるほど高かった。また、同樹脂組成物によるせん断接着強さを実施例1と同様の手順で測定したところ17.9MPaであった。
【0069】
(比較例5)
銀粒子とポリエーテルスルホン(PES)を両方共に添加しないことの他は実施例1と同じ手順にて硬化体(樹脂硬化板)を作成した。硬化体の体積抵抗率は、Loresta−GPを用いた4探針法では当然ながら測定限界を超えるほど高かった。また、同樹脂組成物によるせん断接着強さを実施例1と同様の手順で測定したところ17.5MPaであった。PESを添加した比較例4とPESを添加していない比較例5は、同等の接着強さである。つまり、銀粒子が添加されない場合は、エポキシ樹脂へのPES添加による接着強さに与える効果は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る導電性樹脂組成物は、特に電気電子部材や構造部材用途等に有益であり、例えば、接着剤、強化複合材、注型材又は塗料として用いられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱又は光により硬化する樹脂成分と、導電性粒子と、を含有する導電性樹脂組成物であって、
前記樹脂成分が硬化したときに、当該導電性樹脂組成物が、前記樹脂成分により形成された硬化樹脂と、前記硬化樹脂中に分散する前記導電性粒子と、を含む硬化体を形成し、前記硬化樹脂が、2以上の相を含む相分離構造を有する、導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記硬化体中の前記導電性粒子が、前記相分離構造の2以上の相のうちいずれか1つの相中に偏在する、請求項1に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
前記導電性粒子が偏在している相が、前記相分離構造において連続相を形成する、請求項2に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
熱又は光により硬化する樹脂成分が硬化して形成された硬化樹脂と、前記硬化樹脂中に分散する導電性粒子と、を含み、
前記硬化樹脂が、2以上の相を含む相分離構造を有する、
導電性の硬化体。

【公開番号】特開2013−67755(P2013−67755A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209134(P2011−209134)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(508047820)
【Fターム(参考)】