説明

導電性樹脂組成物

【課題】曲げ弾性率、強度、体積固有抵抗値、成形性、成形品表面平滑性、寸法安定性に優れた導電性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 熱可塑性樹脂(a)80〜99.8重量部、ならびにポリエーテル型非イオン系界面活性剤(c)としてポリエーテルエステルアミド0.2〜20重量部の合計量100重量部に対し、平均繊維径が1〜10μm、平均繊維長が8〜70μmのケイ酸カルシウム繊維(d)を3〜40重量部配合してなる曲げ弾性率1,500MPa以上のICトレーまたはキャリアリール用導電性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂組成物およびこれを用いた成形品に関し、さらに詳細には、曲げ弾性率、強度、体積固有抵抗値、成形性、成形品表面平滑性、寸法安定性に優れた導電性樹脂組成物、およびこれを用いて成形されたICトレー、キャリアリールなどの成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性樹脂組成物は、産業界において広く普及し、さまざまな用途に利用されている。この導電性樹脂組成物としては、例えば各樹脂に対してカーボンブラックなどの導電性フィラーを高充填した導電性樹脂組成物があり、経済性に優れることもあって、産業界を中心として広く利用されている。また、界面活性剤や親水性セグメントを構造中に有する帯電防止型導電性樹脂をポリマーアロイ化してなる帯電防止型導電性樹脂組成物も広く普及しており、さまざまな用途に応用されている。
【0003】
ところで、近年、導電性高分子材料は、ICチップの包装関係に普及し、材料のバリエーションも汎用プラスチックスからエンジニアリングプラスチックスに至るまで多様化している。また、用いられる導電性充填材も、カーボンブラック以外に、炭素繊維、黒鉛、金属コートフィラー、金属繊維などが目的および機能に応じて広く使い分けられている。しかしながら、機能性の向上とともに、より経済性が追求されるようになり、さらに環境へ配慮した組成物であることが求められるようになっている。例えば、ICチップの包装に使用されるICトレーなどの素材としての導電性樹脂組成物は、ICチップの形態変化、軽量化、薄肉化、コンパクト化が検討されるようになり、強度と高い剛性が求められる傾向にある。
【0004】
素材として一般的に求められる物性としては、強度と曲げ弾性率であるが、この要求を満たすために、無機系の充填材が比較的多量に添加される例が一般的である(下記特許文献1:特開昭59−96142号公報)。しかしながら、無機系の充填材として広く使用されているケイ酸カルシウムの微粉末を使用したときは、成形品の曲げ弾性率、耐衝撃強度が低下して艶ムラが発生する。また、そのほか、無機系の充填材として使用される鱗片状の形態を有するマイカ粉、板状タルクなどは、曲げ弾性率、耐衝撃強度が低下して成形品の外観表面の平滑性が損なわれる。また、比較的多量に添加しなければならないため、加工性の低下が問題となる。
【0005】
一方、これらの強度特性の低下を防ぐために、ガラス繊維、炭素繊維などのチョップ繊維を併用する例もあるが、これらのチョップ繊維は、剛性、強度の付与には効果的ではあるものの、艶ムラ、ウェルドマーク、フラッシュマーク、毛羽立ちなどの成形品表面平滑性が満足のいくものではない。また、帯電防止型導電性樹脂は、熱可塑性樹脂に対し、親水性高分子をポリマーアロイ化することによって、永久的な帯電防止型導電性能が付与され産業上の利用価値が高い。しかし、これらのポリマーアロイ材料は、アロイ化される帯電防止型の導電性樹脂の親水性セグメントが柔軟性を有するものが多く一般的には材料の剛性が低下し、成形品の変形が生じる。これらの樹脂についても、無機の充填材、ガラス繊維などを併用することによって改質が試みられているが、上記の導電性樹脂組成物と同様、表面に、艶ムラ、ウェルドマーク、フラッシュマーク、毛羽立ちなどの成形品表面平滑性が満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−96142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような従来の技術的課題を背景になされたものであり、曲げ弾性率、強度、体積固有抵抗値、成形性、成形品表面平滑性、寸法安定性に優れた導電性樹脂組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱可塑性樹脂(a)70〜99.8重量部、ならびに導電性充填材(b)3〜30重量部および/または界面活性剤(c)0.2〜20重量部〔ただし、(a)+(b)+(c)=100重量部〕の合計量100重量部に対し、平均繊維径が1〜10μm、平均繊維長が8〜70μmのケイ酸カルシウム繊維(d)を3〜80重量部配合してなる曲げ弾性率1,500MPa以上の導電性樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性樹脂組成物は、曲げ弾性率、強度、体積固有抵抗値、成形性、成形品表面平滑性、寸法安定性に優れ、OA機器、家電分野、電気・電子分野、車両分野、その他の各種パーツ、ハウジング、パッケージなどに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂(a)は、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1,ポリ4−メチルペンテン−1、などのポリα−オレフィン;プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体などのα−オレフィン同士もしくはα−オレフィンと他のモノマーとの共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体(ABS樹脂)などのビニルモノマー重合体または共重合体;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエチレン;ポリフェニレンオキサイドなどの芳香族ポリエーテル;ポリカーボネート;ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのスルホン系ポリマーなどが挙げられる。本発明においては、上記の熱可塑性樹脂の中から1種または2種以上の混合物が目的に応じて適宜選択される。なかでも、成形性の点からポリプロピレン、結晶性プロピレン−エチレン共重合体や結晶性プロピレン−ブテン1共重合体などの結晶性プロピレン共重合体、ナイロン、ポリブチレンテレフタレートなどが好ましく、特にポリプロピレン、結晶性プロピレン−エチレン共重合体や結晶性プロピレン−ブテン1共重合体などの結晶性プロピレン共重合体が好ましい。耐熱性の点からは、芳香族ポリイミド、芳香族ポリエーテルなどが好ましい。
【0011】
本発明において、熱可塑性樹脂(a)の配合割合は、(a)成分および(b)成分からなる組成物の場合、組成物100重量部中70〜97重量部、好ましくは75〜95重量部、(a)成分および(c)成分からなる組成物の場合、組成物100重量部中80〜99.8重量部、好ましくは85〜99重量部、(a)成分、(b)成分および(c)成分からなる組成物の場合、組成物100重量部中70〜99.8重量部、好ましくは70〜96.8重量部である。熱可塑性樹脂(a)の配合割合が上記それぞれの場合の最低重量部未満であると、組成物の成形性、耐衝撃強度が著しく低下する。一方、熱可塑性樹脂(a)の配合割合が上記それぞれの場合の最高重量部を超えると、充分な導電性能が得られない。
【0012】
また、本発明において使用される導電性充填材(b)としては、カーボンブラック、炭素繊維、黒鉛、金属コートフィラー、金属繊維などが挙げられる。中でも、カーボンブラックが実用的である。カーボンブラックとしては、オイルファーネス法によって製造されるカーボンブラックとして新日鉄化学(株)製、商品名「ニテロン」、東海カーボン(株)製、商品名「シースト」、コロンビアカーボン社製、商品名「CONDUCTEX」などがあり、アセチレンガスから製造されるアセチレンブラックとして電気化学(株)製、商品名「デンカブラック」、ケッチェン法によって製造されるケッチェンブラックとしてライオン(株)製、商品名「ケッチェンブラック」などを挙げることができる。導電性充填材として使用されるカーボンブラックは、空気透過法により測定した比表面積が40m2 /g以上のものが用いられ、さらに好ましくは比表面積が700m2 /g以上のもの、とりわけ比表面積が1,000m2 /gの「ケッチェンブラック」(AKZO社製商品名)は、比較的低添加量で優れた導電性を付与することができる。また、アセチレンガスから製造されるアセチレンブラック、例えば、電気化学(株)製商品名「デンカブラック」は、樹脂への分散安定性が良好であるため、成形品表面の平滑性が重視される成形品を得るためには好適である。このように、成形品の要求される性能と用途に応じたカーボンブラックを適宜選択することができる。
【0013】
本発明において、導電性充填材(b)の配合割合は、(a)〜(c)成分中に3〜30重量部、好ましくは5〜25重量部である。導電性充填材(b)の配合割合が3重量部未満であると、導電性能が悪くなる。一方、30重量部を超えると、成形性、成形品外観が悪くなる。
【0014】
さらに、本発明において用いられる界面活性剤(c)は、一般的な界面活性剤であり、全界面活性剤の大半を占めているアニオン系界面活性剤、そのほかカチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤に分類される。具体的には、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤;第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤;アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤などの両性界面活性剤;ポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、多価アルコール型界面活性剤などの非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらは、いずれも本発明の帯電防止型樹脂組成物に使用することができる。多価アルコール型界面活性剤として、一般的に使用されている例としては、グリコール系が挙げられ、少量の添加量で帯電防止効果を発現することができる。また、ポリエーテル型非イオン系界面活性剤は、ポリエーテル鎖中のエーテル結合の酸素原子が水分子の水素原子と水素結合することにより親水性を有する。このようなポリエーテルセグメントを有する高分子の非イオン系界面活性剤、例えば下式(I)に示されるようなポリエーテルエステルアミドは永久的な帯電防止性能が付与され好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
本発明において、界面活性剤(c)の配合割合は、(a)〜(c)成分中に、0.2〜20重量部、好ましくは1〜15重量部である。界面活性剤(c)の配合割合が20重量部を超えると、収縮率が大きく、寸法安定性が劣り、精密な成形品には不向きである。一方、配合割合が0.2重量部未満では、導電性能が低下する。
【0017】
次に、本発明において使用されるケイ酸カルシウム繊維(d)は、CaSiO3 で表される化合物であり、石灰質原料およびケイ酸質原料から製造される。その結晶構造は、四面体が一次元方向につながった単鎖構造を基本骨格としている化合物である。繊維の大きさは、平均繊維径が1〜10μmであり、平均繊維長が8〜70μm、好ましくは10〜70μm、さらに好ましくは20〜50μmのものである。平均繊維長が8μm未満であると、充分な物理的補強効果が得られず、一方、平均繊維長が70μmを超えると、成形品外観、寸法安定性が悪くなる。
【0018】
本発明のケイ酸カルシウム繊維(d)は、(a)〜(c)成分との相溶性を高めるため、チタネートカップリング、シランカップリングなどの表面処理が施されているものも、使用が可能である。本発明の導電性樹脂組成物中におけるケイ酸カルシウム繊維(d)の配合割合は、上記(a)〜(c)成分の合計量100重量部に対し、3〜80重量部、好ましくは5〜60重量部である。ケイ酸カルシウム繊維(d)の配合割合が3重量部未満であると、収縮率が大きく、寸法安定性が劣り、精密な成形品には不向きである。一方、80重量部を超えると成形性および成形品表面の平滑性が著しく低下する。
【0019】
本発明の導電性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわないかぎり、安定剤、着色剤、強化用ゴム、エラストマー成分、可塑剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、安定剤、補強剤、滑剤、発泡剤、耐候(光)剤、金属粉などの添加剤を配合することができる。
【0020】
本発明の導電性樹脂組成物の曲げ弾性率は、1,500MPa以上、好ましくは1,800MPa以上である。曲げ弾性率が1,500MPa未満であると、剛性が不足し、成形品が変形する。
【0021】
本発明の導電性熱可塑性樹脂は、通常の熱可塑性樹脂の混合、混練に用いられる通常の装置、設備を用いて問題なく製造できる。具体的には、タンブラー、ヘンシェルミキサーなどの予備混合機に、熱可塑性樹脂(a)、導電性充填材(b)、界面活性剤(c)、ケイ酸カルシウム繊維(d)、その他の成分を仕込み、均一に混合する。その後、混合物を押し出し機に供給して溶融混練し、ダイから押し出すとともにペレタイザーによりペレット化する。押し出し機としては、ベント付きの単軸、二軸異方向、二軸同方向押し出し機が望ましい。また、押し出し機に代えて、スーパーミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、タンブラー、Bussコニーダーなどの混練機を用いても良い。また、各成分の投入方法、順序も、適宜選択できる。好ましくは、(a)成分ならびに(b)成分および/または(c)成分が溶融状態になったのち、ケイ酸カルシウム繊維(d)を配合し溶融混合すると、低剪断応力となり、繊維破断が少なく、材料強度の低下を防止する。本発明の導電性樹脂組成物は、その優れた特性を生かし、OA機器、家電分野、電気・電子分野、車両分野、その他の各種パーツ、ハウジング、パッケージなどに好適に使用することができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例中における部および%は、特に断らない限り、重量基準である。
【0023】
実施例および比較例に用いた各種成分は、以下のとおりである。
(a)成分(a−1):ABS樹脂(曲げ弾性率;2,500MPa)、東レ株式会社製、商品名「トヨラック250」
(a−2):ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)(曲げ弾性率;2,100MPa)、旭化成工業株式会社製、商品名「ザイロンX9108」
(a−3):ゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)(曲げ弾性率;2,000MPa)、出光石油化学株式会社製、商品名「出光スチロールIT41」
(b)成分(b−1):アセチレンブラック、電気化学(株)製、商品名「デンカブラック」(比表面積;60m2 /g)
(b−2):ケッチェンブラック、ライオン(株)製、商品名「ケッチェンブラック600JD」(比表面積;1,270m2 /g)
(c)成分(c−1):ポリエーテルエステルアミド(高分子型界面活性剤)、三洋化成(株)製、商品名「ペレスタット6321」
(c−2):グリセリンモノステアレート(グリコール系界面活性剤)、理研ビタミン(株)製、商品名「リケマールS100」
【0024】
(d)成分(d−1):ケイ酸カルシウム繊維(平均繊維径;1〜10μm、平均繊維長;20〜40μm)、土屋カオリン(株)製、商品名「ケモリットS−3」
(d′−1):タルク(平均粒径;7μm)、竹原化学(株)製、商品名「タルクTT」
(d′−2):マイカ(平均粒径;90μm)、(株)クラレ製、商品名「スゾライト・マイカ200KI」
(d′−3):ガラス繊維(平均繊維径;13μm、平均繊維長;3mm)、日東紡(株)製、商品名「グラスファイバーCS−3PE−291S」
(d′−4):ピッチ系炭素繊維(平均繊維径;12μm、平均繊維長;3mm)、大阪ガス(株)製、商品名「ザイラスGC−03J−415」
(d′−5):ケイ酸カルシウム微粉末(平均粒径;8μm未満)、上記(d−1)をボールミルで粉砕したもの
【0025】
試験片の調製
サンプルペレットを型締め圧力80ton/cm2 の射出成形機により、試験片を成形した。成形条件は、シリンダー温度は、(a−1)または(a−3)の場合220℃、(a−2)の場合320℃、金型温度は、(a−1)または(a−3)の場合60℃、(a−2)の場合130℃である。
物性測定
試験片を室温23±2℃、相対湿度50%中で24時間調整後、下記物性の測定を行った。
(1)曲げ強度、曲げ弾性率、ASTM D760に準じて測定した。下記表中の単位は、MPaである。
(2)アイゾット(IZOD)衝撃強度厚み1/4インチ、ノッチ付きの試験片を使用して、ASTM D256に準じて測定した。下記表中の単位は、J/mである。
(3)体積固有抵抗値(導電性)
SRIS 2301に準じて下記のように測定した。幅6×長さ6×厚み0.3(cm)の射出成形試験片を用い、電極としてプレートの両端に導電性塗料を幅1cm塗布した後、両電極間における体積抵抗値を求めた。下記表中の単位は、Ωcmである。
【0026】
(4)成形性成形品の成形性〔流動性、離型性、ショート、スプルー切れなどの総合判定〕は、下記の判断基準により評価した。
◎:非常に良好
○:成形可能
△:成形可能であるが、安定した成形操作が行えない。
×:成形不可能
【0027】
(5)成形品外観(平滑性)
成形品の平滑性〔変形(歪み、反り、ひけ)、艶むら、ウェルドマーク、フラッシュマーク、毛羽立ちなどの総合判定〕は、成形品を目視して下記の判断基準により評価した。
◎:非常に良好
○:使用可能
△:汎用部品には使用可能であるが精密部品には不向き
×:使用不可
【0028】
(6)収縮率、反りサンプルペレットを型締め圧力220ton/cm2 の射出成形機により、幅13×長さ32×厚み0.5(cm)の試験片を成形した。成形条件は、シリンダー温度は、(a−1)または(a−3)の場合220℃、(a−2)の場合320℃、金型温度は、(a−1)または(a−3)の場合60℃、(a−2)の場合130℃である。試験片を室温23±2℃、相対湿度50%中で24時間調整後、試験片を(株)ミツトヨ製三次元測定機(BHN506)により測定したものを生地試験片の測定結果とした。また、(a−2)の場合、150℃で5時間アニール処理した後の試験片についても測定した。下記表中の収縮率の単位は、1/1000、反りの単位は%である。
【0029】
実施例1〜4、比較例1〜10(サンプルペレットの調製)
表1〜3に示す配合割合で、(a)成分および(c)成分をタンブラーミキサーにより予備ドライブレンドし、47mm同方向2軸押し出し機により220℃で溶融混合しながら、(d−1)成分または(d′)成分を溶融状態の混合物に、押し出し機のバレル中央部より定量フィーダーを用いて切り出し投入した。投入後ダイスからでる紐状の樹脂溶融混合物を水槽にて冷却処理し、カッターに通して導電性樹脂組成物のペレットを作成した。これらの測定結果を表1〜3に示す。
【0030】
実施例5〜8、比較例11〜16(サンプルペレットの調製)
表4〜5に示す配合割合で、(a)〜(c)成分をタンブラーミキサーにより予備ドライブレンドし、47mm同方向2軸押し出し機により220℃で溶融混合しながら、(d−1)成分または(d′)成分を溶融状態の混合物に、押し出し機のバレル中央部より定量フィーダーを用いて切り出し投入した。投入後ダイスからでる紐状の樹脂溶融混合物を水槽にて冷却処理し、カッターに通して導電性樹脂組成物のペレットを作成した。これらの測定結果を表4〜5に示す。
【0031】
比較例17〜43(サンプルペレットの調製)
表6〜10に示す配合割合で、(a)〜(c)成分をタンブラーミキサーにより予備ドライブレンドし、47mm同方向2軸押し出し機により320℃で溶融混合しながら、(d−1)成分または(d′)成分を溶融状態の混合物に、押し出し機のバレル中央部より定量フィーダーを用いて切り出し投入した。投入後ダイスからでる紐状の樹脂溶融混合物を水槽にて冷却処理し、カッターに通して導電性樹脂組成物のペレットを作成した。これらの測定結果を表6〜10に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
【表5】

【0037】
【表6】

【0038】
【表7】

【0039】
【表8】

【0040】
【表9】

【0041】
【表10】

【0042】
表1より、ABS樹脂に界面活性剤(c)およびケイ酸カルシウム繊維(d)を配合した帯電防止型導電性樹脂組成物は、曲げ弾性率が2,300MPa以上と良好であった。また表2の比較例より、界面活性剤(c)が、(a)成分99.9部に対し、0.1部〔(a)成分および(c)成分合計量100部中0.2部未満〕であると導電性が劣る。一方、(a)成分75部に対し、25部〔(a)成分および(c)成分合計量100部中20部を超える〕であると、収縮率が大きく、寸法安定性が劣り、精密な成形品を得るのには不向きである。また、ケイ酸カルシウム繊維(d)が、合計量100部に対し、3部未満であると、収縮率が大きく、寸法安定性が劣り、精密な成形品を得るのには不向きである。一方、80部より大きいと、成形性と成形品表面の平滑性が劣る。さらに、表5の比較例より、ケイ酸カルシウム繊維(d)の代わりにタルクを配合した樹脂組成物は、収縮率が大きく、寸法安定性が劣り、精密な成形品を得るのには不向きである。よって、タルクは、本発明のケイ酸カルシウム繊維(d)の代わりにはならない。また、表3の比較例より、(a)成分として、ABS樹脂(a−1)の代わりに、ゴム変性スチレン系樹脂(a−3)を使用すると、曲げ弾性率が本発明の範囲外(1,300MPa)となり、剛性が不足し、成形品が変形する。
【0043】
表4より、PPEに導電性充填剤(b)、界面活性剤(c)およびケイ酸カルシウム繊維(d)を配合した導電性樹脂組成物は、導電性能に優れ、曲げ弾性率が2,500MPa以上と良好であった。また表5の比較例より、ケイ酸カルシウム繊維(d)が、合計量100部に対し、3部未満であると、収縮率が大きく、寸法安定性が劣り、精密な成形品を得るのには不向きである。一方、80部より大きいと、成形品と成形品表面の平滑性が劣る。ケイ酸カルシウム繊維(d)の代わりにタルクを配合した樹脂組成物は、曲げ弾性率が低く、収縮率が大きく、寸法安定性が劣り、精密な成形品を得るのには不向きである。
【0044】
表6より、PPEに導電性充填剤(b)およびケイ酸カルシウム繊維(d)を配合した導電性樹脂組成物は、曲げ弾性率が3,000MPa以上と良好であった。また、表7の比較例より、導電性充填材(b)が、(a)成分98部に対し、2部〔(a)成分および(b)成分合計量100部中3部未満〕であると導電性が劣る。一方、(a)成分65部に対し、35部〔(a)成分および(b)成分合計量100部中30部を超える〕であると、耐衝撃強度、成形性が劣る。さらに、ケイ酸カルシウム繊維(d)が、合計量100部に対し、3部未満であると、生地の収縮率およびアニール後の収縮率が大きく、寸法安定性が劣り、精密な成形品、特に熱処理する精密な成形品(ICトレーなど)を得るのには不向きである。一方、80部より大きいと、成形品と成形品表面の平滑性が劣る。表8の比較例より、ケイ酸カルシウム繊維(d)の代わりにガラス繊維を配合した樹脂組成物は、成形品表面平滑性および反りに劣ったものであり、ガラス繊維は本発明のケイ酸カルシウム繊維(d)の代わりにはならない。ケイ酸カルシウム繊維(d)の代わりにタルクを配合した樹脂組成物は、アイゾット衝撃強度が低く成形品表面平滑性が劣るものであった。表9の比較例より、ケイ酸カルシウム繊維(d)の代わりにマイカを配合した樹脂組成物は、アイゾット衝撃強度が低く成形品表面平滑性が劣るものであった。また、ケイ酸カルシウム繊維(d)の代わりにケイ酸カルシウム微粉末を配合した樹脂組成物は、アイゾット衝撃強度が低く、成形品表面平滑性が劣るものであった。表9〜10の比較例より、PPEに対して、ケイ酸カルシウム繊維(d)の代わりに炭素繊維およびタルクを配合した樹脂組成物は、炭素繊維が樹脂組成物全体(100部中)の5部以下では、体積固有抵抗値が得られず、導電性を有さないものであった。一方、5部を超えると成形品表面平滑性が劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(a)80〜99.8重量部、ならびにポリエーテル型非イオン系界面活性剤(c)としてポリエーテルエステルアミド0.2〜20重量部の合計量100重量部に対し、平均繊維径が1〜10μm、平均繊維長が8〜70μmのケイ酸カルシウム繊維(d)を3〜40重量部配合してなる曲げ弾性率1,500MPa以上のICトレー用導電性樹脂組成物。
【請求項2】
熱可塑性樹脂(a)80〜99.8重量部、ならびにポリエーテル型非イオン系界面活性剤(c)としてポリエーテルエステルアミド0.2〜20重量部の合計量100重量部に対し、平均繊維径が1〜10μm、平均繊維長が8〜70μmのケイ酸カルシウム繊維(d)を3〜40重量部配合してなる曲げ弾性率1,500MPa以上のキャリアリール用導電性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1記載の導電性樹脂組成物からなるICトレー。
【請求項4】
請求項2記載の導電性樹脂組成物からなるキャリアリール。

【公開番号】特開2011−32481(P2011−32481A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213115(P2010−213115)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【分割の表示】特願平11−159041の分割
【原出願日】平成11年6月7日(1999.6.7)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】