説明

導電性歯ブラシ

【課題】ブラシ柄の破損時に通電板の露出を防止し得る導電性歯ブラシを提供する。
【解決手段】ブラシ柄2を備えたハウジング1と、ブラシ柄2の先端部に設けられ、導電性を備えたブラシ部3と、ブラシ柄2に設けられ、ハウジング1からブラシ部3に微弱電流を供給する通電板13とを備えた導電性歯ブラシにおいて、通電板13の先端を、ブラシ柄2の機械的強度が最も劣る低強度部より該ブラシ柄2の基端側に位置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、口腔内に微弱な電流を流しながら刷掃する導電性歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性歯ブラシは、口腔内に微弱な電流を流しながら歯を磨くことにより、歯垢を歯面あるいは歯間から除去し易くしてブラッシングの刷掃効果を向上させ、口腔内の組織の新陳代謝や血行改善を図るようにしたものである。
【0003】
このような導電性歯ブラシでは、特許文献1に開示されるように、微弱な電流を供給するための通電板がブラシ柄内に配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4375482号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される導電性歯ブラシでは、例えば歯ブラシ本体を落下させてしまうと、ブラシ柄が破損することがある。このとき、ブラシ柄は強度が最も劣る部分で破損することが多く、例えばブラシ部とブラシ柄との嵌合部近傍で破損する。すると、ブラシ柄の先端部に通電板が露出するという問題点がある。
【0006】
この発明の目的は、ブラシ柄の破損時に通電板の露出を防止し得る導電性歯ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の導電性歯ブラシは、ブラシ柄を備えたハウジングと、前記ブラシ柄の先端部に設けられ、導電性を備えたブラシ部と、前記ブラシ柄に設けられ、前記ハウジングから前記ブラシ部に微弱電流を供給する通電板とを備えた導電性歯ブラシにおいて、前記通電板の先端を、前記ブラシ柄の機械的強度が最も劣る低強度部より該ブラシ柄の基端側に位置させたことを特徴とする。
【0008】
また、上記構成において、前記通電板の先端と、前記ブラシ部とを導電部材で電気的に接続することが好ましい。
また、上記構成において、前記導電部材を、導電性を備えた合成樹脂で形成することが好ましい。
【0009】
また、上記構成において、前記導電部材を前記ブラシ柄のヘッド部に取着して前記導電部材の一端を前記通電板に当接させ、前記ヘッド部を前記ブラシ部に取着して、前記通電板とブラシ部とを前記導電部材を介して電気的に接続することが好ましい。
【0010】
また、上記構成において、前記ヘッド部と導電部材との少なくともいずれかを低弾性率の材料で形成することが好ましい。
また、上記構成において、前記ブラシ部を低弾性率の材料で形成することが好ましい。
【0011】
また、上記構成において、前記導電部材を前記ブラシ柄にインサート成形することが好ましい。
また、上記構成において、前記ブラシ柄の先端に、導電性を備えた材質でブラシ部を一体成形し、前記通電板の先端を該ブラシ部で覆って電気的に接続することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブラシ柄の破損時に通電板の露出を防止し得る導電性歯ブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一の実施形態を示す断面図である。
【図2】第一の実施形態のブラシ柄及びブラシ部を示す正面図である。
【図3】第一の実施形態のブラシ柄及びブラシ部を示す一部破断断面図である。
【図4】第一の実施形態のブラシ柄及びブラシ部を示す縦断面図である。
【図5】第二の実施形態のブラシ柄及びブラシ部を示す縦断面図である。
【図6】第三の実施形態のブラシ柄及びブラシ部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第一の実施形態)
以下、この発明を具体化した第一の実施形態を図1〜図4に従って説明する。図1に示す導電性歯ブラシは、有底円筒状のハウジング1の先端部にブラシ柄2の基端部が取着され、そのブラシ柄2の先端にブラシ部3が取着される。
【0015】
前記ハウジング1内には、電池4からの給電に基づいて動作するリニアオシレータ5と、リニアオシレータ5の動作を制御する駆動制御回路を搭載した回路基板6が収容されている。また、リニアオシレータ5には駆動軸7が軸方向に移動可能に支持されている。
【0016】
前記ハウジング1の先端部側の外周面には操作スイッチ8が設けられている。そして、操作スイッチ8の操作によりリニアオシレータ5の動作が制御され、リニアオシレータ5の作動に基づいて前記駆動軸7が軸方向に高速で微振動するようになっている。
【0017】
前記駆動軸7は導電性を有する金属で形成され、例えば前記電池4のプラス側端子に電気的に接続されている。また、前記ハウジング1の一側には同ハウジング1の基端部から先端部にかけて外周面に露出する電極部9が取着され、その電極部9は例えば前記電池4のマイナス側端子に電気的に接続されている。
【0018】
前記駆動軸7の先端には取付用シャフト10が取着され、その取付用シャフト10の先端はハウジング1の先端から突出している。取付用シャフト10は、前記駆動軸7と同様に導電性を有する材質で形成され、駆動軸7と一体に微振動するとともに、先端部は断面D字状に形成されている。
【0019】
図4に示すように、前記ブラシ柄2の基端部には前記ハウジング1から突出される取付用シャフト10を嵌着固定するための取付孔11が形成され、その取付孔11に取付用シャフト10を嵌着すると、ハウジング1に対しブラシ柄2が相対回転不能に保持される。そして、前記駆動軸7の振動が取付用シャフト10を介してブラシ柄2に伝達されるようになっている。なお、ハウジング1とブラシ柄2との間には、所定の間隙が確保されて、ハウジング1がブラシ柄2の振動に干渉しないようになっている。
【0020】
前記ブラシ柄2内には、同ブラシ柄2の長手方向に通電板収容部12が形成され、その通電板収容部12は前記取付孔11に連通している。また、通電板収容部12はブラシ柄2の一側に開口され、その開口部から通電板13が挿入されて通電板収容部12内に保持されている。前記通電板13は、導電性を備え、且つ弾性を有する金属板で形成されている。
【0021】
前記通電板13の基端部は前記取付孔11内まで延設されている。そして、取付孔11に前記取付用シャフト10を嵌着したとき、通電板13の基端に形成された屈曲部14が取付用シャフト10の先端部に弾性的に当接して、取付用シャフト10と通電板13とが電気的に接続されるようになっている。
【0022】
前記通電板収容部12の開口部には通電板収容部12を覆う蓋体15が取着される。蓋体15の裏面には、前記通電板13に当接する複数のリブ16が形成され、そのリブ16で通電板13が通電板収容部12の底面に押し付けられた状態で保持されている。
【0023】
図2及び図4に示すように、前記ブラシ柄2の先端部近傍において、前記通電板収容部12の開口側の反対側には、前記通電板13の先端部を露出させる貫通孔17が形成されている。
【0024】
図3に示すように、前記ブラシ柄2の先端部には前記ブラシ部3を取着するための板状のヘッド部18が形成されている。ヘッド部18は、その基端部にくびれ部19が形成されている。
【0025】
前記ヘッド部18の基端部には取付孔20が形成され、その取付孔20に例えば低弾性率の導電性シリコンゴムで形成される導電部材21が嵌着されている。導電部材21の基端縁は前記くびれ部19よりブラシ柄2の基端側に位置している。
【0026】
前記通電板13の先端部には直角に屈曲された当接片22が形成され、前記取付孔20に嵌着された導電部材21の基端縁を当接片22で押圧するようになっている。従って、通電板13と導電部材21とが電気的に接続されている。
【0027】
前記ヘッド部18には前記ブラシ部3が嵌着される。ブラシ部3は、例えば低弾性率の導電性シリコンゴムで形成され、ブラシ基台23の表裏両面に異なる径のブラシ毛24a,24bが形成されている。そして、ブラシ基台23の基端部に開口する嵌合孔25に前記ヘッド部18を嵌合すると、ブラシ柄2の先端部にブラシ部3が取着される。
【0028】
また、前記導電部材21は前記取付孔20の開口部から若干露出するように嵌合され、ヘッド部18をブラシ部3の嵌合孔25に嵌合するとき、前記導電部材21と嵌合孔25の内側面との間で所要の摩擦力が発生するようになっている。この結果、導電部材21とブラシ部3とが電気的に接続されている。
【0029】
次に、上記のように構成された導電性歯ブラシの作用を説明する。
操作スイッチ8を操作してリニアオシレータ5を作動させると、駆動軸7が軸方向に高速で微振動し、その微振動が取付用シャフト10を介してブラシ柄2に伝達される。そして、ブラシ柄2の振動にともなってブラシ部3が振動し、例えば径の細いブラシ毛24aで歯を磨き、あるいは歯茎のマッサージを行うことが可能となる。また、ブラシ毛24aを歯や歯茎に当てると、径の太いブラシ毛24bが口腔の内面に当接するため、口腔内マッサージが可能となる。
【0030】
導電性歯ブラシのこのような使用時には、導電性歯ブラシと人体との間で微弱電流が流れる閉ループが形成される。すなわち、電池4のプラス側端子→駆動軸7→取付用シャフト10→通電板13→導電部材21→ブラシ部3→人体→電極部9→電池4のマイナス側端子に至る閉ループで微弱な電流が流れる。また、通電板13から貫通孔17内の唾液を介して口腔内面に微弱な電流が流れる。すると、歯垢の除去が容易となり、マッサージ効果も向上する。
【0031】
上記のような導電性歯ブラシを誤って落下させて、ブラシ柄2が破損する場合には、ヘッド部18のくびれ部19が折れ易い。しかし、この実施形態ではブラシ柄2のヘッド部18がくびれ部19で折れても、通電板13の先端部はブラシ柄2から露出されることはない。
【0032】
また、通電板13とブラシ部3とを、ブラシ部3内に嵌合された導電部材21を介して電気的に接続するので、ブラシ柄2の構造を複雑化することはなく、ブラシ柄2とブラシ部3の組み立てを容易に行うことができる。
【0033】
上記のように構成された導電性歯ブラシでは、次に示す効果を得ることができる。
(1)歯のブラッシング時に、口腔内に微弱な電流を流すことにより、歯垢の除去効果を向上させ、且つ口腔内のマッサージ効果を向上させることができる。
(2)通電板13の先端は、ブラシ柄2のヘッド部18のくびれ部19よりブラシ柄2の基端側に位置している。従って、ブラシ柄2が機械的強度上最も弱い部分すなわちくびれ部19で折れた場合にも、ブラシ柄2からの通電板13の露出を防止することができる。
(3)通電板13とブラシ部3とを、ブラシ部3に取着した導電部材21を介して電気的に接続するので、ブラシ柄2の構成を複雑化することはない。
(4)ブラシ部3を低弾性率の導電性シリコンゴムで形成したので、ブラシ部3の嵌合孔25にヘッド部18嵌合することにより、ブラシ部3とブラシ柄2との組み立てを容易に行うことができる。
(5)導電部材21及びブラシ部3を低弾性率の導電性シリコンゴムで形成したので、ブラシ柄2及びブラシ部3の微振動によっても充分な接触圧が確保されて、電気的に安定して接続することができる。
(第二の実施形態)
図5は第二の実施形態を示す。この実施形態は、ブラシ柄に対する導電部材の取付構成を第一の実施形態とは異なる構成としたものである。第一の実施形態と同一構成部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0034】
ブラシ柄2のヘッド部18に設けられた取付孔31には導電部材32がインサート成形されている。導電部材32は、例えば導電性PP樹脂で形成され、通電板13の先端部はこの導電部材32のインサート成形時に、導電部材32に圧入されている。また、通電板13の先端は、第一の実施形態と同様に、ヘッド部18のくびれ部19よりブラシ柄2の基端側に位置している。
【0035】
前記導電部材32はヘッド部18の表面に露出するようにインサート成形され、ヘッド部18をブラシ部3に嵌合することにより、通電板13とブラシ部3とが電気的に接続されるようになっている。
【0036】
このように構成された導電性歯ブラシでは、第一の実施形態で得られた効果に加えて次に示す効果を得ることができる。
(1)導電部材32をヘッド部18にインサート成形したので、ブラシ柄2の部品点数を削減することができる。また、部品点数を削減できることから、部品のばらつきに起因する製品のばらつきを抑えることができる。
(第三の実施形態)
図6は、第三の実施形態を示す。この実施形態は、ブラシ柄の先端部にブラシ部を一体成形したものである。第一の実施形態と同一構成部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0037】
図6に示すように、ブラシ柄2の先端部にはブラシ部35が一体成形されている。すなわち、ブラシ柄2に通電板13を収容して蓋体15を取着する。このとき、通電板13の先端はブラシ柄2の先端部の凹部36内に露出されているが、ブラシ柄2の先端より突出することはない。
【0038】
次いで、ブラシ柄2の先端部にブラシ部35が導電性エラストマーで一体成形され、通電板13の先端がブラシ部35の基端部で覆われて、電気的に接続されている。
このように構成された導電性歯ブラシでは、第一の実施形態で得られた効果に加えて次に示す効果を得ることができる。
(1)ブラシ柄2の先端部に、通電板13の先端部を覆うブラシ部を一体成形することにより、ブラシ柄2が破損しても通電板13の露出を防止することができる。
【0039】
上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・第一の実施形態で、導電部材21とブラシ部3は、少なくとも一方が低弾性率の導電性材料であればよい。
・第一〜第三の実施形態において、ブラシ部には片側にのみ1種類の径のブラシ毛を設けてもよい。
・第一〜第三の実施形態において、ブラシ部は歯磨き専用のブラシ部としてもよい。
・第一〜第三の実施形態において、ハウジング、ブラシ柄、ブラシ部を一体としてもよい。
・第一〜第三の実施形態において、通電板をブラシ柄からハウジング内に延設して、ハウジング内で電力の供給を受けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…ハウジング、2…ブラシ柄、3,35…ブラシ部、13…通電板、18…ヘッド部、19…低強度部(くびれ部)、21,32…導電部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ柄を備えたハウジングと、
前記ブラシ柄の先端部に設けられ、導電性を備えたブラシ部と、
前記ブラシ柄に設けられ、前記ハウジングから前記ブラシ部に微弱電流を供給する通電板と
を備えた導電性歯ブラシにおいて、
前記通電板の先端を、前記ブラシ柄の機械的強度が最も劣る低強度部より該ブラシ柄の基端側に位置させたことを特徴とする導電性歯ブラシ。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性歯ブラシにおいて、
前記通電板の先端と、前記ブラシ部とを導電部材で電気的に接続したことを特徴とする導電性歯ブラシ。
【請求項3】
請求項2に記載の導電性歯ブラシにおいて、
前記導電部材を、導電性を備えた合成樹脂で形成したことを特徴とする導電性歯ブラシ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の導電性歯ブラシにおいて、
前記導電部材を前記ブラシ柄のヘッド部に取着して前記導電部材の一端を前記通電板に当接させ、前記ヘッド部を前記ブラシ部に取着して、前記通電板とブラシ部とを前記導電部材を介して電気的に接続したことを特徴とする導電性歯ブラシ。
【請求項5】
請求項4に記載の導電性歯ブラシにおいて、
前記ヘッド部と導電部材との少なくともいずれかを低弾性率の材料で形成したことを特徴とする導電性歯ブラシ。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の導電性歯ブラシにおいて、
前記ブラシ部を低弾性率の材料で形成したことを特徴とする導電性歯ブラシ。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれか1項に記載の導電性歯ブラシにおいて、
前記導電部材を前記ブラシ柄にインサート成形したことを特徴とする導電性歯ブラシ。
【請求項8】
請求項1に記載の導電性歯ブラシにおいて、
前記ブラシ柄の先端に、導電性を備えた材質でブラシ部を一体成形し、前記通電板の先端を該ブラシ部で覆って電気的に接続したことを特徴とする導電性歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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