説明

導電性液状ポリマー、導電性ゴム組成物および導電性樹脂組成物

【課題】抵抗値のばらつきを抑え、半導電性領域での抵抗制御が容易な導電性の組成物を得ることができる導電性液状ポリマーならびにそれを含有する導電性ゴム組成物および導電性樹脂組成物の提供。
【解決手段】液状ポリマーと溶媒とを含有する系内で導電性ポリマーを合成し、合成後に前記溶媒を除去して得られうる、導電性液状ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性液状ポリマー、導電性ゴム組成物および導電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
OA機器などで用いられる半導体材料は、通常、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)やシリコーンゴム中に導電性材料(例えば、カーボンブラック等)を配合し、抵抗値が107〜1012Ω・cmとなる領域で使用している。
しかしながら、導電性材料としてカーボンブラックを用いると、ある閾値でカーボンブラックの凝集が起こるため、半導電性領域(抵抗値:106〜1012Ω・cm)での抵抗制御が非常に難しく、製品内に部分的に抵抗値のばらつきが生じることがあった。
【0003】
このような抵抗値のばらつきを小さくする手法として、導電性があまり高くない粒子を系内に均一に分散させる方法が知られており、例えば、特許文献1では、「還元粘度が0.3dl/g以上のポリウレタン樹脂に導電剤としてポリアニリンを配合したことを特徴とする導電性樹脂組成物。」が提案されている。
しかしながら、上記特許文献1に記載の導電性樹脂組成物では、ポリアニリンを合成し、乾燥した後に、ポリウレタン樹脂に配合するため、ポリアニリンの凝集が起こり、細かい分散ができず、抵抗値のばらつきを十分に改善できない問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2003−321604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、抵抗値のばらつきを抑え、半導電性領域での抵抗制御が容易な導電性の組成物を得ることができる導電性液状ポリマーならびにそれを含有する導電性ゴム組成物および導電性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ゴムや樹脂への配合に、液体状態の導電性ポリマー(導電性液状ポリマー)を用いることにより、その凝集を防ぐとともにその分散性を向上させることができ、抵抗値のばらつきを抑え、半導電性領域での抵抗制御が容易な導電性の組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(5)を提供する。
(1)液状ポリマーと溶媒とを含有する系内で導電性ポリマーを合成し、合成後に上記溶媒を除去して得られうる、導電性液状ポリマー。
(2)上記(1)に記載の導電性液状ポリマーと、ゴムとを含有する導電性ゴム組成物。
(3)上記(1)に記載の導電性液状ポリマーと、樹脂とを含有する導電性樹脂組成物。
(4)導電性ポリマーを溶媒中に分散させた溶媒分散液と液状ポリマーとを混合し、混合後に上記溶媒を除去して得られる導電性液状ポリマーと、ゴムと、を含有する導電性ゴム組成物。
(5)導電性ポリマーを溶媒中に分散させた溶媒分散液と液状ポリマーとを混合し、混合後に上記溶媒を除去して得られる導電性液状ポリマーと、樹脂と、を含有する導電性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
以下に説明するように、本発明によれば、抵抗値のばらつきを抑え、半導電性領域での抵抗制御が容易な導電性の組成物を得ることができる導電性液状ポリマーならびにそれを含有する導電性ゴム組成物および導電性樹脂組成物を提供することができる。そのため、本発明の導電性樹脂組成物や導電性ゴム組成物は、OA機器などで用いられる半導体材料として非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性液状ポリマーは、液状ポリマーと溶媒とを含有する系内で導電性ポリマーを合成し、合成後に該溶媒を除去して得られうる、導電性液状ポリマーである。
次に、液状ポリマー、溶媒、導電性ポリマーおよび導電性液状ポリマーについて詳述する。
【0010】
<液状ポリマー>
上記液状ポリマーは、液状のゴムまたは樹脂であれば特に限定されず、重合度が2〜20程度の低重合体(オリゴマー)であってもよい。
液状ポリマーとしては、具体的には、例えば、液状ポリブテン;液状ポリイソブテン;液状ポリイソプレン;液状ポリブタジエン;液状ポリα−オレフィン;液状エチレンα−オレフィン共重合体;液状エチレンプロピレン共重合体;液状エチレン−プロピレン−ジエン共重合体;液状エチレンブチレン共重合体、液状アクリロニトリルブタジエン共重合体、液状シリコーンゴム、ヒドロキシ基末端変性ポリブタジエンおよびその水素添加物、ヒドロキシ基末端変性ポリイソプレンおよびその水素添加物などのヒドロキシ基変性ポリマー;エポキシ変性ポリブタジエンなどのエポキシ基変性ポリマー;アクリル末端ポリブタジエンなどの(メタ)アクリル基変性ポリマー;シラングラフトポリオレフィン、シラン末端ポリオレフィンなどの加水分解性ケイ素基含有ポリオレフィン;無水マレイン酸変性ポリイソプレン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブテン、無水マレイン酸変性エチレンプロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレンαオレフィン共重合体などの酸無水物基変性ポリマー;カルボキシ変性ポリブタジエン、カルボキシ変性ポリイソプレン、カルボキシ基末端アクリロニトリルブタジエン共重合体(CTBN)などのカルボキシ基変性ポリマー;アミノ基末端アクリロニトリルブタジエン共重合体(ATBN)などのアミノ基変性ポリマー;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、液状エチレンプロピレン共重合体、液状アクリロニトリルブタジエン共重合体であるのが、汎用性があり、ゴムや樹脂との相溶性も優れるため好ましい。
【0011】
液状ポリマーのその他の例としては、熱硬化性樹脂の原料となる液状オリゴマーが挙げられる。具体的には、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が好適に挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、エポキシ樹脂であるのが、汎用性があり、取り扱い性にも優れ、ゴムや樹脂との相溶性も優れるため好ましい。
また、液状ポリマーのその他の例としては、一般に可塑剤と言われる石油系軟化剤も挙げられる。具体的には、パラフィン系軟化剤、芳香族系軟化剤、ナフテン系軟化剤等が好適に挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。この石油系軟化剤は、ゴムや樹脂との相性(例えば、相溶性等)によって使い分けをすればよい。
【0012】
本発明においては、このような液状ポリマーの数平均分子量は、200〜数万程度であるのが好ましく、3000〜10000程度であるのがより好ましい。
【0013】
<溶媒>
上記溶媒は、後述する導電性ポリマーの少なくとも一部を溶解または膨潤させることができる溶媒であれば特に限定されず、その具体例としては、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、トルエン、MEKであるのが、溶解性、その後の除去の容易性の観点から好ましい。
【0014】
<導電性ポリマー>
上記導電性ポリマーは、上記液状ポリマーと上記溶媒とを含有する系内で、所定のモノマーを重合させて得られるポリマーであって、抵抗率(比抵抗)の逆数で表される導電率(電気伝導率)が10-12S/cm以上、好ましくは10-4〜105S/cmのポリマーをいう。
導電性ポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリアリニン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、これらの誘導体等が挙げられ、中でも、下記式に示されるポリアニリンやその誘導体であるポリメチルアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリ(p−フェニレン)が汎用的で経済性に優れる理由から好ましい。なお、下記式中、nは1〜1000である。
【0015】
【化1】

【0016】
(モノマー)
重合により上記導電性ポリマーを生成するモノマーとしては、具体的には、例えば、アニリン、ナフチルアミン、フェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、トリアミノベンゼン、トリアミノナフタレン、ピロール、チオフェン、フラン、ベンゼン、これらの誘導体(例えば、炭素数1〜30のアルキル基、アルコキシ基、アルキレンオキシド基、スルフォン酸基、アルキレンスルフォン酸基等の置換基が芳香環上に1つ以上導入された化合物)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
(ドーパント)
上記モノマーの重合は、必要に応じて、例えば、生成する導電性ポリマーの導電率が10-6S/cm以上となるよう、ドーパントの存在下で行うのが好ましい。
ドーパントは、導電性ポリマーのベースとなるπ共役高分子化合物等をドープすることができるドーピング剤であれば任意のものも使用できるため特に限定されないが、その具体例としては、ヨウ素、臭素、塩素、ヨウ素などのハロゲン化合物;硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、ホウフッ化水素酸などのプロトン酸;これらプロトン酸の各種塩;三塩化アルミニウム、三塩化鉄、塩化モリブデン、塩化アンチモン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモンなどのルイス酸;酢酸、トリフルオロ酢酸、ポリエチレンカルボン酸、ギ酸、安息香酸などの有機カルボン酸;これら有機カルボン酸の各種塩;フェノール、ニトロフェノール、シアノフェノールなどのフェノール類;これらフェノール類の各種塩;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ポリエチレンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アルキルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、樟脳スルホン酸、ジオクチルスルホコハク酸、銅フタロシアニンテトラスルホン酸、ポルフィリンテトラスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸縮合物などの有機スルホン酸;これら有機スルホン酸の各種塩;ポリアクリル酸などの高分子酸;プロピルリン酸エステル、ブチルリン酸エステル、ヘキシルリン酸エステル、ポリエチレンオキシドドデシルエーテルリン酸エステル、ポリエチレンオキシドアルキルエーテルリン酸エステルなどのリン酸エステル;これらリン酸エステルの各種塩;ラウリル硫酸エステル、セチル硫酸エステル、ステアリル硫酸エステル、ラウリルエーテル硫酸エステルなどの硫酸エステル;これら硫酸エステルの各種塩;等が挙げられる。
【0018】
中でも、プロトン酸、有機カルボン酸、フェノール類、有機スルホン酸、リン酸エステル、硫酸エステル、これらの各種塩であるのが好ましく、具体的には、塩酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、樟脳スルホン酸、ジオクチルスルホコハク酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸縮合物、これらの各種塩であるのが好ましい。
【0019】
本発明においては、ドーパントは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ドーパントの添加量は、モノマーに対するモル比(ドーパント/モノマー)で0.001〜15であるのが好ましく、0.005〜10であるのがより好ましい。
【0020】
また、本発明においては、上記導電性ポリマーの合成方法は、導電性ポリマーの種類、即ち、重合に用いるモノマーの種類により異なるため特に限定されない。
具体的には、実施例で示すように、モノマーとしてアニリンを用いた場合には、液状ポリマーとしての液状エチレンプロピレン共重合体と、溶媒としてのトルエンと、ドーパントしてのp−ドデシルベンゼンスルホン酸とを、アニリンとともに混合し、酸化剤(例えば、過硫酸アンモニウム等)の存在下、低温(0〜5℃程度)で酸化重合する方法等が好適に例示される。
【0021】
<導電性液状ポリマー>
本発明の導電性液状ポリマーは、上記液状ポリマーと上記溶媒とを含有する系内で上記導電性ポリマーを合成し、合成後に該溶媒を除去して得られうる導電性液状ポリマー、即ち、該溶媒の除去により、上記導電性ポリマーの上記液状ポリマー分散液として得られる導電性液状ポリマーである。
ここで、本発明の導電性液状ポリマーを構成する上記導電性ポリマーと上記液状ポリマーとの含有割合は、質量比(導電性ポリマー/液状ポリマー)で、2/1〜1/2であるのが好ましい。含有割合がこの範囲であると、導電性ポリマーの分散性が向上し、また、得られる導電性液状ポリマーを組成物として用いた場合にゴムまたは樹脂の特性を阻害しないためである。
また、導電性ポリマー合成後の溶媒の除去は、上記溶媒の種類により異なるため特に限定されない。具体的には、実施例で示すように、溶剤としてトルエンを用いた場合には、真空乾燥により除去する方法等が好適に例示される。
【0022】
このような導電性液状ポリマーを用いることにより、抵抗値のばらつきを抑え、半導電性領域での抵抗制御が容易な導電性の組成物を得ることができる。これは、上記液状ポリマー中に上記導電性ポリマーが非常に微細に分散した状態で保持され、上記導電性ポリマー自体の凝集を防ぐことができるため、導電性液状ポリマーのゴムまたは樹脂への分散性が良好となるからである。
【0023】
本発明の第1の態様に係る導電性ゴム組成物は、上述した本発明の導電性液状ポリマーと、ゴムとを含有する導電性ゴム組成物である。
ここで、上記ゴムとしては、具体的には、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などのジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物;エチレン−プロピレンゴム、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンゴム、ポリプロピレンゴムなどのオレフィン系ゴム;エピクロロヒドリンゴム;多硫化ゴム;シリコーンゴム;ウレタンゴム;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、IIR、NBR、EPDMであるのが、汎用性の観点から好ましい。
【0024】
一方、本発明の第2の態様に係る導電性ゴム組成物は、導電性ポリマーを溶媒中に分散させた溶媒分散液と液状ポリマーとを混合し、混合後に該溶媒を除去して得られる導電性液状ポリマーと、ゴムと、を含有する導電性ゴム組成物である。
ここで、第2の態様で用いる導電性ポリマー、溶媒および液状ポリマーは、上述した本発明の導電性液体ポリマーにおいて説明したものと同様である。
また、第2の態様における導電性ポリマーの溶媒分散液は、上記溶媒中に上記導電性ポリマーおよび必要に応じて用いることができる上記ドーパントを添加し、混合して得られる分散液である。
したがって、第2の態様における導電性液状ポリマーは、上記溶媒分散液と上記液状ポリマーとを混合し、混合後に真空乾燥等の方法により上記溶媒分散液中の溶媒を除去して得られるものであり、本発明の導電性液状ポリマーと同様、上記導電性ポリマーの上記液状ポリマー分散液として得られる導電性液状ポリマーである。
更に、第2の態様で用いるゴムは、第1の態様におけるゴムと同様である。
【0025】
本発明の第1および第2の態様に係る導電性ゴム組成物(以下、これらをまとめて「本発明の導電性ゴム組成物」ともいう。)は、抵抗値のばらつきを抑え、半導電性領域での抵抗制御が容易となる。これは、上述したように、上記液状ポリマー中に上記導電性ポリマーが非常に微細に分散した状態で保持され、上記導電性ポリマー自体の凝集を防ぐことができるため、導電性液状ポリマーのゴムへの分散性が良好となるからである。
具体的には、本発明の導電性ゴム組成物は、その抵抗値が106〜1013Ω・cmとなる。
【0026】
本発明の導電性ゴム組成物は、抵抗値の観点から、上記ゴム100質量部に対して、上記導電性ポリマーを5〜20質量部含有するのが好ましい。
そのため、本発明の導電性ゴム組成物は、上記ゴム100質量部に対して、上記導電性液状ポリマーを7.5〜60質量部含有するのが好ましく、7.5〜30質量部含有するのがより好ましい。導電性液状ポリマーの含有量がこの範囲であると、抵抗率がより低くでき、ゴム組成物としての物性(例えば、破断強度、破断伸び等)も十分に保持できる。
【0027】
本発明の第1の態様に係る導電性樹脂組成物は、上述した本発明の導電性液状ポリマーと、樹脂とを含有する導電性樹脂組成物である。
ここで、上記樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、αーオレフィンなどのポリオレフィン樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロンMXD6などのポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル樹脂;ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのポリエーテル樹脂;ポリスチレン、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリルニトリルスチレン(AS)などのスチレン系樹脂;EVA(エチレン―酢酸ビニル共重合)樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、アクリル樹脂、アクリル共重合体、シアノアクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂など熱可塑性合成樹脂;アクリル樹脂、マレイミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、変性シリコーン樹脂などの熱硬化性合成樹脂;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、PP、PCであるのが、汎用性があり、耐熱性にも優れるため好ましい。
【0028】
一方、本発明の第2の態様に係る導電性樹脂組成物は、導電性ポリマーを溶媒中に分散させた溶媒分散液と液状ポリマーとを混合し、混合後に該溶媒を除去して得られる導電性液状ポリマーと、樹脂と、を含有する導電性樹脂組成物である。
ここで、第2の態様で用いる導電性ポリマー、溶媒および液状ポリマーは、上述した本発明の導電性液体ポリマーにおいて説明したものと同様である。
また、第2の態様における導電性ポリマーの溶媒分散液は、上記溶媒中に上記導電性ポリマーおよび必要に応じて用いることができる上記ドーパントを添加し、混合して得られる分散液である。
したがって、第2の態様における導電性液状ポリマーは、上記溶媒分散液と上記液状ポリマーとを混合し、混合後に真空乾燥等の方法により上記溶媒分散液中の溶媒を除去して得られるものであり、本発明の導電性液状ポリマーと同様、上記導電性ポリマーの上記液状ポリマー分散液として得られる導電性液状ポリマーである。
更に、第2の態様で用いる樹脂は、第1の態様における樹脂と同様である。
【0029】
本発明の第1および第2の態様に係る導電性樹脂組成物(以下、これらをまとめて「本発明の導電性樹脂組成物」ともいう。)は、抵抗値のばらつきを抑え、半導電性領域での抵抗制御が容易となる。これは、上述したように、上記液状ポリマー中に上記導電性ポリマーが非常に微細に分散した状態で保持され、上記導電性ポリマー自体の凝集を防ぐことができるため、導電性液状ポリマーの樹脂への分散性が良好となるからである。
具体的には、本発明の導電性樹脂組成物は、その抵抗値が106〜1013Ω・cmとなる。
【0030】
本発明の導電性樹脂組成物は、抵抗値の観点から、上記樹脂100質量部に対して、上記導電性ポリマーを5〜20質量部含有するのが好ましい。
そのため、本発明の導電性樹脂組成物は、上記樹脂100質量部に対して、上記導電性液状ポリマーを7.5〜60質量部含有するのが好ましく、7.5〜30質量部含有するのがより好ましい。導電性液状ポリマーの含有量がこの範囲であると、抵抗率がより低くでき、樹脂組成物としての物性(例えば、破断強度、破断伸び等)も十分に保持できる。
【0031】
本発明の導電性樹脂組成物および導電性ゴム組成物は、例えば、必要に応じて、充填剤、可塑剤、顔料、老化防止剤、酸化防止剤、チクソトロピー性付与剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、溶剤等の添加剤を配合してもよい。
【0032】
充填剤としては、各種形状のものを使用することができる。具体的には、例えば、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー等の有機または無機充填剤;炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;黒鉛、金属粉末、タルク、ゼオライト、けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;カーボンブラック等の有機または無機充填剤;塩化ビニルペーストレジン;ガラスバルーン、アクリロニトリル樹脂バルーン;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物処理物;等が挙げられる。
【0033】
可塑剤としては、具体的には、例えば、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジベンジル;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジペンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル;パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等の石油系軟化剤;等が挙げられる。
【0034】
顔料としては、具体的には、例えば、二酸化チタン、チタンホワイト、酸化亜鉛、カーボンブラック、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩などの無機顔料;アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料などの有機顔料:等が挙げられる。
【0035】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系化合物やヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
【0036】
チクソトロピー性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル社製)、ディスパロン(楠本化成社製)、炭酸カルシウム、テフロン(登録商標)等を、また帯電防止剤としては、一般的に、第4級アンモニウム塩、あるいはポリグリコールやエチレンオキサイド誘導体などの親水性化合物を挙げることができる。
【0037】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイドーポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
接着性付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例を用いて本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
(前処理1)
NMP100gに、粉末ポリアニリン(アルドリッチ社製)5gおよびp−ドデシルベンゼンスルホン酸(以下、実施例において「DBSA」と略す。)8.7gを添加し、溶解することで溶媒分散液を調製した。
調製した溶媒分散液に、液状エチレンプロピレン共重合体(ルーカントHC−3000X、三井化学社製)13.7gを添加し、混合した後に、加熱真空乾燥によりNMPを除去し、ポリアニリンの液状エチレンプロピレン共重合体分散液として導電性液状ポリマー1を調製した。
【0040】
(前処理2)
液状エチレンプロピレン共重合体に代えて、液状エポキシ樹脂(エポトートYD−128、東都化成社製)13.7gを用いた以外は、前処理1と同様の方法により、ポリアニリンの液状エポキシ樹脂分散液として導電性液状ポリマー2を調製した。
【0041】
(前処理3)
液状エチレンプロピレン共重合体を用いなかった以外は、前処理1と同様の方法により、導電性ポリマーAを調製した。
固形分として得られた導電性ポリマーAの体積固有抵抗値は、後述する方法により測定した結果、3.30×102Ω・cmであった。
【0042】
(前処理4)
トルエン100gに、アニリン2gおよびDBSA4.2gを添加し、溶解させた後、6N塩酸3.6mlを溶解した50mlの蒸留水を添加した。蒸留水を添加した溶液を5℃以下に冷却した後、過硫酸アンモニウム5.4gを溶解した30mlの蒸留水を添加し、5時間酸化重合させた。
酸化重合の後、トルエン150gを添加し、多量の蒸留水を加え、分液ロートで水溶部分を除去した。この方法で酸化剤およびDBSAの残分を溶解し除去してポリアニリンのトルエン分散液を調製した。
トルエンを真空乾燥により除去した後のポリアニリンは、その固形分が2.4質量%であり、後述する方法により測定した体積固有抵抗値は4Ω・cmであった。
再度、この方法によりポリアニリンのトルエン分散液を調製し、ポリアニリンの固形分と同質量の液状エチレンプロピレン共重合体を添加した後、トルエンを真空乾燥により除去することで、ポリアニリンの液状エチレンプロピレン共重合体として導電性液状ポリマー3を調製した。
【0043】
(前処理5・実施例1)
トルエン100gに、アニリン2g、DBSA4.2gおよび液状エチレンプロピレン共重合体4.0gを添加し、溶解させた後、6N塩酸3.6mlを溶解した50mlの蒸留水を添加した。蒸留水を添加した溶液を5℃以下に冷却した後、過硫酸アンモニウム5.4gを溶解した30mlの蒸留水を添加し、5時間酸化重合させた。
酸化重合の後、トルエン150gを添加し、多量の蒸留水を加え、分液ロートで水溶部分を除去した。この方法で酸化剤およびDBSAの残分を溶解し除去してポリアニリンおよび液状エチレンプロピレン共重合体のトルエン分散液を調製した。
その後、トルエンを真空乾燥により除去することで、ポリアニリンの液状エチレンプロピレン共重合体分散液として導電性液状ポリマー4を調製した。
【0044】
(前処理6・実施例2)
トルエン100gに、アニリン2g、DBSA4.2gおよび液状エポキシ樹脂4.0gを添加し、溶解させた後、6N塩酸3.6mlを溶解した50mlの蒸留水を添加した。蒸留水を添加した溶液を5℃以下に冷却した後、過硫酸アンモニウム5.4gを溶解した30mlの蒸留水を添加し、5時間酸化重合させた。
酸化重合の後、トルエン150gを添加し、多量の蒸留水を加え、分液ロートで水溶部分を除去した。この方法で酸化剤およびDBSAの残分を溶解し除去してポリアニリンおよび液状エポキシ樹脂のトルエン分散液を調製した。
その後、トルエンを真空乾燥により除去することで、ポリアニリンの液状エポキシ樹脂分散液として導電性液状ポリマー5を調製した。
【0045】
(実施例3〜5、比較例1および2)
下記表1に示す成分を下記表1に示す割合(質量部)で配合し、初期温度30℃で20分間ニーダーで混練することにより組成物を調製した。
その後、調製した組成物をプレス機内で150℃、30分間プレス加硫し、シート(15cm×15cm×0.1mm)を作製した。
得られた各シートを、以下に示す方法により、体積固有抵抗値、抵抗値のばらつき、電圧依存性を測定した。その結果を表1に示す。
【0046】
(実施例6および7)
下記表1に示す成分を下記表1に示す割合(質量部)で配合し、200℃で10分間ニーダーで混練することにより組成物を調製した。
その後、調製した組成物をプレス機内で250℃、2分間プレスし、シート(15cm×15cm×0.1mm)を作製した。
得られた各シートを、以下に示す方法により、体積固有抵抗値、抵抗値のばらつき、電圧依存性を測定した。その結果を表1に示す。
【0047】
(1)体積固有抵抗値
得られた各シートについて、2重リングプローブ式抵抗率計(ハイレスターIP(プローブ・HR−100)、ダイヤインスツルメント社製)を用いて体積固有抵抗値を測定し、1分間印加電圧100Vをかけた際の値を示した。
【0048】
(2)抵抗値のばらつき
得られた各シートについて、上述した方法により体積固有抵抗値を10ヶ所測定し、その最大値の常用対数と、最小値の常用対数との差を抵抗値のばらつきとして求めた。常用対数の差が、1.0未満であるものは抵抗値のばらつきが少ないものとして評価できる。
【0049】
(3)電圧依存性
得られた各シートについて、上述した方法により印加電圧100Vおよび1000Vで体積固有抵抗値を測定し、その値の常用対数の差を電圧依存性として求めた。
【0050】
【表1】






【0051】
上記表1中の各成分は、以下のものを使用した。
・EPDM:エスプレン301、住友化学社製
・ポリカーボネート:パンライトK−1300Y、帝人化成社製
・カーボンブラック:ケッチェンブラックEC、ライオンアクゾ社製
・酸化亜鉛:亜鉛華3号、正同化学社製
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸、日本油脂社製
・酸無水物:無水ヘキサヒドロフタル酸、丸善石油社製
・硫黄:粉末イオウ、軽井沢精錬所製
・加硫促進剤1:ジベンゾチアゾリルジスルフィド(サンセラーDM、三新化学工業社製)
【0052】
上記表1に示す結果から、実施例3〜7で調製した組成物は、抵抗値のばらつきを抑えられた導電性の組成物となることが分かり、また、電気依存性も良好であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状ポリマーと溶媒とを含有する系内で導電性ポリマーを合成し、合成後に前記溶媒を除去して得られうる、導電性液状ポリマー。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性液状ポリマーと、ゴムとを含有する導電性ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の導電性液状ポリマーと、樹脂とを含有する導電性樹脂組成物。
【請求項4】
導電性ポリマーを溶媒中に分散させた溶媒分散液と液状ポリマーとを混合し、混合後に前記溶媒を除去して得られる導電性液状ポリマーと、ゴムと、を含有する導電性ゴム組成物。
【請求項5】
導電性ポリマーを溶媒中に分散させた溶媒分散液と液状ポリマーとを混合し、混合後に前記溶媒を除去して得られる導電性液状ポリマーと、樹脂と、を含有する導電性樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−231239(P2007−231239A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58143(P2006−58143)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】