説明

導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、および該組成物を用いた導電性ローラ

【課題】抵抗値を低い値から幅広く調節することができ、かつ連続印加したときの抵抗値の変化が少なく安定した品質を保持できる導電性熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】連続相と2相の非連続相を備え、該連続相と非連続相とが海−島構造を呈し、かつ、非連続相はそれぞれが独立した島構造を形成しており、前記連続相は熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂とを混合した組成物(A)を含有し、前記2相の非連続相のうち1相の第1非連続相はジエン系ゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエンゴムの少なくとも1種を含むゴム成分(B)を含有し、前記2相の非連続相のうち他の1相の第2非連続相はフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を含むエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(C)を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法、および該組成物を用いた導電性ローラに関し、特に、画像形成装置における転写ローラとして有用な導電性ローラとするものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置における転写ローラ、駆動ローラ、現像ローラまたは帯電ローラ等の導電性ローラは、適度でかつ安定した電気抵抗値を有する必要がある。
従来、この種の導電性ローラに導電性を付与する方法としては、ポリマー中に金属酸化物の粉末やカーボンブラック等の導電性充填剤を配合した電子導電性ポリマー組成物を用いる方法と、ウレタンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性ポリマー組成物を用いる方法がある。
【0003】
電子導電性ポリマー組成物を導電性ローラに用いた場合、導電性充填剤の添加量のわずかな変化により電気抵抗が急激に変化する領域があるため、電気抵抗の制御が非常に困難になるという問題がある。その上、ポリマー中で導電性充填剤が均一に分散し難いことから、導電性ローラの周方向や幅方向で電気抵抗値がばらつきを持つという問題もある。
また、電子導電性ポリマー組成物を用いた導電性ローラの電気抵抗値は印加電圧に依存するという問題がある。特に導電性充填剤としてカーボンブラックを用いた場合この傾向が顕著に現れる。さらに、カーボンブラック等の導電性充填剤を配合しすぎると成形加工も行いにくくなる。
【0004】
電子導電性ポリマー組成物を用いた導電性ローラは前記問題を有していることから、デジタル化・カラー化等の高画質化技術の進歩がめざましい最近においては、電子導電性ポリマー組成物ではなく、イオン導電性ポリマー組成物の方が特に好んで用いられる傾向にある。
【0005】
イオン導電性ポリマー組成物で導電性ローラ用に実用化されているものは加硫ゴム組成物がほとんどであるが、加硫ゴム組成物は熱可塑性がなくリサイクルできないという欠点がある。
また、従来のイオン導電剤を用いる場合には効率的に電気抵抗を下げられないという問題があった。この問題を解決するためイオン導電剤を多量に入れると、今度はブリードが起こったり、圧縮永久ひずみや硬度等の力学的物性が悪化したりするなどの問題が出てくる。
【0006】
そこで、本出願人は、ゴムのような耐久性、弾性、柔軟性と樹脂のような成形性を併せ持つと共にリサイクル性にも優れ、低電気抵抗である導電性ポリマー組成物を開発した。
具体的には、特開2004−51829号公報(特許文献1)および特開2004−269854号公報(特許文献2)において、熱可塑性樹脂あるいは/および熱可塑性エラストマー中に架橋可能なゴムあるいは/および熱可塑性エラストマーを動的架橋させて分散させているエラストマー組成物に、エーテルやエステル構造を有するポリマーとフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩とを配合することで導電化した動的架橋熱可塑性エラストマー組成物、および当該組成物を用いた導電性ローラを提供している。
【0007】
しかし、これら従来技術においては抵抗値の観点から改善する余地がある。すなわち、使用される用途に応じた幅広い抵抗値に設定できることが好ましく、特に画像形成装置に使用される導電性部材として用いる場合は初期抵抗値が低いことが望まれる。さらに、連続印加したときに抵抗値の変化が激しいと例えば画像不良がおこるなど品質の維持が保証できなくなるため、連続印加したときの抵抗値の変化が少ないことが望まれる。
【0008】
さらに、導電性ローラにおいては、常温付近で使用するには何の問題もない優れたものでも低温環境で使用した場合はローラの硬度が若干高いことに起因して、例えば、転写ローラとして使用した場合、紙の密着性が低下してトナーがきちんと転写されずに画像不良を起こす場合がある。しかし、低温環境での画像不良の問題を解決するために熱可塑性樹脂の種類を変えたりして、硬度を下げようとすると加工性が悪化する傾向にあり、低温環境での画像不良を改善することは困難である。この点から、低温環境下で低硬度に保つことができるようにする点においても改善の余地がある。
【0009】
【特許文献1】特開2004−51829号公報
【特許文献2】特開2004−269854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記問題に鑑みて、本発明は、ゴムのような弾性、柔軟性と樹脂のような良好な成形性を併せ持つと共にリサイクル性にも優れ、さらに抵抗値を低い値から幅広く調節することができ、かつ連続印加したときの抵抗値の変化が少なく安定した品質を保持できる導電性熱可塑性エラストマー組成物および該導電性熱可塑性エラストマー組成物から形成した導電性ローラを提供することを課題としている。
【0011】
さらに、前記課題に加えて、低温環境下でも低硬度を保つことができ、低温環境下においても転写不良、帯電不良または搬送不良を起こすことなく、良好な画像を形成することができる導電性ローラを提供することを従たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、第1の発明として、
熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂とを混合した組成物(A)中で、ジエン系ゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエンゴムの少なくとも1種を含むゴム成分(B)と、イオン導電性塩を含むエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(C)とを別々に動的架橋し、
前記(A)中に(B)と(C)を個別に分散させていることを特徴とする導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を提供している。
【0013】
また、第2の発明として、
連続相と2相の非連続相を備え、該連続相と非連続相とが海−島構造を呈し、かつ、非連続相はそれぞれが独立した島構造を形成しており、
前記連続相は熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂とを混合した組成物(A)を含有し、
前記2相の非連続相のうち1相の第1非連続相はジエン系ゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエンゴムの少なくとも1種を含むゴム成分(B)を含有し、
前記2相の非連続相のうち他の1相の第2非連続相はフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を含むエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(C)を含有していることを特徴とする導電性熱可塑性エラストマー組成物を提供している。
【0014】
前記本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物は、前記第1の発明の製造方法により製造することが好ましいが、導電性熱可塑性エラストマー組成物が前記構成を有するものであれば、その製造方法は限定されない。
【0015】
前記本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物において、前記連続相は組成物(A)から主に構成されているが、当該技術分野で用いられる公知の添加剤が含まれていてよい。具体的には、組成物(A)の質量割合が相全体の50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上を占めている。同様に、第1非連続相および第2非連続相はそれぞれ(B)および(C)を主成分としている。すなわち、(B)の質量割合が第1非連続相全体の50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上を占めており、(C)の質量割合が第2非連続相全体の50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上を占めている。
【0016】
本発明の組成物においては、導電材となるイオン導電性塩がEO−PO−AGE共重合体中で解離し、第2非連続相内を移動することによって導電性が発現する。
EO−PO−AGE共重合体を動的架橋しない場合は、第2非連続相が存在せず、成分Cが連続相の中にまざり、その結果導電材となるイオン導電性塩が解離したときに連続相の中を移動することになる。そのため、導電経路が連続相となり、連続印加における抵抗値の変化が大きくなる。
一方、ジエン系ゴムまたはEPDMゴムの少なくとも1種を含むゴム成分と、EO−PO−AGE共重合体を同時に動的架橋させた場合は、第2非連続相が存在せず、成分(C)が第1非連続相の中にまざり、その結果導電材となるイオン導電性塩が解離してできたイオンの移動性が落ちることになるため、抵抗値が高くなる。その上にEO−PO−AGE共重合体がゴム成分の架橋を邪魔するためにゴムの架橋度が落ち、圧縮永久歪みを低下させたり成形加工性が悪化する。抵抗値を下げるためにEO−PO−AGE共重合体を増量すると導電経路が広くなるため、結果として連続印加における抵抗値の変化が大きくなることやコストの面で不利になる等の問題が発生する。
以上から、本発明の組成物が呈する海−島構造において、イオン導電性塩を含むEO−PO−AGE共重合体(C)を含有する第2非連続相が連続相中で独立して島構造を形成していることが重要である。
とくに、イオン導電性塩はEO−PO−AGE共重合体が動的架橋されてできた第2非連続相に偏在することが好ましく、連続相および第1非連続相にはほとんど含有されていないことがより好ましい。
前記イオン導電性塩としては、後述するようにフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を用いることが好ましい。
【0017】
本発明の組成物における前記(A)(B)(C)の配合割合は、用いる化合物の種類、目的とする物性や用途等により、適宜選択すればよい。なかでも、下記割合で配合されていることがとくに好ましい。
熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂とを混合した組成物(A)は、ゴム成分である(B)100質量部に対し2〜150質量部の割合で含まれていることが好ましい。前記(A)の配合量が2質量部未満であると、樹脂成分が少なくなりすぎて、ゴム成分を成分A中に分散できず加工がしにくくなると共に、導電性ローラ等の加工品の強度が低下したり、熱可塑性を示さずリサイクルできなくなるという問題がある。一方、前記(A)の配合量が150質量部を超えると樹脂成分が多くなりすぎて硬度が高くなり、例えば導電性ローラに加工し転写ローラとして使用した場合に紙に対する接触面積が小さくなり転写不良や搬送不良などの問題が生じる可能性がある。
【0018】
前記(C)において、イオン導電性塩は、EO−PO−AGE共重合体100質量部に対し0.5〜20質量部の割合で配合されていることが好ましい。塩の配合量が0.5質量部より少ないと十分な導電性が得られないためである。一方、塩はあるレベル以上添加しても導電性はほとんど変化しなくなるため、塩の配合量が20質量部より多いと、導電性向上の効果に比べてコストが増加するデメリットの方が大きくなるためである。
前記(C)と前記(A)(B)との量的関係は、EO−PO−AGE共重合体の配合量が前記ゴム成分である(B)100質量部に対して1〜40質量部となるように調整することが好ましい。EO−PO−AGE共重合体の配合量が1質量部未満では十分な導電性能が得られないためであり、一方EO−PO−AGE共重合体の配合量が40質量部を超えると加工性が悪化する可能性があるとともにコスト的にも利点が無くなるからである。
さらに好ましくは、EO−PO−AGE共重合体の配合量は、前記(B)100質量部に対して1〜30質量部である。
【0019】
本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は前記第1の発明の製造方法で好適に製造できるが、該方法に限定されない。
即ち、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂とを混合した組成物(A)中で、ジエン系ゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエンゴムの少なくとも1種を含むゴム成分(B)と、イオン導電性塩を含むエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(C)とを別々に動的架橋し、
前記(A)中に(B)と(C)を個別に分散させている。
【0020】
具体的には、前記(A)と(B)および架橋剤を混合して、(B)を架橋剤により動的架橋させて(A)中に分散させてエラストマー組成物(I)を作製し、
得られたエラストマー組成物(I)と前記(C)および架橋剤を混合して、(C)を架橋剤により動的架橋させて(A)中に分散させることが好ましい。
前記製造方法を用いると、第1、第2非連続相をそれぞれ独立させて形成することができる。其の際、後工程のおける(C)の配合量は、エラストマー組成物(I)100質量部中にEO−PO−AGE共重合体が1〜40質量部、イオン導電性塩が0.01〜10質量部となるように調整することが好ましい。
また、(C)に関しては、EO−PO−AGE共重合体とイオン導電性塩とを予め混合しておいてもよいし、混合工程でEO−PO−AGE共重合体とイオン導電性塩とを個別に添加してもよい。
【0021】
なお、前記(A)と(C)および架橋剤を混合して、(C)を(A)中に分散させたエラストマー組成物を作製し、得られたエラストマー組成物と前記(B)および架橋剤を混合し、(B)を(A)中に分散させてもよい。
さらに、前記(A)(B)および架橋剤を混合して、(B)を(A)中に分散させてエラストマー組成物を作製し、別に、前記(A)と(C)および架橋剤を混合し、(C)を(A)中に分散させたエラストマー組成物を作成し、得られたエラストマー組成物同士をを混合してもよい。
【0022】
前記(B)、前記(C)を動的架橋させる時の加熱温度はそれぞれ160〜250℃、加熱時間は1〜20分であることが好ましい。また、各成分の混合時の加熱温度は160〜250℃、加熱時間は1〜20分であることが好ましい。動的架橋や混合には、2軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等を使用することができる。
前記動的架橋は、塩素、臭素、フッ素またはヨウ素等のハロゲンの存在下に行ってもよい。動的架橋時にハロゲンを存在させるには、ハロゲン化された樹脂架橋剤を用いるか、ハロゲン供与性物質を配合すればよい。前記ハロゲン供与性物質としては、塩化第二スズ等の塩化スズ、塩化第二鉄、塩化第二銅等が挙げられる。ハロゲン供与性物質は1種類の物質を単独で用いてもよく、2種以上の物質を併用してもよい。
前記のようにして得られた組成物は、後工程のためにペレット状とするのが良い。これにより良好な成形性を得ることができる。
【0023】
本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物は公知の成形方法を用いて任意の形状に成形することができる。なかでもローラ形状とすることが用途が広いことから好ましい。
本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物から構成される本発明の導電性ローラは、前記導電性熱可塑性エラストマー組成物を押出機によりチューブ状に押し出し、それをカットすることによって製造することができる。また、導電性熱可塑性エラストマー組成物のペレットを射出(インジェクション)成形機により射出してチューブ状に成形し、この成形品の表面を研磨した後、所要寸法にカットして製造することもできる。
本発明においては、連続的にチューブを製造することができ、かつ、研磨工程を必要とせず、生産性をかなり向上させることができるという点で、押出成形による方法が好適に用いられる。
【0024】
さらに、第3の発明として、前記導電性熱可塑性エラストマー組成物に、アクリル基を有するポリマーを外殻として含むマイクロカプセルを混合し、
前記混合物を押し出し成形して製造していることを特徴とする導電性ローラの製造方法を提供している。
【0025】
また、第4の発明として、第2の発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物に、アクリル基を有するポリマーを外殻とするマイクロカプセルが混合されている導電性ローラを提供している。前記第4の発明の導電性ローラは、前記第3の発明の製造方法により製造することが好ましいが、導電性ローラが前記構成を有するものであれば、その製造方法は限定されない。
【0026】
マイクロカプセルを配合することにより、低温環境においても硬度を低く保つことができるとともに、前記イオン導電性塩の配合量が少なくても導電性を大きく低下させることができる。
マイクロカプセルは、導電性熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対し0.5〜5.0質量部の割合で配合することが好ましい。マイクロカプセルの配合量が0.5質量部未満である場合には、低温環境における低硬度化に対する寄与がほとんどなくなるだけでなく、前記塩と併用した場合における導電性低下効果も非常に小さくなる。一方、マイクロカプセルの配合量が5.0質量部を超える場合には、本発明の導電性ローラを構成する組成物に占めるマイクロカプセルの体積が大きくなるため、加工性が悪化することや強度が低下すること等の問題が起こる可能性がある。
マイクロカプセルの配合量は、本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対し1.0〜4.0質量部であることがより好ましく、1.0〜3.5質量部であることが特に好ましい。
【0027】
前記導電性熱可塑性エラストマー組成物に前記マイクロカプセルを配合する場合の前記押出成形時の押出温度は、150℃〜210℃であることが好ましい。
これは、150℃未満ではきれいなゴム肌を得ることが難しく、得られた導電性ローラの表面に凹凸ができてしまい、210℃を超えると導電性熱可塑性エラストマーが熱による劣化を受けることにより、押出途中でチューブ切れが発生するなどのトラブルが発生し、連続押出成形が困難になるからである。
【0028】
本発明の導電性ローラは、前記組成物からなる円筒状の導電層と円柱状の芯金とを備えた構成とし、芯金の周囲の導電層1層のみとする構造が簡便で工業的製造の見地からは好ましい。しかし、前記導電層以外に、電気抵抗の調整等のために2層・3層等の複層構造としても良く、要求性能に応じて各層の種類、積層順序、積層厚み等を適宜設定することができる。なかでも、前記導電層を最外層とすることが好ましい。
【0029】
前記導電性ローラには表面に紫外線照射を行って酸化膜を形成することができる。酸化膜が誘電層となり導電性ローラの誘電正接を低減したり、酸化膜が低摩擦層となることでトナー離れをよくしたりする効果が得られる。
また、表面にコーティングを施してもよい。具体的には、ウレタン、アクリルまたはゴムラテックス等を主ポリマーとし、フッ素系樹脂を分散させたような公知のコーティング材料を静電塗装、吹き付け塗装、ディッピング、刷毛塗り塗装等公知の方法により塗布したコーティング層を設けることができる。コーティング層の厚みは1〜20μmが好ましい。表面をコーティングすることにより、例えば転写時に残ったトナーをかき取りやすくする、トナーの着脱性を変化させる、表面エネルギーをコントロールする、紙粉の付着やトナーの固着を防ぐ、摩擦係数を低下させる等の効果が得られる。
【0030】
本発明の導電性ローラは、前記導電性熱可塑性エラストマー組成物の特徴をそのまま有し、抵抗値を低い値から幅広く調節することができ、かつ連続印加したときの抵抗値の変化が少なく安定した品質を保持できる。その指標として、本発明の導電性ローラは、1000V印加における初期抵抗値が10〜1011Ωであり、連続印加24時間後の抵抗比が3以下であることが好ましい。初期抵抗値および連続印加24時間後の抵抗比は実施例に記載の方法で測定する。
【0031】
前記した本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物は導電性が要求される用途であれば種々の用途に使用することができる。特に、プリンター、静電式複写機、ファクシミリ装置、ATM等の画像形成装置の導電性部材として好適に用いることができる。具体的には、感光ドラムを一様に帯電させるための帯電ローラ、トナーを感光体に付着させるための現像ローラ、トナー像を感光体等から用紙または中間転写ベルト等に転写するための転写ローラ、トナーを搬送するためのトナー供給ローラ、転写ベルトを内側から駆動するための駆動ローラ、紙の搬送に寄与する紙送りローラ(より具体的には給紙機構を構成する給紙ローラ、搬送ローラもしくは排紙ローラ等)、残留しているトナーを除去するためのクリーニングローラとして用いられる。なかでも本発明の導電性ローラは転写ローラとして用いられることが好ましい。
【0032】
以下に、前記本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物に含まれる各成分について詳述する。
熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂とを混合した組成物(A)は、混合後もエラストマーであることが望ましい。その理由は、最終的に得られる本発明の組成物の硬度がより低くなるからである。
前記組成物(A)において熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂との混合割合は、使用するエラストマーおよび樹脂の種類に応じて適切な混合割合を決定できるが、熱可塑性エラストマー100質量部に対して熱可塑性樹脂が1質量部以上100質量部以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂の混合量が1質量部未満であると熱可塑性樹脂を混合した効果が見られないからであり、熱可塑性樹脂の混合量が100質量部より多いと混合物がエラストマーでなくなるからである。熱可塑性樹脂の混合量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して20〜80質量部であることがより好ましい。
【0033】
前記熱可塑性エラストマーとしては公知の熱可塑性エラストマーを使用できる。
具体的には、例えば、スチレン系エラストマー、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー等が挙げられる。
【0034】
前記熱可塑性エラストマーのうち、スチレン系エラストマーを用いることが好ましい。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン系モノマーを主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とするブロックのブロック共重合体および該ブロック共重合体の共役ジエン重合単位を水素添加したものを例示することができる。前記スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンまたはt−ブチルスチレンなどを例示することができる。これらモノマーは1種類のみを使用しても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。スチレン系モノマーとしては、なかでもスチレンが好ましい。また前記共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチルブタジエンなどを例示することができる。これらは1種類のみを使用しても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0035】
スチレン系エラストマーとして、具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)またはスチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)等が挙げられる。
スチレン系エラストマーのなかでも、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることがより好ましく、スチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)を用いることが特に好ましい。
【0036】
前記熱可塑性樹脂としては公知のものを使用できる。例えば、オレフィン系樹脂、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン等が挙げられる。なかでもオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。オレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンエチルアクリレート樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、エチレン−メタクリル酸樹脂またはアイオノマー樹脂等が挙げられるが、ポリプロピレンまたはポリエチレン用いることが好ましく、ポリプロピレンを用いることがより好ましい。
【0037】
前記ゴム成分(B)は、ジエン系ゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)の少なくとも1種を含んでいる。
前記ジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)または1,2−ポリブタジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
EPDMゴムにはゴム成分のみからなる非油展タイプのEPDMゴムとゴム成分とともに親展油を含む油展タイプのEPDMゴムとが存在するが、本発明ではいずれのタイプのものも使用可能である。EPDMゴムにおけるジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエンまたはシクロオクタジエンなどが挙げられる。
【0038】
ゴム成分としてジエン系ゴムまたはEPDMゴム以外の他のゴムを含んでいてもよい。前記「他のゴム」としては、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴムまたはクロロスルフォン化ポリエチレン等が挙げられる。
【0039】
ゴム成分としてEPDMゴムを必ず含むことが好ましい。全ゴム成分に占めるEPDMゴムの比率は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、95〜100質量%であることがさらに好ましい。この理由は、EPDMゴムは主鎖が飽和炭化水素からなり、主鎖に二重結合を含まないため、高濃度オゾン雰囲気または光線照射等の環境下に長時間曝されても、分子主鎖切断が起こりにくく、従って本発明の組成物の耐候性を高めることができるためである。
【0040】
前記(C)のEO−PO−AGE共重合体は、エチレンオキサイド比率が55モル%以上95モル%以下であることが好ましく、65モル%以上95モル%以下であることがより好ましい。
塩由来の陽イオンはエチレンオキサイドユニットやプロピレンオキサイドユニットで安定化され、一般にはエチレンオキサイドユニットの方がプロピレンオキサイドユニットよりも前記の安定化能は高い。よって、エチレンオキサイドユニットの比率が高い方が多くのイオンを安定化できる。一方、エチレンオキサイドユニットの比率が95モル%を超えると、エチレンオキサイドユニットが結晶化する。
EO−PO−AGE共重合体中、アリルグリシジルエーテルの共重合比率は1モル%以上10モル%以下とすることが好ましい。1モル%未満ではブリードや感光体汚染の発生が起こり易くなる一方、10モル%を超えると引張強さや疲労特性、耐屈曲性等が悪化しやすい。
EO−PO−AGE共重合体の数平均分子量は1万以上が好ましく、3万以上がより好ましい。この理由はブリードブルームや感光体汚染を防止するためである。
【0041】
前記EO−PO−AGE共重合体に配合されるイオン導電性塩は、陽イオンと陰イオンに解離可能な塩であればよく、なかでもフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が好適に用いられる。
前記フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩としては、下記の化学式1、2、3から選択される少なくとも1種の陰イオンを備えた塩が好ましい。
【化1】

(式中、XおよびXは、同一であっても異なってもよく、炭素原子、フッ素原子およびスルホニル基(−SO−)を含む炭素数が1〜8の官能基を表す。)
【0042】
【化2】

(式中、Xは炭素原子、フッ素原子およびスルホニル基(−SO−)を含む炭素数が1〜8の官能基を表す。)
【0043】
【化3】

(式中、X、XおよびXは、同一であっても異なってもよく、炭素原子、フッ素原子およびスルホニル基(−SO−)を含む炭素数が1〜8の官能基を表す。)
【0044】
前記陰イオンを備えた塩は、フルオロ基(−F)およびスルホニル基(−SO2−)による強い電子吸引効果によって電荷が非局在化するために陰イオンが安定化され、組成物中で高い解離度を示し、高いイオン導電性を実現できる。このため、これらの陰イオンを備えた塩は、少量の添加で非常に大きく電気抵抗値を下げることができると共に、その場合の各種物性値の低下も少ない。さらに、カーボンブラック等と異なり、配合しても黒色等となることがないため、透明性や着色が必要な用途にも使用することができる。
【0045】
前記化学式1、化学式2、化学式3中のX〜Xで示される官能基の炭素数は1〜8であるが、より高い解離度を得る観点から1〜4であることが好ましく、1〜2であることがさらに好ましい。
官能基X1〜Xとしては、R−SO2−(式中、Rはフッ素原子で置換されている炭素数1〜8の炭化水素基を表す。)で示される基等が挙げられる。
ここで炭素数1〜8の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、1,1−ジメチルプロピル基等のアルキル基;例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、もしくは2−ペンテニル基等のアルケニル基;例えば、エチニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基もしくは2−ブチニル基等のアルキニル基等が挙げられる。置換基としてのフッ素原子の数および置換位置は化学的に許容される範囲であれば特に限定されない。
なかでも、官能基X〜Xとしては、安定性、コスト、取扱い性の点からC(2n−m+1)−SO−(nは1以上8以下の整数を表し、mは0以上16以下の整数を表す。)であることが好ましい。
前記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンと対になり塩を構成する陽イオンは、アルカリ金属、2A族、遷移金属または両性金属のいずれかの陽イオンであることが好ましい。中でもアルカリ金属はイオン化エネルギーが小さく、安定な陽イオンを形成しやすいためより好ましい。さらに、アルカリ金属中でも導電度の高いリチウムイオンが特に好ましい。
【0046】
その他、金属の陽イオン以外にも下記の化学式4、化学式5で示されるような陽イオンを用いることもできる。
【化4】

(式中、R11〜R14は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0047】
【化5】

(式中、R15およびR16は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0048】
11〜R16で表される「置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基」における炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−デシル等が挙げられる。
置換基としては、例えばハロゲン(好ましくは、フッ素、塩素、臭素)、オキソ基、アルキレンオキシド基、アルカノイル基(好ましくはC1〜8)、アルカノイルオキシ基(好ましくはC1〜8)、アルカノイルアミノ基(好ましくはC1〜8)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(好ましくはC2〜8)、ハロアルキルカルボニル基(好ましくはC2〜8)、アルコキシ基(好ましくはC1〜8)、ハロアルコキシ基(好ましくはC1〜8)、アミノ基、アルキルアミノ基(好ましくはC1〜8)、ジアルキルアミノ基(好ましくはC2〜16)、環状アミノ基、アルキルアミノカルボニル基(好ましくはC2〜8)、カルバモイル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくはC1〜8)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくはC1〜8)、アルキルスルホニルアミノ基(好ましくはC1〜8)またはフェニル基等が挙げられる。
【0049】
前記化学式4で示されるような陽イオンとしては、中でもR11〜R14の内の3つがメチル基であり、その他の1つが置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアルキル基からなるトリメチルタイプの第4級アンモニウム陽イオンが特に好ましい。かかるトリメチルタイプの第4級アンモニウム陽イオンは電子供与性の強い3つのメチル基により窒素原子上の正電荷を安定化でき、他の置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアルキル基により他の成分との相溶性を向上できるためである。
また化学式5で示される陽イオンにおいては、R15あるいはR16がより強い電子供与性を有する方が窒素原子上の正電荷を安定化させることにより陽イオンとしての安定度を高め、より解離度が高くなり、その結果として導電付与性能に優れた塩にすることができる。従って、R15あるいはR16は電子供与性基が好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。
【0050】
前記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩としては、中でも、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム((CF3SO22NLi)またはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム((CF3SO22NK)または、トリフルオロスルホン酸リチウム(CF3SO3Li)等が好ましい。これらの塩は、非常に高温に渡っても安定なため従来からイオン導電剤として用いられている過塩素酸塩等と異なり防爆仕様にする等の処置が不要であると共に、特に他の物性を悪化させにくく、低温低湿下での抵抗上昇の低減にも優れている。これらの点から、製造コストを減じたり、安全性を確保したりして、イオン導電剤としての性能をより一層向上させることができる。
【0051】
その他、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩としては、(CSONLi、(CSO)(CFSO)NLi、(FSO)(CFSO)NLi、(C17SO)(CFSO)NLi、(CFCHOSONLi、(CFCFCHOSONLi、(HCFCFCHOSONLi、((CFCHOSONLi、(CFSOCLi、(CFCHOSOCLi、CSOLi、(CSONK、(CSO)(CFSO)NK、(FSO)(CFSO)NK、(C17SO)(CFSO)NK、(CFCHOSONK、(CFCFCHOSONK、(HCFCFCHOSONK、((CFCHOSONK、(CFSOCK、(CFCHOSOCK,CSOK等も好適な例として挙げられる。
なお、本発明において前記フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩として、前記例示したような化合物1種類を単独で用いてもよいし、複数種を併用しても良い。
【0052】
本発明では、添加する塩から生じるイオンの一部を、陰イオン吸着剤等を用いてシングルイオン化し、導電性の安定や、少量添加時の導電性向上をはかることができる。
陰イオン吸着剤としては、MgとAlを主成分とする合成ハイドロタルサイト、Mg−Al系,Sb系,Ca系等の無機イオン交換体やアニオンを連鎖中に固定するイオン席を有する(共)重合体等の公知の化合物が有用である。
具体的には、合成ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製「キョーワード−2000」、「キョーワード−1000」)、アニオン交換性イオン交換樹脂(日本錬水(株)製「ダイアノンDCA11」)等が挙げられる。
【0053】
本発明の組成物においては2相の非連続相を形成させるために架橋剤が用いられる。
前記架橋剤としては、例えば樹脂架橋剤または過酸化物など公知の架橋剤を用いることができる。なかでも、成分(B)のゴム成分を動的架橋させるためには樹脂架橋剤または過酸化物を用いることがより好ましく、成分(C)中のEO−PO−AGE共重合体を動的架橋させるためには過酸化物を用いることがより好ましい。
【0054】
樹脂架橋剤は加熱等によってゴム成分に架橋反応を起こさせる合成樹脂であり、硫黄と加硫促進剤とを併用する場合に比べ、ブルームが生じにくく圧縮永久ひずみも小さく、物性低下も小さく、精度維持や耐久性に優れる点で好ましい。さらに、硫黄架橋系に比べ架橋時間が短いため、押出機内に滞留している短い時間内に動的架橋を進行させることができる。
【0055】
樹脂架橋剤としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、トリアジン・ホルムアルデヒド縮合物、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂等が挙げられる。なかでもフェノール樹脂を用いることが好ましい。
フェノール樹脂の具体例としては、フェノール、アルキルフェノール、クレゾール、キシレノールもしくはレゾルシン等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドもしくはフルフラール等のアルデヒド類との反応により合成される各種フェノール樹脂が挙げられる。フェノール樹脂のアルデヒドユニットに少なくとも一個のハロゲン原子が結合したハロゲン化フェノール樹脂を用いることもできる。
特に、ベンゼンのオルト位またはパラ位にアルキル基が結合したアルキルフェノールと、ホルムアルデヒドとの反応によって得られるアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂が、ゴムとの相溶性に優れるとともに反応性に富んでいて架橋反応開始時間を比較的早くできるので好ましい。アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のアルキル基は、通常、炭素数が1から10のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等が挙げられる。また、このアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のハロゲン化物も好適に用いられる。
さらに、硫化−p−第三ブチルフェノールとアルデヒド類とを付加縮合させた変性アルキルフェノール樹脂や、アルキルフェノール・スルフィド樹脂も樹脂架橋剤として使用可能である。
【0056】
動的架橋反応を適切に行うために架橋助剤を用いてもよい。架橋助剤としては金属酸化物が使用され、特に酸化亜鉛、炭酸亜鉛が好ましい。
架橋助剤の配合量は、前記ゴム成分100質量部に対して0.5〜10質量部であることが好ましく、さらには0.5〜5質量部であることがより好ましい。
【0057】
過酸化物としては、ゴム成分を架橋できる化合物であれば特に限定されないが、例えばベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、1,4−ビス[(tert−ブチル)パーオキシイソプロピル]ベンゼン、ジ(tert−ブチルパーオキシ)ベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジtert−ブチルパーオキシドまたは2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−3−ヘキセン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
前記過酸化物とともに共架橋剤を配合してもよい。共架橋剤とはそれ自身も架橋するとともにゴム分子とも反応して架橋し全体を高分子化する働きをするものである。この共架橋剤を用いて共架橋することにより架橋分子の分子量が増大し、耐摩耗性等を向上させることができる。
前記共架橋剤としては、例えば多官能性モノマー、メタクリル酸あるいはアクリル酸の金属塩、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、複素環ビニル化合物、アリル化合物、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマー類、ジオキシム類等が挙げられる。
過酸化物とともに共架橋剤を配合する場合、当該共架橋剤の配合量は共架橋剤の種類または用いる他の成分との関係で適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対して好ましくは5質量部以上20質量部以下、より好ましくは10質量部以上15質量部以下とする。
【0059】
架橋剤の配合量は、架橋する化合物の種類、架橋剤の種類などに応じて適宜選択でき一概には言えない。
例えば樹脂架橋剤を用いる場合、その配合量は架橋する化合物100質量部に対して2〜20質量部であることが好ましい。これは、樹脂架橋剤の配合量が2質量部未満では架橋が不十分となるため耐摩耗性等が劣ることとなる一方、樹脂架橋剤の配合量が20質量部を越えると導電性ローラに加工したときにその硬度が高くなりすぎる場合があるからである。前記配合量は5〜15質量部であることがより好ましい。
過酸化物を用いる場合、その配合量は架橋する化合物100質量部に対し0.2〜3.0質量部であることが好ましい。これは、過酸化物の配合量が0.2質量部未満では架橋が不十分となるため耐摩耗性等が劣ることとなる一方、過酸化物の配合量が3.0質量部を越えると、分子切断による物性低下が起ってしまううえに、分散不良などが発生して加工も困難となることに因る。過酸化物の配合量の下限は、より好ましくは0.5質量部以上、特に1.0質量部以上が好ましい。また、上限は2.5質量部以下が好ましく、特に、2.0質量部以下が好ましい。
【0060】
本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物においては、前記成分以外に本発明の目的に反しない限り他の成分が配合されていてもよい。例えば、充填剤、軟化剤、相溶化剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤または気泡防止剤等の添加剤を適宜配合してもよい。
【0061】
機械的強度を改善するために充填剤等を配合することができる。充填剤としては、例えば、シリカ,カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、二塩基性亜リン酸塩(DLP)、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナ等の粉体を挙げることができる。充填剤は本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物全質量の15質量%以下で配合するのが好ましい。これは充填剤の配合は組成物の引張強度および引裂強度等の改善には有効であるものの、余り多く配合すると組成物の柔軟性が低下してローラの摩擦係数が低下する傾向を示すためである。
【0062】
また、適度な柔軟性と弾性を与えるために軟化剤を配合してもよい。
軟化剤としてはオイルや可塑剤が挙げられる。オイルとしては、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油や炭化水素系オリゴマーからなるそれ自体公知の合成油、またはプロセスオイルを用いることができる。合成油としては、例えばα−オレフィンとのオリゴマー、ブテンのオリゴマー、エチレンとα−オレフィンとの非晶質オリゴマーが好ましい。可塑剤としては、フタレート系、アジペート系、セパケート系、ホスフェート系、ポリエーテル系、ポリエステル系等の可塑剤が挙げられ、より具体的には例えばジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルセパケート(DOS)、ジオクチルアジペート(DOA)等が挙げられる。
なかでも、軟化剤としてはパラフィン系オイルが好ましく、パラフィンプロセスオイルがより好ましい。
【0063】
前記軟化剤の配合量は、ゴム成分である成分B100質量部に対し50〜250質量部としている。好ましく50〜200質量部であり、特に70〜150質量部が好ましい。
軟化剤の配合量が前記範囲よりも少ないと、軟化剤を添加した効果、すなわち動的架橋時における成分Bまたは成分Cの分散性をより良化する効果が得られ難く、また硬度も高くなりやすい。一方、軟化剤を前記範囲より多く配合すると、軟化剤が架橋阻害を起こして十分に動的架橋が行われないため物性が低下しやすく、また軟化剤がブリードしやすいためである。
なお、前記軟化剤の配合量にはゴム成分として油展ゴムを用いた場合の伸展油の量が含まれている。
【0064】
本発明の組成物においては相溶化剤を配合することが好ましい。特に、相溶化剤を配合することにより、組成物中の各成分、特に塩の分散性が向上するとともに、マイクロカプセルを配合する場合においては導電性熱可塑性エラストマー組成物とマイクロカプセルとの相溶性も向上する。
相溶化剤の配合量は、ゴム成分である成分(B)100質量に対し1〜20質量部であることが好ましい。前記相溶化剤の配合量が1質量部未満であると、相溶化剤としての効果が十分でなく、エラストマー組成物(I)とEO−PO−AGE共重合体がうまく混合されず、組成物の均一性が損われるため加工性が悪化するおそれがある。さらに、マイクロカプセルを配合する場合では、導電性熱可塑性エラストマー組成物とマイクロカプセルが膨張したマイクロバルーンがうまく混合されず、組成物の均一性が損われるため加工性が悪化するおそれがある。一方、前記混合物の配合量が20質量部を超えると、相溶化効果は飽和しているためそれ以上向上せず、逆に硬度が高くなるなどのデメリットが大きくなる。
【0065】
相溶化剤としては、エチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート共重合体またはエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体が好ましい例として挙げられる。
【0066】
相溶化剤であるエチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート共重合体またはエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体におけるアクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸とアルコールとのエステル化物を挙げることができ、この中でもアクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
アクリル酸エステル成分の含量は0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることがさらに好ましい。また、グリシジルメタクリレートまたは無水マレイン酸の含量は0.05〜20質量%であることが好ましく、0.1〜15質量%であることがより好ましく、0.5〜10質量%であることがさらに好ましく、1〜10質量%であることが特に好ましい。
【0067】
相溶化剤としては、前記2種の共重合体とともに下記の定義に該当する三元共重合体の1種または2種以上を用いてもよい。
相溶化剤としての三元共重合体とはオレフィン成分(c1)とアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル(c2)と不飽和カルボン酸単位(c3)からなる三元共重合体である。
オレフィン成分(c1)としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のエチレン系炭化水素を挙げることができる。
アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル(c2)成分の具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸またはメタクリル酸とアルコールとのエステル化物を挙げることができ、この中でもアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチルが好ましい。
不飽和カルボン酸単位(c3)は、不飽和カルボン酸やその無水物により導入され、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特に無水マレイン酸が好ましい。また不飽和カルボン酸単位は、前記3元共重合体中に共重合されていればその形態は限定されず、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル(c2)成分の含量は0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることがさらに好ましい。また、不飽和カルボン酸単位(c3)含量は0.05〜20質量%であることが好ましく、0.1〜15質量%であることがより好ましく、0.5〜10質量%であることがさらに好ましく、1〜10質量%であることが特に好ましい。
【0068】
本発明で用いるマイクロカプセルは、アクリル基を有するポリマーを外殻としている。
マイクロカプセルに含まれるアクリル基の量は特に限定されないが、通常は外殻を形成するポリマー100質量部にアクリル基を生成するために必要なモノマーが5質量部以上含まれていることが好ましく、10質量部以上含まれていることがより好ましい。
アクリル基を生成するために必要なカルボキシル基を有するモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸もしくはケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸もしくはクロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;またはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチルもしくはイタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸のモノエステルやその誘導体が挙げられ、なかでもアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、スチレンスルホン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸が好ましい。これらは塩の形で用いてもよい。また、2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
前記マイクロカプセルはアクリル基を有するポリマーを外殻としていれば特に限定されず、公知のものを用いてよい。
例えば、ニトリル系モノマー、カルボキシル基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、側鎖に環状構造物を有するモノマー、および所望により2以上の重合性二重結合を有するモノマー(架橋剤)から構成されるポリマーを外殻とするマイクロカプセルが挙げられる。
前記ポリマーにおける各モノマーの構成比としては、ニトリル系モノマーが15〜75質量%、更に好ましくは25〜65質量%であり、カルボキシル基を有するモノマーが10〜65質量%、更に好ましくは20〜55質量%であり、アミド基を有するモノマーが0.1〜20質量%、更に好ましくは1〜10質量%であり、側鎖に環状構造物を有するモノマーが0.1〜20質量%、更に好ましくは1〜10質量%であり、2以上の重合性二重結合を有するモノマー(架橋剤)が0〜3質量%であることが好ましい。
前記態様のマイクロカプセルにおいては、外殻ポリマーに無機物が含有されていてもよい。該無機物の含有量は1〜25質量%であることが好ましい。
【0070】
前記ニトリル系モノマーとしてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリルまたはこれらの任意の混合物等が例示されるが、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルが特に好ましい。
前記アミド基を有するモノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどが挙げられる。
前記側鎖に環状構造物を有するモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。また、主鎖において環状構造を有し、更に側鎖に環状構造物を有するモノマーである、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなども、側鎖に環状構造物を有するモノマーとして挙げることができる。
前記2以上の重合性二重結合を有するモノマー(架橋剤)としては、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、メタクリル酸アリル、ジメタクリル酸1,3−ブチルグリコール、トリアリルイソシアネート等が挙げられる。
【0071】
また、ニトリル系モノマー、分子中に不飽和二重結合とカルボキシル基を有するモノマー、2以上の重合性二重結合を有するモノマー、および所望により膨張特性を調整するために前記モノマーと共重合可能なモノマーから構成されるポリマーを外殻とするマイクロカプセルが挙げられる。
前記ポリマーにおける各モノマーの構成比としては、ニトリル系モノマーが40〜95質量%、更に好ましくは50〜90質量%であり、分子中に不飽和二重結合とカルボキシル基を有するモノマーが7〜60質量%、更に好ましくは10〜50質量%であり、2以上の重合性二重結合を有するモノマーが0.05〜5質量%、更に好ましくは0.2〜3質量%であり、膨張特性を調整するために共重合可能なモノマーは0〜20質量%、更に好ましくは0〜15質量%であることが好ましい。
【0072】
前記ニトリル系モノマー、分子中に不飽和二重結合とカルボキシル基を有するモノマー、2以上の重合性二重結合を有するモノマーとしては、前記例示の化合物が挙げられる。
前記膨張特性を調整するために共重合可能なモノマーとしては、例えば、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、スチレンスルホン酸またはそのナトリウム塩、α−メチルスチレン、クロロスチレンなどスチレン系モノマー、アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミドなどのラジカル開始剤により重合反応が進行するモノマー、およびそれらの混合物である。ただし、カルボキシル基と反応する官能基を持つ単量体、例えばN−メチロールアクリルアマイドなどを実質的に含有しないことが好ましい。
【0073】
また、アクリロニトリル、カルボキシル基を含有するモノマー、該モノマーのカルボキシル基と反応する基を持つモノマー、および所望により2以上の重合性二重結合を有するモノマーまたは/および軟化温度を調整する成分である高いTgを有するモノマーを外殻とするマイクロカプセルが挙げられる。
前記ポリマーにおける各モノマーの構成比は、アクリロニトリルが20〜80モル%、更に好ましくは30〜70モル%であり、カルボキシル基を含有するモノマーが5〜40モル%、更に好ましくは10〜30モル%であり、カルボキシル基と反応する基を持つモノマーが1〜30モル%、更に好ましくは2〜20モル%であり、2以上の重合性二重結合を有するモノマーは0〜5モル%、更に好ましくは0〜3モル%であり、高いTgを有するモノマーは0〜50モル%、更に好ましくは10〜40モル%であることが好ましい。
【0074】
前記カルボキシル基を含有するモノマー、2以上の重合性二重結合を有するモノマーとしては、前記例示の化合物が挙げられる。
前記カルボキシル基と反応する基を持つモノマーとしては、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、マグネシウムモノアクリレート、ジンクモノアクリレートなどが挙げられる。
前記高いTgを有するモノマーとしては、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、メチルメタアクリレート、t−ブチルメタアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、ベンジルメタアクリレート、N−ビニルピロリドン、スチレンなどホモポリマーのTgが80℃以上であるモノマーが挙げられる。
【0075】
また、ニトリル系モノマーとカルボキシル基を含有するモノマーとの共重合ポリマー、および該共重合ポリマーをイオン架橋している1〜3価の金属カチオンを含む外殻を有するマイクロカプセルが挙げられる。
前記ポリマーにおける各モノマーの構成比としては、ニトリル系モノマーが全モノマーに対して80質量%未満であることが好ましく、カルボキシル基を含有するモノマーが全モノマーに対して5〜50質量%であるのが好ましく、前記金属カチオンがカルボキシル基を含有するモノマー100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0076】
ニトリル系モノマーとカルボキシル基を含有するモノマーしては、前記例示の化合物が挙げられる。いずれのモノマーもラジカル重合性不飽和モノマーであることが好ましい。
前記「1〜3価の金属カチオン」としては、例えばカリウムカチオン、ナトリウムカチオン、セシウムカチオン、リチウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、バリウムカチオン、鉄カチオン、ニッケルカチオン、銅カチオン、亜鉛カチオン、スズカチオン、クロムカチオン、鉛カチオン、ストロンチウムカチオン、アルミニウムカチオンなどが挙げられる。
この「1〜3価の金属カチオン」は、通常下記のような金属カチオン供給体の形で配合されている。金属カチオン供給体としては、例えば前記した「1〜3価の金属カチオン」の水酸化物、リン酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、亜硝酸塩、亜硫酸塩やオクチル酸、ステアリン酸等の各有機酸の塩等が挙げられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化ニッケル、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムもしくは水酸化バリウムなどの水酸化物;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛もしくは塩化アルミニウムなどの塩化物;リン酸ナトリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛もしくはリン酸アルミニウムなどのリン酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウムもしくは炭酸亜鉛などの炭酸化物が挙げられる。なかでも水酸化亜鉛、水酸化ニッケル、水酸化鉄、水酸化銅などの遷移金属水酸化物が好ましく、2価の遷移金属の水酸化物がより好ましい。
【0077】
マイクロカプセルには熱膨張性と既膨張のものがあるが、本発明ではいずれを使用してもよい。
熱膨張性マイクロカプセルは、上述した外殻に低沸点物質(熱膨張剤)が内包されている。該熱膨張性マイクロカプセルは加熱されると、外殻のポリマーが軟化し、低沸点物質の気化に伴って膨張してマイクロバルーン(中空球状粒子)になる。
外殻に内包される低沸点物質としては、外殻を構成する熱可塑性樹脂の軟化点以下でガス状になる物質が好ましい。かかる低沸点物質としては、例えばプロパン、プロピレン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、メタンのハロゲン化物、テトラアルキルシランのごとき低沸点液体および加熱により熱分解してガス状になるAIBNのごとき化合物が挙げられる。これらのうち、好適にはイソブタン、ノルマルブタン、ノルマルペンタンまたはイソペンタンのごとき低沸点の液状炭化水素が用いられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0078】
熱膨張性マイクロカプセルの膨張率としては2倍以上であることが好ましく、2〜20倍であることがより好ましい。
熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度は100℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。また、最大膨張温度が130℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることがさらに好ましい。最大膨張温度の上限値は特に限定されないが、通常は250℃程度である。
【0079】
マイクロカプセルの粒子径(直径)は100μm以上であることが好ましい。
マイクロカプセルの粒子径が100μm未満であると硬度を低くするために大量のマイクロカプセルを配合する必要があり、押出加工性やコストの面から好ましくないため、100μm以上が好ましい。
一方、マイクロカプセルの粒子径の上限は特に規定されず、粒子径が大きくなり過ぎた場合でも、配合量を調整することで、硬度と押出成形加工性や強度とのバランスをとることが可能である。しかし、粒子径が500μmを超える場合には、本発明の導電性ローラを構成する組成物に占めるマイクロカプセルの体積が大きくなるため、加工性が悪化することや強度が低下するおそれがあるため、500μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは300μm以下である。
なお、熱膨張性マイクロカプセルについて「粒子径」とは膨張後の粒子径をさす。
【0080】
また、前記マイクロカプセルを配合した導電性ローラにおいては、23℃におけるJIS K 6253のショアA硬度が30以下であることが好ましい。これは、ショアA硬度が40を超えると15℃以下の低い温度で使用する場合に画像不良を引き起こす可能性があり、さらにショアA硬度が30を超えて40以下でも少ない頻度ではあるが画像不良を起こす可能性があるからである。
ショアA硬度の下限は特に限定されないが、10以上であることが好ましい。
【0081】
本発明で用いるマイクロカプセルは負荷に対する形状保持性が高いことが好ましい。具体的には、例えば荷重15MPaを負荷したとき、荷重付与後の体積保持率が50%以上であるのが好ましく、さらに好ましくは70%以上であり、特に好ましくは80%以上である。なお、熱膨張性マイクロカプセルにおいては加熱膨張させた膨張体について測定する。
【0082】
本発明で用いるマイクロカプセルは自体公知の方法により製造することができる。また、商業的にも入手可能であって、例えば「エクスパンセル」(ケマノーベル社製)、「マツモトマイクロスフェアー」(松本油脂製薬(株)製)等の市販品の中から、適宜に選択して用いることができる。
なかでも、膨張後のマイクロカプセルの粒子径が100μm以上となる「マツモトマイクロスフェアーF−105」(松本油脂製薬(株)製)等を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0083】
本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物においては、導電化させるためにEO−PO−AGE共重合体とイオン導電性塩とを併せて用いているので、抵抗値の低い値から幅広く設定でき、かつ連続印加したときの抵抗値の変化が少ない。さらに、前記塩の配合量が少なくて済むため、押出加工性に優れ、製造コストも抑えることができる。
そのうえ、イオン導電性塩を含むEO−PO−AGE共重合体が動的架橋され非連続相を形成しているので、導電経路が限定され、結果として連続印加したときの抵抗値の変化をより有効に抑えることができる。
【0084】
本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物においては、熱可塑性エラストマーおよび熱可塑性樹脂の混合物(成分A)中にジエン系ゴムまたはEPDMゴムの少なくとも1種を含むゴム成分(成分B)を動的架橋させて分散させているので、ゴムのような耐久性、弾性、柔軟性と樹脂のような成形性を併せ持つことができる。さらに、本発明の組成物は熱可塑性であり、リサイクル可能である。
そのうえ、前記ゴム成分(成分B)は独立して非連続相を形成しているため、成分Cが配合されていてもゴムの架橋度は影響を受けることがない。その結果、ゴムの架橋度の低下に伴う圧縮永久ひずみの増大などの問題発生を抑制しながら電気抵抗を効果的に低減することができる。また、適切な硬度を有する上に、感光体汚染を生じることもなく、電気抵抗のばらつきも低減することができる。
【0085】
さらに、導電性熱可塑性エラストマー組成物にアクリル基を有するポリマーを外殻として含むマイクロカプセルを混合し、押出成形して製造した導電性ローラは、低温環境下でも低硬度を保つことができる。そのため、該導電性ローラを用いた画像形成装置は低温においても転写不良、帯電不良または搬送不良を起こすことなく、良好な画像を形成することができる。特に前記マイクロカプセルの粒子径が100μm以上500μm以下であるものは、硬度を下げるために加工性を犠牲にすることなく、良好な成形性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の第1実施形態の導電性熱可塑性エラストマー組成物は、微視的に見れば図1に示したように、連続相11と第1非連続相12および第2非連続相13とが海−島構造を呈し、第1非連続相12と第2非連続相13は連続相11中でそれぞれが独立した島構造を形成している。
前記連続相11は熱可塑性エラストマーであるスチレン系熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂であるオレフィン系樹脂とを混合した組成物(A)から構成されている。
前記第1非連続相12はゴム成分であるEPDMゴム組成物(B)から構成されている。
前記第2非連続相13はイオン導電性塩であるフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を含むEO−PO−AGE共重合体(C)から構成されている。
さらに、各相には架橋剤、軟化剤、相溶化剤等が含まれていてもよい。
【0087】
前記(A)にとして、オレフィン系樹脂としてポリプロピレンを用い、スチレン系熱可塑性エラストマーとしてスチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)を用いている。スチレン系熱可塑性エラストマーとオレフィン系樹脂の混合割合は、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対してオレフィン系樹脂が30〜50質量部としている。
前記(A)は、(B)であるEPDMゴム100質量部に対し20〜120質量部の割合で含まれていることが好ましく、40〜100質量部の割合で含まれていることがより好ましく、50〜90質量部の割合で含まれていることがさらに好ましい。
【0088】
前記(C)として、EO−PO−AGE共重合体としてはエチレンオキサイド:プロピレンオキサイド:アリルグリシジルエーテルの含有比率が80〜95モル%:1〜10モル%:1〜10モル%であるEO−PO−AGE共重合体を用いている。当該共重合体の数平均分子量Mnは5万以上であることがとくに好ましい。
EO−PO−AGE共重合体の配合量は、成分BであるEPDMゴム100質量部に対して5〜30質量部が好ましく、10〜25質量部がより好ましい。
【0089】
前記(C)に配合するフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩として、上述の化学式1または2で表される陰イオンを備えた塩が好ましく、なかでも化学式1または2においてX〜Xで示される官能基がCF3SO2−である陰イオンを備えた塩がより好ましい。前記塩において陰イオンと対になり塩を構成する陽イオンは、アルカリ金属であることが好ましく、中でもリチウムイオンがより好ましい。具体的に、前記塩としてはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムが特に好ましい。
フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩の配合量は、EO−PO−AGE共重合体100質量部に対し0.5〜20質量部が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。
【0090】
前記構成からなる導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を説明する。
まず、成分BのEPDMゴムは予めペレットにしておく。このペレット状のEPDMゴム(B)、スチレン系熱可塑性エラストマーとオレフィン系樹脂(A)、架橋剤、軟化剤を、温度200℃で混練し、成分BのEPDMゴムを架橋剤により動的架橋させて、成分A中に分散させ、エラストマー組成物(I)を作製する。
得られたエラストマー組成物(I)、EO−PO−AGE共重合体とフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩(C)、架橋剤、相溶化剤とを加えて、温度200℃で混練し、本実施形態の導電性熱可塑性エラストマー組成物を作製する。
本実施形態の組成物は後の工程でのハンドリング性を考慮してペレット状にしておく。
【0091】
EPDMゴムを動的架橋させるための架橋剤としては樹脂架橋剤または過酸化物が好ましい。
樹脂架橋剤としてはハロゲン化アルキルフェノール樹脂架橋剤が特に好ましい。前記樹脂架橋剤の配合量は、EPDMゴム100質量部に対して5〜15質量部、好ましくは10〜15質量部とする。
動的架橋反応を適切に行うために、樹脂架橋剤とともに架橋助剤として酸化亜鉛を配合してもよい。架橋助剤の配合量は、上記EPDMゴム100質量部に対して0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。
【0092】
過酸化物としてはジ(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンを用いることが好ましい。前記過酸化物の配合量はEPDMゴム100質量部に対し0.5〜3質量部とする。
前記過酸化物とともに共架橋剤を配合してもよい。共架橋剤としては、ジオキシム類が好ましく、N,N’−m−フェニレンビスマレイミドがより好ましい。前記共架橋剤の配合量はEPDMゴム100質量部に対し0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜2質量部であることがより好ましい。
【0093】
軟化剤としては、パラフィン系オイルが好ましく、なかでもパラフィン系プロセスオイルが好ましい。
軟化剤はEPDMゴム100質量部に対して50〜200質量部、好ましくは70〜150質量部配合している。
【0094】
EO−PO−AGE共重合体を動的架橋させるための架橋剤としては過酸化物が好ましい。
過酸化物としてはジ(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンを用いることが好ましい。前記過酸化物の配合量はEO−PO−AGE共重合体100質量部に対し0.5〜3質量部とする。
前記過酸化物とともに共架橋剤を配合してもよい。共架橋剤としては、ジオキシム類が好ましく、N,N’−m−フェニレンビスマレイミドがより好ましい。前記共架橋剤の配合量はEO−PO−AGE共重合体100質量部に対し0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜2質量部であることがより好ましい。
【0095】
相溶化剤としては、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体が好ましい。
エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体において、アクリル酸エステルとしてアクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルを用いており、特にアクリル酸エチルを用いることが好ましい。構成モノマーの比率は、アクリル酸エステル含量が3〜10質量%、無水マレイン酸含量が1〜5質量%としている。当該共重合体においては、メルトフローレートが0.5〜100g/10分であることが好ましく、1〜50g/10分であることがより好ましい。
上記相溶化剤の配合量は、EPDMゴム100質量に対し3〜15質量部であることが好ましく、5〜10質量部であることがより好ましい。
【0096】
上記した方法で作成した導電性熱可塑性エラストマー組成物を用いて、図2に示す導電性ローラを製造している。
導電性ローラ2は、前記した構成の導電性熱可塑性エラストマー組成物からなる円筒状のローラの中心部に円柱状の芯金1が挿入している。
ローラ部の厚さは1〜20mmであることが好ましく、2〜15mmであることがより好ましい。厚さが1mm未満では弾性が不足しやすく、厚さが20mmを超えると導電性ローラが大きくなりすぎ、複写機やプリンター等に搭載しにくくなるからである。芯金1は、アルミニウム、アルミニウム合金、SUSもしくは鉄等の金属製、セラミック製等とすることができる。
なお、円筒形状に成形したローラ部の中空部に略D字形状の芯材を圧入することにより略D字形状のゴムローラとすることもできる。
さらに、導電性ローラ2には表面にコーティング(図示せず)を施してもよく、酸化膜を形成してもよい。本実施形態の導電性ローラにおいては、印加電圧1000Vにおける初期抵抗値が10Ω〜1011Ωとしている。好ましくは10Ω〜10Ω、より好ましくは10Ω〜10Ωである。
前記導電性ローラ2においては、連続印加24時間後の抵抗比は2.5以下とし、好ましくは2以下としている。
【0097】
次に、第2実施形態の導電性ローラについて、説明する。
本実施形態の導電性ローラ2は、上述の第1実施形態と同様の導電性熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対してアクリル基を有するポリマーを外殻とするマイクロカプセル0.5〜5.0質量部混合した組成物から形成している。
【0098】
前記アクリル基を有するポリマーを外殻とするマイクロカプセルは、外殻を構成するポリマーがカルボキシル基を有するモノマーとしてメタクリル酸またはアクリル酸を用いて重合されたアクリル系コポリマーであることが好ましい。
前記マイクロカプセルは熱膨張性マイクロカプセルとし、具体的には前記外殻に低沸点物質として液状炭化水素が内包されたものとしている。
前記マイクロカプセルは、その膨張開始温度が110℃以上、好ましくは110〜160℃、より好ましくは130〜140℃であって、膨張最高温度が150〜200℃、好ましくは180〜190℃であるものを用いている。
【0099】
第2実施形態の導電性ローラは以下の方法で製造している。
第1実施形態と同様の方法で得られた導電性熱可塑性エラストマー組成物とマイクロカプセルをタンブラーにてドライブレンドを行い、第2実施形態の導電性ローラを構成する組成物とし、該組成物を150〜210℃の押出温度で単軸押出機を用いてチューブ状に押し出し、中空部に金属製の芯金12を圧入するか、あるいは両者を接着剤で接合して固定することにより、本実施形態の導電性ローラを得ている。
本実施形態の導電性ローラは、膨張後のマイクロカプセルの粒子径が100〜500μmである。
さらに、導電性ローラには表面にコーティング(図示せず)を施してもよい。
【0100】
本実施形態の導電性ローラは、23℃におけるJIS K6253のショアA硬度が10以上30以下である。
なお、初期抵抗値及び連続印加24時間後の抵抗比は、第1実施形態と同様の範囲の値を示している。
【0101】
第2実施形態の導電性ローラは、図1に示される第1実施形態と同様の導電性熱可塑性エラストマーの連続相11にさらにマイクロカプセル(図示せず)が分散されている。そのため、硬度も十分に低く、加えて電気抵抗の低減効果も十分働き、かつ各成分が均一に分散されているので、加工性を損わずに、常温ではもちろん低温でも良好な印字を実現することができる。
他の構成及び効果は第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0102】
以下に、実施例および比較例を示す。
[実施例1、比較例1〜3]
(実施例1)
熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂(成分A)、EPDMゴム(成分B)、軟化剤、架橋剤を下記の表1に示す割合で配合し、2軸押出機(アイペック製「HTM38」)を用いて回転数200rpm、温度200℃で溶融・混練りし、成分Bを架橋剤により動的架橋させ成分A中に分散させながら押出したのち、ペレット状にし、エラストマー組成物(I)を得た。
得られたペレット状のエラストマー組成物(I)、EO−PO−AGE共重合体とフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩(成分C)、架橋剤、相溶化剤を下記の表1に示す割合で配合し、2軸押出機(アイペック製「HTM38」)を用いて回転数200rpm、温度200℃で溶融・混練りし、成分Cを架橋剤により動的架橋させ成分A中に分散させ、本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0103】
得られた本発明の組成物をペレット状にして樹脂押出機(サンエヌティー製φ50押出機)に投入し、回転数20rpm、温度200℃でチューブ状に押し出して、得られたチューブの中空部に芯金を挿入した後、必要寸法に切断、研磨し、本発明の導電性ローラを得た。ローラの形状は、内径6mm、外径14mm、長さ218mmであった。
得られた導電性ローラにおいては、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物(成分A)が連続相を形成し、EPDMゴム(成分B)と、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を含むEO−PO−AGE共重合体(成分C)が個別に成分A中に分散され、それぞれ独立した第1、第2の2相の非連続相を形成していた。
【0104】
(比較例1)
実施例1と全く同様にしてエラストマー組成物(I)を得た。
架橋剤を配合することなく、得られたペレット状のエラストマー組成物(I)、EO−PO−AGE共重合体とフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩(成分C)、相溶化剤を下記の表1に示す割合で配合し、2軸押出機(アイペック製「HTM38」)を用いて回転数200rpm、温度200℃で溶融・混練りし、成分Cを動的架橋させずに成分A中に分散させ、比較例1の導電性熱可塑性エラストマー組成物を得た。
得られた組成物をペレット状にして、実施例1と全く同様にして導電性ローラを作製した。
得られた導電性ローラにおいては、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物(A)、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を含むEO−PO−AGE共重合体(C)が連続相を形成し、EPDMゴム(B)が非連続相を形成していた。
【0105】
(比較例2,3)
熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂(A)、EPDMゴム(B)、EO−PO−AGE共重合体とフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩(C)、軟化剤、架橋剤、相溶化剤を下記の表1に示す割合で配合し、2軸押出機(アイペック製「HTM38」)を用いて回転数200rpm、温度200℃で溶融・混練りし、成分Bと成分Cを同時に架橋剤により動的架橋して(A)中に分散させ、導電性熱可塑性エラストマー組成物を得た。
得られた組成物をペレット状にして、実施例1と全く同様にして導電性ローラを作製した。
得られた導電性ローラにおいては、熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂の混合物(A)が連続相を形成し、EPDMゴム(B)、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を含むEO−PO−AGE共重合体(C)が非連続相を形成していた。すなわち、非連続相は成分Bと成分Cをともに含む1相しか存在しなかった。
【0106】
【表1】

【0107】
表中の各成分については下記製品を用いた。
・熱可塑性エラストマー;水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー((株)クラレ製「セプトン4077」)
・熱可塑性樹脂;ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製「ノバテックPP」)
・EPDMゴム;住友化学(株)製「エスプレン505A」
・軟化剤;パラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製「ダイアナプロセスオイルPW−380」)
・架橋剤1;α,α’−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日本油脂(株)製「パーブチルP」)
・EO−PO−AGE共重合体;日本ゼオン(株)製「ゼオスパン8100」
・塩;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム
・相溶化剤;エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体(アルケマ(株)製「ボンダインLX4110」)
【0108】
前記実施例および比較例の導電性ローラを下記の試験方法で物性を評価した。
(押出加工性)
導電性ローラを構成する組成物のペレットを樹脂押出機でチューブ状に押し出したときのチューブの形状(ゴム肌)を目視にて評価した。
○;表面は滑らかで問題なし。
△;表面に若干の凹凸があるもの、押出条件の変更や研磨代を大きくとることにより対応できるレベル。
×:表面の凹凸が非常に大きく、押出途中で切れるためチューブを作製するのが困難なレベル。
(硬度)
JIS K 6253に準拠して、雰囲気温度23℃、相対湿度55%の恒温恒湿条件下にて測定した。
【0109】
(初期抵抗値の測定)
図3に示すように芯金1を通した導電性ローラ2をアルミドラム3上に当接搭載し、芯金1の両端に500gずつの荷重Fをかけ、30rpmで回転させた。電源4の+側に接続した内部抵抗r(100Ω)の導線の先端をアルミドラム3の一端面に接続すると共に電源4の−側に接続した導線の先端を導電性ローラ2に通した芯金1の他端面に接続して、電圧1000Vをかけた。
前記電線の内部抵抗rにかかる電圧を検出し、検出電圧Vとした。この装置において印加電圧をEとすると、導電性ローラの初期抵抗値RはR=r×E/(V−r)となるが、今回−rの項は微少とみなし、R=r×E/Vとした。
前記測定は温度23℃、相対湿度55%の恒温恒湿条件下で行った。
【0110】
(連続印加24時間後の抵抗比)
初期抵抗値Rを測定した後、ローラを回転させた状態のままで電圧1000Vをかけ続けた。その後、初期抵抗値と同じ測定方法で連続印加24時間後の抵抗値R24を測定した。得られた値から次式にて連続印加24時間後の抵抗比を求めた。
連続印加24時間後の抵抗比=R24/R
【0111】
EO−PO−AGE共重合体が動的架橋されておらず、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を含むEO−PO−AGE共重合体(C)が連続相に含まれる比較例1においては、連続印加における抵抗値の変化が大きい。
一方、EPDMゴムとEO−PO−AGE共重合体を同時に動的架橋させ、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を含むEO−PO−AGE共重合体(C)がEPDMゴム(B)とともに非連続相に含まれる比較例2は、抵抗値が高い上に成形加工性も悪い。抵抗値を下げるためにEO−PO−AGE共重合体の配合量を増加させた比較例3では、抵抗値が高いという問題は解決されたが、成形加工性がさらに悪化する上に、連続印加における抵抗値の変化も大きくなる。
【0112】
それに対し、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を含むEO−PO−AGE共重合体(C)を含有する非連続相が連続相中で独立して島構造を形成している実施例1では、押出加工性に優れ、得られる導電性ローラの抵抗値は低く連続印加における抵抗値の変化も小さい。
【0113】
[実施例2〜10、比較例4、5]
(実施例2〜4,実施例6〜10)
熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂(成分A)、予めペレット状としたEPDMゴム(成分B)、軟化剤、架橋剤2及び亜鉛華を下記の表2に示す割合で配合し、2軸押出機(アイペック製「HTM38」)を用いて回転数200rpm、温度200℃で溶融・混練りし、成分Bを架橋剤により動的架橋させ成分A中に分散させながら押出したのち、ペレット状にし、エラストマー組成物(I)を得た。
得られたペレット状のエラストマー組成物(I)、EO−PO−AGE共重合体とフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩(成分C)、架橋剤、相溶化剤を下記の表2に示す割合で配合し、2軸押出機(アイペック製「HTM38」)を用いて回転数200rpm、温度200℃で溶融・混練りし、成分Cを架橋剤により動的架橋させ成分A中に分散させ、導電性熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0114】
このようにして得られた導電性熱可塑性エラストマー組成物のペレットとマイクロカプセルをタンブラーにてドライブレンドを行ってから、単軸押出機(サンエヌティー製φ50押出機)を用いて、回転数20rpm、表2に記載の押出温度でチューブ状に押し出し、外径14mm、内径6mmの押出成形物を得た。
得られたチューブの中空部に芯金を挿入し、長さ218mmに切断し、導電性ローラを得た。
【0115】
(実施例5)
マイクロカプセルを配合しなかった以外は、実施例1と全く同様の方法で導電性ローラを得た。
(比較例4)
混練り2(成分C、マイクロカプセル、架橋剤1、相容化剤)を配合しなかった以外は、実施例2と全く同様の方法で導電性ローラを得た。
(比較例5)
塩を配合しなかった以外は、実施例4と全く同様の方法で導電性ローラを得た。
【0116】
【表2】

【0117】
表2中の熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、EPDMゴム、軟化剤、EO−PO−AGE共重合体、塩、相溶化剤、架橋剤1については、前述の実施例1、比較例1〜3と同様の製品を用いた。
亜鉛華、架橋剤2、マイクロカプセルについては下記製品を用いた。
・亜鉛華;三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号(商品名)」
・架橋剤2;フェノール系樹脂架橋剤(田岡化学工業(株)製「タッキロール250−III(商品名)」
・マイクロカプセルA;松本油脂製薬(株)製「マツモトマイクロスフェアー F−100」
・マイクロカプセルB;松本油脂製薬(株)製「マツモトマイクロスフェアー F−105」
【0118】
実施例2〜10、比較例4、5の導電性ローラについて、押出加工性、硬度、マイクロカプセルの粒子径及び常温または低温での印字についての評価を行ない、評価結果を表2に示した。
なお、押出加工性、硬度の試験方法は、前述の実施例1、比較例1〜3と同様の方法で行い、マイクロカプセルの粒子径、常温または低温での印字評価は下記の試験方法で行った。
押出加工性が悪く、必要な長さのチューブを作製できなかった実施例8〜10は、短いチューブを用いて硬度の測定を行い、測定結果は括弧付きで表中に示した。必要な長さのチューブが得られなかったため、実施例8〜10の印字評価は行っていない。
【0119】
(マイクロカプセルの粒子径)
芯金を挿入する前のチューブ状の押出成形物を切断して、断面を200倍に拡大してビデオマイクロスコープにて観察し、マイクロカプセル100個の直径を計測し、その平均値を算出した。
【0120】
(常温での印字評価)
実施例および比較例の各導電性ローラを転写ローラとしてレーザープリンター(ヒューレットパッカード社製「Laser Jet 4050」)に取り付け、温度23℃、相対湿度55%の条件下で、A4サイズの紙(富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製PPC用紙)にハーフトーン印刷を100枚行った。得られた印刷物を目視にて評価した。
◎:印字不良は見られず、全く問題なし。
○:100枚中1〜2枚で印字不良が見られたが、当該印字不良は注意深く見ないとわからない程度の些細なもので、問題のないレベル。
△:100枚中5〜10枚で印字不良が見られた。
×:ほぼ全数で明らかな印字不良が見られた。
(低温での印字評価)
印刷時の環境を温度10℃、相対湿度20%とした以外は、上記と全く同様にして印字評価をおこなった。
【0121】
EO−PO−AGE共重合体、イオン導電性塩およびアクリル基を有するポリマーを外殻とするマイクロカプセルを含まない比較例4では、押出加工性には優れていたものの、硬度が高く、加えて電気抵抗の低減効果も十分働かないため常温および低温のいずれにおいても印字不良が見られた。
比較例5は、硬度が低く、押出加工性にも優れていたものの、イオン導電性塩を含まないため、電気抵抗値が高く、常温において印字不良が僅かに生じ、低温において明らかな印字不良が見られた。
【0122】
また、押出温度を140℃と低くした実施例8、押出温度を220℃と高くした実施例9及び導電性熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対し5.4質量部と多量のマイクロカプセルを配合した実施例10では、押出成形の途中でチューブが切れ、チューブを作製できなかった。しかし、硬度は30以下となった。
マイクロカプセルを配合していない実施例5は、電気抵抗の低減効果も十分働き、常温での印字評価は良好であったが、硬度が高いため、低温では印字不良が見られた。
導電性熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対し0.3質量部と少量のマイクロカプセルを配合した実施例6及び膨張後のマイクロカプセルの粒子径を80μmとした実施例7は、電気抵抗の低減効果も十分働き、常温での印字評価には問題がなかったが、硬度が30を超えており、低温での印字において100枚中5〜10枚の不良が見られた。
【0123】
一方、イオン導電性塩であるフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を含むEO−PO−AGE共重合体(C)を含有する非連続相が連続相中で独立して島構造を形成している導電性熱可塑性エラストマー組成物にマイクロカプセルを配合し、押出温度を150〜210℃として膨張後のマイクロカプセルの粒子径を100μm以上とした実施例2、3、4は、押出加工ができ、電気抵抗の低減効果も十分働き、かつ各成分が均一に分散されているので、加工性を損わずに、常温ではもちろん低温でも良好な印字が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の導電性熱可塑性エラストマー組成物の微視的状態を示す模式図である。
【図2】本発明の導電性ローラの概略図である。
【図3】本発明の導電性ローラの抵抗値の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0125】
1 芯金
2 導電性ローラ
11 連続相
12 第1非連続相
13 第2非連続相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂とを混合した組成物(A)中で、ジエン系ゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエンゴムの少なくとも1種を含むゴム成分(B)と、イオン導電性塩を含むエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(C)とを別々に動的架橋し、
前記(A)中に(B)と(C)を個別に分散させていることを特徴とする導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項2】
前記イオン導電性塩はフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩である請求項1に記載の導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項3】
前記(A)と(B)および架橋剤を混合して、(B)を架橋剤により動的架橋させて(A)中に分散させてエラストマー組成物(I)を作製し、
得られたエラストマー組成物(I)と前記(C)および架橋剤を混合して、(C)を架橋剤により動的架橋させて(A)中に分散させる請求項1または請求項2に記載の導電性熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法で得られた導電性熱可塑性エラストマー組成物に、アクリル基を有するポリマーを外殻として含むマイクロカプセルを混合し、
前記混合物を押し出し成形して製造していることを特徴とする導電性ローラの製造方法。
【請求項5】
前記押出成形時の押出温度が150℃〜210℃である請求項4に記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項6】
連続相と2相の非連続相を備え、該連続相と非連続相とが海−島構造を呈し、かつ、非連続相はそれぞれが独立した島構造を形成しており、
前記連続相は熱可塑性エラストマーと熱可塑性樹脂とを混合した組成物(A)を含有し、
前記2相の非連続相のうち1相の第1非連続相はジエン系ゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエンゴムの少なくとも1種を含むゴム成分(B)を含有し、
前記2相の非連続相のうち他の1相の第2非連続相はフルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を含むエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(C)を含有していることを特徴とする導電性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の導電性熱可塑エラストマー組成物にアクリル基を有するポリマーを外殻として含むマイクロカプセルが混合されていることを特徴とする導電性ローラ。
【請求項8】
さらに、前記導電性熱可塑性エラストマー組成物中に相溶化剤としてエチレンーアクリル酸エステルーグリシジルメタクリレート共重合体またはエチレン−アクリル酸エステルー無水マレイン酸共重合体が含まれている請求項7に記載の導電性ローラ。
【請求項9】
前記導電性熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対して、前記マイクロカプセルは0.5〜5.0質量部の割合で配合されている請求項7または請求項8に記載の導電性ローラ。
【請求項10】
前記マイクロカプセルは、直径が100μm以上500μm以下で、かつ、23℃におけるJIS K6253のショアA硬度が10以上30以下である請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
【請求項11】
1000V印加における初期抵抗値が106〜1011Ωであり、連続印加24時間後の抵抗比が3以下である請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載の導電性ローラ。
【請求項12】
画像形成装置における転写ローラである請求項7乃至請求項11のいずれか1項に記載の導電性ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−308516(P2008−308516A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155152(P2007−155152)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】