説明

導電性熱可塑性組成物の製造方法

導電性マスターバッチ及び導電性熱可塑性組成物の改良製造方法の提供。
【解決手段】 導電性熱可塑性組成物、特に導電性マスターバッチを用いた導電性ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド組成物の製造方法であって、上記導電性マスターバッチを、導電性カーボンブラックと第1の樹脂とを混合して導電性カーボンブラック/樹脂混合物を形成する段階と、その導電性カーボンブラック/樹脂混合物と第2の樹脂とをコンパウンドする段階とを含む方法によって製造し、第1の樹脂が粉末である方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は導電性熱可塑性組成物、特に導電性ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性カーボンブラックは、様々な熱可塑性樹脂とと共に使用されて、導電性熱可塑性組成物を形成するのに成功している。しかし、導電性カーボンブラックの嵩密度が低いため、これらの導電性熱可塑性組成物の形成に課題が残っている。1つのアプローチは、熱可塑性樹脂と導電性カーボンブラックを含むコンセトレート又はマスターバッチを形成し、次いでコンセトレートを熱可塑性組成物に加えることである。このアプローチは、導電性熱可塑性組成物の製造には改善をもたらすが、導電性カーボンブラックの低い嵩密度に起因して、導電性マスターバッチの形成は依然として困難が残っている。
【特許文献1】米国特許第2071250号
【特許文献2】米国特許第2071251号
【特許文献3】米国特許第2130523号
【特許文献4】米国特許第2130948号
【特許文献5】米国特許第2241322号
【特許文献6】米国特許第2312966号
【特許文献7】米国特許第2512606号
【特許文献8】米国特許第4315086号
【特許文献9】米国特許第4600741号
【特許文献10】米国特許第4642358号
【特許文献11】米国特許第4826933号
【特許文献12】米国特許第4927894号
【特許文献13】米国特許第4980424号
【特許文献14】米国特許第5041504号
【特許文献15】米国特許第5115042号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、導電性マスターバッチ及び導電性熱可塑性組成物を製造する方法におけるさらなる改善が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書では、導電性カーボンブラックと第1の樹脂とを混合して導電性カーボンブラック/樹脂混合物を形成する段階と、その導電性カーボンブラック/樹脂混合物と第2の樹脂とをコンパウンドする段階とを含む導電性マスターバッチの製造方法であって、第1の樹脂が約20μm〜約4mmの粒子径を有する粉末である方法を開示する。
【0005】
他の実施形態では、導電性カーボンブラックと第1の樹脂とを混合して導電性カーボンブラック/樹脂混合物を形成する段階と、その導電性カーボンブラック/樹脂混合物と第2の樹脂とをコンパウンドして導電性マスターバッチを形成する段階と、導電性マスターバッチと第3の樹脂及び任意の第4の樹脂とをコンパウンドする段階とを含む導電性熱可塑性組成物の製造方法であって、第1の樹脂が約20μm〜約4mmの粒子径を有する粉末である方法である。
【0006】
上記及び他の特徴を、以下の詳細な説明で例示する。
【0007】
本明細書では、導電性マスターバッチの製造方法を開示する。その方法は、導電性カーボンブラックと第1の樹脂とを混合して導電性カーボンブラック/樹脂混合物を形成する段階と、その導電性カーボンブラック/樹脂混合物と第2の樹脂とをコンパウンドしてマスターバッチを形成する段階とを含む方法である。第1の樹脂は粉末状であり、流れ促進剤の役割を果たす。これは、低い嵩密度導電性カーボンブラックのコンパウンディング装置への添加を容易にする。粉末化された第1の樹脂は、続くコンパウンディングも容易にする。第1の樹脂と第2の樹脂は両方とも粉末状であってよく、また第2の樹脂はペレット状であってもよい。同様に、第1の樹脂と第2の樹脂は化学的に同一であっても異なっていてもよい。一実施形態では、第1及び第2の樹脂はポリアミド樹脂である。熱可塑性組成物は、導電性マスターバッチを1種以上の熱可塑性樹脂又は樹脂ブレンドに加えて製造することができる。導電性マスターバッチで製造された熱可塑性組成物は、導電性マスターバッチなしで製造された同様の組成物と比べて改善された導電率を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
適切な導電性カーボンブラックは、熱可塑性樹脂又は組成物の導電性特性を改変することができるものである。そうしたカーボンブラックは市場で入手可能で、特に限定されないが、S.C.F.(Super Conductive Furnace)、E.C.F.(Electric Conductive Furnace)、Ketjen Black EC(Akzo Co.,Ltd.から入手可能)又はアセチレンブラックを含む様々な商品名で販売されているものである。好ましいカーボンブラックは、約200nm以下、さらに好ましくは約100nm以下、最も好ましくは約50nm以下の平均粒子径を有するものである。導電性カーボンブラックは、約200m/g以上、さらに好ましくは約400m/g以上、最も好ましくは約1000m/g以上の表面積も有することが好ましい。好ましい導電性カーボンブラックは約40cm/100g以上、さらに好ましくは約100cm/100g以上、最も好ましくは約150cm/100g以上の細孔容積(ジブチルフタレート吸収)を有することができる。
【0009】
導電性マスターバッチは、その全重量を基準にして約4重量%〜約16重量%の導電性カーボンブラックを含む。この範囲内において、マスターバッチは、約5重量%以上の導電性カーボンブラック、さらに好ましくは約6重量%以上の導電性カーボンブラック、特に好ましくは約8重量%以上の導電性カーボンブラックを含むことが好ましい。この範囲内においてまた、マスターバッチは、約16重量%以下の導電性カーボンブラック、さらに好ましくは約14重量%以下の導電性カーボンブラック、特に好ましくは約12重量%以下の導電性カーボンブラックを含むことが特に好ましい。
【0010】
導電性マスターバッチで使用するのに適切な樹脂には、ポリカーボネート、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルケニル芳香族)、ポリオレフィン、ポリブタジエン及びポリイソプレンなどのジエン系ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、これらの共重合体、アルケニル芳香族化合物とアクリロニトリルの共重合体、並びにこれらの2種以上のブレンド等が含まれる。
【0011】
上記したように、導電性カーボンブラックは粉末状樹脂と一緒にする。樹脂粉末は約20μm〜約4mmの粒子径を有する。この範囲内において、粒子径は、好ましくは約50以上、さらに好ましくは約100以上、最も好ましくは約150μm以上である。また、この範囲内において、粒子径は、好ましくは約2以下、さらに好ましくは約1.5以下、最も好ましくは約1mm以下である。上記定義のように粒子径は粒子の最大径を指すが、材料を特定のメッシュサイズの篩で篩ったような場合、粒子の一部はより小さいことがある。
【0012】
マスターバッチで使用する樹脂の1以上はポリアミドを含むことが好ましい。ポリアミド樹脂には、アミド基(−C(O)NH−)の存在を特徴とするナイロンとして知られている樹脂の総称群が含まれる。ナイロン−6及びナイロン−6,6が一般に好ましいポリアミドであり、これらは種々の供給業者から入手することができる。しかし、ナイロン−4,6、ナイロン−12、ナイロン−6,10、ナイロン6,9、ナイロン6/6T及びナイロン6,6/6T(約0.5重量%未満のトリアミン含有量を有する)などの他のポリアミド、並びに非晶質ナイロンなどの他のものが導電性マスターバッチ及び熱可塑性組成物に有用である。様々なポリアミド並びに様々なポリアミド共重合体の混合物も有用である。特に好ましいポリアミドはポリアミド−6,6である。
【0013】
ポリアミドは、米国特許第2071250号、同第2071251号、同第2130523号、同第2130948号、同第2241322号、同第2312966号及び同第2512606号に記載のものなどの多くの周知の方法によって得ることができる。例えば、ナイロン−6はカプロラクタムの重合生成物である。ナイロン−6,6はアジピン酸と1,6−ジミノヘキサンの縮合生成物である。同様に、ナイロン4,6はアジピン酸と1,4−ジミノブタンの縮合生成物である。ナイロンの製造のための他の有用な二酸には、アジピン酸の他に、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、並びにテレフタル酸及びイソフタル酸等が含まれる。他の有用なジアミンには、とりわけ、m−キシレンジアミン、ジ−(4−アミノフェニル)メタン、ジ−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ジ−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ−(4−アミノシクロヘキシル)プロパンが含まれる。カプロラクタムの二酸及びジアミンとの共重合体も有用である。
【0014】
導電性マスターバッチは導電性マスターバッチの全重量を基準にして約84重量%〜約96重量%の樹脂を含むことができる。この範囲内において、マスターバッチは、約95重量%以下の樹脂、さらに好ましくは約94重量%以下の樹脂、最も好ましくは約92重量%以下の樹脂を含むことが好ましい。また、この範囲内において、マスターバッチは、約83重量%以上の樹脂、さらに好ましくは約86重量%以上の樹脂、最も好ましくは約88重量%以上の樹脂を含むことが好ましい。
【0015】
導電性マスターバッチを、導電性カーボンブラックを粉末化樹脂と混合して導電性カーボンブラック/樹脂混合物を形成し、次いで、その導電性カーボンブラック/樹脂混合物と追加の樹脂とをコンパウンドすることによって製造する。追加の樹脂は粉末状でもペレット状でもよい。さらに、追加の樹脂は粉末化された樹脂と化学的に同一であっても異なっていてもよい。導電性カーボンブラック/樹脂混合物と追加の樹脂は、溶融混合装置に同時か又は逐次的に加えてもよい。これらは逐次的に加えることが好ましく、導電性カーボンブラック/樹脂混合物を、追加の樹脂を加えた後に溶融混合装置に加えるのがさらに好ましい。
【0016】
例示的な実施形態では、ポリアミドを押出機の供給スロートに加え、導電性カーボンブラックを粉末化ポリアミドとドライブレンドして導電性カーボンブラック/ポリアミド混合物を形成し、これを、供給スロートの下流にある供給ポートを通して加える。粉末化ポリアミドとペレット状のポリアミドの重量比は、マスターバッチ中に10重量%ローディングの導電性カーボンブラックベースで、約1:9〜約9:1、好ましくは約2:8〜約6:4である。コンパウンドした後、導電性マスターバッチをペレット化し、後で1種以上の熱可塑性樹脂又は樹脂ブレンドに加えるか、又は溶融物として直ちに1種以上の熱可塑性樹脂又は樹脂ブレンドに加えて、導電性熱可塑性組成物を形成することができる。
【0017】
導電性熱可塑性組成物は、導電性マスターバッチと相溶性のある任意の樹脂又は樹脂の組合せを含むことができる。相溶性の樹脂の決定は十分に当業者の能力の範囲内である。
【0018】
導電性マスターバッチがポリアミドを含む場合、導電性熱可塑性組成物はポリ(アリーレンエーテル)を含むことが好ましい。ポリ(アリーレンエーテル)という用語には、ポリフェニレンエーテル(PPE)及びポリ(アリーレンエーテル)共重合体、グラフト共重合体、ポリ(アリーレンエーテル)エーテルアイオノマー、アルケニル芳香族化合物とビニル芳香族化合物とポリ(アリーレンエーテル)のブロック共重合体など、並びにこれらの1種以上を含む組合せが包含される。ポリ(アリーレンエーテル)自体は次の式(I)の構造単位を複数含んでなる公知のポリマーである。
【0019】
【化1】

式中、各構造単位において、各Qは独立に水素、ハロゲン、第一もしくは第二低級アルキル(例えば炭素原子数7以下のアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ、又はハロゲン原子と酸素原子の間に2以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシであり、各Qは独立に水素、ハロゲン、第一もしくは第二低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、炭化水素オキシ、又はハロゲン原子と酸素原子の間に2以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシなどである。好ましくは、各Qはアルキル又はフェニル、特にC1−4アルキル基であり、各Qは水素である。
【0020】
単独重合体及び共重合体のポリ(アリーレンエーテル)が共に包含される。好ましい単独重合体は2,6−ジメチルフェニレンエーテル単位を含むものである。適当な共重合体には、かかる単位を例えば2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と共に含むランダム共重合体或いは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合で得られる共重合体がある。また、ビニルモノマー又はポリスチレンのようなポリマーをグラフトして得られる部分を含むポリ(アリーレンエーテル)、並びに低分子量ポリカーボネートやキノンや複素環式化合物やホルマールのようなカップリング剤を公知の方法で2本のポリ(アリーレンエーテル)鎖のヒドロキシ基と反応させてさらに高分子量のポリマーとしたカップリング化ポリ(アリーレンエーテル)も挙げられる。
【0021】
ポリ(アリーレンエーテル)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して、一般に約3000〜約40000原子質量単位(amu)の数平均分子量及び約20000〜約80000amuの重量平均分子量を有する。ポリ(アリーレンエーテル)は、25℃のクロロホルム中で測定して、一般に約0.10〜約0.60dl/g、好ましくは約0.29〜約0.48dl/gの固有粘度を有する。固有粘度の高いポリ(アリーレンエーテル)と固有粘度の低いポリ(アリーレンエーテル)を組合せて使用することも可能である。2つの固有粘度を用いるときの正確な比率の決定は、使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度及び所望の最終的物性にある程度依存する。
【0022】
ポリ(アリーレンエーテル)は通例2,6−キシレノールや2,3,6−トリメチルフェノールのような1種類以上のモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングによって製造される。かかる酸化カップリングには概して触媒系が使用されるが、触媒系は通例、銅、マンガン又はコバルト化合物のような1種類以上の重金属化合物を通常はその他様々な物質と共に含んでいる。
【0023】
多くの目的に特に有用なポリ(アリーレンエーテル)は、1以上の含アミノアルキル末端基を有する分子からなるものである。アミノアルキル基は通例ヒドロキシ基に対してオルト位に位置する。かかる末端基を有する生成物は、ジ−n−ブチルアミンやジメチルアミンのような適当な第一又は第二モノアミンを酸化カップリング反応混合物の一成分として導入することで得られる。また、4−ヒドロキシビフェニル末端基が存在していることも多々あり、これらは、通例、副生物のジフェノキノンが特に銅−ハライド−第二又は第三アミン系に存在しているような反応混合物から得られる。かなりの割合のポリマー分子(通例ポリマーの約90重量%にも達する)が上記の含アミノアルキル末端基及び4−ヒドロキシビフェニル末端基の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0024】
以上の説明から当業者には明らかであろうが、本発明での使用が想定されるポリ(アリーレンエーテル)には、構造単位及び副次的な化学的特徴の変化とは無関係に、現在公知のあらゆるポリ(アリーレンエーテル)が包含される。
【0025】
導電性熱可塑性組成物は、導電性熱可塑性組成物の全重量を基準にして約10重量%〜約70重量%のポリ(アリーレンエーテル)樹脂を含む。この範囲内において、組成物は、好ましくは約10重量%以上のポリ(アリーレンエーテル)、さらに好ましくは約20重量%以上のポリ(アリーレンエーテル)、最も好ましくは約30重量%以上のポリ(アリーレンエーテル)を含む。またこの範囲内において、組成物は、好ましくは約70重量%以下のポリ(アリーレンエーテル)、さらに好ましくは約60重量%以下のポリ(アリーレンエーテル)、特に好ましくは約50重量%以下のポリ(アリーレンエーテル)を含む。
【0026】
一実施形態では、導電性熱可塑性組成物は、上記のポリ(アリーレンエーテル)樹脂とポリアミド樹脂とのブレンドである。ポリアミド樹脂は、導電性マスターバッチで用いるポリアミドと同一であっても異なっていてもよい。導電性熱可塑性組成物は、導電性熱可塑性組成物の全重量を基準にして約30重量%〜約90重量%のポリアミド樹脂を含む。この範囲内において、組成物は、好ましくは約30重量%以上のポリアミド、さらに好ましくは約35重量%以上のポリアミド、最も好ましくは約40重量%以上のポリアミドを含む。またこの範囲内において、組成物は、好ましくは約90重量%以下のポリアミド、さらに好ましくは約80重量%以下のポリアミド、特に好ましくは約70重量%以下のポリアミドを含む。
【0027】
導電性熱可塑性組成物がポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドを含む場合、組成物は相溶化剤も含むことができる。相溶化剤は、ポリ(アリーレンエーテル)とポリアミド樹脂のどちらか又はその両方と相互作用する多官能性化合物である。この相互作用は化学的(例えばグラフト化)及び/又は物理的相互作用(例えば、分散相の表面特性に影響を及ぼす)であってよい。どちらの場合でも、得られるポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド組成物は、例えば、向上した衝撃強さ、成形ニットライン強さ及び/又は伸びで証明されるように、向上した相溶性を示すようである。組成物はその全重量を基準にして約0重量%〜約25重量%相溶化剤を含む。相溶化剤を用いるための二重の目的は、一般に、ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド樹脂ブレンドの物理特性を改善すること、並びに、より高い割合でのポリアミドの使用を可能にすることである。
【0028】
使用できる種々の相溶化剤の例には、a)液体ジエンポリマー、b)エポキシ化合物、c)酸化ポリオレフィンワックス、d)キノン、e)オルガノシラン化合物、f)以下に記載のように、前述の相溶化剤の1以上と、ポリ(アリーレンエーテル)を反応させて得られる多官能性化合物及び官能化ポリ(アリーレンエーテル)が含まれる。上記の相溶化剤は、米国特許第4315086号、同第4600741号、同第4642358号、同第4826933号、同第4927894号、同第4980424号、同第5041504号及び同第5115042号により包括的に記載されている。
【0029】
上記相溶化剤は、単独ででも、これらの相溶化剤のうちの1つを含む様々な組合せでも使用することができる。さらに、これらは、溶融ブレンドに直接加えることができ、また、ポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドのどちらか又はその両方並びに組成物の製造で用いた他の材料と予備反応させることができる。組成物の製造において相溶化剤を用いる場合、使用する初期量は、選択される具体的な相溶化剤、並びに使用するポリ(アリーレンエーテル)樹脂及びポリアミドの具体的な量に依存することになる。
【0030】
導電性熱可塑性組成物は、耐衝撃性改良剤又は耐衝撃性改良剤の組合せをさらに含むことができる。特に適切な熱可塑性耐衝撃性改良剤は、ブロック共重合体、例えば、一般にスチレンブロックである1個又は2個のアルケニル芳香族ブロックA及び一般にイソプレン又はブタジエンブロックである1個のゴムブロックBを有する、A−B型ジブロック共重合体及びA−B−A型トリブロック共重合体である。ブタジエンブロックは部分的に水素化されていてよい。これらのジブロック共重合体とトリブロック共重合体の混合物が特に有用である。
【0031】
適切なA−B型共重合体及びA−B−A型共重合体には、特に限定されないが、ポリスチレン−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン及びポリ(アルファ−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(アルファ−メチルスチレン)、並びにその選択的水素化物等が含まれる。上記ブロック共重合体の混合物も有用である。そうしたA−B型及びA−B−A型ブロック共重合体は、SOLPRENEの商品名でPhillips Petroleum から、KRATONの商品名でShell Chemical Co.から、VECTORの商品名でDexcoから及びSEPTONの商品名でKurarayからなどの多くの供給業者から市販されている。
【0032】
耐衝撃性改良剤の有用な量は、組成物の全重量を基準にして最大で約20重量%、好ましくは約5重量%〜約15重量%、特に好ましくは約8重量%〜約12重量%である。特に好ましい実施形態では、耐衝撃性改良剤はポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体を含む。
【0033】
導電性熱可塑性組成物は1種以上の添加剤をさらに含むことができる。可能な添加物には、酸化防止剤、ドリップ防止剤、染料、顔料、着色剤、安定化剤、小粒子鉱物(例えば、クレー、雲母、タルク等)、帯電防止剤、可塑剤、潤滑剤及び上記添加物の1以上を含む組合せが含まれる。これらの添加物は当業界で知られており、その有効なレベル及び配合の方法も同様に知られている。添加物の有効量は広い範囲で変るが、これは通常、組成物の全重量を基準にして約50重量%以下の量である。特に好ましい添加剤には、ヒンダードフェノール、チオ化合物及び様々な脂肪酸から誘導されたアミドが含まれる。これらの添加物の好ましい量は一般に組成物の全重量を基準にして約0.25重量%〜約2重量%である。
【0034】
導電性熱可塑性組成物の製造は、均質ブレンドを形成するための条件下で、成分を単にブレンドするだけで実施することができる。これは、ニーダー、混合機、単軸押出機、二軸押出機等を用いた様々な技術によって実施することができる。
【0035】
すべての成分は、加工系で最初に加えることもできるし、幾つかの成分を予備コンパウンドすることもできる。一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)樹脂、任意の耐衝撃性改良剤及び相溶化剤を押出機の供給スロートに加え、ポリアミド樹脂及び導電性マスターバッチを下流の供給ポートを通して同時に供給する。別の実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)樹脂、相溶化剤、導電性マスターバッチ、任意の耐衝撃性改良剤及びポリアミドの一部又はすべてを供給スロートに加え、存在すればポリアミドの残る部分を下流で加える。加工においては、別々の押出機を使用することができるが、これらの組成物は、種々の成分の添加に対応するように、その長さ方向に沿って、多数の供給ポートを有する単軸押出機を用いて製造することが好ましい。押出機中の1以上のベントポートを通して溶融物に真空をかけて、組成物の揮発性の不純物を除去するのが有利なことが多い。当業者は、過度の追加の実験をすることなく、ブレンド時間及び温度、並びに成分添加を調節することができよう。
【0036】
本開示の方法によって製造される組成物から製造される組成物及び物品が、開示の範囲内であることが明らかなはずである。
【0037】
本開示を、以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0038】
例1〜12
10個のバレルを有するWerner Pfleiderer 30mm二軸押出機を用いて、10重量%の導電性カーボンブラック(Akzo Nobelから入手できるKetjenblack(登録商標)EC600JD)と、90重量%のポリアミド(DuPontから入手できるポリアミド6,6)を含む導電性マスターバッチを製造した。スクリュー速度は350回転/分(rpm)であった。温度は約250℃〜290℃であった。ストランディングダイ(stranding die)には2穴のダイプレートを備えた。ストランドを水浴中で冷却し、標準的なストランドペレタイザーで切断した。
【0039】
例1では、ポリアミド6,6はすべてペレット状であり、温度は約290℃であった。実施例2〜6では、約600μm以下の粒子径を有する粉砕したポリアミドを導電性カーボンブラックと混合し、導電性カーボンブラック/ポリアミド混合物を下流にある押出機に加えた。温度は250℃であった。例7では、すべてのポリアミドを押出機供給スロートにペレット状で加えた。温度は250℃であった。実施例8〜12では、粉砕したポリアミドを導電性カーボンブラックと混合し、その導電性カーボンブラック/ポリアミド混合物に、ポリアミドペレットを押出機供給スロートで加えた。温度は250℃であった。成分の相対量(重量%)、供給の様式、運転速度(時間当たりのポンド)、温度(℃)プロファイル及び押出し時の観察を表1に示す。
【0040】
【表1】

例1〜12は、導電性カーボンブラック粉末と粉砕したポリアミドとを混合して導電性カーボンブラック/ポリアミド混合物を生成させると、特に、カーボンブラック/ポリアミド混合物を下流にある押出機に加える場合、導電性カーボンブラックマスターバッチの生成が改善されることを示している。
【0041】
例13〜24
押出機を用いて、例1〜12で製造したマスターバッチを用いた導電性熱可塑性組成物(本明細書ではマスターバッチ1〜12と称する)を製造した。25℃でクロロホルムで測定して0.40dl/gの固有粘度を有する34.1重量%のポリフェニレンエーテルを含むドライブレンド混合物、8重量%の耐衝撃性改良剤(Shellから入手できるKG1701)、7重量%の第2の耐衝撃性改良剤(Shellから入手できるKG1651)、0.7重量%のクエン酸、0.3重量%の安定化剤(Cibaから入手できるIrganox1076)、0.1重量%のヨウ化カリ及び0.01重量%のヨウ化銅を、押出機の供給スロートで加えた。表2に示すように、20重量%のポリアミド6,6と、10重量%のポリアミド6と、20重量%のマスターバッチの混合物を供給スロートの下流に位置する第2のフィーダーで加えた。
【0042】
熱可塑性組成物について、ISO180によってアイゾット衝撃強さを、ASTM256によって23℃でDynatup衝撃強さを、DIN54811によって282℃、1500/秒で溶融粘度(MV)を測定した。試験結果を表2に示す。アイゾット衝撃値はkJ/m単位で示す。Dynatup衝撃強さ値はジュールで示す。表面容積抵抗値はkΩ−cmで示し、溶融粘度値はPa−secで示す。表面容積抵抗率(SVR)は以下の方法で試験した。ナイフで引張試験片(ISO527)の両端に刻み目を付け、冷凍庫(−40℃で2時間)の中で冷却した。試験片を刻み目の線で冷却破断させて脆性破壊を得た。両端に導電性銀塗料(Du Pont Electric 4817N)を塗り、マルチメーターで抵抗率を測定した。読み取った抵抗率をその試験片の寸法(長さ、幅及び厚さ)について補正した。SVR=測定抵抗率×破断面積(cm)/長さ(cm)。表2に示した値は5個の試験品の平均である。
【0043】
【表2】

例13〜18の物理特性を比較すると、マスターバッチの製造方法は、導電性熱可塑性組成物の特性に対して著しい影響を及ぼすことが示されている。マスターバッチをペレット状のポリアミドだけを用いて製造した比較例13は、マスターバッチを粉末化したポリアミドとペレットポリアミドを一緒に用いて製造した実施例14〜18より、明らかに、著しく低い衝撃特性と導電率を示している。
【0044】
好ましい実施形態を参照して開示を説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、等価物でその要素を置き換えることができることを当業者は理解されよう。さらに、多くの改変を行って、本発明の本質的な範囲を逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させることができる。したがって、本開示は、本発見を実施するために考慮された最高の方式として開示した特定の実施形態に限定されず、本発見は添付した特許請求の範囲に包含されるすべての実施形態を含むものである。
【0045】
引用した特許、特許出願及び他の文献のすべてを参照により本明細書に組み込むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性カーボンブラックと第1の樹脂とを混合してカーボンブラック/樹脂混合物を形成する段階と、
カーボンブラック/樹脂混合物を第2の樹脂とコンパウンドする段階と
を含む導電性カーボンブラックマスターバッチの製造方法であって、第1の樹脂が約20μm〜約4mmの粒子径を有する粉末である方法。
【請求項2】
導電性カーボンブラックが約200nm未満の平均粒子径を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1の樹脂が約100μm〜約1mmの粒子径を有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
導電性マスターバッチが導電性マスターバッチの全重量を基準にして約4〜約16重量%の導電性カーボンブラックを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
第1の樹脂及び第2の樹脂が、ポリカーボネート、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルケニル芳香族)、ポリオレフィン、ポリブタジエン及びポリイソプレンなどのジエン系ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、これらの共重合体、スチレンアクリロニトリル、並びにこれらの2種以上のブレンドからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
導電性マスターバッチが、マスターバッチの全重量を基準にして約84〜約96重量%の樹脂を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
コンパウンディングを供給スロートと供給ポートを有する押出機内で行い、第2の樹脂を供給スロートに加え、導電性カーボンブラック/樹脂混合物を、供給スロートの下流の供給ポートを通して加える、請求項1記載の方法。
【請求項8】
導電性カーボンブラックと第1の樹脂とを混合して導電性カーボンブラック/樹脂混合物を形成する段階と、
導電性カーボンブラック/樹脂混合物を第2の樹脂とコンパウンドして導電性マスターバッチを形成する段階と、
導電性マスターバッチを第3の樹脂とコンパウンドする段階と
を含む導電性熱可塑性組成物の製造方法であって、第1の樹脂が約20μm〜約4mmの粒子径を有する粉末である方法。
【請求項9】
マスターバッチ及び第3の樹脂を第4の樹脂とコンパウンドする段階をさらに含み、第1、第2及び第4の樹脂がポリアミドであり、第3の樹脂がポリ(アリーレンエーテル)である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
マスターバッチ及び第4の樹脂とコンパウンドする段階の前に、第3の樹脂を相溶化剤とコンパウンドする段階をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
導電性カーボンブラックと第1のポリアミド樹脂とを混合して導電性カーボンブラック/樹脂混合物を形成する段階と、
導電性カーボンブラック/樹脂混合物を第2のポリアミド樹脂とコンパウンドして導電性マスターバッチを形成する段階と、
ポリ(アリーレンエーテル)樹脂と、耐衝撃性改良剤と相溶化剤とをコンパウンドして樹脂混合物を形成する段階と、
導電性マスターバッチ及び第3のポリアミドを樹脂混合物とコンパウンドする段階と
を含む導電性熱可塑性組成物の製造方法であって、第1の樹脂が約20μm〜約4mmの粒子径を有する粉末である方法。
【請求項12】
導電性マスターバッチ及び第3のポリアミドを同時に樹脂混合物に加える、請求項11記載の方法。

【公表番号】特表2006−526056(P2006−526056A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509909(P2006−509909)
【出願日】平成16年4月12日(2004.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/011148
【国際公開番号】WO2004/106421
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】