説明

導電性異繊度混繊糸およびそれからなるブラシ

【課題】
本発明は電子写真記録方式の乾式複写機やファクシミリ、プリンター等に用いられる導電性を有する繊維に関するものであり、混繊化することにより高パイル密度化による高画質、パイルにハリコシを持たせることによるクリーニング性向上の両面の効果を達成することを課題とする。
【解決手段】
繊度の異なる単糸(A)および単糸(B)からなるマルチフィラメントであり、単糸(A)および単糸(B)の導電性カーボンの含有量が10〜40重量%、単糸(A)の繊度が2〜8dtex、単糸(B)の繊度が1〜5dtex、単糸T(A)の繊度と単糸T(B)の繊度の比T(A)/T(B)が1.5〜8、かつ単糸(A)と単糸(B)との混繊率がマルチフィラメント全体を100重量%として、30/70〜70/30重量%であることを特徴とする導電性異繊度混繊糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、プリンター等に用いた帯電ブラシ、クリーナーブラシに用いる導電性異繊度混繊糸に関するものある。また、更に、前記導電性異繊度混繊糸を電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、プリンター等に用いた帯電ブラシ、クリーナーブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、プリンター等に用いられる現像用ブラシ、接触帯電用ブラシ、感光ドラムクリーナー用ブラシに用いられる繊維としては比抵抗値が103〜10Ωcmのものが要求されている。従来このような用途における導電性カーボン微粒子を含有するマルチフィラメントは特許文献1〜3に掲載されている様に、セルロース系繊維やビニロン導電糸が用いられている。従来、セルロース系繊維およびビニロン導電糸では単糸繊度が4〜5デシテックス程度であり、製織したときの導電糸パイル密度が約3万本/inch 程度となりさらなる画像品質を高画質化するために製織した際の高パイル密度化が望まれている。また、高パイル密度化の方法として、単糸繊度の細繊度化が近年検討されているが、帯電ブラシとして使用した場合は良好な画像品位が得られているものの、帯電とクリーニングの兼用ブラシとして使用した場合はパイルのハリコシが低くなり感光体に残留したトナーを十分に除去できず画像品位が悪化する問題があった。
【特許文献1】特開平9−49117号公報([0007]段落)
【特許文献2】特開2000−355823号公報([0002]〜[0003]段落)
【特許文献3】特開2000−160427号公報([0003]段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は電子写真記録方式の乾式複写機やファクシミリ、プリンター等に用いられる導電性を有する導電性異繊度混繊糸及びそれからなるブラシに関するものであり、混繊化することにより高パイル密度化による高画質、およびパイルにハリコシを持たせることによるクリーニング性向上の両面の効果を同一のブラシにおいて達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の導電性異繊度混繊糸は主として次の構成を有する。すなわち、
(1)繊度の異なる単糸(A)および単糸(B)からなるマルチフィラメントであり、
単糸(A)の繊度T(A)と単糸(B)の繊度T(B)の比T(A)/T(B)が1.5〜8、
単糸(A)および単糸(B)の導電性カーボンの含有量が10〜40重量%、
単糸(A)の繊度T(A)が2〜8dtex、
単糸(B)の繊度T(B)が1〜5dtex、
かつ単糸(A)と単糸(B)との混繊率がマルチフィラメント全体を100重量%として、30重量%/70重量%〜70重量%/30重量%
であることを特徴とする導電性異繊度混繊糸。
(2)前記導電性異繊度混繊糸がポリアミド繊維であることを特徴とする(1)記載の導電性異繊度混繊糸。
(3)単糸(A)が変形糸であることを特徴とする(1)又は(2)記載の導電性異繊度混繊糸。
(4)(1)〜(3)いずれか記載の導電性異繊度混繊糸を用いてなるブラシであって、帯電ブラシおよび/またはクリーナー用ブラシとして、電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、またはプリンターに用いられることを特徴とするブラシ。
【発明の効果】
【0005】
本発明は単糸繊度が異なる単糸からなる導電性異繊度混繊糸あり、単糸繊度の異なる単糸によりマルチフィラメントを構成することによって、細繊度糸がパイル密度向上に寄与して画像品質向上し、太繊度糸がパイルにハリコシを与えてクリーニング性向上することができ、本発明の導電性異繊度混繊糸は電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、プリンター等に用いた帯電兼クリーナーブラシに特に適するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の導電性異繊度混繊糸は単糸繊度が異なる単糸(A)と単糸(B)からなる繊維である。上記2種の単糸を混繊化することによりパイルにハリコシを与えてクリーニング性を向上し、同時にパイル密度を高くすることで電流を流した際、感光体にかかる電荷密度が向上するため曲線または細部を鮮明に複写可能となり印字画像の解像度が上がり高画質を得ることができる。
【0007】
本発明の導電性異繊度混繊糸の単糸(A)の繊度T(A)と単糸(B)の繊度T(B)の比T(A)/T(B)(以下、単糸繊度比という)は1.5〜8であることが必要である。単糸繊度比が1.5未満であると単糸(A)と単糸(B)を混繊し、ブラシを作製した際、単糸繊度が近似しているためパイルに充分なハリコシを与えられずトナーを充分に落とすことが難しくなりクリーニング性の悪化、高密度化が減少し印字画像の解像度が悪くなる等の問題が発生する。単糸繊度比が8を超えると単糸(A)はパイルに十分なハリコシを与えるがパイル密度が下がり高画質な印字がえられない。また、パイルが硬くなり感光体にキズを入れてしまう原因となる。単糸繊度とは、マルチフィラメントを構成する個々の単糸の繊度のことであり、1万m当たりの単糸個々値の重量(g)で表される。単糸繊度を測定する方法はデニールコンピューターを用い算出することができる。
【0008】
本発明の導電性異繊度混繊糸は導電性カーボンを単糸(A)および単糸(B)に10〜40重量%、更に好ましくは20〜30重量%含有していることが必要である。ここで、導電性カーボンの含有量は単糸(A)、単糸(B)全体の重量を100重量%として求められるものである。導電性カーボン含有量が10重量%以下であると繊維の比抵抗値が高くなりすぎ、印字しようとした際に帯電が出来ずに印字が出来ない問題が発生する。また、導電性カーボン含有量が40重量%を超えると繊維の強度が低下し実用性に欠けるとともにコストが高くなってしまう。
【0009】
本発明の導電性異繊度混繊糸はマルチフィラメント全体を100重量%として単糸(A)30〜70重量%、および単糸(B)70〜30重量%が混繊された異繊度混繊糸であることが必要である。
【0010】
単糸(A)の混繊率が30重量%未満であればブラシに仕立てた際、単糸(B)のパイル密度が上がり高画質な製品を得られるがパイルのハリコシが低くなりクリーニング性が悪化する。単糸(A)が70重量%を超えるとブラシに仕立てた際、単糸(B)のパイル密度が下がり高画質な印字が得られない。好ましくは単糸(A)35〜55重量%、単糸(B)45〜65重量%である。
【0011】
本発明の導電性異繊度混繊糸を構成する単糸(A)の繊度T(A)と単糸(B)の単糸(A)の繊度T(B)(以下、単糸繊度という)としては単糸(A)T(A)は2〜8dtex(デシテックス)、単糸(B)T(B)は1〜5dtex(デシテックス)であることが必要である。単糸(A)の単糸繊度T(A)が2dtex(デシテックス)未満となるとパイルに充分なハリコシを与えられなくなりクリーニング性が悪化する。また、単糸繊度が8dtex(デシテックス)を超えるとパイルが硬くなりブラシ上部の感光体に擦過キズを入れてしまう原因となる。単糸(B)の単糸繊度T(B)が1dtex(デシテックス)未満となると単糸が細くなりすぎるため製糸時の糸切れや延伸工程での単切れ、毛羽が発生しやすく安定した生産性が得られない。また、単糸繊度が5dtex(デシテックス)を超えるとブラシに仕立てた際のパイル密度が低くなり印字画像の解像度が悪くなる。
【0012】
本発明の導電性異繊度混繊糸を構成する単糸(A)には異形断面糸を用いるのが好ましい。単糸(A)に異形断面糸を用いることにより紡糸および延伸時に単糸(A)が高非晶配向となり単糸(B)に比べ比抵抗値が高くなる。これにより帯電は、パイル密度の高い単糸(B)で積極的に行うことになり高画質な印字が可能となる。また、ブラシに仕立てた際、単糸(A)は異形断面糸であるためにハリコシが強くクリーニング性が良好となり、また、単糸(B)に比べて非晶配向が高いため単糸(B)に比べ収縮率が高くなり、ブラシにした際、熱セットによる単糸の収縮差によってブラシ先端部には単糸(B)が出る形となるため高画質な印字が可能となる。本発明の導電性異繊度混繊糸を構成する単糸(A)には異形断面糸を用いることが好ましい。異形断面糸は繊維軸に垂直な方向の断面が非円形で有れば良く、具体的には三葉断面、マルチローバル断面、3〜8ヶの凸部と同数の凹部を有する異形断面形状のものが好ましい。
【0013】
本発明の導電性異繊度混繊糸を構成するポリマーとしては、セルロース、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエステル、ナイロンなどが挙げられるが、中でも耐久性、パイルとしたときの立毛した繊維のしなやかさ、紡糸時の操業性などの観点からナイロン6、ナイロン66が好ましい。
【0014】
本発明で用いる導電性カーボンは、例えばアセチレンブラック等、導電性を有する粉末体であれば特に制限はないが、紡糸時の濾過圧上昇の抑制や、紡糸時の糸切れ、繊維の強度の向上を考慮すると、平均粒径が20μm以下、カーボン含有量20〜40重量%のものを用いることが好ましい。また、大日本インキ化学工業製の導電性カーボン粒子分散ナイロンペレット”CARBOREX NYRON YT−01”のように、すでに顔料メーカーで分散調合ナイロンペレット中の導電性カーボン粒子を用いても良い。
【0015】
単糸(A)、単糸(B)に導電性カーボンを含有せしめる方法としては、ペレットへ導電性カーボンをブレンドし溶融する方法、ペレットへ高濃度の導電性カーボンを含有するマスタペレットをブレンドし溶融する方法、溶融状態のポリマーへ導電性カーボンを添加し混練する方法、溶融状態のポリマーへ溶融状態の高濃度の導電性カーボンを含有するポリマーを混練する方法などが挙げられる。
【0016】
本発明の導電性異繊度混繊糸は、本発明の効果を損なわない範囲において種々の添加剤を含んでも良い。この添加剤を例示すれば、マンガン化合物などの安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、繊維状強化剤、酸化防止剤、耐光剤などである。
【0017】
本発明の導電性異繊度混繊糸の比抵抗値(温度20℃、湿度30%RH)は10〜10Ωcmであることが好ましい。比抵抗値が10Ωcm未満では、導電ブラシとして電圧を掛けたとき、電子が隣り合う導電糸に移動し感光体に均一に帯電できないという問題が発生する。比抵抗値が10Ωcmを超えると、電圧を掛けても繊維中に電子が移動できずに複写ができないという問題が発生する可能性が有るからである。
【0018】
導電性異繊度混繊糸の混繊方法としては延伸糸同士をブラシに仕立てる際、追撚機・インターレースにより混繊する方法や溶融紡糸時に紡糸混繊する方法が一般的であるが、本発明の導電性異繊度混繊糸の混繊方法は溶融紡糸時に紡糸混繊による方法が好ましい。その製造方法は単糸(A)、単糸(B)を製造するに際し、それぞれ別個の紡糸機で原料ポリマーを溶融し、吐出孔からこのポリマーを吐出し、続いて冷却をおこなって、その後、給油時に単糸(A)および単糸(B)の合糸を行い1000m/分以下の速度で一旦未延伸糸を巻き取る。巻き取った未延伸糸を延伸機によって1.5〜4倍程度延伸するものである。製糸時に混繊を行うことでフィラメントの分散性がよくなり比抵抗値のバラツキ減少効果および、加工費用削減ができる。また、複合紡糸機を用い同一の口金より溶融、吐出させる方法もあるが専用口金となるため汎用性に欠け、コストもかかる問題がある。
【0019】
本発明の導電性異繊度混繊糸を用いた電子写真記録方式の乾式複写機用ブラシとは、非接触コロナ放電にかわって感光体に接触帯電させる印加ブラシや、感光体上に残存した電荷およびトナーを除去するクリーニングブラシ、帯電およびクリーニング性能をもつ帯電・クリーニング兼用ブラシである。いずれもパイルとして製織した後、導電性を有するバッキング剤でバッキングした後、幅10〜30mmにカットしたパイルテープを、円柱の金属棒にバイアスに巻き付けるか、単に板にパイル織物を張り付けてブラシ状に仕立てることにより得られる。
【実施例】
【0020】
以下実施例より本発明を詳細に説明する。評価方法は、下記の通りである。
【0021】
A.比抵抗値
延伸を行い巻取られた導電糸を試料長10cmに切り取りアクリル板に固定する。続いて超絶縁抵抗計(川口電気製 TERAOHMMETER R−503)を用いて100(V)の電圧を掛け、温度20℃、湿度30%RHの条件下での電気抵抗値(Ω/cm)を測定し、下式(1)から算出した(測定は10回おこない、その平均値を算出)。尚、表1には比抵抗RSの対数値log10(RS/Ωcm)を示した。
RS=R×D/(10×L×SG)×10− (1)
RS:比抵抗(Ωcm)
R:電気抵抗値(Ω)
D:10000m当たりの糸重量(g)
L:試長(cm)
SG:糸密度(g/cm)。
【0022】
B.紡糸糸切れ
導電性異繊度混繊糸を巻取速度800m/分にて未延伸糸1t紡糸した時の糸切れ回数を次の基準で評価した。
◎:2回/t未満
○:3回/t未満
△:3〜5回/t未満
×:5回/t以上。
【0023】
C.画像品質
ブラシを帯電ブラシ兼クリーナーブラシとして複写機に組み込み、電子写真学会が発行するテストチャート(No1R)を複写し、画質品質を10が最も優れているものとして10段階で評価し、5回測定行い平均が7以上を合格レベルとした。
【0024】
D.長期使用時の画像品質の変化
電子写真学会が発行するテストチャートを印写回数1回目と2万回複写した後のものとの画像品質を比較し、次の基準で10人に官能評価を行った。
2点:差異なし
1点:やや差異が見られる
0点:差異が見られる
これを10人分合計した点数をもとに、次の基準で分類した。
◎:18〜20点
○:15〜17点
△:10〜14点
×:0〜9点。
【0025】
E.単糸繊度の測定法
サーチ株式会社製オートバイブロ式 繊度測定器(Denier Computer)を用い測定試料長を50mm、荷重を測定試料の繊度(デニール換算値)×0.1gの条件下で測定試料に振動を加え振動数が安定したことを確認した後、測定試料のフィラメント全数測定し評価した。
【0026】
F・混繊率の測定方法
延伸後の導電性異繊度混繊糸を使用し上記載の単糸繊度測定方法を用い単糸(A)および(B)を求め太繊度および細繊度を算出する。同繊維を用い1万mの重量を測定し、トータル繊度(デシテックス)を求め、トータル繊度を100重量%とした場合の太繊度(A)、細繊度(B)の比。
【0027】
G.カーボン含有量の測定法
濃度既知(CARBOREX NYLON YT−01)のカーボンスラリー100mgを精評し100mlのPEA液を加え振とう機で完全にカーボンを分散させ原液を作成しフィノル/エタノール混合液=80/20(以後PEA液と呼ぶ)で希釈する。次に分光光度計を用い波長610nmでPEA液に対する吸光度を測定し、縦軸に吸光度、横軸にカーボン濃度mg/50mlとり検量線を作成する。続いて測定試料1gをポリ瓶に入れ真空乾燥機で35℃の環境下で16時間乾燥させる。乾燥後の試料を0.0250g秤量しPEA溶液50ml入れた後、振とう機を用いて温室で1時間溶解させる。振とう溶解後分光光度計を用い波長610nmでPEA液を対照液として吸光度を試料当たり3回測定し平均を算出する。次に最初に求めた検量線からカーボン量を求める。
【0028】
実施例1
相対粘度2.0のナイロン6に平均粒径35μmの導電性ファーネスブラックを添加量25重量%となるように練り込みペレットとした。つづいて練り込んだペレットを2つの紡糸機にそれぞれ投入し270℃で溶融行い、混繊後の導電性異繊度混繊糸が総繊度170デシテックス、単糸繊度比2.7、混繊率40/60重量%となるように孔径0.3mmの丸孔口金を用いて68デシテックス12フィラメント(単糸(A))を吐出させ、また、同時に孔径0.25mmの丸孔口金を用いて102デシテックス48フィラメント(単糸(B))を吐出させ、これらを冷却させた後、給油手前で単糸(A)および単糸(B)を混繊し濃度10重量%の含水油剤を用い油剤供給ローラ回転数11rpm、タッチ長11cm、引取速度800m/分で未延伸糸を巻取った。つづいて引伸室の温度25℃、絶対湿度16.6g/mの環境下で48時間未延伸糸をエージングした後、延伸機の供給ローラ速度200m/分、熱板温度170℃、延伸ローラ速度500m/分で延伸を行った。得られた導電性異繊度混繊糸を用いてパイル密度1000本/インチ、パイル長7mmとなるように製織した後、90℃湯浴中で熱水処理をおこない、乾燥してパイルを仕上げた。次にパイルを幅15mmのテープ状にした後、直径6mmの円筒面に螺旋状に巻き付けてブラシを作成し、作成したブラシを複写機に取り付けパイルの堅さ・クリーニング性評価として画像品質・長期使用時における画像品質変化の調査を行った。
【0029】
実施例2
相対粘度2.0のナイロン6に平均粒径35μmの導電性ファーネスブラックを添加量40重量%および10重量%となるように練り込みペレットとした。単糸(A)側の紡糸機には導電性ファーネスブラック添加量40重量%のペレット、単糸(B)側の紡糸機には導電性ファーネスブラック添加量10重量%のペレットを紡糸棟に投入すること以外は実施例1と同様に溶融紡糸、延伸を行い得られた導電性異繊度混繊糸を用いてブラシに仕立て同様の評価を実施した。
【0030】
実施例3
相対粘度2.0のナイロン6に平均粒径35μmの導電性ファーネスブラックを添加量40重量%および10重量%となるように練り込みペレットとした。単糸(A)側の紡糸機には導電性ファーネスブラック添加量10重量%のペレット、単糸(B)側の紡糸機には導電性ファーネスブラック添加量40重量%のペレットを紡糸棟に投入すること以外は実施例1と同様に溶融紡糸、延伸を行い得られた導電性異繊度混繊糸を用いてブラシに仕立て同様の評価を実施した。
【0031】
実施例4
単糸繊度比1.5、となるように孔径0.3mmの丸孔口金を用いて68デシテックス9フィラメント(単糸(A))を吐出させ、また、同時に孔径0.25mmの丸孔口金を用いて102デシテックス20フィラメント(単糸(B))となるようにしたこと以外は実施例1と同様に溶融紡糸、延伸を行い、得られた導電性異繊度混繊糸を用いてブラシに仕立て同様の評価を実施した。
【0032】
実施例5
混繊後の導電性異繊度混繊糸が170デシテックス、単糸繊度比7.9、混繊率65/35重量%となるように孔径0.3mmの丸孔口金を用いて110デシテックス14フィラメント、孔径0.15mmの丸孔口金を用いて60デシテックス60フィラメントとなるよう吐出させ、混繊させた以外は実施例1と同様に溶融紡糸、延伸を行った。得られた導電性異繊度混繊糸を用いてブラシに仕立て同様の評価を実施した。
【0033】
実施例6
混繊後の導電性異繊度混繊糸が168デシテックス、単糸繊度比2、混繊率55/45重量%となるように孔径0.2mmの丸孔口金を用い92デシテックス46フィラメント、孔径0.15mmの丸孔口金を用い76デシテックス76フィラメントとなるよう吐出させ、混繊させた以外は実施例1と同様に溶融紡糸、延伸を行った。得られた導電性異繊度混繊糸を用いてブラシに仕立て同様の評価を実施した。
【0034】
実施例7
実施例1において孔径0.3mmの丸孔口金を用いる代わりにスリット巾0.1mm、スリット長0.4mmのスリットが放射状に3本配置されたY孔を有する口金を用いて102デシテックス48フィラメントとなるようにしたこと以外は実施例1と同様に溶融紡糸、延伸を行い、得られた導電性異繊度混繊糸を用いてブラシに仕立て同様の評価を実施した。
【0035】
実施例8
相対粘度2.5のナイロン66に平均粒径35μmの導電性ファーネスブラックを添加量25重量%となるように練り込みペレットとした。つづいて練り込んだペレットを2つの紡糸棟に投入し290℃で溶融する事以外は実施例1と同様に延伸行い得られた導電性異繊度混繊糸を用いてブラシに仕立て同様の評価を実施した。
【0036】
比較例1
相対粘度2.0のナイロン6に平均粒径35μmの導電性ファーネスブラックを添加量5重量%および40重量%となるように練り込みペレットとした。単糸(A)側の紡糸機には導電性ファーネスブラック添加量5重量%のペレット、単糸(B)側の紡糸機には導電性ファーネスブラック添加量40重量%のペレットを紡糸棟に投入すること以外は実施例1と同様に溶融紡糸、延伸を行い、得られた導電性異繊度混繊糸を用いてブラシに仕立て同様の評価を実施した。
【0037】
比較例2
相対粘度2.0のナイロン6に平均粒径35μmの導電性ファーネスブラックを添加量5重量%および40重量%となるように練り込みペレットとした。単糸(A)側の紡糸機には導電性ファーネスブラック添加量40重量%のペレット、単糸(B)側の紡糸機には導電性ファーネスブラック添加量5重量%のペレットを紡糸棟に投入すること以外は実施例1と同様に溶融紡糸、延伸を行い、得られた導電性異繊度混繊糸を用いてブラシに仕立て同様の評価を実施した。
【0038】
比較例3
混繊後の導電性異繊度混繊糸が170デシテックス、単糸繊度比4.3、混繊率40/60重量%となるように孔径0.3mmの丸孔口金を用い68デシテックス8フィラメント、孔径0.25mmの丸孔口金を用い102デシテックス50フィラメントとなるよう吐出させ、混繊させた以外は実施例1と同様に溶融紡糸、延伸を行った。得られた導電性異繊度混繊糸を用いてブラシに仕立て同様の評価を実施した。
【0039】
比較例4
混繊後の導電性異繊度混繊糸が170デシテックス、単糸繊度比1.1、混繊率40/60重量%となるように孔径0.3mmの丸孔口金を用い68デシテックス7フィラメント、孔径0.25mmの丸孔口金を用い102デシテックス11フィラメントとなるよう吐出させ、混繊させた以外は実施例1と同様に溶融紡糸、延伸を行った。得られた導電性異繊度混繊糸を用いてブラシに仕立て同様の評価を実施した。
【0040】
比較例5
混繊後の導電性異繊度混繊糸が170デシテックス、単糸繊度比2.5、混繊率40/60重量%となるように孔径0.3mmの丸孔口金を用い68デシテックス34フィラメント、孔径0.13mmの丸孔口金を用い102デシテックス128フィラメントとなるよう吐出させた以外は実施例1と同様に溶融紡糸したが紡糸糸切れ多発し以後の評価を中止した。
【0041】
比較例6
混繊後の導電性異繊度混繊糸が170デシテックス、単糸繊度比2.7、混繊率20/80重量%となるように孔径0.3mmの丸孔口金を用い34デシテックス6フィラメント、孔径0.2mmの丸孔口金を用い136デシテックス68フィラメントとなるよう吐出させ、混繊させた以外は実施例1と同様に溶融紡糸、延伸を行った。得られた導電性異繊度混繊糸を用いてブラシに仕立て同様の評価を実施した。
【0042】
比較例7
混繊後の導電性異繊度混繊糸が170デシテックス、単糸繊度比2.7、混繊率80/20重量%となるように孔径0.3mmの丸孔口金を用い136デシテックス24フィラメント、細い繊度(B)孔径0.3mmの丸孔口金を用い34デシテックス17フィラメントとなるよう吐出させ、混繊させた以外は実施例1と同様に溶融紡糸、延伸を行った。得られた導電性異繊度混繊糸を用いてブラシに仕立て同様の評価を実施した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

表1、表2の結果から明らかなように、本発明の導電性異繊度混繊糸およびブラシは電子写真記録方式の乾式複写機やファクシミリ、プリンター等の高画質印刷に極めて顕著な効果を奏することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊度の異なる単糸(A)および単糸(B)からなるマルチフィラメントであり、
単糸(A)の繊度T(A)と単糸(B)の繊度T(B)の比T(A)/T(B)が1.5〜8、
単糸(A)および単糸(B)の導電性カーボンの含有量が10〜40重量%、
単糸(A)の繊度T(A)が2〜8dtex、
単糸(B)の繊度T(B)が1〜5dtex、
かつ単糸(A)と単糸(B)との混繊率がマルチフィラメント全体を100重量%として、30重量%/70重量%〜70重量%/30重量%
であることを特徴とする導電性異繊度混繊糸。
【請求項2】
前記導電性異繊度混繊糸がポリアミド繊維であることを特徴とする請求項1記載の導電性異繊度混繊糸。
【請求項3】
単糸(A)が異形断面糸であることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性異繊度混繊糸。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性異繊度混繊糸を用いてなるブラシであって、帯電兼クリーナー用ブラシとして、電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、またはプリンターに用いられることを特徴とするブラシ。

【公開番号】特開2006−2265(P2006−2265A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177552(P2004−177552)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】