説明

導電性積層体

【課題】 乳酸系重合体を用いた導電性積層体であって、結晶化処理を行わなくても耐熱性を得ることができ、剛性および耐折強度、さらに優れた打ち抜き加工性を備えた、新たな導電性積層体を提案する。
【解決手段】共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a)及び導電剤(b)を含むA層と、共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a)、乳酸系重合体(c)及びエラストマー(d)を含むB層とを備えた積層体であり、当該積層体を構成する樹脂に占める共役ジエン系炭化水素重合体の割合が1.2〜2.5質量%であり、B層を構成する組成物に占める乳酸系重合体(c)の割合が5〜45質量%であり、B層を構成する組成物に占めるエラストマー(d)の割合が5〜20質量%であることを特徴とする導電性積層体を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばキャリアテープ用の材料などとして好適に利用することができる導電性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や電子部品等のマイクロチップを搬送する際、非常に小さいマイクロチップでは扱い難いため、キャリアテープにこれらを一個一個埋め込んで組立工場に持って行き、マウンターという部品組立機械にセットして搬送することが行われている。よって、キャリアテープの材料としては、導電性のほか、耐熱性や剛性、耐折強度などに優れた材料が要求される。
【0003】
この種のキャリアテープの材料としては、例えば、スチレン系重合体からなる基材層の表裏に、多層の導電性フィラーを混練したスチレン系重合体組成物を共押出することにより一体積層した導電性シートや、塩化ビニル系樹脂にカーボンブラック等の導電性フィラーを混練した塩化ビニル系樹脂組成物をシート状に成形した導電性シートや、或いは、スチレン系重合体やエチレンテレフタレート系樹脂等の熱可塑性樹脂からなるシートの少なくとも片面に導電層を設けた導電性シートに、プレス成形や真空成形等の熱成形を施し、さらに自動送りのための送り穴の打ち抜き加工をしたものなどが用いられてきた。
【0004】
近年、枯渇性資源の有効活用が近年重要視され、再生可能資源の利用が重要な課題となっており、中でも植物原料プラスチックは、非枯渇資源を利用し、プラスチック製造時における枯渇性資源の節約を図ることができるだけでなく、優れたリサイクル性を備えているため注目されている。その中でも乳酸系重合体は、澱粉の発酵により得られる乳酸を原料とし、化学工学的に量産可能であり、かつ、透明性・剛性等が優れていることから、ポリスチレンやABSの代替材料として、様々な用途への展開が期待されている。しかしながら、乳酸系重合体は耐熱性、耐衝撃性に乏しいため、これらが要求される用途に用いることは非常に困難である。
【0005】
このような観点から、近年、乳酸系重合体を用いた導電性シートが開発されている。
例えば特許文献1には、ポリ乳酸と、ポリアルキルアルカノエート系樹脂と無機充填剤、導電性フィラーからなる生分解性導電シートが開示され、特許文献2には、生分解性プラスチックからなる電子部品包装用キャリアテープが開示されており、特許文献3には、生分解性プラスチックからなるベース層と、該ベース層の表面を被覆する導電性材料の被覆層からなる電子部品包装用リールが開示されており、特許文献4には、12質量%以下の導電性付与剤を含有する乳酸系ポリマーからなる基材層の少なくとも片面に、17〜40質量%の導電性付与剤を含有する乳酸系ポリマーからなる導電性付与層を形成した導電性乳酸系ポリマー積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−039945号公報
【特許文献2】特開平11−152179号公報
【特許文献3】特開2000−085837号公報
【特許文献4】特開2000−355089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来開示されていた乳酸系重合体を用いた導電性シートは、十分な耐熱性を得るために、結晶化処理を行うことが必要であった。しかし、結晶化処理を行うことで2次加工性が低下するため、キャリアテープのポケット部の成形条件の範囲が狭くなるばかりか、均一なポケットの成形も困難になるという課題を抱えていた。
また、打ち抜き加工時におけるバリの発生も重要な課題であった。
【0008】
そこで本発明は、乳酸系重合体を用いた導電性積層体であって、結晶化処理を行わなくても耐熱性を得ることができ、しかも剛性および耐折強度を備え、さらには優れた打ち抜き加工性をも備えた、新たな導電性積層体を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a)及び導電剤(b)を含むA層と、共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a)、乳酸系重合体(c)及びエラストマー(d)を含むB層とを備えた積層体であり、
当該積層体を構成する樹脂に占める共役ジエン系炭化水素重合体の割合が1.2質量%以上2.5質量%以下であり、B層を構成する組成物に占める乳酸系重合体(c)の割合が5質量%以上、45質量%以下であり、B層を構成する組成物に占めるエラストマー(d)の割合が5質量%以上、20質量%以下であることを特徴とする導電性積層体を提案するものである。
【0010】
本発明の導電性積層体は、乳酸系重合体を用いた導電性積層体であっても、マトリックス樹脂を乳酸系重合体ではなくスチレン系樹脂としているため、結晶化処理を行わなくても耐熱性を得ることができ、しかも剛性および耐折強度を備え、さらには積層体を構成する樹脂中に占める共役ジエン系炭化水素重合体の割合を規定することで優れた打ち抜き加工性をも備えるものとすることができた。
さらに言えば、本発明の導電性積層体は、剛性に優れるため、従来使用されてきたスチレン系の導電性シートと比較して薄肉化が可能である。よって、使用する樹脂の量を削減できる。また、本発明の導電性シートは植物原料プラスチックを使用しているため、より一層の廃棄物削減に寄与できる。さらに、本発明の導電性シートは耐熱性にも優れており、現在一般的に使用されている導電性シートと同様の用途に広く用いることができる。
よって、キャリアテープの材料などとして好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例について説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0012】
[本導電性積層体]
本実施形態に係る導電性積層体(以下「本導電性積層体」と言う)は、スチレン系重合体(a)及び導電剤(b)を含むA層と、スチレン系重合体(a)、乳酸系重合体(c)及びエラストマー(d)を含むB層と、を備えた積層体である。
【0013】
[A層]
A層は、スチレン系重合体(a)及び導電剤(b)を含む組成物から形成される層である。このA層は、積層体に対して主に導電性を付与する役割を果たす層である。
【0014】
(スチレン系重合体(a))
スチレン系重合体(a)は、共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a−1)、或いは、該スチレン系重合体(a−1)と共役ジエン系炭化水素重合体を含有しないスチレン系重合体(a−2)との混合物であることが重要である。
A層に用いるスチレン系重合体(a)は、共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a−1)のみであるのが好ましく、例えば後述するHIPSを単独で用いることが好ましい。A層の主な役割は積層体に導電性を付与することであるが、積層体の耐折強度を低下させないためには、A層を構成する樹脂も脆くなくて耐折強度を低下させない樹脂であることが好ましい。このような耐折強度の観点から、共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a−1)のみであるのが好ましい。
【0015】
共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a−1)としては、スチレン系重合体中に共役ジエン系炭化水素重合体粒子、又はアクリルゴム粒子等のゴム状弾性体粒子を分散させた耐衝撃性ポリスチレン(以下、「HIPS」とも称する)が好ましい。スチレン系重合体中に共役ジエン系炭化水素重合体粒子、又はアクリルゴム粒子等のゴム状弾性体粒子を分散させることで、スチレン系重合体のもろさをゴム成分で改善することができる。
【0016】
HIPSを構成するスチレン系重合体としては、例えばスチレン、GPスチロール樹脂(以下、「GPPS」とも称する)、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等の単独重合体、及びこれらの成分からなる共重合体、さらにスチレン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーを含む共重合体等が挙げられる。これらの混合物であってもよい。
かかる共重合可能なモノマーとしては、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、クロロエチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0017】
スチレン系重合体に分散させる共役ジエン系炭化水素重合体粒子は、常温でゴム弾性を示すものであればよく、例えばブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3- ブタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-メチルペンタジエン、4-メチルペンタジエン、2,4-ヘキサジエンなどの単独重合体、それらの共重合体、共役ジエン系炭化水素以外の共重合可能なモノマー、例えばスチレンモノマーを含む共重合体等があり、熱可塑性エラストマーでもよい。
【0018】
スチレン系重合体に分散させるアクリルゴム粒子としては、アクリル酸アルキルエステルを主体とした合成ゴムを挙げることができる。例えば、アクリル酸エチルとクロロエチルビニルエーテルとの共重合体、アクリル酸ブチルとアクリロニトリルとの共重合体、アクリル酸エチルとアクリロニトリルとの共重合体、メタクリル酸エチルとアクリル酸2−エチルヘキシルとの共重合体などが挙げられる。その他、アクリル酸アルキルエステルと共重合しうるモノマーとして、アクリル酸、メチルビニルケトン、ブタジエンなどが用いられる。場合によっては、多官能ビニルモノマーを併用することにより部分的に架橋構造を形成することができる。
【0019】
スチレン系重合体に分散させる共役ジエン系炭化水素重合体粒子又はアクリルゴム粒子の含有量は、耐折強度の観点から、2.5〜5.5質量%であるのが好ましく、特に3.0〜5.0質量%であるのが好ましく、中でも特に3.5〜4.5質量%であるのが好ましい。
【0020】
HIPSの重合形態としては、ラジカル重合、アニオン重合等、通常の重合形態によればよい。
HIPSの代表的なものとしては、PSジャパン社製HIPSシリーズ、住友化学社製「スミブライトDJ」シリーズ等を挙げることができる。
【0021】
HIPSのグレードとしては、荷重たわみ温度(ISO75−2)65〜100℃、メルトフローレート(ISO1133)が1〜10g/10分、曲げ弾性率が2,100〜2,500MPa、シャルピー衝撃強さ(ノッチあり)が13〜16KJ/m2である高衝撃グレードが好適に使用される。
【0022】
他方、共役ジエン系炭化水素重合体を含有しないスチレン系重合体(a−2)としては、スチレン(CH2=CHC65)を重合(塊状重合、乳化重合、懸濁重合等)して得られる重合体であればよく、例えばスチレン、GPPS、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等の単独重合体、スチレン系エラストマー及び、これらの成分からなる共重合体、さらにスチレン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーを含む共重合体等、或いは、これらの混合物が挙げられる。この際、で共重合可能なモノマーとしては、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、クロロエチルビニルエーテルなどを挙げることができる。
【0023】
GPPSとしては、JIS K7171に規定する曲げ弾性率が3,000〜3,500MPa、シャルピー衝撃強さ(ノッチあり)が0.5〜3.0kJ/mである耐熱グレードが好適に使用される。
【0024】
また、A層に用いるスチレン系重合体(a)として、共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a−1)と、共役ジエン系炭化水素重合体を含有しないスチレン系重合体(a−2)とを混合して使用する場合、共役ジエン系炭化水素重合体の割合を調整するために、前記(a−1)と(a−2)の合計中に占める(a−1)の割合が、60質量%以上、100質量%以下であることが好ましい。かかる範囲で前記(a−1)を配合することで、本発明の積層体の優れた機械特性(特に耐折強度)を損なうことなく、打ち抜き加工時のバリ発生を低減することができる。
かかる観点から、(a−1)と(a−2)の合計中に占める(a−1)の割合は、65質量%以上、100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上、100質量%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
スチレン系重合体(a)の配合量としては、A層を構成する樹脂組成物中に占めるスチレン系重合体(a)の割合が、50質量%以上、99質量%以下が好ましい。かかる範囲を下回る場合、耐熱性が低下する場合があり、かかる範囲を上回る場合、導電剤の添加量が少なくなるため、導電性を発現できない場合があり、実用上好ましくない。
かかる観点から、A層を構成する樹脂組成物中に占めるスチレン系重合体(a)の割合が、60質量%以上であるのがより好ましく、70質量%以上であるのがさらに好ましい。
【0026】
(導電剤(b))
導電剤(b)としては、例えば導電性カーボン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ノンジウムを挙げることができる。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、成形性や成形後の抵抗率等の点から、導電性カーボンが好ましい。
【0027】
上記導電性カーボンとしては、例えばケッチェンブラックEC、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等をあげることができる。これらの中でも、少量の添加量で高い導電性が得られる点で、ケッチェンブラックECを用いることがより好ましい。ケッチェンブラックECを使用した場合、添加量が少量で済むため、本導電性積層体の機械的性質の低下を抑えることができる。
【0028】
上記導電剤の平均粒子径(測定方法:レーザー回折法)は、0.01μm以上、10μm以下であることが好ましく、0.04μm以上、5μm以下であることがより好ましい。0.01μm未満では、樹脂中での分散性が悪く、10μmを超えると、得られる積層シートの機械物性、特に、耐折強度が低下する場合がある。
【0029】
上記導電剤(b)の配合量としては、A層を構成する樹脂組成物中に占める導電剤(b)の割合が、1質量%以上、30質量%以下が好ましく、5質量%以上、25質量%以下がより好ましく、10質量%以上、20質量%以下がさらに好ましい。かかる範囲を下回る場合、導電性付与効果が十分ではなく、かかる範囲を上回る場合、シートの機械物性、特に、耐折強度が著しく低下する場合があり、実用上好ましくない。
【0030】
A層には、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、架橋剤、可塑剤、結晶化促進剤、顔料、染料などの添加剤を配合することができる。
【0031】
[B層]
B層は、共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a)、乳酸系重合体(c)及びエラストマー(d)を含む組成物から形成される層である。このB層は、主に積層体としての耐折強度を高める役割を果たす層である。
【0032】
(スチレン系重合体(a))
B層に用いるスチレン系重合体(a)としては、A層に用いるスチレン系重合体(a)として説明したスチレン系重合体を用いることができる。
なお、B層に用いるスチレン系重合体(a)は、A層に用いるスチレン系重合体(a)と同じ物であってもよいし、異なる物であってもよい。但し、耐折強度の観点から、A層の方が、B層に比べて共役ジエン系炭化水素重合体の含有割合が高い方が好ましい。
【0033】
B層に用いるスチレン系重合体(a)は、打ち抜き加工性の観点から、共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a−1)と、共役ジエン系炭化水素重合体を含有しないスチレン系重合体(a−2)との混合樹脂であるのが好ましく、中でもHIPSとGPPSの混合物を用いることが好ましい。
【0034】
また、B層に用いるスチレン系重合体(a)としては、共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a−1)と、共役ジエン系炭化水素重合体を含有しないスチレン系重合体(a−2)とを混合して使用する場合、共役ジエン系炭化水素重合体の割合を調整するために、前記(a−1)と(a−2)の合計中に占める(a−1)の割合が、60質量%以上、95質量%以下であることが好ましく、65質量%以上、90質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上、85質量%以下であることがさらに好ましい。かかる範囲で前記(a−1)を配合することで、本発明の積層体の優れた機械特性を損なうことなく、打ち抜き加工時のバリ発生を低減することができる。
【0035】
スチレン系重合体(a)の配合量としては、B層を構成する樹脂組成物中に占めるスチレン系重合体(a)の割合が、45質量%以上、95質量%以下が好ましい。かかる範囲を下回る場合、耐折強度が低下する場合があり、かかる範囲を上回る場合、打ち抜き加工性が低下する場合があり、実用上好ましくない。
かかる観点から、B層を構成する樹脂組成物中に占めるスチレン系重合体(a)の割合は、50質量%以上、90質量%以下がより好ましく、55質量%以上、85質量%以下がさらに好ましい。
【0036】
(乳酸系重合体(c))
乳酸系重合体(c)としては、構造単位がL乳酸であるポリ(L乳酸)、構造単位がD乳酸であるポリ(D乳酸)、構造単位がL乳酸及びD乳酸であるポリ(DL乳酸)、或いはこれらの混合樹脂を用いることができる。さらに、これらとα−ヒドロキシカルボン酸やジオール/ジカルボン酸との共重合体であってもよい。
【0037】
乳酸系重合体(c)におけるD−乳酸(D体)とL−乳酸(L体)の比率(モル比)は、任意の比率でよいが、例えばL体/D体=100/0〜85/15、もしくはL体/D体=0/100〜15/85であるのが好ましく、中でも高度な耐折強度を付与するという観点から、D乳酸の割合が3質量%以上、15%質量以下であることが好ましく、4質量%以上、14質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上、12質量%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
乳酸系重合体(c)の重合法としては、縮重合法、開環重合法など公知のいずれの方法を採用することができる。例えば、縮重合法ではL−乳酸またはD−乳酸、あるいはこれらの混合物を直接脱水縮重合して任意の組成を持った乳酸系重合体を得ることができる。
【0039】
また、開環重合法では乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、選ばれた触媒を使用してポリ乳酸系重合体を得ることができる。ラクチドにはL−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成、結晶性をもつ乳酸系重合体を得ることができる。
【0040】
さらに、耐熱性を向上させるなどの必要に応じ、乳酸系重合体の本質的な性質を損なわない範囲、すなわち、乳酸系重合体成分を90質量%以上含有する範囲で、少量共重合成分としてテレフタル酸のような非脂肪族ジカルボン酸及び/又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のような非脂肪族ジオールを用いてもよい。さらにまた、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などを使用できる。
【0041】
乳酸系重合体に共重合される上記の他のヒドロキシカルボン酸単位としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシn−酪酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類を挙げることができる。
【0042】
乳酸系重合体に共重合される上記脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。また、上記脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等を挙げることができる。
【0043】
乳酸系重合体(c)の重量平均分子量の好ましい範囲としては、5万以上、40万以下である。この範囲を下回る場合は実用物性がほとんど発現されず、上回る場合には、溶融粘度が高すぎて成形加工性に劣るようになる。よって、かかる観点から、乳酸系重合体(c)の重量平均分子量は、10万以上、25万以下であるのがより一層好ましい。
【0044】
乳酸系重合体(c)の代表的なものとしては、Nature Works社製「Nature Works」シリーズなどを挙げることができる。
【0045】
上記乳酸系重合体(c)の配合量としては、本積層体を構成する樹脂組成物中に占める乳酸系重合体(c)の割合が、5質量%以上であることが重要であり、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。5質量%以上とすることによって、十分な剛性を得ることができる。他方、45質量%以下であることも重要であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。45質量%以下とすることによって、十分な耐熱性及び機械強度を得ることができる。
【0046】
(エラストマー(d))
エラストマー(d)としては、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどがあげられ、1種または2種以上の混合物が用いることができる。この中でも相容性の点からスチレン系エラストマー、あるいは、ポリエステル系エラストマーを用いることが好ましく、長期耐久性の点から水素添加スチレン系エラストマーを用いることがさらに好ましい。
【0047】
上記スチレン系エラストマーとしては、スチレン成分とエラストマー成分からなり、スチレン成分を10質量%以上、好ましくは15質量%以上、かつ、50質量%以下、好ましくは30質量%以下の割合で含有する樹脂を用いることができる。エラストマー成分としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどの共役ジエン系炭化水素が挙げられ、より具体的にはスチレンとブタジエンとの共重合体(SBS)エラストマー、スチレンとイソプレンとの共重合体(SIS)エラストマー等を挙げることができる。スチレン系エラストマーの具体例としては例えばクラレ社製「ハイブラー」シリーズ等を挙げることができる。
【0048】
また、水素添加スチレン系エラストマーとしては、SBSエラストマーやSISエラストマーに水素を添加した樹脂(SEBS、SEPS)を用いることもできる。水素を添加したエラストマーの具体例としては、例えば旭化成ケミカルズ社製「タフテックH」シリーズ、クラレ社製「ハイブラー7125、7311」等を挙げることができる。
【0049】
さらに、変性スチレン系エラストマーとしては、エラストマー成分が多く含まれる変性スチレン系エラストマーを用いることが好ましく、中でもSEBS及びSEPSの変性体がより好ましく用いられる。具体的には、無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、エポキシ変性SEBS、エポキシ変性SEPSなどが挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも1種が用いられる。変性スチレン系重合体の具体例としては、水添スチレン系熱可塑性エラストマーに反応性の高い官能基で変性したポリマーである旭化成ケミカルズ社製「タフテックM1943」やJSR社製「ダイナロン8630P」やエポキシ化熱可塑性エラストマーであるダイセル化学社製「エポフレンド」シリーズ等を挙げることができる。
【0050】
また、上記ポリエステル系エラストマーとしては、ハードセグメントとして高融点・高結晶性の芳香族ポリエステル、ソフトセグメントとして非晶性ポリエステルや非晶性ポリエーテルのブロック共重合体を挙げることができる。
【0051】
上記エラストマー(d)の配合量としては、本発明の積層体を構成する樹脂組成物中に占めるエラストマー(d)の割合が5質量%以上であることが重要であり、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。5質量%以上であることによって、十分な耐折強度を付与することができる。他方、20質量%以下であることも重要であり、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。20質量%以下であることによって、十分な耐熱性を得るだけでなく、打ち抜き加工時におけるバリの発生量を抑制することができる。
【0052】
B層には、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、架橋剤、可塑剤、結晶化促進剤、顔料、染料などの添加剤を配合することができる。
例えば、上記の導電剤(b)を、好ましくは0.1質量%以上、10質量%以下、より好ましくは1質量%以上、8質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上、6質量%以下の割合でB層に配合することにより、必要に応じてさらに導電性を向上することができる。
【0053】
(積層体)
本導電性積層体を構成する樹脂組成物中に占める共役ジエン系炭化水素重合体の割合は、1.2質量%以上であることが重要であり、好ましくは、1.5質量%以上、より好ましくは1.7質量%以上である。1.2質量%以上とすることによって、十分な耐折強度を得ることができる。他方、2.5質量%以下であることも重要である。好ましくは、2.3質量%以下、より好ましくは2.2質量%以下である。2.5質量%以下とすることによって、例えば打ち抜き刃による加工時に、切断部の樹脂が伸びてバリにならず、バリの発生を有意に抑制することができる。
なお、スチレン系樹脂(a)以外の成分、例えばエラストマー(d)や他の樹脂成分が「共役ジエン系炭化水素重合体」を含有する場合も想定されるが、その場合であっても、本導電性積層体を構成する樹脂組成物中に占める共役ジエン系炭化水素重合体の割合が上記範囲であれば、共役ジエン系炭化水素重合体を考慮すると同様の効果を奏するものと考えることができる。
【0054】
[積層構成]
次に、本導電性積層体の積層構成について説明する。
基本的な構成となるA層とB層が少なくとも存在すれば特に限定されるものではない。3層以上の場合、最外層としてA層を備え、中間層としてB層を備えた構成を有する積層構成であるのが好ましい。
具体的には、最も単純な構成としてA層とB層の2層構造、次に単純な構造として両外層と中層の2種3層構造であり、これらは好ましい構成である。
2種3層の形態の場合、A層/B層/A層であってもB層/A層/B層であっても構わないが、A層が外層であるのが好ましい。
必要に応じて他の機能を持つ層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。更に層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしても良い。中でも導電性の観点から、A層/B層/A層の2種3層構成が好ましい。
【0055】
全体の厚みに占めるA層とB層との総厚み比については、A層/B層=5/95〜40/60であることが好ましく、10/90〜30/70であることがより好ましい。A層/B層=5/95以上とすることで十分な表面抵抗率を得ることができ、A層/B層=40/60以下とすることで十分な引張弾性率を得ることができる。また、A層およびB層以外の他の層が存在する場合、他の層の厚みの合計は全体の厚み1に対して0.05〜0.5が好ましく、0.1〜0.3がより好ましい。
【0056】
本導電性積層体は、フィルム、テープ、シート、板体などの形態であってもよく、厚みとしては、実用上0.05mm以上、3mm以下が好ましく、0.1mm以上、1mm以下がより好ましく、0.2mm以上、0.5mm以下がさらに好ましい。
【0057】
[用途]
本導電性積層体は、主にエンボスキャリアテープの材料として好適に使用することができるが、それ以外の用途、例えばカバーテープ、ICトレイ、スペーサー用フィルム、テーピング用フィルム等にも好適に利用することができる。
【0058】
[製造方法]
本導電性積層体の製造方法としては、特に制限されないが、通常用いられる溶融押出法を用いることが好ましい。
この口金としては、Tダイ、Iダイ、丸ダイ等を挙げることができる。
【0059】
また、スチレン系重合体(a)、導電剤(b)、乳酸系重合体(c)、エラストマー(d)、及び、その他添加剤を混合する方法としては、あらかじめ全ての原料をコンパウンドしてペレット化したもの、或いは、全ての原料をドライブレンドしたものを、フイードブロックやマルチマニホールドダイを有する共押出設備等を用い、積層シートの作製を行う。この時、スチレン系重合体、乳酸系重合体、導電剤、スチレン系エラストマー、及び、その他添加剤の配合比率によって樹脂の粘度が変化するため、混練条件は適宜調整する必要があるが、通常は樹脂温度として、180℃以上、220℃以下でシート状に作製するのが好ましい。
【0060】
このようにして得られた本導電性積層体の表面抵抗率は、10〜10Ωの範囲にあることが好ましい。表面抵抗率を10Ω以上とすると、電子部品の端子が導通してショートするおそれがなくなり、10Ω以下とすると、十分な導電性を得ることができ、静電気の発生を抑制することができる。
【0061】
得られた本導電性積層体から熱成形により成形体を得るには、本導電性積層体を赤外線ヒータ、熱板ヒータ、熱風などにより成形温度に予熱し熱成形すればよい。
成形温度としては、組成により適宜調整が必要になるが、105℃以上、130℃以下の範囲が好ましく、110℃以上、125℃以下の範囲がより好ましい。成形温度が105℃未満では、シートが十分に軟質化せず成形が困難な場合があり、成形温度が125℃を超える場合は、予熱中にシートがドローダウン(自重で垂れ下がる)することにより、均一な成形体が得られにくい場合がある。
【0062】
熱成形の方法としては真空成形法、圧空成形法、雄雌型成形法、成形雄型に沿ってシートを変形した後に成形雄型を拡張する方法等がある。これらの成形方法により、各種の成形体とすることができる。特にキャリアテープとして使用すると、十分な導電性、耐熱性耐折強度、成形性を有するので好ましい。
【0063】
[用語の説明]
本発明において「主成分」とは、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。この際、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)が組成物中の50質量%以上、特に70質量%以上、中でも特に90質量%以上(100%含む)を占めるのが好ましい。
【0064】
また、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。例えば厚さに関して言えば、狭義では100μm以上のものをシートと称し、100μm未満のものをフィルムと称すことがある。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0065】
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り、「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り、「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。まず、実施例、及び、比較例における物性値の測定・評価方法を以下に示す。
【0067】
[物性値の測定・評価方法]
1)耐折強度
ASTM D2176に基づき、長さ120mm、幅15mm、厚さ0.3mmの試験片を作製し、東洋精機製作所製MIT耐折疲労試験機を用いてMD、TD両方向についてMIT耐折強度の測定を行った。
この時、折り曲げ角度135度、折り曲げ速度175cpm、測定荷重9.8Nにて試験を行った。
耐折強度はMD、TD共に700回以上を合格と評価した。
【0068】
2)軟化温度
JIS K7196に基づき、長さ50mm、幅50mm、厚さ0.3mmの試験片を作製し、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製TMA120Cを用いて軟化温度の測定を行った。この時、測定荷重0.5N、昇温速度5℃/minにて試験を行った。
軟化温度が80℃以上のものを「合格」と評価した。
【0069】
3)引張弾性率
JIS K7127に基づき、長さ400mm、幅10mm、厚さ0.3mmの試験片を作製し、インテスコ社製万能材料試験機MODEL205を用いてMD、TD両方向について引張弾性率の測定を行った。この時、雰囲気温度23℃、引張速度5mm/minにて測定を行った。
引張弾性率が、MD、TD共に1.5GPa以上のものを「合格」と評価した。
【0070】
4)表面抵抗率
JIS K7194に基づき、長さ100mm、幅100mm、厚さ0.3mmの試験片を作製し、23℃、50%RHに90時間静置した後、表面抵抗測定器ロレスターHP(三菱化学(株)製、型式:MCP−T410)を用いて、シートのキャスト面の表面抵抗率の測定を行った。
表面抵抗率が、1×10〜1×10Ωの範囲にあるものを「合格」と評価した。
【0071】
5)成形性
キャリアテープには、圧空成形、真空成形又はプレス成形などにより収納凹部が形成されることがあるため、成形性が必要とされる。
【0072】
φ100mm、深さ30mm、絞り比0. 3の成形金型(金型温度25℃)を用いて圧空成形(空気圧:2kg/cm)を行い、成形体の型賦形状態を観察し、3段階で評価を行った。
評価基準としては、良好な形態の成形体が形成されている場合を「○」、実用可能なレベル程度の場合を「△」、不良形状の成形体の場合を「×」と、評価した。
【0073】
6)打ち抜き加工性
サンプルをφ60mmの円形状にトムソン刃を用いて、プレス機にて打ち抜いた後、表面のクラック状態や打ち抜き断面のバリやヒゲの状態を観察した。
表面クラック、断面バリ・ヒゲが認められないものを「○」、認められるものを「×」と評価した。
【0074】
7)総合評価
耐折強度、耐熱性、成形性、及び打ち抜き加工性の結果より、上記物性の全ての項目が合格或いは「○」で評価されたものを「○」、全ての項目が合格或いは「○」で評価され、かつ、耐折強度がMD/TD共に1,000回を上回っており、引張弾性率についてMD/TD共に2GPaを上回っているものを「◎」、打ち抜き加工性のみ「×」だったものを「△」、耐折強度、耐熱性、及び成形性のうちいずれかが、不良又は「×」だったものを「×」と評価した。
【0075】
8)ブタジエンの含有率
本導電性積層体を構成する樹脂組成物中に占める共役ジエン系炭化水素重合体(「ブタジエン」)の割合は、NMR分析装置のスペクトルを測定し、ブタジエン成分の5.4ppm位置の強度比から分子量換算して重量比を算出した。
【0076】
[原料]
次に、本発明の実施例に用いた各原料を以下に示す。
【0077】
(スチレン系重合体)
(a−1):PSジャパン社製475D(HIPS、ブタジエンの含有量3.9質量%、シャルピー衝撃強さ(ISO179ノッチ有り@23℃)14kJ/m2、曲げ弾性率(ISO527−1)2200MPa、荷重たわみ温度(18.6kgf、ISO75−2)75℃、メルトフローレート(ISO1133)2g/10min)
(a−2):PSジャパン社製679(GPPS、シャルピー衝撃強さ(ISO179ノッチ有り@23℃)1.1kJ/m2、曲げ弾性率(ISO527−1)3150MPa、荷重たわみ温度(18.6kgf、ISO75−2)70℃、メルトフローレート(ISO1133))19g/10min)
【0078】
(導電剤)
(b−1):インターナショナル社製ケッチェン・ブラックEC(レーザー回折法平均粒径40nm)
【0079】
(乳酸系重合体)
(c−1):Nature Works社製Nature Works 4060D
(L乳酸の割合:86.0%、D乳酸の割合:14.0%、分子量198,000)
(c−2):Nature Works社製Nature Works 4042D
(L乳酸の割合:95.7%、D乳酸の割合:4.3%、分子量181,000)
【0080】
(エラストマー)
(d−1):クラレ社製ハイブラー7125(水素添加スチレン系エラストマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン含有量20%、tanδのピーク温度−5℃、ガラス転移温度−15℃、MFR(ASTM D1238、230℃)4g/10min)
(d−2)三菱化学社製プリマロイA1700N(ポリブチレンテレフタレート・ポリテトラメチレングリコールエーテル・スチレン共重合体、MFR(JIS K 7210−1999 230℃)21.2Ng/10min))
【0081】
(実施例1)
スチレン系重合体(a)としての(a−1)と、導電剤(b)としての(b−1)とを質量比80:20の割合で混合した後、二軸押出機に供給し、溶融混練してストランド状に吐出した後、ペレタイザーでペレット状に粉砕し、A層用ペレットを得た。
【0082】
次に、スチレン系重合体(a)としての(a−1)及び(a−2)と、乳酸系重合体(c)としての(c−1)と、エラストマー(d)としての(d−1)とを質量比65:10:15:10の割合で混合し、二軸押出機に供給し、溶融混練してストランド状に吐出した後、ペレタイザーでペレット状に粉砕し、B層用ペレットを得た。
【0083】
上記のA層用ペレットとB層ペレットとを各単軸押出機に供給し、1つのTダイから押し出し、A層が最外層に各20μm、B層が中間層に260μmとなる2種3層(A層/B層/A層)の積層シートを作製した。
得られたシートについて、耐折強度、軟化温度、引張弾性率、表面抵抗率の測定、及び、成形性、打ち抜き加工性の評価を行った結果を表1に示す。
【0084】
(実施例2)
B層において、(a−1):(a−2):(c−1):(d−1)の質量比を50:10:30:10に変更した以外は実施例1と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
(実施例3)
B層において、(a−1):(a−2):(c−1):(d−1)の質量比を35:10:45:10に変更した以外は実施例1と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例4)
B層において、(a−1):(a−2):(c−1):(d−1)の質量比を52.5:10:30:7.5に変更した以外は実施例1と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例5)
B層において、(a−1):(a−2):(c−1):(d−1)の質量比を40:10:30:20に変更した以外は実施例1と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(実施例6)
実施例2において、A層の厚みを10μm、B層の厚みを280μmとした以外は実施例2と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(実施例7)
実施例2において、A層の厚みを30μm、B層の厚みを240μmとした以外は実施例2と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(実施例8)
B層において、(a−1):(c−1):(d−1)の質量比を60:30:10に変更した以外は実施例1と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例9)
エラストマー(d)として(d−2)を用い、B層において、(a−1):(a−2):(c−1):(d−2)を質量比50:10:30:10で混合した後、A層の厚みが20μm、B層の厚みが260μmとなるように実施例1と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
(実施例10)
乳酸系重合体(c)として(c−2)を用い、B層において、(a−1):(a−2):(c−2):(d−1)を質量比50:10:30:10で混合した後、A層の厚みが20μm、B層の厚みが260μmとなるように実施例1と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
(比較例1)
B層において、(a−1):(d−1)を質量比90:10で混合した後、A層の厚みが20μm、B層の厚みが260μmとなるように実施例1と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
(比較例2)
B層において、(a−1):(c−1):(d−1)を質量比25:65:10で混合した後、A層の厚みが20μm、B層の厚みが260μmとなるように実施例1と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
(比較例3)
B層において、(a−1):(c−1):(d−1)を質量比70:20:10で混合した後、A層の厚みが20μm、B層の厚みが260μmとなるように実施例1と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
(比較例4)
B層において、(a−1):(a−2):(c−1):(d−1)を質量比30:40:20:10で混合した後、A層の厚みが20μm、B層の厚みが260μmとなるように実施例1と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
(比較例5)
B層において、(a−1):(a−2):(c−1):(d−1)を質量比55:10:30:5で混合した後、A層の厚みが20μm、B層の厚みが260μmとなるように実施例1と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
(比較例6)
B層において、(a−1):(a−2):(c−1):(d−1)を質量比35:10:30:25で混合した後、A層の厚みが20μm、B層の厚みが260μmとなるように実施例1と同様の方法で積層シートの作製、及び、評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
表1に各実施例及び比較例における組成及び得られた物性値を示す。
本発明で配合量が規定された範囲内で構成された実施例の導電性積層体は、本発明で規定する以外の範囲で構成された比較例のフィルムに比し物性のバランスの取れたものであることがわかる。
一方で、規定された範囲から外れる比較例の積層多孔性フィルムは、耐折強度、軟化温度、引張弾性率、成形性、および打ち抜き加工性のうち少なくとも1つの物性が実用可能なレベルに到達することができなかった。
なお、実施例の中でも、耐折強度、軟化温度、引張弾性率、成形性、および打ち抜き加工性の観点から実施例2,3,6,7,8,10がより好ましい態様である。
【0101】
実施例1〜10と比較例1、3、4の結果から、積層体を構成する樹脂に占める共役ジエン系炭化水素重合体の割合が1.2質量%以上2.5質量%以下であるのが好ましいことが分かった。
実施例1〜10と比較例1、2の結果から、B層を構成する組成物に占める乳酸系重合体(c)の割合が、5質量%以上、45質量%以下であるのが好ましいことが分かった。
実施例1〜10と比較例5、6の結果から、B層を構成する組成物に占めるエラストマー(d)の割合が5質量%以上、20質量%以下であるのが好ましいことが分かった。
【0102】
実施例2と実施例9の結果から、エラストマー(d)が、水素添加スチレン系エラストマーであるのが好ましいことが分かった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a)及び導電剤(b)を含むA層と、共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a)、乳酸系重合体(c)及びエラストマー(d)を含むB層とを備えた積層体であり、
当該積層体を構成する樹脂に占める共役ジエン系炭化水素重合体の割合が1.2質量%以上2.5質量%以下であり、
B層を構成する組成物に占める乳酸系重合体(c)の割合が5質量%以上、45質量%以下であり、
B層を構成する組成物に占めるエラストマー(d)の割合が5質量%以上、20質量%以下であることを特徴とする導電性積層体。
【請求項2】
スチレン系重合体(a)が、共役ジエン系炭化水素重合体を含有するスチレン系重合体(a−1)と、共役ジエン系水素重合体を含有しないスチレン系重合体(a−2)との混合物であり、(a−1)と(a−2)の合計中に占める(a−1)の割合が、60質量%以上、95質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性積層体。
【請求項3】
乳酸系重合体(c)中に占めるD乳酸の割合が、3質量%以上、15質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性積層体。
【請求項4】
エラストマー(d)が、水素添加スチレン系エラストマーであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の導電性積層体。
【請求項5】
最外層としてA層を備え、中間層としてB層を備えた構成を有する請求項1〜4の何れかに記載の導電性積層体。
【請求項6】
全体の厚みに占めるA層とB層の割合が、A層/B層=10/90〜40/60であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の導電性積層体。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の導電性積層体を成形してなる成形体。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかに記載の導電性積層体を成形してなるキャリアテープ。


【公開番号】特開2010−214607(P2010−214607A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60713(P2009−60713)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】