説明

導電性粉体及びそれを含む導電性材料並びに導電性粒子の製造方法

【課題】最外層として金めっき皮膜を有する従来技術の導電性粒子からなる導電性粉体と同等又はそれ以上の導電性と、電気信頼性を有する導電性粉体を提供すること。
【解決手段】芯材粒子の表面にニッケル皮膜が形成されたニッケル被覆粒子表面に、更にパラジウム皮膜が形成された導電性粒子からなる導電性粉体である。パラジウム皮膜表面から突出し、かつ該パラジウム皮膜と連続体になっている、高さが50nm以上である突起部を粒子1個当たり5個以上有する。パラジウム皮膜中のリン含有量は3重量%以下である。導電性粒子のうち、一次粒子が占める割合は、導電性粉体の重量に対して85重量%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粉体及びそれを含む導電性材料に関する。また本発明は、導電性粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性接着剤、異方性導電膜、異方性導電接着剤等に用いられている導電性粉体としては、ニッケル、銅、銀、金、はんだ等の金属粉末;カーボン粉末やカーボン繊維、カーボンフレーク等のカーボン系材料;樹脂粒子の表面を無電解ニッケルめっきして、ニッケルを被覆した導電性粒子が知られている。
【0003】
これらの導電性粉体のうち、樹脂粒子の表面にニッケルを被覆した導電性粒子は、ニッケル皮膜が酸化されやすく、このために経時的に電気抵抗が増加することがある。また、更に導電性を高めることを目的として、通常、ニッケル皮膜上に貴金属である金めっき皮膜を更に形成させて使用される。
【0004】
金は高価であることから、他の貴金属を金の代替として使用することが検討されている。例えばパラジウムを最外層とする導電性粉体が提案されている(特許文献1〜3参照。)。しかしながら、最外層が金めっき皮膜である導電性粒子と同等の特性を有しているとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−134936号公報
【特許文献2】特開2007−194210号公報
【特許文献3】特開2004−238738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、前述した従来技術の金めっき層の最外層を有する導電性粉体と同等又はそれ以上の特性を有する導電性粉体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意検討した結果、パラジウム又はパラジウム皮膜の表面から突出し、かつ該皮膜と連続体となっている突起部を有し、該突起部の高さ、更にはその個数等の突起部の特性を特定範囲に調製したパラジウム被覆粒子を用いること、パラジウム又はパラジウム合金皮膜として実質的にリンを含有しないか、又はリン含有量を特定範囲以下に調整した皮膜を用いること、更に導電性粉体として実質的に凝集粒子が存在しない導電性粉体を調製すること、によって最外層が金めっき皮膜である導電性粒子からなる導電性粉体と同等又はそれ以上の優れた導電性及び電気信頼性を有するものになることを知見した。
【0008】
本発明は前記知見に基づきなされたもので、芯材粒子の表面にニッケル又はニッケル合金皮膜が形成されたニッケル被覆粒子表面に、更にパラジウム又はパラジウム合金皮膜が形成された導電性粒子からなる導電性粉体であって、
前記導電性粒子は、パラジウム又はパラジウム合金皮膜表面から突出し、かつ該パラジウム又はパラジウム合金皮膜と連続体になっている、高さが50nm以上である突起部を粒子1個当たり5個以上有し、
前記パラジウム又はパラジウム合金皮膜中のリン含有量が3重量%以下であり、
前記導電性粉体においては、前記導電性粒子のうち、一次粒子が占める割合が、導電性粉体の重量に対して85重量%以上であることを特徴とする導電性粉体を提供するものである。
【0009】
また本発明は、芯材粒子の表面に、ニッケル又はニッケル合金皮膜が形成され、該皮膜の表面から突出し、かつ該皮膜と連続体になっている、高さが50nm以上である突起部を粒子1個当たり5個以上有するニッケル被覆粒子を、分散剤の存在下に、下記の(D1)ないし(D3)のいずれかの方法で、無電解パラジウムめっき処理することを特徴とする導電性粒子の製造方法を提供するものである。
(D1)純パラジウムめっき浴で還元型無電解パラジウムめっき処理する方法。
(D2)還元剤として次亜リン酸又はその塩を用いる還元型無電解パラジウムめっき処理において、パラジウムイオンに対する還元剤のモル比を0.1〜100として還元型無電解パラジウムめっき処理する方法。
(D3)置換型無電解パラジウムめっき処理する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性粉体は、最外層として金めっき皮膜を有する従来技術の導電性粒子からなる導電性粉体と同等又はそれ以上の導電性と、電気信頼性を有するものである。また本発明の製造方法によれば、そのような導電性粉体を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の導電性粉体は、芯材粒子の表面にニッケル又はニッケル合金皮膜(以下、これらを総称して単に「ニッケル皮膜」という。)が形成されたニッケル被覆粒子表面に、更にパラジウム又はパラジウム合金皮膜(以下、これらを総称して単に「パラジウム皮膜」という。)が形成されてなるものである。そして、本発明の導電性粉体は、パラジウム皮膜の表面から突出した突起部を多数有している点に特徴の一つを有している。以下、この突起部について説明する。
【0012】
本発明において、導電性粒子における個々の突起部は、パラジウム皮膜と連続体になっており、突起部の最外層は少なくともパラジウム皮膜から構成されている。ここで言う「連続体」とは、パラジウム皮膜と突起部との間に、継ぎ目等の一体感を損なうような部位が存在しないことを意味する。したがって、例えば芯材粒子上にパラジウム皮膜を形成し、その上に突起部形成用のコア粒子を付着させ、該コア粒子を成長の起点として形成された突起部は、パラジウム皮膜と連続体になっていないので、本発明に言う連続体に含まれない。突起部がパラジウム皮膜と連続体になっていることで、突起部の強度が確保されるので、導電性粉体の使用時に圧力が加わっても突起部が破損しづらくなる。その結果、良好な導電性を得ることができる。
【0013】
本発明の導電性粉体における突起部は、特定以上の高さを有するものが特定範囲で存在していることも特徴の一つである。すなわち本発明の導電性粉体は、高さが50nm以上の突起部を粒子1個当たり5個以上有するものである。高さが5nm以上の突起部の粒子1個当たりの個数の上限値は、1000個以下にすることが好ましい。この理由は、突起部が多すぎると、突起部と突起部との間隔が狭くなり、突起としての効果が低下する可能性があるためである。特に、高さが50nm以上の突起部の数が、粒子1個当たり5〜300個であると、導電性が特に優れたものになる点で好ましい。
【0014】
高さが50nm以上の突起部は、粒子の表面から概ね放射状に延びる細長い突起であることが好ましい。該突起部はそのアスペクト比が好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.1以上であることが好ましい。この理由は、本発明の導電性粉体を用いて電極の導通をとる場合、電極の表面には薄い酸化皮膜が自然に形成されていたり、あるいは意図的に電極の酸化皮膜を形成したりする場合があるところ、突起部のアスペクト比が大きいと、この酸化皮膜を容易に突き破ることができるためであると考えられる。また、導電性粉体を用いて異方導電フィルムを形成した場合には、突起部のアスペクト比が大きいと、樹脂排除性が高くなるので、導電性が高くなると考えられる。このように、突起部のアスペクト比を1.0以上とすることで、すなわち突起部の形状を細長くすることで、導電性が非常に高くなることが、本発明者らの検討の結果判明した。特に、後述する実施例における実施例1〜7と実施例8〜10との対比から明らかなように、突起部のアスペクト比が1.0以上であると、高温・高湿下に長期間保存した後の導電性の低下が効果的に抑制される。本発明者らの知る限り、突起部のアスペクト比を1以上とすることは容易でない。従来の導電性粉体における突起部は、言わばずんぐりとした形状を有している 。アスペクト比の上限値は、突起部に圧力が加わったときに破損しやすくなる傾向があることから、3.0以下とすることが好ましい。このようなアスペクト比の大きな突起部を有する導電性粒子は、例えば後述する方法によって製造することができる。
【0015】
本発明におけるアスペクト比とは、突起部の高さHと突起部の基部における突起部の幅Dとの比、すなわちH/Dで定義される値である。この定義から明らかなように、アスペクト比は突起部の細長さの尺度となるものであり、その値が大きいほど突起部が細長い形状をしていることを意味する。このアスペクト比は、突起部の高さが50nm以上である突起部の平均値を示す。
【0016】
上述のアスペクト比の測定方法は次のとおりである。電子顕微鏡によって導電性粉体における個々の粒子を拡大観察する。1つの粒子について少なくとも1個の突起部について、その基部の長さD及び高さHを測定する。この場合、観察像において粒子の中央に存在する突起部よりも、むしろ粒子の周縁に存在する突起部を測定対象とすることが、寸法の正確な測定の点から重要である。このような測定を少なくとも20個の異なる粒子を対象として行う。このようにして得られた複数のアスペクト比のデータを算術平均し、その値をアスペクト比とする。なお、突起部の横断面は異方性が小さい形状(例えばほぼ円形) をしているので、粒子の観察角度によって突起部の基部の長さDの値が変わってしまう懸念は小さい。
【0017】
突起部のアスペクト比は上述のとおりであるところ、該突起部の基部の長さDそれ自体及び突起部の高さHそれ自体は、基部の長さDについては0.05〜0.5μm、特に0.1〜0.4μmであることが好ましく、高さHについては0.05〜0.5μm、特に0.1〜0.4μmであることが好ましい。突起部の基部の長さD及び突起部の高さHがこの範囲内であると、導電性が更に一層向上する。
【0018】
高さが50nm以上である突起部は、粒子1個当たり上述の数存在していればよく、そのような突起部に加えて、導電性粒子中に高さが50nm以下の突起部が存在することは、本発明において何ら妨げられない。尤も、高さが50nm以下の突起部が多数存在すると、突起部と突起部との間隔が狭くなり、突起としての効果が低下する可能性があることから、アスペクト比が上述した範囲を満たす突起部の割合は、全突起部の数に対して好ましくは40%以上、更に好ましくは45%以上、一層好ましくは50%以上とする。
【0019】
本発明の導電性粉体は、パラジウム皮膜に含まれるリン(P)の含有量によって特徴付けられる。詳細には、本発明者らの検討の結果、パラジウム皮膜中にリンが3重量%より多く含有されると、導電性、更には電気信頼性に影響することが判明した。したがって本発明では、パラジウム皮膜中のリン含有量を3重量%以下、好ましくは2重量%以下とする。リン含有量の下限値に特に制限はなく、小さければ小さいほど好ましい。パラジウム皮膜中のリン含有量は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0020】
パラジウム皮膜の下側に位置するニッケル皮膜に関しては、該皮膜中に含まれるリン含有量に特に制限はない。
【0021】
パラジウム皮膜の厚みに関しては、これが薄すぎると導電性粉体が十分な導電性を示しにくくなり、逆に厚すぎると芯材粒子の表面から剥離しやすくなる。これらの観点から、突起部が存在しない部位におけるパラジウム皮膜の厚みは、5〜500nmであることが好ましく、10〜300nmであることが好ましい。
【0022】
ニッケル皮膜は、パラジウム皮膜と同様に、薄すぎると導電性能が不十分である場合があり、逆に厚すぎると粒子が凝集しやすくなる傾向にあることから、その厚みを10〜300nm、特に50〜250nmとすることが好ましい。
【0023】
導電性粒子におけるパラジウム皮膜の厚み及びニッケル皮膜の厚みは、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0024】
パラジウム皮膜の下側に位置するニッケル皮膜は、芯材粒子の表面を被覆してニッケル被覆粒子を形成している。このニッケル被覆粒子は、芯材粒子を無電解ニッケルめっき処理して、該芯材粒子の表面にニッケル皮膜を形成すると同時に突起部も形成したものであることが好ましい。このようにして形成された突起部は、一層破損しづらいものになるからである。この観点から、本発明の導電性粉体においては、個々の粒子における突起部は、ニッケル又はニッケル合金からなる突起部芯体と、該芯体の表面を被覆するパラジウム又はパラジウム合金からなる突起部被覆層から構成されていることが好ましい。突起部がこのような構造である場合、突起部芯体は、パラジウム皮膜の下側に位置するニッケル皮膜と連続体になっていることが好ましい。また、突起部被覆層は、パラジウム皮膜と連続体になっていることが好ましい。
【0025】
前記のニッケル皮膜によって被覆されている芯材粒子としては、後述するように各種の材質からなるものを用いることができる。特に芯材粒子として、樹脂粒子を用いると、得られる導電性粉体の粒度分布がシャープになり、また圧縮回復特性に優れる観点から特に好ましい。
【0026】
本発明の導電性粉体においては、個々の粒子の形状は球形であることが好ましい。ここで言う粒子の形状とは、突起部を除いた粒子の形状のことである。粒子が球形であることと、突起部を有していることに起因して、本発明の導電性粉体は、その導電性が高いものとなる。
【0027】
また本発明の導電性粉体は、先に述べた突起部の個数との関係において、後述するコールターカウンター法から求められる平均粒径が1〜50μm、特に1〜40μm、とりわけ1.5〜30μmである導電性粒子から構成されることが好ましい。この範囲の粒径の導電性粒子となすことで、粒子1個当たりの突起部の数と突起部の密度とがバランスして、導電性を高くすることが容易となる。
【0028】
導電性粒子は、その粒径が小さくなると凝集しやすい傾向にある。凝集が起こると、導電性粒子を用いた異方導電フィルムが短絡を起こしやすいという不都合がある。また、凝集をほぐすために粉砕等の処理を施すと、パラジウム皮膜及び/又はニッケル皮膜が剥離して導電性低下の原因となる。この観点から、本発明の導電性粉体においては、個々の粒子の分散性を高めることが重要である。そこで本発明の導電性粉体においては、導電性粒子のうち、一次粒子が占める割合が、導電性粉体の重量に対して85重量%以上、好ましくは90重量%以上、更に好ましくは92重量%以上になっている。導電性粒子の分散性を高めるためには、例えば後述する方法に従い導電性粒子を製造すればよい。一次粒子が占める割合は次の方法で測定される。導電性粉体0.1gを100mLの水に入れ超音波ホモジナイザーで1分間分散させる。次いで、コールターカウンター法によって粒度分布を測定する。その結果から、一次粒子の重量割合を算出する。
【0029】
導電性粒子におけるパラジウム皮膜は金属パラジウム又はパラジウム合金から構成されている。パラジウム合金には、例えばパラジウム−リン合金が含まれる。パラジウム−リン合金は、後述する導電性粉体の製造において、パラジウムの還元剤として次亜リン酸ナトリウムを用いた場合に生じる合金である。
【0030】
また、導電性粒子におけるニッケル皮膜は、金属ニッケル又はニッケル合金から構成されている。ニッケル合金には、例えばニッケル−リン合金が含まれる。ニッケル−リン合金も、後述する導電性粉体の製造において、ニッケルの還元剤として次亜リン酸ナトリウムを用いた場合に生じる合金である。
【0031】
次に、本発明の導電性粉体の好適な製造方法について説明する。本製造方法では、芯材粒子の表面に、ニッケル又はニッケル合金皮膜が形成され、該皮膜の表面から突出し、かつ該皮膜と連続体になっている、高さが50nm以上である突起部を粒子1個当たり5個以上有するニッケル被覆粒子(以下、「ニッケル被覆粒子」と単に呼ぶ。)を、分散剤の存在下に、下記の(D1)ないし(D3)のいずれかの方法で、無電解パラジウムめっき処理する。
(D1)純パラジウムめっき浴で還元型無電解パラジウムめっき処理する方法。
(D2)還元剤として次亜リン酸又はその塩を用いる還元型無電解パラジウムめっき処理において、パラジウムイオンに対する還元剤のモル比を0.1〜100として還元型無電解パラジウムめっき処理する方法。
(D3)置換型無電解パラジウムめっき処理する方法。
【0032】
ニッケル被覆粒子は、以下の(b1)及び(b2)の2つのうちのいずれかの方法で得られるものであると、突起部の強度が強く導電性粉体の使用時に圧力が加わっても突起部が破損しづらくなり、その結果、良好な導電性を得ることができる観点から好ましい。
【0033】
(b1)
分散剤及びニッケルイオンを含む無電解ニッケルめっき浴と、表面に貴金属が担持された芯材粒子とを混合して、該芯材粒子の表面にニッケル初期薄膜層を形成するに際し、ニッケルイオンの濃度が0.0001〜0.008モル/リットルに調整された該無電解ニッケルめっき浴1リットルに対して、表面積の総和が1〜15m2となるような量の該芯材粒子を用いるA1工程と、
A1工程において得られた、ニッケル初期薄膜層を有する前記芯材粒子、及び前記分散剤を含む水性スラリーを、該分散剤の分散効果が発現するpH範囲に維持しつつ、該水性スラリーに、1時間当たりのニッケルの析出量が25〜100nmとなる量に相当する量のニッケルイオン及び還元剤を経時的に添加するA2工程を有する方法(以下、「b1の製造法」と呼ぶ。)。
【0034】
(b2)
芯材粒子の水性スラリーを分散剤、ニッケル塩、還元剤、錯化剤などを含んだ無電解ニッケルめっき浴に添加し、無電解ニッケルめっき処理するB1工程、次いで該無電解ニッケルめっき浴に、無電解ニッケルめっき液の構成成分を少なくとも2液に分離して、それぞれを同時にかつ経時的に添加する無電解ニッケルめっき処理するB2工程とを有する方法(以下、「b2の製造法」と呼ぶ。)。
【0035】
前記b1及びb2の製造法で用いる芯材粒子の形状は、目的とする導電性粒子の形状に大きく影響する。先に述べたとおり、芯材粒子の表面を被覆するニッケル皮膜の厚み及びパラジウム皮膜は薄いものなので、芯材粒子の形状がほとんどそのまま導電性粒子の形状に反映される。導電性粒子が球形であることが好ましいことは先に述べたとおりであるので、芯材粒子の形状も球形であることが好ましい。
【0036】
芯材粒子が球形である場合、芯材粒子の粒径は目的とする導電性粒子の粒径に大きく影響する。先に述べたとおり、芯材粒子の表面を被覆するニッケル皮膜及びパラジウム皮膜の厚みは薄いものなので、芯材粒子の粒径がほとんど導電性粒子の粒径に反映される。この観点から、芯材粒子の粒径は、目的とする導電性粒子の粒径と同程度とすることができる。具体的にはコールターカウンター法によって求められる平均粒径が1〜50μm、特に1〜40μm、とりわけ1.5〜30.0μmであることが好ましい。
【0037】
前述の方法によって測定された芯材粉体の粒度分布には幅がある。一般に、粉体の粒度分布の幅は、下記式(1)で示される変動係数により表わされる。
変動係数(%)=(標準偏差/平均粒径)×100 (1)
この変動係数が大きいことは分布に幅があることを示し、一方、変動係数が小さいことは粒度分布がシャープであることを示す。本発明では、芯材粒子として、この変動係数が30%以下、特に20%以下、とりわけ10%以下のものを使用することが好ましい。この理由は、本発明の導電性粒子を異方導電フィルム中の導電粒子として用いた場合に、接続に有効な寄与割合が高くなるという利点があるからである。
【0038】
芯材粒子の具体例としては、無機物として、金属(合金も含む)、ガラス、セラミックス、シリカ、カーボン、金属又は非金属の酸化物(含水物も含む)、アルミノ珪酸塩を含む金属珪酸塩、金属炭化物、金属窒化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属硫化物、金属酸塩、金属ハロゲン化物及び炭素などが挙げられる。有機物としては、天然繊維、天然樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブテン、ポリアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、アイオノマー、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂又はジアリルフタレート樹脂などが挙げられる。これらは単独でも使用でき又は2種以上の混合物として使用してもよい。
【0039】
また、芯材粒子のその他の物性は、特に制限されるものではないが、芯材粒子が樹脂粒子である場合は、下記の式(2)で定義されるKの値が、20℃において10kgf/mm2〜10000kgf/mm2の範囲であり、かつ10%圧縮変形後の回復率が20℃において1%〜100%の範囲であることが好ましい。これらの物性値を満足することで、電極どうしを圧着するときに電極を傷つけることなく、電極と十分に接触させることができるからである。
K値(kgf/mm2)=(3/√2)×F×S-3/2×R-1/2・・・(2)
式(2)で示されるF及びSは、微小圧縮試験機MCTM−500((株)島津製作所製)で測定したときの、それぞれ該微球体の10%圧縮変形における荷重値(kgf)及び圧縮変位(mm)であり、Rは該微球体の半径(mm)である。
【0040】
芯材粒子は、その表面が貴金属イオンの捕捉能を有するか、又は貴金属イオンの捕捉能を有するように表面改質されることが好ましい。貴金属イオンは、パラジウムや銀のイオンであることが好ましい。貴金属イオンの捕捉能を有するとは、貴金属イオンをキレート又は塩として捕捉し得ることを言う。例えば芯材粒子の表面に、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、水酸基、ニトリル基、カルボキシル基などが存在する場合には、該芯材粒子の表面は貴金属イオンの捕捉能を有する。貴金属イオンの捕捉能を有するように表面改質する場合には、例えば特開昭61−64882号公報記載の方法を用いることができる。
【0041】
このような芯材粒子を用い、その表面に貴金属を担持させる。具体的には、芯材粒子を塩化パラジウムや硝酸銀のような貴金属塩の希薄な酸性水溶液に分散させる。これによって貴金属イオンを粒子の表面に捕捉させる。貴金属塩の濃度は粒子の表面積1m2当り1×10-7〜1×10-2モルの範囲で充分である。貴金属イオンが捕捉された芯材粒子は系から分離され水洗される。引き続き、芯材粒子を水に懸濁させ、これに還元剤を加えて貴金属イオンの還元処理を行う。これによって芯材粒子の表面に貴金属を坦持させる。還元剤としては、例えば次亜リン酸ナトリウム、水酸化ほう素ナトリウム、水素化ほう素カリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルマリン等が用いられる。
【0042】
貴金属イオンを芯材粒子の表面に捕捉させる前に、錫イオンを粒子の表面に吸着させる感受性化処理を施してもよい。錫イオンを粒子の表面に吸着させるには、例えば表面改質処理された芯材粒子を塩化第一錫の水溶液に投入し所定時間撹拌すればよい。
【0043】
以下、前記b1の製造方法について更に詳しく説明する。本製造方法は、(1)芯材粒子の表面にニッケル初期薄膜層を形成するA1工程と、(2)A1工程で得られた粒子を原料として用い、目的とする導電性粒子を形成するA2工程の2工程に大別される。以下、それぞれの工程について説明する。
【0044】
A1工程においては、分散剤及びニッケルイオンを含む無電解ニッケルめっき浴と、表面に貴金属が担持された芯材粒子とを混合して、芯材粒子の表面にニッケル初期薄膜層を形成する。
【0045】
前述した芯材粒子を、分散剤及びニッケルイオンを含む無電解ニッケルめっき浴と混合する。無電解ニッケルめっき浴は水を媒体とする溶液であり、それに含まれる分散剤としては、例えば非イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤及び/又は水溶性高分子が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンエーテル系の界面活性剤を用いることができる。両性イオン界面活性剤としては、アルキルジメチル酢酸ベタイン、アルキルジメチルカルボキシメチル酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのベタイン系の界面活性剤を用いることができる。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジノン、ヒドロキシエチルセルロースなどを用いることができる。分散剤の使用量は、その種類にもよるが、一般に、液体(無電解ニッケルめっき浴)の体積に対して0.5〜30g/Lである。特に、分散剤の使用量が液体(無電解ニッケルめっき浴)の体積に対して1〜10g/Lの範囲であると、ニッケル皮膜の密着性が向上する観点から好ましい。
【0046】
無電解ニッケルめっき浴に含まれるニッケルイオンは、そのニッケル源として水溶性ニッケル塩が用いられる。水溶性ニッケル塩としては、硫酸ニッケルや塩化ニッケルを用いることができるが、これに限定されるものではない。無電解ニッケルめっき浴に含まれるニッケルイオンの濃度は0.0001〜0.008モル/リットル、特に0.0001〜0.005モル/リットルであることが好ましい。
【0047】
無電解ニッケルめっき浴には、上述の成分の他に還元剤を含有させることができる。還元剤としては、先に述べた貴金属イオンの還元に用いられているものと同様のものを用いることができる。無電解ニッケルめっき浴における還元剤の濃度は4×10-4〜2.0モル/リットル、特に2.0×10-3〜0.2モル/リットルであることが好ましい。
【0048】
無電解ニッケルめっき浴には、更に錯化剤を含有させておいてもよい。錯化剤を含有させることで、めっき液の分解が抑制されるという有利な効果が奏される。錯化剤としては、有機カルボン酸又はその塩、例えばクエン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸若しくはグルコン酸又はそのアルカリ金属塩やアンモニウム塩が挙げられる。これらの錯化剤は1種又は2種類以上用いることができる。無電解ニッケルめっき浴における錯化剤の濃度は、0.005〜6モル/リットル、特に0.01〜3モル/リットルであることが好ましい。
【0049】
前処理が施された芯材粒子と無電解ニッケルめっき浴とを混合する方法に特に制限はない。例えば無電解ニッケルめっき浴を、ニッケルイオンの還元が可能な温度に加熱しておき、その状態下に、前処理が施された芯材粒子を無電解ニッケルめっき浴中に投入することができる。この操作によって、ニッケルイオンが還元し、還元によって生じたニッケルが芯材粒子の表面に初期薄膜層を形成する。初期薄膜層は、その厚みが0.1〜10nm、特に0.1〜5nmとなるように形成されることが好ましい。この時点では、突起部はまだ形成されていない。
【0050】
A1工程において重要な点は、無電解ニッケルめっき浴中に含まれるニッケルイオンの量と、投入する芯材粒子の量との関係である。具体的には、ニッケルイオンの濃度が0.0001〜0.008モル/リットル、好ましくは0.0001〜0.005モル/リットルに調整された無電解ニッケルめっき浴1リットルに対して、表面積の総和が1〜15m2、好ましくは2〜8m2となるような量の芯材粒子を用いる。これによって、上述の厚みを有する初期薄膜層を容易に形成することができる。また、ニッケルイオンの量と芯材粒子の量との関係を上述のとおりにすることで、初期薄膜層が形成された芯材粒子どうしの凝集を効果的に防止することができる。このことは、芯材粒子の粒径が小さい場合、例えば粒径が3μm以下である場合に特に有効である。
【0051】
ニッケルイオンの還元が完了したら、次いでA2工程を行う。A2工程は、A1工程の引き続きで行い、A1工程で得られたニッケル初期薄膜層を有する芯材粒子を液体から分離する等の操作は行わない。したがって、ニッケル初期薄膜層を有する芯材粒子を含む水性スラリー中には、A1工程において添加した分散剤が残存している。A2工程においては、A1工程で得られたニッケル初期薄膜層を有する芯材粒子、及びA1工程で用いた分散剤を含む水性スラリーに、ニッケルイオン及び還元剤を経時的に添加する。「経時的に添加」とは、ニッケルイオン及び還元剤を一括して添加することを除外する趣旨であり、ある一定の時間にわたってニッケルイオン及び還元剤を連続的に又は断続的に添加することを意図している。この場合、ニッケルイオン及び還元剤の添加のタイミングは完全に一致していてもよく、あるいはニッケルイオンの添加が先行し、還元剤の添加がそれに続いてもよい。その逆でもよい。更に、添加の終点においては、ニッケルイオンの添加の終了が先行し、還元剤の添加の終了がそれに続いてもよい。その逆でもよい。
【0052】
A2工程で用いるニッケルイオンのニッケル源としては、A1工程で用いたニッケル源と同様のものを用いることができる。還元剤についても同様である。
【0053】
A2工程においては、ニッケルイオンの還元によって、先ず液中に微小なニッケルの核粒子を生成させ、その核粒子をA1工程で得られたニッケル初期薄膜層を有する芯材粒子の表面に付着させ、付着した核粒子を起点としてこれを成長させて、ニッケルからなる突起部芯体を形成する。この方法を採用することで、粒子どうしの凝集を効果的に防止することができ、かつ高さが50nm以上でアスペクト比が1以上の突起部を容易に形成することができる。
【0054】
A2工程におけるニッケルイオンの還元においては、水性スラリーを、A1工程で添加した分散剤(この分散剤はA2工程においても残存している)の分散効果が発現するpH範囲に維持することが重要である。これによって、粒子どうしの凝集を効果的に防止することができる。pHの調整には、水性スラリーのpHを監視しながら各種鉱酸等の酸又は水酸化ナトリウム等のアルカリを水性スラリーに添加すればよい。pHの調整範囲は、使用する分散剤に応じて適切な値を採用すればよい。分散剤として例えば非イオン界面活性剤を用いる場合には、水性スラリーのpHを5〜10の範囲に維持することが好ましい。分散剤として両性イオン界面活性剤を用いる場合には、水性スラリーのpHを5〜8の範囲に維持することが好ましい。分散剤として水溶性高分子を用いる場合にも、水性スラリーのpHを5〜8の範囲に維持することが好ましい。
【0055】
A2工程におけるニッケルイオンの還元においては、水性スラリーに添加するニッケルイオンの量及び還元剤の量も重要である。これによって、アスペクト比の高い突起部芯体を首尾よく形成することが可能となる。具体的な条件としては、水性スラリーに、1時間当たりのニッケルの析出量が25〜100nm、好ましくは40〜60nmとなる量に相当する量のニッケルイオン及び還元剤を経時的に添加する。このような添加の条件を採用することで、ニッケルの析出が、初期薄膜層よりも核粒子において優先的に生じるようになり、アスペクト比の高い突起部芯体が容易に形成される。
【0056】
ニッケルイオン及び還元剤の添加においては、水性スラリーを所定温度に加熱して、還元剤によるニッケルイオンの還元が円滑に進行するようにしてもよい。ニッケルイオン及び還元剤の添加においては、水性スラリーを攪拌しておき、還元したニッケルの付着が均一に生じるようにしてもよい。このようにして、目的とするニッケル被覆粒子が得られる。
【0057】
次に、前記b2の製造方法について更に詳しく説明する。本製造方法におけるB1工程は、芯材粒子の水性スラリーと、分散剤、ニッケル塩、還元剤及び錯化剤などを含んだ無電解ニッケルめっき浴とを混合する無電解ニッケルめっき工程である。かかるB1工程では、芯材粒子上へのニッケル皮膜の形成と同時にめっき浴の自己分解が起こる。この自己分解は、芯材粒子の近傍で生じるため、ニッケル皮膜の形成時に自己分解物が芯材粒子表面上に捕捉されることによって、微小突起の核が生成し、それと同時にニッケル皮膜の形成がなされる。生成した微小突起の核を基点として、突起部芯体が成長する。
【0058】
B1工程では、前述した芯材粒子を好ましくは1〜500g/L、更に好ましくは5〜300g/Lの範囲で水に十分に分散させ、水性スラリーを調製する。分散操作は、通常攪拌、高速攪拌又はコロイドミル若しくはホモジナイザーのような剪断分散装置を用いて行うことができる。また、分散操作に超音波を併用してもかまわない。必要に応じ、分散操作においては界面活性剤などの分散剤を添加する場合もある。次いで、ニッケル塩、還元剤、錯化剤及び各種添加剤などを含んだ無電解ニッケルめっき浴に、分散操作を行った芯材粒子の水性スラリーを添加し、無電解めっきB1工程を行う。
【0059】
前述した分散剤としては、例えば非イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤及び/又は水溶性高分子が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンエーテル系の界面活性剤を用いることができる。両性イオン界面活性剤としては、アルキルジメチル酢酸ベタイン、アルキルジメチルカルボキシメチル酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのベタイン系の界面活性剤を用いることができる。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジノン、ヒドロキシエチルセルロースなどを用いることができる。これらの分散剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。分散剤の使用量は、その種類にもよるが、一般に、液体(無電解ニッケルめっき浴)の体積に対して0.5〜30g/Lである。特に、分散剤の使用量が液体(無電解ニッケルめっき浴)の体積に対して1〜10g/Lの範囲であると、ニッケル皮膜の密着性が一層向上する観点から好ましい。
【0060】
ニッケル塩としては、例えば塩化ニッケル、硫酸ニッケル又は酢酸ニッケルなどが用いられ、その濃度は0.1〜50g/Lの範囲とすることが好ましい。還元剤としては、例えば次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム又はヒドラジンなどが用いられ、その濃度は0.1〜50g/Lの範囲であることが好ましい。錯化剤としては、例えばクエン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸若しくはそのアルカリ金属塩やアンモニウム塩などのカルボン酸(塩)、グリシンなどのアミノ酸、エチレンジアミン、アルキルアミンなどのアミン酸、その他のアンモニウム、EDTA又はピロリン酸(塩)など、ニッケルイオンに対し錯化作用のある化合物が使用され、これらは1種又は2種以上であってもよい。その濃度は好ましくは1〜100g/L、更に好ましくは5〜50g/Lの範囲である。この段階での好ましい無電解ニッケルめっき浴のpHは、4〜14の範囲である。無電解ニッケルめっき反応は、芯材粒子の水性スラリーを添加すると速やかに始まり、水素ガスの発生を伴う。無電解めっきB1工程は、その水素ガスの発生が完全に認められなくなった時点をもって終了とする。
【0061】
次いでB2工程においては、前記のB1工程に続けて、(i)ニッケル塩、還元剤及びアルカリのうちの1種を含む第1の水溶液と、残りの2種を含む第2の水溶液を用いるか、又は(ii)ニッケル塩を含む第1の水溶液と、還元剤を含む第2の水溶液と、アルカリを含む第3の水溶液とを用い、これらの水溶液をそれぞれを同時にかつ経時的に、B1工程の液に添加して無電解ニッケルめっきを行う。これらの液を添加すると再びめっき反応が始まるが、その添加量を調整することによって、形成されるニッケル皮膜を所望の膜厚に制御することができる。無電解ニッケルめっき液の添加終了後、水素ガスの発生が完全に認められなくなってから暫く液温を保持しながら攪拌を継続して反応を完結させる。
【0062】
前記の(i)の場合には、ニッケル塩を含む第1の水溶液と、還元剤及びアルカリを含む第2の水溶液とを用いることが好ましいが、この組み合わせに限られない。この場合には、第1の水溶液には還元剤及びアルカリは含まれず、第2の水溶液にはニッケル塩は含まれない。ニッケル塩及び還元剤としては、先に述べたものを用いることができる。アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物を用いることができる。前記の(ii)の場合についても同様である。
【0063】
前記の(ii)の場合には、第1〜第3の水溶液にニッケル塩、還元剤及びアルカリがそれぞれ含まれ、かつ各水溶液には当該成分以外の他の2成分は含まれない。
【0064】
(i)及び(ii)の場合のいずれであっても、水溶液中のニッケル塩の濃度は50〜400g/L、特に100〜300g/Lであることが好ましい。還元剤の濃度は50〜1000g/L、特に50〜900g/Lであることが好ましい。アルカリの濃度は10〜300g/L、特に20〜250g/Lであることが好ましい。
【0065】
B2工程は、B1工程の終了後に連続して行うが、これに代えて、B1工程とB2工程とを断続して行ってもよい。この場合には、B1工程の終了後、濾過などの方法によって芯材粒子とめっき液とを分別し、新たに芯材粒子を水に分散させて水性スラリーを調製し、そこに錯化剤を好ましくは1〜100g/L、更に好ましくは5〜50g/Lの濃度範囲で溶解した水溶液を添加し、分散剤を好ましくは0.5〜30g/L、更に好ましくは1〜10g/Lの範囲で溶解し水性スラリーを調製して、該水性スラリーに前記の各水溶液を添加するB2工程を行う方法でもよい。このようにして目的とするニッケル被覆粒子が得られる。
【0066】
なお、b1及びb2の製造方法において、ニッケル被覆粒子を、ボールミルを用いた粉砕工程に付することもできる。この粉砕工程に付することによって、単分散したニッケル被覆粒子を得ることができ、また、該単分散したニッケル被覆粒子を後述する無電解パラジウムめっき処理することによって、個々の粒子の粒子表面に均一なパラジウムめっき皮膜を形成することができ、また導電性粉体の重量に対する一次粒子が占める割合を、無電解パラジウムめっき処理後において、上述した範囲内に更に容易に設定することができる。
【0067】
本発明において、b1の製造方法は、芯材粒子の大きさ等にかかわらず、有効に用いることができるが、特に芯材粒子の平均粒径が1〜10μmの微粒な芯材粒子に対して無電解ニッケルめっきして、突起部芯体を有するニッケル被覆粒子を得る場合に、特に有効な方法である。一方、b2の製造方法は3〜50μmの比較的大きな芯材粒子に対して無電解ニッケルめっきして、突起部芯体を有するニッケル被覆粒子を得る場合に、特に有効な方法である。
【0068】
このようにして得られたニッケル被覆粒子を、分散剤の存在下に、下記の(D1)ないし(D3)のいずれかの方法で、無電解パラジウムめっき処理することにより、目的とする導電性粉体を得ることができる。
(D1)純パラジウムめっき浴で還元型無電解パラジウムめっき処理する方法。
(D2)還元剤として次亜リン酸又はその塩を用いる還元型無電解パラジウムめっき処理において、パラジウムイオンに対する還元剤のモル比を0.1〜100として還元型無電解パラジウムめっき処理する方法。
(D3)置換型無電解パラジウムめっき処理する方法。
【0069】
前記(D1)及び(D2)の還元型無電解パラジウムめっき方法は、めっき液中のパラジウムイオンを還元剤の働きによって、ニッケル皮膜上にパラジウムを析出させるものである。そして、(D1)のめっき方法では、還元剤として、例えばギ酸化合物を使用することで、無電解パラジウムめっき皮膜として純度が99重量%以上のものが得られる。一方、(D2)の還元型無電解パラジウムめっき方法では、還元剤として次亜燐酸又はその塩を使用することで、パラジウム−リン合金からなるめっき皮膜が得られる。
【0070】
以下に、(D1)の純パラジウムめっき浴で還元型無電解パラジウムめっき処理する方法について説明する。純パラジウムめっき浴は、パラジウム化合物、還元剤及び錯化剤を必須成分として含有する水溶液からなる。本発明では、該純パラジウムめっき浴へ、分散剤及び前記ニッケル被覆粒子を含有させ還元型無電解パラジウムめっき処理を行う。
【0071】
前記パラジウム化合物としては、めっき液に可溶であって、所定の濃度の水溶液が得られるものであれば特に制限はない。例えば、硫酸パラジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、ジクロロジエチレンジアミンパラジウム、テトラアミンパラジウムジクロライド等の水溶性パラジウム化合物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。また、パラジウム化合物として、パラジウムを溶液化したパラジウム溶液を用いることもできる。パラジウム溶液としては、例えば、ジクロロジエチレンジアミンパラジウム溶液やテトラアンミンパラジウムジクロライド溶液を使用することができる。純パラジウムめっき浴におけるパラジウム化合物の含有量は、パラジウムとして好ましくは0.1〜30g/L、更に好ましくは0.3〜10g/Lである。
【0072】
還元剤はギ酸又はその塩が用いられる。純パラジウムめっき浴における還元剤の含有量は、好ましくは0.1〜100g/L、更に好ましくは1〜50g/Lである。
【0073】
錯化剤としては、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類;エチレンジアミンジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等のアミノポリカルボン酸、これらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等;グリシン、アラニン、イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸2酢酸、L−アスパラギン酸、タウリン等のアミノ酸、これらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等;アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、これらのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等を配合することができる。錯化剤は1種単独又は2種以上混合して用いることができる。純パラジウムめっき浴における錯化剤の含有量は、0.5〜100g/L程度とすることが好ましく、5〜50g/L程度とすることが一層好ましい。
【0074】
分散剤としては、例えば非イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤及び水溶性高分子が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンエーテル系の界面活性剤を用いることができる。両性イオン界面活性剤としては、アルキルジメチル酢酸ベタイン、アルキルジメチルカルボキシメチル酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのベタイン系の界面活性剤を用いることができる。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジノン、ヒドロキシエチルセルロースなどを用いることができる。分散剤の使用量は、その種類にもよるが、一般に、液体(純パラジウムめっき浴)の体積に対して0.5〜30g/Lである。特に分散剤の使用量が液体(純パラジウムめっき浴)の体積に対して1〜10g/Lの範囲であると、パラジウム皮膜の密着性が向上し、更に凝集粒子の生成を抑制する効果が高くなる観点から好ましい。
【0075】
前記無電解パラジウムめっき反応のpHは、3〜10、特に4〜7であると、安定した析出速度が得られるので好ましい。pH調整には、例えば硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アンモニア水等を使用することができる。反応温度は20〜90℃、特に40〜80℃であると、平滑で緻密な皮膜が得られる観点から好ましい。
【0076】
なお、純パラジウムめっき浴は、安定剤等の常用の添加剤が含有されていてもよい。そのような添加剤を含有する純パラジウムめっき浴としては例えば、日本カニゼン株式会社、小島化学薬品株式会社、中央化学産業株式会社等から市販されている市販品を用いてもよい。
【0077】
次に、(D2)の還元剤として次亜リン酸又はその塩を用いる還元型無電解パラジウムめっき方法について説明する。(D2)のめっき浴としては、パラジウム−リンめっき浴が用いられる。該パラジウム−リンめっき浴は、パラジウム化合物、次亜リン酸又はその塩の還元剤及び錯化剤を必須成分として含有する水溶液からなる。本発明では、該パラジウム−リンめっき浴と、分散剤及び前記ニッケル被覆粒子とを混合して、還元型無電解パラジウムめっき処理を行う。
【0078】
パラジウム化合物、還元剤、錯化剤及び分散剤としては、前述した(D1)の還元型無電解パラジウムめっき方法と同じものを、同様な添加量で用いることができる。
【0079】
(D2)の還元型パラジウムめっき方法では、パラジウムイオンに対する還元剤の配合量を特定範囲に調整することで、パラジウム皮膜中のリン含有量が調整される。通常、パラジウム皮膜中のリン含有量は、パラジウムイオンに対する還元剤の次亜リン酸又はその塩の配合量が多くなるにしたがって多くなる。(D2)の還元型無電解パラジウムめっきでは、パラジウムイオンに対する還元剤のモル比を、従来に比べて低い範囲に設定することが好ましい。すなわち、パラジウムイオンに対する還元剤のモル比を0.1〜100に設定して還元型無電解パラジウムめっき処理することで、パラジウム皮膜中のリン含有量を3重量%以下、好ましくは0.5〜3重量%に調整する。パラジウムイオンに対する還元剤の添加量がモル比で0.1より小さくなると、析出速度が低下し実用的でなく、一方、100より大きくなると、前述したようにパラジウム皮膜中のリン含有量が5重量%より大きくなり、リン含有量が3重量%以下のパラジウム皮膜が得られない。特に、本発明では、パラジウムイオンに対する還元剤のモル比が1〜30の範囲であることが好ましい。
【0080】
前記無電解パラジウム−リンめっき反応のpHは、好ましくは5〜10、更に好ましくは5.5〜9とする。pHをこの範囲内に設定することで、めっき液の安定性が高くなり、またパラジウム皮膜にクラック等の欠陥が発生しづらくなる。pHの調整には、例えば硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アンモニア水等を使用することができる。反応温度が25〜80℃、特に40〜70℃であると平滑で緻密な皮膜が得られる観点から好ましい。
【0081】
なお、パラジウム−リンめっき浴には安定剤等の常用の添加剤が含有されていてもよい。そのような添加剤を含有するパラジウム−リンめっき浴としては例えば、小島化学薬品株式会社、石原薬品株式会社等で市販されている市販品を用いてもよい。
【0082】
次いで、(D3)の置換型無電解パラジウムめっき方法について説明する。(D3)の置換型無電解パラジウムめっき処理する方法では、パラジウムイオンとニッケルイオンとの置換反応により置換型無電解パラジウムめっきしてニッケル被覆粒子にパラジウムめっき皮膜を形成する。
【0083】
置換型無電解パラジウムめっき浴は、パラジウム化合物及び錯化剤を必須成分として含有する水溶液からなる。本発明では、該置換型無電解パラジウムめっき浴へ分散剤及び前記ニッケル被覆粒子を含有させて置換型無電解パラジウムめっき処理を行う。
【0084】
パラジウム化合物、錯化剤及び分散剤は、前述した(D1)の還元型無電解パラジウムめっき方法と同じものを同様な添加量で用いることができる。パラジウム化合物として、特にテトラアンミンパラジウム塩を用いた場合には、緻密なパラジウム皮膜が得られるので好ましい。
【0085】
置換型無電解パラジウムめっき反応を、pH3〜10、特に4〜8で行うと、平滑で緻密な皮膜が得られやすいので好ましい。pH調整には、例えば硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アンモニア水等を使用することができる。反応温度は25〜80℃、特に30〜70℃であることが、反応速度が実用的な程度に速くなり、また緻密なパラジウム皮膜が得られやすい点から好ましい。
【0086】
前記(D1)〜(D3)のめっき反応終了後、常法により濾過分離、乾燥して、導電性粉体を得る。必要により、導電性粉体を、前記ニッケル被覆粒子の製法で述べた、ボールミルを用いた粉砕工程に付することもできる。この粉砕工程に付することによって、導電性粉体の重量に対する一次粒子が占める割合を、上述した範囲内に更に容易に設定することができる。
【0087】
このようにして得られた本発明の導電性粒子は、例えば異方導電フィルム(ACF)やヒートシールコネクタ(HSC)、液晶ディスプレーパネルの電極を駆動用LSIチップの回路基板へ接続するための導電材料などとして好適に使用される。特に、本発明の導電性粉体は、導電性接着剤の導電性フィラーとして好適に用いられる。
【0088】
前記の導電性接着剤は、導電性基材が形成された2枚の基板間に配置され、加熱加圧によって前記導電性基材を接着して導通する異方導電性接着剤として好ましく用いられる。この異方導電性接着剤は、本発明の導電性粒子と接着剤樹脂とを含む。接着剤樹脂としては、絶縁性で、かつ接着剤樹脂として用いられているものであれば、特に制限なく使用できる。熱可塑性樹脂及び熱硬化性のいずれであってもよく、加熱によって接着性能が発現するものが好ましい。そのような接着剤樹脂には、例えば熱可塑性タイプ、熱硬化性タイプ、紫外線硬化タイプ等がある。また、熱可塑性タイプと熱硬化性タイプとの中間的な性質を示す、いわゆる半熱硬化性タイプ、熱硬化性タイプと紫外線硬化タイプとの複合タイプ等がある。これらの接着剤樹脂は被着対象である回路基板等の表面特性や使用形態に合わせて適宜選択できる。特に、熱硬化性樹脂を含んで構成される接着剤樹脂が、接着後の材料的強度に優れる点から好ましい。
【0089】
接着剤樹脂としては、具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−イソブチルアクリレート共重合体、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、SBSブロック共重合体、カルボキシル変性SBS共重合体、SIS共重合体、SEBS共重合体、マレイン酸変性SEBS共重合体、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、カルボキシル変性クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソブチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(以下、NBRと表す。)、カルボキシル変性NBR、アミン変性NBR、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂又はシリコーン樹脂などから選ばれる1種又は2種以上の組み合わせにより得られるものを主剤として調製されたものが挙げられる。これらのうち、熱可塑性樹脂としては、スチレン−ブタジエンゴムやSEBSなどがリワーク性に優れるので好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましい。これらのうち接着力が高く、耐熱性、電気絶縁性に優れ、しかも溶融粘度が低く、低圧力で接続が可能であるという利点から、エポキシ樹脂が最も好ましい。
【0090】
前記のエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多価エポキシ樹脂であれば、一般に用いられているエポキシ樹脂が使用可能である。具体的なものとしては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、レゾルシン、ビスヒドロキシジフェニルエーテル等の多価フェノール類、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン等のポリアミノ化合物、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸等の多価カルボキシ化合物等とエピクロルヒドリン又は2−メチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジル型のエポキシ樹脂が例示される。また、ジシクロペンタジエンエポキサイド、ブタジエンダイマージエポキサイド等の脂肪族及び脂環族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0091】
なお、上述した各種の接着樹脂は、不純物イオン(NaやCl等)や加水分解性塩素などが低減された高純度品を用いることが、イオンマイグレーションの防止の観点から好ましい。
【0092】
異方導電性接着剤における本発明の導電性粒子の使用量は、接着剤樹脂成分100重量部に対し通常0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜25重量部、より好ましくは1〜20重量部である。導電性粒子の使用量がこの範囲内にあることにより、接続抵抗や溶融粘度が高くなることが抑制され、接続信頼性を向上させ、接続の異方性を十分に確保することができる。
【0093】
前記の異方導電性接着剤には、上述した導電性粒子及び接着剤樹脂の他に、当該技術分野において、公知の添加剤を配合することができ、その配合量も当該技術分野において公知の範囲内とすることができる。他の添加剤としては、例えば粘着付与剤、反応性助剤、エポキシ樹脂硬化剤、金属酸化物、光開始剤、増感剤、硬化剤、加硫剤、劣化防止剤、耐熱添加剤、熱伝導向上剤、軟化剤、着色剤、各種カップリング剤又は金属不活性剤などを例示することができる。
【0094】
粘着付与剤としては、例えばロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂、クマロン−インデン樹脂、スチレン系樹脂、イソプレン系樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。反応性助剤すなわち架橋剤としては、例えばポリオール、イソシアネート類、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウトロピン類、アミン類、酸無水物、過酸化物などが挙げられる。エポキシ樹脂硬化剤としては、1分子中に2個以上の活性水素を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的なものとしては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタフェニレンジアミン、ジシアンジアミド、ポリアミドアミン等のポリアミノ化合物;無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の有機酸無水物;フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック樹脂等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上混合して使用することができる。また、用途や必要に応じて潜在性硬化剤を用いてもよい。使用できる潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等及びこれらの変性物が挙げられる。これらは単独で又は2種以上の混合体として使用できる。
【0095】
前記の異方導電性接着剤は、通常、当業者間において広く使用されている製造装置を用い、本発明の導電性粒子及び接着剤樹脂並びに必要に応じ硬化剤や各種添加剤を配合し、接着剤樹脂が熱硬化性樹脂の場合は有機溶媒中で混合することにより、熱可塑性樹脂の場合は接着剤樹脂の軟化点以上の温度で、具体的には好ましくは約50〜130℃程度、更に好ましくは約60〜110℃程度で溶融混練することにより製造される。このようにして得られた異方導電性接着剤は、塗布してもよいし、フィルム状にして適用してもよい。
【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0097】
〔ニッケル被覆粒子試料N1の調製〕
(1)A1工程
真比重が1.1の球状スチレン−シリカ複合樹脂〔平均粒径3μm、(株)日本触媒製、商品名ソリオスター、変動係数(C.V)3.2%〕を芯材粒子(1Lあたりの表面積の総和5.46m2)として用いた。その9gを、400mLのコンディショナー水溶液(ローム・アンド・ハース電子材料製の「クリーナーコンディショナー231」)に攪拌しながら投入した。コンディショナー水溶液の濃度は40ml/Lであった。引き続き、液温60℃で超音波を与えながら30分間攪拌して芯材粒子の表面改質及び分散処理を行った。水溶液を濾過し、一回リパルプ水洗した芯材粒子を200mLのスラリーにした。このスラリーへ塩化第一錫水溶液200mlを投入した。この水溶液の濃度は5×10-3mol/Lであった。常温で5分攪拌し、錫イオンを芯材粒子の表面に吸着させる感受性化処理を行った。引き続き水溶液を濾過し、1回リパルプ水洗した。次いで芯材粒子を400mlのスラリーにし、60℃に維持した。超音波を併用してスラリーを攪拌しながら、0.11mol/Lの塩化パラジウム水溶液2mLを添加した。そのままの攪拌状態を5分間維持させ、芯材粒子の表面にパラジウムイオンを捕捉させる活性化処理を行った。
【0098】
次いで、20g/Lの酒石酸ナトリウム、5.4g/Lの次亜リン酸ナトリウム、硫酸ニッケル六水和物(無水換算で0.45g/L)、ポリエチレングリコール5g/Lを溶解した水溶液からなる無電解めっき浴3Lを70℃に昇温し、この無電解めっき浴に、パラジウムを担持した芯材粒子9gを投入し、A1工程を開始した。5分間攪拌し水素の発泡が停止するのを確認し、A1工程を完了させた。
【0099】
(2)A2工程
224g/L硫酸ニッケル水溶液と、210g/Lの次亜リン酸ナトリウム及び80g/Lの水酸化ナトリウムを含む混合水溶液とをそれぞれ300mL用い、これらをA1工程で得られた芯材粒子のスラリーに、定量ポンプによって連続的に分別添加し、無電解めっきA2工程を開始した。添加速度はいずれも2.5mL/分とした。なお、滴下開始時から滴下終了までのpHは5.8〜6.2で、1時間当たりのニッケル析出量は48nmであった。液を全量添加した後、70℃の温度を保持しながら5分攪拌を継続した。次いで液を濾過し、濾過物を3回洗浄した後、100℃の真空乾燥機で乾燥してニッケル−リン合金皮膜を有するニッケル被覆粒子試料N1を得た。
【0100】
〔ニッケル被覆粒子試料N2の調製〕
(1)B1工程
N1作製時に用いた芯材粒子をA1工程と同様の表面改質処理を行い、芯材表面にパラジウムを捕捉させる活性化処理を行った。次いで、20g/Lの酒石酸ナトリウム、4.5g/Lの硫酸ニッケル六水和物、5.4g/Lの次亜リン酸ナトリウム、及び5g/Lのポリエチレングリコールを溶解した水溶液からなる無電解めっき浴3Lを70℃に昇温し、この無電解めっき浴にパラジウムを担持した芯材粒子9gを投入し、B1工程を開始した。5分間攪拌し水素の発泡が停止するのを確認し、B1工程を完了させた。
【0101】
(2)B2工程
224g/Lの硫酸ニッケル水溶液と、210g/Lの次亜リン酸ナトリウム及び80g/Lの水酸化ナトリウムを含む混合水溶液とをそれぞれ300mL用い、これらをB1工程で得られた芯材粒子のスラリーに、定量ポンプによって連続的に分別添加し、無電解めっきB2工程を開始した。添加速度はいずれも2.5mL/分とした。液を全量添加した後、70℃の温度を保持しながら5分攪拌を継続した。次いで液を濾過し、濾過物を3回洗浄した後、100℃の真空乾燥機で乾燥してニッケル−リン合金皮膜を有するニッケル被覆粒子試料N2を得た。
【0102】
〔ニッケル被覆粒子N3の調製(比較品)〕
N1作製時に用いた芯材粒子に対してA1工程と同様の表面改質処理を行い、芯材表面にパラジウムを捕捉した後、65℃に加温した20g/Lの酒石酸ナトリウム及び5g/Lのポリエチレングリコールの入った水溶液3Lに攪拌しながら投入し、充分に攪拌分散させて水性スラリーを調製した後、224g/L硫酸ニッケル水溶液と、210g/Lの次亜リン酸ナトリウム及び80g/Lの水酸化ナトリウムを含む混合水溶液とをそれぞれ300mL用いた。添加速度はそれぞれ5mL/分とした。液を全量添加した後、70℃の温度を保持しながら5分攪拌を継続した。次いで液を濾過し、濾過物を3回洗浄した後、100℃の真空乾燥機で乾燥してニッケル−リン合金皮膜を有するニッケル被覆粒子試料N3を得た。この方法で平滑性に優れた皮膜が得られた。
【0103】
〔ニッケル被覆粒子N4の調製(比較品)〕
N1作製時に用いた芯材粒子に対してA1工程と同様の表面改質処理を行い、芯材表面にパラジウムを捕捉させる活性化処理を行った。次いで、めっき液中にポリエチレングリコールを添加しない以外はN2作製時と同様の操作を行い、ニッケル−リン合金皮膜を有するニッケル被覆粒子試料N4を得た。
【0104】
〔ニッケル被覆粒子の物性評価〕
ニッケル被覆粒子N1〜N4の平均粒径、ニッケル皮膜の厚み、ニッケル皮膜の密着性をそれぞれ測定・評価した。また、高さが50nm以上の突起部芯体の個数、高さが50nmの突起部芯体のアスペクト比をそれぞれ測定した。各物性評価は次の方法によって行った。それらの結果を表1に示す。
【0105】
〔ニッケル皮膜の厚み〕
ニッケル被覆粒子を王水に浸漬してニッケル皮膜を溶解し、皮膜成分をICP又は化学分析し、以下の式(3)及び(4)からニッケル皮膜の厚みを算出した。
A=[(r+t)3―r3]d1/r32 (3)
A=W/(100−W) (4)
式中、rは芯材粒子の半径(μm)、tはニッケル皮膜の厚み、d1はニッケル皮膜の比重、d2は芯材粒子の比重、Wはニッケル含有率(重量%)である。
【0106】
〔突起部芯体の個数及びアスペクト比〕
SEMを用い、ニッケル被覆粒子を30000倍に拡大して10視野を観察し、ニッケル被覆粒子1個が有する高さ50nm以上の突起部芯体の個数、及び高さ50nm以上の突起部芯体についてアスペクト比の平均値を算出した。
【0107】
〔ニッケル皮膜の密着性〕
100mLのビーカーにニッケル被覆粒子2g及び直径1mmのジルコニアビーズ90gを入れ、更にトルエンを10mL入れた。攪拌装置で10分攪拌した後、ジルコニアビーズとスラリーを分離し乾燥させた。乾燥後のニッケル被覆粒子を、SEMを用いて2000倍に拡大して10視野を観察し、攪拌によって生じた剥離片の個数の平均値を算出した。剥離片の個数10個未満を○とし、10〜30個を△、30個超を×とした。
【0108】
【表1】

【0109】
〔実施例1ないし3〕
10g/LのEDTA−2Na、10g/Lのクエン酸―2Na及び20g/Lのテトラアンミンパラジウム塩酸塩(Pd(NH34Cl2)溶液(パラジウムとして2g/L)、カルボキシメチルセルロース(分子量250000、エーテル化度0.9)100ppmからなる無電解パラジウムめっき液を調製した。このパラジウムめっき液0.65リットル(実施例1)、1.3リットル(実施例2)、2.6リットル(実施例3)を70℃に加熱した。これを攪拌しながら、前記で得られたニッケル被覆粒子試料(N1)10gを添加した。これによって粒子の表面に無電解めっき処理を行った。処理時間は60分とした。処理の完了後、液を濾過し、濾過物を3回リパルプした。次いで110℃の真空乾燥機で乾燥した。このようにして、ニッケル−リン合金皮膜上にパラジウムめっき被覆処理を施した。
【0110】
〔実施例4〕
10g/Lのエチレンジアミン、10g/Lのギ酸ナトリウム及び20g/Lのテトラアンミンパラジウム塩酸塩(Pd(NH34Cl2)溶液(パラジウムとして2g/L)、カルボキシメチルセルロース(分子量250000、エーテル化度0.9)100ppmからなる無電解純パラジウムめっき液を調製した。このパラジウムめっき液1.3Lを70℃に加熱し、これを攪拌しながら前記で得られたニッケル被覆粒子試料(N1)10gを添加した。これによって粒子の表面に無電解めっき処理を行った。処理時間は30分とした。処理の完了後、液をろ別し、以後は実施例1と同様の工程を行い、ニッケル−リン合金皮膜上にパラジウムめっき被覆処理を施した。
【0111】
〔実施例5〕
10g/Lのエチレンジアミン、50g/Lの次亜リン酸ナトリウム及び20g/Lのテトラアンミンパラジウム塩酸塩Pd(NH34Cl2)溶液(パラジウムとして2g/L)、カルボキシメチルセルロース(分子量250000、エーテル化度0.9)100ppmからなる無電解パラジウム−リンめっき液を調整した。このパラジウムめっき液1.3Lを50℃に加熱し、これを攪拌しながら上記で得られたニッケル被覆粒子試料(N1)10gを添加した。これによって粒子の表面に無電解めっき処理を行った。処理時間は30分とした。処理の完了後、液をろ別し、以後は実施例1と同様の工程を行い、ニッケル−リン合金皮膜上にパラジウムめっき被覆処理を施した。
【0112】
〔実施例6及び7〕
次亜リン酸ナトリウムの濃度を10g/L(実施例6)25g/L(実施例7)とする以外は実施例5と同様の操作を行い、ニッケル合金皮膜上にパラジウム−リンめっき被覆処理を施した。
【0113】
〔実施例8ないし10〕
ニッケル被覆粒子をN2にする以外は実施例2、実施例4、実施例5と同様の操作を行い、ニッケル−リン合金皮膜上にパラジウム−リンめっき被覆処理を施した。
【0114】
〔比較例1ないし3〕
ニッケル被覆粒子をN3にする以外は実施例2、実施例4、実施例5と同様の操作を行い、ニッケル−リン合金皮膜上にパラジウムめっき被覆又はパラジウム−リンめっき被覆処理を施した。
【0115】
〔比較例4ないし6〕
ニッケル被覆粒子をN4にする以外は実施例2、実施例4、実施例5と同様の操作を行い、ニッケル−リン合金皮膜上にパラジウムめっき被覆又はパラジウム−リンめっき被覆処理を施した。
【0116】
〔比較例7〕
次亜リン酸ナトリウムの濃度を200g/Lとする以外は実施例5と同様の操作を行い、ニッケル合金皮膜上にパラジウム−リンめっき被覆処理を施した。
【0117】
〔参考例1(金めっき)〕
10g/LのEDTA−4Na、10g/Lのクエン酸―2Na及び2.9g/Lのシアン化金カリウム(Auとして2.0g/L)からなる無電解金めっき液を調製した。この金めっき液2リットルを79℃に加熱し、これを攪拌しながら、ニッケル被覆粒子N110gを添加した。これによって粒子の表面に無電解めっき処理を行った。処理時間は20分とした。処理の完了後、液を濾過し、濾過物を3回リパルプした。次いで110℃の真空乾燥機で乾燥した。このようにして、ニッケル−リン合金皮膜上に金めっき被覆処理を施した。
【0118】
〔導電性粉体の物性評価〕
実施例、比較例及び参考例で得られた導電性粒子の平均粒径、ニッケル皮膜の厚み、パラジウム皮膜の厚み、金皮膜の厚み、パラジウム皮膜中のリン含有量、高さ50nm以上の突起部の個数、高さ50nm以上の突起部のアスペクト比、一次粒子が占める割合をそれぞれ測定・評価した。それらの結果を、以下の表2に示す。また、パラジウム皮膜又は金皮膜の密着性、導電性、ショートの発生(電気信頼性)、抵抗値をそれぞれ測定・評価した。それらの結果を、以下の表3に示す。なお、導電性粒子の粒径、高さ50nm以上の突起部の個数、高さ50nm以上の突起部のアスペクト比、パラジウム皮膜又は金皮膜の密着性は前記ニッケル被覆粒子と同様な方法で測定・評価した。また、ニッケル皮膜の厚み、パラジウム皮膜又は金皮膜の厚み、パラジウム皮膜中のリン含有量、導電性、ショートの発生(電気信頼性)、抵抗値は以下のように測定・評価した。
【0119】
〔パラジウムめっき又は金めっき後のニッケル皮膜の厚み〕
導電性粒子を王水に浸漬して金属皮膜を溶解し、皮膜成分をICP又は化学分析し、以下の式(5)及び(6)からニッケル皮膜の厚みを算出した。
A=[(r+t)3―r3]d1/r32 (5)
A=W/(100−X) (6)
式中、rは芯材粒子の半径(μm)、tはニッケル皮膜の厚み、d1はニッケル皮膜の比重、d2は芯材粒子の比重、Wはニッケル含有率(重量%)Xは金又はパラジウムの含有率である。
【0120】
〔金皮膜・パラジウム皮膜の厚み〕
導電性粒子を王水に浸漬して、ニッケル、金又はパラジウム皮膜を溶解し皮膜成分をICP又は化学分析し、以下の(7)及び(8)から金又はパラジウム皮膜の厚みを算出した。
B=[(r+t+u)3−(r+t)3]d3/(r+t)34 (7)
B=X(100−X) (8)
式中、uは金、又はパラジウムの厚み、d3は金、又はパラジウム皮膜の比重、d4はNi品の比重、Xは金、又はパラジウムの含有率(重量%)である。ここで、Ni品の比重d4は計算式を使用している。比重は以下の(9)の計算式を用いて算出した。
4=100/[(W/d1)+(100−W)/d2] (9)
【0121】
〔パラジウム皮膜中のリン含有量〕
パラジウム被覆前のニッケル粒子を王水に浸漬してニッケル皮膜を溶解し皮膜成分をICP又は化学分析し、金属化率を算出した。更にパラジウム被覆後の粒子のニッケル、パラジウム皮膜を溶解後皮膜成分をICP又は化学分析し、金属化率を算出し、以下の式によりパラジウム皮膜中のリン含有率を算出した。
ニッケル被覆粒子中のリン含有量(g)
C=V×Y1/100 (10)
パラジウム被覆粒子中のリン含有量(g)
D=V/(1−W/100)×Y2/100 (11)
パラジウム被覆粒子中のパラジウム含有量(g)
E=V/(1−W/100)−V (12)
よってパラジウム皮膜中のリン含有率E(重量%)は
F=(D−C)/(D−C+E)×100 (13)
ここで、Vはパラジウム処理前のニッケル被覆粒子の重量(g)、Y1はニッケル被覆粒子のリン含有率(重量%)、Y2はパラジウム被覆粒子のリン含有率(重量%)、Wはパラジウムの金属化率である。ただし、ここで、ニッケル皮膜からのニッケル及びリンの溶出は非常に少なかったため0として計算した。
【0122】
〔導電性、ショートの発生(電気信頼性)、抵抗値〕
エポキシ樹脂100部、硬化剤150部、トルエン70部を混合し、絶縁性接着剤を調製した。これに導電性粒子15部を配合してペーストを得た。バーコーターを用い、このペーストをシリコーン処理ポリエステルフィルム上に塗布し乾燥させた。得られた塗工フィルムを用い、全面をアルミニウムで蒸着したガラスと50μmピッチに銅パターンを形成したポリイミドフィルム基板との間の接続を行った。そして電極間の導通抵抗を測定することで、導電性粒子の導電性を評価した。評価は抵抗値2Ω以下を○とし、2〜5Ωを△、5Ω以上を×とした。また、ショート発生の有無も観察した。更に85℃・85%RHの条件で500h保持後に測定した抵抗値も測定した。
【0123】
【表2】

【0124】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材粒子の表面にニッケル又はニッケル合金皮膜が形成されたニッケル被覆粒子表面に、更にパラジウム又はパラジウム合金皮膜が形成された導電性粒子からなる導電性粉体であって、
前記導電性粒子は、パラジウム又はパラジウム合金皮膜表面から突出し、かつ該パラジウム又はパラジウム合金皮膜と連続体になっている、高さが50nm以上である突起部を粒子1個当たり5個以上有し、
前記パラジウム又はパラジウム合金皮膜中のリン含有量が3重量%以下であり、
前記導電性粉体においては、前記導電性粒子のうち、一次粒子が占める割合が、導電性粉体の重量に対して85重量%以上であることを特徴とする導電性粉体。
【請求項2】
高さ50nm以上の前記突起部は、アスペクト比が1.0以上である請求項1記載の導電性粉体。
【請求項3】
前記パラジウム又はパラジウム合金皮膜の厚みが5〜500nmである請求項1又は2記載の導電性粉体。
【請求項4】
前記ニッケル又はニッケル合金皮膜の厚みが10〜300nmである請求項1ないし3のいずれかに記載の導電性粉体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の導電性粉体と絶縁性樹脂とを含む導電性材料。
【請求項6】
芯材粒子の表面に、ニッケル又はニッケル合金皮膜が形成され、該皮膜の表面から突出し、かつ該皮膜と連続体になっている、高さが50nm以上である突起部芯体を粒子1個当たり5個以上有するニッケル被覆粒子を、分散剤の存在下に、下記の(D1)ないし(D3)のいずれかの方法で、無電解パラジウムめっき処理することを特徴とする導電性粒子の製造方法。
(D1)純パラジウムめっき浴で還元型無電解パラジウムめっき処理する方法。
(D2)還元剤として次亜リン酸又はその塩を用いる還元型無電解パラジウムめっき処理において、パラジウムイオンに対する還元剤のモル比を0.1〜100として還元型無電解パラジウムめっき処理する方法。
(D3)置換型無電解パラジウムめっき処理する方法。
【請求項7】
前記芯材粒子を無電解ニッケルめっき処理して、該芯材粒子の表面に、ニッケル又はニッケル合金の突起部芯体と、該突起部芯体と連続体になっている、ニッケル又はニッケル合金皮膜とを形成し、前記ニッケル被覆粒子を得る請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
分散剤及びニッケルイオンを含む無電解ニッケルめっき浴と、表面に貴金属が担持された前記芯材粒子とを混合して、該芯材粒子の表面にニッケル初期薄膜層を形成するに際し、ニッケルイオンの濃度が0.0001〜0.008モル/リットルに調整された該無電解ニッケルめっき浴1リットルに対して、表面積の総和が1〜15m2となるような量の該芯材粒子を用いるA1工程と、
A1工程において得られた、ニッケル初期薄膜層を有する前記芯材粒子、及び前記分散剤を含む水性スラリーを、該分散剤の分散効果が発現するpH範囲に維持しつつ、該水性スラリーに、1時間当たりのニッケルの析出量が25〜100nmとなる量に相当する量のニッケルイオン及び還元剤を経時的に添加するA2工程と、
を行い、前記ニッケル被覆粒子を得る請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記芯材粒子の水性スラリーと、分散剤、ニッケル塩、還元剤及び錯化剤を含む無電解ニッケルめっき浴とを混合し、無電解ニッケルめっき処理するB1工程と、
(i)ニッケル塩、還元剤及びアルカリのうちの1種を含む第1の水溶液と、残りの2種を含む第2の水溶液を用いるか、又は(ii)ニッケル塩を含む第1の水溶液と、還元剤を含む第2の水溶液と、アルカリを含む第3の水溶液とを用い、これらの水溶液をそれぞれを同時にかつ経時的に、B1工程の液に添加して無電解ニッケルめっき処理するB2工程と、
を行い、前記ニッケル被覆粒子を得る請求項7記載の製造方法。
【請求項10】
前記無電解パラジウムめっき処理で用いる前記分散剤として、非イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤又は水溶液高分子を用いる請求項6ないし9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記芯材粒子として樹脂粒子を用いる請求項6ないし10のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−159471(P2011−159471A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19363(P2010−19363)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】