説明

導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体

【課題】電極間を接続した場合に、接続抵抗を低く、かつ接続信頼性を高くできる樹脂粒子及び導電性粒子を提供。
【解決手段】下記2種のアクリルモノマーを共重合させて得られた樹脂粒子[A:80重量%以上、B:10重量%以下含有]、及び該樹脂粒子と導電層とを有する導電性粒子。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマーを共重合させることにより得られた樹脂粒子であって、例えば、接続対象部材の電極間を接続するための導電性粒子を得るのに用いられる樹脂粒子、並びに該樹脂粒子を用いた導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム又は異方性導電シート等の異方性導電材料が広く知られている。これらの異方性導電材料では、ペースト、インク又は樹脂中に導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続、又はICチップとITO電極を有する回路基板との接続等に使用されている。例えば、ICチップの電極と回路基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後、加熱及び加圧することにより、これらの電極同士を接続できる。
【0004】
上記異方性導電材料に用いられる導電性粒子の一例として、下記の特許文献1,2には、樹脂粒子の表面が導電層により被覆されている導電性粒子が開示されている。
【0005】
下記の特許文献1に記載の樹脂粒子は、主成分としてのスチレンと、少量の多官能性単量体とを共重合させることにより得られた架橋重合体である。
【0006】
また、下記の特許文献2に記載の樹脂粒子の主成分は、アクリル樹脂である。このアクリル樹脂は、ウレタン化合物と、アクリル酸エステルとを含有するモノマー混合物の重合体である。この樹脂粒子の最大圧縮変形率は60%以上である。また、この樹脂粒子を60%圧縮変形するのに必要な荷重は60mN以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平5−19241号公報
【特許文献2】国際公開第03/104285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
導電性粒子又は該導電性粒子を含む異方性導電材料を用いて、回路基板や電子部品の電極間を接続する際には、電極間に挟まれた導電性粒子に圧縮荷重がかけられる。導電性粒子は圧縮されて変形する。このとき、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなるように、導電性粒子は充分に変形しなければならない。従って、圧縮弾性率が低い導電性粒子が求められている。
【0009】
また、電極間を接続した後には、圧縮荷重は取り除かれる。このとき、変形した導電性粒子が変形前の形状にある程度回復しなければ、電極と導電性粒子との界面にわずかな隙間が生じ、電極間の電気的な接続不良が生じたり、電極間の接続抵抗が高くなったりする。
【0010】
特許文献1に記載の導電性粒子は、上記圧縮荷重が取り除かれた後、変形前の形状に充分に回復しないことがあった。すなわち、圧縮変形回復率が低く、電極間の接続抵抗が高くなりやすかった。
【0011】
特許文献2に記載の導電性粒子では、圧縮弾性率を充分に低くし、さらに圧縮変形回復率を充分に高くすることはできなかった。このため、上記導電性粒子により電極間を接続した場合、導電性粒子と電極との接触面積が充分に大きくならないことがあった。また、上記圧縮荷重が取り除かれた導電性粒子が、変形前の形状に充分に回復しないことがあった。このため、電極間の電気的な接続不良が生じやすかった。従って、電極間の接続信頼性を充分に高くすることはできなかった。
【0012】
本発明の目的は、例えば導電性粒子を形成するのに用いられ、該導電性粒子により電極間を接続した場合に、接続抵抗を低くすることができ、かつ接続信頼性を高くすることができる樹脂粒子、並びに該樹脂粒子を用いた導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、少なくとも2種のモノマーを共重合させることにより得られた樹脂粒子であって、前記モノマーが、下記式(A)で表されるアクリルモノマーと、下記式(B)で表されるアクリルモノマーとを含有し、前記モノマーの合計100重量%中、前記式(A)で表されるアクリルモノマーの含有量が80重量%以上、前記式(B)で表されるアクリルモノマーの含有量が10重量%以下である、樹脂粒子が提供される。
【0014】
【化1】

【0015】
上記式(A)中、mは1又は2の整数を表し、nは4〜6の整数を表し、R1及びR2はそれぞれ水素原子又はメチル基を表す。
【0016】
【化2】

【0017】
上記式(B)中、pは2〜6の整数を表し、qは4〜6の整数を表し、R3は水素原子又はメチル基を表す。
【0018】
本発明に係る樹脂粒子のある特定の局面では、前記モノマーは、下記式(C)で表されるアクリルモノマーをさらに含有する。
【0019】
【化3】

【0020】
上記式(C)中、xは4〜6の整数を表し、R4は水素原子又はメチル基を表す。
【0021】
本発明に係る樹脂粒子の他の特定の局面では、圧縮変形回復率は80%以上である。
【0022】
本発明に係る樹脂粒子のさらに他の特定の局面では、圧縮弾性率(20%K値)は1000〜4000mN/mmの範囲内にある。
【0023】
本発明に係る導電性粒子は、本発明に従って構成された樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面を被覆している導電層とを有する。
【0024】
本発明に係る異方性導電材料は、本発明に従って構成された導電性粒子と、バインダー樹脂とを含有する。
【0025】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、前記接続部が、本発明に従って構成された導電性粒子、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料により形成されている。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る樹脂粒子は、上記式(A)で表されるアクリルモノマーと、上記式(B)で表されるアクリルモノマーとを上記特定の割合で含有するモノマーを共重合させることにより得られているため、導電性粒子を形成するのに用いられ、該導電性粒子により電極間を接続した場合に、電極間の接続抵抗を低くすることができる。さらに、電極間の接続信頼性を高くすることができる。
【0027】
本発明に係る導電性粒子は、上記式(A)で表されるアクリルモノマーと、上記式(B)で表されるアクリルモノマーとを上記特定の割合で含有するモノマーを共重合させることにより得られた樹脂粒子の表面が、導電層により被覆されているため、電極間の接続に用いられた場合に、接続抵抗を低く、かつ接続信頼性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る導電性粒子が用いられた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
(樹脂粒子)
本発明に係る樹脂粒子は、少なくとも2種のモノマーを共重合させることにより得られた樹脂粒子である。上記モノマーは、下記式(A)で表されるアクリルモノマー(以下、アクリルモノマーAと略記することがある)と、下記式(B)で表されるアクリルモノマー(以下、アクリルモノマーBと略記することがある)とを、必須成分として含有する。上記モノマーの合計100重量%中に、上記アクリルモノマーAは80重量%以上含有される。上記モノマーの合計100重量%中に、上記アクリルモノマーBは10重量%以下含有される。
【0031】
【化4】

【0032】
上記式(A)中、mは1又は2の整数を表し、nは4〜6の整数を表し、R1及びR2はそれぞれ水素原子又はメチル基を表す。上記式(A)中のnは、4であることが好ましい。
【0033】
【化5】

【0034】
上記式(B)中、pは2〜6の整数を表し、qは4〜6の整数を表し、R3は水素原子又はメチル基を表す。上記式(B)中のqは、4であることが好ましい。
【0035】
上記アクリルモノマーAとして、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、CHCHCOO(CO)COCHCH、又はCHCHCOO(C12O)COCHCH等が挙げられる。上記アクリルモノマーAは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0037】
上記アクリルモノマーBとして、例えば、HO(CO)COCHCH、HO(CO)COCHCH、HO(CO)COCHCH、HO(C12O)COCHCH、HO(C12O)COCHCH、又はHO(C12O)COCHCH等が挙げられる。上記アクリルモノマーBは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
樹脂粒子を得る際に用いられる上記モノマーは、上記アクリルモノマーA及び上記アクリルモノマーBに加えて、下記式(C)で表されるアクリルモノマー(以下、アクリルモノマーCと略記することがある)をさらに含有することが好ましい。上記アクリルモノマーCが含有される場合、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができ、かつ電極間の接続信頼性をより一層高くすることができる。ただし、上記モノマーは、上記アクリルモノマーCを必ずしも含有する必要はない。
【0039】
【化6】

【0040】
上記式(C)中、xは4〜6の整数を表し、R4は水素原子又はメチル基を表す。上記式(C)中のxは、上記式(A)中のnと同じ数であることが好ましい。また、上記式(C)中のxは4であることが好ましい。
【0041】
上記アクリルモノマーCとして、例えば、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート又は6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記アクリルモノマーCは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
樹脂粒子を得る際に用いられる上記モノマーは、上記アクリルモノマーA〜C以外の他のモノマーを含有してもよい。上記モノマーは、上記他のモノマーを含有してもよく、含有しなくてもよい。上記他のモノマーは、アクリルモノマーであってもよく、アクリルモノマー以外のモノマーであってもよい。
【0043】
上記モノマーの合計100重量%中に、上記アクリルモノマーAは80重量%以上含有される。上記アクリルモノマーAの含有量が80重量%以上であることにより、樹脂粒子の柔軟性を高くすることができ、しかも樹脂粒子の圧縮変形回復率を高くすることができる。このため、電極間の接続抵抗を低くすることができ、かつ電極間の接続信頼性を高くすることができる。上記アクリルモノマーAの含有量が80重量%未満であると、架橋点間距離が比較的長い上記アクリルモノマーAに由来する骨格が少なくなるため、樹脂粒子の圧縮変形回復率が低くなりやすい。上記モノマーの合計100重量%中の上記アクリルモノマーAの含有量の好ましい下限は85重量%であり、好ましい上限は94重量%であり、より好ましい上限は91重量%である。
【0044】
なお、上記「モノマーの合計100重量%」とは、上記アクリルモノマーA及び上記アクリルモノマーBと、必要に応じて配合される上記アクリルモノマーC及び上記他のモノマーの合計100重量%を意味する。
【0045】
上記モノマーの合計100重量%中に、上記アクリルモノマーBは10重量%以下含有される。上記アクリルモノマーBの含有量が10重量%以下であることにより、樹脂粒子の柔軟性と圧縮変形回復率とをいずれも、高くすることができる。なお、上記アクリルモノマーBの含有量が多いほど、モノマーを共重合させる際に、架橋点が少なくなりやすく、従って樹脂粒子の圧縮変形回復率が低くなりやすい。
【0046】
上記モノマーの合計100重量%中の上記アクリルモノマーBの含有量の好ましい下限は6重量%である。上記アクリルモノマーBが6重量%以上含有される場合、樹脂粒子の柔軟性をより一層高くすることができる。
【0047】
樹脂粒子を得る際に上記アクリルモノマーCが用いられる場合、上記モノマーの合計100重量%中の上記アクリルモノマーCの含有量の好ましい下限は3重量%であり、好ましい上限は9重量%である。上記アクリルモノマーCの含有量が3重量%未満であると、樹脂粒子の柔軟性が低くなることがある。上記アクリルモノマーCの含有量が9重量%を超えると、樹脂粒子の圧縮変形回復率が低くなることがある。
【0048】
上記樹脂粒子の圧縮変形回復率は、80%以上であることが好ましい。上記圧縮変形回復率が低すぎると、圧縮荷重が取り除かれた後に、樹脂粒子が変形前の形状に充分に回復しないことがある。このため、電極間を接続した場合に、電極と導電性粒子との間にわずかな隙間が形成され、電極間の電気的な接続不良が生じたり、電極間の接続抵抗が高くなったりすることがある。
【0049】
上記圧縮変形回復率は、以下のようにして求めることができる。
【0050】
微小圧縮試験機(島津製作所社製PCT−200)を用いて、原点用荷重値(0.4mN)から、反転圧縮荷重値10mNに達するまで、0.3mN/秒の荷重負荷速度で、ダイヤモンド製の四角柱の平滑な端面(50μm×50μm)により樹脂粒子に負荷を与える。反転圧縮荷重値10mNに達した後、60秒間圧縮状態を保持する。その後、原点用荷重値(0.4mN)に達するまで、0.3mN/秒の荷重徐荷速度で樹脂粒子への負荷を解放する。このときの圧縮変位を測定し、得られた測定値から、下記式により圧縮変形回復率を求めることができる。
【0051】
圧縮変形回復率(%)=[(L1−L2)/L1]×100
L1:負荷を与えるときの原点用荷重値から反転圧縮荷重値に至るまでの圧縮変位(mm)
L2:負荷を解放するときの反転圧縮荷重値から原点用荷重値に至るまでの圧縮変位(mm)
【0052】
本発明に係る樹脂粒子の粒子径が20%変位したときの上記樹脂粒子の圧縮弾性率(20%K値)は、1000〜4000mN/mmの範囲内にあることが好ましい。上記圧縮弾性率(20%K値)の好ましい下限は1200mN/mmであり、好ましい上限は3000mN/mmである。上記圧縮弾性率(20%K値)が小さすぎると、樹脂粒子の柔軟性が高くなりすぎることがある。このため、樹脂粒子の表面が導電層により被覆された導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料を用いて電極間を接続する際に、導電性粒子と電極との間のバインダー樹脂を充分に排除できないことがある。上記圧縮弾性率(20%K値)が大きすぎると、樹脂粒子の柔軟性が低すぎて、導電性粒子により電極が損傷するおそれがある。
【0053】
上記圧縮弾性率(20%K値)は、以下のようにして求めることができる。
【0054】
微小圧縮試験機(島津製作所社製PCT−200)を用いて、荷重負荷速度0.3mN/秒で、ダイヤモンド製の四角柱の平滑な端面(50μm×50μm)により樹脂粒子を圧縮する。このときの荷重値及び圧縮変位を測定する。得られた測定値から、樹脂粒子が20%圧縮変形したときの上記圧縮弾性率(20%K値)を下記式により求めることができる。
【0055】
K値(mN/mm)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2
F:樹脂粒子が20%圧縮変形したときの荷重値(mN)
S:樹脂粒子が20%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:樹脂粒子の半径(mm)
【0056】
上記20%K値は、樹脂粒子の硬さを普遍的かつ定量的に表す。該20%K値を用いることにより、樹脂粒子の硬さを定量的かつ一義的に表すことができる。
【0057】
上記樹脂粒子を得る際の重合方法は特に限定されない。重合方法として、具体的には、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、シード重合法又は分散シード重合法等の従来公知の重合方法が挙げられる。なかでも、粒子径が均一な樹脂粒子を得ることができ、樹脂粒子の分級を行わなくてもよいため、シード重合法が好ましい。
【0058】
上記シード重合法では、例えば、シード粒子を分散した水中に、上記モノマーを含有するエマルジョンと、重合開始剤を含有するエマルジョンとを添加する。次に、上記モノマー及び上記重合開始剤を上記シード粒子に吸収させる。その後、上記モノマーを共重合させる。
【0059】
上記重合開始剤は、油溶性重合開始剤であることが好ましい。上記重合開始剤は特に限定されない。上記重合開始剤として、例えば、有機過酸化物又はアゾ化合物等が挙げられる。
【0060】
上記有機過酸化物の具体例として、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート又はジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
【0061】
上記アゾ化合物の具体例として、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル又はアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
【0062】
上記モノマーの合計100重量部に対して、上記重合開始剤は0.1〜3重量部の範囲内で用いられることが好ましい。
【0063】
また、上記モノマーの重合の際には、必要に応じて界面活性剤又は分散安定剤等を用いてもよい。
【0064】
上記モノマーの重合に用いられる媒体は、上記モノマーに応じて適宜選択することができ特に限定されない。上記媒体として、例えば、水、アルコール、セロソルブ、ケトン、酢酸エステル又は炭化水素等が挙げられる。上記媒体は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
上記アルコールとして、例えば、メタノール、エタノール又はプロパノール等が挙げられる。上記セロソルブとして、例えば、メチルセロソルブ又はエチルセロソルブ等が挙げられる。上記ケトンとして、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン又は2−ブタノン等が挙げられる。上記酢酸エステルとして、例えば、酢酸エチル又は酢酸ブチル等が挙げられる。上記炭化水素として、例えば、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0066】
上記樹脂粒子の平均粒子径は、0.1〜1000μmの範囲内にあることが好ましく、1〜500μmの範囲内にあることがより好ましく、1.5〜300μmの範囲内にあることがより一層好ましく、2〜30μmの範囲内にあることがさらに好ましい。上記平均粒子径が小さすぎると、樹脂粒子の表面に導電層を無電解めっきにより形成する際に凝集しやすくなり、凝集した導電性粒子が形成されやすくなる。さらに、導電性粒子が電極間の接続に用いられた場合に、導電性粒子と電極との接触面積が小さくなるため、接続信頼性が低下することがある。上記平均粒子径が大きすぎると、電極間の間隔が必要以上に大きくなりすぎることがある。
【0067】
なお、上記「平均粒子径」とは、数平均粒子径を示す。平均粒子径は、例えばコールターカウンター(ベックマンコールター社製)を用いて測定できる。
【0068】
(導電性粒子)
図1は、本発明の一実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0069】
図1に示すように、導電性粒子1は、樹脂粒子2と、該樹脂粒子2の表面2aを被覆している導電層3とを有する。樹脂粒子2は、上記アクリルモノマーAと、上記アクリルモノマーBとを上記特定の割合で含有するモノマーを共重合させることにより得られた樹脂粒子である。
【0070】
導電層3は、金属により形成されていることが好ましい。導電層3を構成する金属は、特に限定されない。該金属として、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、錫−鉛合金、錫−銅合金、錫−銀合金又は錫−鉛−銀合金等が挙げられる。なかでも、ニッケル、銅、金又は錫−銀合金が好ましい。
【0071】
樹脂粒子2の表面2aに導電層3を形成する方法は特に限定されない。導電層3を形成する方法として、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、又は金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを樹脂粒子2の表面にコーティングする方法等が挙げられる。なかでも、無電解めっきが好適である。上記物理的蒸着による方法として、真空蒸着、イオンプレーティング又はイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
【0072】
導電層3は、単層により形成されていてもよく、2層以上が積層された複数層により形成されていてもよい。
【0073】
導電性粒子1の導電層3の外側の表面は、金層、パラジウム層又は錫−銀合金層であることが好ましい。この場合、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【0074】
導電層3の厚みは、0.02〜5μmの範囲内にあることが好ましい。導電層3の厚みが0.02μm未満であると、導電性が低くなることがある。導電層3の厚みが5μmを超えると、導電性粒子1が硬くなりすぎて、電極間の接続の際に、導電性粒子が充分に変形し難くなる。
【0075】
導電層3の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子の断面を観察することにより求めることができる。観察する際の倍率は、例えば、5万倍程度である。
【0076】
導電性粒子1のCV値(粒度分布の変動係数)は、10%以下であることが好ましい。導電性粒子1のCV値が10%以下であることにより、導電性粒子1と電極との接触面積、又は電極間の間隔のばらつきを小さくすることができる。さらに、電極間の接続信頼性を高くすることができる。
【0077】
上記CV値は、樹脂粒子の直径の標準偏差をρとし、平均粒子径をDnとしたときに、下記式により求めることができる。
【0078】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
【0079】
(異方性導電材料)
本発明に係る異方性導電材料は、本発明の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含有する。
【0080】
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、一般的には絶縁性の樹脂が用いられる。上記バインダー樹脂として、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体又はエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
上記ビニル樹脂として、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂又はスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂として、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体として、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、又はスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとして、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、又はアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0082】
異方性導電材料は、導電性粒子及びバインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤又は難燃剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0083】
上記バインダー樹脂中に導電性粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ特に限定されない。上記バインダー樹脂中に導電性粒子を分散させる方法として、例えば、バインダー樹脂中に導電性粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、導電性粒子を水や有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、バインダー樹脂中へ添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、又はバインダー樹脂を水や有機溶剤等で希釈した後、導電性粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法等が挙げられる。
【0084】
本発明の異方性導電材料は、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、又は異方性導電シート等として使用され得る。本発明の導電性粒子を含む異方性導電材料が、異方性導電フィルムや異方性導電シート等のフィルム状の接着剤として使用される場合には、該導電性粒子を含むフィルム状の接着剤に、導電性粒子を含まないフィルム状の接着剤が積層されてもよい。
【0085】
(接続構造体)
図2は、本発明の一実施形態に係る導電性粒子が用いられた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【0086】
図2に示す接続構造体21は、第1の接続対象部材22と、第2の接続対象部材23と、第1,第2の接続対象部材22,23とを電気的に接続している接続部24とを備える。接続部24は、複数の導電性粒子1を含有する異方性導電フィルムにより形成されている。導電性粒子1は、樹脂粒子2と、該樹脂粒子2の表面2aを被覆している導電層3とを有する。図2では、導電性粒子1は、略図的に示されている。
【0087】
第1の接続対象部材22の上面22aに、複数の電極22bが設けられている。第2の接続対象部材23の下面23aに、複数の電極23bが設けられている。第1の接続対象部材22の上面22aに、導電性粒子1を含有する異方性導電フィルムを介して、第2の接続対象部材23が積層されている。電極22bと電極23bとが、導電性粒子1により電気的に接続されている。
【0088】
第1,第2の接続対象部材22,23として、具体的には、半導体チップ、コンデンサもしくはダイオード等の電子部品、又はプリント基板、フレキシブルプリント基板もしくはガラス基板等の回路基板等が挙げられる。
【0089】
接続構造体21の製造方法は特に限定されない。接続構造体21の製造方法の一例として、第1の接続対象部材22と第2の接続対象部材23との間に、上記異方性導電フィルムを配置して、積層体を得た後、該積層体を加熱し、加圧する方法が挙げられる。
【0090】
接続構造体21では、本発明の一実施形態に係る導電性粒子1が用いられているため、電極間を接続する際の加熱圧着時に導電性粒子1が適度に変形する。さらに、加熱圧着後に導電性粒子1が圧縮された状態から形状が適度に回復するので、良好な導通を確保でき、かつ電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【0091】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0092】
(実施例1)
(1)樹脂粒子の作製
シード粒子として平均粒子径0.8μmのポリスチレン粒子を用意した。該ポリスチレン粒子2.5gと、イオン交換水500gと、ポリビニルアルコールの5重量%水溶液100gとを、混合し、超音波により分散させた後、セパラブルフラスコに添加し、均一に撹拌した。
【0093】
また、過酸化ベンゾイル(日油社製、ナイパーBW)6.3gと、ラウリル硫酸トリエタノールアミン30gと、N,N−ジメチルホルムアミド243gとをイオン交換水1100gに添加し、乳化液を調製した。
【0094】
さらに、モノマーとして、上記アクリルモノマーAとしての1,4−ブタンジオールジアクリレート129.4gと、上記アクリルモノマーCとしての4−ヒドロキシブチルアクリレート17.6gと、上記アクリルモノマーAとしてのCHCHCOO(CO)COCHCH6.6gと、上記アクリルモノマーBとしてのHO(CO)COCHCH6.4gとの混合物を用意した。
【0095】
シード粒子としての上記ポリスチレン粒子が添加されたセパラブルフラスコに、上記モノマーと、上記乳化液とをさらに添加し、12時間撹拌し、シード粒子に上記モノマーを吸収させた。その後、ポリビニルアルコールの5重量%水溶液500gを添加し、9時間反応させ、平均粒子径5μmの樹脂粒子を得た。
【0096】
(2)導電性粒子の作製
得られた樹脂粒子の表面に無電解ニッケルめっきを行い、厚み0.08μmのニッケルめっき層を、樹脂粒子の表面に形成させた。その後、置換金めっきを行い、厚み0.03μmの金めっき層を、ニッケルめっき層の表面に形成させた。このようにして、樹脂粒子の表面がニッケルめっき層により被覆されており、かつ該ニッケルめっき層の表面が金めっき層により被覆されている導電性粒子を得た。
【0097】
(実施例2)
モノマーとして、上記アクリルモノマーAとしての1,4−ブタンジオールジアクリレート130.9gと、上記アクリルモノマーCとしての4−ヒドロキシブチルアクリレート10.4gと、上記アクリルモノマーAとしてのCHCHCOO(CO)COCHCH3.6gと、上記アクリルモノマーBとしてのHO(CO)COCHCH14.3gと、上記他のモノマーとしてのCHCHCOO(CO)COCHCH0.3gとの混合物を用意した。このモノマーを用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子及び導電性粒子を得た。
【0098】
(比較例1)
モノマーとして、上記アクリルモノマーAとしての1,4−ブタンジオールジアクリレート132.3gと、上記アクリルモノマーCとしての4−ヒドロキシブチルアクリレート3.2gと、上記アクリルモノマーAとしてのCHCHCOO(CO)COCHCH0.5gと、上記アクリルモノマーBとしてのHO(CO)COCHCH22.2gと、上記他のモノマーとしてのCHCHCOO(CO)COCHCH0.6gとの混合物を用意した。このモノマーを用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子及び導電性粒子を得た。
【0099】
(評価)
(1)樹脂粒子の圧縮変形回復率
得られた樹脂粒子の圧縮変形回復率を、微小圧縮試験機(島津製作所社製PCT−200)を用いて、上述した方法により測定した。
【0100】
(2)樹脂粒子の圧縮弾性率(20%K値)
得られた樹脂粒子の圧縮弾性率(20%K値)を、微小圧縮試験機(島津製作所社製PCT−200)を用いて、上述した方法により測定した。
【0101】
(3)初期接続抵抗
エポキシ樹脂としてjER828(ジャパンエポキシレジン社製)100重量部と、トリスジメチルアミノエチルフェノール2重量部と、トルエン100重量部とを混合した後、得られた導電性粒子を添加し、遊星式撹拌機を用いて充分に混合し、混合物を得た。得られた混合物を、離型フィルム上に乾燥後の厚さが7μmとなるように塗工し、トルエンを揮発させ、導電性粒子を含有する第1の接着フィルムを得た。得られた第1の接着フィルム中の導電性粒子の含有量は5万個/cmであった。
【0102】
また、導電性粒子を配合しなかったこと、並びに乾燥後の厚さが10μmとなるように塗工したこと以外は第1の接着フィルムと同様にして、導電性粒子を含有しない第2の接着フィルムを得た。
【0103】
得られた導電性粒子を含有する第1の接着フィルム(厚さ7μm)と、得られた導電性粒子を含有しない第2の接着フィルム(厚さ10μm)とを、常温で貼り合わせて、2層構造の異方性導電フィルム(厚さ17μm)を得た。
【0104】
得られた異方性導電フィルムを、3mm×3mmの大きさに切断した。また、抵抗測定用の引き回し線を有するアルミニウム電極(高さ0.2μm、L/S=20μm/20μm)が片面に形成されており、大きさが3mm×3mmのガラス基板を用意した。さらに、抵抗測定用の引き回し線を有するアルミニウム電極(高さ0.2μm、L/S=20μm/20μm)が片面に形成されており、大きさが3mm×3mmのポリイミド基板を用意した。
【0105】
切断後の上記異方性導電フィルムを、上記ガラス基板のアルミニウム電極が形成された表面に貼り付けた。次に、上記異方性導電フィルムを介して、上記ガラス基板と上記ポリイミド基板とのアルミニウム電極が互いに対向するように位置合わせをし、上記ポリイミド基板をアルミニウム電極側から上記異方性導電フィルム上に貼り付けて、積層体を得た。この積層体を、圧力10N及び150℃の条件で30秒間熱圧着し、接続構造体を得た。
【0106】
得られた接続構造体の電極間の接続抵抗を、四端子法にて測定した。得られた測定値を初期接続抵抗とした。
【0107】
(4)信頼性試験後の接続抵抗
上記初期接続抵抗の評価で得られた接続構造体を、80℃及び相対湿度95%RHの高温高湿環境下で1000時間保管することにより、信頼性試験を行った。信頼性試験後の接続構造体の電極間の接続抵抗を、四端子法にて測定した。得られた測定値を、信頼性試験後の接続抵抗とした。
【0108】
結果を下記の表1に示す。
【0109】
【表1】

【符号の説明】
【0110】
1…導電性粒子
2…樹脂粒子
2a…表面
3…導電層
21…接続構造体
22…第1の接続対象部材
22a…上面
22b…電極
23…第2の接続対象部材
23a…下面
23b…電極
24…接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種のモノマーを共重合させることにより得られた樹脂粒子であって、
前記モノマーが、下記式(A)で表されるアクリルモノマーと、下記式(B)で表されるアクリルモノマーとを含有し、
前記モノマーの合計100重量%中、前記式(A)で表されるアクリルモノマーの含有量が80重量%以上、前記式(B)で表されるアクリルモノマーの含有量が10重量%以下である、樹脂粒子。
【化1】

上記式(A)中、mは1又は2の整数を表し、nは4〜6の整数を表し、R1及びR2はそれぞれ水素原子又はメチル基を表す。
【化2】

上記式(B)中、pは2〜6の整数を表し、qは4〜6の整数を表し、R3は水素原子又はメチル基を表す。
【請求項2】
前記モノマーが、下記式(C)で表されるアクリルモノマーをさらに含有する、請求項1に記載の樹脂粒子。
【化3】

上記式(C)中、xは4〜6の整数を表し、R4は水素原子又はメチル基を表す。
【請求項3】
圧縮変形回復率が80%以上である、請求項1または2に記載の樹脂粒子。
【請求項4】
圧縮弾性率(20%K値)が1000〜4000mN/mmの範囲内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面を被覆している導電層とを有する、導電性粒子。
【請求項6】
請求項5に記載の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含有する、異方性導電材料。
【請求項7】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項5に記載の導電性粒子、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料により形成されている、接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−159328(P2010−159328A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1467(P2009−1467)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】