説明

導電性粒子、絶縁粒子付き導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体

【課題】バインダー樹脂中での分散性を高めることができる絶縁粒子付き導電性粒子を提供する。
【解決手段】本発明に係る導電性粒子は、導電層を少なくとも表面に有する。該導電性粒子0.03gをトルエン1.0gに23℃で分散させたときに、分散液における導電性粒子1g当たりの発熱量は10mJ以上である。本発明に係る絶縁粒子付き導電性粒子1は、導電層5を表面2aに有する導電性粒子2と、導電性粒子2の表面2aに付着している絶縁粒子3とを備える。絶縁粒子付き導電性粒子1の0.03gをトルエン1.0gに23℃で分散させたときに、分散液における発熱量は絶縁粒子付き導電性粒子1の1g当たり10mJ/g以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電極間の電気的な接続に用いることができる導電性粒子及び絶縁粒子付き導電性粒子、並びに該導電性粒子又は該絶縁粒子付き導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、及び異方性導電シート等の異方性導電材料が広く知られている。これらの異方性導電材料では、ペースト、インク又は樹脂中に導電性粒子が分散されている。上記異方性導電材料は、例えば、ガラス基板及びプリント基板等の基板の電極間を電気的に接続するために用いられている。
【0003】
上記導電性粒子の一例として、下記の特許文献1には、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆している導電層とを有する導電性粒子が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2〜4では、表面の少なくとも一部に極性基を有する導電性粒子と、該導電性粒子の表面の少なくとも一部を被覆している絶縁性材料とを備える被覆導電性粒子が開示されている。ここでは、該被覆導電性粒子と、接着剤とを含む異方性導電接着剤組成物も開示されている。
【0005】
上記絶縁性材料は、導電性粒子の表面の極性基と吸着可能な高分子電解質と、該高分子電解質と吸着可能な無機物粒子とを含む。この無機物粒子は絶縁粒子である。上記被覆導電性粒子は、例えば、導電性粒子の表面の少なくとも一部に、上記高分子電解質を静電的に吸着させた後、上記無機酸化物粒子を静電的にさらに吸着させることにより得られる。
【0006】
上記高分子電解質としては、スルホン酸、硫酸及びカルボン酸などの負電荷を帯びることが可能な官能基を有するポリアニオン、並びに4級アンモニウム基及びアミノ基などの正荷電を帯びることが可能な官能基を有するポリカチオン等が挙げられている。
【0007】
また、下記の特許文献5には、導電性粒子と、該導電性粒子の表面を被覆している樹脂層とを有する被覆導電性粒子が開示されている。この樹脂層は、トリアジンチオール化合物に由来する構造を介して、導電性粒子に結合されている。上記樹脂層は、厚み10nm程度の被膜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−073681号公報
【特許文献2】特開2008−120990号公報
【特許文献3】特開2009−135086号公報
【特許文献4】特開2009−170414号公報
【特許文献5】特開2010−153265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜5に記載のような従来の導電性粒子及び被覆導電性粒子をバインダー樹脂中に分散させたときに、導電性粒子及び被覆導電性粒子が十分に分散しないことがある。すなわち、バインダー樹脂中で、導電性粒子及び被覆導電性粒子が沈降したり、凝集した導電性粒子及び被覆導電性粒子が多く生じたりすることがある。このため、導電性粒子及び被覆導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料を用いて、電極間の電気的な接続を行ったときに、電極間に導電性粒子が配置されずに、接続されるべき電極間が接続されないことがある。さらに、凝集した導電性粒子及び被覆導電性粒子の存在により、接続されてはならない隣り合う電極間が複数の導電性粒子を介して接続されることがある。このため、電極間の導通信頼性が低いという問題がある。
【0010】
さらに、特許文献5に記載の被覆導電性粒子では、絶縁粒子ではなく、樹脂層により導電性粒子が被覆されている。このような樹脂層は、絶縁粒子と比較して、電極間の接続時の圧着により充分に除去されず、導電性粒子と電極との間に残存することがある。このため、電極間の導通信頼性が低くなりやすい。
【0011】
本発明の目的は、バインダー樹脂中での分散性を高めることができる導電性粒子及び絶縁粒子付き導電性粒子、並びに該導電性粒子又は該絶縁粒子付き導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、導電層を少なくとも表面に有し、導電性粒子0.03gをトルエン1.0gに23℃で分散させたときに、分散液における発熱量が導電性粒子1g当たり10mJ以上である、導電性粒子が提供される。
【0013】
また、本発明の広い局面によれば、導電層を表面に有する導電性粒子と、上記導電性粒子の表面に付着している絶縁粒子とを備え、上絶縁粒子付き導電性粒子0.03gをトルエン1.0gに23℃で分散させたときに、分散液における発熱量が絶縁粒子付き導電性粒子1g当たり10mJ以上である、絶縁粒子付き導電性粒子が提供される。
【0014】
本発明に係る導電性粒子及び絶縁粒子付き導電性粒子のある特定の局面では、上記導電性粒子の平均粒子径が1〜20μmである。
【0015】
本発明に係る絶縁粒子付き導電性粒子の他の特定の局面では、上記絶縁粒子による上記導電性粒子の被覆率が5〜70%である。
【0016】
本発明に係る導電性粒子及び絶縁粒子付き導電性粒子のさらに他の特定の局面では、上記導電層の最表面が金層、ニッケル層又はパラジウム層である。
【0017】
本発明に係る導電性粒子及び絶縁粒子付き導電性粒子の他の特定の局面では、上記導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆している導電層とを有する。
【0018】
本発明に係る異方性導電材料は、本発明に従って構成された導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。
【0019】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、上記接続部が本発明に従って構成された導電性粒子もしくは絶縁粒子付き導電性粒子、又は該導電性粒子もしくは該絶縁粒子付き導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料により形成されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る導電性粒子では、導電性粒子0.03gをトルエン1.0gに23℃で分散させたときに、分散液における発熱量が導電性粒子1g当たり10mJ以上であるので、バインダー樹脂中に導電性粒子を十分に分散させることができる。このため、本発明に係る導電性粒子を電極間の接続に用いた場合に、導通信頼性を高めることができる。
【0021】
本発明に係る絶縁粒子付き導電性粒子では、導電性粒子の表面に絶縁粒子が付着しており、絶縁粒子付き導電性粒子0.03gをトルエン1.0gに23℃で分散させたときに、分散液における発熱量が絶縁粒子付き導電性粒子1g当たり10mJ以上であるので、バインダー樹脂中に絶縁粒子付き導電性粒子を十分に分散させることができる。このため、本発明に係る絶縁粒子付き導電性粒子を電極間の接続に用いた場合に、導通信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁粒子付き導電性粒子を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施形態に係る絶縁粒子付き導電性粒子を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る絶縁粒子付き導電性粒子を用いた接続構造体の部分切欠断面図である。
【図5】図5は、図4に示す接続構造体の変形例を示す部分切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0024】
(絶縁粒子付き導電性粒子、及び導電性粒子)
図1に、本発明の一実施形態に係る絶縁粒子付き導電性粒子を断面図で示す。
【0025】
図1に示すように、絶縁粒子付き導電性粒子1は、導電性粒子2と、導電性粒子2の表面2aに付着している複数の絶縁粒子3とを備える。
【0026】
導電性粒子2は、基材粒子4と、該基材粒子4の表面4aを被覆している導電層5とを有する。導電性粒子2は、基材粒子4の表面4aが導電層5により被覆された被覆粒子である。従って、導電性粒子2は導電層5を表面2aに有する。絶縁粒子3は、絶縁性を有する材料により形成されている。
【0027】
図3に、本発明の一実施形態に係る導電性粒子を断面図で示す。
【0028】
図3に示すように、導電性粒子51は、基材粒子52と、該基材粒子52の表面52aを被覆している導電層53とを有する。導電性粒子51は、基材粒子52の表面52aが導電層53により被覆された被覆粒子である。従って、導電性粒子51は導電層53を表面51aに有する。
【0029】
本実施形態では、絶縁粒子付き導電性粒子1の0.03gをトルエン1.0gに23℃で分散させたときに、分散液における発熱量は絶縁粒子付き導電性粒子1の1g当たり10mJ以上である。また、導電性粒子51の0.03gをトルエン1.0gに23℃で分散させたときに、分散液における発熱量は導電性粒子51の1g当たり10mJ以上である。該発熱量は、より好ましくは80mJ以上である。上記発熱量が高いほど、バインダー樹脂への導電性粒子及び絶縁粒子付き導電性粒子の分散性をより一層高めることができる。このため、凝集した導電性粒子及び凝集した絶縁粒子付き導電性粒子が生じ難くなる。従って、電極間に導電性粒子を精度よく配置でき、接続されるべき上下の電極間を導電性粒子により容易に接続できる。さらに、凝集した導電性粒子又は凝集した絶縁粒子付き導電性粒子の存在によって、接続されてはならない隣り合う電極間が複数の導電性粒子を介して接続されるのを抑制できる。このため、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。特に、上記発熱量が上記下限以上であると、バインダー樹脂がエポキシ樹脂である場合に、エポキシ樹脂中での導電性粒子及び絶縁粒子付き導電性粒子の分散性が高くなる。
【0030】
上記発熱量の測定装置としては、ティー・エイ・インスツルメント社製「TAMIII」等が挙げられる。
【0031】
導電性粒子の平均粒子径及び絶縁粒子付き導電性粒子における上記導電性粒子の平均粒子径がそれぞれ1〜20μmであり、かつ上記発熱量が上記下限以上であることが好ましい。さらに、絶縁粒子付き導電性粒子における上記導電性粒子の平均粒子径が1〜20μmであり、絶縁粒子付き導電性粒子における被覆率が5〜70%であり、かつ上記発熱量が上記下限以上であることが好ましい。これらの場合には、分散液における発熱量をさらに一層大きくしたり、バインダー樹脂等中での導電性粒子及び絶縁粒子付き導電性粒子の分散性をさらに一層高めたりすることができる。
【0032】
さらに、導電層の最表面が、金層、ニッケル層又はパラジウム層であり、かつ上記発熱量が10mJ以上であることが好ましい。この場合には、分散液における発熱量をさらに一層大きくしたり、バインダー樹脂等中での導電性粒子及び絶縁粒子付き導電性粒子の分散性をさらに一層高めたりすることができる。
【0033】
絶縁粒子付き導電性粒子である場合に、上記発熱量を制御する方法としては、導電性粒子を表面処理する方法、絶縁粒子の組成を適正化する方法、並びに絶縁粒子を表面処理する方法等が挙げられる。なかでも、発熱量の制御が容易であるので、上記発熱量を制御する方法は、絶縁粒子の組成を適正化する方法であることが好ましい。
【0034】
絶縁粒子を有さない導電性粒子である場合に、上記発熱量を制御する方法としては、導電性粒子を表面処理する方法、並びに導電性粒子を樹脂により被覆する方法等が挙げられる。なかでも、発熱量の制御が容易であるので、上記発熱量を制御する方法は、導電性粒子を表面処理する方法であることが好ましい。
【0035】
上記基材粒子としては、樹脂粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子等が挙げられる。
【0036】
上記基材粒子は、樹脂により形成された樹脂粒子であることが好ましい。導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子を用いて電極間を接続する際には、導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子を電極間に配置した後、圧着することにより導電性粒子を圧縮させる。基材粒子が樹脂粒子であると、上記圧着の際に導電性粒子が変形しやすく、導電性粒子と電極の接触面積を大きくすることができる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0037】
上記樹脂粒子を形成するための樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン及びポリエーテルスルホン等が挙げられる。基材粒子の硬度を好適な範囲に容易に制御できるので、上記樹脂粒子を形成するための樹脂は、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を1種又は2種以上重合させた重合体であることが好ましい。
【0038】
上記無機粒子を形成するための無機物としては、シリカ及びカーボンブラック等が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子としては、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。
【0039】
上記基材粒子が金属粒子である場合に、該金属粒子を形成するための金属としては、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金及びチタン等が挙げられる。
【0040】
上記導電層を形成するための金属は特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素及びこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。なかでも、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができるので、錫と錫とを含む合金、ニッケル、パラジウム、銅又は金が好ましい。絶縁粒子の脱離をより一層抑制する観点からは、導電層の最表面は、ニッケル層又はパラジウム層であることが好ましく、ニッケル層であることが特に好ましい。
【0041】
上記導電層は、1つの層により形成されている。導電層は、複数の層により形成されていてもよい。すなわち、導電層は、2層以上の積層構造を有していてもよい。導電層が複数の層により形成されている場合には、最外層は、金層、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は錫と銀とを含む合金層であることが好ましく、金層であることがより好ましい。最外層がこれらの好ましい導電層である場合には、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。また、最外層が金層である場合には、耐食性をより一層高めることができる。
【0042】
また、絶縁粒子付き導電性粒子0.03gをトルエン1.0gに23℃で分散させたときに、分散液における発熱量をより一層大きくしたり、バインダー樹脂等への絶縁粒子付き導電性粒子の分散性をより一層高めたりする観点からは、導電層の最表面は、金層、ニッケル層又はパラジウム層であることが好ましく、パラジウム層であることが特に好ましい。
【0043】
基材粒子の表面に導電層を形成する方法は特に限定されない。導電層を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。なかでも、導電層の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
【0044】
上記導電性粒子の平均粒子径は、0.5μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。導電性粒子の平均粒子径のより好ましい下限は1μmであり、より好ましい上限は20μmである。導電性粒子の平均粒子径が上記好ましい範囲内にある場合には、導電性粒子と電極との接触面積を充分に大きくすることができ、かつ導電層を形成する際に凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。また、導電性粒子を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電層が基材粒子の表面から剥離し難くなる。
【0045】
上記導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0046】
上記導電層の厚みは、0.005〜1μmの範囲内であることが好ましい。導電層の厚みのより好ましい下限は0.01μmであり、より好ましい上限は0.3μmである。導電層の厚みが上記好ましい範囲内であると、充分な導電性を得ることができ、かつ導電性粒子が硬くなりすぎずに、電極間の接続の際に導電性粒子を充分に変形させることができる。
【0047】
導電層が複数の層により形成されている場合に、最外層の導電層の厚みは、特に最外層が金層である場合の金層の厚みは、0.001〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。上記最外層の導電層の厚みのより好ましい下限は0.01μmであり、より好ましい上限は0.1μmである。上記最外層の導電層の厚みが上記好ましい範囲内にあると、最外層の導電層による被覆を均一にでき、耐食性を充分に高めることができ、かつ電極間の接続抵抗を充分に低くすることができる。また、上記最外層が金層である場合の金層の厚みが薄いほど、コストが低くなる。
【0048】
上記導電層の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子の断面を観察することにより測定できる。
【0049】
上記絶縁粒子は、絶縁性を有する粒子である。絶縁粒子は導電性粒子よりも小さい。
【0050】
上記絶縁粒子を構成する材料としては、絶縁性の樹脂、及び絶縁性の無機物等が挙げられる。上記絶縁性の樹脂としては、基材粒子としての樹脂粒子を形成するための樹脂として挙げた上記樹脂が挙げられる。上記絶縁性の無機物としては、基材粒子としての無機粒子を形成するための無機物として挙げた上記無機物が挙げられる。
【0051】
上記絶縁粒子は、リン原子に直接結合された水酸基(以下P−OH基ともいう)、又はケイ素原子に直接結合された水酸基(以下、Si−OH基ともいう)を表面に有することが好ましい。なかでも、導電性粒子と絶縁粒子との付着性をより一層高めることができるので、絶縁粒子は上記P−OH基を表面に有することがより好ましい。
【0052】
上記絶縁粒子付き導電性粒子は、例えば、リン原子に直接結合された水酸基又はケイ素原子に直接結合された水酸基を表面に有する絶縁粒子を、導電性粒子の表面に付着させることにより得ることができる。このようにして作製された絶縁粒子付き導電性粒子では、例えば、上記P−OH基又は上記Si−OH基により、絶縁粒子が導電性粒子の表面に付着している。
【0053】
上記絶縁粒子の表面の上記P−OH基又は上記Si−OH基は、導電性粒子の表面の導電層に対して強固に化学結合する。このような結合は、ファンデルワールス力又は静電気力のみによる結合に比べて結合力が極めて高い。従って、導電性粒子と絶縁粒子とを強固に付着させることができ、絶縁粒子が導電性粒子の表面から脱離するのを抑制できる。例えば、バインダー樹脂等に絶縁粒子付き導電性粒子を添加し、混練する際に、絶縁粒子が導電性粒子の表面から脱離し難くなる。また、複数の絶縁粒子付き導電性粒子が接触したときに、接触時の衝撃により絶縁粒子が導電性粒子の表面から脱離し難くなる。
【0054】
また、上記P−OH基又は上記Si−OH基を表面に有する複数の絶縁粒子同士は、上記P−OH基又は上記Si−OH基により、互いに化学結合しない。このため、絶縁粒子が上記P−OH基又は上記Si−OH基を表面に有する場合には、導電性粒子の表面に、2層以上ではなく単層となるように絶縁粒子を付着させることができる。従って、粒子径が均一な絶縁粒子付き導電性粒子を得ることができる。
【0055】
また、上記絶縁粒子が上記P−OH基又は上記Si−OH基を表面に有する場合には、上記P−OH基又は上記Si−OH基により、導電層又は電極が腐食され難い。例えば、絶縁粒子が硫黄原子を含む基を表面に有する場合には、硫黄原子を含む基により、導電層又は電極が腐食されることがある。絶縁粒子が上記P−OH基又は上記Si−OH基を表面に有する場合には、導電層又は電極の腐食を抑制できる。
【0056】
上記絶縁粒子は、下記式(11)で表される基、又はケイ素原子に直接結合された水酸基を表面に有することが好ましい。すなわち、上記P−OH基を表面に有する絶縁粒子は、下記式(11)で表される基を表面に有することが好ましい。この場合には、絶縁粒子が導電性粒子の表面からより一層脱離し難くなる。
【0057】
【化1】

【0058】
上記式(11)中、X1は、水酸基、アルコキシ基又は炭素数1〜12のアルキル基を表す。
【0059】
上記式(11)で表される基は、下記式(11A)で表される基であることが好ましい。この場合には、絶縁粒子の導電性粒子への付着性をより一層高めることができる。
【0060】
【化2】

【0061】
また、上記Si−OH基を表面に有する絶縁粒子は、下記式(12)で表される基を表面に有することが好ましい。下記式(12)で表される基は、絶縁粒子の表面に比較的容易に導入できる。
【0062】
【化3】

【0063】
上記式(12)中、Z1及びZ2はそれぞれ、水酸基、アルコキシ基又は炭素数1〜12のアルキル基を表す。Z1とZ2とは同一であってもよく、異なっていてもよい。絶縁粒子を導電性粒子の表面に強固に付着させることができるため、Z1及びZ2はそれぞれ、水酸基であることが好ましい。
【0064】
上記絶縁粒子の表面に、上記P−OH基又はSi−OH基を導入する方法としては、絶縁粒子を、リン原子に直接結合された水酸基を有する化合物(以下、P−OH基含有化合物ともいう)、又はケイ素原子に直接結合された水酸基を有する化合物(以下、Si−OH基含有化合物ともいう)により表面処理する方法、並びに絶縁粒子の作製の際に、絶縁粒子を構成する材料に、上記P−OH基含有化合物又は上記Si−OH基含有化合物を含有させる方法等が挙げられる。絶縁粒子の表面に上記P−OH基又は上記Si−OH基を効率的に導入する観点からは、絶縁粒子の作製の際に、絶縁粒子を構成する材料に、上記P−OH基含有化合物又は上記Si−OH基含有化合物を含有させる方法が好ましい。絶縁粒子と導電性粒子との付着性をより一層高めることができるので、絶縁粒子は上記P−OH基含有化合物を材料として用いた絶縁粒子であることが好ましい。
【0065】
上記のように、リン原子に直接結合された水酸基又はケイ素原子に直接結合された水酸基を表面に有する絶縁粒子は、例えば、リン原子に直接結合された水酸基を有する化合物又はケイ素原子に直接結合された水酸基を有する化合物を使用することにより得ることができる。
【0066】
絶縁粒子を上記P−OH基含有化合物又は上記Si−OH基含有化合物により表面処理する方法としては、絶縁粒子の表面に、上記P−OH基含有化合物又は上記Si−OH基含有化合物を化学的に結合させる方法、並びに絶縁粒子の表面を化学処理し、上記P−OH基含有化合物又は上記Si−OH基含有化合物により、絶縁粒子が表面に上記P−OH基又は上記Si−OH基を有するように改質する方法等が挙げられる。
【0067】
上記P−OH基含有化合物としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0068】
【化4】

【0069】
上記式(1)中、X1は水酸基、アルコキシ基又は炭素数1〜12のアルキル基を表し、X2は不飽和結合を含む有機基を表す。
【0070】
上記式(1)中、X1は水酸基であることが好ましい。すなわち、上記式(1)で表される化合物は、下記式(1A)で表される化合物であることが好ましい。この場合には、導電性粒子と絶縁粒子との付着性をより一層高めることができる。
【0071】
【化5】

【0072】
上記式(1A)中、X2は不飽和結合を含む有機基を表す。絶縁粒子の構成原料と容易に共重合することができるため、上記式(1)及び式(1A)中のX2は、(メタ)アクリロイル基を含むことが好ましい。
【0073】
上記P−OH基含有化合物の具体例としては、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート及びアシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。上記P−OH基含有化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
上記Si−OH基含有化合物としては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0075】
【化6】

【0076】
上記式(2)中、Z1及びZ2はそれぞれ、水酸基、アルコキシ基又は炭素数1〜12のアルキル基を表し、Z3は不飽和結合を含む有機基を表す。Z1〜Z3は同一であってもよく、異なっていてもよい。絶縁粒子を導電性粒子の表面に強固に付着させることができるため、Z1及びZ2はそれぞれ、水酸基であることが好ましい。また、絶縁粒子の構成原料と容易に共重合とすることができるため、Z3は、(メタ)アクリロイル基を含むことが好ましい。
【0077】
上記Si−OH基含有化合物の具体例としては、ビニルトリヒドロキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリヒドロキシシラン等が挙げられる。上記Si−OH基含有化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0078】
上記絶縁粒子の粒子径は、導電性粒子の粒子径及び絶縁粒子付き導電性粒子の用途等によって適宜選択できる。絶縁粒子の平均粒子径は0.005〜1μmの範囲内であることが好ましい。絶縁粒子の平均粒子径のより好ましい下限は0.01μmであり、より好ましい上限は0.5μmである。絶縁粒子の平均粒子径が小さすぎると、絶縁粒子付き導電性粒子がバインダー樹脂に分散されたときに、複数の絶縁粒子付き導電性粒子の導電性粒子同士が接触しやすくなる。絶縁粒子の平均粒子径が大きすぎると、電極間の接続の際に、電極と導電性粒子との間の絶縁粒子を排除するために、圧力を高くしなければならなかったり、高温に加熱しなければならなかったりする。
【0079】
上記絶縁粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。絶縁粒子の平均粒子径は、導電性粒子の平均粒子径と同様にして求められる。
【0080】
上記絶縁粒子の平均粒子径は、導電性粒子の平均粒子径の1/5以下であることが好ましい。絶縁粒子の平均粒子径は、導電性粒子の平均粒子径の1/1000以上であることが好ましい。絶縁粒子の平均粒子径が導電性粒子の平均粒子径の1/5以下であると、例えば、絶縁粒子付き導電性粒子を製造する際に、絶縁粒子を導電性粒子の表面により一層効率的に付着させることができる。
【0081】
粒子径の異なる2種以上の絶縁粒子を用いてもよい。この場合には、導電性粒子の表面の大きな絶縁粒子の間に、小さな絶縁粒子を存在させることができるので、導電性粒子の露出面積を小さくすることができる。従って、複数の絶縁粒子付き導電性粒子が接触したとしても、隣接する導電性粒子は接触し難いため、隣接する電極間の短絡を抑制できる。小さな絶縁粒子の平均粒子径は、大きな絶縁粒子の平均粒子径の1/2以下であることが好ましい。小さな絶縁粒子の数は、大きな絶縁粒子の数の1/4以下であることが好ましい。
【0082】
絶縁粒子付き導電性粒子において導電性粒子の表面を適度に露出させるためには、絶縁粒子の被覆率(絶縁粒子による導電性粒子の被覆率)は、5〜70%の範囲内であることが好ましい。上記被覆率は、導電性粒子の表面積全体に占める絶縁粒子により被覆されている部分の面積を示す。上記被覆率が上記好ましい範囲内にあると、隣接する導電性粒子がより一層接触し難くなり、かつ電極の接続の際に熱及び圧力を必要以上に付与しなくても、絶縁粒子を充分に排除できる。
【0083】
導電性粒子の表面に付着している絶縁粒子の接触面積は、絶縁粒子の表面積の20%以下であることが好ましい。この場合には、絶縁粒子の変形が比較的小さく、導電性粒子の表面に付着している絶縁粒子の被覆層の厚みを均一にできる。また、電極間の接触の際に、導電性粒子と電極との間の絶縁粒子を効率的に排除できる。絶縁粒子の上記接触面積の下限は特に限定されず、絶縁粒子が導電性粒子の表面に付着していれば実質的に0%であってもよい。
【0084】
図2に、本発明の他の実施形態に係る絶縁粒子付き導電性粒子を断面図で示す。
【0085】
図2に示す絶縁粒子付き導電性粒子11は、金属粒子である導電性粒子12と、導電性粒子12の表面12aに付着している複数の絶縁粒子3とを備える。導電性粒子12は、金属粒子であるので、導電層を表面12aに有する。このように、導電性粒子は、導電層を表面に有していればよく、金属被覆粒子であってもよく、金属粒子であってもよい。
【0086】
また、図3に示す導電性粒子51は、基材粒子52の表面52aが導電層53により被覆された導電性粒子である。絶縁粒子を有さない導電性粒子も、導電層を表面に有していればよく、金属被覆粒子であってもよく、金属粒子であってもよい。
【0087】
金属粒子である導電性粒子を形成するための金属は特に限定されない。該金属として、導電性粒子の導電層を形成するための金属として挙げた上記金属が挙げられる。なお、金属粒子である導電性粒子の平均粒子径の好ましい範囲は、上述した導電性粒子の平均粒子径の範囲である。
【0088】
導電性粒子及び絶縁粒子付き導電性粒子0.5gをイオン交換水50gに23℃で分散させた分散液を、100℃で10時間放置し、次に分散液から絶縁粒子付き導電性粒子を除去して液を得たときに、得られた液の電気伝導度はそれぞれ、20μS/cm以下であることが好ましい。該液の電気伝導度は、より好ましくは15μS/cm以下である。上記電気伝導度が低いほど、絶縁信頼性をより一層高めることができる。
【0089】
上記電気伝導度の測定装置としては、堀場制作所社製「COND METER ES−51」等が挙げられる。
【0090】
(異方性導電材料)
本発明に係る異方性導電材料は、本発明に係る導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子と、バインダー樹脂とを含有する。
【0091】
絶縁粒子が上記P−OH基又は上記Si−OH基を表面に有する場合には、絶縁粒子と導電性粒子とが強固に付着されているので、絶縁粒子付き導電性粒子をバインダー樹脂中に分散させる際などに、絶縁粒子が導電性粒子の表面から脱離し難い。
【0092】
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、一般的には絶縁性の樹脂が用いられる。上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0093】
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0094】
異方性導電材料は、導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子及びバインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤又は難燃剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0095】
上記バインダー樹脂中に導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ特に限定されない。上記バインダー樹脂中に導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子を分散させる方法としては、例えば、バインダー樹脂中に導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、バインダー樹脂中へ添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、並びにバインダー樹脂を水又は有機溶剤等で希釈した後、導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法等が挙げられる。
【0096】
本発明の異方性導電材料は、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、又は異方性導電シート等として使用され得る。本発明の導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子を含む異方性導電材料が、異方性導電フィルム又は異方性導電シート等のフィルム状の接着剤として使用される場合には、該導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子を含むフィルム状の接着剤に、導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子を含まないフィルム状の接着剤が積層されてもよい。
【0097】
導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子の含有量は特に限定されない。導通信頼性を高める観点からは、異方性導電材料100体積%中、導電性粒子又は絶縁粒子付き導電性粒子の含有量は0.01〜20体積%の範囲内であることが好ましい。
【0098】
(接続構造体)
図4は、本発明の一実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に示す断面図である。
【0099】
図4に示す接続構造体21は、第1の接続対象部材22と、第2の接続対象部材23と、第1,第2の接続対象部材22,23とを電気的に接続している接続部24とを備える。接続部24は、絶縁粒子付き導電性粒子1と、バインダー樹脂25とを含む異方性導電材料により形成されている。絶縁粒子付き導電性粒子1にかえて、導電性粒子51又は絶縁粒子付き導電性粒子21を用いてもよい。
【0100】
第1の接続対象部材22の上面22aに、複数の電極22bが設けられている。第2の接続対象部材23の下面23aに、複数の電極23bが設けられている。電極22bと電極23bとが、絶縁粒子付き導電性粒子1を介して、積層されている。電極22bと電極23bとが、導電性粒子2により電気的に接続されている。
【0101】
第1,第2の接続対象部材22,23として、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板及びガラス基板等の回路基板等が挙げられる。
【0102】
接続構造体21の製造方法は特に限定されない。接続構造体21の製造方法の一例として、第1の接続対象部材22と第2の接続対象部材23との間に、上記異方性導電材料を配置して、積層体を得た後、該積層体を加熱し、加圧する方法が挙げられる。
【0103】
上記積層体を加熱する際の温度は、120〜220℃程度である。上記積層体を加圧する際の圧力は9.8〜10〜4.9×10Pa程度である。
【0104】
上記積層体を加熱及び加圧する際に、導電性粒子2と電極22b,23bとの間に存在していた絶縁粒子3を排除できる。例えば、上記加熱及び加圧の際には、導電性粒子2と電極22b,23bとの間に存在していた絶縁粒子3が溶融したり、変形したりして、導電性粒子2の表面2aが部分的に露出する。なお、上記加熱及び加圧の際には、大きな力が付与されるので、一部の絶縁粒子3が導電性粒子2の表面2aから剥離して、導電性粒子2の表面2aが部分的に露出することもある。導電性粒子2の表面2aが露出した部分が、電極22b,23bに接触することにより、導電性粒子2を介して電極22b,23bを電気的に接続できる。
【0105】
また、図4に示すように、絶縁粒子3が溶融したり、変形したりすることによって、絶縁粒子3に由来する層26が、導電性粒子2と電極22b,23bとの接触部分の周辺に形成される。絶縁粒子3が上記P−OH基又は上記Si−OH基を表面3aに有する場合には、上記P−OH基又は上記Si−OH基は、導電性粒子2の表面2aの導電層だけでなく、金属により形成された電極22b,23bにも強固に化学結合する。このため、絶縁粒子3に由来する層26は、電極22b,23bと強固に化学結合する。
【0106】
従って、絶縁粒子3が上記P−OH基又は上記Si−OH基を表面3aに有する絶縁粒子付き導電性粒子1を用いた場合には、絶縁粒子3に由来する層26が電極22b,23bと強固に化学結合するため、導電性粒子2と電極22b,23bとの接着強度を高めることができる。このため、電極間の接続信頼性を高めることができる。
【0107】
また、接続構造体21の変形例を図5に示すように、複数の電極22b,23b間にそれぞれ配置された絶縁粒子付き導電性粒子1A,1Bが、他の絶縁粒子付き導電性粒子1C,1Dに接触し、絶縁粒子付き導電性粒子1A〜1Dが連なることがある。近年、隣接する複数の電極22bの間隔、及び隣接する複数の電極23bの間隔が狭くなってきている。横方向の電極22b,23bの間隔が狭いと、連なった絶縁粒子付き導電性粒子1A〜1Dを介して、横方向に隣接する電極22b,23bが接触することがある。
【0108】
絶縁粒子3が上記P−OH基又は上記Si−OH基を表面3aに有する場合には、大きな力が与えられない限り絶縁粒子3が導電性粒子2の表面2aから脱離し難いので、複数の絶縁粒子付き導電性粒子1が接触しても、導電性粒子2の間には絶縁粒子3が存在する。このため、隣接する複数の電極22b,23bの短絡を抑制できる。すなわち、複数の絶縁粒子付き導電性粒子1が接触したとしても、接続されてはならない横方向に隣接する複数の電極22b,23bが、複数の導電性粒子2により接続され難い。
【0109】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0110】
(絶縁粒子A〜E及びIの作製)
(1)絶縁粒子Aの作製
4ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブを取り付けた1000mLセパラブルフラスコに、メタクリル酸グリシジル45mmol、メタクリル酸メチル380mmol、ジメタクリル酸エチレングリコール13mmol、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールメタクリレート0.5mmol、及び2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミジノ]プロパン}1mmolを含むモノマー組成物を用意した。該モノマー組成物を固形分率が10重量%となるように蒸留水に秤取した後、200rpmで攪拌し、窒素雰囲気下60℃で24時間重合を行った。反応終了後、凍結乾燥して、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールメタクリレートに由来する上記P−OH基を表面に有する絶縁粒子Aを得た。
【0111】
(2)絶縁粒子Bの作製
上記アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールメタクリレートを、アシッドホスホオキシエチルメタクリレートに変更したこと以外は絶縁粒子Aと同様にして、アシッドホスホオキシエチルメタクリレートに由来する上記P−OH基を表面に有する絶縁粒子Bを得た。
【0112】
(3)絶縁粒子Cの作製
上記アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールメタクリレートを、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレートに変更したこと以外は絶縁粒子Aと同様にして、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレートに由来する上記P−OH基を表面に有する絶縁粒子Cを得た。
【0113】
(4)絶縁粒子Dの作製
4ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブを取り付けた1000mLセパラブルフラスコに、メタクリル酸グリシジル45mmol、メタクリル酸メチル380mmol、ジメタクリル酸エチレングリコール13mmol、ビニルトリヒドロキシシラン0.5mmol、及び2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミジノ]プロパン}1mmolを含むモノマー組成物を用意した。該モノマー組成物を固形分率が10重量%となるように蒸留水に秤取した後、200rpmで攪拌し、窒素雰囲気下60℃で24時間重合を行った。反応終了後、凍結乾燥して、ビニルトリヒドロキシシランに由来する上記Si−OH基を表面に有する絶縁粒子Dを得た。
【0114】
(5)絶縁粒子Eの作製
上記ビニルトリヒドロキシシランを、3−メタクリロキシプロピルトリヒドロキシシランに変更したこと以外は絶縁粒子Dと同様にして、3−メタクリロキシプロピルトリヒドロキシシランに由来する上記Si−OH基を表面に有する絶縁粒子Eを得た。
【0115】
(6)絶縁粒子Iの作製
4ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブを取り付けた1000mLセパラブルフラスコに、メタクリル酸グリシジル45mmol、メタクリル酸メチル380mmol、ジメタクリル酸エチレングリコール13mmol、及び2,2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミジノ]プロパン}1mmolを含むモノマー組成物を用意した。該モノマー組成物を固形分率が10重量%となるように蒸留水に秤取した後、200rpmで攪拌し、窒素雰囲気下60℃で24時間重合を行った。反応終了後、凍結乾燥して、P−OH基及びSi−OH基を表面に有しない絶縁粒子Iを用意した。
【0116】
(導電性粒子A〜Bの作製)
(1)導電性粒子A(最外層がニッケル層)の作製
平均粒子径3μmのテトラメチロールメタンテトラアクリレートとジビニルベンゼンとの共重合樹脂により形成された樹脂粒子10gに、水酸化ナトリウム水溶液によるアルカリ脱脂、酸中和、二塩化スズ溶液におけるセンシタイジングを行った。その後、二塩化パラジウム溶液におけるアクチベイチングによる無電解メッキ前処理を施し、濾過、洗浄して、粒子表面にパラジウムを付着させた樹脂粒子を得た。
【0117】
この樹脂粒子を用いて以下の無電解ニッケルめっき工程を行った。
【0118】
無電解ニッケルめっき工程:
上記樹脂粒子を、イオン吸着剤の10重量%溶液により5分間処理し、次に硫酸パラジウム0.01重量%水溶液に添加した。その後、ジメチルアミンボランを加えて還元処理し、ろ過し、洗浄することにより、パラジウムが付着された樹脂粒子を得た。
【0119】
次に、イオン交換水500mLにコハク酸ナトリウムを溶解させたコハク酸ナトリウム1重量%溶液を調製した。この溶液にパラジウムが付着された樹脂粒子10gを加え、混合し、スラリーを調製した。スラリーに硫酸を添加し、スラリーのpHを5に調整した。
【0120】
ニッケルめっき液として、硫酸ニッケル10重量%、次亜リン酸ナトリウム10重量%、水酸化ナトリウム4重量%及びコハク酸ナトリウム20重量%を含む前期ニッケルめっき溶液を調製した。pH5に調整された上記スラリーを80℃に加温した後、スラリーに前期ニッケルめっき溶液を連続的に滴下し、20分間攪拌することによりめっき反応を進行させた。水素が発生しなくなったことを確認し、めっき反応を終了した。
【0121】
次に、硫酸ニッケル20重量%、ジメチルアミンボラン5重量%及び水酸化ナトリウム5重量%を含む後期ニッケルめっき溶液を調製した。前期ニッケルめっき溶液によるめっき反応を終えた溶液に、後期ニッケルめっき液を連続的に滴下し、1時間攪拌することによりめっき反応を進行させた。このようにして、樹脂粒子の表面にニッケル層を形成し、導電性粒子Aを得た。なお、ニッケル層の厚みは0.1μmであった。
【0122】
(2)導電性粒子B(最外層がパラジウム層)の作製
得られた上記導電性粒子Aを用いて、以下の無電解パラジウムめっき工程を行った。
【0123】
無電解パラジウムめっき工程:
得られた導電性粒子A10gを、イオン交換水500mLに添加し、超音波処理機により充分に分散させ、粒子懸濁液を得た。この懸濁液を50℃で攪拌しながら、硫酸パラジウム0.02mol/L、錯化剤としてエチレンジアミン0.04mol/L、還元剤として蟻酸ナトリウム0.06mol/L及び結晶調整剤を含むpH10.0の無電解めっき液を徐々に添加し、無電解パラジウムめっきを行った。パラジウム層の厚みが0.03μmになった時点で無電解パラジウムめっきを終了した。次に、洗浄し、真空乾燥することにより、ニッケル層の表面にパラジウム層が積層された導電性粒子Bを得た。
【0124】
(絶縁粒子付き導電性粒子の作製)
(実施例1)
得られた絶縁粒子Aを超音波照射下で蒸留水に分散させ、絶縁粒子Aの10重量%水分散液を得た。得られた導電性粒子A10gを蒸留水500mLに分散させ、絶縁粒子Aの水分散液4gを添加し、室温で6時間攪拌した。3μmのメッシュフィルターで濾過した後、更にメタノールで洗浄、乾燥し、絶縁粒子付き導電性粒子を得た。
【0125】
(実施例2〜10)
使用した絶縁粒子と導電性粒子との種類を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、絶縁粒子付き導電性粒子を得た。
【0126】
(比較例1)
絶縁粒子Iと導電性粒子Aとを用いて、実施例1と同様にして、絶縁粒子付き導電性粒子を得ようと試みた。しかし、絶縁粒子Iは導電性粒子Aに付着しなかった。
【0127】
(比較例2)
絶縁粒子Iと導電性粒子Bとを用いて、実施例1と同様にして、絶縁粒子付き導電性粒子を得ようと試みた。しかし、絶縁粒子Iは導電性粒子Bに付着しなかった。
【0128】
(実施例1〜10及び比較例1〜2の評価)
(1)被覆率
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、得られた絶縁粒子付き導電性粒子を観察した。
【0129】
絶縁粒子付き導電性粒子の被覆率をSEMの画像解析により測定した。絶縁粒子付き導電性粒子の直径の半分の大きさを直径とする円をSEM画像に描き、円内の絶縁粒子付き導電性粒子の被覆率(円内の絶縁粒子付き導電性粒子の1個あたりの投影面積×絶縁粒子付き導電性粒子の数/円内の絶縁粒子付き導電性粒子の投影面積)を求めた。
【0130】
(2)絶縁粒子の付着性
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「エピコート1009」)10重量部と、アクリルゴム(重量平均分子量約80万)40重量部と、マイクロカプセル型硬化剤(旭化成ケミカルズ社製「HX3941HP」)50重量部と、シランカップリング剤(東レダウコーニングシリコーン社製「SH6040」)2重量部と、酢酸エチル150重量部とを混合し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物に絶縁粒子付き導電性粒子を含有量が3体積%となるように添加し、異方性導電材料を得た。
【0131】
得られた異方性導電材料の一部をトルエンで洗浄し、絶縁粒子付き導電性粒子を取り出した。SEMにより、取り出された絶縁粒子付き導電性粒子において、絶縁粒子が導電性粒子の表面から脱離しているか否かを観察し、絶縁粒子の付着性を下記の評価基準で評価した。
【0132】
[絶縁粒子の付着性の評価基準]
○○:絶縁粒子の全個数の90%以上が、導電性粒子の表面から脱離していない
○:絶縁粒子の全個数の60%以上、90%未満が、導電性粒子の表面から脱離していない
△:絶縁粒子の全個数の30%以上、60%未満が、導電性粒子の表面から脱離していない
×:絶縁粒子の全個数の30%未満が、導電性粒子の表面から脱離していない
【0133】
(3)粒子の分散性
上記(2)絶縁粒子の付着性の評価で得られた異方性導電フィルムにおいて、凝集した絶縁粒子付き導電性粒子が生じているか否かを観察した。絶縁粒子付き導電性粒子の分散性を下記の評価基準で評価した。
【0134】
[絶縁粒子付き導電性粒子の分散性の評価基準]
○○:凝集した絶縁粒子付き導電性粒子が生じていない
○:約25万個中、凝集した絶縁粒子付き導電性粒子がわずかに生じている
×:約25万個中、凝集した絶縁粒子付き導電性粒子が著しく生じている
【0135】
(4)隣接する電極間の絶縁性試験
上記(2)絶縁粒子の付着性の評価で得られた樹脂組成物を離型フィルム上に、乾燥後の厚みが10μmとなるように塗工し、酢酸エチルを蒸発させ、絶縁粒子付き導電性粒子を含まない第1の接着フィルムを得た。
【0136】
また、上記(2)絶縁粒子の付着性の評価で得られた異方性導電材料を離型フィルム上に、乾燥後の厚みが7μmとなるように塗工し、トルエンを蒸発させ、絶縁粒子付き導電性粒子を含む第2の接着フィルムを得た。得られた絶縁粒子付き導電性粒子を含まない第1の接着フィルムに、得られた絶縁粒子付き導電性粒子を含む第2の接着フィルムを常温でラミネートすることにより、2層構造の厚さ17μmの異方性導電フィルムを得た。
【0137】
得られた異方性導電フィルムを、4mm×18mmの大きさに切断した。また、櫛形パターン(ライン本数400本、重なり部の長さ2mm、ライン幅20μm、ライン間隔20μm、ライン高さ18μm)の金により形成された電極を下面に有するシリコンウエハ(縦3mm×横15mm×厚さ1mm)を用意した。さらに、上面にITOにより形成された電極を有するガラス基板(縦2mm×横12.5mm×厚さ1mm)を用意した。
【0138】
上記シリコンウエハの下面に、得られた異方性導電フィルムを第2の接着フィルム側から貼り付けた。次に、上記ガラス基板上に、上記シリコンウエハを異方性導電フィルム側から積層した。その後、下記条件1及び条件2で熱圧着し、測定サンプルを得た。得られた20個の測定サンプルの電極間の抵抗値を測定して、抵抗値が10Ω以上の測定サンプルの数を数え、下記の評価基準で評価した。
【0139】
条件1:20Nの加圧下、150℃で30分間加熱
条件2:200Nの加圧下、200℃で30秒間加熱
【0140】
[隣接する電極間の絶縁性試験の評価基準]
○○:抵抗値が10Ω以上の測定サンプルの割合が80%以上
○:抵抗値が10Ω以上の測定サンプルの割合が60%以上、80%未満
×:抵抗値が10Ω以上の測定サンプルの割合が60%未満
【0141】
(5)対向する電極間の導通試験
上記(4)隣接する電極間の絶縁性試験で得られた異方性導電フィルムを5mm×5mmの大きさに切断した。また、ITO電極を片面に有するガラス基板(縦25mm×横35mm×厚さ1mm)を用意した。
【0142】
上記ガラス基板の上記ITO電極が設けられた面の中央の領域に、異方性導電フィルムを貼り付けた後、電極が対向するように位置合わせして、別の上記ガラス基板を貼り付けた。その後、下記の条件1及び条件2により熱圧着し、測定サンプルを得た。4端子法により、得られた20個の測定サンプルの抵抗値を測定し、抵抗値が5Ω以下の測定サンプルの数を数え、下記の評価基準で評価した。
【0143】
条件1:20Nの加圧下、150℃で30分間加熱
条件2:200Nの加圧下、200℃で30秒間加熱
【0144】
[電極間の導通試験の評価基準]
○:抵抗値が5Ω以下の測定サンプルの割合が80%以上
△:抵抗値が5Ω以下の測定サンプルの割合が60%以上、80%未満
×:抵抗値が5Ω以下の測定サンプルの割合が60%未満
【0145】
(6)密着性試験
上記対向する電極間の導通試験(5)の上記条件1で得られ測定サンプルを用意した。この測定サンプルを、55℃で6時間と120℃で6時間とのサイクル下で300時間放置した。その後、測定サンプルの断面をSEMにより観察し、導電性粒子−絶縁粒子間と、絶縁粒子−バインダー樹脂間との界面剥離の有無を観察し、下記の評価基準で評価した。
【0146】
[密着性試験の評価基準]
○:導電性粒子−絶縁粒子間又は絶縁粒子−バインダー樹脂間での界面剥離なし
△:導電性粒子−絶縁粒子間又は絶縁粒子−バインダー樹脂間で僅かに界面剥離あり
×:導電性粒子−絶縁粒子間又は絶縁粒子−バインダー樹脂間で僅かに界面剥離あり
【0147】
(7)電気伝導度
攪拌機を用いて、実施例の絶縁粒子付き導電性粒子又は比較例の導電性粒子0.5gをイオン交換水50gに、23℃で分散させ、分散液を得た。この分散液を100℃で10時間放置した。濾過装置を用いて、放置後の分散液から、絶縁粒子付き導電性粒子又は導電性粒子を除去して液を得た。得られた液の電気伝導度を、電気伝導度計COND METER ES−51(堀場製作所社製)を用いて、液温23℃の条件で測定した。
【0148】
(8)発熱量
実施例の絶縁粒子付き導電性粒子又は比較例の導電性粒子0.03gをトルエン1.0gに、23℃で分散させた時の、この分散液における絶縁粒子付き導電性粒子又は導電性粒子1g当たりの発熱量を、マイクロカロリーメーター「TAMIII」(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて測定した。
【0149】
結果を下記の表1に示す。
【0150】
【表1】

【0151】
(実施例11)
導電性粒子A10gを、ジアミノジスルフィド1gを溶かしたメチルエチルケトン80gに入れ40℃で30分間攪拌した後、濾過し、濾別した粒子を得た。濾別した粒子を100gのメタノールに入れて40℃で30分間攪拌した後、濾過し、その後、50℃で5時間、真空乾燥した。
【0152】
(実施例12)
導電性粒子Aの表面に置換金めっき法により、0.02μmの金層を形成し、導電性粒子Cとした。導電性粒子C10gを、ジアミノジスルフィド1gを溶かしたメチルエチルケトン80gに入れ40℃で30分間攪拌した後、濾過し、濾別した粒子を得た。濾別した粒子を100gのメタノールに入れて40℃で30分間攪拌した後、濾過し、その後、50℃で5時間、真空乾燥した。
【0153】
(比較例3)
導電性粒子Aを処理することなく、そのまま評価に用いた。
【0154】
(比較例4)
導電性粒子Cを処理することなく、そのまま評価に用いた。
【0155】
(実施例11〜12及び比較例3〜4の評価)
測定サンプルの作製の際に絶縁粒子付き導電性粒子を導電性粒子に変更したこと以外は実施例1〜10及び比較例1〜2と同様にして、(3)粒子の分散性、(4)隣接する電極間の絶縁性試験、(5)対向する電極間の導通試験、(6)密着性試験、(7)電気伝導度、及び(8)発熱量の評価項目について評価を行った。但し、実施例11〜12及び比較例3〜4では、(3)粒子の分散性及び(6)密着性試験については、下記の判定基準で判定した。
【0156】
[粒子の分散性の評価基準]
○○:導電性粒子が沈降しておらず、かつ凝集した導電性粒子が生じていない
○:導電性粒子がわずかに沈降しているか、又は凝集した導電性粒子がわずかに生じている
×:導電性粒子が著しく沈降しているか、又は凝集した導電性粒子が著しく生じている
【0157】
[密着性試験の評価基準]
○:導電性粒子−絶縁粒子間での界面剥離なし
△:導電性粒子−絶縁粒子間で僅かに界面剥離あり
×:導電性粒子−絶縁粒子間で僅かに界面剥離あり
結果を下記の表2に示す。
【0158】
【表2】

【符号の説明】
【0159】
1…絶縁粒子付き導電性粒子
1A〜1D…絶縁粒子付き導電性粒子
2…導電性粒子
2a…表面
3…絶縁粒子
3a…表面
4…基材粒子
4a…表面
5…導電層
11…絶縁粒子付き導電性粒子
12…導電性粒子
12a…表面
21…接続構造体
22…第1の接続対象部材
22a…上面
22b…電極
23…第2の接続対象部材
23a…下面
23b…電極
24…接続部
25…バインダー樹脂
26…絶縁粒子に由来する層
51…導電性粒子
51a…表面
52…基材粒子
52a…表面
53…導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層を少なくとも表面に有し、
導電性粒子0.03gをトルエン1.0gに23℃で分散させたときに、分散液における導電性粒子1g当たりの発熱量が10mJ以上である、導電性粒子。
【請求項2】
平均粒子径が1〜20μmである、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項3】
前記導電層の最表面が金層、ニッケル層又はパラジウム層である、請求項1又は2に記載の導電性粒子。
【請求項4】
前記導電性粒子が、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆している導電層とを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項5】
導電層を表面に有する導電性粒子と、
前記導電性粒子の表面に付着している絶縁粒子とを備え、
絶縁粒子付き導電性粒子0.03gをトルエン1.0gに23℃で分散させたときに、分散液における発熱量が絶縁粒子付き導電性粒子1g当たり10mJ以上である、絶縁粒子付き導電性粒子。
【請求項6】
前記導電性粒子の平均粒子径が1〜20μmである、請求項5に記載の絶縁粒子付き導電性粒子。
【請求項7】
前記絶縁粒子による前記導電性粒子の被覆率が5〜70%である、請求項5又は6に記載の絶縁粒子付き導電性粒子。
【請求項8】
前記導電層の最表面が金層、ニッケル層又はパラジウム層である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の絶縁粒子付き導電性粒子。
【請求項9】
前記導電性粒子が、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆している導電層とを有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の絶縁粒子付き導電性粒子。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、異方性導電材料。
【請求項11】
請求項5〜9のいずれか1項に記載の絶縁粒子付き導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、異方性導電材料。
【請求項12】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、
前記接続部が請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性粒子、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料により形成されている、接続構造体。
【請求項13】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、
前記接続部が請求項5〜9のいずれか1項に記載の絶縁粒子付き導電性粒子、又は該絶縁粒子付き導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料により形成されている、接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−54144(P2012−54144A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196709(P2010−196709)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】