説明

導電性粒子及びこれを含む導電性部材

【課題】 耐磨耗性が高く、自己潤滑性の高い導電性部材を得るための導電性粒子と、この導電性粒子を含む導電性ローラや導電性シート等の導電性部材を提供する。
【解決手段】 超高分子量ポリエチレン樹脂粒子231の表面に導電層232を有する導電性粒子23。ゴム層22等の絶縁材料中に当該導電性粒子23を含む導電性ローラ又は導電性シート等の導電性部材。導電性粒子の超高分子量ポリエチレン樹脂が有する耐磨耗性と自己潤滑性によって耐磨耗性に優れかつ自己潤滑性の高い導電性部材が形成でき高寿命化が実現できる。また、所要の電気抵抗特性を有する帯電可能なローラやシートとして構成し、画像形成装置の信頼性を向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性粒子に関し、特に電子写真方式のレーザプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる帯電ローラ、現像ローラ等の導電性部材を形成するのに好適な導電性粒子及びこれを含む導電性部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、後述する実施例の記載から明らかにされるように感光ドラムの円周に沿って現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等の導電性ローラが配設されており、帯電ローラは所定電位が印加されることで感光ドラムの表面を帯電させる。現像ローラは表面に付着した現像トナーを帯電させ、露光手段によって感光ドラムに形成された静電潜像に対して現像トナーを付着させて顕像化させる。転写ローラは静電力を利用して感光ドラムに形成された現像トナーを用紙に転写させる。また、一部の画像形成装置では転写ローラに代えてベルト状に形成した転写シートを用いたものもある。
【0003】
これらのローラやシートはいずれも表面ないしこれに近い領域に帯電性を有することが必要であり、そのためにローラやシートは所要の電気抵抗特性を有する導電性ローラあるいは導電性シートとして形成される。この種のローラやシートは感光ドラム等に対する密着性の高い接触を得るために通常ゴムや樹脂等の比較的に柔軟な材料で形成されるため、所要の電気抵抗特性を得るためにはローラやシートの表面領域に抵抗層を形成しており、この抵抗層を形成するためにローラやシートを構成するゴムや樹脂の母材に導電性物質や導電性粒子を含有させて導電性を得ている。例えば、特許文献1では、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エポキシ樹脂、ポリエステル等の有機高分子材料からなる母粒子の表面にカーボンブラック等の導電性材料で被覆した導電性粒子をゴムローラに含ませている。また、同様な技術として特許文献2では、シリカ、酸化チタン等の酸化物やセラミックからなる母粒子の表面にカーボンブラック、グラファイト等の導電材を被覆させた導電性複合粒子をローラの抵抗層に含ませている。
【特許文献1】特開2003−162106号公報
【特許文献2】特開2006−133591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のローラやシートは感光ドラムやその他の部材或いは用紙に接した状態で回転されあるいは移動されたときに、接触面においてローラやシートの表面が磨耗され、ローラやシートに含まれる導電性粒子が表面に露呈される。このとき特許文献1の導電性粒子の母粒子となる前記した高密度ポリエチレン、エポキシ樹脂、ポリエステル等の有機高分子材料の耐磨耗性が低いため導電性粒子も磨耗されてしまい、帯電性が劣化されて画像品質の低下をまねく等、画像形成装置のローラとしての寿命が短くなる。一方、特許文献2の導電性粒子の母粒子となるシリカ、セラミック等は硬度が高いためにローラやシートの表面の磨耗によって導電性粒子が表面に露呈されるとローラやシートに接触される感光ドラムやその他の部材に傷を生じさせ、画像品質を低下させてしまう。また、特許文献1と2の導電性粒子の母粒子はいずれも自己潤滑性が低いため、感光ドラムやその他の部材との接触に際しての物理的な抵抗力が大きく、円滑な回転や回動が阻害されるという問題が生じる。また、自己潤滑性が低いためにローラやシートの表面に現像トナーが固着し、形成した画像中のカブリや汚れを発生させる要因にもなっている。
【0005】
本発明の目的は、耐磨耗性を高めるとともに自己潤滑性の高い導電性部材を得るための導電性粒子と、この導電性粒子を含む導電性ローラや導電性シート等の導電性部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の導電性粒子は、超高分子量ポリエチレン樹脂粒子の表面に導電層を有することを特徴とする。また、本発明の導電性部材は、絶縁材料中に前記本発明にかかる導電性粒子を含むことを特徴とする。例えば、絶縁材料としてゴム又は樹脂が用いられる。また、本発明の導電性部材はローラ又はシートとして構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電性粒子によれば、超高分子量ポリエチレン樹脂が有する耐磨耗性と自己潤滑性によって耐磨耗性に優れかつ自己潤滑性の高い導電性部材が形成でき、当該導電性部材の高寿命化が実現できる。また、本発明の導電性部材によれば、導電性粒子を含有した所要の電気抵抗特性を有する帯電可能な導電性ローラや導電性シートを構成したときに、耐磨耗性及び自己潤滑性に優れた導電性ローラや導電性シートが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の導電性粒子は超高分子量ポリエチレン樹脂からなる球形又は球形に近い形状をした母粒子の表面にカーボンブラックあるいはその他の導電性材料をコーティングして構成される。また、本発明の導電性部材は、画像形成装置の帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、あるいは転写シート等として構成したときには、当該画像形成装置の画像品質の低下を抑制した高品質の装置が実現できる。
【実施例1】
【0009】
次に、本発明の実施例1を図面を参照して説明する。図1は電子写真式画像形成装置の概略構成を示しており、円筒状をした感光ドラム1の円周に沿って帯電ローラ2、露光装置3、現像ローラ5を有する現像装置4、転写ローラ6、クリーナ装置7が配設されている。帯電ローラ2は所定電位V1が印加されることで感光ドラム1の表面を帯電させる。現像ローラ5は所定電位V2が印加されて帯電し、表面に現像トナーを帯電付着させる。そして、レーザ走査装置等からなる露光装置3によって感光ドラム1に所要パターンを光描画することによって形成された静電潜像に対して帯電した現像トナーを付着させて顕像化させる。転写ローラ6は印加される所定電位V3により帯電し、その静電力を利用して感光ドラム1に形成された現像トナーを用紙Pに転写させる。また、感光ドラム1の表面に残存している現像トナーはクリーナ装置7により除去する。ここで前記帯電ローラ2、現像ローラ5、転写ローラ6はそれぞれ本発明にかかる導電性ローラとして構成されている。
【0010】
図2は本発明にかかる導電性ローラを代表して示す帯電ローラ2の断面図であり、鉄、銅、ステンレス等の金属等で代表される良導体からなる導電軸21と、この導電軸21の周囲にゴム層22が一体に形成されて所要の径寸法をしたロール体として形成されている。このゴム層22は天然ゴム、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等の合成ゴムで構成される。このゴム層22内には、同図に一部を拡大した模式図を示すように、極めて多数の導電性粒子23を含有させており、この導電性粒子23によってゴム層22を体積抵抗が1×10〜1×1010Ω・cmの導電性を付与させている。
【0011】
前記導電性粒子23は図2に拡大図示するように、母粒子231と、この母粒子231の表面に形成された導電層232とで構成されている。母粒子231は超高分子量ポリエチレン樹脂で構成されており、粒径が1〜50μm程度の球形、若しくはこれに近い多角形体に形成されている。導電層232はカーボンブラックで構成され、前記母粒子231の表面にコーティングされている。前記ゴム層22は、硬化前のゴム材料中にこの導電性粒子23を懸濁状態に混入させることによって形成する。また、形成するゴム層22の体積抵抗の値は含有させる導電性粒子23の粒径や混入量、すなわちゴム層22中での導電性粒子23の密度を調整することにより可能である。例えば、実施例1のような画像形成装置の各ローラに用いる場合にはゴム材料中における導電性粒子23の体積割合は10〜80%にすることが好ましい。
【0012】
このような構成の帯電ローラ2では、図1に示した画像形成装置に配設したときにはゴム層22の表面を感光ドラム1の表面に所要の押圧力で接触させ、感光ドラム1の回転と同じ表面速度で同一表面方向に回転駆動されるように構成する。また、帯電ローラ2の導電軸21には所定電圧(例えば、直流電圧)V1が印加され、この電位による電界がゴム層22中の導電性粒子23を介して表面に及ぶことにより、これに接触されている感光ドラム1の表面が所定の磁性電位に帯電されることになる。
【0013】
また、帯電ローラ2と同様な構造に形成されている現像ローラ5は、図示は省略するがそのゴム層の表面が感光ドラム1の表面に接触されており、導電軸に印加された所定電位V2によりゴム層の表面が帯電し、現像装置4内に装填されている現像トナーを静電吸着し、現像トナーを帯電させる。そして、現像ローラ5の回転に伴ない現像トナーを静電力により感光ドラム1の表面に形成された静電潜像に付着させ、顕像化させる。
【0014】
さらに、帯電ローラ2と同様に形成されている転写ローラ6は、図示は省略するがゴム層の表面が感光ドラム1の表面に所要の押圧力で接触されており、この転写ローラ6と感光ドラム1との間に用紙Pが供給されるようになっている。転写ローラ6は導電軸に印加された所定電位V3によりゴム層の表面が帯電され、この帯電による静電力によって感光ドラム1の表面に付着している現像トナーを用紙Pの表面に転写させる。
【0015】
このように帯電ローラ2、現像ローラ5、転写ローラ6は印加される電位によりゴム層の表面が帯電された上で感光ドラム1や用紙Pと接触した状態で回転駆動されるが、この際に各ローラのゴム層の表面に摩擦による磨耗が生じる状況となる。しかし、実施例1の各ローラでは、図2に示した帯電ローラ2で説明したように、ゴム層22に含まれている導電性粒子23は母粒子231が超高分子ポリエチレン樹脂で形成されており、この超高分子ポリエチレン樹脂は平均分子量が500万以上で通常の高密度ポリエチレン樹脂の分子量5〜50万に比較して極めて大きく、耐磨耗性、自己潤滑性、耐薬品性、低温特性、非吸水性等の種々の特徴を有しており、特に耐磨耗性と自己潤滑性において顕著に優れている。すなわち、
(a)耐磨耗性:フッ素樹脂の6倍、ナイロン樹脂の5倍、通常の高分子ポリエチレン等の高分子樹脂の数倍である。
(b)自己潤滑性:すべり特性がフッ素樹脂と同等で、通常の高分子樹脂よりも高い。
【0016】
したがって、帯電ローラ2においてゴム層22の表面に磨耗が生じる状況になった場合でも、導電性粒子23を構成している超高分子ポリエチレン樹脂の耐磨耗性によって磨耗の進行が抑制される。また、導電性粒子23を構成している超高分子ポリエチレン樹脂の自己潤滑性によって感光ドラム1との接触面におけるローラの円滑な回転が可能になる。また、現像ローラ5と転写ローラ6についても同様に耐磨耗性と円滑な回転が可能になる。さらに、転写ローラ6では自己潤滑性によって現像トナーが固着することが防止される。これにより、実施例1の帯電ローラ2、現像ローラ5、転写ローラ6においては帯電に好適な状態を保持しつつ感光ドラム1や用紙Pの各表面との良好な接触状態を保持し、良質の画像形成が可能になる。
【実施例2】
【0017】
図3は本発明の導電部材を画像形成装置の転写シートに適用した実施例2の構成図である。図1と等価な部分には同一符号を付して説明は省略する。転写シート6Aは感光ドラム1の円周一部の現像装置4の回転方向の下流側に配置されており、ポリイミド樹脂やボリカーボネート樹脂等の樹脂により無端ベルト状に形成されて複数本(ここでは3本)のガイドローラ9の回りに回動され、その回動方向の一部において感光ドラム1に接触されている。また、感光ドラム1に接触している部位の内側に静電転写器8が備えられ、感光ドラム1の表面に付着した現像トナーを静電力で転写シート6Aに転写させる。転写シート6Aは感光ドラム1と反対側において押圧ローラ10により用紙Pが押圧され、転写シート6Aに転写されている現像トナーを用紙Pに転写する。この転写に際しては押圧ローラ10に印加する所定電位により用紙Pを帯電して静電力によって転写を行うようにしてもよい。
【0018】
図4に前記転写シート6Aの一部を破断した斜視図を示すように、転写シート6Aはゴムシート或いは樹脂シートで構成されており、このゴムシート内、或いは樹脂シート内に実施例1と同様に導電性粒子23を含ませて導電性シートとして構成したものである。すなわち、導電性粒子23は図4に拡大断面を示すように母粒子231と、この母粒子231の表面に形成された導電層232とで構成されている。母粒子231は粒径が1〜50μm程度の球形、若しくはこれに近い多角形体をした超高分子量ポリエチレン樹脂で構成されて。導電層232はカーボンブラックで構成され、母粒子231の表面にコーティングされていることは実施例1と同じである。この導電性粒子23を転写シート6Aを形成するゴム又は樹脂内に懸濁状態に混入させることで、体積抵抗が1×10〜1×1010Ω・cmの導電性シートとして構成される。
【0019】
なお、この実施例2では、図4に示すように、前記転写シート6Aの内面の両端に沿った領域には細い帯状のガイドテープ61がエンドレス状態に一体的に接着されており、このガイドテープ61がガイドローラ9の周面の両端に設けられた凹溝9aに嵌入することで、転写シート6Aが回動されるときにガイドローラ9の回転軸方向に位置移動されること、いわゆる蛇行を防止することが可能とされている。ガイドテープ61は例えばポリウレタン樹脂を厚さ1mm、幅5mm程度のストリップ状に形成し、両面テープ等を用いて転写シート6Aの内面に貼り付けて形成する。
【0020】
実施例2の転写シート6Aは、感光ドラム1との接触による磨耗や、ガイドローラ9との接触による磨耗が進行される状況となるが、シートを構成しているゴムや樹脂内に含まれる導電性粒子23を構成している超高分子ポリエチレン樹脂の耐磨耗性によって磨耗の進行が抑制される。これにより、帯電に好適な状態を保持しつつ感光ドラム1、ガイドローラ9、及び用紙Pの表面との良好な接触状態を保持し、良質の画像形成が可能になる。また、導電性粒子23を構成している超高分子ポリエチレン樹脂の自己潤滑性によって感光ドラム1、ガイドローラ9、用紙Pとの接触によっても転写シート6Aの円滑な回動が可能になる。さらに、超高分子ポリエチレン樹脂の導電性粒子23による転写シート6Aの自己潤滑性によって現像トナーが固着することも防止され、転写後も転写シートに残存している現像トナーを好適に除去することが可能になる。
【0021】
ここで以上の説明において実施例1は本発明をゴムローラに適用しているが、本発明を樹脂ローラに適用することも可能である。また、本発明は画像形成装置用の導電性ローラや導電性シートに限られるものではなく、導電性を有するローラやシート、あるいはその他の形状をした導電性部材であれば本発明を同様に適用することが可能である。
【0022】
また、実施例1,2ではゴムや樹脂の全体に本発明の導電性粒子を含有させているが、本発明の導電性部材はこれらゴムや樹脂等の絶縁材の表面領域にのみ抵抗層を形成し、この抵抗層に本発明の導電性粒子を含有させるように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の画像形成装置の概念構成図である。
【図2】帯電ローラと導電性粒子の拡大断面図である。
【図3】実施例2の画像形成装置の概念構成図である。
【図4】転写シートと導電性粒子の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 露光装置
4 現像装置
5 現像ローラ
6 転写ローラ
6A 転写シート
7 クリーナ装置
8 静電転写器
9 ガイドローラ
10 押圧ローラ
21 導電軸
22 ゴム層(絶縁材料)
23 導電性粒子
231 母粒子(超高分子ポリエチレン樹脂)
232 導電層
61 ガイドテープ
P 用紙



【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高分子量ポリエチレン樹脂粒子の表面に導電層を有することを特徴とする導電性粒子。
【請求項2】
絶縁材料中に請求項1の導電性粒子を含むことを特徴とする導電性部材。
【請求項3】
前記絶縁材料がゴム又は樹脂であり、ローラ又はシートとして構成されていることを特徴とする請求項2に記載の導電性部材。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−216827(P2008−216827A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56562(P2007−56562)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(597115738)株式会社栄和 (6)
【Fターム(参考)】