説明

導電性粒子及び異方性導電材料

【課題】近年の電子機器の急激な進歩や発展に伴って、異方性導電材料として用いられる導電性粒子の接続抵抗の更なる低減が求められてきているのに対し、導通不良防止とともに抵抗値の低減化が可能な導電性粒子及び異方性導電材料を提供する。
【解決手段】基材粒子と、前記基材粒子の表面に形成されたニッケル又はニッケル合金を含有する導電層とからなる導電性粒子であって、前記導電層は、表面に塊状微粒子の凝集体からなる突起を有する導電性粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導通不良防止とともに抵抗値の低減化が可能な導電性粒子及び異方性導電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粒子は、バインダー樹脂や粘接着剤等と混合、混練することにより、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、異方性導電シート等の異方性導電材料として広く用いられている。
【0003】
これらの異方性導電材料は、例えば、液晶ディスプレイ、パーソナルコンピュータ、携帯電話等の電子機器において、回路基板同士を電気的に接続したり、半導体素子等の小型部品を回路基板に電気的に接続したりするために、相対向する回路基板や電極端子の間に挟み込んで使用されている。
【0004】
このような異方性導電材料に用いられる導電性粒子としては、従来、粒子径が均一で、適度な強度を有する樹脂粒子等の非導電性粒子の表面に、導電層として金属メッキ層を形成させた導電性粒子が用いられている。しかしながら、このような異方性導電材料を用いて回路基板同士を電気的に接続すると、導電性粒子表面の導電層と回路基板等との間にバインダー樹脂等がはさまり、導電性粒子と回路基板等との間の接続抵抗が高くなることがあった。特に近年の電子機器の急激な進歩や発展に伴って、導電性粒子と回路基板等との間の接続抵抗の更なる低減が求められてきている。
【0005】
接続抵抗を低減する目的で、表面に突起を有する導電性粒子が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この導電性粒子は、導電性粒子表面の導電層と回路基板等との間に存在するバインダー樹脂等を突起が突き破ることで(樹脂排除性)、突起と回路基板等とを確実に接続させることで、導電性粒子と回路基板等との間の接続抵抗の低減を図っている。
【0006】
しかしながら、このような表面に突起を有する導電性粒子を用いても樹脂排除以上の効果は得られず、接続抵抗の低減効果は不充分であった。
【特許文献1】特開2000−243132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、導通不良防止とともに抵抗値の低減化が可能な導電性粒子及び異方性導電材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材粒子と、前記基材粒子の表面に形成されたニッケル又はニッケル合金を含有する導電層とからなる導電性粒子であって、前記導電層は、表面に塊状微粒子の凝集体からなる突起を有する導電性粒子である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、回路基板等の電気的接続に用いる導電性粒子として、所定の突起を有する導電性粒子を用いることで、樹脂排除して確実に導電性粒子と回路基板等とを接触させることができることに加え、導電接続時に回路基板間を圧着したときに、突起部分がつぶれることにより導電性粒子と回路基板等との接触を点接触から面接触とすることにより、回路基板と導電性粒子とを確実に導電接続させることができ、接続抵抗を低減することができるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の導電性粒子は、基材粒子と、上記基材粒子の表面に形成されたニッケル又はニッケル合金を含有する導電層とからなる導電性粒子である。
【0011】
上記基材粒子としては特に限定されず、適度な弾性率、弾性変形性及び復元性を有するものであれば無機材料を用いてなるものでも有機材料を用いてなるものでもよいが、弾性変形性及び復元性に優れていることから、樹脂を用いてなる樹脂粒子であることが好ましい。
【0012】
上記樹脂粒子を構成する樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;アクリレートとジビニルベンゼンとの共重合樹脂、ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラニンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0013】
上記基材粒子の平均粒子径としては特に限定されないが、好ましい下限は1μm、好ましい上限は20μmである。1μm未満であると、例えば、無電解メッキをする際に凝集しやすく、単粒子としにくくなることがあり、20μmを超えると、異方性導電材料として回路基板等に用いられる範囲を超えることがある。
なお、上記基材粒子の平均粒子径は、無作為に選んだ50個の基材粒子について粒子径を測定し、これらを算術平均したものとする。
【0014】
上記導電層を構成するニッケル合金を形成するニッケル以外の金属としては特に限定されず、例えば、亜鉛、鉄、鉛、錫、銅、コバルト、アンチモン、ビスマス等が挙げられる。
また、上記導電層を構成するニッケル合金を形成する非金属としては特に限定されず、例えば、リン、ホウ素等が挙げられる。これらの非金属は、導電層を形成する際に用いられるメッキ液中の還元剤等に一般的に含有されている。
【0015】
上記導電層は、含リン率の好ましい下限が2%、好ましい上限が8%である。これにより、後述する突起の硬さが適度なものとなり、効果的に導通不良防止とともに、抵抗値の低減化が可能となる。
【0016】
上記導電層は、表面に塊状微粒子の凝集体からなる突起を有する。
本発明の導電性粒子においては、上記突起が塊状微粒子の凝集体で構成されていることにより、上記突起が、本発明の導電性粒子を用いてなる異方性導電材料を回路基板等に挟んで導電接続時に圧着することにより崩れる柔らかい突起となる。その結果、回路基板等と本発明の導電性粒子との間に存在する異方性導電材料中のバインダー樹脂等を突き破るとともに(樹脂排除性)、回路基板等の面で突起がつぶれ、先端が平坦化するため、本発明の導電性粒子と回路基板等とが面接触となり、導通不良防止とともに、抵抗値の低減化が可能となる。
【0017】
上記導電層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は10nm、好ましい上限は500nmである。10nm未満であると、所望の導電性が得られないことがあり、500nmを超えると、基材粒子と導電層との熱膨張率の差から、上記導電層が剥離しやすくなることがある。
なお、上記導電層の厚さは、無作為に選んだ10個の粒子について測定し、これらを算術平均した厚さである。
【0018】
上記塊状微粒子の平均粒子径としては特に限定されないが、好ましい下限は50nm、好ましい上限は300nmである。50nm未満であると、突起部分の強度が著しく劣り、本発明の導電性粒子をバインダー樹脂等と混練するとき等に突起が破損することがあり、300nmを超えると、突起が高くなりすぎ、回路基板等を圧着したときに突起がつぶれないことがある。
【0019】
上記突起の平均高さとしては特に限定されないが、好ましい下限は上記基材粒子の平均粒子径の3%、好ましい上限は上記基材粒子の平均粒子径の17%である。上記基材粒子の平均粒子径の3%未満であると、充分な樹脂排除性が得られないことがあり、上記基材粒子の平均粒子径の17%を超えると、突起が回路基板等に深くめり込み、回路基板等を破損させるおそれがある。
【0020】
上記突起の存在密度としては特に限定されないが、導電性粒子1個に対して好ましい下限は25個、好ましい上限は50個である。25個未満であると、導電性粒子の向きによっては突起と回路基板等とが接触しないことがあり、50個を超えると、突起同士が重なり合い、導電接続時に導電性粒子と回路基板等とを圧着した際に突起がつぶれにくいことがある。
なお、本発明の導電性粒子においては、上記塊状微粒子の凝集体からなる突起の数が導電性粒子1個に対して25〜50個であれば、凝集体で構成されていない突起等を有していてもよいが、この場合は、本発明の特徴となる塊状微粒子の凝集体からなる突起が全体の突起の50%以上を占めることが好ましい。
【0021】
本発明の導電性粒子は、更に、導電層の表面に金層が形成されていることが好ましい。導電層の表面に金層を施すことにより、ニッケル(合金)を含有する導電層の酸化防止、接続抵抗の低減化、表面の安定化等を図ることができる。
【0022】
上記金層の形成方法としては特に限定されず、無電解メッキ、置換メッキ、電気メッキ、還元メッキ、スパッタリング等の従来公知の方法が挙げられる。
【0023】
上記金層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は100nmである。1nm未満であると、ニッケル(合金)を含有する導電層の酸化を防止することが困難となることがあり、接続抵抗値が高くなることがあり、100nmを超えると、金層がニッケル(合金)層を侵食し、基材粒子とニッケル(合金)を含有する導電層との密着性を悪くすることがある。
【0024】
本発明の導電性粒子を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、無電解メッキ法により製造することができる。
無電解メッキ法とは、基材粒子を水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液でエッチングすることにより表面を粗にし、次いで、上記基材粒子の表面に触媒付与を行った後、メッキ安定剤を含有する基材粒子分散液に、メッキ安定剤、次亜リン酸ナトリウム(還元剤)を含有するニッケルメッキ液を添加し、触媒付与された該基材粒子の表面に、下記反応式で示される還元反応によりニッケル(合金)を含有する導電層を析出させる方法である。
Ni2++HPO+HO→Ni+HPO+2H
【0025】
ここで、エッチングの際に高濃度の水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液で激しくエッチングすることにより基材粒子の表面を著しく粗にして、上記触媒となるパラジウム等の付着量を多くしたり、基材粒子分散液中のメッキ安定剤の量を少なくしてメッキ反応時のメッキ液を不安定化させたりすることにより、微小な塊状微粒子の凝集体で構成される突起を形成することができる。
基材粒子の表面をエッチングするためのアルカリ溶液の濃度をA(重量%)、基材粒子分散液中におけるメッキ安定剤の濃度をB(mol/L)とするとき、エッチングするためのアルカリ溶液の濃度Aを高くしてもよいし、基材粒子分散液中におけるメッキ安定剤の濃度Bを極力低くしてもよいが、AとBとの比(B/A)が下記式(1)の範囲である場合に、極めて高い効率で塊状微粒子の凝集体からなる突起を有する本発明の導電性粒子を製造することができる。
基材粒子の表面をアルカリ溶液を用いてエッチングする工程1と、エッチングされた前記基材粒子の表面に触媒付与を行う工程2と、メッキ安定剤を含有する基材粒子分散液に、ニッケル又はニッケル合金、及び、メッキ安定剤を含有するメッキ液を添加し、触媒付与された前記基材粒子の表面に導電層を形成させる工程3とを有する導電性粒子の製造方法であって、上記工程1のアルカリ溶液の濃度をA(重量%)、上記工程3の基材粒子分散液中におけるメッキ安定剤の濃度をB(mol/L)とするとき、AとBとの比(B/A)が下記式(1)を満たす導電性粒子の製造方法もまた、本発明の1つである。
5.0×10−7<B/A<3.0×10−6 (1)
【0026】
上記触媒付与を行う方法としては、例えば、アルカリ溶液でエッチングされた基材粒子に酸中和、及び、二塩化スズ(SnCl)溶液におけるセンシタイジングを行い、二塩化パラジウム(PdCl)溶液におけるアクチベイジングを行う無電解メッキ前処理工程を行う方法等が挙げられる。
なお、センシタイジングとは、絶縁物質の表面にSn2+イオンを吸着させる工程であり、アクチベイチングとは、絶縁性物質表面にSn2++Pd2+→Sn4++Pdで示される反応を起こしてパラジウムを無電解メッキの触媒核とする工程である。
【0027】
また、本発明の導電性粒子の製造方法においては、上記基材粒子の表面の触媒付着量が増加している過程で、反応系の温度を高くする、pHを調整する等により反応速度を著しく速めることでも、塊状微粒子の凝集体からなる上記突起を効果的に作製することができる。
【0028】
本発明の導電性粒子をバインダー樹脂に分散させることにより異方性導電材料を製造することができる。このような異方性導電材料もまた、本発明の1つである。
【0029】
本発明の異方性導電材料の具体的な例としては、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘着剤層、異方性導電フィルム、異方性導電シート等が挙げられる。
【0030】
上記樹脂バインダーとしては特に限定されないが、絶縁性の樹脂が用いられ、例えば、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等のビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂及びこれらの硬化剤からなる硬化性樹脂;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、これらの水素添加物等の熱可塑性ブロック共重合体;スチレン−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等のエラストマー類(ゴム類)等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
また、上記硬化性樹脂は、常温硬化型、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型のいずれの硬化型であってもよい。
【0031】
本発明の異方性導電材料には、本発明の導電性粒子、及び、上記樹脂バインダーの他に、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、増量剤、軟化剤(可塑剤)、粘接着性向上剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、有機溶媒等の各種添加剤を添加してもよい。
【0032】
本発明の異方性導電材料の製造方法としては特に限定されず、例えば、絶縁性の樹脂バインダー中に本発明の導電性粒子を添加し、均一に混合して分散させ、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤等とする方法や、絶縁性の樹脂バインダー中に本発明の導電性粒子を添加し、均一に溶解(分散)させるか、又は、加熱溶解させて、離型紙や離型フィルム等の離型材の離型処理面に所定のフィルム厚さとなる用に塗工し、必要に応じて乾燥や冷却等を行って、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電シート等とする方法等が挙げられ、製造しようとする異方性導電材料の種類に対応して、適宜の製造方法をとればよい。
また、絶縁性の樹脂バインダーと、本発明の導電性粒子とを混合することなく、別々に用いて異方性導電材料としてもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、導通不良防止とともに抵抗値の低減化が可能な導電性粒子及び異方性導電材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
(導電層形成工程)
平均粒子径3μmのテトラメチロールメタンテトラアクリレートとジビニルベンゼンとの共重合樹脂からなる基材粒子10gに、5重量%水酸化ナトリウム水溶液によるアルカリエッチング、酸中和、二塩化スズ溶液におけるセンシタイジングを行った。その後、二塩化パラジウム溶液におけるアクチベイチングからなる無電解メッキ前処理を施し、濾過洗浄後、粒子表面にパラジウムを付着させた基材粒子を得た。
得られた基材粒子を水1500mLで希釈し、メッキ安定剤として、硝酸ビスマスを0.005mmol、硝酸タリウムを0.006mmol添加し、10重量%硫酸水と2Nの水酸化ナトリウム水溶液とでpHを5.7に調整、スラリーとし、液温度を26℃に設定した。
このスラリーに、硫酸ニッケル450g/Lを40mL、次亜リン酸ナトリウム150g/Lとクエン酸ナトリウム116g/Lとの混合液を80mL、水280mL、メッキ安定剤として、硝酸ビスマスを0.02mmol、硝酸タリウムを0.024mmol添加し、28重量%アンモニア水でpHを9.3に調整した前期反応メッキ液を80mL/分の添加速度で定量ポンプを通して添加した。
その後、pHが安定するまで攪拌し、水素の発泡が停止するのを確認し、無電解メッキ前期工程を行った。
次いで、硫酸ニッケル450g/Lを180mL、次亜リン酸ナトリウム150g/Lとクエン酸ナトリウム116g/Lとの混合液を440mL、メッキ安定剤として、硝酸ビスマスを0.3mmol、硝酸タリウムを0.36mmolの後期反応メッキ液を27mL/分の添加速度で定量ポンプを通して添加した。
その後、pHが安定するまで攪拌し、水素の発泡が停止するのを確認し、無電解メッキ後期工程を行った。
次いで、メッキ液を濾過し、濾過物を水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥することで、表面に突起を有する導電層を有する導電性粒子を得た。
【0036】
(金メッキ工程)
その後、更に、置換メッキ法により表面に金メッキを施し、導電性粒子を得た。
なお、本明細書で規定した値について、A=5、B=7.33×10−6、B/A=1.5×10−6である。
【0037】
(実施例2)
エッチング用の水酸化ナトリウム水溶液の濃度を10重量%へ変更し、無電解メッキ前期工程のスラリーに添加する安定剤量を硝酸ビスマス0.0125mmol、硝酸タリウム0.015mmolへ変更した以外は実施例1と同様にして、表面に突起を有する導電層を有する導電性粒子を得た。
その後、更に、置換メッキ法により表面に金メッキを施し、導電性粒子を得た。
なお、本明細書で規定した値について、A=10、B=1.83×10−5、B/A=1.8×10−6である。
【0038】
(実施例3)
エッチング用の水酸化ナトリウム水溶液の濃度を10重量%へ変更した以外は実施例1と同様にして、表面に突起を有する導電層を有する導電性粒子を得た。
その後、更に、置換メッキ法により表面に金メッキを施し、導電性粒子を得た。
なお、本明細書で規定した値について、A=10、B=7.33×10−6、B/A=7.3×10−7である。
【0039】
(実施例4)
エッチング用の水酸化ナトリウム水溶液の濃度を10重量%へ変更し、無電解メッキ前期工程のスラリーに添加する安定剤量を硝酸ビスマス0.02mmol、硝酸タリウム0.024mmolへ変更した以外は実施例1と同様にして、表面に突起を有する導電層を有する導電性粒子を得た。
その後、更に、置換メッキ法により表面に金メッキを施し、導電性粒子を得た。
なお、本明細書で規定した値について、A=10、B=2.93×10−5、B/A=2.9×10−6である。
【0040】
(比較例1)
基材粒子に無電解メッキ前処理工程の後、無電解メッキ前期工程のスラリーに添加する安定剤量を硝酸ビスマス0.0125mmol、硝酸タリウム0.015molへ変更した以外は実施例1と同様にして、表面に突起を有する導電層を有する導電性粒子を得た。
その後、更に、置換メッキ法により表面に金メッキを施し、導電性粒子を得た。
なお、本明細書で規定した値について、A=5、B=1.83×10−5、B/A=3.7×10−6である。
【0041】
(比較例2)
基材粒子に無電解メッキ前処理工程の後、無電解メッキ前期工程のスラリーに添加する安定剤量を硝酸ビスマス0.02mmol、硝酸タリウム0.024mmolへ変更した以外は実施例1と同様にして、導電層を有する導電性粒子を得た。
その後、更に、置換メッキ法により表面に金メッキを施し、導電性粒子を得た。
なお、本明細書で規定した値について、A=5、B=2.93×10−5、B/A=5.9×10−6である。
【0042】
<評価>
実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた導電性粒子について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0043】
(1)接続抵抗値の測定
得られた導電性粒子を用いて以下の方法により異方性導電材料を作製し、電極間の接続抵抗値の測定を行った。
樹脂バインダーの樹脂としてエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、「エピコート828」)100重量部、トリスジメチルアミノエチルフェノール2重量部、及び、トルエン100重量部を、遊星式攪拌機を用いて充分に混合した後、離型フィルム上に乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布し、トルエンを蒸発させて接着性フィルムを得た。
次いで、樹脂バインダーの樹脂としてエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、「エピコート828」)100重量部、トリスジメチルアミノエチルフェノール2重量部、及び、トルエン100重量部に、得られたそれぞれの導電性粒子を添加し、遊星式攪拌機を用いて充分に混合した後、離型フィルム上に乾燥後の厚さが7μmとなるように塗布し、トルエンを蒸発させて導電性粒子を含有する接着性フィルムを得た。なお、導電性粒子の配合量は、フィルム中の含有量が5万個/cmとなるようにした。
得られた接着性フィルムと導電性粒子を含有する接着性フィルムとを常温でラミネートすることにより、2層構造を有する厚さ17μmの異方性導電フィルムを得た。
得られた異方性導電フィルムを5×5mmの大きさに切断した。これを、一方に抵抗測定用の引き回し線を有した幅200μm、長さ1mm、高さ0.2μm、L/S20μmのアルミニウム電極のほぼ中央に貼り付けた後、ITO電極を有するガラス基板を、電極同士が重なるように位置あわせをしてから貼り合わせた。
このガラス基板の接合部を、10N、100℃の圧着条件で熱圧着した後、電極間の接続抵抗値を測定した。
また、作製した試験片に対して信頼性試験(80℃、95%RHの高温高湿環境下で1000時間保持)を行った後、電極間の接続抵抗値を測定した。
【0044】
(2)塊状微粒子の平均粒子径
得られた導電性粒子について、日立ハイテクノロジーズ社製走査電子顕微鏡(SEM)により、倍率10000倍で粒子観察を行い、塊状微粒子の粒子径を調べた。塊状微粒子の平均粒子径は、確認された20個の塊状微粒子について粒子径を測定し、それを算術平均して塊状微粒子の平均粒子径とした。
【0045】
(3)突起の平均高さ
得られた導電性粒子について、日立ハイテクノロジーズ社製走査電子顕微鏡(SEM)により、倍率10000倍で粒子観察を行い、突起の高さを調べた。
上記突起の高さは、導電性粒子において最表面を形成する導電層の基準表面から突起として現れている高さを測定した。このとき、突起を付与した効果が得られるものとして、100nm以上のものを突起として選ぶものとした。
突起の平均高さは、確認された20個の突起について高さを測定し、それを算術平均して突起の平均高さとした。
【0046】
(4)突起の存在密度
得られた導電性粒子について、日立ハイテクノロジーズ社製走査電子顕微鏡(SEM)により、倍率10000倍で粒子観察を行い、突起の存在密度を調べた。
上記突起の存在密度は、無作為に選んだ20個の粒子について、突起を付与した効果が得られるものとして、100nm以上のものを突起として個数をカウントし、1個の導電性粒子当たりの突起数に換算して、突起の存在密度とした。
【0047】
(5)含リン率の測定
EDX(Energy Dispersing X−ray analyzer:エネルギー分散型X線分析装置、日本電子データム社製)を用い、導電性粒子の断面を収束イオンビームにて切り出し、導電層中の各部位を成分分析することにより、含リン率の測定を行った。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、導通不良防止とともに抵抗値の低減化が可能な導電性粒子及び異方性導電材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1で得られた導電性粒子のSEM写真である。
【図2】実施例2で得られた導電性粒子のSEM写真である。
【図3】比較例1で得られた導電性粒子のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材粒子と、前記基材粒子の表面に形成されたニッケル又はニッケル合金を含有する導電層とからなる導電性粒子であって、
前記導電層は、表面に塊状微粒子の凝集体からなる突起を有する
ことを特徴とする導電性粒子。
【請求項2】
塊状微粒子は、平均粒子径が50〜300nmであることを特徴とする請求項1記載の導電性粒子。
【請求項3】
突起の平均高さが、基材粒子の平均粒子径の3〜17%であることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性粒子。
【請求項4】
突起の存在密度が、導電性粒子1個に対して25〜50個であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の導電性粒子。
【請求項5】
導電層は、含リン率が2〜8%であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の導電性粒子。
【請求項6】
基材粒子は、樹脂粒子であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の導電性粒子。
【請求項7】
更に、導電層の表面に金層が形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の導電性粒子。
【請求項8】
基材粒子の表面をアルカリ溶液を用いてエッチングする工程1と、エッチングされた前記基材粒子の表面に触媒付与を行う工程2と、メッキ安定剤を含有する基材粒子分散液に、ニッケル又はニッケル合金、及び、メッキ安定剤を含有するメッキ液を添加し、触媒付与された前記基材粒子の表面に導電層を形成させる工程3とを有する導電性粒子の製造方法であって、
前記工程1のアルカリ溶液の濃度をA(重量%)、前記工程3の基材粒子分散液中におけるメッキ安定剤の濃度をB(mol/L)とするとき、AとBとの比(B/A)が下記式(1)を満たす
ことを特徴とする導電性粒子の製造方法。
5.0×10−7<B/A<3.0×10−6 (1)
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の導電性粒子が樹脂バインダーに分散されてなることを特徴とする異方性導電材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−302716(P2006−302716A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124225(P2005−124225)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】