説明

導電性粒子粉末

【課題】 本発明は、導電層と熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの有機系粒子又は無機系粒子からなるコア粒子との密着性に優れるとともに、導電性及び経時安定性に優れた導電性粒子粉末に関するものである。
【解決手段】 酸化アルミニウム、酸化ケイ素などの無機系粒子からなるコア粒子と、該コア粒子の表面に形成された導電層とからなる導電性粒子であって、前記導電性粒子が導電性ポリマーを含有していることを特徴とする導電性粒子粉末である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電層とコア粒子との密着性に優れると共に、導電性及び経時安定性に優れた導電性粒子粉末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性フィラーは、バインダー樹脂や粘接着剤等に分散・混合することにより、電子機器等の静電防止、電波吸収あるいは電磁波シールド等の部材や、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電フィルム、異方性導電シート、異方性導電接着剤及び異方性導電粘着剤等の異方性導電材料として広く使用されている。
【0003】
殊に、近年、異方性導電材料は、液晶表示ディスプレイやパーソナルコンピュータ、携帯電話等の電子機器において、基板同士を電気的に接続したり、半導体素子等の小型部品を基板に電気的に接続したりするための導電材料として用いられている。
【0004】
従来、このような導電材料に用いられる導電性フィラーとしては、金、銀、銅、鉄、ニッケル、ハンダ等の金属粒子が用いられてきたが、比重が大きく形状も不定形であるため、基板同士を一定の間隔で保持することが困難であり、また、バインダー樹脂中で不均一に存在しやすく、導電ムラが生じたりする問題を有していた。
【0005】
このため、近年では金属粒子の代わりに粒径が均一な樹脂粒子の表面に無電解ニッケルメッキ等の無電解金属メッキを施した金属被覆樹脂粒子が広く用いられてきている(特許文献1及び2)。
【0006】
しかしながら、ニッケルメッキ層は容易に酸化被膜を作りやすく、変質した金属被覆層はメッキ割れが生じやすくなると共に、樹脂粒子への密着性が低下し、ちょっとした衝撃や振動によっても金属メッキ層にクラックを生じるため、導電材料として使用した場合には導通性不良の原因となる。
【0007】
一方、樹脂粒子の表面に乾式コーティング法で金を付着させ、更に無電解金メッキで金を被覆する方法が開示されている(特許文献3)。
【0008】
また、高分子微球体の全表面を接着性樹脂と導電性微粉の混合物により被覆する方法が開示されている(特許文献4)。
【0009】
【特許文献1】特開平1−242782号公報
【特許文献2】特開2006−302716号公報
【特許文献3】特開平9−171714号公報
【特許文献4】特開平6−267328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
導電層とコア粒子との密着性に優れると共に、導電性及び経時安定性に優れた導電性粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
【0011】
即ち、前出特許文献1及び2には、樹脂粒子の表面に無電解ニッケルメッキ等の無電解金属メッキを施した金属被覆樹脂粒子を導電性粒子として用いることが記載されているが、前述の通り、ニッケルメッキ層は容易に酸化被膜を作りやすく、変質した金属被覆層はメッキ割れが生じやすくなると共に、樹脂粒子への密着性が低下する等の問題を有している。
【0012】
前出特許文献3には、樹脂粒子の表面に乾式コーティング法で金を付着させ、更に無電解金メッキで金を被覆する方法が記載されているが、樹脂粒子の表面に単に気相堆積法によって金を処理しただけではその密着性は十分であるとは言えず、ちょっとした衝撃や振動によってもクラックを生じるため、長期に亘って経時安定性を得ることが困難となる。
【0013】
前出特許文献4には、高分子微球体の全表面を接着性樹脂と導電性微粉の混合物により被覆する方法が記載されているが、接着性樹脂が導電性を有さないため、回路基板や電極端子の間に挟みこんで使用する場合など、圧縮することにより接着樹脂同士が接触してしまった場合、接続抵抗が高くなるなどして導電ムラを起こしやすい。
【0014】
そこで、本発明は、導電層とコア粒子との密着性に優れると共に、導電性及び経時安定性に優れた導電性粒子粉末を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0016】
即ち、本発明は、金属酸化物粒子からなるコア粒子と、該コア粒子の表面に形成された導電層とからなる導電性粒子であって、前記導電層が金属、金属の酸化物または合金から選ばれる1種又は2種以上の導電性フィラーからなり、前記導電性粒子が導電性ポリマーを含有していることを特徴とする導電性粒子粉末である(本発明1)。
【0017】
また、本発明は、本発明1記載の導電性粒子粉末において、導電層表面の少なくとも1部分が導電性ポリマーで被覆されていることを特徴とする導電性粒子粉末である(本発明2)。
【0018】
また、本発明は、本発明1記載の導電性粒子粉末において、導電層が前記コア粒子の表面を被覆している表面改質剤を介して形成されており、該導電層表面の少なくとも1部分が導電性ポリマーで被覆されていることを特徴とする導電性粒子粉末である(本発明3)。
【0019】
また、本発明は、本発明1記載の導電性粒子粉末において、前記導電層が、前記コア粒子の粒子表面を被覆している導電性ポリマーを介して形成されていることを特徴とする導電性粒子粉末である(本発明4)。
【0020】
また、本発明は、本発明1記載の導電性粒子粉末において、前記導電層中に導電性ポリマーを含有することを特徴とする導電性粒子粉末である(本発明5)。
【0021】
また、本発明は、本発明4又は本発明5記載の導電性粒子粉末の導電層表面の少なくとも1部分が導電性ポリマーで被覆されていることを特徴とする導電性粒子粉末である(本発明7)。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る導電性粒子粉末は、導電層とコア粒子との密着性に優れると共に、導電性及び経時安定性に優れているので、異方性導電材料の導電性フィラーとして好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0024】
先ず、本発明に係る導電性粒子粉末について述べる。
【0025】
本発明に係る導電性粒子粉末は、コア粒子と、該コア粒子の表面に形成された導電層とからなる導電性粒子であって、前記導電性粒子が導電性ポリマーを含有してなる。
【0026】
本発明におけるコア粒子としては、無機系粒子を用いることができる。
【0027】
無機系粒子としては、例えば、アルミナ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、酸化鉄、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ微粉体、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化チタン及びカーボンブラック等のガラス、セラミックス、金属酸化物、金属ケイ酸塩、金属炭化物、金属窒化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属硫化物、金属酸塩、金属ハロゲン化物及び炭素等、金、白金、パラジウム、銀、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、鉛、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、アンチモン及びタングステン等の金属及びこれらの合金等が挙げられる。
【0028】
また、コア粒子として有機系粒子を用いる場合には、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれをも用いることができ、例えば、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン等)、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等)、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ化アルキリデン系樹脂、フッ素系樹脂、繊維素系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アリル系樹脂、フラン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、グアナミン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ジビニルベンゼン系重合体(スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−ジビニルベンゼン共重合体)等を用いることができる。これらの有機系粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
コア粒子の形状は、球状、粒状、針状、紡錘状、米粒状、フレーク状、板状、繊維状、中空状及び不定形等のいずれの形状であってもよいが、異方性導電材料として用いることを考慮すれば、良好な電気的接続を得るためにコア粒子の形状は球状が好ましい。
【0030】
コア粒子の平均粒子径としては特に制限はなく、得られる導電性粒子粉末の用途に応じて適宜選べばよいが、下限値としては、好ましくは0.05μm以上であり、より好ましくは0.75μm、更により好ましくは0.10μmである。コア粒子の平均粒子径が0.05μm未満の場合には、コア粒子が微粒子であるために凝集が生じやすく、コア粒子の粒子表面への表面改質剤及び導電性フィラーによる均一な処理が困難になり、得られる導電性粒子粉末を用いて製造される導電材料は、導電ムラを生じやすい。また、コア粒子の平均粒子径の上限値は、得られる導電性粒子粉末を異方性導電材料に用いる場合には1000μm以下であることが好ましく、より好ましくは750μm以下であり、更により好ましくは500μm以下である。コア粒子の平均粒子径が1000μmを超える場合には、得られる導電性粒子粉末を異方導電性材料として使用すると、電極当たりの導電性粒子の個数が少なくなるため接続信頼性が低下し、基板間の導電接続が不良となるため好ましくない。
【0031】
本発明における導電性ポリマーとしては、ポリエチレンジオキシチオフェン系ポリマー、ポリジオキシチオフェン系ポリマー、ポリチオフェン系ポリマー、ポリイソチアナフテン系ポリマー、ポリアニリン系ポリマー、ポリピロール系ポリマー等が挙げられる。コア粒子として有機系粒子を用いる場合には、水もしくは水系溶媒に可溶であるポリエチレンジオキシチオフェン系ポリマー、ポリジオキシチオフェン系ポリマー、ポリチオフェン系ポリマー、ポリイソチアナフテン系ポリマー、ポリアニリン系ポリマーが好ましい。
【0032】
導電性ポリマーの含有量は、コア粒子粉末に対して0.001〜1.0重量%であり、好ましくは0.003〜0.9重量%、より好ましくは0.005〜0.8重量%である。0.001重量%未満の場合には、得られる導電性粒子粉末の導電性改善効果が得られない。1.0重量%を超える場合には、導電性ポリマーによって導電性粒子同士が付着し、これによって得られる導電性粒子粉末を用いて製造される導電材料は、導電ムラを生じやすいため好ましくない。
【0033】
本発明に用いられるコア粒子の粒子表面は、導電層を形成・密着しやすくするために、表面改質剤によって被覆されていることが好ましい。この目的に用いられる表面処理剤としては、コア粒子の粒子表面へ導電層を形成・密着できるものであれば何を用いてもよいが、好ましくはアルコキシシラン、フルオロアルキルシラン及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系などのカップリング剤であり、より好ましくはアルコキシシラン、オルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤であり、更により好ましくはアルコキシシラン、オルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物である。
【0034】
有機ケイ素化合物としては、具体的には、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン及びデシルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トルフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン及びトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等のフルオロアルキルシラン、ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、変性ポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0035】
シラン系カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエキシシラン、γ−メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェイト)チタネート、テトラ(2−2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0037】
アルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロボキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0038】
ジルコネート系カップリング剤としては、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0039】
表面改質剤の被覆量は、コア粒子粉末100重量部に対して表面改質剤が0.05〜40.0重量部が好ましく、より好ましくは0.07〜30.0重量部、最も好ましくは0.10〜20.0重量部である。表面改質剤を0.05〜40.0重量部の範囲で処理することにより、コア粒子表面に導電層を効果的に付着することができるため、導電層とコア粒子との密着性をより改善することができる。
【0040】
本発明における導電層は、金属、金属の酸化物または合金から選ばれる1種または2種以上の導電性フィラーからなる。具体的には、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、珪素等の金属及びこれらの合金等が挙げられる。また、金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、スズ−アンチモン系酸化物(ATO)、インジウム−スズ系酸化物(ITO)、ガリウム−亜鉛系酸化物(GZO)、インジウム−亜鉛系酸化物(IZO)、インジウム−亜鉛系酸化物、カルシウム−アルミニウム系酸化物(C12A7)及びこれらを組み合わせたものが挙げられる。得られる導電性粒子粉末の導電性及び経時安定性を考慮すれば、化学的に安定である金、銀、白金等の貴金属及びスズ−アンチモン系酸化物(ATO)、インジウム−スズ系酸化物(ITO)、ガリウム−亜鉛系酸化物(GZO)、インジウム−亜鉛系酸化物(IZO)等の金属酸化物が好ましい。
【0041】
コア粒子粉末の平均粒子径と導電性フィラーの平均粒子径との比は2以上であることが好ましい。2よりも小さくなると、導電性フィラーの粒子サイズがコア粒子粉末の粒子サイズに対して大きくなりすぎるため、コア粒子と導電性フィラーとの密着強度が低下するため好ましくない。より好ましくは3以上であり、更により好ましくは5以上である。
【0042】
導電層を形成する導電性フィラーの付着量は、コア粒子粉末の平均粒子径によっても異なるが、コア粒子粉末100重量部に対して0.01〜500重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜400重量部、更により好ましくは0.1〜300重量部である。0.01重量部未満の場合には、導電層としての十分な効果が得られず好ましくない。また、500重量部を超える場合には、電気抵抗の低減効果が十分に得られるので、500重量部を超えて必要以上に付着させる意味がない。
【0043】
本発明に係る導電性粒子粉末の粒子形状や粒子サイズは、コア粒子の粒子形状や粒子サイズ大きく依存し、コア粒子に相似する粒子形態を有している。
【0044】
本発明に係る導電性粒子粉末の粒子形状は、球状、粒状、針状、紡錘状、米粒状、フレーク状、板状、繊維状及び不定形等のいずれの形状であってもよいが、異方性導電材料として用いることを考慮すれば、良好な電気的接続を得るために粒子形状は球状が好ましい。
【0045】
本発明に係る導電性粒子粉末の粒子サイズは、特に制限はなく、用途に応じて適宜選べばよいが、平均粒子径の下限値としては、好ましくは0.05μm以上であり、より好ましくは0.75μm、更により好ましくは0.10μmである。導電性粒子粉末の平均粒子径が0.05μm未満の場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすくなるため、これを用いて製造される導電材料は、導電ムラを生じやすい。また、導電性粒子粉末の平均粒子径の上限値は、異方性導電材料に用いる場合には1000μm以下であることが好ましく、より好ましくは750μm以下であり、更により好ましくは500μm以下である。導電性粒子粉末の平均粒子径が1000μmを超える場合には、異方導電性材料として使用すると、電極当たりの導電性粒子の個数が少なくなりすぎ接続信頼性が低下し、基板間の導電接続が不良となるため好ましくない。
【0046】
本発明に係る導電性粒子粉末の導電性フィラーからなる導電層とコア粒子との密着性は、後出評価方法における導電性フィラーの脱離率において、20%以下が好ましい。導電性フィラーの脱離率が20%を超える場合には、脱離した導電性フィラー同士または導電性フィラーが脱離してむき出しとなったコア粒子の表面同士が接触することにより、導電ムラが生じるため好ましくない。より好ましくは15%以下であり、更により好ましくは10%以下である。
【0047】
本発明に係る導電性粒子粉末の経時安定性は、後出評価方法における高温高湿試験後の体積固有抵抗値の変化率において、500%以下が好ましい。高温高湿試験後の体積固有抵抗値の変化率が500%を超える場合には、長期間の使用により導電層が腐食し、導電性が低下するため好ましくない。より好ましくは400%以下であり、更により好ましくは300%以下である。
【0048】
本発明に係る導電性粒子粉末は、例えば、バインダー樹脂や粘接着剤等に分散・混合させて、異方性導電フィルムや異方性導電ペースト等に使用できる。また、上記導電性粒子粉末は、これのみを用いて異方性導電性材料とすることも可能である。
【0049】
次に、本発明に係る導電性粒子粉末の製造法について述べる。
【0050】
本発明に係る導電性粒子粉末は、導電性ポリマーを含有しており、該導電性ポリマーは、コア粒子の表面、コア粒子の表面に形成された導電層中及び導電層の表面のいずれかもしくは複数の部分に存在している。
【0051】
本発明2に係る導電性粒子粉末は、コア粒子粉末と導電性フィラーとを混合した後、導電性ポリマーによって導電層の一部もしくは全部を被覆することによって得ることができる。
【0052】
本発明3に係る導電性粒子粉末は、コア粒子粉末と表面改質剤とを混合し、コア粒子粉末の粒子表面を表面改質剤によって被覆し、次いで、表面改質剤によって被覆されたコア粒子粉末と導電性フィラーとを混合した後、導電性ポリマーによって導電層の一部もしくは全部を被覆することによって得ることができる。
【0053】
本発明4に係る導電性粒子粉末は、コア粒子粉末と導電性ポリマーとを混合し、コア粒子粉末の粒子表面を導電性ポリマーによって被覆し、次いで、導電性ポリマーによって被覆されたコア粒子粉末と導電性フィラーとを混合することによって得ることができる。
【0054】
本発明5に係る導電性粒子粉末は、あらかじめ導電性ポリマーと導電性フィラーとを混合し、次いで、コア粒子粉末と該混合物とを混合することによって得ることができる。
【0055】
本発明6に係る導電性粒子粉末は、本発明4又は5で得られた粒子粉末を、更に、導電性ポリマーによって導電層の一部もしくは全部を被覆することによって得ることができる。
【0056】
上記コア粒子粉末、導電性ポリマー、表面改質剤及び導電性フィラーを混合攪拌するための機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、殊に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混錬機、高速せん断ミル、ボール型混錬機、ブレード型混錬機、ロール型混錬機、遊星ミルを用いることができる。本発明の実施にあたっては、ホイール型混錬機及び高速せん断ミルがより効果的に使用できる。
【0057】
前記ホイール型混練機としては、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラー、であり、より好ましくはエッジランナーである。前記高速せん断ミルとしては、ハイブリダイザー(奈良機械製作所製)、ノビルタ(ホソカワミクロン製)等があり、前記ボール型混練機としては、振動ミル等がある。前記ブレード型混練機としては、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウターミキサー等がある。前記ロール型混練機としては、エクストルーダー等がある。
【0058】
コア粒子の粒子表面に導電性フィラーによる導電層を形成した後、もしくは該導電層の表面を、更に導電性ポリマーによって一部もしくは全部を被覆した後、加熱処理を行う。加熱温度は、60℃以上で行うことが好ましく、より好ましくは80℃以上である。加熱温度の上限は、コア粒子もしくは導電層を形成している導電性フィラーの融点である。加熱時間は、10分〜12時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0060】
コア粒子粉末、導電性フィラー及び導電性粒子粉末の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡もしくは光学顕微鏡を用いて写真撮影を行い、そこに示された粒子50〜350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0061】
導電性粒子粉末に含まれる導電性ポリマーの含有量は、導電性ポリマーが溶解する媒体中に導電性粒子粉末を浸漬して導電性ポリマーを溶解させ、得られた導電性ポリマーを含む溶液から溶媒を除去した後、「フーリエ変換赤外分光光度計 FTIR−8700」(株式会社島津製作所製)を用いて定性及び定量を行った。
【0062】
コア粒子粉末の粒子表面に被覆されている表面改質剤の被覆量は、各表面改質剤に含有されている金属について、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0063】
導電性粒子粉末表面に形成されている導電層の被覆量は、各導電性フィラーに含有されている金属について、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0064】
導電性粒子粉末表面に形成されている導電層の脱離率(%)は、下記の方法により求めた値で示した。導電性フィラーの脱離率が0%に近いほど、粒子表面からの導電性フィラーの脱離量が少なく、コア粒子と導電層との密着性が高いことを示す。
【0065】
被測定粒子粉末3gとエタノール40mlを50mlの沈降管に入れ、20分間超音波分散を行った後、120分静置し、比重差によって被測定粒子粉末と脱離した導電性フィラーを分離した。得られた被測定粒子粉末を60℃で3時間乾燥させ、前述の「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を用いて各導電性フィラーに含有されている金属量を測定し、下記数1に従って求めた値を導電性フィラーの脱離率(%)とした。
【0066】
<数1>
導電性フィラーの脱離率(%)={(Wa−We)/Wa}×100
Wa:導電性粒子粉末の導電性フィラー付着量
We:脱離テスト後の導電性粒子粉末の導電性フィラー付着量
【0067】
コア粒子及び導電性粒子粉末の体積固有抵抗値は、まず、被測定粒子粉末0.5gを測り取り、成形器の中に入れて電極の間にセットし、低抵抗の粉体は「抵抗器 3541」(日置電機株式会社製)を用いて、高抵抗の粉体は「ハイレジスタンスメータ 4339B」(ヒューレット・パッカード株式会社製)を用いて、2.94×10Pa(30Kg/cm)まで加圧しながら抵抗値R(Ω)を測定した。
【0068】
次いで、被測定(円柱状)試料の上面の面積A(cm)と厚みt(cm)を測定し、下記数2にそれぞれの測定値を挿入して、体積固有抵抗値(Ω・cm)を求めた。
【0069】
<数2>
体積固有抵抗値(Ω・cm)=R×(A/t
【0070】
導電性粒子粉末の経時変化は、被測定粒子粉末を85℃、相対湿度90%の雰囲気下で1週間放置した後、上記体積固有抵抗値の測定と同様にして試料の作成し、体積固有抵抗値の測定を行い、下記数3に従って求めた値を高温高湿試験後の体積固有抵抗値の変化率(%)として示した。体積固有抵抗値の変化率が小さいほど、経時安定性に優れた導電性粒子粉末であることを示す。
【0071】
<数3>
体積固有抵抗値の変化率(%)={(Ra−Re)/Ra}×100
Ra:導電性粒子粉末の体積固有抵抗値
Re:高温高湿試験後の導電性粒子粉末の体積固有抵抗値
【0072】
<参考例1:導電性粒子粉末1の製造>
コア粒子粉末A(種類:ポリメチルメタクリレート(PMMA)、粒子形状:球状、平均粒子径:5.07μm、体積固有抵抗値:6.8×1010Ω・cm)170gと導電性フィラーA(種類:Ag、平均粒子径:0.03μm、体積固有抵抗値:4.03×10−3Ω・cm)68g(コア粒子粉末 100重量部に対して導電性フィラー 40.0重量部)を高速せん断ミルに入れ、3050rpmの回転数で10分間高速せん断処理を行った。
【0073】
次いで、導電性ポリマー(種類:ポリエチレンジオキシチオフェン(商品名:Baytron PEDOT:ティーエーケミカル株式会社製))1.7g(固形分1.2%の水分散液)(コア粒子粉末に対して導電性ポリマー0.012重量%)を添加し、更に3050rpmの回転数で10分間高速せん断処理を行った後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱処理を行い、導電層表面の少なくとも一部が導電性ポリマーで被覆されている導電性粒子粉末1を得た。
【0074】
得られた導電性粒子粉末1の諸特性を表4に示す。
【0075】
<参考例2:導電性粒子粉末2の製造>
参考例1で用いたものと同様のコア粒子粉末A 800gをエッジランナー「MPUV−2型」(製品名、株式会社松本鋳造鉄工所製)に投入し、次いで、メチルトリエトキシシラン(商品名:TSL8123:GE東芝シリコーン株式会社製)24g(コア粒子粉末 100重量部に対して表面改質剤 3.0重量部)を、エッジランナーを稼動させながらコア粒子粉末Aに添加し、294N/cmの線荷重で20分間混合攪拌を行った。
【0076】
次に、得られた粒子表面が表面改質剤によって被覆されているコア粒子粉末170gと参考例1で用いたものと同様の導電性フィラーA 68g(コア粒子粉末 100重量部に対して導電性フィラー 40.0重量部)を高速せん断ミルに入れ、3050rpmの回転数で20分間高速せん断処理を行った。
【0077】
次いで、参考例1で用いたものと同様の導電性ポリマー1.7g(コア粒子粉末に対して導電性ポリマー0.012重量%)を添加し、更に3050rpmの回転数で10分間高速せん断処理を行った後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱処理を行い、導電層表面の少なくとも一部が導電性ポリマーで被覆されている導電性粒子粉末2を得た。
【0078】
得られた導電性粒子粉末2の諸特性を表4に示す。
【0079】
<参考例3:導電性粒子粉末3の製造>
参考例1で用いたものと同様のコア粒子粉末A 800gをエッジランナー「MPUV−2型」(製品名、株式会社松本鋳造鉄工所製)に投入し、次いで、参考例1で用いたものと同様の導電性ポリマー1.7g(コア粒子粉末に対して導電性ポリマー0.012重量%)を、エッジランナーを稼動させながらコア粒子粉末Aに添加し、294N/cmの線荷重で20分間混合攪拌を行った。
【0080】
次に、得られた粒子表面が導電性ポリマーによって被覆されているコア粒子粉末170gと参考例1で用いたものと同様の導電性フィラーA 68g(コア粒子粉末 100重量部に対して導電性フィラー 40.0重量部)を高速せん断ミルに入れ、3050rpmの回転数で10分間高速せん断処理を行った後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱処理を行い、コア粒子表面が導電性ポリマーで被覆されており、該導電性ポリマーを介して導電層が形成されている導電性粒子粉末3を得た。
【0081】
得られた導電性粒子粉末3の諸特性を表4に示す。
【0082】
<参考例4:導電性粒子粉末4の製造>
参考例1で用いたものと同様の導電性フィラーA 68g(コア粒子粉末 100重量部に対して導電性フィラー 40.0重量部)と導電性ポリマー1.7g(コア粒子粉末に対して導電性ポリマー0.012重量%)とをあらかじめ混合しておき、参考例1で用いたものと同様のコア粒子粉末A 170gと該混合物を高速せん断ミルに入れ、3050rpmの回転数で10分間高速せん断処理を行った後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱処理を行い、導電層中に導電性ポリマーを含有する導電性粒子粉末4を得た。
【0083】
得られた導電性粒子粉末4の諸特性を表4に示す。
【0084】
<参考例5:導電性粒子粉末5の製造>
参考例3で得られた導電性粒子粉末3 170gと参考例1で用いたものと同様の導電性ポリマー1.7g(参考例3で得られた導電性粒子粉末に対して導電性ポリマー0.012重量%)を高速せん断ミルに入れ、3050rpmの回転数で10分間高速せん断処理を行った後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱処理を行い、導電層表面の少なくとも一部が導電性ポリマーで被覆されている導電性粒子粉末5を得た。
【0085】
得られた導電性粒子粉末5の諸特性を表4に示す。
【0086】
<参考例6:導電性粒子粉末6の製造>
参考例4で得られた導電性粒子粉末3 170gと参考例1で用いたものと同様の導電性ポリマー1.7g(参考例4で得られた導電性粒子粉末に対して導電性ポリマー0.012重量%)を高速せん断ミルに入れ、3050rpmの回転数で10分間高速せん断処理を行った後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱処理を行い、導電層表面の少なくとも一部が導電性ポリマーで被覆されている導電性粒子粉末6を得た。
【0087】
得られた導電性粒子粉末6の諸特性を表4に示す。
【0088】
前記参考例1〜6に従って導電性粒子粉末を作製した。各製造条件及び得られた導電性粒子粉末の諸特性を示す。
【0089】
コア粒子1〜8:
コア粒子粉末として表1に示す特性を有する粒子粉末を用意した。
【0090】
【表1】

【0091】
導電性フィラーA〜E:
導電性フィラーとして表2に示す諸特性を有する導電性フィラーを用意した。
【0092】
【表2】

【0093】
参考例7〜10、実施例1〜3:
コア粒子の種類、表面改質剤の種類及び添加量、導電性フィラーの種類及び添加量、導電性ポリマーの種類及び添加量、加熱処理の温度及び時間を種々変化させた以外は、前記参考例1〜6と同様にして導電性粒子粉末を得た。
【0094】
このときの製造条件を表3に、得られた導電性粒子粉末の諸特性を表4に示す。
【0095】
【表3】

【0096】
【表4】

【0097】
参考例1〜10、実施例1〜3の各例で得られた導電性粒子粉末は、電子顕微鏡観察の結果、導電性フィラーがほとんど認められないことから、導電性フィラーAのほぼ全量がコア粒子表面に付着していることが認められた。
【0098】
比較例1:
参考例1で用いたものと同様のコア粒子粉末A 170gと参考例1で用いたものと同様の導電性フィラーA 68g(コア粒子粉末 100重量部に対して導電性フィラー 40.0重量部)を高速せん断ミルに入れ、3050rpmの回転数で10分間高速せん断処理を行った後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱処理を行い、比較例1の粒子粉末を得た。
【0099】
このときの製造条件を表3に、得られた導電性粒子粉末の諸特性を表4に示す。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明に係る導電性粒子粉末は、導電層とコア粒子との密着性に優れると共に、導電性及び経時安定性に優れているので、異方性導電材料の導電性フィラーとして好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物粒子からなるコア粒子と、該コア粒子の表面に形成された導電層とからなる導電性粒子であって、前記導電層が金属、金属の酸化物または合金から選ばれる1種又は2種以上の導電性フィラーからなり、前記導電性粒子が導電性ポリマーを含有していることを特徴とする導電性粒子粉末。
【請求項2】
請求項1記載の導電性粒子粉末において、導電層表面の少なくとも1部分が導電性ポリマーで被覆されていることを特徴とする導電性粒子粉末。
【請求項3】
請求項1記載の導電性粒子粉末において、導電層が前記コア粒子の表面を被覆している表面改質剤を介して形成されており、該導電層表面の少なくとも1部分が導電性ポリマーで被覆されていることを特徴とする導電性粒子粉末。
【請求項4】
請求項1記載の導電性粒子粉末において、前記導電層が、前記コア粒子の粒子表面を被覆している導電性ポリマーを介して形成されていることを特徴とする導電性粒子粉末。
【請求項5】
請求項1記載の導電性粒子粉末において、前記導電層中に導電性ポリマーを含有することを特徴とする導電性粒子粉末。
【請求項6】
請求項4又は請求項5記載の導電性粒子粉末の導電層表面の少なくとも1部分が導電性ポリマーで被覆されていることを特徴とする導電性粒子粉末。

【公開番号】特開2013−101948(P2013−101948A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−285810(P2012−285810)
【出願日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【分割の表示】特願2008−8526(P2008−8526)の分割
【原出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】