説明

導電性組成物、およびそれを用いてなる導電膜、ならびに該導電膜を有する積層体

【課題】本発明は、水溶性の低い溶剤中でも安定に溶解または分散が可能な導電性組成物の提供、さらに、均一塗膜の形成が可能であり、形成された塗膜中において、導電性成分が局在化することを利用し、極めて少量の導電性成分の配合により優れた導電性を発現し、塗膜に求められる導電性以外の物性にも優れた導電膜の形成が可能な導電性組成物の提供を目的とする。
【解決手段】上記課題は、ポリアニオン(A−1)によってドープされたπ共役高分子化合物(A−2)と、塩基性有機化合物(A−3)とのイオン対であり、有機溶剤中で溶解または分散可能である導電性材料(A)と、酸無水物(B)とを含んでなる導電性組成物によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性に優れ透明性の高い均一塗膜の形成が可能である導電性組成物に関し、さらに詳しくは、環境に対して負荷のかかるハロゲン系溶剤を使用することなく、工業的に汎用な水溶性の低い溶剤中でも安定に溶解または分散が可能な導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子工学製品および光学製品の様々な性能が、導電性を有するπ共役高分子化合物を含有させることによって高められるという認識が高まっている。そのような物の例には、EMIシールド、電池電極材料、キャパシター、エレクトロクロミック素子、高分子有機EL材料、帯電防止剤、帯電防止塗料、帯電防止光学コート剤、帯電防止粘接着剤、帯電防止繊維、防食塗料、導電性塗料、導電性インキなどが挙げられる。
電子工学製品および光学製品は極めて高い耐水性や平滑性などを要求されるため、汎用有機溶剤系での検討が続けられると予想されるが、π共役高分子化合物の多くが汎用有機溶剤系コーティング剤に対して十分に溶解または分散することができないために、安定性、導電性、透明性が不十分である。さらに、加工条件が非常に制限されるなどの問題を抱えている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されるスルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する水溶性アニリン系導電性ポリマーを主成分とする静電塗装用導電性プライマー組成物、および該組成物を用いた静電塗装方法は、簡便な方法で塗工可能であり、導電性に優れ、静電塗装効果の点でも優れている。しかしながら該発明で用いられている導電性ポリマーは水溶性であるため、帯電防止膜として十分な耐水性を有しておらず、上塗りとして水系のベースコートを用いた場合には導電性ポリマーの色がベースコートに混ざってしまい、また汎用有機溶剤系コーティング剤中に配合した場合は、溶解または十分な分散性を得ることができないという問題点を有している。
【0004】
また、特許文献2や特許文献3では、良好な導電性、透明度、安定性、加水分解抵抗性および加工特性を有する導電性組成物、およびその製造方法が報告されている。ただし、該組成物は、水または低級アルコール等の水と任意の割合で混和する溶剤中で製造されており、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、シクロへキサノンなどの、工業的に汎用な溶剤を用いて製造することができず、従って、汎用な溶剤型コーティング剤への適用が困難であった。
【0005】
さらに、特許文献4に開示されるチオフェン混合物中の水を置換する溶媒交換法では、チオフェンとしてBaytronTM製剤を用いて水の一部または全てを少なくとも一つの他の溶媒で効率よく置換する方法を提供している。しかしながら、水以外の溶媒として低アルキルアセトアミド、ジオールおよびトリオールを含む低級アルコール、ピロリドン、低アルキルピロリドン、高アルキルピロリドン、低アルキルスルホキシドおよびそれらの混合物や、好ましい低級アルコールとしてグリコールまたはグリセリンを挙げ、適した低アルキルスルホキシドにはジメチルスルホキシド(DMSO)が含まれ、特に好ましい溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)およびN−メチルピロリドン(NMP)が含まれており、さらにアセトニトリル、ベンゾニトリル、メチルアセテート、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ニトロベンゼン、ニトロメタン、プロピオニトリルおよびプロピレン炭酸塩、ジクロロメタンとジブロモメタンなどが挙げられている。これらは、親水性が強く、汎用な溶剤型コーティング剤への適用が困難な溶剤、または、乾燥工程で環境に対して負荷のかかるハロゲン系溶剤であり、工業的に汎用な溶剤ではない。すなわち、特許文献4では、チオフェン混合物を酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、シクロへキサノンなどの、水溶性が低く、工業的に汎用な溶剤中に安定に溶解または分散されているものは開示されていない。
【0006】
また、特許文献2〜5では、ポリスチレンスルホン酸によってドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を用いて、塗膜に導電性を付与しながら、π共役高分子化合物の量を少量に抑える検討の例が記載されている。しかしながら、これらの中で、最も少量である例であっても、塗膜中の15重量%を占めており、塗膜の他の性能を保持するためには、より少量で導電性を発現する必要がある。
【特許文献1】特開平10−147748号公報
【特許文献2】特開平7−90060号公報
【特許文献3】特開平8−48858号公報
【特許文献4】特表2004−532292号公報
【特許文献5】特開2003−154616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、環境に対して負荷のかかるハロゲン系溶剤を使用することなく、工業的に汎用であり、水溶性の低い溶剤中でも安定に溶解または分散が可能な導電性組成物の提供を目的とする。さらに、均一塗膜の形成が可能であり、形成された塗膜中において、導電性成分が局在化することを利用し、極めて少量の導電性成分の配合により優れた導電性を発現し、塗膜に求められる導電性以外の物性にも優れた導電膜の形成が可能な導電性組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に達した。即ち、第1の発明は、ポリアニオン(A−1)によってドープされたπ共役高分子化合物(A−2)と、塩基性有機化合物(A−3)とのイオン対であり、有機溶剤中で溶解または分散可能である導電性材料(A)と、酸無水物(B)とを含んでなる導電性組成物に関する。
また、第2の発明は、さらに導電助剤(D)を含むことを特徴とする第1の発明の導電性組成物に関する。
また、第3の発明は、第1の発明または第2の発明の導電性組成物から形成されてなる導電膜に関する。
また、第4の発明は、基材と第3の発明の導電膜とを有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、環境に対して負荷のかかるハロゲン系溶剤を使用することなく、工業的に汎用であり、水溶性の低い溶剤中でも安定に溶解または分散が可能な導電性組成物を提供できた。本発明の導電性組成物は、均一塗膜の形成が可能であり、導電性成分の配合量が極めて少量であるにも関わらず導電性に優れ、その他の物性にも優れる塗膜が形成可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の導電性組成物に含まれる各成分について、以下に説明する。
<ポリアニオン(A−1)によってドープされたπ共役高分子化合物(A−2)と、塩基性有機化合物(A−3)とのイオン対であり、有機溶剤中で溶解または分散可能である導電性材料(A)>
まず、本発明に用いるポリアニオン(A−1)について説明する。ポリアニオン(A−1)は、酸基含有単量体を単独で重合したホモポリマー、または酸基含有単量体を含む単量体を重合した共重合体である。ポリアニオン(A−1)を構成する酸基含有単量体としては、例えば、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシ基、またはそれらと塩基性化合物とからなる塩形成基などの官能基を含有する単量体であれば、特に限定されないが、スルホン酸基、リン酸基などの強酸基を含有するものが好ましく使用できる。
スルホン酸基を含有する単量体としては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、4−スルフォニックアシドブチルメタクリレート、イソプレンスルホン酸、スルホブチルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホエチルメタクリレートなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化ナトリウムなどの塩基性化合物で中和した塩形成基の状態で使用することもできる。
【0011】
また、ポリアニオン(A−1)としては、ビニル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステルなどの樹脂に、硫酸、発煙硫酸、スルファミン酸、亜硫酸水素ナトリウム等のスルホン化剤を反応させて得ることができるスルホン酸基を有する樹脂であってもよい。
リン酸基を含有する単量体としては、例えば、3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)アシッドホスフェート、モノ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)アシッドホスフェート、モノ(2−ヒドロキシプロピルアクリレート)アシッドホスフェート、モノ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)アシッドホスフェート、モノ(3−ヒドロキシプロピルアクリレート)アシッドホスフェート、モノ(3−ヒドロキシプロピルメタクリレート)アシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェートなどが挙げられる。これらの単量体は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化ナトリウムなどの塩基性化合物で中和した塩形成基の状態で使用することもできる。
【0012】
カルボキシ基を含有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸およびそれらの酸無水物;
マレイン酸メチル、イタコン酸メチル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物;等を挙げることができる。これらの単量体は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化ナトリウムなどの塩基性化合物で中和した塩形成基の状態で使用することもできる。
【0013】
ポリアニオン(A−1)は、前記酸基含有単量体と、それ以外の単量体との共重合体であってもよい。酸基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、公知の化合物を何等制限なく使用することができる。例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン単量体;
スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等のエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;
アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル単量体;
酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル単量体;
および、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
ポリアニオン(A−1)は、上記単量体を、重合開始剤を用いてラジカル重合することで得ることができる。
さらに、本発明に用いるポリアニオン(A−1)は、エポキシ樹脂の末端エポキシ基の少なくとも一部を、リン含有酸でエステル化することにより得られる水溶性リン酸エステル化物であってもよい。
【0015】
ポリアニオン(A−1)の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜2,000,000の範囲、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。
次に、π共役高分子化合物(A−2)について説明する。π共役高分子化合物(A−2)とは、単結合と二重結合が交互に結合した高分子化合物である。その具体例としては、例えば、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、ポリイソチアナフテン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0016】
上記のπ共役高分子化合物(A−2)を得るために用いられる単量体として、好ましくは、アセチレン、チオフェン、3−チオフェンカルボキシアミド、3−チオフェンマロン酸、3−チオフェンメタノール、3−チオフェンエタノール、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3−チオフェンアルデヒド、3−ヘキシルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−ドコシルチオフェン、3−チオフェンカルボン酸、3−チオフェンアセトニトリル、3−チオフェンカルボキシアルデヒド、3−チオフェンアセチルクロライド、3−チオフェンホウ酸、3−チオフェンカルボキシルクロライド、3−チオフェンエタンスルフォネート、3−チオフェンブタンスルフォネート、ピロール、アニリン、アニリン−2,5−ジスルホン酸ナトリウム、アミノベンゼンスルホン酸、オルト−アニシジン、メタ−アニシジン、オルト−アニシジン塩酸塩、メタ−アニシジン塩酸塩、カルバゾール、3−(N−カルバゾイル)プロピン等を使用することができる。π共役高分子化合物(A−2)は、これらの単量体から選ばれる1種類のみからなる単独重合体であってもよく、2種類以上からなる共重合体であってもよい。
【0017】
π共役高分子化合物(A−2)は、上記の単量体を酸化剤および/または酸素もしくは空気を用い、溶剤中で−20〜100℃の温度で酸化重合することで得ることができる。特に、ポリアニオン(A−1)の存在下、水もしくは水性媒体中で酸化重合を行うことで、ポリアニオン(A−1)によりドープされたπ共役高分子化合物(A−2)を1段階で得ることができるため、より好ましい。前記酸化重合を行うにあたっては、単量体1モルに対してポリアニオン(A−1)中の酸基、および酸基と塩基性化合物とからなる塩形成基の合計が1〜80モルであることが好ましく、さらに2〜40モルであることがより好ましい。1モル未満であるとポリアニオン(A−1)とπ共役高分子化合物(A−2)が水もしくは水性溶媒中に溶解または分散することができない場合がある。80モルを超えると、相対的にπ共役高分子化合物(A−2)の量が少なくなり、導電性が発現できない場合がある。
【0018】
本発明による導電性組成物において、極めて高い透過度と導電性が必要とされる場合は、ポリアニオン(A−1)としてスチレンスルホン酸の単独重合体または他の単量体との共重合体、π共役高分子化合物(A−2)として3,4−エチレンジオキシチオフェンの単独重合体または他の単量体との共重合体をそれぞれ用いることが好ましい。
次に、塩基性有機化合物(A−3)について説明する。ポリアニオン(A−1)によってドープされたπ共役高分子化合物(A−2)は、通常ポリアニオン(A−1)が過剰に含まれており、水または極性の高い有機溶剤にしか溶解または分散しない。塩基性有機化合物(A−3)を添加することで、この過剰の酸基をキャップし、イオン対である導電性材料(A)が形成され、より極性の低い有機溶剤に溶解または分散できる。
【0019】
塩基性有機化合物(A−3)としては、公知のアミン化合物(A−3a)、カチオン性乳化剤(A−3b)、もしくは塩基性樹脂(A−3c)などが使用できる。
本発明で用いるアミン化合物(A−3a)としては、例えば、N−メチルオクチルアミン、メチルベンジルアミン、N−メチルアニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチル−イソプロパノールアミン、ジブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、アミノエチルエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、イソプロピルアミン、モノエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、t−ブチルアミン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
さらに本発明で用いる前記カチオン性乳化剤(A−3b)としては、例えば、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ステアリルアミン等の1級アミンの塩酸塩、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジステアリルアミン等の2級アミンの塩酸塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ステアリルジメチルアミン等の3級アミンの塩酸塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン類の塩酸塩、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリアミン類の塩酸塩、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩等が挙げられ、単独使用または併用することができる。
【0021】
アミン化合物(A−3a)およびカチオン性乳化剤(A−3b)の使用量に制限はないが、π共役高分子化合物(A−2)とポリアニオン(A−1)との合計100重量部に対して、1〜100,000重量部、好ましくは10〜10,000重量部の範囲で用いられることが好ましい。
さらに本発明で用いる前記塩基性樹脂(A−3c)の一例としては、下記特許文献6〜9に開示されている、アミノ基(1級、2級、3級、4級塩)を含有するポリエステル系、アクリル系、ウレタン系等の高分子共重合物からなるものを挙げることができる。このような塩基性樹脂(A−3c)の市販品としては、例えば、Solsperse24000(ゼネカ株式会社製)、Disperbyk−160、Disperbyk−161、Disperbyk−162、Disperbyk−163、Disperbyk−170(ビックケミー社製)、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824(味の素株式会社製)等が挙げられ、単独使用または併用することができる。塩基性樹脂(A−3c)の使用量に制限はないが、π共役系高分子化合物(A−2)とポリアニオン(A−1)との合計100重量部に対して、1〜100,000重量部が好ましく、さらには、10〜10,000重量部の範囲で用いられることがより好ましい。
【0022】
(特許文献6)特開昭61−174939号公報
(特許文献7)特開昭46−7294号公報
(特許文献8)特開平09−169821号公報
(特許文献9)特開昭60−166318号公報
【0023】
本発明に用いる塩基性有機化合物(A−3)としては、GPC測定におけるポリスチレン換算の重量平均分子量が、500〜1,000,000であるものが好ましく、1,000〜500,000であるものが特に好ましい。重量平均分子量が、500未満では十分な立体障害効果が得られず、分散効果が低下する場合があり、重量平均分子量が1,000,000より大きくても逆に凝集作用を生じる場合があり、好ましくない。また、化合物(A−3)のアミン価は、5〜200mgKOH/gが好ましく、さらには5〜50mgKOH/gが特に好ましい。アミン価が5mgKOH/g未満では、ポリアニオン(A−1)との相互作用が不十分になり、十分な分散効果が得られない場合がある。また、アミン価が200mgKOH/gより大きい場合は、π共役系高分子化合物(A−2)にドープしたポリアニオン(A−1)への親和部に比べ、立体障害層が小さくなり、分散効果が不十分になる場合がある。上記の理由から塩基性有機化合物(A−3)としては、塩基性樹脂(A−3c)が好ましい。
【0024】
本発明における導電性材料(A)は、ポリアニオン(A−1)によってドープされたπ共役高分子化合物(A−2)と、塩基性有機化合物(A−3)とのイオン対であり、有機溶剤中で溶解または分散可能であることを特徴とする。そして、導電性材料(A)は、有機溶剤を媒体とする溶液または分散体の態様にて使用に供されることが好ましい。さらには、これを含んでなる本発明の導電性組成物についても同様に、有機溶剤中に溶解または分散された態様にて使用されることが好ましい。
【0025】
本発明に用いる有機溶剤は、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、セロソルブ類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等の種々の液状媒体であり、単独使用または併用することができる。導電性材料(A)を溶解または分散するために用いる有機溶剤としては、水に対する溶解度が有限であり、かつ、乾燥工程のコスト面から沸点が200℃以下であり、環境に対する影響を考慮すると非ハロゲン系の有機溶剤であることが好ましく、具体的には、例えばシクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、イソオクタン等が好ましい。水に対する溶解度が無限である溶剤を用いると、導電性材料(A)を溶解または分散することができず、汎用溶剤に樹脂が溶解している樹脂溶液や、顔料を汎用溶剤に分散した顔料分散体に添加した場合ショックが起こり、塗膜にした場合に透過度の低い塗膜となる場合がある。
【0026】
導電性材料(A)の溶液または分散体は、ポリアニオン(A−1)によってドープされたπ共役高分子化合物(A−2)と、塩基性有機化合物(A−3)とを、有機溶剤を含む媒体中で混合、攪拌することにより得ることができる。導電性材料(A)を、有機溶剤を含む溶媒中に分散する際には、乳化機を使用してもよい。本発明で使用する乳化機は、導電性材料(A)粒子の平均粒径を10μm以下、好ましくは5μm以下とすることができるものであれば、どの様な機種でもよい。本発明で使用できる乳化機の例としては、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、マイルダー、アトライター、(超)高圧ホモジナイザー及びコロイドミルを挙げることができる。
【0027】
ここで、本発明でいう平均粒径とは、動的光散乱法で測定した場合の、累積体積平均径で、例えば、MALBERN INSTRUMENTS社製ゼータサイザーNano−ZS粒子径測定装置で測定された値のことを示す。
次に、酸無水物(B)について詳細に説明をする。本発明の導電性組成物は、上記で説明した導電性材料(A)と、酸無水物(B)とを含むことを特徴とする。導電性材料(A)と、酸無水物(B)とを組み合わせることにより、形成された塗膜中において、導電性成分が局在化すると推察される。従って、極めて少量の導電性成分の配合により優れた導電性を発現し、塗膜に求められる導電性以外の物性にも優れた導電膜の形成が可能となる。
【0028】
<酸無水物(B)>
本発明に用いる酸無水物(B)としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水安息香酸などの、モノカルボキシ化合物2分子から1つの水分子が脱水縮合したもの、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(別名:シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物)、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ハイミック酸、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、9,9−フルオレニリデンビス無水フタル酸などの、分子内に2つ以上のカルボキシ基を有する化合物から水分子を1つ以上脱水したもの、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン−無水マレイン酸コポリマー、アルキルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマーなどの、無水マレイン酸と他のビニルモノマーとを共重合したコポリマーなどが挙げられる。
【0029】
本発明における導電性組成物は、導電性材料(A)100重量部に対して、酸無水物(B)を0.1〜200重量部含むことが好ましい。酸無水物(B)が0.1重量部よりも少ない場合、導電性を十分に発現できない場合があり、200重量部よりも多い場合、膜物性に悪影響を及ぼすことが多い。
【0030】
<導電助剤(D)>
導電助剤(D)は、本発明の導電性組成物を用いて形成される導電膜の導電性をさらに向上する目的で加えているものであり、具体的にはラクタム、糖類および糖類誘導体、アルキレンジオール類、ポリアルキレンレングリコール類、フランカルボン酸、ハロゲン置換酢酸などが挙げられる。それらの具体例としては、例えば、N−メチルピロリドン、ピロリドン、カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N−オクチルピロリドン、ショ糖、グルコース、フルクトース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、グリセリン、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロエタノール、m−クレゾール、チオジグリコールなどが挙げられる。導電助剤(D)は導電性組成物中に0.1〜30重量%含まれることが好ましい。0.1重量%より少ない場合は導電助剤(D)による導電性の向上が期待できない。また、30重量%よりも多い場合は膜物性に悪影響を及ぼす場合が多い。
【0031】
本発明の導電性組成物には目的を損なわない範囲で、その他バインダー、溶剤、染料、顔料、酸化防止剤、重合禁止剤、光重合開始剤、硬化剤、レベリング剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、電磁波シールド剤、フィラーなどを添加することができる。
【0032】
本発明の導電性組成物が感光性樹脂を含まない場合は、基材に塗工後、自然または強制乾燥によって透明導電膜を得られる。本発明の導電性組成物が感光性樹脂を含む場合は、ラジエーション硬化をおこなうことにより、硬化した導電膜を得ることができる。ラジエーション硬化のタイミングとしては、塗工と同時であってもよく、また、塗工後であってもよい。塗工後にラジエーション硬化をおこなう場合には、基材に塗工後、自然または強制乾燥の後にラジエーション硬化を行っても良いし、塗工に続いてラジエーション硬化させた後に自然または強制乾燥しても構わないが、自然または強制乾燥後にラジエーション硬化した方が好ましい。公知のラジエーション硬化方法により塗膜を硬化させ、導電膜を得ることができ、活性エネルギー線としては、電子線、紫外線、波長が400〜500nmの可視光を使用することができる。なお、電子線で硬化させる場合は、水による硬化阻害または有機溶剤の残留による塗膜の強度低下を防ぐため、自然または強制乾燥後に電子線硬化を行うのが好ましい。
【0033】
照射する電子線の線源には熱電子放射銃、電界放射銃等が使用できる。また、紫外線および波長が400〜500nmの可視光の線源(光源)には、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ等を使用することができる。具体的には、点光源であること、輝度の安定性から、超高圧水銀ランプ、キセノン水銀ランプが用いられることが多い。照射する活性エネルギー線量は、5〜2000mJの範囲で任意に設定できるが、工程上管理しやすい50〜1000mJの範囲であることが好ましい。
また、これら紫外線または電子線と、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0034】
本発明の導電性組成物から得られた導電膜は、低い表面抵抗値を示し、様々な用途で使用できる。さらに得られた塗膜は、ヘイズが低くかつ透明性に優れる。帯電防止用途においては、表面抵抗値で1014(Ω/□)以下が好ましく、1012(Ω/□)以下、さらには1010(Ω/□)以下であることが特に好ましい。
【0035】
本発明の導電性組成物は、有機または無機基材に塗布し、必要に応じて乾燥および硬化させることにより、積層体を得ることができる。用いられる無機基材の例としては、ガラス、酸化物または酸化性もしくは非酸化性セラミック(例えば、酸化アルミニウム、窒化ケイ素等)などからなる基材が挙げられる。有機基材の例としては、有機単独重合体、共重合体またはそれらの混合物からなる基材が挙げられ、有機単独重合体ないし共重合体の具体例としては、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリイミド、ガラス繊維強化されたエポキシ樹脂、セルロース誘導体(例えば、三酢酸セルロース)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)等が挙げられる。
【0036】
本発明の導電性組成物は、均一塗膜の形成が可能であり、形成される塗膜は、高い透過度および導電性を有しており、各種帯電防止剤、帯電防止塗料、帯電防止光学コート剤、帯電防止粘接着剤、帯電防止繊維、防食塗料、導電性塗料、導電性インキ、電池電極材料、EMIシールド、化学センサー、表示素子、非線形材料、メッキプライマー等の用途に使用することができる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り「%」は「重量%」を、「部」は「重量部」を意味する。
【0038】
製造例、実施例中にある略称は以下の通りである。
M−402:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(東亞合成株式会社製:アロニックスM−402、水酸基価37.4mgKOH/g)
PET30:ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(日本化薬株式会社製:KAYARAD PET30、水酸基価127.6mgKOH/g)
SA:無水コハク酸(新日本理化株式会社製:リカシッドSA)
THPA:テトラヒドロ無水フタル酸(新日本理化株式会社製:リカシッドTH)
PA:無水フタル酸(新日本理化株式会社製:リカシッドPA)
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(サンアプロ株式会社:DBU)
DMBA:N,N−ジメチルベンジルアミン(和光純薬株式会社製)
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(日本化薬株式会社製:KAYARAD DPHA、水酸基価48.1mgKOH/g)
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱化学株式会社製)
BT−100:1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物(新日本理化株式会社:リカシッドBT−100)
GMA:グリシジルメタクリレート(日油株式会社:ブレンマーG)
VEEA:2−[2−(ビニルオキシ)エトキシ]エチルアクリレート(日本触媒株式会社:FX−VEEA)
Irg184:イルガキュア184(チバスペシャリティケミカル株式会社製)の20%酢酸エチル溶液
EG:エチレングリコール
EtAc:酢酸エチル
SMA:スチレンマレイン酸樹脂(SARTOMER社製:SMA−1000)
TMA:無水トリメリット酸(三菱ガス化学株式会社製)
PMA:無水ピロメリット酸(ダイセル化学株式会社製:PMDA)
D−310:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートモノアシレート(日本化薬株式会社製:KAYARAD D−310)
UA306H:ウレタンアクリレート(共栄社化学株式会社製:UA306H)
【0039】
<導電性材料(A)の作製>
(製造例1)
ポリアニオン(A−1)によってドープされたπ共役高分子化合物(A−2)として、ポリスチレンスルホン酸水溶液存在下で、単量体として3,4−エチレンジオキシチオフェンを用いてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を合成したH.C.Starck社製のBAYTRON P AGを用いた。BAYTRON P AGは溶媒が水で不揮発分が1.2%であり、前記ポリスチレンスルホン酸中のスルホン酸基と、合成に用いた単量体である3,4−エチレンジオキシチオフェンとのモル比は、スルホン酸基/3,4−エチレンジオキシチオフェン=2.5:1.0であった。
酢酸エチル54.51部に塩基性有機化合物(A−3)としてアジスパーPB−821(味の素ファインテクノ社製:アミン価10.75mgKOH/g)を8.37部溶解させた溶液にBAYTRON P AGを52.51部加えて、ディスパーを用いて室温で1時間攪拌し、乳化物を得た。ロータリーエバポレーターを用いて、この乳化物から水を取り除いた。必要に応じて適宜酢酸エチルを加えた。最終的に不揮発分15%の導電性材料(A)の酢酸エチル分散体を60.00部得た。
【0040】
(製造例2)
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた4口フラスコにp−スチレンスルホン酸ナトリウム500部、水1000部、過硫酸アンモニウム0.5部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、窒素ガスを吹き込みながら80℃で8時間反応させた。反応終了後、水を250部添加して、不揮発分濃度40%で重量平均分子量が25,000のポリ(p−スチレンスルホン酸ナトリウム)水溶液を得た。
攪拌機、温度計、冷却装置、滴下装置を備えた反応容器にピロール2.6部、水100部、上記ポリ(p−スチレンスルホン酸ナトリウム)水溶液50部を仕込み、この反応溶液を5℃に保ちながら、10%の塩化第二銅水溶液43.5部を2時間かけて滴下し、トータルで8時間反応させた。反応終了後、水を68.5部添加して、不揮発分濃度10%である、ポリ(p−スチレンスルホン酸)によってドープされたポリピロール水溶液を得た。前記ポリ(p−スチレンスルホン酸ナトリウム)中のスルホン酸ナトリウム基と、合成に用いた単量体であるピロールとのモル比は、スルホン酸ナトリウム基/ピロール=2.5/1.0であった。
MEK100部にアジスパーPB−821を16部溶解させた溶液に上記のポリ(p−スチレンスルホン酸)にドープされたポリピロール水溶液を12部加えて、ディスパーを用いて室温で1時間攪拌して、不揮発分13.4%の導電性材料(A)のMEK分散体を128部得た。
【0041】
(製造例3)
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた4口フラスコにp−スチレンスルホン酸ナトリウム500部、水1000部、過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、窒素ガスを吹き込みながら80℃で8時間反応させた。反応終了後、水を250部添加して、不揮発分濃度40%で重量平均分子量が50,000のポリ(p−スチレンスルホン酸ナトリウム)水溶液を得た。
攪拌機、温度計、冷却装置、滴下装置を備えた反応容器にアニリン塩酸塩5.8部、水100部、上記ポリ(p−スチレンスルホン酸ナトリウム)水溶液50部を仕込み、この反応溶液を5℃に保ちながら、5%の過硫酸アンモニウム水溶液44.2部を2時間かけて滴下し、トータルで8時間反応させた。反応終了後、水を64部添加して、不揮発分濃度10%である、ポリ(p−スチレンスルホン酸)によってドープされたポリアニリン水溶液を得た。前記ポリ(p−スチレンスルホン酸ナトリウム)中のスルホン酸ナトリウム基と、合成に用いた単量体であるアニリン塩酸塩とのモル比は、スルホン酸ナトリウム基/アニリン塩酸塩=2.0/1.0であった。
シクロヘキサノン100部にアジスパーPB−821を16部溶解させた溶液に上記のポリ(p−スチレンスルホン酸)によってドープされたポリアニリン水溶液を12部加えて、ディスパーを用いて室温で1時間攪拌して、不揮発分13.4%の導電性材料(A)のシクロヘキサノン分散体を128部得た。
【0042】
(製造例4)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、12−ヒドロキシステアリン酸(伊藤製油株式会社製)12.16部、カプロラクトン(ダイセル化学株式会社製:プラクセルM)87.72部、テトラブチルチタネート(松本製薬工業株式会社製:オルガチックスTA−25)0.088部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら160℃に昇温し、5時間反応させた。その後、100℃まで冷却し、ポリアリルアミンの20%水溶液30.00部加え、昇温して、反応液中の水を取り除いた。120℃まで昇温し、2時間反応させた。次いで、シクロヘキサノン105.97部を加え、塩基性有機化合物(A−3)のシクロヘキサノン溶液を得た。固形分50%、重量平均分子量6,609、アミン価8.907mgKOH/gであった。
酢酸エチル46.14部に塩基性有機化合物(A−3)として上記塩基性有機化合物のシクロヘキサン溶液を16.74部混合した溶液にBAYTRON P AGを52.50部加えて、ディスパーを用いて室温で1時間攪拌し、乳化物を得た。ロータリーエバポレーターを用いて、この乳化物から水を取り除いた。必要に応じて適宜酢酸エチルを加えた。最終的に不揮発分15%の導電性材料(A)の酢酸エチル/シクロヘキサノン分散体を60.00部得た。製造例1と同様、ポリスチレンスルホン酸中のスルホン酸基と、3,4−エチレンジオキシチオフェンとのモル比は、スルホン酸基/3,4−エチレンジオキシチオフェン=2.5:1.0である。
【0043】
(実施例1)
製造例1で作製した導電性材料(A)の酢酸エチル分散体2.857部、酸無水物(B)として無水コハク酸(新日本理化株式会社:リカシッドSA)0.257部、バインダーとしてアロニックスM−402(東亜合成株式会社製)2.314部、導電助剤(D)としてエチレングリコール0.700部、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバスペシャリティケミカル製)の20%酢酸エチル溶液を0.750部、酢酸エチル3.271部を配合し、固形分30%の分散体を得た。これをバーコーター#14を用いて厚さ100μmのPETフィルム上に塗布し、100℃のオーブンで2分間乾燥した。これにメタルハライドランプを用いて、400mJ/cm2の紫外線を照射して導電膜を作製した。この導電膜について表面抵抗、ヘイズ、透過率を測定した。表面抵抗の測定には株式会社Advantest製のデジタル超高抵抗/微小電流計(R8340A)を使用した。なお、表中の「over」とは、測定値が測定可能上限を超えたことを表す。ヘイズおよび透過率の測定には、ヘイズメーター[「NDH2000」、日本電色工業(株)製]を使用した。
【0044】
(実施例2〜7、比較例1〜2)
実施例2〜7、比較例1〜2は、下記表3に示したように配合した以外は、実施例1と同様の操作にて、配合、塗布、評価を行った。評価結果についても表3に示した。
【0045】
【表3】

【0046】
表3に示すように、実施例1〜7は、導電性、透明性がともに良好であったのに対し、比較例1〜2は、導電性が得られなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアニオン(A−1)によってドープされたπ共役高分子化合物(A−2)と、塩基性有機化合物(A−3)とのイオン対であり、有機溶剤中で溶解または分散可能である導電性材料(A)と、酸無水物(B)とを含んでなる導電性組成物。
【請求項2】
さらに導電助剤(D)を含むことを特徴とする請求項1記載の導電性組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の導電性組成物から形成されてなる導電膜。
【請求項4】
基材と請求項3記載の導電膜とを有する積層体。


【公開番号】特開2013−47344(P2013−47344A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221016(P2012−221016)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【分割の表示】特願2008−126555(P2008−126555)の分割
【原出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】