説明

導電性組成物、並びにこれを用いた導電性膜及び導電性積層体

【課題】導電性高分子を含有し、CNTの分散性が良好で優れた塗布性を示す導電性組成物であって、導電性と耐久性のいずれも優れる導電性膜の製造に好適な導電性組成物、当該組成物を用いて形成される、導電性と耐久性のいずれにも優れる導電性膜、当該導電性膜を備える導電性積層体、当該該導電性膜又は導電性積層体を含む熱電変換素子、及び当該熱電変換素子を用いた熱電発電物品の提供。
【解決手段】(A)カーボンナノチューブ、(B)導電性高分子、(C)オニウム塩化合物、及び(D)重合性化合物を含有する導電性組成物、当該組成物を用いてなる導電性膜、当該導電性膜を備える導電性積層体、当該該導電性膜又は導電性積層体を含む熱電変換素子、及び当該熱電変換素子を用いた熱電発電物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、並びにこれを用いた導電性膜及び導電性積層体に関する。また、本発明は導電性膜及び導電性積層体の製造方法に関する。さらに、本発明は当該組成物を用いた熱電変換材料、及び当該導電性膜又は導電性積層体を用いた熱電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野の発展にともなって、新しいエレクトロニクス材料が次々と研究・開発されている。カーボンナノチューブやグラフェン等の新しいナノカーボン材料もその1つである。これらは、その特性が研究され、高い電気伝導性ゆえに従来の金属系材料に代わる新たな導電性材料して、開発と応用研究が進んでいる。
【0003】
一方、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンス(EL)素子などに代表される画像表示素子(ディスプレイ)は、テレビやコンピューターをはじめ、近年普及してきた各種モバイル装置など、様々な分野に適用され目覚ましい発展を遂げている。また、近年では、地球環境に配慮し化石エネルギーから再生可能エネルギーへの移行が検討されており、例えば太陽光発電、風力発電、波力発電、振動発電、熱電変換の普及とこれらの性能の向上とが求められてきている。
このような中で、熱電変換材料及び素子は、太陽熱発電、地熱発電、温水熱発電、工業炉や自動車などからの排熱を利用した発電等、未利用の膨大な熱エネルギーを活用できる点で、注目されてきている。
【0004】
このような表示素子や熱電変換材料・素子には、その性能に関わる部材として、導電材料が使用されている。例えば、前者ではITO(インジウムスズオキサイド)等の金属系材料を用いた透明導電膜が使用されている。この透明導電膜は通常、金属系材料をガラス基板上に真空蒸着法やスパッタリング法などの気相法により成膜して製造される。しかし、気相法による製造では、工程の条件制御が容易でなく、製造装置等にも多額のコストがかかり、製膜の大面積化も困難である。
また、電気機器、例えば携帯電話やモバイル機器等については、軽量化やフレキシブル化への要請が大きい。そのため、基板材料をガラスからプラスチックへ移行することが検討されている。プラスチック基板を用いれば、表示装置の重量をガラス基板の場合の半分以下とすることも可能であり、また、強度や耐衝撃性を著しく向上させることもできる。しかし、従来の気相法による製造では基板に耐熱性が要求されるため、プラスチック基板では耐熱性が不足する。また、形成された被膜の基板に対する密着性が低下して剥がれ易い等の問題を生じていた。
【0005】
一方、熱電変換材料や素子においては、これに用いる導電材料の導電性の向上が課題となっている。熱電変換に係る性能指数ZTは式(A)で示され、性能向上には熱起電力と共に、導電率の向上が重要となる。

性能指数ZT=S・σ・T/κ (A)
S(V/K):熱起電力(ゼーベック係数) σ(S/m):導電率
κ(W/mK):熱伝導率 T(K):絶対温度

熱電変換材料としては、従来、無機材料が主に研究され、例えばビスマス・テルル系化合物、鉛・テルル系化合物、亜鉛・アンチモン系化合物、スクッテルダイト系化合物(CoSb、FeSb等)、クラスレート系化合物(Si系、Ge系等)、ホイスラー系化合物(FeVAl、TiNiSn等)、シリサイド系化合物(FeSi、MgSi等)、ホウ素系化合物、層状酸化物系化合物等が開発され、使用されている。熱電変換材料・素子においても、上記表示素子同様、軽量化やフレキシブル化への要請があり、有機材料への期待が大きく、代表的には導電性高分子が研究されている(例えば、特許文献1〜3、非特許文献1、2)。有機材料では無機材料と比較して、式(A)における熱伝導率κが低い点で有利であるが、導電率σが大きく低下することが課題であった。
【0006】
有機材料の導電率を向上させる手段として、カーボンナノチューブ(以下、CNTと略記する)の使用が検討されている(例えば、非特許文献3、4)。CNTを含有する導電性材料を、有機系素材をベースに調製できれば、スピンコート等の塗布方法による製膜が可能なため、高温や真空条件を必須とせず、製造工程が簡便で、製造コストを抑えることができる。プラスチック等の材料が基板として利用可能なため、素子の軽量化、フレキシブル化に対応でき、加えて強度や耐衝撃性を著しく向上させることもできる。また、大面積フィルム等の製造にも適する。このような利点から、CNTを用いた新しい導電性材料の開発、実用化が進められており、熱電変換材料への応用も期待されている。
【0007】
一方、CNTの導電性材料への利用にあたっては、その液分散性が解決すべき問題点とされている。例えば、CNTを用いて薄膜を形成する場合、CNTを水や有機溶剤等の媒体に分散させる必要がある。しかしCNTは凝集しやすく分散が容易ではない。そのため、分散剤を添加することでCNTの分散性を向上させ、得られた分散液を塗布・成膜することが行われている(例えば、非特許文献5、6参照)。分散剤によりCNTの分散性を向上させる具体的な方法としては、ドデシルスルホン酸ナトリウムなどの界面活性剤を含有する水溶液に分散させる方法(例えば、特許文献4参照)、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤を用いる方法(特許文献5参照)、アニオン性分散剤を使用する方法(特許文献6参照)、などが提案されている。
しかしながら、これらの分散方法は水系媒体への分散に限定され、分散時にCNTに欠陥が生じることがあった。また、CNT表面に非導電性の分散剤が付着すると、CNT本来の導電性や半導体特性が損なわれ、性能が低下するという問題もあった(非特許文献7参照)。
これに対し、CNTとの間で電荷の移動が可能な共役系重合体、所謂、導電性高分子を用いて、当該重合体の溶液にCNTを分散させ、分散性を高める方法が提案されている(例えば、特許文献7〜11、非特許文献8参照)。しかし、当該方法でも、CNT本来の高い導電性を十分に発揮させることは難しい。
またCNTと併用する有機素材との相容性が必ずしも十分ではなく、生成した塗膜の耐久性、耐摩耗性を向上させることが課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2000−323758号公報
【特許文献2】特開平2001−326393号公報
【特許文献3】特開平2002−100815号公報
【特許文献4】特開平6−228824号公報
【特許文献5】特開2008−24523号公報
【特許文献6】特開2009−242144号公報
【特許文献7】特開2003−96313号公報
【特許文献8】特開2004−195678号公報
【特許文献9】特開2005−89738号公報
【特許文献10】特開2006−265534号公報
【特許文献11】特開2010−18696号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本熱電学会誌、第6巻、第1号、第8頁(2009年)
【非特許文献2】機能材料、2009年2月号(第29巻、第2号)、第38頁
【非特許文献3】ACS Nano 第4巻(第1号)、第513頁(2010年)
【非特許文献4】J.PolymerScience Part B:Polymer Physics 第49巻、第467頁(2011年)
【非特許文献5】Chemistry A European Journal 第12巻、第7595頁、2006年
【非特許文献6】Nano Letters 第3巻、第269頁、2003年
【非特許文献7】Advanced Materials 第21巻、第1頁、2009年
【非特許文献8】Advanced Materials 第20巻、第4433頁、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、導電性高分子を含有し、CNTの分散性が良好で優れた塗布性を示す導電性組成物であって、導電性と耐久性のいずれも優れる導電性膜の製造に好適な導電性組成物の提供を課題とする。
また、本発明は、当該組成物を用いて形成される、導電性と耐久性のいずれにも優れる導電性膜、この導電性膜を備える導電性積層体、当該該導電性膜又は導電性積層体を含む熱電変換素子、及び当該熱電変換素子を用いた熱電発電物品を提供することを課題とする。
また、本発明は、導電性と耐久性のいずれにも優れる導電性膜及び導電性積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、CNT及び導電性高分子とともに、オニウム塩化合物を含有させた組成物では、特定の外部エネルギーを付与することでオニウム塩化合物が酸を生じて優れたドーパントとして機能することを見い出した。さらに、この組成物では、CNTの欠陥が抑えられ、CNTが本来有する高い導電性も維持されており、当該組成物を用いることでより導電性のより高い材料が得られることを見い出した。
また、通常用いられる酸や金属塩のドーパントでは、相溶性が十分でなく導電性高分子やCNTの凝集が促進されるが、オニウム塩化合物をドーパントに用いれば、特定の外部エネルギーを付与しない限り酸の発生が抑えられ、その結果、組成物中における導電性高分子やCNTの凝集を抑制でき、組成物の塗布性に優れることを見い出した。
さらに、上記組成物に重合性化合物を添加すると、外部エネルギーの付与によりオニウム塩化合物から生じた酸又は酸の前駆体のラジカル種により重合反応が開始され、膜を硬化させることができ、優れた導電性を維持しながら耐久性を大きく向上させた導電材料が得られることを見い出した。
本発明は、これらの知見に基づき成されたものである。
【0012】
すなわち、上記の課題は以下の手段により達成された。
<1>(A)カーボンナノチューブ、(B)導電性高分子、(C)オニウム塩化合物、及び(D)重合性化合物を含有する導電性組成物。
<2>(C)オニウム塩化合物が、(A)カーボンナノチューブ及び/又は(B)導電性高分子に対し、酸化能を有する化合物である、<1>記載の導電性組成物。
<3>(C)オニウム塩化合物が、熱又は活性エネルギー線照射の付与により酸を発生する化合物である、<1>又は<2>記載の導電性組成物。
<4>(C)オニウム塩化合物が、下記一般式(I)〜(V)のいずれかで表される化合物の1種又は2種以上である、<1>〜<3>のいずれかに記載の導電性組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
(一般式(I)〜(V)中、R21〜R23、R25〜R26及びR31〜R33は、それぞれ独立に直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基を表す。R27〜R30は、それぞれ独立に水素原子、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。R24は、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、アリーレン基を表す。
は、強酸のアニオンを表す。
一般式(I)におけるR21〜R23のいずれか2つの基、一般式(II)におけるR21及びR23、一般式(III)におけるR25及びR26、一般式(IV)におけるR27〜R30のいずれか2つの基、及び一般式(V)におけるR31〜R33のいずれか2つの基は、各一般式中において互いに結合して脂肪族環、芳香族環、又はヘテロ環を形成してもよい。)
<5>前記一般式(I)〜(V)において、Xがアリールスルホン酸のアニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸のアニオン、過ハロゲン化ルイス酸のアニオン、パーフルオロアルキルスルホンイミドのアニオン、又は、アルキルもしくはアリールボレートアニオンである、<4>記載の導電性組成物。
<6>(D)重合性化合物が2個以上のカチオン重合性基を有する化合物である、<1>〜<5>のいずれかに記載の導電性組成物。
<7>(D)重合性化合物のカチオン重合性基が、エポキシ基、オキセタン基、及び/又はビニルエーテル基である、<6>に記載の導電性組成物。
<8>溶媒を含む、<1>〜<7>のいずれかに記載の導電性組成物。
<9>導電性組成物の全固形分中に、(A)カーボンナノチューブを3〜50質量%、(B)導電性高分子を30〜80質量%、(C)オニウム塩化合物を1〜50質量%、(D)重合性化合物を5〜50質量%含有する、<1>〜<8>のいずれかに記載の導電性組成物。
<10>熱電変換用である、<1>〜<9>のいずれかに記載の導電性組成物。
<11><1>〜<10>のいずれかに記載の導電性組成物を用いてなる導電性膜。
<12>(D)重合性化合物を構成成分とする重合体を含む、<11>に記載の導電性膜。
<13>基材と、該基材上に設けられた<11>又は<12>に記載の導電性膜を備えた導電性積層体。
<14>基材が樹脂フィルムである<13>に記載の導電性積層体。
<15><11>もしくは<12>に記載の導電性膜、又は<13>もしくは<14>に記載の導電性積層体を用いた熱電変換素子。
<16>電極を有する、<15>に記載の熱電変換素子。
<17><15>又は<16>に記載の熱電変換素子を用いた熱電発電物品。
<18><1>〜<10>のいずれかに記載の導電性組成物を用いて成膜する工程を含む、導電性膜又は導電性積層体の製造方法。
<19>前記成膜工程が、導電性組成物を基材上に塗布する工程を含む、<18>に記載の製造方法。
<20>成膜後に加熱又は活性エネルギー線照射を行う工程を含む、<18>又は<19>に記載の製造方法。
<21>加熱又は活性エネルギー線の照射後に、60〜150℃で1〜20分間加熱する工程を含む、<20>に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の導電性組成物は、CNT及び導電性高分子の分散性に優れ、基材上への塗布性等の取り扱いに優れる。また、CNTの有する優れた導電性が損なわれないため、導電性のより優れた導電性膜(フィルム)や導電性積層体の調製に好適に用いることができる。さらに、本発明の導電性組成物から得られる導電性膜や導電性積層体は、重合性化合物を含有するため、重合反応により硬化させて耐久性をより高めることができる。
本発明の導電性膜及び導電性積層体は、より高い導電性とこれに伴う良好な熱電変換性能を備え、さらに耐久性にも優れる。
本発明の熱電変換素子及び熱電発電物品は、熱電変換効率に優れると同時に高い耐久性を備える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の熱電変換素子の一例を模式的に示す図である。図1中の矢印は素子の使用時に付与される温度差の方向を示す。
【図2】本発明の熱電変換素子の一例を模式的に示す図である。図2中の矢印は素子の使用時に付与される温度差の方向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の導電性組成物は、(A)CNT、(B)導電性高分子、(C)オニウム塩化合物、及び(D)重合性化合物を含有する。本発明の導電性組成物は、溶媒等の他の成分を含んでもよい。
以下、本発明の導電性組成物について詳述する。
【0018】
[(A)カーボンナノチューブ(CNT)]
CNTには、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、及び複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTがある。本発明においては、単層CNT、2層CNT、多層CNTを各々単独で用いてもよく、2種以上を併せて用いてもよい。特に、導電性及び半導体特性において優れた性質を持つ単層CNT及び2層CNTを用いることが好ましく、単層CNTを用いることがより好ましい。
単層CNTは、半導体性のものであっても、金属性のものであってもよく、両者を併せて用いてもよい。半導体性CNTと金属性CNTとを両方を用いる場合、組成物中の両者の含有比率は、組成物の用途に応じて適宜調整することができる。例えば、電極用途として用いる場合は、導電性の観点から、金属性CNTの含有比率が高いほうが好ましい。半導体用途として用いる場合は、半導体特性の観点から、半導体性CNTの含有比率が高いほうが好ましい。また、CNTには金属などが内包されていてもよく、フラーレン等の分子が内包されたものを用いてもよい。なお、本発明の導電性組成物には、CNTの他に、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンナノビーズなどのナノカーボンが含まれてもよい。
【0019】
CNTはアーク放電法、化学気相成長法(以下、CVD法という)、レーザー・アブレーション法等によって製造することができる。本発明に用いられるCNTは、いずれの方法によって得られたものであってもよいが、好ましくはアーク放電法及びCVD法により得られたものである。
CNTを製造する際には、同時にフラーレンやグラファイト、非晶性炭素が副生成物として生じ、また、ニッケル、鉄、コバルト、イットリウムなどの触媒金属も残存する。これらの不純物を除去するために、精製を行うことが好ましい。CNTの精製方法は特に限定されないが、硝酸、硫酸等による酸処理、超音波処理が不純物の除去には有効である。併せて、フィルターによる分離除去を行うことも、純度を向上させる観点からより好ましい。
【0020】
精製の後、得られたCNTをそのまま用いることもできる。また、CNTは一般に紐状で生成されるため、用途に応じて所望の長さにカットして用いてもよい。例えば、半導体用途に用いる場合は、素子電極間の短絡を防ぐために、素子電極間の距離よりも短いCNTを使用することが好ましい。CNTは、硝酸、硫酸等による酸処理、超音波処理、凍結粉砕法などにより短繊維状にカットすることができる。また、併せてフィルターによる分離を行うことも、純度を向上させる観点から好ましい。
本発明においては、カットしたCNTだけではなく、あらかじめ短繊維状に作製したCNTも同様に使用できる。このような短繊維状CNTは、例えば、基板上に鉄、コバルトなどの触媒金属を形成し、その表面にCVD法により700〜900℃で炭素化合物を熱分解してCNTを気相成長させることによって、基板表面に垂直方向に配向した形状で得られる。このようにして作製された短繊維状CNTは基板から剥ぎ取るなどの方法で取り出すことができる。また、短繊維状CNTはポーラスシリコンのようなポーラスな支持体や、アルミナの陽極酸化膜上に触媒金属を担持させ、その表面にCNTをCVD法にて成長させることもできる。触媒金属を分子内に含む鉄フタロシアニンのような分子を原料とし、アルゴン/水素のガス流中でCVDを行うことによって基板上にCNTを作製する方法でも配向した短繊維状のCNTを作製することもできる。さらには、SiC単結晶表面にエピタキシャル成長法によって配向した短繊維状CNTを得ることもできる。
【0021】
本発明で用いるCNTの平均長さは特に限定されず、組成物の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の導電性組成物を半導体用途に用いる場合、電極間距離にもよるが、製造容易性、成膜性、導電性等の観点から、CNTの平均長さが0.01μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0022】
本発明で用いるCNTの直径は特に限定されないが、耐久性、透明性、成膜性、導電性等の観点から、0.4nm以上100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは15nm以下である。
【0023】
[(B)導電性高分子]
本発明に用いられる導電性高分子は、共役系の分子構造を有する高分子化合物である。共役系の分子構造を有する高分子とは、高分子の主鎖上の炭素−炭素結合において、一重結合と二重結合とが交互に連なる構造を有している高分子をいう。また、本発明で用いる導電性高分子は、必ずしも高分子量化合物である必要はなく、オリゴマー化合物であってもよい。
前述のCNTとともに当該導電性高分子を用いることで、CNTが組成物中で凝集せず均一に分散され、組成物の塗布性が向上する。また、高い導電性の組成物が得られる。これは、導電性高分子が長く伸びた共役系構造を有するため、当該高分子とCNT間の電荷移動がスムーズであり、その結果、CNT本来の高い導電性や半導体特性を効果的に利用できるためと考えられる。
【0024】
本発明で用いられる導電性高分子として、具体的には、チオフェン系化合物、ピロール系化合物、アニリン系化合物、アセチレン系化合物、p−フェニレン系化合物、p−フェニレンビニレン系化合物、p−フェニレンエチニレン系化合物、p−フルオレニレンビニレン系化合物、ポリアセン系化合物、ポリフェナントレン系化合物、金属フタロシアニン系化合物、p−キシリレン系化合物、ビニレンスルフィド系化合物、m−フェニレン系化合物、ナフタレンビニレン系化合物、p−フェニレンオキシド系化合物、フェニレンスルフィド系化合物、フラン系化合物、セレノフェン系化合物、アゾ系化合物、金属錯体系化合物、及びこれらの化合物に置換基を導入した誘導体などをモノマーとし、当該モノマーから導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子が挙げられる。
【0025】
上記の誘導体中の置換基としては特に制限はないが、他の成分との相溶性や用いる媒体の種類等を考慮して、適宜選択して導入することが好ましい。
例示すると、媒体として有機溶媒を用いる場合、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基のほか、アルコキシアルキレンオキシ基、アルコキシアルキレンオキシアルキル基、クラウンエーテル基、アリール基等を好ましく用いることができる。これらの基は、さらに置換基を有してもよい。また、置換基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは1〜12個、より好ましくは4〜12個であり、特に炭素数6〜12個の長鎖のアルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルコキシアルキレンオキシ基、アルコキシアルキレンオキシアルキル基が好ましい。
水系の媒体を用いる場合は、各モノマーの末端又は上記置換基にさらに、カルボン酸基、スルホン酸基、水酸基、リン酸基等の親水性基を導入することが好ましい。
他にも、ジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、カルバメート基、ニトロ基、シアノ基、イソシアネート基、イソシアノ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基などを置換基として導入することができ、好ましい。
導入されうる置換基の数も特に制限されず、導電性高分子の分散性や相溶性、導電性等を考慮して、1個又は複数個の置換基を適宜導入することができる。
【0026】
チオフェン系化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、ポリチオフェン、チオフェン環に置換基が導入されたモノマーから導かれる繰り返し単位を含む共役系高分子、及びチオフェン環を含む縮合多環構造を有するモノマーから導かれる繰り返し単位を含む共役系高分子が挙げられる。
【0027】
チオフェン環に置換基が導入されたモノマーから導かれる繰り返し単位を含む共役系高分子としては、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリ−3−ブチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ−3−シクロヘキシルチオフェン、ポリ−3−(2’−エチルヘキシル)チオフェン、ポリ−3−オクチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルチオフェン、ポリ−3−(2’−メトキシエトキシ)メチルチオフェン、ポリ−3−(メトキシエトキシエトキシ)メチルチオフェンなどのポリ−アルキル置換チオフェン類、ポリ−3−メトキシチオフェン、ポリ−3−エトキシチオフェン、ポリ−3−ヘキシルオキシチオフェン、ポリ−3−シクロヘキシルオキシチオフェン、ポリ−3−(2’−エチルヘキシルオキシ)チオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシチオフェン、ポリ−3−メトキシ(ジエチレンオキシ)チオフェン、ポリ−3−メトキシ(トリエチレンオキシ)チオフェン、ポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などのポリ−アルコキシ置換チオフェン類、ポリ−3−メトキシ−4−メチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルオキシ−4−メチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシ−4−メチルチオフェンなどのポリ−3−アルコキシ置換−4−アルキル置換チオフェン類、ポリ−3−チオヘキシルチオフェン、ポリ−3−チオオクチルチオフェン、ポリ−3−チオドデシルチオフェンなどのポリ−3−チオアルキルチオフェン類が挙げられる。
【0028】
なかでも、ポリ−3−アルキルチオフェン類、ポリ−3−アルコキシチオフェン類が好ましい。3位に置換基を有するポリチオフェンに関しては、チオフェン環の2,5位での結合の向きにより異方性が生じる。3−置換チオフェンの重合において、チオフェン環の2位同士が結合したもの(HH結合体:head−to−head)、2位と5位が結合したもの(HT結合体:head−to−tail)、5位同士が結合したもの(TT結合体:tail−to−tail)の混合物になるが、2位と5位が結合したもの(HT結合体)の割合が多いほど、重合体主鎖の平面性が向上し、ポリマー間のπ−πスタッキング構造を形成しやすく、電荷の移動を容易にする上で好ましい。これら結合様式の割合は、H−NMRにより測定することができる。チオフェン環の2位と5位が結合したHT結合体の重合体中における割合は50質量%以上が好ましく、さらに好ましくは70質量%以上、特に90質量%以上のものが好ましい。
【0029】
より具体的に、チオフェン環に置換基が導入されたモノマーから導かれる繰り返し単位を含む共役系高分子、及びチオフェン環を含む縮合多環構造を有するモノマーから導かれる繰り返し単位を含む共役系高分子として、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0030】
【化2】

【0031】
ピロール系化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0032】
【化3】

【0033】
アニリン系化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0034】
【化4】

【0035】
アセチレン系化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0036】
【化5】

【0037】
p−フェニレン系化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0038】
【化6】

【0039】
p−フェニレンビニレン系化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0040】
【化7】

【0041】
p−フェニレンエチニレン系化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0042】
【化8】

【0043】
上記以外の化合物及びその誘導体から導かれる繰り返し単位を有する共役系高分子としては、下記の化合物が例示できる。なお下記式中、nは10以上の整数を示す。
【0044】
【化9】

【0045】
上記共役系高分子のなかでも、直鎖状の共役系高分子を用いることが好ましい。このような直鎖状の共役系高分子は、例えば、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子の場合、各モノマーのチオフェン環又はピロール環が、それぞれ2,5位で結合することにより得られる。ポリ−p−フェニレン系高分子、ポリ−p−フェニレンビニレン系高分子、ポリ−p−フェニレンエチニレン系高分子では、各モノマーのフェニレン基がパラ位(1,4位)で結合することにより得られる。
【0046】
本発明で用いる導電性高分子は、上述の繰り返し単位(以下、この繰り返し単位を与えるモノマーを「第1のモノマー(群)」とも称する)を1種単独で有しても、2種以上を組合わせて有していてもよい。また、第1のモノマーに加えて、他の構造を有するモノマー(以下、「第2のモノマー」と称する)から導かれる繰り返し単位を、併せて有していてもよい。複数種の繰り返し単位からなる高分子の場合、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、グラフト重合体であってもよい。
【0047】
上記第1のモノマーと併用される、他の構造を有する第2のモノマーとしては、フルオレニレン基、カルバゾール基、ジベンゾ[b,d]シロール基、チエノ[3,2−b]チオフェン基、チエノ[2,3−c]チオフェン基、ベンゾ[1,2−b;4,5−b’]ジチオフェン基、シクロペンタ[2,1−b;3,4−b’]ジチオフェン基、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H,5H)−ジオン基、ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,8−ジイル基、アゾ基、1,4−フェニレン基、5H−ジベンゾ[b、d]シロール基、チアゾール基、イミダゾール基、ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4(2H、5H)−ジオン基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、トリアゾール基等を有する化合物、及びこれらの化合物にさらに置換基を導入した誘導体が挙げられる。導入する置換基としては、上述した置換基と同様のものが挙げられる。
【0048】
本発明で用いる導電性高分子は、第1のモノマー群から選択された1種又は複数種のモノマーから導かれる繰り返し単位を導電性高分子中、合計で50質量%以上有していることが好ましく、70質量%以上有していることがより好ましく、第1のモノマー群から選択された1種又は複数種のモノマーから導かれる繰り返し単位のみからなることが更に好ましい。特に好ましくは、第1のモノマー群から選択された単一の繰り返し単位のみからなる共役系高分子である。
【0049】
第1のモノマー群のなかでも、チオフェン系化合物及び/又はその誘導体から導かれる繰り返し単位を含むポリチオフェン系高分子がより好ましく用いられる。特に、下記の構造式(1)〜(5)で表されるチオフェン環、又はチオフェン環含有縮合芳香環構造を繰り返し単位として有するポリチオフェン系高分子が好ましい。
【0050】
【化10】

【0051】
上記構造式(1)〜(5)中、R〜R11はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、アミノ基、チオエーテル基、ポリエチレンオキシ基、エステル基を表し、Yは炭素原子又は窒素原子を表し、nは1または2の整数を表す。また*は、各繰り返し単位の連結部位を表す。
【0052】
導電性高分子の分子量は特に限定されず、高分子量のものはもちろん、それ未満の分子量のオリゴマー(例えば重量平均分子量1000〜10000程度)であってもよい。
導電性の観点から、導電性高分子は、酸、光、熱に対して分解されにくいものが好ましい。また、高い導電性を得るためには、導電性高分子の長い共役鎖を介した分子内のキャリア伝達、及び分子間のキャリアホッピングが必要となる。そのためには、導電性高分子の分子量がある程度大きいことが好ましく、この観点から、本発明で用いる導電性高分子の分子量は、重量平均分子量で5000以上であることが好ましく、7000〜300,000であることがより好ましく、8000〜100,000であることがさらに好ましい。当該重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
【0053】
これらの導電性高分子は、構成単位である上記モノマーを通常の酸化重合法により重合させて製造できる。
また、市販品を用いることもでき、例えば、アルドリッチ社製のポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5ージイル) レジオレギュラー品が挙げられる。
【0054】
[(C)オニウム塩化合物]
本発明の導電性組成物はオニウム塩化合物を含有し、当該オニウム塩化合物により組成物の導電性を飛躍的に向上させることができる。導電性が向上するメカニズムの詳細はまだ定かではないが、該オニウム化合物が、上記CNT及び/又は導電性高分子に対し、適宜に光や熱などのエネルギーを外部から付与し活性化させた状態で、酸化能を発現する。このような酸化の過程で酸を発生し、発生した酸がドーパントとして作用するものと考えられる。ドーパントによって、導電性高分子、及び導電性高分子とCNT間の電荷移動がよりスムーズになるため、導電性が向上する。
従来のドーピング手法では、プロトン酸やルイス酸などの酸をドーパントとして用いるため、組成物中に酸を添加した時点でCNTや導電性高分子が凝集・析出・沈殿を生じてしまう。このような組成物では塗布性や成膜性が劣り、その結果、導電性も低下していた。
本発明のオニウム塩化合物は中性であり、CNTや導電性高分子を凝集・析出・沈殿させることがない。また、光や熱などのエネルギー付与により酸が発生する化合物でもあり、酸発生の開始時期をコントロールすることができる。酸を発生させない条件下で組成物を調製して凝集を防止し、良好な分散性・塗布性を維持したまま当該組成物を成形することができる。そのため、成形・成膜後に適宜エネルギー付与を行うことで、高い導電性を付与できる。
本発明の組成物は導電性高分子によりCNTの分散性向上を実現するものであるが、オニウム塩化合物は、これらと共に用いても、良好な分散性及び塗布性を維持することができる。塗布後の膜質も良好であり、CNT、導電性高分子、オニウム塩化合物が均一に分散されているため、塗布後に必要に応じ、熱や光などの外部エネルギーを与えることで、高い導電性を示す。
【0055】
上記の理由から、本発明で用いるオニウム塩化合物は、CNT及び/又は導電性高分子に対し、酸化能を有する化合物であることが好ましい。さらに、本発明で用いるオニウム塩化合物は、光や熱などのエネルギーの付与により酸を発生する化合物(酸発生剤)であることが好ましい。エネルギー付与の方法としては、活性エネルギー線の照射や加熱が挙げられる。
【0056】
このようなオニウム塩化合物として、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、カルボニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。なかでも、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、カルボニウム塩が好ましく、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、カルボニウム塩がより好ましく、スルホニウム塩、ヨードニウム塩が特に好ましい。当該塩を構成するアニオン部分としては、強酸の対アニオンが挙げられる。
【0057】
具体的には、スルホニウム塩としては下記一般式(I)及び(II)で表される化合物が、ヨードニウム塩としては下記一般式(III)で表される化合物が、アンモニウム塩としては下記一般式(IV)で表される化合物が、カルボニウム塩としては下記一般式(V)で表される化合物がそれぞれ挙げられ、本発明において好ましく用いられる。
【0058】
【化11】

【0059】
上記一般式(I)〜(V)中、R21〜R23、R25〜R26及びR31〜R33は、それぞれ独立に直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基を表す。R27〜R30は、それぞれ独立に水素原子、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。R24は、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、アリーレン基を示す。R21〜R33は、さらに置換基を有してもよい。Xは、強酸のアニオンを表す。
一般式(I)においてR21〜R23のいずれか2つの基が、一般式(II)においてR21及びR23が、一般式(III)においてR25及びR26が、一般式(IV)においてR27〜R30のいずれか2つの基が、一般式(V)においてR31〜R33のいずれか2つの基が、それぞれ結合して脂肪族環、芳香族環、ヘテロ環を形成してもよい。
【0060】
21〜R23、R25〜R33において、直鎖又は分岐のアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などが挙げられる。
環状アルキル基としては、炭素数3〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。
アラルキル基としては、炭素数7〜15のアラルキル基が好ましく、具体的には、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナンシル基、ピレニル基などが挙げられる。
芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、ピラゾール基、イミダゾール基、ベンゾイミダゾール基、インドール基、キノリン基、イソキノリン基、プリン基、ピリミジン基、オキサゾール基、チアゾール基、チアジン基等が挙げられる。
【0061】
27〜R30において、アルコキシ基としては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルコキシ基が好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、iso−プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数6〜20のアリールオキシ基が好ましく、具体的には、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
【0062】
24において、アルキレン基としては、炭素数2〜20のアルキレン基が好ましく、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、へキシレン基などが挙げられる。環状アルキレン基としては、炭素数3〜20の環状アルキレン基が好ましく、具体的には、シクロペンチレン基、シクロへキシレン、ビシクロオクチレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基などが挙げられる。
アリーレン基としては、炭素数6〜20のアリーレン基が好ましく、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基などが挙げられる。
【0063】
21〜R33が更に置換基を有する場合、置換基として好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、沃素原子)、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数2〜6のアルケニル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルアルキル基、アリールカルボニルアルキル基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、トリフルオロメチル基、−S−R41などが挙げられる。なお、R41は、前記R21と同義である。
【0064】
としては、アリールスルホン酸のアニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸のアニオン、過ハロゲン化ルイス酸のアニオン、パーフルオロアルキルスルホンイミドのアニオン、過ハロゲン酸アニオン、又は、アルキル若しくはアリールボレートアニオンが好ましい。これらは、さらに置換基を有してもよく、置換基としてはフルオロ基が挙げられる。
アリールスルホン酸のアニオンとして具体的には、p−CHSO、PhSO、ナフタレンスルホン酸のアニオン、ナフトキノンスルホン酸のアニオン、ナフタレンジスルホン酸のアニオン、アントラキノンスルホン酸のアニオンが挙げられる。
パーフルオロアルキルスルホン酸のアニオンとして具体的には、CFSO、CSO、C17SOが挙げられる。
過ハロゲン化ルイス酸のアニオンとして具体的には、PF、SbF、BF、AsF、FeClが挙げられる。
パーフルオロアルキルスルホンイミドのアニオンとして具体的には、CFSO−N−SOCF、CSO−N−SOが挙げられる。
過ハロゲン酸アニオンとして具体的には、ClO、BrO、IOが挙げられる。
アルキル若しくはアリールボレートアニオンとして具体的には、(C、(C、(p−CH、(CF)が挙げられる。
としてより好ましくは、過ハロゲン化ルイス酸のアニオン、フルオロ基が置換したアルキル若しくはアリールボレートアニオンであり、さらに好ましくはフルオロ置換アリールボレートアニオンであり、特に好ましくはペンタフルオロフェニルボレートアニオンである。
【0065】
オニウム塩の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
【化12】

【0067】
【化13】

【0068】
【化14】

【0069】
【化15】

【0070】
【化16】

【0071】
【化17】

【0072】
なお、上記具体例中のXは、PF、SbF、CFSO、CHPhSO、BF、(C、RfSO、(C、又は下記式で表されるアニオン
【0073】
【化18】

【0074】
を表し、Rfは任意の置換基を有するパーフルオロアルキル基を示す。
【0075】
本発明においては、特に下記一般式(VI)又は(VII)で表されるオニウム塩化合物が好ましい。
【0076】
【化19】

【0077】
一般式(VI)中、Yは炭素原子又は硫黄原子を表し、Arはアリール基を表し、Ar〜Arは、それぞれ独立にアリール基、芳香族へテロ環基を表す。Ar〜Arは、さらに置換されていてもよい。
Arとしては、好ましくはフルオロ置換アリール基であり、より好ましくはペンタフルオロフェニル基、又は少なくとも1つのパーフルオロアルキル基で置換されたフェニル基であり、特に好ましくはペンタフルオロフェニル基である。
Ar〜Arのアリール基、芳香族へテロ環基は、上述のR21〜R23、R25〜R33のアリール基、芳香族へテロ環基と同義であり、好ましくはアリール基であり、より好ましくはフェニル基である。これらの基は、さらに置換されていてもよく、置換基としては上述のR21〜R33の置換基が挙げられる。
【0078】
【化20】

【0079】
一般式(VII)中、Arはアリール基を表し、Ar及びArは、それぞれ独立にアリール基、芳香族へテロ環基を表す。Ar、Ar及びArは、さらに置換されていてもよい。
Arは、上記一般式(VI)のArと同義であり、好ましい範囲も同様である。
Ar及びArは、上記一般式(VI)のAr〜Arと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0080】
上記オニウム塩化合物は、通常の化学合成により製造することができる。また、市販の試薬等を用いることもできる。
オニウム塩化合物の合成方法の一実施態様を下記に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。他のオニウム塩に関しても、同様の手法により合成する事ができる。
トリフェニルスルホニウムブロミド(東京化成製)2.68g、リチウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−エチルエ−テルコンプレックス(東京化成製)5.00g、およびエタノール146mlを500ml容三口フラスコに入れ、室温にて2時間撹拌した後、純水200mlを添加し、析出した白色固形物を濾過により分取する。この白色固体を純水およびエタノールにて洗浄および真空乾燥することにより、オニウム塩としてトリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート6.18gを得ることができる。
【0081】
オニウム塩化合物は、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。オニウム塩化合物の含有量は、ドーピング効果の観点から、導電性高分子100質量部に対して3質量部以上であることが好ましく、より好ましく5〜50質量部、さらに好ましくは10〜40質量部である。
【0082】
[(D)重合性化合物]
本発明に用いる重合性化合物は、カチオン重合性化合物及び/又はラジカル重合性化合物を使用するができる。好ましくはカチオン重合性化合物であり、熱又は活性エネルギー線照射の付与により、前期(C)オニウム塩化合物から発生した酸又は酸の前駆体のラジカル種により重合反応を開始し、硬化する化合物であれば特に制限はない。
カチオン重合性化合物としては、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0083】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、及び、芳香族エポキシドなどが挙げられる。
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0084】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルケン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0085】
本発明に用いることのできる単官能及び多官能のエポキシ化合物を詳しく例示する。
単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0086】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0087】
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0088】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0089】
以下に、単官能ビニルエーテルと多官能ビニルエーテルを詳しく例示する。
単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0090】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、基材との密着性、形成された塗膜の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0091】
本発明に使用できるオキセタン化合物は、少なくとも1つのオキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明の導電性組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、導電性組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後の導電性膜と基材との高い密着性を得ることができる。
【0092】
分子内に1〜2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(1)〜(3)で示される化合物等が挙げられる。
【0093】
【化21】

【0094】
a1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基を表す。分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは同じであっても異なるものであってもよい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
a2は、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられ、芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が、アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が、N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。また、Ra2は置換基を有していても良く、置換基としては、1〜6のアルキル基、フッ素原子が挙げられる。
【0095】
a3は、線状又は分枝状アルキレン基、線状又は分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、線状又は分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基又はカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基、又は、以下に示す基を表す。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、ポリ(アルキレンオキシ)基としては、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
【0096】
【化22】

【0097】
a3が上記多価基である場合、Ra4は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基を表す。
a5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF32、又は、C(CH32を表す。
a6は、炭素数1〜4個のアルキル基、又は、アリール基を表し、nは0〜2,000の整数である。Ra7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。下記式中、Ra8は炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基であり、mは0〜100の整数である。
【0098】
【化23】

【0099】
式(1)で表される化合物として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(OXT−212:東亞合成(株)製)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211:東亞合成(株)製)が挙げられる。式(2)で表される化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(OXT−121:東亞合成(株)が挙げられる。また、式(3)で表される化合物としては、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221:東亞合成(株))が挙げられる。
【0100】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0101】
【化24】

【0102】
式(4)において、Ra1は、前記式(1)におけるのと同義である。また、多価連結基であるRa9としては、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
【0103】
【化25】

【0104】
上記Aにおいて、Ra10はメチル基、エチル基又はプロピル基を表す。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
【0105】
また、本発明に好適に使用しうるオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0106】
【化26】

【0107】
式(5)において、Ra8は前記式におけるのと同義である。Ra11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0108】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217号公報、段落番号0021ないし0084に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
特開2004−91556号公報に記載されたオキセタン化合物も本発明に使用することができる。段落番号0022ないし0058に詳細に記載されている。
【0109】
本発明に用いることのできるカチオン重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、オキセタン化合物とエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、ビニルエーテル化合物とを併用することが好ましい。
本発明に使用されるラジカル重合性化合物としては、好ましくはアクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、N−ビニル基を少なくとも1個、より好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。
【0110】
アクリレート基、メタクリレート基を有する化合物の具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、トリデシルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、エポキシアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、サイクリックトリメチロールプロパンフォルマールアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変性アクリレート、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ラクトン変性アクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパン(PO変性)トリアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、変性グリセリントリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等のアクリレート化合物、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリレート化合物が挙げられる。また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(4)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0111】
一般式(4)
CH2=C(R41)COOCH2CH(R42)OH
(ただし、R41およびR42は、HまたはCH3を示す。)
【0112】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。なお、前記POはプロピレンオキシド、EOはエチレンオキシドを示す。
【0113】
アクリルアミド基、メタクリルアミド基を有する化合物の具体例としては、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、メチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド等のアクリルアミド化合物、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等のメタクリルアミド化合物が挙げられる。
【0114】
N−ビニル化合物の具体例としては、N−ビニルホルムアミド(NVF)、N−ビニルカプロラクタム(NVC)、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール等が挙げられる。これらのラジカル重合性化合物は、前記カチオン重合性化合物と併用して使用することができる。
【0115】
本発明の重合性化合物は、最終的な導電性膜の性能設計に合わせて使用される。硬化性の点では1分子あたりの重合性基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものも使用されるが、通常には6官能以下である。大きな分子量の化合物や、疎水性の高い化合物は硬化性や膜強度に優れる反面、他成分との相溶性、分散性の点で好ましく無い場合がある。相溶性、分散性に対しては、重合性化合物の選択・使用法は重要であり、例えば2種以上の化合物の併用によって、相溶性を向上させ得ることがある。
【0116】
[溶媒]
本発明の導電性組成物は、CNT、導電性高分子及びオニウム塩化合物に加えて、溶媒を含有することが好ましい。
溶媒は、CNT、導電性高分子及びオニウム塩化合物を良好に分散又は溶解できればよく、水、有機溶媒、及びこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは有機溶媒であり、アルコール、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、DMF、NMP、DMSOなどの極性の有機溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケントンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテル、THF、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライムなどのエーテル系溶媒などが好ましく使用される。
また、溶媒は、あらかじめ脱気しておくことが好ましい。溶媒中における溶存酸素濃度を、10ppm以下とすることが好ましい。脱気の方法としては、減圧下超音波を照射する方法、アルゴン等の不活性ガスをバブリングする方法などが挙げられる。
【0117】
[他の成分]
本発明の導電性組成物は、上記の各成分に加えて、残部に他の成分を含んでいてもよい。
例えば、分散安定性を向上させるために、水酸化リチウム、過硫酸アンモニウム、紫外線吸収剤などを含有させることができる。また、膜強度を高める観点からは、無機微粒子、ポリマー微粒子、シランカップリング剤などを、屈折率を下げて透明性を高める観点からは、フッ素系化合物などを、塗布時のムラを防ぐ観点からは、フッ素系界面活性剤などを、用途に応じて適宜含有させることができる。
これらの成分の含有量は、組成物全質量に対し、0.1〜5質量%程度であることが好ましい。
【0118】
[導電性組成物の調製]
本発明の導電性組成物は、CNT、導電性高分子、オニウム塩化合物及び重合性化合物を含有し、必要に応じて溶媒を含有する。本発明の組成物は、溶媒にCNTが分散されたCNT分散液である。
本発明の導電性組成物は、CNTの含有量を変えることによって、該組成物の導電性や半導体特性を制御することができる。組成物中のCNT、導電性高分子及びオニウム塩化合物、重合性化合物の含有量は、組成物の用途、当該用途に求められる導電性や透明性などの特性に応じて、適宜選択・決定することができる。
組成物中のCNT含有量は、全固形分中3〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。
組成物中の導電性高分子含有量は、全固形分中30〜80質量%であることが好ましく、35〜75質量%であることがより好ましく、40〜70質量%であることがさらに好ましい。
組成物中のオニウム塩化合物は、全固形分中1〜50質量%であることが好ましく、5〜45質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることがさらに好ましい。
組成物中の重合性化合物の含有量は、全固形分中5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%の範囲である。重合性化合物の含量に関しては、多い方が硬化性に有利であるが、多すぎる場合には、相分離が生じたり、硬化膜の粘着性による製造工程上の問題(例えば、導電性膜成分の転写、粘着に由来する製造不良)等の問題を生じ得る。
溶媒を用いる場合、当該溶媒の使用量は、本発明の組成物中60〜99.9質量%用いることが好ましく、70〜99.8質量%用いることがより好ましく、80〜99.7質量%であることがさらに好ましく、90〜99.6質量%であることが特に好ましく、95〜99.5質量%であることがとりわけ好ましい。
【0119】
本発明の導電性組成物の調製は、上記の各成分を混合して調製することができる。好ましくは、溶媒に少なくともCNT、導電性高分子、オニウム塩化合物及び重合性化合物を添加し、これらを通常の方法により分散させて調製する。各成分の添加・混合順序は特に限定されないが、予め溶媒中に導電性高分子を所定量添加した後、CNTを所定量添加することが好ましい。
調製方法に特に制限はなく、通常の方法を適用することができる。例えば、メカニカルホモジナイザー法、ジョークラッシャ法、超遠心粉砕法、カッティングミル法、自動乳鉢法、ディスクミル法、ボールミル法、超音波分散法などの分散方法を用いることができる。また、必要に応じ、これらの方法を2つ以上組み合わせて用いてもよい。好ましい分散方法の組み合わせは、メカニカルホモジナイザー法と超音波分散法である。組み合わせの順番はいかなるものであってもよく、順次異なる分散方法により分散する方法、もしくは同時に異なる分散方法で分散する方法がある。好ましくは、最初に弱い分散エネルギーを有する分散方法で分散した後、次に高い分散エネルギーを有する分散方法で分散する順番がよい。そうすることで、欠陥なく高い濃度でCNTを分散できるようになる。具体的には、最初にメカニカルホモジナイザー法、次に超音波分散法を組み合わせることが好ましい。
また、用いるオニウム塩化合物が熱や光等のエネルギー付与により酸を発生する化合物である場合、酸を生成しない温度下、放射線や電磁波等を遮った状態で、組成物の調製を行うこと好ましい。酸による凝集等を防ぎ、組成物の調製及び保存時において、組成物中の各成分の均一な分散性又は溶解性を保つことができる。
【0120】
組成物の調製は、大気下で行うこともできるが、不活性雰囲気において行うことが好ましい。不活性雰囲気とは、酸素濃度が大気中濃度よりも少ない状態のことをいう。好ましくは、酸素濃度が10%以下の雰囲気である。不活性雰囲気にする方法としては、窒素、アルゴンなどの気体で大気を置換させる方法が挙げられ、好ましく用いられる。
また、調製時の温度は、0℃から50℃の範囲であることが好ましい。
【0121】
得られた導電性組成物中に含まれるCNTには、欠陥のあるCNTが含まれていることがある。このようなCNTの欠陥は、組成物の導電性を低下させるため、低減化することが好ましい。組成物中のCNTの欠陥の量は、ラマンスペクトルのG−バンドとD−バンドの比率G/Dで見積もることができる。G/D比が高いほど欠陥の量が少ないCNT材料であると推定できる。本発明においては、組成物のG/D比が10以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましい。
【0122】
[導電性膜]
本発明の導電性膜は、前記導電性組成物を用いてなる。本発明の導電性膜においては、その調製に用いた組成物中の重合性化合物は重合した状態で存在する。本発明の導電性膜の製造では、本発明の導電性組成物を膜状に成形できる手法であれば特に限定なく採用することができる。好ましくは、本発明の導電性組成物を基材上に塗布して成膜し、熱や活性エネルギー線等のエネルギーを付与することで、該基材上に得ることができる。成膜方法及びエネルギー付与の詳細は後述する。さらに重合性化合物の硬化を促進し完了させるため、熱や活性エネルギー線等のエネルギーの付与後に、60〜150℃、好ましくは80〜120℃で、1〜20分間、好ましくは2〜5分間の加熱工程を付与することがより好ましい。
【0123】
[導電性積層体]
本発明の導電性積層体は、基材と、該基材上に設けられた本発明の導電性膜とを有する。基材の詳細は後述する。本発明の導電性積層体は、例えば、本発明の導電性組成物を基材上に塗布して、必要により乾燥させて成膜し、その後、熱や活性エネルギー線等のエネルギーを付与することで得られる。熱や活性エネルギー線等のエネルギーの付与後に、60〜150℃、好ましくは80〜120℃で、1〜20分間、好ましくは2〜5分間の加熱工程を付与することがより好ましい。
【0124】
(成膜方法)
導電性膜の成膜方法は特に限定されず、例えば、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコートなど、公知の塗布方法を用いることができる。
塗布後は、必要に応じて乾燥工程を行う。例えば、熱風を吹き付けることにより溶媒を揮発、乾燥させることができる。
【0125】
用いる導電性組成物の量は、所望の膜厚によって適宜調整される。導電性膜の膜厚は、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、透明電極に用いる場合は、抵抗値と光透過率が重要となる。LCD、PDP、EL素子等の表示装置用の透明電極の場合、好ましい抵抗値は、0.001〜100,000Ω/□の範囲であり、より好ましくは0.1〜10,000Ω/□の範囲である。光透過率は、550nmにおける光透過率が40%〜100%程度、好ましくは50〜100%、より好ましくは60〜100%の範囲である。これらを満たすように、CNT、導電性高分子、オニウム塩化合物、重合性化合物等の濃度を考慮して膜厚を適宜調整する。
【0126】
(エネルギー付与)
成膜後、当該膜に活性エネルギー線を照射し、又は加熱するなどして外部エネルギーを付与してドーピングを行う。その際、オニウム塩化合物が酸やその前駆体のラジカル種を発生し、この酸又はラジカル種が重合性化合物の重合反応(膜硬化反応)を引き起こす。したがって、ドーピングと膜硬化反応とを同時並行で進行させることができる。さらにその後、60〜150℃で1〜20分間加熱し重合性化合物の硬化を促進し完了させることが好ましい。
活性エネルギー線には、放射線や電磁波が包含され、放射線には粒子線(高速粒子線)と電磁放射線が包含される。粒子線としては、アルファ線(α線)、ベータ線(β線)、陽子線、電子線(原子核崩壊によらず加速器で電子を加速するものを指す)、重陽子線等の荷電粒子線、非荷電粒子線である中性子線、宇宙線等が挙げられ、電磁放射線としては、ガンマ線(γ線)、エックス線(X線、軟X線)が挙げられる。電磁波としては、電波、赤外線、可視光線、紫外線(近紫外線、遠紫外線、極紫外線)、X線、ガンマ線などがあげられる。本発明において用いる線種は特に限定されず、例えば、使用するオニウム塩化合物(酸発生剤)の極大吸収波長付近の波長を有する電磁波を適宜選べばよい。
これらの活性エネルギー線のうち、ドーピング効果および安全性の観点から好ましいのは紫外線、可視光線、赤外線であり、具体的には240〜1100nm、好ましくは300〜850nm、より好ましくは350〜670nmに極大吸収を有する光線である。
【0127】
活性エネルギー線の照射には、放射線または電磁波照射装置が用いられる。照射する放射線または電磁波の波長は特に限定されず、使用するオニウム塩化合物の感応波長に対応する波長領域の放射線または電磁波を照射できるものを選べばよい。
放射線または電磁波を照射できる装置としては、LEDランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、DeepUVランプ、低圧UVランプなどの水銀ランプ、ハライドランプ、キセノンフラッシュランプ、メタルハライドランプ、ArFエキシマランプ、KrFエキシマランプなどのエキシマランプ、極端紫外光ランプ、電子ビーム、X線ランプを光源とする露光装置がある。紫外線照射は、通常の紫外線照射装置、例えば、市販の硬化/接着/露光用の紫外線照射装置(ウシオ電機株式会社SP9-250UBなど)を用いて行うことができる。
【0128】
露光時間及び光量は、用いるオニウム塩化合物の種類及びドーピング効果を考慮して適宜選択すればよい。具体的には、光量10mJ/cm〜10J/cm、好ましくは50mJ/cm〜5J/cm、で行うことが挙げられる。
【0129】
加熱によるドーピングは、導電性組成物を塗布した基材(成膜)を、オニウム塩化合物が酸を発生する温度以上で加熱すればよい。加熱温度として、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは70℃〜150℃である。加熱時間は、好ましくは1分〜60分、より好ましくは3分〜30分である。
【0130】
(基材)
本発明の導電性膜の製造に用いる基材、すなわち、本発明の導電性積層体が備える基材は、本発明の導電性膜を成膜した後の用途等に応じ選択することができる。例えば、本発明の導電性膜をLCD、電気泳動方式表示材料、電子ペーパー、有機EL素子などの表示装置の電極として形成する場合は、ガラス基板またはプラスチック基板を好適に用いることができる。また、導電性膜との間に絶縁膜を設けた金属基板を使用することもできる。なお、基材は板状に限らず、例えば、表面が曲面であるものや、凹凸が形成されているものなど、用途に応じて選択することができる。また、本発明の導電性膜を熱電変換用途に用いる場合には、導電性膜の圧着面に各種電極材料を設けた基材を好適に用いることができる。この電極材料としてはITO、ZnO等の透明電極、銀、銅、金、アルミニウムなどの金属電極、CNT、グラフェンなどの炭素材料、PEDOT/PSS等の有機材料等が使用できる。
【0131】
塗布、成膜後に加熱や光照射を行う場合は、これらの刺激による影響を受けにくい基材を選択することが好ましい。本発明で使用可能な基材としては、ガラス、透明セラミックス、金属、プラスチックフィルムなどの基板が挙げられる。ガラス、透明セラミックスは、金属、プラスチックフィルムに比べ、柔軟性に欠ける。また、金属とプラスチックフィルムを価格的に比べると、プラスチックフィルムの方が安価であり、柔軟性を有するので好ましい。
このような観点から、本発明の基材としては、樹脂フィルムが好ましく、特に、ポリエステル系樹脂(以下、適宜、「ポリエステル」と称する)、ポリシクロオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂が好ましい。ポリエステルとしては、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルが好ましい。
【0132】
本発明に用い得る樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−フタレンジカルボキシレート、ビスフェノールAとイソ及びテレフタル酸のポリエステルフィルム等のポリエステルフィルム、製品名ゼオノアフィルム(日本ゼオン社製)、アートンフィルム(JSR社製)、スミライトFS1700(住友ベークライト社製)等のポリシクロオレフィンフィルム、製品名カプトン(東レ・デュポン社製)、アピカル(カネカ社製)、ユービレックス(宇部興産社製)、ポミラン(荒川化学社製)等のポリイミドフィルム、製品名ピュアエース(帝人化成社製)、エルメック(カネカ社製)等のポリカーボネートフィルム、製品名スミライトFS1100(住友ベークライト社製)等のポリエーテルエーテルケトンフィルム、製品名トレリナ(東レ社製)等のポリフェニルスルフィドフィルム等が挙げられる。使用条件や環境により適宜選択させるが入手の容易性、好ましくは100℃以上の耐熱性、経済性及び効果の観点から、市販のポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、各種ポリイミドやポリカーボネートフィルム等が好ましい。
【0133】
また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記樹脂の共重合体、又はこれらの樹脂と他の種類の樹脂とのブレンド物なども用いることができる。本発明に用いる基材は、紫外線吸収剤等の添加剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤としては、オキサゾール系、トリアジン系、スチルベン系、クマリン系吸収剤を好適に用いることができる。基材は単一の材料からなる1層でもよいし、異なる材料からなる2層以上の構成を有してもよい。
【0134】
ここで用いられる樹脂フィルムの厚さに特に制限はなく、フィルムの使用目的に応じて適宜選択できるが、一般的には、5〜500μmのものを用いることが好ましい。
【0135】
本発明の導電性組成物は、CNTの分散性に優れ、かつ含有するCNTに欠陥が少ないという利点を有し、CNT、導電性高分子、オニウム塩化合物、重合性化合物の種類や含有量等を適宜調整することにより、10〜2000 S/cm程度の高い導電率の導電膜を得ることができる。そのため、本発明の導電性組成物、導電性膜、導電性積層体は、液晶ディスプレイに代表される各種の表示素子や太陽電池などに用いられる透明電極、コンデンサ、キャパシタ、二次電池などに使用される導電材料の他、太陽熱発電、温水発電、電子機器からの排熱を利用した発電、外気や体温の温度差を利用したセンサーネットワークやヘルスモニター等の環境発電に使用される熱電変換材料又は熱電変換素子として有用である。
【0136】
[熱電変換素子]
本発明の熱電変換素子は、本発明の導電性膜、又は本発明の導電性積層体を備えるものであればよく、その構成については特に限定されないが、基材と、本発明の導電性膜を含む熱電変換層と、これらを電気的に接続する電極とを有していることが好ましい。
本発明の熱電変換素子の構造の一例として、図1に示す素子(1)及び図2に示す素子(2)の構造が挙げられる。図1に示す素子(1)は、第1の基材(12)上に、第1の電極(13)及び第2の電極(15)を含む一対の電極と、該電極間に熱電変換層(14)として本発明の導電性膜を備える素子である。第2の電極(15)は第2の基材(16)表面に配設されており、第1の基材(12)及び第2の基材(16)の外側には互いに対向して金属板(17)が配設される。図2に示す素子(2)は、第1の基材(22)上に、第1の電極(23)及び第2の電極(25)が配設され、その上に熱電変換材料層(24)として本発明の導電性膜が設けられている。図1及び2中、矢印は、熱電変換素子の使用時における温度差の方向を示す。
本発明の熱電変換素子は、本発明の導電性積層体を備えるものであってもよく、この場合には、本発明の導電性積層体を構成する基材を上記第1の基材(12、22)として機能させることが好ましい。すなわち、本発明の導電性積層体の基材表面(熱電変換材料との圧着面)には、上述した各種電極材料が設けられていることが好ましい。
形成された熱電変換材料層(導電性膜)は、一方の表面が基材で覆われているが、これを用いて熱電変換素子を調製するに際しては、他方の表面にも基材(第2の基材(16、26))を圧着させることが、膜の保護の観点から好ましい。また、この第2の基材(16)表面(熱電変換材料層との圧着面)には上記各種電極材料を予め設けておいてもよい。また、第2の基材と熱電変換材料層との圧着は、密着性向上の観点から100℃〜200℃程度に加熱して行うことが好ましい。
【0137】
本発明の熱電変換素子において、熱電変換層の膜厚は、0.1μm〜1000μmであることが好ましく、1μm〜100μmであることがより好ましい。膜厚が薄いと温度差を付与しにくくなることと、膜内の抵抗が増大してしまうため好ましくない。
また、第1及び第2の基材の厚さは取り扱い性、耐久性等の点から30〜3000μmであることが好ましく、100〜1000μmであることが好ましい。
一般に熱電変換素子では、有機薄膜太陽電池用素子等の光電変換素子と比べて、変換層の塗布・製膜が有機層1層分でよく、簡便に素子を製造できる。特に、本発明の熱電変換材料を用いると有機薄膜太陽電池用素子と比較して100倍〜1000倍程度の厚膜化が可能であり、空気中の酸素や水分に対する化学的な安定性が向上する。
【0138】
[熱電発電物品]
本発明の熱電発電物品は、本発明の熱電変換素子を用いて熱電変換を行う物、装置、機械、器具等を含む。より具体的には、温泉熱発電機、太陽熱発電機、廃熱発電機等の発電機や、腕時計用電源、半導体駆動電源、小型センサー用電源等が挙げられる。
【実施例】
【0139】
以下、実施例に基づき本発明をより詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0140】
実施例1
CNT(単層カーボンナノチューブ:ASP−100F、Hanwha nanotech社製、純度95%)12mg、及び下記に示す導電性高分子1 20mgに、o−ジクロロベンゼン10mLを加えて、メカニカルな攪拌装置で20分間攪拌した。その後、超音波洗浄機(井内盛栄堂(株)製US−2、出力120W、間接照射)を用いて、30℃で10分間超音波分散することによって、ジクロロベンゼンのCNT分散液を得た。この溶液に、オニウム塩化合物として前記例示化合物(I−9)8mgと下記に示す重合性化合物1,6をそれぞれ4mgと6mgを室温で添加して、導電性組成物のジクロロベンゼン分散液を作製した。この分散液のG/D比を下記方法により測定したところ65であった。一方、基板として、1.1mmの厚み、40mm×50mmのガラス基板をアセトン中で超音波洗浄した後、10分間UV−オゾン処理を行った。上記導電性組成物のジクロロベンゼン分散液をこのガラス基板上にスピンコーターにて塗布した後、室温真空条件で3時間乾燥することで、厚さ約1μmの導電膜を形成した。その後、適宜、紫外線照射機(アイグラフィックス株式会社製、ECS−401GX)により紫外線照射(光量:約500mJ/cm)、及び80℃で2分間、後加熱処理を行った。
得られた膜の導電率、熱電変換性能(ZT)、成膜性、及び強度を、下記の手法で測定・評価した。結果を下記表1に示す。
【0141】
[G/D比]
分散液のラマン分光測定スペクトル(波長633nm、堀場製作所製レーザラマン分光測定装置)の測定により、CNTの欠陥の程度をG-バンドとD-バンドのスペクトル強度比から、G/D比で評価した。G/D比が小さい程、CNTの欠陥が多い。
【0142】
[導電率及び熱電変換性能の測定]
得られた導電性膜を、熱電特性測定装置(オザワ科学(株)製:RZ2001i)を用いて、100℃におけるゼーベック係数(単位:μV/K)及び導電率(単位:S/cm)を評価した。続いて、熱伝導率測定装置(英弘精機(株)製:HC-074)を用いて熱伝導率(単位:W/mK)を算出した。これらの値を用いて、前記数式(A)に従って、100℃におけるZT値を算出し、この値を熱電変換性能値とした。
【0143】
[成膜性]
成膜性は目視により下記の3段階の基準で評価した。
1:良好
2:凝集物が少しみられ、成膜性が低下した
3:凝集物が多く、成膜性が大きく低下した
【0144】
[膜強度]
得られた導電性膜について、JIS K5600−4に基づき、鉛筆硬度試験を行った。結果を表1に示す。本発明の導電性膜において硬度の許容範囲はHB以上であり、H以上であることが好ましい。評価結果がBである膜は膜の取り扱い時にキズが生じる可能性があり好ましくない。なお、鉛筆は三菱鉛筆社製のUNI(登録商標)を使用した。
【0145】
実施例2〜18
導電性高分子、オニウム塩化合物、及び重合性化合物の種類を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、導電性膜を製造し、導電率、熱電変換性能(ZT)、成膜性、及び膜強度を評価した。結果を表1に示す。
【0146】
実施例19
実施例1におけるメカニカルな攪拌20分間と、その後の超音波洗浄機(井内盛栄堂(株)製US−2、出力120W、間接照射)分散10分間の代わりに、超音波破砕機(東京理化器械(株)製VCX−502、出力250W、直接照射)30分間攪拌にてCNT分散液を調製した以外は実施例1と同様にして、ガラス基板上に導電性膜を作製した。この塗膜を、実施例1と同様の手法により、導電率、熱電変換性能(ZT)、成膜性、及び強度を評価した、結果を下記表1に示す。なお、実施例19で調製した上記分散液のG/D比は12であった。
【0147】
実施例20
実施例1において、後加熱処理を行わない以外は実施例1と同様にして、ガラス基板上に導電性膜を作製した。この塗膜を、実施例1と同様の手法により、導電率、熱電変換性能(ZT)、成膜性、及び強度を評価した。結果を表1に示す。
【0148】
実施例21,22
実施例1におけるCNT/導電性高分子/オニウム塩化合物/全重合性化合物の添加量をそれぞれ14mg/20mg/6mg/10mg及び16mg/15mg/4mg/15mgに変えた以外は実施例1と同様にして、ガラス基板上に導電性膜を作製した。この塗膜を、実施例1と同様にして導電率、熱電変換性能(ZT)、成膜性、及び強度を評価した。結果を表1に示す。
【0149】
比較例1〜6
実施例1において、オニウム塩化合物、重合性化合物を添加する代わりに、無添加または表1に示す他の化合物を添加すること以外は実施例1と同様にして、ガラス基板上にCNTと導電性高分子とを含む比較用塗膜を作製した。この塗膜を、実施例1と同様の手法により、導電率、熱電変換性能(ZT)、成膜性、及び強度を評価した。結果を表1に示す。
【0150】
<導電性高分子>
下記の繰り返し単位を有する導電性高分子1: ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(重量平均分子量87,000)
【0151】
【化27】

【0152】
下記の繰り返し単位を有する導電性高分子2: ポリ(3−((2’’−エトキシ)−2’−エトキシ)エトキシチオフェン)(重量平均分子量65,000)
【0153】
【化28】

【0154】
下記の繰り返し単位を有する導電性高分子3: ポリ(2,5−ビス(3−ドデシルチオフェニル)チエノ[3,2−b]チオフェン)(重量平均分子量79,000)
【0155】
【化29】

【0156】
下記の繰り返し単位を有する導電性高分子4: ポリ(2,6−(4,4−ビス(2−エチルヘキシル)−4H−シクロペンタ[2,1―b;3,4−b’]ジチオフェン−co−4,7−ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール)(重量平均分子量48,000)
【0157】
【化30】

【0158】
下記の繰り返し単位を有する導電性高分子5: ポリ(2,6−ビス(3−ヘキシルチオフェニル)−(4,4−ジヘキシルジチエノ[3,2−b;2‘,3’−d]シロール)(重量平均分子量52,000)
【0159】
【化31】

【0160】
下記の繰り返し単位を有する導電性高分子6: ポリ(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(重量平均分子量110,000)
【0161】
【化32】

【0162】
<重合性化合物>
重合性化合物1: 3,4−エポキシシクロへキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロへキセンカルボキシレート(セロキサイド2021:ダイセルUCB(株)製)
重合性化合物2: 1,2:8,9−ジエポキシリモネン(セロキサイド3000:ダイセルUCB(株)製)
重合性化合物3: ポリエチレングリコール ジグリシジルエーテル(ナガセコムテックス(株)製)
重合性化合物4: ビスフェノールAビス(トリエチレングリコールグリシジルエーテル)エーテル(リカレジンBEO−60E:新日本理化(株)製)
重合性化合物5: 1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン(OXT−121:東亞合成(株)製)
重合性化合物6: ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221:東亜合成(株)製)
重合性化合物7: テトラエチレングリコール ジビニルエーテル(DVE−4:BASF社製)
重合性化合物8: ポリエチレングリコール ジビニルエーテル(PEG200−DVE:BASF社製)
【0163】
【表1−1】

【0164】
【表1−2】

【0165】
【表1−3】

【0166】
表1から明らかなように、CNT、導電性高分子、オニウム塩化合物、及び重合性化合物を含有する組成物を用いて成形された実施例1〜22の導電性膜では、高い導電率、良好な成膜性、良好な熱電変換性能を示すと共に、優れた膜強度を示した。
これに対し、オニウム塩化合物を用いていない比較例1〜5では、導電率、熱電変換性能が大きく低下した。また酸や金属ハロゲンといった従来のドーパントを用いた比較例3〜5では、成膜性に劣る結果となった。さらにドーパントを添加しない比較例1、ヨウ素や金属ハロゲンをドーパントとした比較例2〜3、及び重合性化合物を含有しない比較例6では、膜強度が劣る結果となった。
【符号の説明】
【0167】
1、2 熱電変換素子
11、17 金属板
12、22 第1の基材
13、23 第1の電極
14、24 熱電変換層
15、25 第2の電極
16、26 第2の基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カーボンナノチューブ、(B)導電性高分子、(C)オニウム塩化合物、及び(D)重合性化合物を含有する導電性組成物。
【請求項2】
(C)オニウム塩化合物が、(A)カーボンナノチューブ及び/又は(B)導電性高分子に対し、酸化能を有する化合物である、請求項1記載の導電性組成物。
【請求項3】
(C)オニウム塩化合物が、熱又は活性エネルギー線照射の付与により酸を発生する化合物である、請求項1又は2記載の導電性組成物。
【請求項4】
(C)オニウム塩化合物が、下記一般式(I)〜(V)のいずれかで表される化合物の1種又は2種以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【化1】

(一般式(I)〜(V)中、R21〜R23、R25〜R26及びR31〜R33は、それぞれ独立に直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基を表す。R27〜R30は、それぞれ独立に水素原子、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。R24は、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、アリーレン基を表す。
は、強酸のアニオンを表す。
一般式(I)におけるR21〜R23のいずれか2つの基、一般式(II)におけるR21及びR23、一般式(III)におけるR25及びR26、一般式(IV)におけるR27〜R30のいずれか2つの基、及び一般式(V)におけるR31〜R33のいずれか2つの基は、各一般式中において互いに結合して脂肪族環、芳香族環、又はヘテロ環を形成してもよい。)
【請求項5】
前記一般式(I)〜(V)において、Xがアリールスルホン酸のアニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸のアニオン、過ハロゲン化ルイス酸のアニオン、パーフルオロアルキルスルホンイミドのアニオン、又は、アルキル若しくはアリールボレートアニオンである、請求項4記載の導電性組成物。
【請求項6】
(D)重合性化合物が2個以上のカチオン重合性基を有する化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項7】
(D)重合性化合物のカチオン重合性基が、エポキシ基、オキセタン基、及び/又はビニルエーテル基である、請求項6に記載の導電性組成物。
【請求項8】
溶媒を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項9】
導電性組成物の全固形分中に、(A)カーボンナノチューブを3〜50質量%、(B)導電性高分子を30〜80質量%、(C)オニウム塩化合物を1〜50質量%、(D)重合性化合物を5〜50質量%含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項10】
熱電変換用である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電性組成物を用いてなる導電性膜。
【請求項12】
(D)重合性化合物を構成成分とする重合体を含む、請求項11に記載の導電性膜。
【請求項13】
基材と、該基材上に設けられた請求項11又は12に記載の導電性膜を備えた導電性積層体。
【請求項14】
基材が樹脂フィルムである請求項13に記載の導電性積層体。
【請求項15】
請求項11もしくは12に記載の導電性膜、又は請求項13もしくは14に記載の導電性積層体を用いた熱電変換素子。
【請求項16】
電極を有する、請求項15に記載の熱電変換素子。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の熱電変換素子を用いた熱電発電物品。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電性組成物を用いて成膜する工程を含む、導電性膜又は導電性積層体の製造方法。
【請求項19】
前記成膜工程が、導電性組成物を基材上に塗布する工程を含む、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
成膜後に加熱又は活性エネルギー線照射を行う工程を含む、請求項18又は19に記載の製造方法。
【請求項21】
加熱又は活性エネルギー線の照射後に、60〜150℃で1〜20分間加熱する工程を含む、請求項20に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−95820(P2013−95820A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238780(P2011−238780)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】