説明

導電性組成物、及びその製造方法

【課題】本発明の課題は、透明性、導電性、及び、可撓性に優れ、しかもプラスチック基材に塗布成膜することが可能な導電性組成物、およびそれを用いてなる導電膜および導電性積層体を提供することである。
【解決手段】スルホン酸系の特定構造を構造単位として含む共役系ポリアニオン(A)と、共役系導電性高分子(B)とを含有することを特徴とする導電性組成物により解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアニオンと共役系導電性高分子とを含有する導電性組成物、及びその製造方法に関する。
【0002】
本発明は、ポリアニオンと共役系導電性高分子とを含有する導電性組成物に関するものであり、その導電性組成物は、塗膜の均一性が非常に高く、さらには導電性の高い膜を形成することが出来る。これらの特徴を利用し、前記塗膜は、タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンスパネル、無機エレクトロルミネッセンスパネル、液晶パネル等の透明電極として好適に使用することが出来る。
【背景技術】
【0003】
透明電極材料として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛等の無機酸化物材料を中心に開発が行われてきた。中でも、酸化インジウムと酸化スズの混合焼成体であるITO(スズドープ酸化インジウム)が、その導電性の高さ等の理由により、一般的に使用されている。
【0004】
また、近年では、太陽電池や有機エレクトロルミネッセンス素子向けに、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)やIZO(酸化インジウム、酸化亜鉛混合焼成体)などが開発されている。
【0005】
これら、無機酸化物を中心とした透明電極は、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ、イオンプレーティング法等の乾式成膜法を用いて成膜が行われる。高温成膜や高温焼成などの過程が必要となることから、主にガラスが基材として利用されている。
【0006】
ガラスを基材として用いた場合、折り曲げることが出来ない、割れる、重いなどという点が、モバイル用途を想定した場合に問題点となる。
【0007】
一方、近年「プリンテッドエレクトロニクス」といわれる領域の技術開発が積極的に行われている。これまでの高価な設備や、複雑な工程を駆使して生産されてきた高価な電子部品を、プロセス廃棄物が少なく、材料の利用効率が高く低コストで環境にやさしい印刷法を用いて製造するというものである。これにより、ローコスト・ハイスループットで電子部品を生産することが可能になるといわれている。さらには、低温プロセスを利用することができることから、基材にプラスチックフィルムを用いることが出来る。これにより、フレキシブルな導電膜が作成できる。しかしながら、電子部品の信頼性や性能が犠牲になるといった問題も抱えている。
【0008】
印刷法による透明導電膜は、導電性組成物をガラス板やプラスチック板(プラスチックフィルム)等の基板に塗工することにより形成され、導電性や静電防止機能の付与等を目的として使用される。印刷適性や可撓性性の点から、近年は導電性組成物に共役系導電性高分子がさかんに研究されているが、透明性と導電性の両立に課題が残っている。
【0009】
一般に、共役系導電性高分子は、その共役構造ゆえ可視光領域に吸収を有するために着色してしまう。透明性を上げるために、導電性組成物の塗膜を薄膜化すると、導電性が低下してしまい、透明性と導電性の両立が困難である。
【0010】
また、共役系導電性高分子そのままでは絶縁体または半導体であり、高い導電性は得られない。しかし、ポリアセチレンのドーピングにより金属導電性発現の発見に端を発し、種々の共役系導電性高分子に適切な電子受容体や電子供与体をドーピングすることにより、導電性を向上させる試みがなされてきた。
【0011】
例えば、低分子の芳香族スルホン酸を有するドープされた導電性高分子(特許文献1)、ポリスチレンスルホン酸の陰イオンにドープされたポリチオフェン(特許文献2)、メタクリル酸エチルスルホン酸の(共)重合体又はメタクリル酸ブチルスルホン酸の(共)重合体を含むポリアニオンにドープされた共役系導電性高分子(特許文献3)が挙げられる。しかしこれらのドーパント自身は非共役系化合物であり導電性は決して高いとは言えない。結果として、導電性組成物の塗膜の導電性が低下してしまう。
【0012】
また、電気抵抗となるドーパントを有機溶剤で抽出・除去することにより、塗膜の透明性と導電性を両立したという報告(第58回高分子学会年次大会 講演番号1Pf098)もあるが、プロセスが煩雑になるという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−142070号公報
【特許文献2】特許2636968号公報
【特許文献3】特許3977348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、透明性、導電性、及び、可撓性に優れ、しかもプラスチック基材に塗布成膜することが可能な導電性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、第1の発明は、下記一般式(1)または一般式(2)の構造単位を有する共役系ポリアニオン(A)と、共役系導電性高分子(B)とを含有することを特徴とする導電性組成物に関する。
【0016】
【化1】

【0017】
[一般式(1)中、Xは水素原子、Li、NaまたはKである。]
【0018】
【化2】

【0019】
[一般式(2)中、XおよびXはそれぞれ独立に水素原子、Li、NaまたはKである。]
【0020】
また、第2の発明は、共役系導電性高分子(B)がポリチオフェンである第1の発明の導電性組成物に関する。
【0021】
また、第3の発明は、導電助剤(C)を含むことを特徴とする第1または第2の発明の導電性組成物に関する。
【0022】
また、第4の発明は、共役系ポリアニオン(A)以外のアニオン化合物(D)を含むことを特徴とする第1ないし第3いずれかの発明の導電性組成物に関する。
【0023】
また、第5の発明は、下記一般式(1)または一般式(2)の構造単位を有する共役系ポリアニオン(A)の存在下に、溶剤に溶解または分散した共役系導電性高分子(B)のモノマーを化学酸化重合する工程を含むことを特徴とする導電性組成物の製造方法に関する。
【0024】
【化3】

【0025】
[一般式(1)中、Xは水素原子、Li、NaまたはKである。]
【0026】
【化4】

【0027】
[一般式(2)中、XおよびXはそれぞれ独立に水素原子、Li、NaまたはKである。]
【0028】
さらに、第6の発明は、第1ないし第4いずれかの発明の導電性組成物から形成される導電膜に関する。
【0029】
さらにまた、第7の発明は、基材と第6の発明の導電膜とを有することを特徴とする導電性積層体に関する。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、透明性、導電性、及び、可撓性に優れ、しかもプラスチック基材に塗布成膜することが可能な導電性組成物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について詳細に説明する。
「導電性組成物」
本発明の導電性組成物は、下記一般式(1)または一般式(2)の構造単位を有する共役系ポリアニオン(A)と、共役系導電性高分子(B)とを含有することを特徴とする。
【0032】
【化5】

【0033】
[一般式(1)中、Xは水素原子、Li、NaまたはKである。]
【0034】
【化6】

【0035】
[一般式(2)中、XおよびXはそれぞれ独立に水素原子、Li、NaまたはKである。]
【0036】
本発明の導電性組成物では、共役系導電性高分子(B)の透明性を損なうことなく、導電性を向上させることができる。
一般的に、ポリアニオンと共役系導電性高分子(B)とが共存すると、ポリアニオンのアニオン基が共役系導電性高分子(B)へドーピングし、共役系導電性高分子(B)と塩を生成する。特に、スルホン酸基等のアニオン基では、強いイオン結合が生成される。これによって、共役系導電性高分子(B)がポリアニオン(A)の主鎖に強く引き寄せられ、規則正しく配列した共役系導電性高分子(B)が得られる。こうして共役系導電性高分子(B)の間にポリアニオンが存在することとなり、相溶性に優れ、透明性を損なうことがない。
本発明の導電性組成物では、このポリアニオンが共役系ポリアニオンであり、共役系ポリアニオン自身が導電性を有するため、導電性組成物から得られる塗膜の導電性が良好である。
【0037】
(共役系ポリアニオン(A))
本発明に含まれる共役系ポリアニオン(A)は、下記一般式(1)または(2)の構造単位を有する。
【0038】
【化7】

【0039】
[一般式(1)中、Xは水素原子、Li、NaまたはKである。]
【0040】
【化8】

【0041】
[一般式(2)中、XおよびXはそれぞれ独立に水素原子、Li、NaまたはKである。]
【0042】
本発明に含まれる共役系ポリアニオン(A)の合成方法について説明する。
一般式(1)の構造単位を有する重合体は、触媒を用いてフェニルアセチレンの重合を行い、得られたポリフェニルアセチレンの芳香環をスルホン化することにより得られる。
【0043】
フェニルアセチレンの重合は、溶媒にモノマーを溶解させた溶液について、該溶液中の原料モノマーの濃度を0.00001〜10M、好ましくは0.01〜0.5Mに調製し、Rh錯体触媒の存在下に、−60〜100℃、好ましくは20〜40℃の範囲の温度で、1分〜48時間行われる。
【0044】
溶媒としては特に制限されず、例えばヘキサン、ヘプタンのような脂肪族炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンのような芳香族炭化水素類;
シクロペンタン、シクロヘキサンのような脂環式炭化水素類;
クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;
メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;
アセトニトリル、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、トリエチルアミン等の窒素化合物類;
ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、セロソルブ等のエーテル類;
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;
酢酸、無水酢酸等の有機酸類;
酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類等が挙げられるが、重合性やポリマーの溶解性の観点から、好ましくはトリエチルアミン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等);
水などが挙げられる。これらのうち1種を用いてもよいし、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0045】
フェニルアセチレンの重合に用いる触媒としては、例えば、[Rh(ノルボルナジエン)Cl]2、[Rh(シクロオクタジエン)Cl]2、[Rh(ビス‐シクロオクタジエン)Cl]2などが挙げられ、重合性の観点から、特に[Rh(ノルボルナジエン)Cl]2が好ましく用いられる。その使用量は、原料モノマーに対し通常モル比で0.00001〜10、好ましくは0.01〜0.5の範囲で選ばれる。さらにトリエチルアミンのような3級アミンを原料モノマーに対し通常モル比で0.0001〜10、好ましくは0.1〜5.0の範囲で併用してもよい。
【0046】
また、必要に応じて、フェニルアセチレン以外のモノマーと共重合してもよい。
例えば、アセチレン、プロピン、1−ブチン、1−ヘキシン、1−オクチン、シクロオクチン等のアルキルアセチレン類;
オルトトリフルオロメチルフェニルアセチレン、オルトペンタフルオロエチルフェニルアセチレン等の置換フェニルアセチレン類;
プロピオール酸メチル、プロピオール酸エチル、プロピオール酸ブチル、メチルプロパルギルエステル、エチルプロパルギルエステル、ブチルプロパルギルエステル等のエステル基含有アセチレン類;
N−プロパルギルメタンアミド、N−プロパルギルエタンアミド、N−プロパルギルブタンアミド等のアミド基含有アセチレン類;
メチルカルバミン酸プロパルギル、エチルカルバミン酸プロパルギル、ブチルカルバミン酸プロパルギル等のカルバメート基含有アセチレン類;
メチルプロパルギルエーテル、エチルプロパルギルエーテル等のエーテル基含有アセチレン類などが挙げられる。
【0047】
次に、得られたポリフェニルアセチレン系ポリマーの芳香環のスルホン化について説明する。
得られたポリフェニルアセチレン系ポリマーのスルホン化は、好ましくは、米国特許第3870841号に記載のスルホン化剤、例えば、硫酸、クロロスルホン酸、アセチル硫酸等の存在下におこなう。スルホン化したい芳香環1モルに対して、スルホン化剤を0.01〜10モルを添加し、10〜100℃、好ましくは20〜70℃の範囲の温度で、1時間〜48時間行われる。
【0048】
一般式(2)の構造単位を有する重合体は、触媒を用いてジフェニルアセチレンの重合を行い、得られたポリジフェニルアセチレンの芳香環をスルホン化することにより得られる。
【0049】
ジフェニルアセチレンの重合に用いられる重合開始剤としては、たとえばモリブデン、タングステン、ニオブ、タンタルなどの遷移金属化合物が用いられるが、重合性の観点から、これらの中で特にタンタル化合物が好適であり、その使用方法としては五塩化タンタルなどのハロゲン化タンタルを使用する方法、ハロゲン化タンタルを主触媒とし、還元剤を第二成分とする開始剤を使用する方法等がある。後者の方法においては、主成分のハロゲン化タンタルとして、五塩化タンタルの使用が好ましく、また、第二成分の還元剤としては、通常アルミニウム、ホウ素、ケイ素、スズ、アンチモン、ビスマス、リチウムなどを含む有機金属化合物が用いられる。
【0050】
前記のいずれの方法においても重合触媒の使用量は、通常、ジフェニルアセチレンに対して0.1〜25モル%の範囲とすることができる。また前記の還元剤を用いる方法においては、還元剤の主触媒に対する割合がモル比で0.3〜3程度になるように用いることができる。重合反応は溶媒中で行うのがよく、この溶媒としては、たとえばトルエン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、四塩化炭素、二塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、アニソール、ジブチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、アセトフェノンなどのケトン類、酢酸エチル等のエステル類などが挙げられる。これらの溶媒は1種用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。ジフェニルアセチレンの重合は、−60〜100℃、好ましくは20〜40℃の範囲の温度で、30分〜100時間行われる。
【0051】
また、必要に応じて、ジフェニルアセチレン以外のモノマーと共重合してもよい。
例えば、置換基を有するジフェニルアセチレンである。置換基としては重合を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、アリール基、置換シリル基などが挙げられる。かかる置換基はジフェニルアセチレンを形成する二つのベンゼン環に結合しているものであるが、その数や位置は特に限定されない。
【0052】
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ter−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられる。
【0053】
シクロアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
【0054】
ハロアルキル基としては、例えばクロロメチル基、ブロムメチル基、ヨードメチル基、1−クロロ−1−エチル基、2−クロロ−1−エチル基、1−ブロモ−1−エチル基、2−ブロモ−1−エチル基などが挙げられる。
【0055】
アリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メチシル基などが挙げられる。
【0056】
置換シリル基としては、例えばトリメチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジエチルメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる。
【0057】
次に、得られたポリフェニルアセチレン系ポリマーの芳香族のスルホン化について説明する。
得られたポリフェニルアセチレン系ポリマーのスルホン化は、好ましくは、米国特許第3870841号に記載のスルホン化剤、例えば、硫酸、クロロスルホン酸、アセチル硫酸等の存在下におこなう。スルホン化したい芳香環1モルに対して、スルホン化剤を0.01〜10モルを添加し、10〜100℃、好ましくは20〜70℃の範囲の温度で、1時間〜48時間行われる。
【0058】
共役系ポリアニオン(A)の重量平均分子量は、好ましくは2,000〜1,000,000の範囲内である。2000未満の場合は、共役系導電性高分子(B)との相互作用が不十分となったり、分散不良が生じる場合がある。1,000,000より大きい場合は、共役系高分子(B)の分散不良が生じる場合がある。
【0059】
(共役系導電性高分子(B))
共役系導電性高分子(B)は、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類に加え、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンエチニレン、ポリアセン、及び前記重合体を構成するモノマーからなる共重合体等が挙げられる。好ましくは、透明性、導電性、空気雰囲気下での化学的安定性からポリチオフェン類であり、さらに好ましくはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である。
【0060】
本発明では、ポリアニオン(A)を共存させているので、共役系導電性高分子(B)に特段の官能基を導入しなくても、共役系導電性高分子(B)の溶剤溶解性や他の樹脂との相溶性(分散性)は良好である。但し、アルキル基、カルボキシ基、スルホン酸基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等の官能基を共役導電性高分子(B)に導入することによって、溶剤溶解性や他の樹脂との相溶性(分散性)をより向上させることができる。
【0061】
共役系導電性高分子(B)の具体例としては、
ポリピロール、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−ヘキシルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3,4−エチレンジオキシピロール)等のポリピロール類;
ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)等のポリチオフェン類、
ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等のポリアニリン類等が挙げられる。
【0062】
共役系導電性高分子(B)は、好ましくは、共役系導電性高分子(B)のモノマーを溶剤に溶解又は分散させ、酸化剤及び/又は酸化重合触媒を用いて重合する化学酸化重合等によって得られる。必要に応じて、他のモノマーを共重合することもできる。
【0063】
共役系導電性高分子(B)の製造に用いられる、他のモノマーとしては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール3−ヘキシルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3、4−ジメチルピロール、3、4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール等のピロール類;
チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3、4−ジメチルチオフェン、3、4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3、4−ジヒドロキシチオフェン、3、4−ジメトキシチオフェン、3、4−ジエトキシチオフェン、3、4−ジプロポキシチオフェン、3、4−ジブトキシチオフェン、3、4−ジヘキシルオキシチオフェン、3、4−ジヘプチルオキシチオフェン、3、4−ジオクチルオキシチオフェン、3、4−ジデシルオキシチオフェン、3、4−ジドデシルオキシチオフェン、3、4−エチレンジオキシチオフェン、3、4−プロピレンジオキシチオフェン、3、4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン等のチオフェン類等;
アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等のアニリン類等が挙げられる。
これらは1種又は2種以上を用いることができる。
重合に用いる溶剤や、酸化剤・酸化重合触媒としては、ポリアニオン(A)の合成で例示したものが使用できる。
【0064】
(導電助剤(C))
導電助剤(C)は、本発明の導電性組成物を用いて形成される導電膜の導電性をさらに向上する目的で必要に応じて加えているものであり、具体的にはラクタム類、アルコール類、アミノアルコール類、フランカルボン酸、ハロゲン置換酢酸などが挙げられる。
それらの具体例としては、例えば、
N−メチルピロリドン、ピロリドン、カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N−オクチルピロリドン、等のラクタム類;
ショ糖、グルコース、フルクトース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリフルオロエタノール、m−クレゾール、チオジグリコール、等のアルコール類;
ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、等のアミノアルコール類;
2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、等のカルボン酸類;
無水酢酸、無水プロピオン酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水安息香酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(別名:シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物)、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ハイミック酸、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、9,9−フルオレニリデンビス無水フタル酸、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン−無水マレイン酸コポリマー、アルキルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマーなどの、無水マレイン酸と他のビニルモノマーとを共重合したコポリマー等の酸無水物類;
などが挙げられる。この中でも、導電性の観点から、ラクタム類、アルコール類、等が好ましい。
【0065】
導電助剤(C)は導電性組成物中に0.1〜30重量%含まれることが好ましい。0.1重量%より少ない場合は導電助剤(C)による導電性の向上が期待できない。また、30重量%よりも多い場合は膜物性に悪影響を及ぼす場合が多い。
【0066】
(共役系ポリアニオン(A)以外のアニオン化合物(D))
共役系ポリアニオン(A)以外のアニオン化合物(D)、すなわちアクセプタ性ドーパントまたはドナー性のドーパントは、本発明の導電性組成物を用いて形成される導電膜の導電性をさらに向上する目的で必要に応じて加えることができる。
例えば、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物等のアクセプタ性ドーパント;
アルカリ金属、アルカリ土類金属、4級アンモニウムイオン等のドナー性ドーパントなどが挙げられる。
【0067】
アクセプタ性ドーパントとして好適なハロゲン化合物としては、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、フッ化ヨウ素(IF)等が挙げられる。
ルイス酸としては、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SO等が挙げられる。
【0068】
プロトン酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸や、有機カルボン酸類、フェノール類、有機スルホン酸類等の有機酸が挙げられる。ドーピング効果の点で、有機酸の中では、有機カルボン酸類や有機スルホン酸類が好ましく用いられる。
【0069】
有機カルボン酸類としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等の基にカルボン酸基が一つ以上結合したものが使用でき、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフエニル酢酸等が挙げられる。
【0070】
有機スルホン酸類としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等の基にスルホン酸基が一つ以上結合したものが使用できる。
スルホン酸基を一つ含むものとしては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、1−テトラデカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフト−ル−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフト−ル−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、へキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸 、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸 、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物等が挙げられる。
【0071】
スルホン酸基を二つ以上含むものとしては、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ドデシルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、ブチルナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフト−ル−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフト−ル−2,7−ジスルホン酸、アントラセンジスルホン酸、ブチルアントラセンジスルホン酸、4−アセトアミド−4′−イソチオ−シアナトスチルベン−2,2′−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4′−イソチオシアナトスチルベン−2,2′−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4′−マレイミジルスチルベン−2,2′−ジスルホン酸、1−アセトキシピレン−3,6,8−トリスルホン酸、7−アミノ−1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、8−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸、3−アミノ−1,5,7−ナフタレントリスルホン酸等が挙げられる。
【0072】
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物、例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。
【0073】
ドナー性ドーパントとして好適なアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムが挙げられる。
【0074】
アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム等が挙げられる。
【0075】
4級アンモニウムイオンとしては、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0076】
本発明の導電性組成物は、必要に応じて他の成分を含むものであっても良い。
例えば、成膜性や膜強度の調整等を目的として、他の有機樹脂(F)を併用することができる。
有機樹脂(F)としては、導電性組成物に相溶又は混合分散するものであれば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれを用いても良い。
その具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル、アクリル樹脂、およびこれらの共重合樹脂等が挙げられる。
【0077】
「導電性組成物の製造方法」
次に、本発明の導電性組成物の製造方法について説明する。
本発明の導電性組成物は、具体的には、下記一般式(1)または一般式(2)の構造単位を有する共役系ポリアニオン(A)の存在下に、溶剤に溶解又は分散した共役系導電性高分子(B)のモノマー(1種又は2種以上のモノマー)を、Ziegler−Natta触媒やPd触媒などの触媒を用いて重合する方法、ビリルビンオキシダーゼなどの酸化酵素を用いて重合する方法、あるいは、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過マンガン酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウムなどの酸化剤を用いて重合する方法(化学酸化重合)により製造することができる。
この中でも、重合の簡便さおよび得られる導電性組成物の導電性の観点から、化学酸化重合する工程〔以下、「工程(1)」とも表記する。〕を含む製造方法により得ることが好ましい。
【0078】
【化9】

【0079】
[一般式(1)中、Xは水素原子、Li、NaまたはKである。]
【0080】
【化10】

【0081】
[一般式(1)中、XおよびXはそれぞれ独立に水素原子、Li、NaまたはKである。]
【0082】
工程(1)には、共役系ポリアニオン(A)、共役系導電性高分子(B)のモノマー、酸化剤及び/又は酸化重合触媒等を混合する工程、混合液中で共役系導電性高分子(B)のモノマーを重合させる工程が含まれる。
【0083】
本発明の製造方法ではさらに、工程(1)後に、共役系ポリアニオン(A)と生成された共役系導電性高分子(B)を含む溶液に対して、限界濾過法にて遊離イオンを除去する工程〔以下、「工程(2)」とも表記する。〕を有することが好ましい。
【0084】
限外濾過法は膜分離法の1種で、例えば多孔質支持基材上にそれよりも小さい細孔を有する高分子膜を有した限外濾過膜を用いて成分の分離を行う手法である。本発明では、必要な高分子成分が膜を透過しないので、クロスフロー式を採用することが好ましい。必要に応じて希釈しながら、限外濾過処理を1回又は複数回実施することで、小さい粒子及び残留イオンを含む不純物のみを膜透過させ除去することができる。本発明では、例えば分画分子量1〜1,000,000の限外濾過膜を用いることが好ましい。
【0085】
本発明の製造方法はさらに、プロトン含有溶液を添加する工程〔以下、「工程(3)」とも表記する。〕を有することが好ましい。工程(3)は、工程(2)と同時に実施しても良いし、工程(2)後に実施しても良い。
工程(3)で用いるプロトン含有溶液としては特に制限はないが、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、スルホン酸化合物等を含む溶液が挙げられる。必要に応じて工程(3)を実施することで、アニオン基と錯体形成されているカチオンをプロトンに交換することができる。これによって、より高い電気伝導度が得られると共に、遊離金属イオンが除去され、好適である。
【0086】
以上の製造方法によれば、共役系ポリアニオン(A)の存在下に、溶剤に溶解又は分散した共役系導電性高分子(B)のモノマーを化学酸化重合する工程、すなわち工程(1)を有するので、上記した如く、高電気伝導度を有する導電性組成物が安定的に得られるので好ましい。
また、以上の製造方法は、限外濾過処理工程、すなわち工程(2)を有するので、残留イオンを含む不純物を良好に除去することができ、残留イオンに起因する共役系導電性高分子(B)の耐熱性、耐湿性、長期安定性等の低下も抑制することができるので好ましい。
【0087】
次に、調製した導電性組成物を用いて導電膜を形成する方法について説明する。導電膜の形成には、主に湿式成膜法が用いられる。具体的には、スピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、ロールコート法、カーテンコート法、又はバーコート法等各種の手段を用いた方法がある。それらの方法は、塗布する厚み、粘度等に応じて適宜利用できる。
【0088】
また、本発明の導電性組成物を成膜する際の基材として、ポリエチレン、ポリエチレンテレフテレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、ポリイミド、ボリカーボネート、若しくはセルローストリアセテートなどのプラスチックフィルム、又は、ガラスなどを用いることができる。
基材上に、本発明の導電性組成物を用いて導電膜を形成することにより、導電性積層体を得ることができる。
【0089】
一般に、これら基材と導電膜との密着性を向上させる目的で、基材表面に様々な処理を行うことができる。具体的には、UVオゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理、易接着処理などを挙げることができる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明する。なお、例中、「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」をそれぞれ意味するものとする。
【0091】
共役系ポリアニオン(A)の製造
[合成例1]
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、フェニルアセチレン200部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を40℃に加温し、[Rh(ノルボルナジエン)Cl]2 2部とトリエチルアミン5部を添加して、6時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認し、反応を終了した。メタノールに再沈殿し、沈殿物をろ過することにより、重量平均分子量70,000のポリフェニルアセチレンを得た。
次いで、ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、このポリフェニルアセチレン102部をジクロロエタン200部に溶解した後、50℃に加温した。そこにアセチル硫酸140部を添加して、8時間反応した。減圧乾燥することにより、共役系ポリアニオン(A1)を得た。
【0092】
[合成例2]
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、フェニルアセチレン100部とN−プロパルギルブタンアミド100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を40℃に加温し、[Rh(ノルボルナジエン)Cl]2 2部とトリエチルアミン5部を添加して、6時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認し、反応を終了した。メタノールに再沈殿し、沈殿物をろ過することにより、重量平均分子量85,000のフェニルアセチレンとN−プロパルギルブタンアミドの共重合体を得た。
次いで、ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、この共重合体102部をジクロロエタン200部に溶解した後、50℃に加温した。そこにアセチル硫酸70部を添加して、8時間反応した。減圧乾燥することにより、共役系ポリアニオン(A2)を得た。
【0093】
[合成例3]
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ジフェニルアセチレン50部とトルエン1000部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加温し、五塩化タンタル3部とテトラ−n−ブチルスズ6部を添加して、24時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認し、反応を終了した。メタノールに再沈殿し、沈殿物をろ過することにより、重量平均分子量650,000のポリジフェニルアセチレンを得た。
次いで、ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、このポジリフェニルアセチレン50部をジクロロエタン500部に溶解した後、50℃に加温した。そこにアセチル硫酸78部を添加して、8時間反応した。減圧乾燥することにより、共役系ポリアニオン(A3)を得た。
【0094】
[合成例4]
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ジフェニルアセチレン40部、1−ヘキセン10部とトルエン1000部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加温し、五塩化タンタル3部とテトラ−n−ブチルスズ6部を添加して、24時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認し、反応を終了した。メタノールに再沈殿し、沈殿物をろ過することにより、重量平均分子量800,000のジフェニルアセチレンと1−ヘキセンの共重合体を得た。
次いで、ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、この共重合体50部をジクロロエタン500部に溶解した後、50℃に加温した。そこにアセチル硫酸63部を添加して、8時間反応した。減圧乾燥することにより、共役系ポリアニオン(A4)を得た。
【0095】
ポリアニオン(a)の製造
[合成例5]
重量平均分子量5000のポリスチレン26部をジクロロメタン40部に溶解した。この溶液に無水硫酸20部をジクロロメタン80部に溶解した溶液を、30℃の温度で3時間かけて滴下した。30分間同温度で熟成後、ジクロロエタンを加熱除去することにより、ポリアニオン(a1)を得た。
【0096】
[合成例6]
イオン交換水100mlに、メタクリル酸エチルスルホン酸ナトリウム(日本乳化剤社製 商品名:アントックス)43.4部を加え80℃に加熱した。イオン交換水10mlに過硫酸アンモニウム0.114部と硫酸第二鉄0.04部とを溶解した酸化剤溶液を加え、同温度に保ちながら3時間攪拌した。反応終了後、反応液を室温まで冷却した後、100℃のオーブン中で加熱乾燥し、ポリアニオン(a2)を得た。
【0097】
(導電性組成物の製造)
[実施例1]
共役系ポリアニオン(A1)2.9gと、ピロール0.68gとをイオン交換水200gに溶解した。この混合液を25℃に保ち、攪拌下、イオン交換水100gに過硫酸アンモニウム2.9gと硫酸第二鉄0.1gとを溶解した触媒溶液をゆっくり加え、同温度で12時間攪拌した(工程(1))。
得られた反応液にイオン交換水2000mlを添加し、限界濾過法にて溶液を300mlまで濃縮する操作を2回繰り返し、重合触媒の遊離イオンを除去した(工程(2))。さらに、濃縮液にイオン交換水100ml及び10%硫酸水溶液20gを順次添加し、限界濾過法にて溶液を300mlまで濃縮する操作を計5回繰り返し、プロトン交換を行った(工程(3)及び(2))。さらに、イオン交換水3000mlを添加し、限界濾過法にて300mlまで濃縮する操作を濾過液が中性になるまで繰り返し(工程(2))、黒青色液状の導電性組成物(N1)を得た。
【0098】
[実施例1〜実施例4および比較例1〜3]
表1に示す組成で作製した以外は、実施例1と同様にして、導電性組成物(N2)〜(N7)を作製した。
【0099】
(導電性組成物の評価)
本発明の導電性組成物の性能を評価するために、バーコーター(#14)を用いて易接着処理PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に導電性組成物を塗布した。100℃にて2分間乾燥させて得られた塗膜を用いて、導電性はロレスタHP(三菱化学社製)で表面抵抗値を測定し、透明性はNDH2000(日本電色工業社製)で全光線透過率を測定した。全光線透過率は大きいほど良好であり、70以上で実用域である。表面抵抗値は小さいほど良好であり、10の4乗以下で実用域である。
可撓性は、塗膜が積層されたPET基材を直径1センチメートルの円柱に巻きつけた後、塗膜の表面抵抗値が±10%以内の変化であれば○、表面抵抗値の変化の割合が±10%より大きい場合や塗膜にひびや欠け、表面荒れ等が生じれば×とした。
導電性、透明性、および可撓性で導電膜の性能を評価した。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
EDOT:3,4−エチレンジオキシチオフェン
IEW:イオン交換水
APS:過硫酸アンモニウム
【0102】
[実施例5]
導電性組成物(N1)100部に、導電助剤(C)としてエチレングリコール10部を添加することにより導電性組成物(N8)を得た。
【0103】
[実施例6〜9および比較例4〜6]
表2に示す組成で作製した以外は、実施例5と同様にして、導電性組成物(N9)〜(N15)を作製した。
【0104】
実施例1と同様にして、導電性、透明性、および可撓性で分散体塗膜の性能を評価した。結果を表2に示す。
【0105】
【表2】

【0106】
EG:エチレングリコール
NMP:N−メチルピロリドン
TMA:無水トリメリット酸
【0107】
以上の評価結果から明らかなように、本発明に用いる共役系ポリアニオン(A)を使用した実施例1〜9の導電性組成物を基材に塗布して得られた塗膜は、導電性、透明性、および可撓性も良好である。
これに対して、比較例1から5では、導電性と透明性の両立が困難であった。比較例6では、導電性と透明性の両立が困難であり、またアニオン化合物(D)を併用しても、導電性の向上は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の導電性組成物から形成される導電膜は、有機エレクトロルミネッセンス、太陽電池、タッチパネル、液晶パネル、電子ペーパー等への透明導電膜、及び、電磁波シールド、帯電防止膜として使用することができ、導電性、及び密着性に優れ、しかもプラスチック基材に塗布成膜することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)または一般式(2)の構造単位を有する共役系ポリアニオン(A)と、共役系導電性高分子(B)とを含有することを特徴とする導電性組成物。
【化1】


[一般式(1)中、Xは水素原子、Li、NaまたはKである。]
【化2】


[一般式(2)中、XおよびXはそれぞれ独立に水素原子、Li、NaまたはKである。]
【請求項2】
共役系導電性高分子(B)がポリチオフェンである請求項1記載の導電性組成物。
【請求項3】
導電助剤(C)を含むことを特徴とする請求項1または2記載の導電性組成物。
【請求項4】
共役系ポリアニオン(A)以外のアニオン化合物(D)を含むことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の導電性組成物。
【請求項5】
下記一般式(1)または一般式(2)の構造単位を有する共役系ポリアニオン(A)の存在下に、溶剤に溶解または分散した共役系導電性高分子(B)のモノマーを化学酸化重合する工程を含むことを特徴とする導電性組成物の製造方法。
【化3】


[一般式(1)中、Xは水素原子、Li、NaまたはKである。]
【化4】


[一般式(2)中、XおよびXはそれぞれ独立に水素原子、Li、NaまたはKである。]
【請求項6】
請求項1ないし4いずれか記載の導電性組成物から形成される導電膜。
【請求項7】
基材と請求項6記載の導電膜とを有することを特徴とする導電性積層体。

【公開番号】特開2012−201720(P2012−201720A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65373(P2011−65373)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】